説明

シリンジ

【課題】プランジャ押込み後、外筒前部内の流動体に残った残圧で、外筒前端の流出部から流動体が滴下することが生じない歯科用シリンジの提供。
【解決手段】外筒1内へ嵌合されたプランジャ11の前方押出しで外筒前端の注出部3から外筒内流動体が注出可能となし、そのプランジャ11は、中筒12と該中筒内へ摺動可能に嵌合させた芯棒13とで形成し、中筒に対する芯棒13の前方押出しで、中筒前端の外面および外筒内面へ嵌合された弾性キャップ31の前壁32が、該キャップの後部に対して弾性に抗し引き伸ばされて前進し、流動体が注出部から注出された後に、プランジャ前方押出しを解放すると、上記弾性キャップ前壁32が弾性復元し、芯棒が引戻されて流動体収納室容量が拡大され、該容量拡大により、該収納室内流動体中の残圧が解消可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯科において用いられているシリンジに関する。
【背景技術】
【0002】
前端から注出部を突出させた外筒内にプランジャを嵌合させ、該プランジャ押込みで外筒内の流動体が注出部から注出できるよう設けたシリンジが知られているが、注出部からの流動体注出時、プランジャ前方の外筒部分内流動体には、上記注出部の注出孔が細孔であることから残圧が残り、そのためプランジャ押込み終了後にも注出孔から流動体が微量宛流出し、滴下して周辺を汚すことがあった。そのような欠点除去のために、プランジャ前端から棒状部を前方突出すると共に該棒状部の前端部を弾性材でピストン状に包み、プランジャ前方押込み時に棒状部前面が接する弾性材部分が、該前面部分を除く外周および後面部分に対して弾性に抗して前方へ押出された後にその他の弾性材部分が押出され、所定量の流動体がノズルから押出された後、プランジャ押し出しを中止すると、上記棒状部前面により押出されていた弾性材前面部分が弾性復元し、該弾性復元によるプランジャ後退での流動体収納室拡開で既述流動体の残圧が解消するよう設けたシリンジが知られている(特許資料1)。
【特許文献1】特開2004−24768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来例の場合は、上記プランジャ前面から突出させた棒状部先端を包むピストン状部の形成が面倒であった。
【0004】
本発明は上記プランジャを、前面から前端を膨出部とした連結棒を突出する、前後両端面開口の中筒と、該中筒の筒孔内へ摺動可能に設けた芯棒とで形成し、又中筒前部の連結棒外面へは弾性キャップを嵌合させ、外筒内の流動体注出時には外筒に対してプランジャを押込み、又そのプランジャは中筒に対して芯棒を押込みして芯棒前端面で上記弾性キャップ前壁を弾性延伸させて外筒前部内流動体を注出させ、該注出終了後は、弾性キャップの前壁が弾性復元し、又該弾性復元で芯棒を中筒に対して後退させることで外筒前部内を拡開させ、もって該室内の残圧を解消できるよう設けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の手段として前端部から注出部3を突出する外筒1と、
該外筒内へ摺動可能に嵌合され、前面中央部から、前端部を膨出部14とした連結棒15を前方突出するプランジャ11と、上記連結棒15外面へ抜出し不能に嵌着させた弾性キャップ31とを有し
上記プランジャ11を、上記連結棒15付きで前後両端面開口の中筒12と、該中筒の筒孔内へ前後方向への摺動が可能に嵌合させた芯棒13とで形成し、
外筒1内へプランジャ11を嵌合させた状態から、中筒12に対して芯棒13を前方押込みすることで、該芯棒前面が弾性キャップ31の前壁32を弾性に抗し伸長させて前方押出しし、
該芯棒押込み解放による弾性キャップ31の弾性復元で、芯棒前部が中筒12内へ押戻しされるよう設けた。
第2の手段として上記第1の手段を有すると共に上記中筒12後端に外向きフランジ16を付設し、該外向きフランジ16後面へ、外周部を残して凹部20を形成し、
又芯棒13の後端に上記凹部20内へ遊嵌できる摘み板21を付設して、上記芯棒13の前方押込みで該芯棒前面が弾性キャップの前壁32を伸長させて前方押出ししたとき、上記凹部20内へ摘み板21が遊嵌可能とし、又摘み板21が凹部20後方へ移動したとき、中筒12の筒孔内面へ付設した第1係合突条23前面へ芯棒13外面に付設した第2突条24後面が係合して、中筒12内からの芯棒13の後方抜出しが不能に形成した。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の構成とすることで、中筒12内へ芯棒13を押込みした状態でプランジャ11を外筒1前方へ押込みした後にプランジャ押込みを解放すれば、弾性キャップ31の前壁32は弾性復元して芯棒13を後方押戻しして外筒前部内の流動体収納室内の残圧を解消することとなり、該残圧解消は上記芯棒だけの押戻しで行うこととなるから、又その芯棒は小外径であるから中筒内面に対する接触面積を少なくでき、よって外筒内面に対してプランジャ全体を後方引戻しする場合に比べてその引戻しを容易とすることが出来る。
【0007】
請求項2のようにすることで、中筒後端の外向きフランジ後面に設けた凹部20内後面と、芯棒後端の摘み板21前面との間の隙間を弾性キャップ前壁32を弾性に抗して前方へ伸長させる距離とすることが出来、このようにして中筒12に対する芯棒13の前後方向摺動距離とすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下図面について説明する。まず従来公知の部分について簡単に説明すると、1は外筒であり、該外筒後端には指掛け用の外向きフランジ2を付設しており、該外筒前部は注出部3としており、該注出部は注出針4を突出させている。
【0009】
上記外筒内へは、プランジャ11を前後方向への摺動が自在に嵌合させている。
【0010】
本発明にあってはそのプランジャを前後両端面開口の中筒12と該中筒内へ前後方向への摺動が自在に嵌合させた芯棒13とで形成している。中筒12は前面中央部から、前端部を膨出部14とした連結棒15を前方突出する共に、その中筒後端に外筒後端の外向きフランジ2よりも小外径の外向きフランジ状指掛け16を付設しており、該指掛け16から上記連結棒までの部分を断面十字形状、Y字形状、星形等、外面前後方向へ複数の溝を等間隔に縦設した、複数溝付き筒部17とし、それ等各溝間の突条外面が形成する線状面18が外筒1内面へ接して摺動するよう設けている。又その複数溝付き筒部17を前後方向へ三等分し、その各区分の端部部分へ外筒1内径とほぼ同一外径の円板19を付設している。又上記指掛け16の後面へは、外周部を残してその内方へ凹部20を形成している。
【0011】
芯棒13は、上記中筒12内へ前後方向への摺動が可能に形成した棒部分後端に外向きフランジ状摘み板21を付設したもので、その摘み板は上記凹部20内へ嵌合可能に形成している。その凹部20内への摘み板嵌合状態で芯棒前端は、図2が示すように中筒膨出部14の前端面から前方へ突出するよう設けている。
【0012】
既述中筒12と芯棒13とは、中筒の筒孔後部を大孔部22とし、かつその大孔部22の後部に第1係合突条23を周設し、又芯棒13の後部外面へ第2係合突条24を周設して、中筒内へ芯棒を嵌合させ、図1のように中筒12前端面と芯棒13の前端面とを面一に位置合せしたとき、上記第1係合突条23前面へ第2係合突条24後面が係合して中筒12に対する芯棒13の後方移動は出来ないよう設け、又このとき、芯棒後端の摘み板21は凹部20内から後方へ抜出しするよう設けている。
【0013】
既述中筒前端の連結棒15外面へは、弾性キャップ31を抜出し不能に嵌合させる。該弾性キャップ31は前壁32外周から周壁を後方突出させ、その周壁の後端部内面へ突条33を周設しており、膨出部後面へ突条33を係合させている。尚図示例では前壁中心から棒部34を前方突出させており、又周壁の前後方向中間から外向きフランジ状に突条を突出させ、該突条外周面へシール筒35を付設して該シール筒を外筒内面へ摺動可能に圧接させている。前壁32の後面中心からは突部を後方突出させ、該突部を芯棒13の前端面へ当接させている。
【0014】
上記構成において、図1が示す状態から中筒12と芯棒13とが形成するプランジャ11を、摘み板21後面へ指を当てて前方押込みすると、図2が示すように芯棒13前端面が上記突部を介して前壁32を前方へ押出し、前壁32の外周部および周壁前部は上記シール筒35が外筒1内面へ圧接されていることから弾性に抗して伸長し、更に芯棒が前方押込みされて中筒12と共に前方移動することで上記シール筒35も共に外筒内前方へ押込まれて、外筒前部内の流動体収納室は狭少化されて、該室内流動体は流出部3から外方へ押出される。必要量注出が終った後にプランジャの前方押込みを解放すると、図2のように前方押出されていた弾性キャップの前壁32はその外周部および周壁前部が弾性復元することで、芯棒13を後方へ引戻し、すると流動体収納室容積は拡開することとなり、該拡開によりその収納室内流動体の残圧は解消し、よってプランジャ前方押込み終了後における、注出部3からの流動体の垂れ落ちを防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明シリンジの断面図である。
【図2】図1状態から僅かにプランジャを外筒内へ押込みした状態で示す断面図である。
【図3】プランジャが外筒前限まで押込みされた状態で示す断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 外筒 3 注出部
11 プランジャ 12 中筒
13 芯棒 14 膨出部
17 溝付き筒部 19 円板
20 凹部 21 摘み板
31 弾性キャップ 32 前壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端部から注出部3を突出する外筒1と、
該外筒内へ摺動可能に嵌合され、前面中央部から、前端部を膨出部14とした連結棒15を前方突出するプランジャ11と、
上記連結棒15外面へ抜出し不能に嵌着させた弾性キャップ31とを有し
上記プランジャ11を、上記連結棒15付きで前後両端面開口の中筒12と、該中筒の筒孔内へ前後方向への摺動が可能に嵌合させた芯棒13とで形成し、
外筒1内へプランジャ11を嵌合させた状態から、中筒12に対して芯棒13を前方押込みすることで、該芯棒前面が弾性キャップ31の前壁32を弾性に抗し伸長させて前方押出しし、
該芯棒押込み解放による弾性キャップ31の弾性復元で、芯棒前部が中筒12内へ押戻しされるよう設けた
ことを特徴とするシリンジ。
【請求項2】
上記中筒12後端に外向きフランジ16を付設し、該外向きフランジ16後面へ、外周部を残して凹部20を形成し、
又芯棒13の後端に上記凹部20内へ遊嵌できる摘み板21を付設して、上記芯棒13の前方押込みで該芯棒前面が弾性キャップの前壁32を伸長させて前方押出ししたとき、上記凹部20内へ摘み板21が遊嵌可能とし、又摘み板21が凹部20後方へ移動したとき、中筒12の筒孔内面へ付設した第1係合突条23前面へ芯棒13外面に付設した第2突条24後面が係合して、中筒12内からの芯棒13の後方抜出しが不能に形成した
ことを特徴とする、請求項1記載のシリンジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−268196(P2007−268196A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100883(P2006−100883)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】