説明

シリコーンレジン組成物、硬化性樹脂組成物、および硬化樹脂

【課題】 溶融粘度が低く、有機樹脂への分散性や反応性が良好であるシリコーンレジン組成物、成形性が良好であり、優れた難燃性を有する硬化樹脂を形成し、ハロゲン化エポキシ樹脂やアンチモン系酸化物を含有していないので、人体・環境に対する悪影響が少ない硬化性樹脂組成物、および人体・環境に対する悪影響が少なく、優れた難燃性を有する硬化樹脂を提供する。
【解決手段】 (A)平均単位式:
(R1SiO3/2)a(R22SiO2/2)b(R33SiO1/2)c(SiO4/2)d(XO1/2)e
で示され、軟化点が25℃を超えるシリコーンレジンと(B)エポキシ基含有アルコキシシランとの混合物もしくは反応混合物からなるシリコーンレジン組成物、(I)硬化性樹脂、(II)前記シリコーンレジン組成物からなる硬化性樹脂組成物、および該硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンレジン組成物、硬化性樹脂組成物、および硬化樹脂に関し、詳しくは、溶融粘度が低く、有機樹脂への分散性や反応性が良好であるシリコーンレジン組成物、成形性が良好であり、優れた難燃性を有する硬化樹脂を形成し、ハロゲン化エポキシ樹脂やアンチモン系酸化物を含有していないので、人体・環境に対する悪影響が少ない硬化性樹脂組成物、および人体・環境に対する悪影響が少なく、優れた難燃性を有する硬化樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、原料であるシランあるいはシロキサンの組み合わせや反応条件によって、任意の分子量、軟化点、ガラス転移点を有するシリコーンレジンを調製することができるが、その溶融粘度を調整することは困難であり、それを有機樹脂に配合した場合の分散性や反応性を調節することは困難であった。
【0003】
一方、硬化性樹脂組成物は、誘電特性、体積抵抗率、絶縁破壊強度等の電気特性、および曲げ強度、圧縮強度、衝撃強度等の機械的特性が優れる硬化樹脂を形成できるが、その難燃性を向上させるためには、ハロゲン含有化合物や三酸化アンチモン等のアンチモン系酸化物を配合しなければならず、アンチモン系酸化物の粉体毒性、あるいは得られる硬化樹脂が燃焼時に有毒ガスを発生することから、人体、環境に対する影響が懸念されている。
【0004】
硬化性樹脂にシリコーンレジンを配合して、硬化前の流動性を向上させ、硬化樹脂の可撓性、耐湿性、耐熱衝撃性を向上させることが特許文献2により開示されており、また、硬化性樹脂にシリコーンレジンを配合して、硬化樹脂の難燃性を向上させることが特許文献3および4により開示されている。しかし、特許文献2により開示される硬化性樹脂組成物では、得られる硬化樹脂の難燃性が不十分であるという問題があり、一方、特許文献3および4により開示される硬化性樹脂組成物は、成形時に金型汚れを発生したりして成形性が悪いという問題があった。
【0005】
特許文献5では、エポキシキ含有シリコーンレジンにさらにシリコーンレジンを硬化性樹脂に配合して、機械的物性と配合性を改良する方法が例示されている。しかし、その効果は十分ではなかった。
【特許文献1】特開平6−298940号公報
【特許文献2】特開平6−298897号公報
【特許文献3】特開平11−222559号公報
【特許文献4】特開平11−323086号公報
【特許文献5】特開2003−253122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、溶融粘度が低く、有機樹脂への分散性や反応性が良好であるシリコーンレジン組成物、成形性が良好であり、優れた難燃性を有する硬化樹脂を形成し、ハロゲン化エポキシ樹脂やアンチモン系酸化物を含有していないので、人体・環境に対する悪影響が少ない硬化性樹脂組成物、および人体・環境に対する悪影響が少なく、優れた難燃性を有する硬化樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシリコーンレジン組成物は、(A)平均単位式:
(R1SiO3/2)a(R22SiO2/2)b(R33SiO1/2)c(SiO4/2)d(XO1/2)e
{式中、R1、R2、およびR3は同じか、または相異なる一価炭化水素基もしくはエポキシ基含有有機基であり、但し、分子中のR1〜R3の合計数に対して、0.1〜40モル%は前記エポキシ基含有有機基であり、10モル%以上はフェニル基であり、Xは水素原子またはアルキル基であり、aは正数であり、bは0または正数であり、cは0または正数であり、dは0または正数であり、eは0または正数であり、かつb/aは0〜10の数であり、c/aは0〜0.5の数であり、d/(a+b+c+d)は0〜0.3の数であり、e/(a+b+c+d)は0〜0.4の数である。}
で示され、軟化点が25℃を超えるシリコーンレジンと
(B)エポキシ基含有アルコキシシラン
との混合物あるいは反応混合物からなることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、(I)硬化性樹脂、および(II)上記のシリコーンレジン組成物からなることを特徴とする。
また、本発明の硬化樹脂は、上記の硬化性樹脂組成物を硬化してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシリコーンレジン組成物は、溶融粘度が低く、有機樹脂への分散性や反応性が良好である。また、本発明の硬化性樹脂組成物は、成形性が良好であり、優れた難燃性を有する硬化樹脂を形成し、ハロゲン化エポキシ樹脂やアンチモン系酸化物を含有していないので、人体・環境に対する悪影響が少ない。また、本発明の硬化樹脂は、人体・環境に対する悪影響が少なく、優れた難燃性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
はじめに、本発明のシリコーンレジン組成物を詳細に説明する。
(A)成分は、平均単位式:
(R1SiO3/2)a(R22SiO2/2)b(R33SiO1/2)c(SiO4/2)d(XO1/2)e
で示され、軟化点が25℃を超えるシリコーンレジンである。上式中、R1、R2、およびR3は同じか、または相異なる一価炭化水素基もしくはエポキシ基含有有機基である。この一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ノナフルオロブチルエチル基等のハロゲン化アルキル基が例示される。また、このエポキシ含有有機基としては、2,3−エポキシプロピル基、3,4−エポキシブチル基、4,5−エポキシペンチル基等のエポキシアルキル基;2−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基、4−グリシドキシブチル基等のグリシドキシアルキル基;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基等のエポキシシクロヘキシルアルキル基が例示される。但し、分子中のR1〜R3の合計数に対して0.1〜40モル%は前記のエポキシ基含有有機基である。これは、エポキシ基含有有機基の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られるシリコーンレジン組成物を有機樹脂に配合した場合に、その有機樹脂組成物の成形時にブリードしたり、また、その成形物の可撓性、耐湿性、および耐熱衝撃性が低下する傾向があるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、その成形物の機械的特性が低下する傾向があるからである。また、有機樹脂に対する親和性が優れることから、R1〜R3の合計数に対して10モル%以上がフェニル基であることが必要である。特に、R1の10モル%以上がフェニル基であることが好ましく、さらには、R1の30モル%以上がフェニル基であることが好ましい。また、上式中のXは水素原子またはアルキル基であり、このアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基が例示される。
【0011】
また、上式中のaは正数であり、bは0または正数であり、cは0または正数であり、dは0または正数であり、eは0または正数であり、かつb/aは0〜10の数であり、c/aは0〜0.5の数であり、d/(a+b+c+d)は0〜0.3の数であり、e/(a+b+c+d)は0〜0.4の数である。これは、b/aが10を超えるシリコーンレジンは、その軟化点が25℃以下となったり、また、有機樹脂との親和性が低くなるからである。また、c/(a+b+c)が0.3を超えるシリコーンレジンは有機樹脂に対する分散性が低下する傾向があるからである。
【0012】
このような(A)成分の重量平均分子量は限定されないが、500〜50,000の範囲内であることが好ましく、特には、500〜10,000の範囲内であることが好ましい。また、(A)成分の軟化点は25℃を超えれば特に限定されないが、好ましくは40〜250℃の範囲内であり、特に好ましくは40〜150℃の範囲内である。これは、軟化点が上記範囲の下限未満であるシリコーンレジンは、これを配合する有機樹脂の成形時にブリードして金型を汚染したり、成形物の機械的特性を低下させる傾向があるからであり、一方、上記範囲の上限を超えるシリコーンレジンは、有機樹脂に均一に分散させることが困難となる傾向があるからである。
【0013】
このような(A)成分のシリコーンレジンを調製する方法は限定されないが、例えば、(A')(i)式:R4SiO3/2(式中、R4は一価炭化水素基である。)で示される単位、(ii)式:R52SiO2/2(式中、R5は同じか、または相異なる一価炭化水素基である。)で示される単位、(iii)式:R63SiO1/2(式中、R6は同じか、または相異なる一価炭化水素基である。)で示される単位、および(iv)式:SiO4/2で示される単位からなる群より選択される少なくとも1種の単位を有するシランもしくはシロキサンの1種または2種以上の混合物と、(A")一般式:R78fSi(OR9)(3-f)(式中、R7はエポキシ基含有有機基であり、R8は一価炭化水素基であり、R9はアルキル基であり、fは0、1、または2である。)で示されるエポキシ基含有アルコキシシランもしくはその部分加水分解物を塩基性触媒により反応させる方法が好ましい。
【0014】
上記の製造方法において、(A')成分は主原料であり、上記(i)〜(iv)で示される単位からなる群より選択される少なくとも1種の単位を有するシランもしくはシロキサンの1種または2種以上の混合物である。このような(A')成分としては、(i)で示される単位のみからなるシランまたはシロキサン、(ii)で示される単位のみからなるシランまたはシロキサン、(iii)で示される単位のみからなるシランまたはシロキサン、(iv)で示される単位のみからなるシランまたはシロキサン、(i)で示される単位と(ii)で示される単位からなるシロキサン、(i)で示される単位と(iii)で示される単位からなるシロキサン、(i)で示される単位と(iv)で示される単位からなるシロキサン、(i)で示される単位と(ii)で示される単位と(iii)で示される単位からなるシロキサン、(i)で示される単位と(ii)で示される単位と(iv)で示される単位からなるシロキサン、(i)で示される単位と(ii)で示される単位と(iii)で示される単位と(iv)で示される単位からなるシロキサンが例示される。なお、式中のR4、R5、およびR6は同じか、または相異なる一価炭化水素基であり、前記R1、R2、またはR3と同様の一価炭化水素基が例示される。R4の10モル%以上がフェニル基であることが好ましく、特に、R4の30モル%以上がフェニル基であることが好ましい。
【0015】
このような(A')成分のシランもしくはシロキサンとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、これらの加水分解縮合物が例示される。
【0016】
また、上記の製造方法において、(A")成分はエポキシ基含有有機基を導入するための成分であり、一般式:R78fSi(OR9)(3-f)で示されるエポキシ基含有アルコキシシランもしくはその部分加水分解物である。式中のR7はエポキシ基含有有機基であり、前記R1、R2、またはR3と同様のエポキシ基含有有機基が例示される。また、式中のR8は一価炭化水素基であり、前記R1、R2、またはR3と同様の一価炭化水素基が例示される。また、式中のR9はアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基が例示される。また、式中のfは0、1、または2であり、好ましくは0である。
【0017】
このようなエポキシ基含有アルコキシシランとしては、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジブトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(フェニル)ジエトキシシラン、2,3−エポキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、2,3−エポキシプロピル(フェニル)ジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2,3−エポキシプロピルトリメトキシシラン、2,3−エポキシプロピルトリエトキシシランが例示される。
【0018】
上記の製造方法では、(A')成分と(A")成分を塩基性触媒により反応させる。この塩基性触媒は、(A')成分と(A")成分を共加水分解したり、縮合反応させたり、さらには平衡反応させるための触媒であり、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物;ナトリウム−tert−ブトキシド、カリウム−tert−ブトキシド、セシウム−tert−ブトキシド等のアルカリ金属のアルコキシド;ナトリウムシラノレート化合物、カリウムシラノレート化合物、セシウムシラノレート化合物等のアルカリ金属のシラノール化合物が挙げられ、好ましくは、カリウム系あるいはセシウム系の塩基性触媒である。(A')成分と(A")成分を共加水分解・縮合反応させるために、必要に応じて水を添加してもよい。また、(A')成分と(A")成分を反応させた後、必要に応じて有機溶剤により反応系中の固形分濃度を調節し、さらに反応させてもよい。
【0019】
上記の製造方法では、平衡化反応により、シロキサン結合の切断および再結合がランダムに起こり、その結果、得られたエポキシ基含有シリコーンレジンは平衡状態となる。この反応温度は、反応温度が低いと平衡化反応が十分に進行せず、また反応温度が高すぎるとケイ素原子結合有機基が熱分解することから、80℃〜200℃であることが好ましく、特に100℃〜150℃であることが好ましい。また、80〜200℃の沸点を有する有機溶剤を選択することにより、還流温度で容易に平衡化反応を行うことができる。なお、平衡化反応は、塩基性触媒を中和することにより停止することができる。この中和のため、炭酸ガス、カルボン酸等の弱酸を添加することが好ましい。中和により生成した塩は、濾過または水洗することにより簡単に除去することができる。
【0020】
(B)成分はエポキシ基含有アルコキシシランであり、本発明のシリコーンレジン組成物の有機樹脂への分散性を向上させるための成分である。このような(B)成分としては、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジブトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(フェニル)ジエトキシシラン、2,3−エポキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、2,3−エポキシプロピル(フェニル)ジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2,3−エポキシプロピルトリメトキシシラン、2,3−エポキシプロピルトリエトキシシランが例示される。特に、入手のしやすさから、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0021】
本発明のシリコーンレジン組成物において、(B)成分の含有量は限定されないが、(A)成分100重量部に対して0.15〜100重量部の範囲内であることが好ましい。これは、(B)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られるシリコーンレジン組成物の有機樹脂への分散性が低下する恐れがあるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られるシリコーンレジン組成物が液状となり、これを含有する有機樹脂の成形性が低下する恐れがあるからである。
【0022】
本発明のシリコーンレジン組成物を調製する方法は限定されないが、(A)成分と(B)成分を溶融状態で混合する方法、(A)成分の有機溶剤溶液に(B)成分を混合したのち、有機溶剤を除去する方法が挙げられる。その際に用いることのできる混合装置としては、一軸または二軸の連続混合機、二本ロール、ロスミキサー、ニーダミキサー、脱溶剤が可能な減圧装置を備えた混合機が例示され、また、有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤が例示される。
【0023】
このような本発明のシリコーンレジン組成物の100℃における溶融粘度は限定されないが、5万mPa・s以下であることが好ましく、特に、0.5mPa・s以下であることが好ましい。また、本発明のシリコーンレジン組成物の140℃における溶融粘度は限定されないが、5000mPa・s以下であることが好ましい。また、本発明のシリコーンレジン組成物は25℃において固体状であることが好ましく、その融点は40℃〜150℃の範囲内であることが好ましい。
【0024】
このような本発明のシリコーンレジン組成物は、有機樹脂に耐熱性、難燃性、撥水性等を付与するための添加剤として有用である。本発明のシリコーンレジン組成物を配合し得る有機樹脂としては、硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が挙げられ、硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、キシレン樹脂、キシレン−ホルムアルデヒド樹脂、ケトン−ホルムアルデヒド樹脂、フラン樹脂、尿素樹脂、イミド樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アニリン樹脂、スルホン−アミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、これらの共重合体樹脂、およびこれらの樹脂の少なくとも2種以上の混合物が例示され、熱可塑性樹脂としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1ペンテン等のα−オレフィンの単独重合体または共重合体からなるポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、これらα−オレフィンと酢酸ビニル、メチルメタクリレート、マレイン酸等のα−オレフィン以外の単量体との共重合体からなるエチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のオレフィン系樹脂;アクリル酸、メタアクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類等のアクリル系単量体の単独重合体または共重合体、これらのアクリル系単量体とスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のビニル系単量体、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、無水マレイミド等のマレイミド系単量体との共重合体等のアクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル系樹脂;ポリスチレン、高衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/アクリルゴム/スチレン共重合体、アクリロニトリル/エチレンプロピレンゴム/スチレン共重合体等のスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート等のポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66、ナイロン6/12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂;ポリアセタール等のポリオキシアルキレン系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;ポリサルフォン系樹脂;ポリエーテルサルフォン系樹脂;ポリフェニレンサルファイド等のポリアリーレンサルファイド系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン系樹脂;液晶ポリエステル系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、フッ素系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマー樹脂;およびこれら熱可塑性樹脂の二種以上の混合物や共重合体が例示される。
【0025】
本発明のシリコーンレジン組成物を有機樹脂へ配合する場合、その添加量は限定されないが、有機樹脂100重量部に対して0.1〜500重量部の範囲内であることが好ましく、特に、0.1〜100重量部、さらには、0.5〜50重量部の範囲内であることが好ましい。
【0026】
次に、本発明の硬化性樹脂組成物について詳細に説明する。(I)成分の硬化性樹脂は本組成物の主剤であり、硬化性のものであれば特に限定されず、その硬化方法としては、熱硬化、紫外線または放射線等の高エネルギー線硬化、湿気硬化、縮合型硬化、付加反応硬化が例示される。また、その性状も限定されず、25℃において液状あるいは固体状のいずれの状態であってもよい。このような(I)成分としては、前記の硬化性樹脂が例示され、特に、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、またはシリコーン−エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0027】
このエポキシ樹脂はグリシジル基や脂環式エポキシ基を有するものであれば特に限定されないが、具体的には、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ポリビニルフェノール型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジフェニルサルホン型エポキシ樹脂、トリフェノールアルカン型エポキシ樹脂、クレゾール・ナフトール共縮合型エポキシ樹脂、ビスフェニルエチレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、スピロクマロン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂、イミド基含有エポキシ樹脂、マレイミド基含有エポキシ樹脂、アリル基変性エポキシ樹脂、重質油やピッチ類を原料としたエポキシ樹脂、さらには得られる硬化物の撥水性を向上させ、またその硬化物を低応力するために、シラン、ポリアルキルシロキサン、あるいはフルオロアルキル基を化学的に結合したエポキシ樹脂が例示される。特に、結晶性樹脂であることが好ましく、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ビフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニルスルホン型エポキシ樹脂が例示され、具体的には、一般式:
【化1】

で示されるビフェニル型エポキシ樹脂、一般式:
【化2】

で示されるビフェニル型エポキシ樹脂、一般式:
【化3】

で示されるビスフェノールA型エポキシ樹脂、一般式:
【化4】

で示されるビスフェノールF型エポキシ樹脂、一般式:
【化5】

で示されるスチルベン型エポキシ樹脂、一般式:
【化6】

で示されるビフェニルエーテル型エポキシ樹脂、一般式:
【化7】

で示されるビフェニルスルホン型エポキシ樹脂が例示される。上式中、Rは同じか、または相異なる水素原子もしくはアルキル基であり、Rのアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が例示される。また、上式中nは正の整数である。(I)成分の結晶性エポキシ樹脂としては、本組成物の成形性が良好で、かつ、得られる硬化物の難燃性が良好であることから、ビフェニル型エポキシ樹脂が好ましい。このビフェニル型エポキシ樹脂としては、4,4'−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ビフェニル、4,4'−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3',5,5'−テトラメチルビフェニル、4,4'−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3',5,5'−テトラエチルビフェニル、4,4'−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3',5,5'−テトラブチルビフェニルが例示され、例えば、油化シェルエポキシ株式会社製のYX4000HKとして入手可能である。
【0028】
また、フェノ−ル樹脂として、具体的には、ポリビニルフェノール型フェノール樹脂、フェノールノボラック型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、ビフェノール型フェノール樹脂、ビフェノールアラルキル型フェノール樹脂、ナフトール型フェノール樹脂、テルペン型フェノール樹脂、フェノールジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂、ナフトールアラルキル型フェノール樹脂、トリフェノールアルカン型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、クレゾール・ナフトール共縮合型フェノール樹脂、キシレン・ナフトール共縮合型フェノール樹脂、重質油やピッチ類を原料としたフェノール樹脂、さらには得られる硬化物の撥水性を向上させ、またその硬化物を低応力するために、シラン、ポリアルキルシロキサン、あるいはフルオロアルキル基を化学的に結合したフェノール樹脂が例示される。フェノール樹脂としては、その種類は特に限定されない。フェノールアラルキル型やビフェノール型、ナフトール型、ノボラック型などが例示される。本組成物を硬化して得られる硬化物の難燃性が優れることから、フェノールアラルキル型フェノール樹脂が好ましい。このフェノールアラルキル型フェノール樹脂としては、一般式:
【化8】

で示されるフェノールアラルキル型フェノール樹脂、一般式:
【化9】

で示されるフェノールアラルキル型フェノール樹脂、一般式:
【化10】

で示されるフェノールアラルキル型フェノール樹脂、一般式:
【化11】

で示されるフェノールアラルキル型フェノール樹脂が例示される。上式中のnは正の整数である。このようなフェノールアラルキル型フェノール樹脂は、例えば、三井化学株式会社製のミレックスXLC−3Lとして入手可能である。
【0029】
また、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の組み合わせによる硬化性樹脂組成物が好ましい。エポキシ樹脂としては、結晶性ビフェニル型エポキシ樹脂が成形性の点で好ましく、さらには、フェノール樹脂として、特に、フェノールアラルキル型フェノール樹脂との組み合わせが好ましい。この場合、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の配合比は特に限定されないが、エポキシ官能基数/フェノール官能基数の比が0.5〜2.5の範囲内であることが好ましい。また、エポキシ樹脂とフェノール樹脂は予め混合されていてもよく、(II)成分との混合時に別々に配合されても良い。
【0030】
(II)成分は本組成物の成形性を低下させることなく、本組成物を硬化して得られる硬化樹脂の難燃性を向上させるための成分であり、前記のシリコーンレジン組成物である。このシリコーンレジン組成物は前述の通りである。
【0031】
本発明の硬化性樹脂組成物において、(II)成分の含有量は特に限定されないが、(I)成分100重量部に対して0.1〜500重量部の範囲内であることが好ましく、特に、0.1〜100重量部、さらには、0.5〜50重量部の範囲内であることが好ましい。
【0032】
本組成物には、本発明の目的を損なわない限りその他任意の成分として、(III)無機充填剤を含有してもよい。このような(III)成分としては、ガラス繊維、石綿、アルミナ繊維、アルミナとシリカを成分とするセラミック繊維、ボロン繊維、ジルコニア繊維、炭化ケイ素繊維、金属繊維の繊維状充填剤;溶融シリカ、結晶性シリカ、沈澱シリカ、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、酸化亜鉛、焼成クレイ、カーボンブラック、ガラスビーズ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、クレイ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ベリリウム、カオリン、雲母、ジルコニア等の粉粒体状充填剤、およびこれらの2種以上の混合物が例示される。また、(III)成分の平均粒径や形状は限定されないが、成形性が優れることから、平均粒径が0.1〜40μmである球状シリカであることが好ましい。
【0033】
本組成物において、(III)成分の含有量は限定されないが、(I)成分と(II)成分の合計100重量部に対して400〜1,200重量部であることが好ましい。これは、(III)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られる硬化樹脂の熱膨張係数が大きくなり、応力によりクラックが発生しやすくなったり、難燃性が低下するおそれがあるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる組成物の成形性が低下するおそれがあるからである。
【0034】
本組成物において、(I)成分中に(III)成分を良好に分散させ、また(I)成分と(III)成分との親和性を向上させるためにシランカップリング剤、チタネートカップリング剤等のカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有アルコキシシラン;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有アルコキシシラン;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有アルコキシシランが例示される。また、チタネートカップリング剤としては、i−プロポキシチタントリ(i−イソステアレート)が例示される。
【0035】
また、本組成物には、(I)成分の硬化反応を促進させるための硬化促進剤を含有することが好ましい。この硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフイン・トリフェニルボレート、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレート等のリン系化合物;トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン等の第3級アミン化合物;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物が挙げられる。
【0036】
本組成物には、必要に応じて、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、有機合成ゴム、シリコーン系等の低応力化剤;カルナバワックス、高級脂肪酸、合成ワックス等のワックス類;カーボンブラック等の着色剤;ハロゲントラップ剤等を含有してもよい。
【0037】
本組成物を調製する方法は限定されないが、(I)成分と(II)成分、およびその他任意の成分を均一に混合することにより調製できる。また、任意の成分として(III)成分を配合する場合には、(I)成分に(III)成分を混合した後、(II)成分やその他任意の成分を均一に混合する方法が例示され、その際、(I)成分と(III)成分にカップリング剤を添加してインテグラルブレンドする方法、予め(III)成分をカップリング剤で表面処理した後、(I)成分と混合する方法が例示される。また、本組成物を調製するための装置としては、一軸または二軸の連続混合機、二本ロール、ロスミキサー、ニーダミキサーが例示される。
【0038】
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化前には優れた流動性を有し、硬化後に得られる硬化樹脂は優れた難燃性を有するので、トランスファーモールド、インジェクションモールド、ポッティング、キャスティング、粉体塗装、浸漬塗布、滴下等の方法によって、これを電気・電子素子用封止樹脂組成物、塗料、コーティング剤、接着剤等に使用することができる。特に、本発明の硬化性樹脂組成物はトランスファープレスによる半導体封止用途に好適である。
【実施例】
【0039】
本発明のシリコーンレジン組成物、硬化性樹脂組成物、および硬化樹脂を実施例により詳細に説明する。なお、実施例中の粘度は25℃における値であり、式中、Meはメチル基を示し、Phはフェニル基を示し、Epは3−グリシドキシプロピル基を示し、Prはイソプロピル基を示す。
【0040】
また、シリコーンレジンおよびシリコーンレジン組成物の特性は次のようにして測定した。
・軟化点:融点測定機(株式会社柳本製作所製のmicro melting point apparatus)を用いて、昇温速度1℃/分で加熱し、シリコーンレジンが融解し液滴に変化した時の温度を軟化点とした。
・溶融粘度:米国ブルックフィールド(Brookfield)社製のモデルDV−III Programable Rheometerを使用してシリコーンレジンを室温から昇温速度2℃/1分で加熱し、100℃、および160℃で20分間保持したときのそれぞれの温度における溶融粘度を測定した。
・粘度:回転粘度計(芝浦システム株式会社製のビスメトロンVG−DA、ローター:No.4、回転数:60rpm)により粘度を測定した。
【0041】
また、硬化性樹脂組成物、およびその硬化樹脂の特性は、次の方法により測定した。なお、硬化性樹脂組成物は、175℃、2分間、70kgf/cm2の条件下でトランスファープレス成形した後、180℃、5時間の条件でポストキュアした。
[成形性]
・スパイラルフロー:175℃、70kgf/cm2の条件で、EMMI規格に準じた方法により測定した。
・金型汚れ:直径50mm、厚さ2mmの円盤を5ショット連続で成型した後、金型のクロムメッキ表面の曇りを観察し、金型汚れがない場合を○、金型表面に薄く曇りがある場合を△、金型表面に汚れがある場合を×、として評価した。
・バリ:バリ測定金型(20μm深さの溝)での成型時のバリ長さを観察して、バリが2mm以下である場合を○、バリが2mmを超え、10mm以下である場合を△、バリが10mmを超える場合を×、として評価した。
[難燃性]
・LOI:JIS K 7201「酸素指数法によるプラスチックの燃焼試験法」に準じて、酸素指数測定機により、厚さ1/16inch(約1.6mm)の試験片を燃焼するために必要な最低酸素濃度を測定し、試験片5個についての最低酸素濃度の平均値を求めた。
・燃焼時間:米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ・Inc.(Underwriters Laboratories Inc.)が規定している規格UL94(Standard for test for flammability of plastic materials for parts in devices and appliances)に準拠して、厚さ1/16inch(約1.6mm)の試験片を作成し、その燃焼時間(秒)を測定し、試験片5個についての燃焼時間の平均値を求めた。
【0042】
[参考例1]
温度計と還流冷却管を取り付けた2000mlのフラスコに、水250gとトルエン400gを投入し、氷浴で冷却しながらフェニルトリクロロシラン300gとトルエン200gの混合液を滴下した。滴下終了後、6時間加熱還流し、次いで、トルエン溶液を分離した。このトルエン溶液を水により洗液が中性になるまで繰り返し水洗した。その後、このトルエン溶液を減圧下で加熱することによりトルエンを留去して白色固体177.7gを得た。
【0043】
温度計とDean-Stark管と還流冷却管を取り付けた500mlのフラスコに、上記の白色固体116.0gと3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン20.2gとジメチルジメトキシシラン19.1gとトルエン150gと水酸化セシウム0.15gを投入した。次に、この系に水10.0gを加えた後、加熱しながら生成したメタノールと水を留去した。水の留出がなくなってから、この系を冷却し、この系にさらに水10.0gを加えた。次いで、この系を加熱しながら生成したメタノールと水を留去し、更に、6時間加熱還流した。冷却後、この系に酢酸0.08gを投入して中和処理した。次いで、これを80mlの水で3回水洗した。得られたトルエン溶液を、Dean-Stark管を取り付けた500mlのフラスコに投入し、共沸脱した。不純物を濾過し、濾液を減圧下で加熱することによりトルエンを留去して無色透明固体140gを得た。この無色透明固体は、重量平均分子量=2600、軟化点=73℃、エポキシ当量=1620であり、29Si−核磁気共鳴スペクトル分析により、平均単位式:
(PhSiO3/2)0.78(Me2SiO2/2)0.14(EpMeSiO2/2)0.08
で示されるシリコーンレジンであることが確認された。このシリコーンレジンはケイ素原子結合全有機基に対して、3−グリシドキシプロピル基の含有量が7モル%であり、フェニル基の含有量が64モル%であった。
【0044】
[参考例2]
フェニルトリメトキシシランおよびジメチルジメトキシシランを共加水分解縮合反応することにより、数平均分子量が1200、粘度が120mPa・sである、平均単位式:
(PhSiO3/2)0.67(Me2SiO2/2)0.33(MeO1/2)0.74
で示されるシリコーンレジンを調製した。
【0045】
[実施例1]
四つ口フラスコに、参考例1で調製したシリコーンレジン19.0重量部をトルエン100重量部に溶解した後、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1.0重量部を混合した後、110℃/10mmHgの条件で脱溶剤して、固体状のシリコーンレジン組成物を調製した。このシリコーンレジン組成物の溶融粘度、外観を表1に示した。
【0046】
[実施例2]
四つ口フラスコに、参考例1で調製したシリコーンレジン18.0重量部をトルエン100重量部に溶解した後、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2.0重量部を混合した後、110℃/10mmHgの条件で脱溶剤して、固体状のシリコーンレジン組成物を調製した。このシリコーンレジン組成物の溶融粘度、外観を表1に示した。
【0047】
[比較例1]
参考例1で調製したシリコーンレジンの溶融粘度、外観を表1に示した。
【0048】
[比較例2]
参考例1で調製したシリコーンレジン19重量部と参考例2で調製したシリコーンレジン1重量部を30mlの混練機(東洋精機株式会社製のブラベンダー)により、120℃で5分間混合した後、室温冷却してシリコーンレジン組成物を調製した。このシリコーンレジン組成物の溶融粘度、外観を表1に示した。
【0049】
【表1】

【0050】
[実施例3]
芳香族ポリカーボネート樹脂(出光石油化学株式会社製のタフロンA1900)27.5gと実施例1で調製したシリコーンレジン組成物2.5gを30mlの混練機(東洋精機株式会社製のブラベンダー)により、280℃で5分間混合した後、射出成型機で試験片を作製した。この試験片について、JIS K 7201「酸素指数法によるプラスチックの燃焼試験方法」に準じて酸素指数(LOI)を測定し、その結果を表2に示した。
【0051】
[比較例3]
実施例3において、実施例1で調製したシリコーンレジン組成物の代わりに参考例1で調製したシリコーンレジン組成物を配合した以外は実施例3と同様にして試験片を作製した。この試験片について、実施例3と同様にして酸素指数(LOI)を測定し、その結果を表2に示した。
【0052】
【表2】

【0053】
[実施例4]
結晶性のビフェニル型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ株式会社製のエピコートYX4000H;エポキシ当量=190、融点=105℃)42.0重量部、フェノールアラルキル型フェノール樹脂(三井化学株式会社製のミレックスXLC−3L;フェノール性水酸基当量=168)38.6重量部(前記エポキシ樹脂中のエポキシ基に対するこのフェノール樹脂中のフェノール性水酸基のモル比が1.0となる量)、実施例1で調製したシリコーンレジン組成物18重量部、平均粒径14μmの非晶性球状シリカ(電気化学工業株式会社製のFB−48X)510重量部、カーボンブラック0.4重量部、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1重量部、カルナバワックス0.9重量部、およびトリフェニルホスフィン0.66重量部を熱2本ロールにより均一に溶融混合して硬化性エポキシ樹脂組成物を調製した。この硬化性エポキシ樹脂組成物、およびその硬化樹脂の特性を測定し、それらの結果を表3に示した。
【0054】
[実施例4]
実施例4において、実施例1で調製したシリコーンレジン組成物の代わりに実施例2で調製したシリコーンレジン組成物を配合した以外は実施例4と同様にして硬化性エポキシ樹脂組成物を調製した。この硬化性エポキシ樹脂組成物、およびその硬化樹脂の特性を測定し、それらの結果を表3に示した。
【0055】
[比較例4]
実施例4において、実施例1で調製したシリコーンレジン組成物の代わりに参考例1で調製したシリコーンレジンを配合した以外は実施例4と同様にして硬化性エポキシ樹脂組成物を調製した。この硬化性エポキシ樹脂組成物、およびその硬化樹脂の特性を測定し、それらの結果を表3に示した。
【0056】
[比較例5]
実施例4において、実施例1で調製したシリコーンレジン組成物の代わりに比較例1で調製したシリコーンレジン組成物を配合した以外は実施例4と同様にして硬化性エポキシ樹脂組成物を調製した。この硬化性エポキシ樹脂組成物、およびその硬化樹脂の特性を測定し、それらの結果を表3に示した。
【0057】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のシリコーンレジン組成物は、溶融粘度が低く、有機樹脂への分散性や反応性が良好であり、成形性を損なうことなく、優れた難燃性を付与することができるので、各種有機樹脂の添加剤として有用である。また、本発明の硬化性有機樹脂組成物は、ハロゲン化エポキシ樹脂やアンチモン系酸化物を含有しなくても優れた難燃性を有するので、人体・環境に対する悪影響が少なく、各種電気・電子材料として有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均単位式:
(R1SiO3/2)a(R22SiO2/2)b(R33SiO1/2)c(SiO4/2)d(XO1/2)e
{式中、R1、R2、およびR3は同じか、または相異なる一価炭化水素基もしくはエポキシ基含有有機基であり、但し、分子中のR1〜R3の合計数に対して、0.1〜40モル%は前記エポキシ基含有有機基であり、10モル%以上はフェニル基であり、Xは水素原子またはアルキル基であり、aは正数であり、bは0または正数であり、cは0または正数であり、dは0または正数であり、eは0または正数であり、かつb/aは0〜10の数であり、c/aは0〜0.5の数であり、d/(a+b+c+d)は0〜0.3の数であり、e/(a+b+c+d)は0〜0.4の数である。}
で示され、軟化点が25℃を超えるシリコーンレジンと
(B)エポキシ基含有アルコキシシラン
との混合物あるいは反応混合物からなるシリコーンレジン組成物。
【請求項2】
(A)成分の中のエポキシ基含有有機基がグリシドキシアルキル基である、請求項1記載のシリコーンレジン組成物。
【請求項3】
(B)成分が、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランである、請求項1記載のシリコーンレジン組成物。
【請求項4】
(A)成分100重量部に対して、(B)成分が0.15〜100重量部である、請求項1記載のシリコーンレジン組成物。
【請求項5】
(I)硬化性樹脂、および(II)請求項1記載のシリコーンレジン組成物から少なくともなる硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
(I)成分がエポキシ樹脂である、請求項5記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
(I)成分が結晶性エポキシ樹脂である、請求項5記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
(I)成分がエポキシ樹脂とフェノール樹脂の混合物である、請求項5記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
(I)成分がビフェニル型エポキシ樹脂とフェノールアラルキル型エポキシ樹脂の混合物である、請求項5記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
(I)成分100重量部に対して、(II)成分が0.1〜500重量部である、請求項5記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項5乃至10のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化樹脂。


【公開番号】特開2006−188593(P2006−188593A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−1015(P2005−1015)
【出願日】平成17年1月5日(2005.1.5)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】