説明

シリンジ

【課題】プランジャ押込み後、外筒前部内の流動体に残った残圧で、外筒前端の注出部から流動体が滴下することを解消した歯科用シリンジの提供。
【解決手段】プランジャ11の前後方向一部外面に第1凹溝19を設け、該第1凹溝内へ、前後方向中間部を小外径部23とし、該小外径部前方の大外径部24外面と外筒1内面との摩擦抵抗を、小外径部後方の大外径部25外面と外筒1内面との摩擦抵抗よりも大とした弾性シール筒21を嵌合させ、外筒1に対するプランジャ11の前方押込みで弾性シール筒の上記後方大外径部25の前方移動に遅れて前方大外径部24が前進可能となし、プランジャを離すと弾性シール筒21後部が弾性復元してプランジャ11を外筒に対して後方移動させ、該後方移動による外筒前部の流動体収納室容積の拡大で、注出部3から外気が流入して上記残圧を解消可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯科において用いられているシリンジに関する。
【背景技術】
【0002】
前端から注出部を突出させた外筒内にプランジャを嵌合させ、該プランジャ押込みで外筒内の流動体が注出部から注出できるよう設けたシリンジが知られているが、注出部からの流動体注出時、プランジャ前方の外筒部分内流動体には、上記注出部の注出孔が細孔であることから残圧が残り、そのためプランジャ押込み終了後にも注出孔から流動体が微量宛流出し、滴下して周辺を汚すことがあった。そのような欠点除去のために、プランジャ前端から棒状部を前方突出すると共に該棒状部の前端部を弾性材でピストン状に包み、プランジャ前方押込み時に棒状部前面が接する弾性材部分が、該前面部分を除く外周および後面部分に対して弾性に抗して前方へ押出された後にその他の弾性材部分が押出され、所定量の流動体がノズルから押出された後、プランジャ押し出しを中止すると、上記棒状部前面により押出されていた弾性材前面部分が弾性復元し、該弾性復元によるプランジャ後退での流動体収納室拡開で既述流動体の残圧が解消するよう設けたシリンジが知られている(特許資料1)。
【特許文献1】特開2004−24768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来例の場合は、上記プランジャ前面から突出させた棒状部先端を包むピストン状部の形成が面倒であった。本発明はそのピストン状部該当物を弾性シール筒で形成してその形成が容易となし、プランジャに対するその弾性シール筒の取り付けも容易とし、又プランジャ引き戻しによる既述残圧解消が確実となるよう設けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の手段として前端部から注出部3を突出する外筒1と、
該外筒内へ摺動可能に嵌合され、前後方向外面一部に第1凹溝19を周設したプランジャ11と、
上記第1凹溝19底面が囲成する芯棒部分外面へ嵌合させた弾性シール筒21とを有し、
該弾性シール筒21の前後方向中間部を小外径部23に、かつ該小外径部23よりも前方大外径部24外面と外筒内面との摩擦抵抗を、後方大外径部25外面と外筒内面との摩擦抵抗よりも大に形成し、
外筒1に対してプランジャ11を前方押込みすることで、上記前方大外径部24外面と外筒1内面との摩擦抵抗と、弾性シール筒の弾性圧縮とで、後方大外径部25に遅れて前方大外径部24が前進し、又プランジャ前方押込み解放により弾性シール筒21が弾性復元することで、プランジャ11が外筒1に対して後退可能に形成した。
第2の手段として、上記第1の手段を有すると共に上記第1凹溝19を、プランジャ11前部に周設した。
第3の手段として上記第1又は第2の手段を有すると共に上記小外径部23よりも前方の大外径部24外面の前後方向長さを、後方大外径部25外面の前後方向長さよりも大として、前方大外径部外面と外筒内面との摩擦抵抗を、後方大外径部外面と外筒内面との摩擦抵抗よりも大とした。
第4の手段として、上記第1、第2または第3の手段を有すると共に上記第1凹溝19底面が囲成する芯棒16の前後方向中間部に、巾狭の第2凹溝20を周設して、該第2凹溝内へ、弾性シール筒21の前後方向中間部内面へ付設したフランジ状板22を、該フランジ状板内周面を第2凹溝底面へ水密に接して前後方向への移動が可能に嵌合させた。
第5の手段として、上記第1、第2、第3又は第4の手段を有すると共に上記第1凹溝19をプランジャ11の前部に設け、該第1凹溝19後方のプランジャ部分外面に前後方向への複数の長溝を穿設し、それ等各長溝間の突条先端面を線状面14として、これ等線状面を外筒内面への接触面とした。
【発明の効果】
【0005】
請求項1記載のように形成することで、弾性シール筒21はゴム、エラストマー等の弾性材で別部材で形成すればよいからその形成が容易であり、弾性シール筒21の前後方向中間部を小外径部23にかつ該小外径部23よりも前方の大外径部24外面と外筒内面との摩擦抵抗を、後方大外径部25外面と外筒内面との摩擦抵抗よりも大としたから、プランジャ前方押込み時の弾性シール筒の圧縮で、プランジャに遅れて上記前方大外径部24を前進させ、又プランジャ前方押込み解放による弾性シール筒21の弾性復元で、前方大外径部24に対してプランジャ11を引戻して外筒前部内流動体の残圧を解消することが容易である。
【0006】
請求項2のようにすることで、プランジャ前方だけに流動体を収納でき、流動体の無駄をなくすことが出来る。
【0007】
請求項3のようにすることで、上記前方大外径部24外面と外筒内面との摩擦抵抗を、後方大外径部25外面と外筒内面との摩擦抵抗よりも大とすることが容易である。
【0008】
請求項4のようにすることで、外筒外面とプランジャ外面との間の水密性を高め、外筒前部内の流動体がプランジャ外面と外筒内面との間に入ることがない。
【0009】
請求項5のようにすることで、外筒内面とプランジャ外面との接触面積を少なくして摩擦抵抗を減少し、又プランジャ成形材料を少なくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下図面について説明する。まず従来公知の部分について簡単に説明すると、1は外筒であり、該外筒後端には指掛け用の外向きフランジ2を付設しており、該外筒前部は注出部3としており、該注出部は注出針4を突出させている。
【0011】
上記外筒1内へはプランジャ11を摺動自在に嵌合させており、該プランジャ後端には外周部をフランジ状に外方突出させて摘み部12を付設している。
【0012】
本発明においては、プランジャの前部を除く部分を断面十字形状部13としており、外筒内面との接触を、その外面が形成する複数の線状面14で行っている。又その断面十字形状部を前後方向へ三等分し、その各区分の各端部へ外筒内径とほぼ同一外径の円板15を付設している。断面十字形状部前端の円板中央部からは芯棒16を前方突出し、該芯棒前端に、上記円板よりも小外径の小円板17を付設し、該小円板前面は前方小径のテーパ状とし、その前面から棒部18を前方突出させている。上記断面十字形状部前端の円板15と小円板17とは、その間に第1凹溝19を形成するもので、該第1凹溝は、上記芯棒16と該芯棒を前面から突出する円板15と小円板17とで形成されている。又芯棒16の前後方向中間部には巾狭の第2凹溝20を周設している。尚既述断面十字形状部13は断面Y字形状、星形形状等として横断面形状において、前後方向への複数の長溝と突条とを交互に位置させ、それ等突条先端面を巾広の線状面14として形成する。
【0013】
上記第1凹溝19内へは弾性シール筒21を嵌合させる。該弾性シール筒は前後方向中間部内面からフランジ状板22を突出しており、該フランジ状板内周面を第2凹溝20の底面へ水密に当接させている。該フランジ状板の板厚は第2凹溝20の溝巾よりもやや薄く形成している。又該弾性シール筒21の前後方向中間部は小外径部23とし、該小外径部前方の大外径部24の前後方向巾は、小外径部後方の大外径部25の前後方向巾よりも大としている。又それ等前後両大外径部外面は、外筒1内面へ圧接させている。
【0014】
上記弾性シール筒21を第1凹溝19内へ、該弾性シール筒21が有するフランジ状板22を第2凹溝20内へ、それぞれ嵌合させた状態で外筒1内へプランジャ11を図1のように嵌合させる。外筒1前部内へは予め、ないしプランジャ後方抜出しによる注出針4からの吸入で流動体を貯溜させておく。該状態からプランジャを前方押込みすると、上記前方大外径部24外面と外筒内面との摩擦抵抗は、後方大外径部25外面と外筒内面との摩擦抵抗よりも大であるため、図2が示すように弾性シール筒21は圧縮されてプランジャ前端部が有する小円板17は弾性シール筒21の前面を離れて前進し、続いてプランジャ11を前方へ押込みすることで、弾性シール筒は圧縮状態を保ったまま、後方大外径部25に遅れて前方大外径部24も外筒内面への摩擦抵抗に抗して前方へ摺動し、該プランジャ前進による外筒前部内の流動体収納室狭少化で該室内流動体は注出部3から注出される。必要量の流動体が注出された後に、プランジャ前方押込みを停止し、プランジャを離すと、圧縮されていた弾性シール筒21は弾性復元することとなり、よって後方大外径部25は後方移動し、よって該弾性シール筒21後面が第1凹溝19の後面を後方へ押圧することで、プランジャ全体が後退し、該後退で外筒前部内の流動体収納室は拡開することとなり、該拡開で外気が外筒前部内へ吸入されて残圧を解消し、洩れを防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明シリンジの断面図である。
【図2】図1状態から僅かにプランジャを押込みした状態で示す断面図である。
【図3】プランジャを前限まで押込みした状態で示す断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 外筒 3 注出部
11 プランジャ 14 線状面
16 芯棒 17 小円板
19 凹溝 20 第2凹溝
21 弾性シール筒 22 フランジ状板
23 小外径部 24 前方大外径部
25 後方大外径部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端部から注出部3を突出する外筒1と、
該外筒内へ摺動可能に嵌合され、前後方向外面一部に第1凹溝19を周設したプランジャ11と、
上記第1凹溝19底面が囲成する芯棒外面へ嵌合させた弾性シール筒21とを有し、
該弾性シール筒21の前後方向中間部を小外径部23に、かつ該小外径部23よりも前方大外径部24外面と外筒内面との摩擦抵抗を、後方大外径部25外面と外筒内面との摩擦抵抗よりも大に形成し、
外筒1に対してプランジャ11を前方押込みすることで、上記前方大外径部24外面と外筒1内面との摩擦抵抗と、弾性シール筒の弾性圧縮とで、後方大外径部25に遅れて前方大外径部24が前進し、又プランジャ前方押込み解放により弾性シール筒21が弾性復元することで、プランジャ11が外筒1に対して後退可能に形成した
ことを特徴とするシリンジ。
【請求項2】
上記第1凹溝19を、プランジャ11前部に周設した
ことを特徴とする請求項1記載のシリンジ。
【請求項3】
上記小外径部23よりも前方の大外径部24外面の前後方向長さを、後方大外径部25外面の前後方向長さよりも大として、前方大外径部外面と外筒内面との摩擦抵抗を、後方大外径部外面と外筒内面との摩擦抵抗よりも大とした
ことを特徴とする請求項1又は2記載のシリンジ。
【請求項4】
上記第1凹溝19底面が囲成する芯棒16の前後方向中間部に、巾狭の第2凹溝20を周設して、該第2凹溝内へ、弾性シール筒21の前後方向中間部内面へ付設したフランジ状板22を、該フランジ状板内周面を第2凹溝底面へ水密に接して前後方向への移動が可能に嵌合させた
ことを特徴とする、請求項2、又は3記載のシリンジ。
【請求項5】
上記第1凹溝19をプランジャ11の前部に設け、該第1凹溝19後方のプランジャ部分外面に前後方向への複数の長溝を穿設し、それ等各長溝間の突条先端面を線状面14として、これ等線状面を外筒内面への接触面とした
ことを特徴とする、請求項1、2、3又は4記載のシリンジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−268197(P2007−268197A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100884(P2006−100884)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】