説明

シリンジ

【課題】包装体に包装したときにかさばらず、また、指当て部材を回転させることによりその指当て部材と穿刺針の刃面との位置関係を調整することができるシリンジを提供すること。
【解決手段】シリンジは、外筒と、外筒の基端部に、外筒の軸回りに回転可能に設置された指当て部材4と、外筒内で摺動し得るガスケットと、ガスケットを外筒の軸方向に沿って移動操作する押し子とを備えている。外筒は、有底筒状の部材で構成され、その先端側底部の中央部には、外筒の胴部に対し縮径した口部が一体的に突出形成されている。指当て部材4は、指当て部材4の回転軸を介して互いに反対方向に突出した1対の板状部で構成された本体部41を有している。本体部41の内周面には、複数の凸部43が形成され、本体部41の先端側の面45の開口44の近傍には、複数の突起42が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、患者へ薬液等の液体を投与するときには、シリンジが使用されている。シリンジは、先端部に突出形成された口部を有する外筒と、外筒の基端部に形成されたフランジ(指当て部)と、外筒内に挿入されたガスケットと、ガスケットを外筒の軸方向に沿って移動操作する押し子とを備えている。このシリンジは、袋状の包装体に包装され、包装体に包装されたシリンジは、1つの箱に、複数個がまとめて収納される。
【0003】
使用者は、患者へ薬液を投与するときは、手指をフランジに掛けてそのシリンジを使用する。そして、使用者がシリンジを使用し易いように、フランジの形状は、円形をなしていた。
【0004】
しかしながら、シリンジのフランジの形状が円形であると、シリンジを包装体に包装したときにかさばり、全体が大きくなってしまい、また、包装体に包装されたシリンジを収納する箱も大きくなってしまうという問題があった。
【0005】
そこで、シリンジのフランジの形状を楕円形や、丸みを帯びた長方形等にし、シリンジを包装体に包装したときにかさばらないようにしている。なお、フランジの形状が楕円形や長方形の場合は、円形の場合と異なり、手指の当て方が限られてくる。
【0006】
ところで、シリンジを使用して患者へ薬液を投与する際は、事前または使用時に、外筒の口部に穿刺針を装着する。この穿刺針の装着の際は、その穿刺針のハブを外筒の口部に設けられているロックアダプタに螺合させる(例えば、特許文献1、2参照)。一方、患者に薬液を投与する際、穿刺針を穿刺するときは、穿刺針の先端部の刃面を上方に向ける必要がある。
【0007】
しかしながら、シリンジに穿刺針を装着したとき、その穿刺針の刃面がどの方向を向くかは判らないので、フランジの形状が楕円形や長方形であると、穿刺針の刃面とフランジとの位置関係が使用者の想い通りにはならず、使用し難い場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3456241号明細書
【特許文献2】特開平2−193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、包装体に包装したときにかさばらず、また、指当て部材を回転させることによりその指当て部材と穿刺針の刃面との位置関係を調整することができるシリンジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的は、下記(1)および(2)の本発明により達成される。
(1) 先端部に液体を吸引または排出する口部を有し、基端部が開放した外筒と、
前記外筒の基端部に該外筒の軸回りに回転可能に設置され、その回転軸を介して互いに反対方向に突出した1対の板状部からなる指当て部材と、
前記外筒内に挿入されたガスケットと、
前記ガスケットを前記外筒の軸方向に沿って移動操作する押し子とを備えることを特徴とするシリンジ。
【0011】
(2) 前記外筒の前記口部に、先端部に刃面を有する穿刺針が着脱自在に装着されるよう構成されており、
前記穿刺針を前記口部に装着した状態で、前記外筒に対して前記指当て部材を回転させることにより、前記指当て部材と前記刃面との位置関係を調整するよう構成されている上記(1)に記載のシリンジ。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、円形の指当て部を有するシリンジに比べて、シリンジを包装体に包装したときにかさばらず、全体を小さくすることができる。
【0013】
また、指当て部材を外筒に対して回転させることにより、穿刺針の刃面と指当て部材との位置関係を調整することができるので、外筒の口部に穿刺針を装着したとき、穿刺針の刃面がどの方向を向いていたとしても、その刃面に合わせて指当て部材を回転させて、刃面と指当て部材との位置関係を使用者の希望通りに調整することができる。これにより、非常に使用し易いシリンジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のシリンジの第1実施形態を示す正面図である。
【図2】図1に示すシリンジの外筒の基端部を示す斜視図である。
【図3】図1に示すシリンジの指当て部材を示す斜視図である。
【図4】図1に示すシリンジの指当て部材を示す平面図である。
【図5】図1に示すシリンジの外筒の基端部および指当て部材を示す断面図である。
【図6】図1に示すクリック機構における凹凸と突起とが係合している状態を示す正面図である。
【図7】本発明のシリンジの第2実施形態における外筒の基端部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のシリンジを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明のシリンジの第1実施形態を示す斜視図、図2は、図1に示すシリンジの外筒の基端部を示す斜視図、図3は、図1に示すシリンジの指当て部材を示す斜視図、図4は、図1に示すシリンジの指当て部材を示す平面図(先端側から見た図)、図5は、図1に示すシリンジの外筒の基端部および指当て部材を示す断面図、図6は、図1に示すクリック機構における凹凸と突起とが係合している状態を示す正面図である。
【0016】
なお、以下では、図1、図2、図5および図6中の下側を「先端」、上側を「基端(後端)」とし、また、図3中の上側を「先端」、下側を「基端(後端)」として説明を行う。
【0017】
これらの図に示すように、シリンジ1は、外筒2と、外筒2の基端(後端)部に、外筒2の軸回りに回転可能に設置された指当て部材4と、外筒2内で摺動し得るガスケット6と、ガスケット6を外筒2の軸方向(長手方向)に沿って移動操作する押し子3とを備えている。ガスケット6は、押し子3の先端に連結されている。
【0018】
外筒2は、有底筒状の部材で構成され、その先端部、すなわち、先端側底部の中央部には、外筒2の胴部に対し縮径した口部22が一体的に突出形成されている。この口部22からは、薬液等の液体が吸引または排出される。また、口部22には、図示しない穿刺針の基端部に設けられているハブが着脱自在に接続されるようになっている。なお、穿刺針の先端部には、鋭利な針先部が形成されており、その針先部は、刃面を有している。
【0019】
外筒2の基端部は、開放しており、指当て部材4は、外筒2の基端部の外周部(基端外周)に、その外筒2の軸回りに回転可能に設置されている。なお、外筒2の基端部および指当て部材4については、後で詳述する。
また、外筒2の外周面には、液量を示す図示しない目盛りが付されている。
【0020】
外筒2の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)のような各種樹脂が挙げられるが、その中でも、成形が容易であり、かつ水蒸気透過性が低い点で、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリエステルのような樹脂が好ましい。なお、外筒2の構成材料は、内部の視認性を確保するために、実質的に透明であるのが好ましい。
【0021】
このような外筒2内には、弾性材料で構成されたガスケット6が収納されて(挿入されて)いる。ガスケット6の外周部には、複数(本実施形態では2つ)のリング状の突部が全周に亘って形成されており、これらの突部が外筒2の内周面に密着しつつ摺動することで、液密性をより確実に保持するとともに、摺動性の向上が図れる。
【0022】
また、ガスケット6には、その基端面に開放する中空部が形成されている。この中空部は、後述する押し子3のヘッド部が螺入される。ガスケット6の中空部の内面には、雌ネジが形成されている。
【0023】
ガスケット6の構成材料としては、特に限定されず、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの混合物等の弾性材料が挙げられる。
【0024】
押し子3は、横断面が十文字状をなす棒状の本体部31を有している。
本体部31の先端側には、ガスケット6の中空部内に挿入され、ガスケット6と連結されるヘッド部が形成されている。ヘッド部の外周には、ガスケット6の中空部の内面の雌ネジと螺合し得る雄ネジが形成されている。この雄ネジを雌ネジと螺合することにより、ガスケット6と押し子3とが連結される。なお、ガスケット6と押し子3は、螺合による連結に限らず、例えば凹凸嵌合等により連結された構成、接着、融着等により固着された構成、一体成形された構成であってもよい。
【0025】
また、本体部31の基端側には、円盤状のフランジ32が形成されている。
また、押し子3の構成材料としては、特に限定されず、前述した外筒2の構成材料として例示したものと同様のものを用いることができる。
【0026】
また、外筒2の口部22の外周側には、ロックアダプタ7が口部22に対し、その軸方向に沿って移動可能に設置されている。なお、ロックアダプタ7は、口部22と同心的に(同軸で)回転可能なもの等であってもよい。また、ロックアダプタ7が設けられておらず、口部22に穿刺針のハブを嵌合させるようになっていてもよい。
【0027】
図示の構成のロックアダプタ7は、筒状をなすリング部材で構成されたものであり、ロックアダプタ7の内周部には、ネジ山(図示せず)が形成されている。そして、前記ネジ山は、図示しない穿刺針の基端部に設けられているハブに形成されたネジ山と螺合することができるようになっている。これにより、穿刺針のハブに形成されたネジ山をロックアダプタ7に形成されたネジ山に螺合させることにより、シリンジ1の口部22に穿刺針が着脱自在に装着される。
【0028】
また、ロックアダプタ7および口部22には、キャップ8が着脱自在に取り付けられている。
【0029】
なお、ロックアダプタ7およびキャップ8の構成材料としては、それぞれ、特に限定されず、例えば、前述した外筒2の構成材料として例示したものと同様のものを用いることができる。
【0030】
次に、外筒2の基端部および指当て部材4について説明する。
図1、図3および図4に示すように、指当て部材4は、環状をなし、その開口44に外筒2が挿入されている。そして、指当て部材4は、外筒2の基端部の外周部に、その外筒2の軸回りに回転可能に設置されている。
【0031】
この指当て部材4は、指当て部材4の回転軸を介して互いに反対方向に突出した1対の板状部で構成された本体部41を有している。図示の構成では、外筒2の軸方向(図1および図3中上側または下側)から見たとき、本体部41の外形は、長方形の各辺をそれぞれ外側が凸となるように湾曲させ、かつ、丸みを帯びた各角部の近傍を切り欠いた形状をなしている。この本体部41は、シリンジ1を使用する際、使用者の手指を当てる部位である。すなわち、使用者は、シリンジ1を使用する際は、本体部41の突出方向の部位に手指を掛けて使用する。
【0032】
なお、本体部41の外形は、図示の形状には限定されず、この他、例えば、楕円形、長方形の角部を丸めた形状等が挙げられる。
【0033】
ここで、指当て部材4の回転軸を法線とする面上に、互いに直交するx軸およびy軸を想定する。そして、指当て部材4の長さのうち、x軸方向の長さが最も長くなるように前記x軸を想定し、その指当て部材4のx軸方向(以下、「長軸方向」とも言う)の長さをa、y軸方向(以下、「短軸方向」とも言う)の長さをbとしたとき、指当て部材4のx軸方向の長さaは、y軸方向の長さbよりも長い。これにより、シリンジ1を包装体に包装したときにかさばらず、全体を小さくすることができる。
【0034】
なお、前記x軸方向は、本体部41の突出方向であり、前記y軸方向は、前記突出方向に対して直交する方向である。
【0035】
また、本体部41の内周面には、複数(図示の構成では5つ)の凸部43が形成されている。各凸部43は、周方向に沿って、等角度間隔(等間隔)に配置されている。また、各凸部43は、それぞれ、周方向に沿って延在している。
【0036】
また、本体部41の先端側の面45の開口44の近傍には、複数(図示の構成では5つ)の突起42が形成されている。各突起42は、周方向に沿って、等間隔に配置されている。また、各突起42は、それぞれ、指当て部材4の回転軸を中心として径方向に延在している。すなわち、各突起42は、全体的に見ると、放射状をなしている。
【0037】
指当て部材4の構成材料としては、特に限定されず、例えば、前述した外筒2の構成材料として例示したものと同様のものを用いることができる。
【0038】
図2に示すように、外筒2の基端部の外周部には、周方向沿って1周に亘って溝23が形成されている。図5に示すように、溝23には、指当て部材4の各凸部43が挿入されている。これにより、指当て部材4は、外筒2に対し、外筒2の軸方向に位置決めされる。すなわち、指当て部材4を回転させたとき、指当て部材4が外筒2に対して外筒2の軸方向に移動しないようになっている。また、指当て部材4を回転させる際は、各凸部43が溝23に案内され、これにより、指当て部材4は、円滑に回転することができる。
【0039】
したがって、前記溝23および各凸部43により、外筒2に対し、指当て部材4を外筒2の軸方向に位置決めする第2の位置決め手段の主要部が構成される。
【0040】
なお、本実施形態では、外筒2側に溝23が設けられ、指当て部材4側に凸部43が設けられているが、これに限らず、外筒2側に凸部が設けられ、指当て部材4側に溝が設けられていてもよい。また、凸部43の数は、複数に限らず、1つであってもよい。
【0041】
また、図2に示すように、外筒2の基端部の溝23よりも先端側には、外径が拡径した拡径部25が形成されている。拡径部25の基端側の面251は、外筒2の拡径部25よりも先端側の部位26よりも外側に突出している。すなわち、拡径部25の基端側の面251は、指当て部材4の回転軸に対して垂直であり、周方向に沿って1周に亘って延在している。
【0042】
この拡径部25の基端側の面251には、複数の凹凸24が形成されている。各凹凸24は、周方向に沿って1周に亘って配置されている。すなわち、拡径部25の基端側の面251には、周方向に沿って1周に亘って、凹部と凸部とが交互に形成されている。
【0043】
図6に示すように、各凹凸24のうちの対応する部位(凹部)には、それぞれ、指当て部材4の各突起42が挿入されている。すなわち、各凹凸24のうちの対応する部位(凸部)には、それぞれ、指当て部材4の各突起42が係合している。また、指当て部材4の各突起42は、前記凹凸24に圧接している。これにより、指当て部材4は、外筒2に対し、周方向に位置決めされ、これによって、シリンジ1の使用時等に、指当て部材4が不本意に回転してしまうことを防止することができる。また、指当て部材4を回転させる際は、各突起42が外筒2の各凹凸24の凸部を乗り越えながら指当て部材4が回転することにより、クリック感が得られる。
【0044】
したがって、前記複数の凹凸24および各突起42により、外筒2に対し、指当て部材4をその回転方向に位置決めする第1の位置決め手段、すなわち、クリック機構の主要部が構成される。
【0045】
なお、本実施形態では、外筒2側に凹凸24が設けられ、指当て部材4側に突起42が設けられているが、これに限らず、外筒2側に突起が設けられ、指当て部材4側に凹凸が設けられていてもよい。また、突起42の数は、複数に限らず、1つであってもよい。
【0046】
また、本実施形態では、シリンジ1は、外筒2に対して指当て部材4が何回転でも回転し得るように構成されているが、これに限らず、シリンジ1は、外筒2に対して指当て部材4が回転可能な角度範囲を規制する回転角度規制手段を有していてもよい。
【0047】
この回転角度規制手段は、例えば、外筒2側に設けられた第1の外筒側係合部(図示せず)と、指当て部材4側に設けられ、指当て部材4を外筒2に対して時計回りに所定角度回転させたときに、第1の外筒側係合部に係合して指当て部材4の回転を阻止する第1の指当て部材側係合部(図示せず)と、外筒2側に設けられた第2の外筒側係合部(図示せず)と、指当て部材4側に設けられ、指当て部材4を外筒2に対して反時計回り(前記と反対方向)に所定角度回転させたときに、第2の外筒側係合部に係合して指当て部材4の回転を阻止する第2の指当て部材側係合部(図示せず)とで構成することができる。なお、前記各係合部のうちのいずれかを省略し、他のいずれかの係合部が、その省略した係合部を兼ねるように構成することもできる。
【0048】
次に、シリンジ1の作用を説明する。
まず、シリンジ1の外筒2の口部22およびロックアダプタ7からキャップ8を取り外す。そして、穿刺針のハブをロックアダプタ7に螺合させ、口部22に装着する。
【0049】
この場合、穿刺針のハブをロックアダプタ7に螺合させて口部22に装着するので、装着後の穿刺針の刃面と指当て部材4との位置関係は、どのようになるか判らず、使用者の希望通りにならないことがある。
【0050】
次に、穿刺針が口部22に装着されている状態で、指当て部材4を外筒2に対して回転させ、穿刺針の刃面と指当て部材4との位置関係を調整する。
【0051】
なお、使用者によっては、例えば、患者に薬液を投与する際ではなく、準備段階で、穿刺針の刃面と指当て部材4との位置関係を調整する。この場合は、指当て部材4の向きを見れば、刃面の向きを把握することができるという利点がある。すなわち、刃面は、非常に小さいので、刃面の向きを直接見るよりも、容易に、刃面の向きを把握することができる。
【0052】
以上説明したように、このシリンジ1によれば、円形の指当て部を有するシリンジに比べて、シリンジ1を包装体に包装したときにかさばらず、全体を小さくすることができる。
【0053】
また、指当て部材4を外筒2に対して回転させることにより、穿刺針の刃面と指当て部材4との位置関係を調整することができるので、外筒2の口部22に穿刺針を装着したとき、穿刺針の刃面がどの方向を向いていたとしても、その刃面に合わせて指当て部材4を回転させて、刃面と指当て部材4との位置関係を使用者の希望通りに調整することができる。これにより、非常に使用し易いシリンジ1を提供することができる。
【0054】
<第2実施形態>
図7は、本発明のシリンジの第2実施形態における外筒の基端部を示す斜視図である。なお、以下では、図7中の下側を「先端」、上側を「基端(後端)」として説明を行う。
【0055】
以下、第2実施形態について、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0056】
第2実施形態は、外筒の基端部の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0057】
図12に示すように、第2実施形態のシリンジ1では、拡径部25の基端側の面251に、複数の凹凸24が形成されておらず、拡径部25の基端側の面251は、平面である。この拡径部25の基端側の面251は、指当て部材4の回転軸に対して垂直であり、周方向に沿って1周に亘って延在している。
【0058】
また、シリンジ1は、外筒2に対し、指当て部材4をその回転方向に位置決めする第1の位置決め手段として、指当て部材4の回転に対する摩擦力を生じさせる摩擦力発生手段を有している。この摩擦力発生手段は、前記拡径部25の基端側の面251と、指当て部材4の各突起42とで構成されている。また、指当て部材4の各突起42は、拡径部25の基端側の面251に圧接している。これにより、指当て部材4は、外筒2に対し、回転方向に位置決めされる。すなわち、シリンジ1の使用時等に、拡径部25の基端側の面251と指当て部材4の各突起42との間の摩擦により、指当て部材4が不本意に回転してしまうことを防止することができる。
【0059】
なお、本実施形態では、外筒2側に面251が設けられ、指当て部材4側に突起42が設けられているが、これに限らず、外筒2側に突起が設けられ、指当て部材4側に周方向に沿って延在する面が設けられていてもよい。また、突起42の数は、複数に限らず、1つであってもよい。
【0060】
また、指当て部材4の突起42が省略され、外筒2側の面と、指当て部材4側の面とが圧接していてもよい。
このシリンジ1によれば、前述した第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0061】
以上、本発明のシリンジを、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【0062】
また、本発明は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0063】
また、本発明のシリンジは、例えば、予め外筒とガスケットとで囲まれた空間(貯液空間)に、薬液(薬剤)等が収納されたプレフィルドシリンジと、薬液(薬剤)等が収納されていない通常のシリンジとのそれぞれに適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 シリンジ
2 外筒
22 口部
23 溝
24 凹凸
25 拡径部
251 基端側の面
26 拡径部よりも先端側の部位
3 押し子
31 本体部
32 フランジ
4 指当て部材
41 本体部
42 突起
43 凸部
44 開口
45 先端側の面
6 ガスケット
7 ロックアダプタ
8 キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に液体を吸引または排出する口部を有し、基端部が開放した外筒と、
前記外筒の基端部に該外筒の軸回りに回転可能に設置され、その回転軸を介して互いに反対方向に突出した1対の板状部からなる指当て部材と、
前記外筒内に挿入されたガスケットと、
前記ガスケットを前記外筒の軸方向に沿って移動操作する押し子とを備えることを特徴とするシリンジ。
【請求項2】
前記外筒の前記口部に、先端部に刃面を有する穿刺針が着脱自在に装着されるよう構成されており、
前記穿刺針を前記口部に装着した状態で、前記外筒に対して前記指当て部材を回転させることにより、前記指当て部材と前記刃面との位置関係を調整するよう構成されている請求項1に記載のシリンジ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−206394(P2011−206394A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78885(P2010−78885)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】