説明

シリコン結晶の接合方法、及びシリコン結晶製品

【課題】 シリコン製の機械的手段を用いずに複数のシリコン結晶を所要の耐熱性及び強度で固定できるようにする。
【解決手段】 Aに示すように、棒状シリコン結晶1に窪み1aを設け、棒状シリコン結晶2に突起2aを設ける。突起2aの先端に窪み2bを設ける。Bに示すように窪み2bの内部に接合材3を入れた後に、Cに示すように棒状シリコン結晶1及び2を嵌め合わせる。この状態を保ったままで電気炉に入れ、接合材3に適した温度と雰囲気にする。所定の条件に達すると接合材3が融け、Dに示すように接合面の隙間4に浸入する。冷却することで棒状シリコン結晶1と2とは強固に接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリコン結晶(単結晶、多結晶)の接合方法、及びその方法で接合されたシリコン結晶製品に関し、より詳しくは、半導体製造装置などに使用されているシリコン部品やシリコン冶具の効果的な組み立てと、部品点数の低減を実現したシリコン結晶の接合方法及びシリコン結晶製品に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置ではその内部で高純度シリコンウエハーを収納して熱処理、膜形成、化学腐食、露光などの多種多様な工程を経て高度な半導体素子が製造されている。これらの中でシリコンウエハーに不純物をドーピングする熱拡散工程や酸化膜、窒化膜を形成するCVD工程においては、直径200mm、300mmのシリコンウエハーを収納するボートやステージが必要である。これらの収納部品は従来から石英ガラス(SiO2)や炭化珪素(SiC)が用いられてきているが、これらは半導体素子製造時に移動したり高温に曝されたり特殊なガスに触れるなどして部品の成分が微粒子となって周囲に飛散する。ところが半導体素子は年々高性能化・高精密化しており、工程中で飛散した石英ガラスや炭化珪素の微粒子からの汚染があると素子の品質が安定せず製品歩留まりの低下を招くという問題点がある。そのために最近はシリコンウエハーと同じ材質のシリコン結晶でボートやステージの部品を用いる動きがでてきた。つまりシリコン結晶で半導体製造装置内の部品をまかなうことができると、工程中での不純物汚染は大幅に減り半導体素子の理想的な製造が可能となってくる。
【0003】
現在、半導体製造装置で主に使われている石英ガラス製のボートやステージの組み立ては、酸素・水素ガスバーナーで熔融接合する方法で行われている。石英ガラスの様な酸化物でしかもガラス質なものは、空気中でガスバーナーを用いて熔融加工・接合することが古くから行われてきた。
【0004】
ところがシリコンは結晶質であり、その融点1414℃での熔融接合は不可能である。しかも1000℃以上になると表面が酸化されるので空気中での取り扱いはできない。従って、半導体製造装置内のシリコン部品の固定・接合を行うには、特定の清浄ガス雰囲気下で熔融接合以外の方法を取らねばならない。また半導体製造工程での不純物汚染が起きる材料は使えないし、更にシリコンウエハーの熱処理や膜形成時の温度(400℃〜1100℃)に耐える接合・固定が要求される。そこで現在、シリコン部品の固定はシリコン製のボルト、ナット及び楔を用いていて行っている(特許文献1参照)。
【0005】
ところがこのようなシリコン製の機械的手段(シリコン製のボルト、ナット、楔などの固定部品)による固定は、a:使用中温度サイクルによりボルトや楔は緩んでくるので作業毎に調整が必要である、b:固定のためのボルトや楔など余計な部品が必要である、c:破損や消耗した時に修理が困難である、d:組み立て工数、固定部品の加工でコストがかさむ、などの問題点を抱えている。
【0006】
【特許文献1】特開平7−9285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、シリコン製の機械的手段を用いずに複数のシリコン結晶を所要の耐熱性及び強度で固定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、シリコンの融点よりも低い温度でシリコンと融合する接合材を接合対象である複数のシリコン結晶の間に配置する工程と、前記接合材及びシリコン結晶を前記接合材の融点以上かつシリコンの融点未満の温度に加熱する工程と、その加熱された接合材及びシリコン結晶を冷却し固化させる工程とを有するシリコン結晶を接合する方法である。
請求項2の発明は、請求項1記載のシリコン結晶を接合する方法において、前記接合材がゲルマニウムであることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1記載のシリコン結晶を接合する方法において、前記接合材がシリコン・ゲルマニウム合金であることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1記載のシリコン結晶を接合する方法において、前記接合材が二酸化ゲルマニウムであることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載のシリコン結晶を接合する方法において、前記接合材の形状が粉末状又はペースト状又は薄板状又は粒状又は棒状又はリング状であることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載のシリコン結晶を接合する方法において、前記複数の結晶の一方が前記接合材を入れるための窪みを有することを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項2又は3記載のシリコン結晶を接合する方法において、前記接合材及びシリコン結晶を不活性ガス又は水素ガス又はそれらの混合ガス雰囲気下で加熱することを特徴とする。
請求項8の発明は、請求項4記載のシリコン結晶を接合する方法において、前記接合材及びシリコン結晶を酸素ガス又は水蒸気又はそれらの混合ガス雰囲気下で加熱することを特徴とする。
請求項9の発明は、請求項1〜8のいずれかの方法により接合された複数のシリコン結晶を有するシリコン結晶製品である。
【0009】
(作用)
本発明によれば、シリコンの融点よりも低い温度でシリコンと融合する接合材を接合対象である複数のシリコン結晶の間に配置し、その接合材及びシリコン結晶をその接合材の融点以上かつシリコンの融点未満の温度に加熱することで接合材とシリコンとを融合させ、その後に冷却し固化させることにより、複数のシリコン結晶を接合する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シリコン製のボルト、ナット及び楔などの固定部品を用いることなく、複数のシリコン結晶を直接接合することが可能になる。このため、半導体製造装置などに使われるシリコン部品やシリコン冶具などを全てシリコン結晶部材へ転換することが可能となり、それらの価格低減が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
半導体製造装置内で用いられるシリコン部品の固定をシリコン製の固定部品を用いずに行う場合に解決すべき課題として以下の3項目が挙げられる。
第一の課題は接合部の耐熱温度を1100℃程度確保することである。
第二の課題は接合部分にシリコン以外の素材を用いた場合、これによる不純物汚染を防止することである。当然、この接合材には1100℃程度の耐熱性が要求される。この接合材に何を選択するかが最も重要な課題である。
第三課の課題はシリコン結晶の接合時の雰囲気の設定である。シリコンは温度上昇とともに塩素、臭素などのハロゲンガス、酸素、窒素、水蒸気などの空気中成分ガスと容易に反応しその表面状態が他のシリコン化合物に転換し、シリコン同士の接合を阻害する要因となる。そのために接合時の雰囲気をどの様な成分にして接合を容易にできるかが重要である。
【0013】
本実施形態では上記第一の課題を解決するため、接合に用いる素材にゲルマニウム、シリコン・ゲルマニウム合金、二酸化ゲルマニウムの三種類を選択した。
【0014】
まずゲルマニウム及びシリコン・ゲルマニウム合金の接合について述べる。
一般にシリコンはあらゆる金属元素と高温で容易に反応し合金を作ることが知られている。そして、それらの組み合わせの内、シリコンとゲルマニウムはどの様な比率でも合金ができる全率固溶型で混合をする唯一の組み合わせである。
【0015】
図1はゲルマニウム−シリコンの相図を示し、これよりゲルマニウム100%の融点936℃からシリコン100%の融点1414℃まで、液相域〜液相・固相混在域〜固相域がなだらかな勾配で変化していることが分かる。従って、シリコン結晶の間にゲルマニウムを挟み、そのままゲルマニウムの融点936℃以上に上げると、挟まれたゲルマニウムは融けてシリコンと合金化し、その後温度を下げると図1の相図に従った組成分布をとって固化する。つまり、ゲルマニウムとシリコンとの共融混合物が形成され、それが固化する。
【0016】
例えば接合温度を1050℃に上げると、液体ゲルマニウムはシリコンを溶かし込んで図1の点aに示されているシリコン量約12at%の組成になる。しばらく時間を置くと、接合層は点a→点bの範囲で固相・液相が共存し、固化は点bのシリコン濃度35at%で始まり、点c方向への温度降下により一定の濃度で固化する。実際は最初のゲルマニウムの量や放置時間などにより、接合部分にはシリコン部分へ向かった濃度分布が存在する。接合素材にシリコン・ゲルマニウム合金を使う場合は、接合温度は図1に従って、用いる合金の組成に応じた融点を設定すればよい。
【0017】
このように、接合される両側のシリコン自身が、ゲルマニウムに取り込まれたかたちでシリコンの接合を行う自己合金化接合には幾つかの利点がある。その一つは、シリコンとゲルマニウムとでは熱膨張係数が異なり、これらを1000℃程度に上げると接合部分に熱応力がかかり破損の要因が増すが、この接合部分がシリコンとゲルマニウムの中間成分になることで熱応力が緩和され、機械強度の低下を免れる。更なる利点は、接合温度を上げることにより接合層のシリコン濃度は相図に従って増加し、それにつれて固化温度はシリコンの融点1414℃へ向かって上がるという特性による。この特性により、接合処理温度を変化させることで、シリコン部品の耐熱温度を1000℃から1300℃程度の間で制御できるという利点がでてくる。
【0018】
三つ目の接合材である二酸化ゲルマニウムを用いたシリコン結晶の接合について述べる。二酸化ゲルマニウム(GeO2)は融点が1116℃で、石英ガラス(二酸化シリコン:SiO2)と同じく固化するとガラスになることが知られている。また二酸化ゲルマニウムは水素ガス中で1000℃程度に加熱すると容易に還元され金属ゲルマニウムとなるために、安定した二酸化ゲルマニウムを保持するには酸化雰囲気で加熱しなければならない。一方、シリコンは酸素や水蒸気の存在下で加熱すると、表面が酸化され二酸化シリコンの薄膜が容易に形成される。この二酸化シリコンと二酸化ゲルマニウムとは相図の上ではゲルマニウム−シリコンのような全率固溶型ではないが、本接合方法は互いが酸化物でしかもガラス化し融合して結合することを利用する。つまり、二酸化ゲルマニウムと二酸化シリコンとの共融混合物を形成し、それを固化させる。
【0019】
次に第二の課題である接合部分にシリコン以外の素材を用いた場合の不純物汚染の解決方法を説明する。シリコン半導体素子は、超高純度シリコン単結晶に特定の元素を極微量添加してその特別な機能を発揮している。そのために素子の製造工程での不純物汚染の回避は最重要命題である。例えば不純物汚染の中でも最も避けなければならないのは、素子の電気的特性に直ちに影響を与える元素周期律表で三価のアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga),インジウム(In)や五価のリン(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)などの元素である。逆に比較的安全な元素は元素周期律表で四価の炭素(C)、ゲルマニウム(Ge)、錫(Sn)、である。これらはシリコンと同属の四価のために電気的に中性で素子の電気的動作に対する影響が最も少ない。これらの中でも特にゲルマニウムは初期の半導体の素材として使われ、最近はシリコン・ゲルマニウム混合結晶の高性能半導体が実用化されている。従ってゲルマニウムはシリコン半導体素子に対する影響が最も少ない元素であり、本発明で半導体製造装置用部品の接合にゲルマニウム又はシリコン・ゲルマニウム合金を見出したことは最良の選択といえる。
【0020】
また接合材に二酸化ゲルマニウムを用いる場合、仮にその微粉末が半導体製造過程で発生した場合は、石英ガラス製部品や冶具を用いた場合と同様な汚染が懸念される。ところが石英ガラス製部品や冶具の場合は全体が石英ガラスでできているが、シリコン結晶接合の場合は全体がシリコンで接合部分のみが二酸化ゲルマニウムである。しかも接合部分の体積や表面積は全体の千分の一以下で更に露出部分は殆ど無いために、二酸化ゲルマニウムによる汚染は最小限に留まることになる。このようなことを勘案すると、二酸化ゲルマニウム接合材のシリコン半導体素子への影響は、ゲルマニウム及びシリコン・ゲルマニウム合金に次いで不純物汚染の問題は少ないと予想できる。
【0021】
次に第三の課題であるシリコン結晶接合時に互いの表面を接合に適した状態を保つことの解決方法について説明する。
まず接合材にゲルマニウム及びシリコン・ゲルマニウム合金を用いる場合は、シリコン結晶の接合表面が酸化しないような工程を踏むことや雰囲気ガスを選択することである。特にシリコンは水蒸気存在下では500℃前後から、酸素雰囲気では1000℃前後から酸化が始まり、シリコン結晶表面は安定な酸化膜で覆われシリコン同士の接合はできない。そこでこれらの酸化膜形成を避けるために、接合処理電気炉の接合部品収納容器内は常温より400℃程度まで真空ポンプを用いて高真空を保持する。その後高純度不活性ガス又は高純度水素ガス又はそれらの混合ガスを導入して一気圧にし、これらのガスを常時流しながら温度を400℃程度から接合温度の1000℃以上に上昇させる。このようにすると、シリコン表面の酸化膜形成は最小限に抑えられる。特に高純度水素ガスにより還元雰囲気にすると、接合材のゲルマニウムの酸化物形成を抑制できゲルマニウム又はシリコン・ゲルマニウム合金の接合材を用いたシリコン結晶接合を効果的に行うことができる。
【0022】
一方、接合材に二酸化ゲルマニウムを用いる場合は、シリコン結晶の接合表面を故意に酸化させる必要がある。そこでこの場合のシリコン結晶の接合は、高純度酸素雰囲気を保つとともに、温度を二酸化ゲルマニウムの融点1116℃より高く、約1150℃から1200℃程度に保つ必要がある。この温度に上昇する過程でシリコン結晶の接合面には酸化膜が形成され、1116℃以上になると融けた二酸化ゲルマニウムは接合面の隙間に濡れて浸入していく。その後温度を下げると接合面は極薄い二酸化ゲルマニウムガラスとして固化し、双方のシリコン結晶は表面の二酸化シリコンと接着した二酸化ゲルマニウムを介して強固に接合される。
【0023】
次に三種類の接合材の形状について述べる。
シリコン結晶を接合する部分は、シリコン部品の形状、位置関係、力の分布の仕方、精度など、其々異なった様相をとる。従ってそこで使われる接合材の形状は粉末状、ペースト状、薄板状、粒状、球状、棒状、リング状などを呈し、用途に適した形状のものを使用するのが効果的である。
【0024】
ゲルマニウム及びシリコン・ゲルマニウム合金及び二酸化ゲルマニウムの各々の粉末状のものは市販されているので、それらをそのまま用いればよい。ペースト状にするには市販の粉末を1ミクロン以下程度に粉砕し、これにメタノールなどの有機溶剤を少量添加しペースト状にすればよい。また、これらの接合材の薄板状、粒状、球状、棒状、リング状を得るには一般的には各素材のインゴットを作り、これより切断、研摩などの加工をして作る。しかし、この方法では材料の無駄が多く、加工の手間も多くかかりコスト的に採用することは難しい。そこで本発明者等は無機の結晶・ガラス素材を、鋳物を作る場合と同じように自在な形状にする技術「整形結晶化技術」を保有している。(特許第2947529:整形結晶の製造方法及び装置)この技術を用いることで、三種類の接合材の薄板状、粒状、球状、棒状、リング状は容易に作成でき、しかもこのプロセスでは原料の殆ど全てを利用できるためにコストも下がり、接合材への利用方法として最適と思われる。
【0025】
以下、各種形状のシリコン結晶同士を接合する方法について具体的に説明する。
図2は棒状シリコン結晶同士を接合する方法を説明するための図である。ここでAは斜視図であり、B〜Dは棒状シリコン結晶の軸線を通る鉛直面で切断した断面図である。A、Bに示すように、一方の棒状シリコン結晶1に窪み1aを設け、他方の棒状シリコン結晶2に突起2aを設ける。また突起2aの先端には、接合材3を入れるための窪み2bを設ける。窪み1aの表面(内面)、及び突起2aの表面(外面)が接合面となり、接合材3は接合面の近傍に配置される。
【0026】
Bに示すように窪み2bの内部に接合材3を入れた後に、Cに示すように棒状シリコン結晶1及び2を嵌め合わせる。この状態を保ったままで電気炉に入れ、接合材3に適した温度と雰囲気にする。所定の条件に達すると接合材3が融け、Dに示すように接合面の隙間4に浸入する。この状態から冷却することで棒状シリコン結晶1と2とは強固に接合される。なお、ここでは断面が円形の棒状シリコン結晶を示したが、四角形、三角形、或いはその他の形状でも同様な接合ができる。
【0027】
図3は棒状シリコン結晶の上下両端に板状シリコン結晶を接合する方法の一例を説明するための図である。ここでAは上端に接合する板状結晶の平面図であり、Bは棒状結晶を板状結晶に嵌め込んだ状態を棒状結晶の軸線を含む鉛直面で切断した断面図である。
【0028】
A、Bに示すように、上端に接合する板状結晶11には棒状結晶13を嵌め込むための穴11bと、その穴11bの中心部の上方に連通した小径の穴11aとを設ける。下端に接合する板状結晶12にも同様に棒状結晶13を嵌め込むための穴(図示せず)を設ける。棒状結晶13の下端には接合材14を入れるための窪み13aを設ける。
【0029】
Bに示すように、窪み13a内に接合材14を入れ、板状結晶12に嵌め込んで固定する。また、棒状結晶13の上端に板状結晶11を嵌め込み、その上端の穴11aに接合材14を入れる。この状態を保ったまま電気炉に入れ、接合材14に適した温度と雰囲気にし、所定の条件に達すると、接合材14が融けて接合面の隙間に浸入する。この状態から冷却することで、棒状シリコン結晶13と板状シリコン結晶11及び12とは強固に接合される。なお、ここでも棒状結晶13の断面形状は円形に限らず、四角形、三角形、或いはその他の形状でも同様な接合ができる。また板状結晶11及び12の平面形状は矩形に限らず、円形、三角形、或いはその他の形状でもよい。
【0030】
図4は棒状シリコン結晶の上下両端に板状シリコン結晶を接合する方法の別の一例を説明するための図である。ここでAは上端に接合する板状結晶の平面図であり、Bは棒状結晶を板状結晶に嵌め込んだ状態を棒状結晶の軸線を含む鉛直面で切断した断面図である。
【0031】
Aに示すように、上端に接合する板状結晶11には棒状結晶23を嵌め込むための穴21bと、その穴21bの周縁部の上方に連通した4個の小径の穴21aとを設ける。下端に接合する板状結晶22にも同様に棒状結晶23を嵌め込むための穴(図示せず)と、環状の窪み22aとを設ける。環状の窪み22aは棒状結晶13を嵌め込むための穴の開口部の口径を拡げたものとも言える。
【0032】
Bに示すように、窪み22a内に接合材24を入れ、棒状結晶23を嵌め込んで固定する。また、棒状結晶23の上端に板状結晶21を嵌め込み、その上端の窪み21aに接合材24を入れる。この状態を保ったまま電気炉に入れ、接合材24に適した温度と雰囲気にし、所定の条件に達すると、接合材24が融けて接合面の隙間に浸入する。この状態から冷却することで、棒状シリコン結晶23と板状シリコン結晶21及び22とは強固に接合される。ここでも棒状結晶23の断面形状は円形に限らず、四角形、三角形、或いはその他の形状でも同様な接合ができる。また板状結晶22及び22の平面形状は矩形に限らず、円形、三角形、或いはその他の形状でもよい。
【0033】
図5は棒状シリコン結晶を横にした状態で板状シリコン結晶を接合する方法を説明するための図である。棒状シリコン結晶33の左端は板状シリコン結晶31を貫通した状態で固定され、右端は板状シリコン結晶32内に固定される。この図において、Aは板状シリコン結晶31及び32を棒状シリコン結晶33に嵌め込んだ状態を板状シリコン結晶31の厚さ方向の中心部を通る鉛直面で切断した断面図であり、Bは棒状シリコン結晶33の軸線を含む鉛直面で切断した断面図である。
【0034】
板状結晶31には棒状シリコン結晶33を嵌め込むための貫通穴(図示せず)を空け、その貫通穴の奥行き方向(板状結晶31の厚さ方向)の中心部上に接合材34を入れるための小穴31aを空ける。一方、板状結晶32には棒状シリコン結晶33を嵌め込むための貫通していない穴を空ける。また、棒状シリコン結晶33の右端には接合材34を入れるための窪み33aを設ける。
【0035】
棒状シリコン結晶33の右端の窪み33a内に接合材34を入れた後に右端を板状シリコン結晶32に嵌め込み、左側を板状シリコン結晶31に嵌め込み、左端を貫通させる。次いで板状結晶31の小穴31a内に接合材34を入れる。この状態を保ったまま電気炉に入れ、接合材34に適した温度と雰囲気にし、所定の条件に達すると、接合材が融けて接合面の隙間に浸入する。この状態から冷却することで、棒状シリコン結晶33と板状シリコン結晶31及び32とは強固に接合される。ここでも棒状結晶33の断面形状は円形に限らず、四角形、三角形、或いはその他の形状でも同様な接合ができる。
【0036】
図6は2枚の円板状シリコン結晶を接合する例を示す。この図においてAは円板状シリコン結晶41の平面図及び断面図並びにその上に配置される円板状シリコン結晶42の断面図であり、B、Cは接合の工程を示す図である。
【0037】
Aに示すように、一方の円板状シリコン結晶41の表面には接合材を入れるための半球状の窪み41aを中心部に1個、周辺部に8個の計9個設ける。そして、窪み41a内に接合材を入れた後に円板状シリコン結晶41の上面に平坦な円板状シリコン結晶42を重ねる。これによりBに示す状態となる。次いで、重ねた状態を保持したまま図示しない手段により上下を反転させ、Cに示す状態にする。この反転により、接合材43は接合面である板状シリコン結晶41と42の接触面よりも上方に存在するようになる。ここで円板状シリコン結晶41の中央に錘(図示せず)を載せておく。この状態を保ったまま電気炉に入れ、接合材43に適した温度と雰囲気にし、所定の条件に達すると、接合材43が融けて接合面の隙間に浸入する。この状態から冷却することで、2枚の板状シリコン結晶41及び42は強固に接合される。ここで円板状結晶41、42に限らず、平面形状が四角形、三角形、或いはその他の形状でも同様な接合ができる。また窪み41aの形状も半球状に限らず、他の形状でもよい。
【0038】
図7は電流経路を定めるスリットが形成された角板状シリコン結晶に棒状のシリコン製電極を接合してシリコンヒーターを製作する方法を説明するための図である。この図において、Aは角板状シリコン結晶の平面図であり、Bは接合工程を示す正面図である。
【0039】
Aに示すように、角板状シリコン結晶51の上面には電流経路を定めるためのスリット51bが形成されている。また、角板状シリコン結晶51の電流経路の両端、即ち角板状シリコン結晶51の上面の対角線上の二つの隅には接合材を入れるための穴51aが形成されている。
【0040】
そしてBに示すように、穴51aの真下にシリコン製電極52が位置するようにシリコン製電極52の上面を角板状シリコン結晶51の下面に接触させる。次いで穴51a内に接合材53を入れ、その状態を保ったまま電気炉に入れ、前述したような接合材に適した温度と雰囲気にし、所定の条件に達すると、接合材53が融けて接合面(シリコン製電極52の上面と角板状シリコン結晶51の下面)の隙間に浸入する。この状態から冷却することで、角板状シリコン結晶51と電極52とは強固に接合される。ここで角板状結晶51に限らず、平面形状が円形、三角形、或いはその他の形状でも同様な接合ができる。
【0041】
次に本発明の実施例について説明する。本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0042】
〔実施例1〕
接合材に市販の99.999%(5N)ゲルマニウム粉末を用いた。このゲルマニウム粉末約100mgを大きさが縦40mm×横50mm×厚さ24mmの矩形板状シリコン単結晶の中央に均一に配置し、この上に直径20mm、高さ30mmの円柱状シリコン単結晶を載せた。これを電気炉に入れ、真空ポンプで排気した後、炉内部を水素ガス約20%添加したアルゴンガスで1気圧にし、温度を毎時700℃の速度で1000℃まで上げた。このガスは1000℃までは毎分500ccを継続して流した。
【0043】
1000℃に到達した時点で、矩形板状シリコン単結晶と円柱状シリコン単結晶に挟まれたゲルマニウムはその融点936℃より約60℃以上高くなっている。ここで円柱状シリコン単結晶の上部から軽く力をかけた後、毎時約1000℃の速度で常温へ戻した。取り出された矩形板状シリコン単結晶と円柱状シリコン単結晶との接着強さを測定したところ10kg/cm2以上となり、強固に接合されていることを確認した。
【0044】
〔実施例2〕
接合材に市販の99.99%(4N)二酸化ゲルマニウム粉末を用いた。この二酸化ゲルマニウム粉末約50mgを大きさが縦40mm×横50mm×厚さ24mmの矩形板状シリコン単結晶の中央に均一に配置し、この上に直径20mm、高さ30mmの円柱状シリコン単結晶を載せた。これを電気炉に入れ、真空ポンプで排気した後、炉内部を酸素ガス約20%添加した純水アルゴンガスで1気圧にし、温度を毎時700℃の速度で1200℃まで上げた。このガスは1200℃までは毎分500ccを継続して流した。
【0045】
1200℃に到達した時点で、矩形板状シリコン単結晶と円柱状シリコン単結晶に挟まれた二酸化ゲルマニウムはその融点1116℃より約80℃以上高くなっている。ここで円柱状シリコン単結晶上部から軽く力をかけた後、毎時約1000℃の速度で常温へ戻した。取り出された矩形板状シリコン単結晶と円柱状シリコン単結晶との接着強さを測定したところ、実施例1と同じく10kg/cm2以上となり、強固に接合されていることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】ゲルマニウム−シリコンの相図である。
【図2】棒状シリコン結晶同士を接合する方法を説明するための図である。
【図3】棒状シリコン結晶の上下両端に板状シリコン結晶を接合する方法の一例を説明するための図である。
【図4】棒状シリコン結晶の上下両端に板状シリコン結晶を接合する方法の別の一例を説明するための図である。
【図5】棒状シリコン結晶を横にした状態で板状シリコン結晶を接合する方法を説明するための図である。
【図6】2枚の円板状シリコン結晶を接合する例を示す図である。
【図7】電流経路を定めるためのスリットが形成された角板状シリコン結晶にシリコン製電極を接合してシリコンヒーターを製作する方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0047】
1,2,13,23,33・・・棒状シリコン結晶、3・・・接合材、4・・・接合面の隙間、11,12,21,22,31,32・・・板状シリコン結晶、41,42・・・円板状シリコン結晶、51・・・角板状シリコン結晶、52・・・シリコン製電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンの融点よりも低い温度でシリコンと融合する接合材を接合対象である複数のシリコン結晶の間に配置する工程と、前記接合材及びシリコン結晶を前記接合材の融点以上かつシリコンの融点未満の温度に加熱する工程と、その加熱された接合材及びシリコン結晶を冷却し固化させる工程とを有するシリコン結晶を接合する方法。
【請求項2】
請求項1記載のシリコン結晶を接合する方法において、前記接合材がゲルマニウムであることを特徴とするシリコン結晶を接合する方法。
【請求項3】
請求項1記載のシリコン結晶を接合する方法において、前記接合材がシリコン・ゲルマニウム合金であることを特徴とするシリコン結晶を接合する方法。
【請求項4】
請求項1記載のシリコン結晶を接合する方法において、前記接合材が二酸化ゲルマニウムであることを特徴とするシリコン結晶を接合する方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のシリコン結晶を接合する方法において、前記接合材の形状が粉末状又はペースト状又は薄板状又は粒状又は棒状又はリング状であることを特徴とするシリコン結晶を接合する方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のシリコン結晶を接合する方法において、前記複数の結晶の一方が前記接合材を入れるための窪みを有することを特徴とするシリコン結晶を接合する方法。
【請求項7】
請求項2又は3記載のシリコン結晶を接合する方法において、前記接合材及びシリコン結晶を不活性ガス又は水素ガス又はそれらの混合ガス雰囲気下で加熱することを特徴とするシリコン結晶を接合する方法。
【請求項8】
請求項4記載のシリコン結晶を接合する方法において、前記接合材及びシリコン結晶を酸素ガス又は水蒸気又はそれらの混合ガス雰囲気下で加熱することを特徴とするシリコン結晶を接合する方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかの方法により接合された複数のシリコン結晶を有するシリコン結晶製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−300425(P2008−300425A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142133(P2007−142133)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(591054864)ユニオンマテリアル株式会社 (13)