説明

シンチレータパネル、その製造方法、フラットパネルディテクタ及びその製造方法

【課題】小型化され、耐湿性に優れ、生産性に優れたシンチレータパネル、該シンチレータパネルを用いたフラットパネルディテクタと、それら製造方法を提供する。
【解決手段】支持体121上に、柱状結晶からなる蛍光体層122及び蛍光体保護層123を順次形成したシンチレータパネルにおいて、支持体121上の蛍光体層122が形成された面とは反対側からレーザ裁断することで、レーザ裁断された柱状結晶側面において、レーザ断裁により生じた変質領域122aが柱状結晶側面全領域の0%以上、40%以下になるシンチレータパネルが製造でき、蛍光体層側面の粗さを維持し、その後形成する蛍光体保護層123が密着することで耐湿性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型化され、耐湿性に優れ、生産性に優れたシンチレータパネル、その製造方法、該シンチレータパネルを用いたフラットパネルディテクタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルの放射線画像が直接得られるデジタル放射線画像技術として開発されてきているフラットパネル型放射線ディテクタ(FPD)には、GdSやCsI等の蛍光体によって放射線を可視光に変換後フォトダイオードにより電荷へ変換するシンチレータ方式と、Seを代表とするX線検出素子によりX線を直接電荷へ変換する方式がある。本発明は、前者のシンチレータ方式のフラットパネルディテクタに関するものである。シンチレータ方式のフラットパネルディテクタとしては、例えば、特開2005−114456号公報では、シンチレータパネルと、薄膜トランジスタ(TFT)及び電荷結合素子(CCD)による光電変換素子との組み合わせであるFPDを開示している。
【0003】
また、CCDやCMOS等を用いたフラットパネルディテクタとしては、工業用の非破壊検査や口腔内に挿入して静止画像を収集する歯科用等が近年商品化されている。特に歯科診断用途においてはその発展は著しく、口腔内用の小さなデバイスから、パノラマ撮影、セファロ撮影まで幅広くフィルムに置き換わってきている(例えば、特開2004−105518号参照)。このようなサイズ、形状の多様化により、シンチレータパネルも有効画像領域の拡大や形状のフレキシビリティが求められている。
【0004】
放射線を可視光に変換する蛍光体は、低線量の撮影においてのSN比を向上するために、発光効率の高い蛍光体を使用することが必要になってくる。一般にシンチレータパネルの発光効率は、蛍光体層の厚さ、蛍光体のX線吸収係数によって決まるが、蛍光体層の厚さは厚くすればするほど、蛍光体層内での発光光の散乱が発生し、鮮鋭性は低下する。そのため、画質に必要な鮮鋭性を決めると、膜厚が決定する。
【0005】
中でもヨウ化セシウム(CsI)はX線から可視光に対する変換率が比較的高く、蒸着によって容易に蛍光体を柱状結晶構造に形成できるため、光ガイド効果により結晶内での発光光の散乱が抑えられ、蛍光体層の厚さを厚くすることが可能であった。しかしながらCsIのみでは発光効率が低いために、例えば特公昭54−35060号公報の如く、CsIとヨウ化ナトリウム(NaI)を任意のモル比で混合したものを、蒸着を用いて支持体上にナトリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Na)として堆積、また近年ではCsIとヨウ化タリウム(TlI)を任意のモル比で混合したしたものを、蒸着を用いて支持体上にタリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Tl)として堆積したものに、後工程としてアニールを行うことで可視変換効率を向上させ、X線蛍光体として使用している。
【0006】
このCsIを母材とした蛍光体には潮解性があり、経時で特性が劣化するという欠点がある。このような劣化を防止するために、CsIを使用した蛍光体層の表面に防湿性保護層を形成することが提案されている。例えば、ポリパラキシリレン樹脂により蛍光体層の上部、側面及び支持体外周部を覆う方法(例えば、特許文献1参照)、水分透過率1.2g/m・日未満の透明樹脂フィルムでシンチレータパネルの少なくとも支持体に対向する側の反対側と、側面とを覆う方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。これらの保護層により高い防湿性が得られる。
【0007】
このような防湿性保護層の耐久性はそのままシンチレータ層の耐久性に繋がるため、支持体全面をシンチレータごとポリパラキシリレンで覆う技術(例えば、特許文献3参照)や、支持体に凹凸を付与しポリパラキシリレンの剥離防止をはかる技術(例えば、特許文献4参照)、透明樹脂フィルムの場合は蛍光体端部がフィルム内部を傷付けないよう蛍光体端部を溶融させる技術(例えば、特許文献5参照)等が知られている。しかしながら、全面を覆ったり、支持体に凹凸を付与したりすると、コスト、生産プロセス工程の煩雑化等で負荷がかかり、満足のいくものではなかった。
【0008】
また、支持体と蛍光体層からなる放射線画像変換プレートの製造方法として、レーザ光を蛍光体層(支持体の反対側)に照射する放射線画像変換プレートの断裁方法が知られている。これはシンチレータパネルの製造方法ではないが、この方法をシンチレータパネルに適用したところ、蛍光体層への保護層の膜付きが悪く耐湿性に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−105518号公報
【特許文献2】特開2005−308582号公報
【特許文献3】特開2002−116258号公報
【特許文献4】特開2005−338067号公報
【特許文献5】特開2008−139291号公報
【特許文献6】特開2008−213043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、小型化され、耐湿性に優れ、生産性に優れたシンチレータパネル、その製造方法、該シンチレータパネルを用いたフラットパネルディテクタ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0012】
1.支持体上に、柱状結晶からなる蛍光体層及び蛍光体保護層を順次形成したシンチレータパネルにおいて、蛍光体層端部の柱状結晶側面の断裁処理により生じた変質領域が柱状結晶側面全領域の0%以上、40%以下であることを特徴とするシンチレータパネル。
【0013】
2.前記蛍光体層を形成していない支持体領域が支持体の端部から0.5mm以下であることを特徴とする前記1に記載のシンチレータパネル。
【0014】
3.前記蛍光体保護層が樹脂であり、前記蛍光体層に接着していることを特徴とする前記1または2に記載のシンチレータパネル。
【0015】
4.前記樹脂がポリパラキシリレンまたはホットメルト樹脂の少なくとも1種を含有することを特徴とする前記3に記載のシンチレータパネル。
【0016】
5.前記支持体が樹脂であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載のシンチレータパネル。
【0017】
6.前記支持体が無機物であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載のシンチレータパネル。
【0018】
7.支持体上に、柱状結晶からなる蛍光体層及び蛍光体保護層を順次形成したシンチレータパネルの製造方法であって、前記蛍光体層を前記支持体上に形成した後、前記支持体に対し蛍光体層非形成面からレーザを用いて断裁することを特徴とするシンチレータパネルの製造方法。
【0019】
8.前記1〜6のいずれか1項に記載のシンチレータパネルと、2次元状に配置した複数の画素を有する平面受光素子が光学的にカップリングしていることを特徴とするフラットパネルディテクタ。
【0020】
9.前記平面受光素子に対向する蛍光体層の面が平坦化処理されていることを特徴とする前記8に記載のフラットパネルディテクタ。
【0021】
10.前記支持体が前記平面受光素子を有する基板であることを特徴とする前記8または9に記載のフラットパネルディテクタ。
【0022】
11.前記蛍光体層を平面受光素子基板に形成した後、前記平面受光素子基板の蛍光体層非形成面からレーザ光を用いて断裁することを特徴とする前記8〜10のいずれか1項に記載のフラットパネルディテクタの製造方法。
【0023】
12.前記平面受光素子がガラス基板上に形成された薄膜トランジスタ(TFT)からなる平板平面受光素子であることを特徴とする前記8〜10のいずれか1項に記載のフラットパネルディテクタ。
【0024】
13.前記平面受光素子がCCDまたはCMOSであることを特徴とする前記8〜10のいずれか1項に記載のフラットパネルディテクタ。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、小型化され、耐湿性に優れ、生産性に優れたシンチレータパネル、その製造方法、該シンチレータパネルを用いたフラットパネルディテクタ及びその製造方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)フラットパネルディテクタの概略構成を示す斜視図である。(b)本発明のシンチレータパネルの断面図である。
【図2】(a)断裁工程で用いられる断裁装置の他の例の概略斜視図である。(b)断裁によって切り出される複数のシンチレータパネルを表す平面図である。
【図3】蛍光体層の形成に用いられる装置の例の模式断面図である。
【図4】保護層の形成に用いられる、装置の例の模式断面図である。
【図5】本発明のシンチレータパネルをレーザ光で断裁する一例を示す概略図ある。
【図6】レーザ断裁処理により生じた蛍光体層端部の柱状結晶側面の変質領域を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明と構成要素等について詳細な説明をする。
【0028】
本発明においては、シンチレータパネルの蛍光体層端部の柱状結晶側面の、断裁処理により生じた変質領域を柱状結晶側面全領域の0%以上、40%以下とし、断裁処理による溶融や改質といった領域の面積を抑え、蛍光体層を形成した時の柱状結晶構造をできるだけ残すことを特徴とする。
【0029】
断裁処理により生じた変質領域が柱状結晶側面全領域の0%以上、40%以下の範囲にすることで、蛍光体層を形成した時の蛍光体層側面の粗さが維持され、保護層の膜付きが改良されることを見出した。この変質領域については0%以上、30%以下がさらに好ましく、レーザによる断裁処理では、支持体のみのレーザ断裁処理のみではなく蛍光体層にも断裁起点があった方が断裁上好ましいことから、変質領域は1%以上、30%以下がさらに好ましい。
【0030】
本発明のシンチレータパネルは支持体上に蛍光体層を形成した後に、所定のサイズに断裁される。断裁処理により支持体の端部表面に該蛍光体層が形成されていない領域、即ち蛍光体層の欠損部が支持体の端部から0.5mm以下とすることで、画像品質を向上させることができる。支持体表面に蛍光体層が形成されていない領域については、該支持体の端部より0.2mm以内であることが好ましく、0.1mm以内であることがさらに好ましい。これにより断裁した後に支持体上に蛍光体層を形成する場合に比較し、画像有効領域を広くすることができる。
【0031】
蛍光体層を形成する支持体が光電変換素子を有する基板と同一の場合は、配線等を形成するために蛍光体層を全ての支持体端部には形成しないことも考え得る。その場合は光電変換としての出力された光を電気エネルギーに変換する機能、及び得られた電気エネルギーに基づく信号を出力する機能に必要な構成を有しない部分において、上記の蛍光体形成領域を満たすものとする。
【0032】
図6は、レーザ断裁処理により生じた蛍光体層端部の柱状結晶側面の変質領域を示す概略図である。蛍光体層122を支持体121上に形成した後、レーザ断裁処理する際に蛍光体層端部の柱状結晶側面に変質領域122aが発生する。この変質領域を0%以上、40%以下の範囲にするには、蛍光体層122を支持体121上に形成した後、支持体121の蛍光体層122非形成面(裏面)からレーザを用いて断裁する。裏面からレーザ強度または照射時間を調整して支持体のみを断裁すれば、柱状結晶からなる蛍光体層はレーザが到達してなくても柱状結晶壁面に沿って分割されるので、断裁が完了し変質領域は0%になる。レーザ強度または照射時間が長く、レーザが蛍光体層の中に深く到達するほど、変質領域は大きくなる。蛍光体層側(表面)からレーザ照射すると変質領域はほとんど100%になる。図6では断裁後、支持体の一部を除き保護層123が形成されている。
【0033】
レーザ処理変質領域は、蛍光体層のレーザ共焦点顕微鏡による側面観察を実施し、画像処理ソフトによって、蛍光体側面の面積に対するレーザ処理による変質領域面積を求めることができる。
【0034】
本発明において使用されるレーザ処理とは、シンチレータパネルの断裁に用いることのできるレーザ処理であれば特に制限はなく、例えば、Nd:YAG、半導体、Nd:ガラス、Nd:YLF、Nd:BEL、Nd:YVO、LNP、Ti:サファイヤ、アレキサンドライト、Co−MgF、Cr−GSGG、エメラルド、プロフスカイト、Er−YLF、Er−ガラス等の赤外線レーザ、ルビー、He−Ne、CO、Arイオン、He−Cd、Cu、Au、Sr、Krイオン、Neイオン、Xeイオン、CO、ハロゲン化水素、O−I、Dye、Nd:YAGの第二次高調波及び第三次高調波等の可視光レーザ、ArFエキシマ、KrFエキシマ、XeFエキシマ、ArClエキシマ、KrClエキシマ、XeClエキシマ、N、Au、Nd:YAGの第四次高調波等の紫外線レーザ等を用いることができるが、中でも紫外線レーザが好ましい。
【0035】
本発明で使用される紫外線レーザは、例えば波長266nm程度の紫外レーザが望ましい。波長266nm程度のレーザでは、熱作用により加工対象物を加工すると同時に有機材料でC−H結合やC−C結合等の分子結合を解離させることが可能である。すなわち蛍光体層は熱作用により断裁され、支持体は分子結合が解離するため断裁されることとなる。このため、蛍光体層は熱作用で、支持体は分子結合の解離により切断されるため、切断部の結晶割れをより防止することができる。
【0036】
図5は、本発明のシンチレータパネルをレーザ光で断裁する一例を示す概略図である。レーザ光源61、例えば波長変換ユニットを含むNd:YAGレーザ発振器から、Nd:YAGレーザの4倍高調波(波長266nm)が、パルスエネルギ0.1mJ/パルス、パルス幅50nsで出射する。なお、加工材料の種類に応じて、YAG、YLF、YVO等の固体レーザの基本波及びその高調波、または、COレーザ等のレーザ光を用いることができる。レーザビームは、ビーム径を拡大し、平行光として出射するエキスパンダ62を経て、反射ミラー65で反射され、ガルバノスキャナ66に入射する。ガルバノスキャナ66は、2枚の揺動可能な反射鏡を含んで構成され、レーザビームを2次元方向に高速で走査する。ガルバノスキャナ66を出射したレーザビームは、fθレンズ67を経て、XYステージ69上に載置された加工対象物である蛍光体プレート68に入射して断裁することができる。なお、63はマスクで、64は制御部を示す。
【0037】
また、支持体によっては、レーザダイシングを選択することも可能である。
【0038】
レーザダイシングとは、レーザ光の焦点を加工対象物の内側に合わせ、多光子吸収と呼ばれるレーザ光の強度を非常に高くした場合に発生する光学的損傷現象を利用する断裁方法であり、ガラス等基板内部に改質層を形成し、そこを起点として分割する。レーザダイシングは近年シリコンウェハの断裁に利用されている。
【0039】
本発明の保護層は蛍光体層と接着性を有するものであれば、公知のいかなるものも使用できるが、CVD法(気相化学成長法)により蛍光体の柱状結晶の隙間及び表面にポリパラキシリレン膜を成膜するのが好ましい。本発明におけるポリパラキシリレン膜の機能は潮解性を有する蛍光体層の防湿とシンチレータパネルと受光素子の接触による腐食防止であり、形成膜厚は2μm以上、20μm以下が好ましい、20μm以下とすることでディテクタの鮮鋭性が向上する。このような薄膜の保護層の場合、平面受光素子に設置する際やその他生産プロセス上の取り扱いにより、周辺部の剥離の懸念があった。しかしながら本発明を用いれば剥離の懸念を格段に少なくできることが判明している。
【0040】
また保護層としてホットメルト樹脂も使用できる。ホットメルト樹脂はシンチレータパネルと平面受光素子面との接着も兼ねることができる。ホットメルト樹脂はポリオレフィン系、ポリエステル系またはポリアミド系樹脂を主成分ものが好適であるがこれに限定されない。
【0041】
本発明における支持体として、樹脂が好適に用いられる。樹脂を支持体として用いる場合、蒸着の高温に対する耐久性が必要であり、耐熱性が高く表面性がよいポリイミドフィルムやポリエチレンナフタレートが好ましいが、これには限定されない。X線吸収の少ない厚さ50〜250μmの可とう性フィルムを用いることが好ましいが、本発明を用いれば蛍光体層、保護層を形成した後、受光素子との貼り合せにおいてシンチレータパネルを湾曲させるプロセスを採用しても、また、有機TFT等の可とう性受光素子を採用しても保護層の剥離が改良される。
【0042】
また、本発明を用いれば、従来、保護層の剥離防止として凹凸の付与等の端部処理をすることが好ましいと考えられていたアモルファスカーボン、FOP、Alといった有機物である保護層と親和性の低い支持体も、端部処理を必要としない。
【0043】
さらには、本発明を用いれば、受光素子となる半導体基板上に直接蛍光体層及び保護層を形成した場合においても、受光素子基板と保護層の剥離を改良することが可能である。
【0044】
本発明のもう一つの利点として、蛍光体層の平坦化処理との併用がある。本発明に好適に用いられる蒸着によって形成された蛍光体層には、蒸着異物や蒸着突起といった課題が発生する。これに対し、圧力や熱を伴う圧力、切削、研磨等により平坦化する技術が知られており、さらには蛍光体層の平坦化処理は受光素子との密着性を向上させ鮮鋭性を向上させることができる(例えば、特許第3398406号明細書参照)。しかし、一方で平坦化処理により保護層との密着性は低下する傾向にあったが、本発明の併用により、平坦化処理を採用することが可能となった。
【0045】
以下、本発明と構成要素等について詳細な説明をする。
【0046】
(シンチレータパネルの構成)
本発明のシンチレータパネルは、支持体上に柱状結晶からなる蛍光体層及び蛍光体保護層を有し、支持体と蛍光体層の間に下引層を有する態様がより好ましい。また支持体上に反射層を設け、反射層、下引層、及び蛍光体層の構成であってもよい。以下、各構成層及び構成要素等について説明する。
【0047】
(蛍光体層)
本発明に係る蛍光体層は、蛍光体柱状結晶からなる蛍光体層であることを特徴とする。また蒸着後に所定サイズに断裁されており、支持体のほぼ全面が蛍光体層形成領域となっている。
【0048】
蛍光体層を形成する材料としては、種々の公知の蛍光体材料を使用することができるが、X線から可視光に対する変更率が比較的高く、蒸着によって容易に蛍光体を柱状結晶構造に形成できるため、光ガイド効果により結晶内での発光光の散乱が抑えられ、蛍光体層の厚さを厚くすることが可能であることから、ヨウ化セシウム(CsI)が好ましい。
【0049】
ただし、CsIのみでは発光効率が低いために、各種の賦活剤が添加される。例えば、特公昭54−35060号公報の如く、CsIとヨウ化ナトリウム(NaI)を任意のモル比で混合したものが挙げられる。また、例えば特開2001−59899号公報に開示されているようなCsIを蒸着で、タリウム(Tl)、ユウロピウム(Eu)、インジウム(In)、リチウム(Li)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、ナトリウム(Na)等の賦活物質を含有するCsIが好ましい。本発明においては、特に、ナトリウム(Na)、タリウム(Tl)、ユウロピウム(Eu)が好ましい。更に、タリウム(Tl)が好ましい。
【0050】
なお、本発明においては、特に、1種類以上のタリウム化合物を含む添加剤とヨウ化セシウムとを原材料とすることが好ましい。すなわち、タリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Tl)は400nmから750nmまでの広い発光波長をもつことから好ましい。
【0051】
本発明に係る1種類以上のタリウム化合物を含有する添加剤のタリウム化合物としては、種々のタリウム化合物(+Iと+IIIの酸化数の化合物)を使用することができる。
【0052】
本発明において、好ましいタリウム化合物は、ヨウ化タリウム(TlI)、臭化タリウム(TlBr)、塩化タリウム(TlCl)、またはフッ化タリウム(TlF、TlF)等である。
【0053】
また、本発明に係るタリウム化合物の融点は、400〜700℃の範囲内にあることが好ましい。700℃以内を超えると、柱状結晶内での添加剤が不均一に存在してしまい、発光効率が低下する。なお、本発明での融点とは、常温常圧下における融点である。
【0054】
本発明に係る蛍光体層において、当該添加剤の含有量は目的性能等に応じて、最適量にすることが望ましいが、ヨウ化セシウムの含有量に対して、0.001〜50mol%、更に0.1〜10.0mol%であることが好ましい。
【0055】
ここで、ヨウ化セシウムに対し、添加剤が0.001mol%以上であると、ヨウ化セシウム単独使用で得られる発光輝度の向上がみられ、目的とする発光輝度を得る点で好ましい。また、50mol%以下であるとヨウ化セシウムの性質・機能を保持することができて好ましい。
【0056】
なお、蛍光体層の厚さは、50〜600μmであることが好ましく、支持体として樹脂フィルムを使用した場合は、断裁時のダメージの点から50〜500μmであることが好ましい。また輝度と鮮鋭性の特性のバランスから医療用として120〜400μmであることがより好ましい。
【0057】
なお、本発明においては、支持体上に蛍光体(シンチレータ)の原料の蒸着により蛍光体層を形成した後に、所定サイズに断裁する。
【0058】
これにより、シンチレータパネルの画像有効領域が広くなる。このため、口腔内ディテクタ、ラインセンサのフラットパネルディテクタといった受光領域が小さいディテクタとして好適となる。さらにはシリコンウェハ基板に蒸着後、レーザダイシングによって断裁することも可能である。
【0059】
個々の支持体への蒸着は不要であり、蒸着装置で作製可能な最大サイズで蒸着を実施し、必要に応じて、所望されるサイズに断裁すればよく、生産効率、出荷納期でのメリットが大きい。
【0060】
(反射層)
本発明においては、支持体上には反射層を設けることが好ましい、蛍光体層から発した光を反射して、光の取り出し効率を高めるためのものである。当該反射層は、Al、Ag、Cr、Cu、Ni、Ti、Mg、Rh、Pt及びAuからなる元素群の中から選ばれるいずれかの元素を含む材料により形成されることが好ましい。特に、上記の元素を主成分とする薄膜、例えば、Ag膜、Al膜を用いることが好ましい。また、このような薄膜を2層以上形成するようにしてもよい。なお、反射層の厚さは、0.005〜0.3μm、より好ましくは0.01〜0.2μmであることが、発光光取り出し効率の観点から好ましい。
【0061】
支持体が受光素子基板であった場合は、蛍光体層を受光素子基板上に設けてから反射層を設けることが好ましい。この場合、蛍光体層と反射層が接触して、腐食発生することを防止するために、蛍光体層と反射層の間に中間層を設けることが好ましい。
【0062】
中間層は光を有効に利用するための屈折率調整部材であってもよいし、保護層と兼用でも構わない。
【0063】
さらには反射層としてTiO(アナターゼ型、ルチル型)、MgO、PbCO・Pb(OH)、BaSO、Al、M(II)FX(ただし、M(II)はBa、Sr及びCaの各原子から選ばれる少なくとも一種の原子であり、XはCl原子またはBr原子である。)、CaCO、ZnO、Sb、SiO、ZrO、リトポン(BaSO・ZnS)、珪酸マグネシウム、塩基性珪硫酸塩、塩基性燐酸鉛、珪酸アルミニウム等からなる白色顔料を主成分として用いることも可能である。
【0064】
(下引層)
本発明においては、支持体と蛍光体層の間、または反射層と蛍光体層の間に下引き層を設けることが好ましい。当該下引層は、CVD法(気相化学成長法)によりポリパラキシリレン膜を成膜する方法や高分子結合材(バインダー)による方法があるが、膜付の観点から高分子結合材(バインダー)による方法がより好ましい。また下引層の厚さは、0.5〜4μmが好ましい。4μm以下とすることで、下引層内での光散乱が小さくなり鮮鋭性が良化する。以下、下引層の構成要素について説明する。
【0065】
〈高分子結合材〉
本発明に係る下引層は、溶剤に溶解または分散した高分子結合材(以下「バインダー」ともいう。)を塗布、乾燥して形成することが好ましい。高分子結合材としては、具体的には、ポリウレタン、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられる。なかでもアクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル系共重合体、ポリビニルブチラール、ニトロセルロースを使用することが好ましい。
【0066】
本発明に係る高分子結合材としては、特に蛍光体層との密着の点でポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル系共重合体、ポリビニルブチラール、ニトロセルロース等が好ましい。また、ガラス転移温度(Tg)が30〜100℃のポリマーであることが、蒸着結晶と支持体との膜付の点で好ましい。この観点からは、特にアクリル系樹脂、ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0067】
下引層の調製に用いることができる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール等の低級アルコール、メチレンクロライド、エチレンクロライド等の塩素原子含有炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、キシレン等の芳香族化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエステル、エチレングリコールモノメチルエステル等のエーテル及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0068】
なお、本発明に係る下引層には、蛍光体(シンチレータ)が発光する光の散乱の防止し、鮮鋭性等を向上させるために顔料や染料を含有させてもよい。
【0069】
(保護層)
本発明に係る保護層は、種々の材料を用いて形成することができる。例えば、CVD法によりポリパラキシリレン膜を形成する。即ち、蛍光体(シンチレータ)及び支持体の表面全体にポリパラキシリレン膜を形成し、保護層とすることができる。
【0070】
ポリパラキシリレン膜厚は2μm以上、20μm以下が好ましく、受光素子と接着する場合の接着剤層の厚みは10μm以上、28μm以下が好ましい。すなわち接着剤層の厚みは接着力確保の観点から10μm以上が好ましいが、ポリパラキシリレン膜厚と接着剤層の厚みがトータルで30μm以下とすることで、受光素子とシンチレータパネルとの間隙でシンチレータからの発光の拡散が大きくなり、フラットパネルディテクタとしての鮮鋭性が低下するのを防止できる。
【0071】
また、別の態様の保護層として、蛍光体層上にホットメルト樹脂も使用できる。ホットメルト樹脂はシンチレータパネルと平面受光素子面との接着も兼ねることができる。ホットメルト樹脂はポリオレフィン系、ポリエステル系またはポリアミド系樹脂を主成分ものが好適であるがこれに限定されない。
【0072】
本発明で言うホットメルト樹脂とは、水や溶剤を含まず室温で固体であり、不揮発性の熱可塑性材料からなる接着性樹脂ある。樹脂温度が上昇すると溶融し、樹脂温度が低下すると固化する。また加熱溶融状態で接着性が有り、常温で固体状態となり接着性を持たないものである。光透過性の点から、ポリオレフィン系樹脂がより好ましい。
【0073】
またホットメルト樹脂の溶融開始温度は、60℃以上、150℃以下が好ましい。TFT等の平面受光素子面は連続使用で表面温度が60℃程度になることがあり、60℃以上の溶融開始温度は平面受光素子面とシンチレータパネルの接着剥がれを防止できる点で好ましい。また平面受光素子面とシンチレータパネルの接着に際して150℃以下の加熱は平面受光素子の損傷の発生を防止できる点で好ましい。ホットメルト樹脂の溶融開始温度は可塑剤添加により調整可能である。
【0074】
ホットメルト樹脂による保護層の作製方法は、例えば以下に示す方法がある。
【0075】
剥離剤がコーテングされた剥離シートを準備し、ホットメルト樹脂をこの剥離シートに塗設し、このホットメルト樹脂面をシンチレータパネルの蛍光体層面に配置し、加熱したローラーで加圧しながら張り合わせ、冷却後に剥離シートを取り除く。
【0076】
あるいは、上記ホットメルト樹脂が塗設されたシートを蛍光体層面に配置した後、これらの上下に樹脂フィルムを設置し減圧下で上下のフィルムの周縁部をシールし密封した後、大気圧下で過熱する方法。
【0077】
後記の方法の樹脂フィルムとしてはシーラントフィルムとポリエチレンテレフタレート(PET)のドライラミネートフィルム等が好適であり、蛍光体層全面に大気圧による均一な接着圧が得られるため、より好ましい。
【0078】
また保護層の光透過率は、光電変換効率、蛍光体(シンチレータ)発光波長等を考慮し、550nmで70%以上あることが好ましい。
【0079】
(支持体)
本発明のシンチレータパネルは、(1)炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)、(2)カーボンボード(木炭及び紙を炭化処理して固めたもの)、(3)カーボン支持体(グラファイト支持体)、(4)プラスチック支持体、(5)ガラス支持体、(6)各種金属支持体、(7)上記(1)〜(6)の支持体を薄く形成し発泡樹脂でサンドイッチしたもの等、支持体として各種の材料を使用することができる。
【0080】
従来気相堆積法によるシンチレータパネル製造方法においては、その支持体が耐熱性を要することから、剛直な支持体に蛍光体層を蒸着することが一般的であった。剛直な支持体を用いる場合、厚さは0.3mm以上、1.0mm以下であることが好ましく、特にX線吸収率の観点からCFRP、アモルファスカーボン、Al、FOPを用いることが好ましい。また、光電変換を行うフォトダイオードを2次元状に配置して受光領域である光感応部を形成しているSi基板や、基板上に複数の走査線と複数の信号線によって区画された領域に光電変換を行うフォトダイオード、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor。以下、TFTという。)が設けられ、TFTのソース電極、ゲート電極、ドレイン電極がフォトダイオード、走査線、信号線がそれぞれ接続されるように設計されたガラス基板も可能である。
【0081】
本発明に使用する支持体としては各種の材料を使用することができるが、樹脂フィルムの場合、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミド(PI)フィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム、炭素繊維強化樹脂シート等の樹脂フィルム(プラスチックフィルム)を用いることができる。特に、ポリイミドまたはポリエチレンナフタレートを含有する樹脂フィルムが、ヨウ化セシウムを原材料として気相法にて蛍光体柱状結晶を形成する場合に、好適である。
【0082】
なお、本発明に係る支持体としての樹脂フィルムは、厚さ50〜250μmであり、更に、可とう性を有することが好ましい。
【0083】
ここで、「可とう性を有する支持体」とは、120℃での弾性率(E120)が1000〜6000N/mmである支持体をいい、かかる支持体としてポリイミドまたはポリエチレンナフタレートを含有する樹脂フィルムが好ましい。
【0084】
なお、「弾性率」とは、引張試験機を用い、JIS C 2318に準拠したサンプルの標線が示すひずみと、それに対応する応力が直線的な関係を示す領域において、ひずみ量に対する応力の傾きを求めたものである。これがヤング率と呼ばれる値であり、本発明では、かかるヤング率を弾性率と定義する。
【0085】
本発明に用いられる支持体は、上記のように120℃での弾性率(E120)が1000〜6000N/mmであることが好ましい。より好ましくは1200〜5000N/mmである。
【0086】
具体的には、ポリエチレンナフタレート(E120=4100N/mm)、ポリエチレンテレフタレート(E120=1500N/mm)、ポリブチレンナフタレート(E120=1600N/mm)、ポリカーボネート(E120=1700N/mm)、シンジオタクチックポリスチレン(E120=2200N/mm)、ポリイミド(E120=1200N/mm)、ポリエーテルイミド(E120=1900N/mm)、ポリアリレート(E120=1700N/mm)、ポリスルホン(E120=1800N/mm)、ポリエーテルスルホン(E120=1700N/mm)等からなる樹脂フィルムが挙げられる。
【0087】
これらは単独で用いてもよく積層あるいは混合して用いてもよい。中でも、特に好ましい樹脂フィルムとしては、上述のように、ポリイミドまたはポリエチレンナフタレートを含有する樹脂フィルムが好ましい。
【0088】
なお、シンチレータパネルと平面受光素子面を貼り合せる際に、支持体の変形や蒸着時の反り等の影響を受け、フラットパネルディテクタの受光面内で均一な画質特性が得られないという点に関して、該支持体を、厚さ50〜500μmの樹脂フィルムとすることでシンチレータパネルが平面受光素子面形状に合った形状に変形し、フラットパネルディテクタの受光面全体で均一な鮮鋭性が得られる。
【0089】
(フラットパネルディテクタの製造方法)
本発明に関わる典型的なフラットパネルディテクタの製造方法について、図を参照しながら説明する。
【0090】
図1(a)は、フラットパネルディテクタ1の概略構成を示す斜視図である。シンチレータパネル12は接着層13で受光素子11に接着している。シンチレータパネルの支持体121と蛍光体層122は同一のサイズとなっている。受光素子11の信号取り出し部111を除いた受光画素部全面とシンチレータパネル12の蛍光体層122部分がカップリングされている。図1(a)では、見易いように蛍光体層122の側面と支持体121の一部から保護層123を除いたが、実際は図1(b)のように、蛍光体層122の側面と支持体121の一部には保護層123が形成されている。フラットパネルディテクタ全体は筐体14で密閉されている。
【0091】
図1(b)は、本発明のシンチレータパネル12の断面図であり、支持体121、反射層121a、下引層121b、蛍光体層122、及び保護層123の順に形成されている。反射層121a、下引層121bはあることが好ましいが、なくてもよい。
【0092】
(シンチレータパネルの断裁方法)
本発明に関わるシンチレータパネルの断裁方法の典型的例について、図を参照しながら説明する。
【0093】
図2(a)は、保護層が形成されていないシンチレータパネル12のレーザ断裁の例である。
【0094】
レーザ断裁装置3は、箱型に形成されたパージ室33を備えている。パージ室33は、外部の空間中に浮遊する塵等が内部に侵入しないように、内部がほぼ密閉された空間となっている。なお、パージ室33内は、低湿環境であることが好ましい。また、パージ室2の上面には、レーザ光を透過させる透光窓34が設けられている。また塵等の浮遊物をパージ室33の外に導く排出管34が設けられている。
【0095】
レーザ断裁装置3の支持台32上にシンチレータパネル12の蛍光体層122側を下面として載置して、該支持台32上にシンチレータパネル12を吸着保持する。従って、シンチレータパネル12は、蛍光体層122を下側にして保持される。
【0096】
支持台32上に載置されたシンチレータパネル12は、支持台移動手段(図示しない)によってレーザ発生装置31のレーザ照射部直下に位置付けられる。レーザ発生装置31から出射し、該レーザ光をシンチレータパネル12に対して照射する。照射条件はYAG−UV(イットリウム・アルミニウム・ガーネット結晶:波長266nm)、周波数5000Hzでビーム径20μmのパルスレーザ光、出力300mWである。支持台移動手段(図示しない)によって、シンチレータパネル12を移動することで断裁する。
【0097】
図2(b)はレーザ断裁によって切り出された複数のシンチレータパネルの例である。Sはレーザ断裁部分である。シンチレータパネル12から12a、12b、12c、12d、12e、12fが切り出されている。
【0098】
(シンチレータパネルの蒸着方法)
本発明に関わるシンチレータパネルの蒸着方法の典型的例について、図を参照しながら説明する。
【0099】
〈蒸着装置〉
図3に示す通り、蒸着装置961は箱状の真空容器962を有しており、真空容器962の内部には真空蒸着用のボート963が配されている。ボート963は蒸着源の被充填部材であり、当該ボート963には電極が接続されている。当該電極を通じてボート963に電流が流れると、ボート963がジュール熱で発熱するようになっている。放射線用シンチレータパネル12の製造時においては、ヨウ化セシウムと賦活剤化合物とを含む混合物がボート963に充填され、そのボート963に電流が流れることで、上記混合物を加熱・蒸発させることができるようになっている。
【0100】
なお、被充填部材として、ヒータを巻回したアルミナ製のるつぼを適用してもよいし、高融点金属製のヒータを適用してもよい。
【0101】
真空容器962の内部であってボート963の直上には支持体121を保持するホルダ64が配されている。ホルダ964にはヒータ(図示略)が配されており、当該ヒータを作動させることでホルダ964に装着した支持体121を加熱することができるようになっている。支持体121を加熱した場合には、支持体121の表面の吸着物を離脱・除去したり、支持体121とその表面に形成される蛍光体層122との間に不純物層が形成されるのを防止したり、支持体121とその表面に形成される蛍光体層122との密着性を強化したり、支持体121の表面に形成される蛍光体層2の膜質の調整を行なったりすることができるようになっている。
【0102】
ホルダ964には当該ホルダ964を回転させる回転機構965が配されている。回転機構965は、ホルダ64に接続された回転軸65aとその駆動源となるモータ(図示略)から構成されたもので、当該モータを駆動させると、回転軸965aが回転してホルダ964をボート963に対向させた状態で回転させることができるようになっている。
【0103】
蒸着装置961では、上記構成の他に、真空容器962に真空ポンプ966が配されている。真空ポンプ966は、真空容器962の内部の排気と真空容器962の内部へのガスの導入とをおこなうもので、当該真空ポンプ966を作動させることにより、真空容器962の内部を一定圧力のガス雰囲気下に維持することができるようになっている。
【0104】
〈CVD装置〉
図4はシンチレータパネル12の蛍光体層122表面にポリパラキシリレン膜からなる保護層を形成する例である。
【0105】
CVD蒸着装置5は、ポリパラキシリレンの原料であるジパラキシリレンを挿入し気化させる気化室51、気化したジパラキシリレンを加熱昇温してラジカル化する熱分解室52、ラジカル化された状態のジパラキシリレンをシンチレータが形成された支持体121に蒸着させる蒸着室53、防臭、冷却を行う冷却室54及び真空ポンプを有する排気系55を備えて構成されている。ここで、蒸着室53は、図4に示すように熱分解室52においてラジカル化されたポリパラキシリレンを導入する導入口53a及び余分なポリパラキシリレンを排出する排出口53bを有すると共に、ポリパラキシリレン膜の蒸着を行う試料を支持するターンテーブル(蒸着台)53cを有する。
【0106】
蒸着室53のターンテーブル53c上にシンチレータパネル12の蛍光体層122を上向きにして設置する。次に、気化室51において175℃に加熱して気化させ、熱分解室52において690℃に加熱昇温してラジカル化したジパラキシリレンを、導入口53aから蒸着室3に導入して、蛍光体層122の保護層(ポリパラキシリレン膜)123を10μmの厚さで蒸着する。この場合に、蒸着室53内は真空度13Paに維持されている。また、ターンテーブル53cは、4rpmの速度で回転させている。また、余分なポリパラキシリレンは、排出口53bから排出され、防臭、冷却を行う冷却室54及び真空ポンプを有する排気系55に導かれる。
【0107】
〈シンチレータパネル〉
次に、本発明に係るシンチレータパネルの作製方法について説明する。
【0108】
当該放射線用シンチレータパネル12の作製方法においては、上記で説明した図3の蒸発装置961を好適に用いることができる。蒸発装置961を用いて放射線用シンチレータパネル12を作製する方法について説明する。
【0109】
《反射層の形成》
用いる支持体によって、適した位置に反射層としての金属薄膜(Al膜、Ag膜等)をスパッタ法により形成する。樹脂フィルムを支持体として使用する場合、樹脂フィルム上にAl膜をスパッタ蒸着したフィルムは、各種の品種が市場で流通しており、これらを本発明の支持体121として使用することも可能である。
【0110】
《下引層の形成》
下引層123は、有機溶剤に高分子結合材を分散・溶解した組成物を塗布、乾燥して形成する。高分子結合材としては接着性、反射層の耐腐食性の観点でアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の樹脂が好ましい。
【0111】
《蛍光体層の形成》
上記のように反射層と下引層を設けた支持体121をホルダ964に取り付けるとともに、複数個(図示しない)のボート963にヨウ化セシウムとヨウ化タリウムとを含む粉末状の混合物を充填する(準備工程)。このボート内のヨウ化セシウム及びヨウ化タリウムの混合物比は全てのボートで同じでも、2系統以上あってもよい。ボート963と支持体121との間隔を100〜1500mmに設定し、その設定値の範囲内のままで後述の蒸着工程の処理をおこなう。より好ましくはボート963と支持体121との間隔を400mm以上、1500mm以下とし、複数個のボート963を同時に加熱し蒸着を行う。
【0112】
準備工程の処理を終えたら、真空ポンプ966を作動させて真空容器962の内部を排気し、真空容器962の内部を0.1Pa以下の真空雰囲気下にする(真空雰囲気形成工程)。ここでいう「真空雰囲気下」とは、100Pa以下の圧力雰囲気下のことを意味し、0.1Pa以下の圧力雰囲気下であるのが好適である。
【0113】
次にアルゴン等の不活性ガスを真空容器962の内部に導入し、当該真空容器962の内部を0.001〜5Pa、より好ましくは0.01〜2Paの真空雰囲気下に維持する。その後、ホルダ964のヒータと回転機構965のモータとを駆動させ、ホルダ964に取付け済みの支持体121をボート963に対向させた状態で加熱しながら回転させる。蛍光体層が形成される支持体121の温度は、蒸着開始時は室温25〜50℃に設定することが好ましく、蒸着中は100〜300℃、より好ましくは150〜250℃に設定することが好ましい。
【0114】
この状態において、電極からボート963に電流を流し、ヨウ化セシウムとヨウ化タリウムとを含む混合物を700℃程度で所定時間加熱してその混合物を蒸発させる。その結果、支持体121の表面に無数の柱状結晶体が順次成長して所望の厚さの結晶が得られる(蒸着工程)。この後、ヨウ化セシウムが蒸着された支持体を取り出し、粘着ローラーにより蛍光体表面をクリーニングする。また、必要に応じて、アニーリング等による活性化処理を行う。
【0115】
なお、上記記載事項は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の改良及び設計変更を行ってもよい。
【0116】
一の改良・設計変更事項として、上記蒸着工程では抵抗加熱法による処理としたが、当該各工程の処理は電子ビームによる処理であってもよいし、高周波誘導による処理でもよい。本実施形態では、比較的簡単な構成で取り扱いが容易、安価、かつ、非常に多くの物質に適用可能である点から、上記の通り、抵抗加熱法による加熱処理を適用するのが好ましい。抵抗加熱法による加熱処理を実行すると、同一のボート963において、ヨウ化セシウムとヨウ化タリウムとの混合物の加熱処理と蒸着処理という両処理を両立することができる。
【0117】
他の改良・設計変更事項として、蒸着装置961のボート963とホルダ964との間に、ボート963からホルダ964に至る空間部を遮断するシャッタ(図示略)を配してもよい。この場合、当該シャッタによってボート963上の混合物の表面に付着した目的物以外の物質が蒸着工程の初期段階で蒸発し、その物質が支持体121に付着するのを防止することができ、蒸着初期に発生する異物による柱状結晶の異常成長を防止できる。
【0118】
また、これらの蒸着異物による異常成長等の部位をなくし、受光素子との密着性を向上させるために、平坦化処理を実施することが好ましい。平坦化処理とは圧力や熱を伴う圧力、切削や研磨、充填等の蛍光体柱状結晶構造を破壊しない程度にどのような手段を使ってもよいが、蛍光体層表面の均一化のために剛直な板でシンチレータパネルを挟み大気圧程度の圧力で熱処理を行うのが好ましい。
【0119】
ここでは支持体として樹脂を用いて蛍光体を蒸着する例を挙げたが、FOPやアモルファスカーボン、受光素子となるフォトダイオード形成後のTFTガラス基板、及びレーザダイシング前のシリコンウェハ等が支持体となっても同様に蒸着することが可能であり、必要に応じて蒸着ホルダを変更したりマスキングを実施したりすることが可能である。
【0120】
《シンチレータパネルの断裁》
支持体がガラスやシリコンの場合はレーザダイシング装置での断裁もできる。また支持体が樹脂フィルムの場合は図2(a)に示したレーザ断裁装置を使用することが好ましい レーザ処理により断裁したシンチレータプレートは、支持体ほぼ全域に蛍光体層が形成されており、断裁した後に支持体上に蛍光体層を形成する場合に比較し、画像有効領域が広く好ましいが、その反面、保護層形成をはじめとするその後の各プロセスにおけるハンドリングが難しくなる。そこで断裁終了後のシンチレータプレートにハンドリング用の保持部材を使用することが好ましい。この保持部材は真空吸引、静電吸引といった半導体を持ち運ぶために一般的に使用される機器でもよく、また、粘着もしくは接着により固定され、各工程終了後、梱包前に熱、UV、冷却、超音波等の処理により簡単に剥離できるようなシートを用いてもよい。また、剛直で大面積の平板にこのようなシートをシンチレータパネルの断裁形状に両面テープで貼り付けておけば、小サイズで数量の多い品種でも断裁後のピックアップや保護層形成といったその後の工程をまとめて行うことができ、生産プロセスの時間短縮につながり、有用である。
【0121】
《保護層の形成》
図4に示したCVD装置にてポリパラキシリレンからなる保護層123、あるいは剥離剤がコーテングされた剥離シートに、ホットメルト樹脂を塗設後、ホットメルト樹脂面をシンチレータパネルの蛍光体層面に配置し、120℃に加熱したローラーで加圧しながら張り合わせることで保護層123を形成する。受光素子面との接着に接着剤を使用する場合は保護層と接着剤層の厚みのトータルが30μm以下になるように保護層の厚みを調整する。
【0122】
《シンチレータパネルと受光素子の接着》
シンチレータパネル12と受光素子11を接着剤で張り合わせる場合、接着にあたっては接着剤が固化するまで10〜500fg/cm(0.98〜49kPa)の圧力で加圧する。加圧により接着剤層から気泡が除去される。保護層123としてホットメルト樹脂を使用した場合は10〜500fg/cm(0.98〜49kPa)の圧力で加圧しながら、ホットメルト樹脂の溶融開始温度より10℃程度高い温度まで加熱し1〜2時間静置後、徐々に冷却する。急冷するとホットメルト樹脂の収縮応力により受光素子の画素にダメージかある。好ましくは20℃/h以下の速度で50℃以下まで冷却する。
【0123】
接着剤123としては、例えば、アクリル系、エポキシ系、シリコン系等の常温硬化型の接着剤が使用できる。特に弾力性を有する接着樹脂としてはゴム系の接着剤が使用しできる。
【0124】
ゴム系の接着剤の樹脂としては、スチレン−イソプレン−スチレン等のブロックコポリマー系や、ポリブタジエン、ポリブチレン等の合成ゴム系接着剤、及び天然ゴム等を使用できる。市販されているゴム系接着剤の例としては一液型RTVゴムKE420(信越化学工業社製)等が好適に使用される。
【0125】
シリコン接着剤としては、過酸化物架橋タイプや付加縮合タイプを単体または混合で使用してもよい。さらにアクリル系やゴム系粘着剤と混合して使用することもできるし、アクリル系接着剤のポリマー主鎖や側鎖にシリコン成分をペンダントした接着剤を使用してもよい。
【0126】
接着剤としてアクリル系樹脂を用いる場合は、単量体成分として炭素数1〜14のアルキル側鎖を有するアクリル酸エステルを含有するラジカル重合性モノマーを反応させた樹脂を用いることが好ましい。また、単量体成分として、側鎖に水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の極性基を有する、アクリル酸エステルやその他のビニル系単量体を添加するのが好ましい。
【0127】
またシンチレータパネル12と受光素子11には粘着性を有する光学グリース等も使用できる。透明性が高く粘着性があれば公知のいかなるものも使用できる。市販されている光学グリースの例としてはシリコンオイル KF96H(100万CS:信越化学工業社製)等が好適に使用される。
【実施例】
【0128】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0129】
実施例
〔フラットパネルディテクタの作製〕
(反射層、下引き層付き支持体の作製)
600×600mmサイズの表1に示す支持体に銀をスパッタして反射層(0.10μm)を形成し、下記処方をビーズミルにて15時間分散し、下引き塗設用の塗布液を得た。
【0130】
(下引層の作製)
バイロン20SS(東洋紡社製:高分子ポリエステル樹脂) 300質量部
メチルエチルケトン(MEK) 200質量部
トルエン 300質量部
シクロヘキサノン 150質量部
この塗布液を上記支持体の反射層側に乾燥層厚が1.0μmになるようにスピンコーターで塗布した後、100℃で8時間乾燥することで下引き層を作製した。
【0131】
(蛍光体層の形成)
支持体の下引き層側に蛍光体1(CsIのみ)及び蛍光体2(CsI:0.03Tlmol%)を、蒸着装置を使用して蒸着させて蛍光体層を形成した。ボート963とホルダ964との間にシャッタ(図示略)を配し、蒸着開始時に目的物以外の物質が蛍光体層に付着するのを防止した。
【0132】
すなわち、まず、支持体回転機構を備えた支持体ホルダに支持体を設置した。次に上記蛍光体材料を蒸着材料として蒸発源るつぼに充填し、蒸発源るつぼを真空容器の内部の底面付近であって、支持体に垂直な中心線を中心とした円の円周上に配置した。このとき、支持体と蒸発源との間隔を500mmに調節すると共に、支持体に垂直な中心線と蒸発源との間隔を300mmに調節した。
【0133】
続いて蒸着装置内を一旦排気し、Arガスを導入して0.5Paに真空度を調整した後、10rpmの速度で支持体を回転させながら支持体の温度を30℃に保持した。次いで抵抗加熱によりるつぼ内を所定の温度に上昇させて蛍光体1を蒸着開始したのち支持体(基板)温度を200℃まで上昇させ、次いで蛍光体2を蒸着し、蛍光体層の膜厚が200μmとなったところで蒸着を終了させた。次に支持体面及び蛍光体面にコーニング製ガラス(EAGLE2000もしくはEAGLE XG)、を重ね合わせた状態で密封可能な袋に真空封入し、大気圧をかけた状態で、100℃、2時間の条件で熱処理を行い、シンチレータパネルを得た。
【0134】
(断裁)
得られたシンチレータパネルを図2(a)に示したレーザ断裁装置(YAG−UV)の支持台上に支持体(支持体に対し蛍光体層非形成面)を上にしてシンチレータパネルを設置し、24.7mm×49.3mmのサイズに断裁し、複数のシンチレータパネルを形成した後、感圧粘着熱剥離材料を24.7mm×49.3mm以下のサイズに形成しポリカーボネートに配置したものを圧着し、断裁したシンチレータパネルをピックアップし、保護層形成工程へと移動した。
【0135】
ただし、シンチレータパネル8については、図2(a)に示したレーザ断裁装置(YAG−UV)の支持台上に蛍光体層を上にしてシンチレータパネルを設置して断裁した。
【0136】
(保護膜の作製)
上記複数のシンチレータパネルを配置したポリカーボネートをCVD装置の蒸着室に入れ、ポリパラキシリレンの原料が昇華した蒸気中に露出させておくことにより、シンチレータパネル、及びポリカーボネートが10μmの厚さのポリパラキシリレン膜が形成され、その後100℃雰囲気化で10分置き、熱剥離材料付きポリカーボネートを剥離し、複数のシンチレータパネルを得た。
【0137】
(受光素子との接合)
CMOSを有する有効画像領域の受光素子(Rad−icon社製 Rad Eye 1/画素サイズ48μm)を使用した。表1のサンプルについてシンチレータパネルの蛍光体層側と光電変換素子を対向させた状態で圧力調整用のスポンジシートをシンチレータパネルの基板の上に置き、筺体の蓋及びねじ止めをして30fg/cmの圧力で受光素子とカップリングさせた。
【0138】
またCMOS面との接着には、下記組成のアクリル系接着剤を作製した。なお本組成の接着剤組成物は再剥離性が高く、加熱圧着までは容易に位置変更が可能である。
【0139】
下記(A)の固形分比の混合物100質量部に対し、芳香族系イソシアネート化合物(B)を1質量部添加した。さらにジオクチル錫ジラウレートを固形分に対して60ppm添加し、酢酸エチルで希釈して固形分30%の接着剤組成物を得た。
【0140】
(A)
2−エチルヘキシルアクリレート 50質量部
ブチルアクリレート 30質量部
スチレン 19質量部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 3質量部
(B)
トリレンジイソシアネート・トリメチロールプロパンアダクト体(商品名;コロネートL 日本ポリウレタン(株)製)
上記接着剤をシンチレータパネル12の保護層123側に10μmの厚さになるように塗設し乾燥した後、シンチレータパネルとCMOS部の位置を実体顕微鏡にて確認しながら両者を完全に一致させた。その後100fg/cmの圧力で加圧しながら、70℃の環境で90分間加熱後、徐冷することでシンチレータパネル12と受光素子11をカップリングした。
【0141】
次に受光素子(Rad Eye 1)のコネクタ部に信号取り出しのケーブルを接続し、フラットパネルディテクタを得た。
【0142】
〔フラットパネルディテクタの評価〕
得られたフラットパネルディテクタのシンチレータパネル部分のレーザ処理変質領域及び耐湿性を以下に示す方法で評価した。
【0143】
(レーザ処理変質領域の測定方法)
保護層を被覆する前のシンチレータパネルにおいて、蛍光体層のレーザ共焦点顕微鏡による側面観察を実施し、画像処理ソフトによって、蛍光体側面の面積に対するレーザ処理による変質領域面積を計算した。
【0144】
(耐湿性の評価)
鉛製のMTFチャートを通して管電圧80kVpのX線をフラットパネルディテクタの裏面からに照射し、画像データを検出しハードディスクに記録した。その後、ハードディスク上の記録をコンピュータで分析して当該ハードディスクに記録されたX線像の初期のMTF(変調伝達関数、空間周波数1サイクル/mmにおけるMTF値)を求めた。次に、試料を65℃、85%、3日保存し、保存後同様の撮影を行い、初期のMTFと比較した。保存後のMTFが初期のMTFの80%より大きければ使用可能である。なお、MTFの比の計算には1cycle/mmの値を用いた。
【0145】
評価の結果を表1に示す。
【0146】
【表1】

【0147】
表1より、断裁処理により生じた変質領域が柱状結晶側面全領域の0%以上、40%以下である本発明のシンチレータパネルは、耐湿性に優れていることが分かる。これは、レーザ断裁処理により生じた柱状結晶側面の変質領域が小さいため、蛍光体層を形成した時の蛍光体層側面の粗さが維持され、保護層の膜付きが改良されたものと考えられる。従来の蛍光体層側からレーザを用いて断裁した場合は、レーザは蛍光体層の先の支持体にまで到達させることが必要で、変質領域を狭くできなかった。
【0148】
また、本発明のシンチレータパネルの製造方法で得られたシンチレータパネルは、大面積の支持体上に蛍光体層を形成した後に、レーザ処理によって所定のサイズに断裁され、レーザ処理により支持体の端部表面に蛍光体層が形成されていない領域、即ち蛍光体層の欠損部が小さいので、大面積の支持体を小サイズに断裁した後に、小サイズの支持体上に蛍光体層を形成する場合に比較し、画像有効領域を広くすることができる。
【符号の説明】
【0149】
1 フラットパネルディテクタ
11 平面受光素子
12 シンチレータパネル
13 接着層
14 筐体
31 レーザ断裁装置
32 支持台
33 パージ室
34 排出管
35 透光窓
61 レーザ光源
62 エキスパンダ
63 マスク
64 制御部
66 ガルバノスキャナ
67 fθレンズ
68 蛍光体プレート
69 XYステージ
111 信号取り出し部
121 支持体
122 蛍光体層
123 保護層
961 蒸着装置
962 真空容器
963 ボート
964 ホルダ
965 回転機構
966 真空ポンプ
S レーザ断裁部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、柱状結晶からなる蛍光体層及び蛍光体保護層を順次形成したシンチレータパネルにおいて、蛍光体層端部の柱状結晶側面の断裁処理により生じた変質領域が柱状結晶側面全領域の0%以上、40%以下であることを特徴とするシンチレータパネル。
【請求項2】
前記蛍光体層を形成していない支持体領域が支持体の端部から0.5mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のシンチレータパネル。
【請求項3】
前記蛍光体保護層が樹脂であり、前記蛍光体層に接着していることを特徴とする請求項1または2に記載のシンチレータパネル。
【請求項4】
前記樹脂がポリパラキシリレンまたはホットメルト樹脂の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項3に記載のシンチレータパネル。
【請求項5】
前記支持体が樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシンチレータパネル。
【請求項6】
前記支持体が無機物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシンチレータパネル。
【請求項7】
支持体上に、柱状結晶からなる蛍光体層及び蛍光体保護層を順次形成したシシンチレータパネルの製造方法であって、前記蛍光体層を前記支持体上に形成した後、前記支持体に対し蛍光体層非形成面からレーザを用いて断裁することを特徴とするシンチレータパネルの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のシンチレータパネルと、2次元状に配置した複数の画素を有する平面受光素子が光学的にカップリングしていることを特徴とするフラットパネルディテクタ。
【請求項9】
前記平面受光素子に対向する蛍光体層の面が平坦化処理されていることを特徴とする請求項8に記載のフラットパネルディテクタ。
【請求項10】
前記支持体が前記平面受光素子を有する基板であることを特徴とする請求項8または9に記載のフラットパネルディテクタ。
【請求項11】
前記蛍光体層を平面受光素子基板に形成した後、前記平面受光素子基板の蛍光体層非形成面からレーザ光を用いて断裁することを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載のフラットパネルディテクタの製造方法。
【請求項12】
前記平面受光素子がガラス基板上に形成された薄膜トランジスタ(TFT)からなる平板平面受光素子であることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載のフラットパネルディテクタ。
【請求項13】
前記平面受光素子がCCDまたはCMOSであることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載のフラットパネルディテクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−172971(P2012−172971A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31728(P2011−31728)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】