説明

シンチレータパネル

【課題】シンチレータパネルを光電変換パネルにとりつける際のハンドリングや輸送時の衝撃による封止部分の変形が生じにくく、耐湿試験での鮮鋭性の劣化率及び特異的な故障発生率が低く、取り扱い中に封止部分の折れ、剥がれのないシンチレータパネルを提供。
【解決手段】基板と前記基板上に設けられたシンチレータ層を有するシンチレータパネルにおいて、該基板とシンチレータ層が前記シンチレータ層側に配置した第1の保護フィルムと、前記基板側に配置した第2の保護フィルムとにより封止されており、前記シンチレータパネルの外周部が保護フィルムから形成された耳部からなり、X線吸収率が5%以下であり、厚さが10μm〜1000μmである保護部材により、該耳部が保護されていることを特徴とするシンチレータパネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体の放射線画像を形成する際に用いられるシンチレータパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線画像のような放射線画像は、医療現場において病状の診断に広く用いられている。特に増感紙−フィルム系による放射線画像は、長い歴史の中で高感度化と高画質化が図られた結果、高い信頼性と優れたコストパフォーマンスを併せ持った撮像システムとして、今なお世界中の医療現場で用いられている。しかしながら、これら画像情報はいわゆるアナログ画像情報であって、近年発展を続けているデジタル画像情報のような自由な画像処理や瞬時の電送ができない。
【0003】
そして、近年ではコンピューテッド・ラジオグラフィ(computed radiography:CR)やフラットパネル型の放射線ディテクター(flat panel detector:FPD)等に代表されるデジタル方式の放射線画像検出装置が登場している。これらは、デジタルの放射線画像が直接得られ、陰極管や液晶パネル等の画像表示装置に画像を直接表示することが可能なので、必ずしも写真フィルム上への画像形成が必要なものではない。その結果、これらのデジタル方式のX線画像検出装置は、銀塩写真方式による画像形成の必要性を低減させ、病院や診療所での診断作業の利便性を大幅に向上させている。
【0004】
X線画像のデジタル技術の一つとして、コンピューテッド・ラジオグラフィ(CR)が現在医療現場で受け入れられている。しかしながら、鮮鋭性が十分でなく空間分解能も不十分であり、スクリーン・フィルムシステムの画質レベルには到達していない。
【0005】
そして、更に新たなデジタルX線画像技術として、例えば、Physics Today,1997年11月号24頁のジョン・ローランズ論文“Amorphous Semiconductor Usher in Digital X−ray Imaging”や、SPIEの1997年32巻2頁のエル・イー・アントヌクの論文”Development of a High Resolution,Active Matrix,Flat−Panel Imager with Enhanced Fill Factor”等に記載された薄膜トランジスタ(TFT)を用いた平板X線検出装置(FPD)が開発されている。
【0006】
放射線を可視光に変換するために、放射線により発光する特性を有するX線蛍光体で作られたシンチレータパネルが使用されるが、低線量の撮影においてのSN比を向上するためには、発光効率の高いシンチレータパネルを使用することが必要になってくる。一般にシンチレータパネルの発光効率は、シンチレータ層(「蛍光体層」とも言う。)の厚さ、蛍光体のX線吸収係数によって決まるが、シンチレータ層の厚さは厚くすればするほど、シンチレータ層内での発光光の散乱が発生し、鮮鋭性は低下する。そのため、画質に必要な鮮鋭性を決めると膜厚が決定する。
【0007】
一方、ヨウ化セシウム(CsI)はX線から可視光に対する変更率が比較的高く、蒸着によって容易に蛍光体を柱状結晶構造に形成できるため、光ガイド効果により結晶内での発光光の散乱が抑えられ、シンチレータ層の厚さを厚くすることが可能であった。
【0008】
しかしながら、CsIのみでは発光効率が低いために、例えば、特公昭54−35060号公報に記載の方法の如く、CsIとヨウ化ナトリウム(NaI)を任意のモル比で混合したものを蒸着して基板上にナトリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Na)として堆積、また近年ではCsIとヨウ化タリウム(TlI)を任意のモル比で混合したものを蒸着して基板上にタリリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Tl)として堆積したものに、後工程としてアニール(熱処理)を行うことで可視変換効率を向上させ、X線蛍光体として使用している。
【0009】
近年、これらのシンチレータ層と平面受光素子を組み合わせて、鮮鋭性や画像均一性を向上するために、平面受光素子面(撮像素子上)に直接、蒸着でシンチレータを形成する方法が行われている。
【0010】
しかしながら、平面受光素子に直接蒸着したシンチレータ材料は画像特性が高いものの、蒸着の不良品発生時に高価な受光素子を無駄にするコスト的な欠点と熱処理によりシンチレータ材料の画像特性向上が図れるにも拘わらず、受光素子が熱に弱いため処理温度に制約がある。また、熱処理プロセス上に受光素子の冷却を組み込む必要があるなどの煩雑さがあり問題であった。これに対して、基板にシンチレータ層を蒸着してなるシンチレータプレートを平面受光素子と合わせる間接型の場合、上記の直接蒸着したシンチレータ材料(直接型)の欠点は改善される利点がある。
【0011】
しかし、間接型のシンチレータであっても、ヨウ化セシウム(CsI)をベースとしたシンチレータ層は潮解性を有するため、経時で特性が劣化するという欠点があった。
【0012】
すなわち、ヨウ化セシウム(CsI)は、吸湿性が高く、露出したままにしておくと、空気中の水蒸気を吸収して潮解してしまう。本発明はこれを防止することを主眼とする。
【0013】
このような吸湿を防止するためにヨウ化セシウム(CsI)を有するシンチレータプレートの表面に防湿性保護層を形成することが有効である。シンチレータプレートを防湿性保護層で保護した形態をシンチレータパネルと呼ぶ。
【0014】
該防湿性保護層として保護フィルムを用いる場合、前記シンチレータプレートを、シンチレータ層側に配置した第1の保護フィルムと、基板側に配置した第2の保護フィルムにより覆い、封止する方法が優れている。封止をより完全なものとし、シンチレータパネルの耐湿性を向上させるためには、第1の保護フィルムと第2の保護フィルムの外周縁部が当該シンチレータプレートの外側に延出し、かつ互いに接着されていることが好ましい。
【0015】
所定の大きさに裁断された基板にシンチレータ層が設けられてなるシンチレータプレートへの水分の浸入をより確実に防止するためには、シンチレータパネルの第1の保護フィルムと第2の保護フィルムの周縁がシート状のシンチレータプレートの周縁より外側にあり、シンチレータ層の周縁より外側の領域で融着または接着剤により接着している封止構造をとることで、外部からの水分の浸入を阻止できる。上記のシンチレータパネルの外縁より外側にあり保護フィルムからなる部分を耳部と呼ぶ。
【0016】
前記封止構造を実現するために、第1の保護フィルムの該シンチレータ層と接する面の最表層の樹脂が熱融着性を有することで、シンチレータ層の周縁部より外側の領域で当該上下の防湿保護フィルムが融着可能となり封止作業が効率化される。
【0017】
このようにして作製したシンチレータパネルの第1の保護フィルムと光電変換パネル(平面受光素子が組み込まれたパネル)の受光面が接するように向き合わせて、シンチレータパネルを光電変換パネルに組み込んでフラットパネルディテクターを作製する。
【0018】
ところがこのようなシンチレータパネルを光電変換パネルに取り付ける際のハンドリングや輸送時の衝撃で、接着した耳部に微細な剥がれが生じることがある。耳部(溶着部)が剥がれると、封止性能が劣化し、その結果シンチレータ層が潮解し、特性劣化をひきおこす。
【0019】
特許文献1には、シンチレータプレートの表面を、紫外線硬化樹脂層を積層した保護フィルムで覆い、保護フィルム表面の傷による画像欠陥を防止することが記載されている。しかし、このように紫外線硬化樹脂が十分な保護機能を発揮する厚さで全面に設けられていると、シンチレータと平面受光素子との間隔が大きくなり、画像の鮮鋭性が低下する。また、紫外線硬化樹脂の層を画像の鮮鋭性が問題にならない程度の厚さにすると、耳部の封止部分に微細な剥離が生じることを防止できない。
【0020】
特許文献2には、第1の保護フィルムと第2の保護フィルムとによる封止部分である耳部を被覆しているメタルテープを耳部の端部で180度折り曲げて、耳部の表から裏に渡って接着することにより耐湿性を改善することが記載されている。しかし、耳部の幅は狭く、メタルテープを耳部のみに接着することが難しい。メタルテープが耳部のみに留まらず、内部にまで張り出して接着され、メタルテープがX線を吸収するため、メタルテープの影の写り込みが認識されてしまうという不都合があった。また、メタルテープを耳部の端部で180度折り曲げて接着する方法では耐湿性は向上したが、更に高い体質性が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開平11−258398号公報
【特許文献2】特開2009−2776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の解決課題は、シンチレータパネルを光電変換パネルにとりつける際のハンドリングや輸送時の衝撃による封止部分の変形が生じにくく、耐湿試験での鮮鋭性の劣化率及び特異的な故障発生率が低く、取り扱い中に封止部分の剥がれのないシンチレータパネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の上記課題は以下の構成により達成される。
【0024】
1.基板と前記基板上に設けられたシンチレータ層を有するシンチレータパネルにおいて、該基板とシンチレータ層が前記シンチレータ層側に配置した第1の保護フィルムと、前記基板側に配置した第2の保護フィルムとにより封止されており、前記シンチレータパネルの外周部が保護フィルムから形成された耳部からなり、X線吸収率が5%以下であり、厚さが10μm〜1000μmである保護部材により、該耳部が覆われていることを特徴とするシンチレータパネル。
【0025】
2.前記保護部材が板状加工物であって、該板状加工物が、シンチレータ層と重なる領域の第2の保護フィルムの全面に、接着されていることを特徴とする前記1に記載のシンチレータパネル。
【0026】
3.前記保護部材が主に耳部に設けられていることを特徴とする前記1に記載のシンチレータパネル。
【0027】
4.前記保護部材が液状組成物を硬化することにより形成された保護部材であることを特徴とする前記3に記載のシンチレータパネル。
【0028】
5.前記保護部材が厚さ10μm〜500μmの板状加工物であることを特徴とする前記3又は4に記載のシンチレータパネル。
【0029】
6.前記保護フィルムと前記保護部材の厚みの合計が、100μm〜1300μmであることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載のシンチレータパネル。
【0030】
7.前記シンチレータ層がヨウ化セシウムを含有する柱状結晶構造を有し、気相法により形成されたことを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載のシンチレータパネル。
【0031】
8.前記基板上に反射層、下引き層及びシンチレータ層を順に設けることを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載のシンチレータパネル。
【発明の効果】
【0032】
本発明の上記手段により、シンチレータパネルを光電変換パネルにとりつける際のハンドリングや輸送時の衝撃による封止部分の変形が生じにくく、耐湿試験での鮮鋭性の劣化率及び特異的な故障発生率が低く、取り扱い中に封止部分の剥がれのないシンチレータパネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】保護部材が設けられていないシンチレータパネルの断面図である。
【図2】前記シンチレータパネルの断面図であり、耳部に板状加工物からなる保護部材が設けられ、補強されている。
【図3】前記シンチレータパネルの断面図であり、耳部に液状組成物を硬化することにより形成された保護部材が設けられ、補強されている。
【図4】前記シンチレータパネルの断面図であり、第2の保護フィルムの表面に、シンチレータパネル全面(耳部を含む)と同じサイズの板状加工物が接着され、耳部が保護されている。
【図5】基板の上に気相堆積法でシンチレータ層を形成する蒸着装置の模式図である。
【図6】シンチレータパネルの断面図であり、耳部にメタルテープが接着されている。
【図7】前記シンチレータパネルの断面図であり、耳部に液状組成物を硬化することにより形成された保護部材が設けられ、補強されている。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
前記シンチレータパネルは基板と前記基板上に設けられたシンチレータ層を有するシンチレータパネルにおいて、該シンチレータパネルが前記シンチレータ層側に配置した第1の保護フィルムと、前記基板側に配置した第2の保護フィルムとにより封止してなるシンチレータパネルであって、該シンチレータパネルの外周部が保護層から形成されている領域を有し、この領域が保護部材により保護されていることを特徴とする。
【0036】
以下、本発明の構成要件について詳細に説明する。
【0037】
(シンチレータプレートとシンチレータパネルの構成)
前記シンチレータプレートは、基板上にシンチレータ層をこの順に設けて成るが、基板上に反射層、下引層、及びシンチレータ層を順に設けた構成であることが好ましい。また、該シンチレータパネルは、シンチレータプレートに少なくとも保護層を設けて成る。なお、本発明においては、当該シンチレータパネルがシンチレータ層の側に配置した第1保護フィルムと基板の外側に配置した第2保護フィルムとから成る保護層を有し、当該保護層が第1保護フィルムと第2保護フィルムによる封止部分である耳部を有しており、更に該保護層の耳部を保護部材で保護していることを特徴とする。
【0038】
前記の封止部分である耳部は、第1の保護フィルムと第2の保護フィルムがシンチレータプレートの外側の領域で、接着剤による接着又は熱による融着により接着されて形成された保護フィルムからなる領域を意味する。
【0039】
(シンチレータ層)
前記シンチレータ層を形成する材料としては、種々の公知の蛍光体材料を使用することができるが、X線から可視光に対する変換率が比較的高く、蒸着によって容易に蛍光体を柱状結晶構造に形成できるため、光ガイド効果により結晶内での発光光の散乱が抑えられ、シンチレータ層の厚さを厚くすることが可能であることから、ヨウ化セシウム(CsI)が好ましい。
【0040】
但し、CsIのみでは発光効率が低いために、各種の賦活剤が添加される。例えば、特公昭54−35060号公報の如く、CsIとヨウ化ナトリウム(NaI)を任意のモル比で混合したものが挙げられる。また、例えば、特開2001−59899号公報に開示されているようなCsIを蒸着で、タリウム(Tl)、ユウロピウム(Eu)、インジウム(In)、リチウム(Li)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、ナトリウム(Na)などの賦活物質を含有するCsIが好ましい。本発明においては、タリウム(Tl)、ユウロピウム(Eu)が好ましく、特にタリウム(Tl)が好ましい。
【0041】
なお、本発明においては、特に1種類以上のタリウム化合物を含む賦活剤とヨウ化セシウムとを原材料とすることが好ましい。即ち、タリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Tl)は400nmから750nmまでの広い発光波長をもつことから好ましい。
【0042】
1種類以上の該タリウム化合物を含有する賦活剤のタリウム化合物としては、種々のタリウム化合物(+Iと+IIIの酸化数の化合物)を使用することができる。
【0043】
本発明において、好ましいタリウム化合物は、臭化タリウム(TlBr)、塩化タリウム(TlCl)、またはフッ化タリウム(TlF、TlF)等である。
【0044】
該タリウム化合物の融点は、400〜700℃の範囲内にあることが好ましい。700℃を超えると、柱状結晶内での賦活剤が不均一に存在してしまい、発光効率が低下する。なお、該融点とは常温常圧下における融点である。また、タリウム化合物の分子量は206〜300の範囲内にあることが好ましい。
【0045】
該シンチレータ層において、当該賦活剤の含有量は目的性能等に応じて、最適量にすることが望ましいが、ヨウ化セシウムの含有量に対して0.001〜50mol%、更に0.1〜10.0mol%であることが好ましい。ここで、ヨウ化セシウムに対し賦活剤が0.001mol%未満であると、ヨウ化セシウム単独使用で得られる発光輝度と大差なく、目的とする発光輝度を得ることができない。また、50mol%を超えるとヨウ化セシウムの性質、機能を保持することができない。
【0046】
なお、本発明においては、基板である高分子フィルム上にシンチレータの原料の蒸着によりシンチレータ層を形成した後に、該高分子フィルムのガラス転移温度を基準として、−50〜20℃の温度範囲の雰囲気下で1時間以上の熱処理を行っても良い。これにより、フィルムの変形や蛍光体の剥がれの発生がなく、発光効率の高いシンチレータパネルを作製することができる。
【0047】
以上の説明から分かるように、該シンチレータ層はヨウ化セシウムを含有する柱状蛍光体層であることが好ましく、且つ気相法により形成されたことが好ましい。
【0048】
気相法としては、蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法等を用いることができるが、蒸着法が好ましい。
【0049】
(反射層)
前記反射層はシンチレータから発した光を反射して、光の取り出し効率を高めるためのものである。当該反射層は、Al、Ag、Cr、Cu、Ni、Ti、Mg、Rh、Pt及びAuからなる元素群の中から選ばれるいずれかの元素を含む材料により形成されることが好ましい。特に上記の元素からなる金属薄膜、例えば、Ag膜、Al膜などを用いることが好ましい。また、このような金属薄膜を2層以上形成するようにしてもよい。
【0050】
(下引層)
前記下引層は、反射層の保護の観点から反射層とシンチレータ層の間に設けることを要する。また、当該下引層は高分子結合材、分散剤等を含有することが好ましい。
【0051】
下引層の厚さは0.5〜5μmが好ましい。なお、3μm以下であれば下引層内での光散乱が小さく、鮮鋭性が良好である。更に下引層の厚さが2μm以下であると、熱処理しても柱状結晶性の乱れが発生しない。
【0052】
以下、下引層の構成要素について説明する。
【0053】
(高分子結合材)
前記下引層は、溶剤に溶解または分散した高分子結合材を塗布、乾燥して形成することが好ましい。高分子結合材としては、具体的には、ポリイミドまたはポリイミド含有樹脂、ポリウレタン、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられる。中でも、ポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル系共重合体、ポリビニルブチラール、ニトロセルロースを使用することが好ましい。
【0054】
該高分子結合材としては、特にシンチレータ層との密着の点でポリイミドまたはポリイミド含有樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル系共重合体、ポリビニルブチラール、ニトロセルロースなどが好ましい。また、ガラス転位温度(Tg)が30〜100℃のポリマーであることが蒸着結晶と基板との膜付の点で好ましい。この観点からは、特にポリエステル樹脂であることが好ましい。但し、輝度などの画像特性向上のために熱処理温度の向上を図ると、Tgが30〜100℃のポリマーでは耐熱性が十分に確保できない場合があり、この際はポリイミドまたはポリイミド含有樹脂を用いる。
【0055】
該下引層の調製に用いることができる溶剤としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノールなどの低級アルコール、メチレンクロライド、エチレンクロライドなどの塩素原子含有炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、キシレンなどの芳香族化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエステル、エチレングリコールモノメチルエステルなどのエーテル及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0056】
なお、該下引層には、シンチレータが発光する光の散乱を防止し、鮮鋭性等を向上させるために顔料や染料を含有させてもよい。
【0057】
(保護層)
前記保護層は、シンチレータ層の保護を主眼とするものである。即ち、ヨウ化セシウム(CsI)は吸湿性が高く露出したままにしておくと空気中の水蒸気を吸湿して潮解してしまうため、これを防止することを主眼とする。当該保護層は種々の材料を用いて形成することができる。
【0058】
具体的には、防湿性層を有す積層材料である保護フィルムを用いることが好ましい。また、設置方法として、保護フィルムを袋状又は筒状にして、シンチレータプレートを挿入し、開口部を接着する封止や、2枚の保護フィルムで挟んで外周縁を接着する封止が挙げられる。
【0059】
(保護フィルム)
保護フィルムはシンチレータ層の側に配置した方を第1保護フィルムとし、基板の外側に配置した方を第2保護フィルムとする。第1保護フィルムと第2保護フィルムにより当該シンチレータプレートが封止され、且つ該第1保護フィルムは該シンチレータ層に物理化学的に接着されていない態様とすることが好ましい。
【0060】
本発明において、保護フィルムが袋状又は筒状の場合は、シンチレータ層と接する部分が第1の保護フィルムと呼び、基板と接する部分が第2の保護フィルムと呼ぶ。
【0061】
ここで、「物理化学的に接着されていない」とは、接着剤を用いて物理的相互作用または化学反応等によって接着されていないことを言う。この接着されていない状態は、微視的にはシンチレータ層面と保護フィルムは点接触してはいたとしても、光学的、力学的には殆どシンチレータ層面と保護フィルムは不連続体として扱える状態のことと言えるものである。
【0062】
本発明に使用する保護フィルムの構成例としては、外層(保護機能層)/中間層(防湿性層)/最内層(熱溶着層)の構成を有した多層積層材料が挙げられる。また、更に各層は必要に応じて多層とすることも可能である。
【0063】
第1の保護フィルム(シンチレータ層側に配置した保護フィルム)は10μm〜100μmの厚さのものが好ましく用いられ、第2の保護フィルム(基板側に配置した保護フィルム)は50μm〜300μmの厚さのものが好ましく用いられる。
【0064】
〈最内層(熱溶着層)〉
最内層の熱可塑性樹脂フィルムとしては、EVA、PP(ポリプロピレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、LLDPE(線状低密度ポリエチレン)及びメタロセン触媒を使用して製造したLDPE、LLDPE、またこれらフィルムとHDPE(高密度ポリエチレン)フィルムの混合使用したフィルムを使用することが好ましい。
【0065】
〈中間層(防湿性層)〉
中間層(防湿性層)としては、特開平6−95302号公報及び真空ハンドブック増訂版p132〜134(ULVAC 日本真空技術K.K)に記載されている如き、無機膜を少なくとも一層有する層が挙げられる。無機膜としては、金属蒸着膜及び無機化合物の蒸着膜が挙げられる。
【0066】
金属蒸着膜としては、例えば、単結晶Si、アモルファスSi、W、アルミニウム等が挙げられ、特に好ましい金属蒸着膜としては、例えば、アルミニウムが挙げられる。
【0067】
無機物蒸着膜としては薄膜ハンドブックp879〜901(日本学術振興会)、真空技術ハンドブックp502〜509、p612、p810(日刊工業新聞社)、真空ハンドブック増訂版p132〜134(ULVAC 日本真空技術K.K)に記載されている如き無機化合物蒸着膜が挙げられる。これらの無機化合物蒸着膜としては、例えば、Cr、Si(x=1、y=1.5〜2.0)、Ta、ZrN、SiC、TiC、PSG、Si、Al等が用いられる。
【0068】
該中間層の基材として使用する熱可塑性樹脂フィルムとしては、エチレンテトラフルオロエチル共重合体(ETFE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、2軸延伸ナイロン6、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド、ポリエーテルスチレン(PES)など一般の包装用フィルムに使用されているフィルム材料を使用することができる。中間層の基材は外層として使用され、別に外層設けずに保護フィルムを作製してもよい。
【0069】
蒸着膜を作る方法としては、真空技術ハンドブック及び包装技術Vol29−No.8に記載されている如き一般的な方法、例えば、抵抗または高周波誘導加熱法、エレクトロビーム(EB)法、プラズマ(PCVD)等により作ることができる。蒸着膜の厚さとしては40〜200nmの範囲が好ましく、より好ましくは50〜180nmの範囲である。
【0070】
〈外層〉
外層として用いられる熱可塑性樹脂フィルムとしては、一般の包装材料として使用されている高分子フィルム(例えば、機能性包装材料の新展開株式会社東レリサーチセンター記載の高分子フィルム)である低密度ポリエチレン(LDPE)、HDPE、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン、未延伸ポリプロピレン(CPP)、OPP、延伸ナイロン(ONy)、PET、セロハン、ポリビニルアルコール(PVA)、延伸ビニロン(OV)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVOH)、塩化ビニリデン(PVDC)、フッ素を含むオレフィン(フルオロオレフィン)の重合体またはフッ素を含むオレフィンを共重合体等が使用できる。
【0071】
また、これら熱可塑性樹脂フィルムは、必要に応じて異種フィルムと共押し出しで作った多層フィルム、延伸角度を変えて貼り合わせて作った多層フィルム等も当然使用できる。更に必要とする物性を得るために、使用するフィルムの密度、分子量分布を組み合わせて作ることも当然可能である。最内層の熱可塑性樹脂フィルムとしては、LDPE、LLDPE及びメタロセン触媒を使用して製造したLDPE、LLDPE、またこれらフィルムとHDPEフィルムの混合使用したフィルムが使用されている。
【0072】
無機物蒸着層を使用しない場合は、外層に中間層としての機能を持たせる必要がある。この場合、前記熱可塑性樹脂フィルムの中より必要に応じて単体でもよいし、または2種以上のフィルムを積層させて用いることができる。例えば、CPP/OPP、PET/OPP/LDPE、Ny/OPP/LDPE、CPP/OPP/EVOH、サランUB/LLDPE(ここでサランUBとは、旭化成工業株式会社製の塩化ビニリデン/アクリル酸エステル系共重合樹脂を原料とした2軸延伸フィルムを示す。)、K−OP/PP、K−PET/LLDPE、K−Ny/EVA(ここでKは塩化ビニリデン樹脂をコートしたフィルムを示す。)等が使用されている。
【0073】
これら保護フィルムの製造方法としては、一般的に知られている各種の方法が用いられ、例えば、ウェットラミネート法、ドライラミネート法、ホットメルトラミネート法、押し出しラミネート法、熱ラミネート法を利用して作ることが可能である。無機物を蒸着したフィルムを使用しない場合も同様な方法が当然使えるが、これらの他に使用材料によっては多層インフレーション方式、共押し出し成形方式により作ることができる。
【0074】
積層する際に使用される接着剤としては、一般的に知られている接着剤が使用可能である。例えば、各種ポリエチレン樹脂、各種ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系熱可塑性樹脂熱溶解接着剤、エチレン−プロピレン共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体樹脂等のエチレン共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂、アイオノマー樹脂等の熱可塑性樹脂熱溶融接着剤、その他熱溶融型ゴム系接着剤等がある。
【0075】
エマルジョン、ラテックス状の接着剤であるエマルジョン型接着剤の代表例としては、ポリ酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル−エチレン共重合体樹脂、酢酸ビニルとアクリル酸エステル共重合体樹脂、酢酸ビニルとマレイン酸エステル共重合体樹脂、アクリル酸共重合物、エチレン−アクリル酸共重合物等のエマルジョンがある。
【0076】
ラテックス型接着剤の代表例としては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)等のゴムラテックスがある。また、ドライラミネート用接着剤としてはイソシアネート系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤等があり、その他、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体樹脂等をブレンドしたホットメルトラミネート接着剤、感圧接着剤、感熱接着剤等公知の接着剤を用いることもできる。
【0077】
エクストルージョンラミネート用ポリオレフィン系樹脂接着剤はより具体的に言えば、各種ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレン樹脂などのポリオレフィン樹脂からなる重合物及びエチレン共重合体(EVA、EEA、等)樹脂の他、L−LDPE樹脂の如く、エチレンと他のモノマー(α−オレフィン)を共重合させたもの、Dupot社のサーリン、三井ポリケミカル社のハイミラン等のアイオノマー樹脂(イオン共重合体樹脂)及び三井石油化学(株)のアドマー(接着性ポリマー)等がある。
【0078】
その他、紫外線硬化型接着剤も最近使われはじめた。特にLDPE樹脂とL−LDPE樹脂が安価でラミネート適性に優れているので好ましい。また、前記樹脂を2種以上ブレンドして各樹脂の欠点をカバーした混合樹脂は特に好ましい。例えば、L−LDPE樹脂とLDPE樹脂をブレンドすると延展性が向上し、ネックインが小さくなるのでラミネート速度が向上し、ピンホールが少なくなる。
【0079】
また、鮮鋭性、放射線画像ムラ、製造安定性、作業性等を考慮し、当該保護層のヘイズ率が5%以下であることで、より高い鮮鋭性が得られる。また放射線画像ムラなどの点でも、ヘイズ値は5%以下であることが好ましい。但し、一般ヘイズ値が0.1%以下のフィルムは入手し難い為、0.1〜5%が望ましい。ヘイズ率は、日本電色工業株式会社NDH 5000Wにより測定した値を示す。必要とするヘイズ率は市販されている高分子フィルムから適宜選択し、容易に入手することが可能である。
【0080】
《保護部材》
前記保護部材は、少なくとも保護フィルムの耳部を含む領域に設けられることにより、シンチレータパネルをフラットパネルディテクターに組み込む工程で、人手等でシンチレータパネルを取り扱うときの衝撃で、保護フィルムの融着部が剥離することや、耳部の保護フィルムが破壊することを防止する効果を有する。
【0081】
シンチレータパネルは人体の撮影箇所により、高圧X線と組み合わせて用いられる場合と、低圧X線と組み合わせて用いられる場合がある。これらのX線に対し、撮影時の人体のX線被爆量は極力低く抑えなければならず、シンチレータパネルは高感度であることが望まれている。従って、保護部材は高圧X線及び低圧X線の両者に対して、吸収率が低くなければない。吸収率は保護部材が厚くなるほど大きくなり、この点から厚さは1000μm以下であることが必要である。
【0082】
また、保護部材は上記の通り耳部を保護するために強度が必要である。保護部材の厚さは10μm以上であれば、耳部を保護するのに十分な強度を有する。
【0083】
該保護部材は保護フィルムの耳部を覆う。覆うとは、シンチレータ層と垂直の方向から見て、保護部材が耳部に重なっていることを意味する。重なり方は部分的に重なっていても、保護部材が耳部からはみ出していても良い。しかし、はみ出す幅は、大きすぎると、シンチレータパネルを光電変換パネルに組み込む際に支障をきたすので、光電変換パネルの構造により制限される。また、覆うとは、保護部材は耳部と接着又は密着されている状態であっても良いし、耳部との間に空隙を保っていている状態も含む。
【0084】
該保護部材の設置方法としては、保護部材を第2の保護フィルムの耳部を含む全面に設ける方法1及び保護部材を主に耳部に接着して設ける方法2が挙げられる。主に耳部とは、耳部から内側(シンチレータプレートと重なっている領域)にはみ出す幅が15mm以内であることを意味する。
【0085】
方法1で用いられる保護部材は厚さを均一にできる点から、板状加工物が好ましい。
【0086】
方法2で用いられる保護部材は板状加工物であっても、硬化性の液状組成物であっても良い。
【0087】
(板状加工物)
前記方法1においては、板状加工物は耳部に接着されていても、接着されていなくてもよい。例えば、図4で示すとおり、シンチレータ層と重なる領域では第2の保護フィルムと接着するが、耳部の領域では保護部材と耳部とが間隙を持ち、板状加工物が耳部の領域まで覆えばよい。これにより衝撃が耳部に加わるのを防止できる。方法1においては、第1の保護フィルムに厚い保護部材を接着すると鮮鋭性が低下するので、第2の保護フィルムに保護部材を接着することが好ましい。
【0088】
なお、板状加工物がシンチレータ層と重なる領域とは、シンチレータ層の面と垂直の方向から見て、板状加工物がシンチレータ層と重なっている領域である。
【0089】
板状加工物を第2の保護フィルム側の全面に設ける場合、板状加工物の厚さは100μm〜800μmが好ましい。
【0090】
板状加工物を全面に設ける場合は、撮影領域に板状加工物の縁が入らないので、撮影時に板状加工物が認識されることは無いが、X線吸収率が大きいと被写体へのX線照射量を増加させなければならない。そのため、X線吸収率は5%以下であることが好ましい。
【0091】
前記方法2においては、保護部材は主に耳部に接着し、耳部に力が加わったときに耳部の融着界面に掛かる応力を低減し、保護フィルムの融着部の剥離を防止する。また、保護部材が保護フィルムのテント領域(シンチレータプレートの端面、第1の保護フィルム及び第2の保護フィルムに囲まれた空隙部分を形成する領域)にまで設けられていれば、衝撃によりテント領域の保護フィルムが破壊されることも防止することができる。方法2では保護部材は第1の保護フィルム側に接着しても良いし、第2の保護フィルム側に接着しても良い。例として第2の保護フィルムに接着したときの断面図を図2に示した。
【0092】
方法2において、保護部材の好ましい厚さは10μm〜500μmである。10μm以上であれば、保護に十分な強度が得られるし、500μm以下であれば、耳部の形状に沿って保護部材を変形することが可能で、保護機能が発揮できる。板状加工物の厚さは10μm〜500μmが更に好ましく、10μm〜300μmが最も好ましい。
【0093】
方法2のように主に耳部に板状加工物を設ける場合、耳部の幅が狭いので、板状加工物を耳部の幅に裁断すると、細すぎて板状加工物の取り扱い性が悪く、シンチレータパネルに均一に接着しにくい。従って、板状加工物は耳部の幅より広い幅のものを用いることが好ましい。また、広すぎると接着部分に空気がのこり均一に貼りにくい。好ましくは耳部の幅より5mm〜15mm広い幅の板状加工物を用いる。
【0094】
このような幅の板状加工物を接着すると、シンチレータ層の周辺部の一部を板状加工物が覆うので、板状加工物のX線吸収率が大きいと、撮影したときに板状加工物が写りこんでしまう。板状加工物が写りこまないようにするためには、X線吸収率が5%以下の板状加工物を使用することが必要である。このように主に耳部に板状加工物を設ける場合は、板状加工物のX線吸収率は2%以下であることが更に好ましく、1%以下であることが最も好ましい。
【0095】
前記板状加工物は接着剤または粘着剤により接着することが好ましい。
【0096】
板状加工物の素材は前記寸法に加工でき、前記X線吸収率の範囲内であり、十分な強度を有するものであればなんでも良いが、加工性や作業の効率性から樹脂が好ましい。板状加工物の好ましい材料としては、例えば、密度ポリエチレン(LDPE)、HDPE、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン、未延伸ポリプロピレン(CPP)、OPP、延伸ナイロン(ONy)、PET、PEN、ポリイミド、セロハン、ポリビニルアルコール(PVA)、延伸ビニロン(OV)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVOH)、塩化ビニリデン(PVDC)、CFRP(PAN系)、CFRP(ピッチ系)等が挙げられる。
【0097】
(液状組成物)
前記液状組成物は、加熱又は紫外線等のエネルギー線を照射することにより硬化する硬化性の樹脂である。硬化性の樹脂が硬化したものは硬度が高く、強靭な樹脂が好ましい。好ましい硬化性の樹脂としては、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。
【0098】
(エポキシ系樹脂)
前記エポキシ系樹脂は液状であり、エポキシ化合物と硬化剤を組み合わせて構成される。硬化剤は加熱により重合するものと、光により重合するものがある。
【0099】
好ましいエポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリグリシジル−p−アミノフェノール、脂環式エポキシ樹脂、などが挙げられる。
【0100】
好ましい脂環型エポキシ化合物としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名UVR6105、UVR6110及びCELLOXIDE2021なる市販品あり)、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート(商品名UVR6128の市販品あり)、ビニルシクロヘキセンモノエポキサイド(商品名CELOXIDE2000の市販品あり)、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名CELOXIDE2081の市販品あり)、1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4,1,0]ヘプタン(商品名CELOXIDE3000の市販品あり)などの脂環式エポキシ樹脂が挙げられる。前記UVR6105、UVR6110及びUVR6128の商品名を有する市販品は、いずれもダウ・ケミカル社から入手できる。前記CELOXIDE2000、CELLOXIDE2021、CELOXIDE2081及びCELOXIDE3000の商品名を有する市販品は、いずれもダイセル化学株式会社から入手できる。なお、UVR6105はUVR6110の低粘度品である。
【0101】
熱により重合する好ましい硬化剤としては、アミン、カチオン、酸無水物が挙げられる。アミンとしては、ポリアミド、ジシアンジアミド、トリエチレンジアミンテトラミンジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどが好ましく用いられる。カチオンとしては商品名サンエイドSI−60L、サンエイドSI−80L、サンエイドSI−100L、サンエイドSI−150Lの下に入手可能な市販品(三新化学社製)、商品名アデカオプトンCP−66、アデカオプトンCP−77の下に入手可能な市販品(アデカ製)などが好ましく用いられる。酸無水物としてはメチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等が好ましく用いられる。
【0102】
光により重合する好ましい硬化剤としては、公知のスルホニウム塩、アンモニウム塩などの他、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩などが挙げられ、特開平8−143806号公報、同8−283320号公報などに記載のものから適宜選択して使用することができる。また、光・熱硬化剤は市販品をそのまま使用することができる。光硬化剤の代表例として、商品名CI−1370、CI−2064、CI−2397、CI−2624、CI−2639、CI−2734、CI−2758、CI−2823、CI−2855及びCI−5102の下に入手可能な市販品(いずれも日本曹達株式会社製)、商品名PHOTOINITIATOR2074の下に入手可能な市販品(ローディア社製)、商品名UVI−6974及びUVI−6990の下に入手可能な市販品(いずれもユニオンカーバイト社製)、アデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−152、アデカオプトマーSP−170、アデカオプトマーSP−172の下に入手可能な市販品(アデカ製)などを挙げることができる。
【0103】
(アクリル系樹脂)
本発明に好ましく用いられるアクリル系樹脂は分子中にビニル基、アリル基及びメタアクロイル基のうちのいずれか2個以上を含有するモノマー、オリゴマー及びポリマーのうちの少なくとも1種よりなる樹脂である。
【0104】
前記、モノマー、オリゴマー及びポリマーとしては、分子構造中にビニル基、アリル基及びメタアクロイル基のうちのいずれか2個以上を含有するものが好ましく用いられる。
【0105】
このようなモノマー、オリゴマー及びポリマーを構成するモノマーは液状であり、モノマーの揮発成分による組成変化を防ぐために80℃以上の沸点を持つものが好ましく、硬化反応後の塗膜に硬度を付与するために、ある程度の架橋構造をとることもできるモノマーであることが好ましい。また、耐候性を付与するためには、分子内に芳香族基を有することが好ましい。
【0106】
従って、本発明に好ましいモノマーとしては、2官能以上の脂肪族又は脂環式の(メタ)アクリレート、アリレート等である。このようなモノマーとしては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0107】
ヒドロキシ系(メタ)アクリレート化合物、例えば、
1.ペンタエリスリトールトリアクリレート
2.ジペンタエリスリトールペンタアクリレート
3.エチレングリコールジグリシジルエーテルジメタクリレート
4.エチレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレート
5.ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレート
6.ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジメタクリレート
7.プロピレグリコールジメタクリレート
8.トリグリセロールジアクリレート
9.トリグリセロールジアメタクリレート
10.アクリル化イソシアヌレート
非ヒドロキシ系(メタ)アクリレート化合物、例えば、
11.アリル化シクロヘキシルジアクリレート
12.ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
13.カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
14.アルキル変性ジペンタエリスリトールアクリレート
15.ペンタエリスリトールテトラアクリレート
16.ポリエチレングリコール(メタ)クリレート
17.トリメチロールプロパンアクリレート
18.変性トリメチロールプロパンアクリレート
前記モノマー及びポリマーは、単独で使用しても、2種以上が併用されてもよい。また、前記以外のモノマー、オリゴマー及びポリマー(前記以外の種類のモノマー、オリゴマー及びポリマーを含む)の混合割合は少なくとも塗膜の硬度が著しく低下するためモノマー、オリゴマー及びポリマーの全質量に対して通常20〜90質量%である。
【0108】
前記モノマー、オリゴマー及びポリマーを主成分とするが、粘度を調節するために、イソプロパノール、n−プロパノール等のアルコール系溶媒;メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;トルエン、キシレン等の無極性溶媒などが希釈剤として添加されてよい。
【0109】
アクリル系樹脂を硬化する硬化剤としては、熱により反応を開始する開始剤または光により反応を開始する開始剤が用いられるが、光により反応を開始する開始剤を用いることが好ましい。具体的には、ベンゾイン及び誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができる。光増感剤と共に使用してもよい。
【0110】
(液状の硬化性樹脂の塗布方法)
液状の硬化性樹脂は主に耳部に塗布される。つまり、液状の硬化性樹脂は耳部のみ、又は耳部と耳部に近い周辺部に塗布される。また、耳部に近い周辺部に塗布される場合、耳部に塗布される厚さより薄く塗布される。
【0111】
(液状の硬化性樹脂の硬化方法)
液状の硬化性樹脂は塗布した後で、種々のエネルギーを付与して硬化できる。
【0112】
エネルギーとしては、熱、光、紫外線、電子線が用いうるが、シンチレータ等の材料の劣化が少なく、効率的に硬化できる点から、特に紫外線が好ましい。
【0113】
紫外線を照射するための装置としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルはライドランプ、キセノンランプ、紫外LEDなどが用いられる。
【0114】
(基板)
前記基板は、各種金属、カーボンやα−カーボン、耐熱性樹脂基板などが使用可能であるが、画像特性、コストなどを鑑みると耐熱性樹脂基板が特に好適である。
【0115】
耐熱性樹脂としては従来公知の樹脂を使用することができるが、いわゆるエンジニアリングプラスチックを用いることが好ましい。ここで、「エンジニアリングプラスチックス」とは、産業用途(工業用途)に使用される高機能のプラスチックスのことであり、一般的に強度や耐熱温度が高く、耐薬品性に優れている等の利点を有する。
【0116】
該エンジニアリングプラスチックスとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等が好適に用いられる。これらのエンジニアリングプラスチックスは単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0117】
更に硬化温度によっては、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等に代表されるスーパーエンジニアリングプラスチックを使用することも好ましい。
【0118】
本発明においては、耐熱性、加工性、機械的強度、及びコスト面で優れた、ポリイミド樹脂またはポリエーテルイミド樹脂のようなポリイミドを含有する樹脂で基板を形成することが好ましい。
【0119】
前記基板のX線吸収率は5%以下であることが好ましく、2%以下であると更に好ましく、1%以下であることが最も好ましい。
【0120】
なお、シンチレータパネルと平面受光素子面を密着させる際に、基板の変形や蒸着時の反りなどの影響を受け、フラットパネルディテクターの受光面内で均一な画質特性が得られないという点に関して、該基板を厚さ50μm以上500μm以下の樹脂基板とすることでシンチレータパネルが平面受光素子面形状に合った形状に変形し、フラットパネルディテクターの受光面全体で均一な鮮鋭性が得られるように改善される。
【0121】
(X線吸収率の測定方法)
X線管装置より照射したX線を受けるように線量計を配置し、X線管装置と線量計との間に材料片を置きX線を照射して線量計により測定したときの線量をRとする。材料片を置かずに同様に測定した線量をRとする。そのときのX吸収率(%)は下記式により求める。
【0122】
X吸収率(%)=100×(R−R)/R
なお、その他の測定条件は下記の通りである。
【0123】
X線管電圧:70kV
線量計:DIADOS T11003型(PTW社製)
【実施例】
【0124】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0125】
実施例1
(シンチレータプレートの作製)
(基板の準備)
基板として、厚さ0.125mm、幅×長さが(90mm×90mm)のポリイミドフィルムを準備した。
【0126】
(反射層の形成)
ポリイミドフィルム基板の片方の面にアルミニウムをスパッタにより0.07μmの厚さに設置した。
【0127】
(下引層の形成)
バイロン630(東洋紡社製:高分子ポリエステル樹脂) 100質量部
メチルエチルケトン(MEK) 100質量部
トルエン 100質量部
上記処方を混合し、ビーズミルにて15時間分散し、塗布液を得た。この塗布液を上記基板のアルミ層設置面に乾燥膜厚が1.0μmになるように、バーコーターで塗布した後、100℃で8時間乾燥することで下引層を設け、基板を準備した。
【0128】
(シンチレータ層の形成)
前記により準備した基板に図5に示す蒸着装置を使用して、蛍光体(CsI:0.003Tl)を蒸着させシンチレータ層を形成し、シンチレータプレートを作製した。
【0129】
蛍光体原料(CsI:0.003Tl)を抵抗加熱ルツボに充填し、支持体ホルダに基板を設置し、抵抗加熱ルツボと基板との間隔を400mmに調節した。続いて、蒸着装置内を一旦排気し、Arガスを導入して0.5Paに真空度を調整した後、10rpmの速度で基板を回転しながら基板の温度を140℃に保持した。次いで、抵抗加熱ルツボを加熱して蛍光体を蒸着し、シンチレータ層の膜厚が400μmとなったところで蒸着を終了し、シンチレータプレートを得た。
【0130】
(保護フィルムの準備)
第1の保護フィルム及び第2の保護フィルムとして下記の層構成の保護フィルムを準備した。
【0131】
厚さ70μmのPETフィルムに50nmのアルミナの層を蒸着により積層し、更にその上に、30μmのCPP(キャスティングポリプロピレン)の層をドライラミネートにより設けて保護フィルムを作成した。
【0132】
(シンチレータパネルの作製)
前記シンチレータプレートを前記保護フィルムにより、図1に示す形態に封止し、シンチレータパネルを作製した。なお、保護フィルムはシンチレータパネルの仕上がりサイズより大きなサイズを使用し、封止は減圧1000Pa条件下で、融着部となる保護層の耳部の幅が5mmになるようにシール(融着)し、不要部分は切り捨てた。融着に使用したインパルスシーラーのヒータは10mm幅のものを使用した。
【0133】
(保護部材の接着)
下記保護部材Cを、図3の31に示すとおり、ディスペンサーで100μmの厚さで耳部の第2の保護フィルムに全周に渡り塗布し、120℃で2時間加熱して硬化して試料を作製した。
【0134】
以上により作製した保護部材付きシンチレータパネルにつき、鮮鋭性MTF、耐湿性、取り扱い性、衝撃耐性及び写り込み性の評価を行った。
【0135】
保護部材C:
Cel−2021P(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート;ダイセル株式会社製) 10g
リカシッドMH−700(4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30;新日本理化株式会社製) 10g
ジアザビシクロウンデセン 0.1g
メガファックス F−178K(DIC株式会社製) 0.2g
実施例2
前記シンチレータパネルに下記保護部材Bを、図7の35に示すとおり、ディスペンサーで50μmの厚さで耳部の第1の保護フィルムに全周に渡り塗布し、60℃で3時間加熱して硬化した他は、実施例1と同様に試料を作製し評価した。
【0136】
保護部材B:
jER828(ジャパンエポキシレジン製;ビスフェノールA型エポキシ樹脂)10g 2−エチル−4−メチルイミダゾール 1.5g
実施例3
前記保護部材Cを、図3の31に示すとおり、ディスペンサーで50μmの厚さで耳部の第2の保護フィルムに全周に渡り塗布した他は、実施例1と同様に試料を作製し評価した。
【0137】
実施例4
下記保護部材Dを、図2の30に示すとおり、前記シンチレータパネルの耳部に配置し、加熱圧着して接着した他は、実施例1と同様に試料を作製し評価した。
【0138】
保護部材D:
厚さ127μmのPETフィルム(東レ製;ルミラー)を幅15mmに裁断し、熱融着シートNP608(ソニーケミカル製;50μm)を接着した。保護部材DのX線吸収率は0.2%であった。
【0139】
実施例5
下記保護部材Eの片面に、図4の32、33に示すとおり、前記保護部材Bと同じ組成のエポキシ樹脂を厚さ20μmで塗布して、前記シンチレータパネルと該保護部材Bのエポキシ樹脂が向き合うように貼合した後、60℃で3時間硬化した他は、実施例1と同様に試料を作製し評価した。
【0140】
保護部材E:
厚さ500μmのカーボン板(PAN系一方向CFRP)をシンチレータパネルと同じサイズに裁断した。保護部材EのX線吸収率は0.1%であった。
【0141】
該X線吸収率は前記(X線吸収率の測定方法)に従って測定した。
【0142】
比較例1
前記シンチレータパネルに保護部材を設けなかった他は、実施例1と同様に試料を作製し評価した。
【0143】
比較例2
前記シンチレータパネルに、図6の34に示すとおり、保護部材Aを接着した他は、実施例1と同様に試料を作製し評価した。保護部材を接着したときのシンチレータパネルの断面図を図6に示す。
【0144】
保護部材A:
特開2009−2776の実施例1に記載のようにメタルテープ(反射防止層3μm/アルミ箔18μm/接着層18μm)を作製し、幅15mmに裁断した。保護部材AのX線吸収率は6.5%であった。
【0145】
以上により作製したシンチレータパネルにつき、下記の評価を行い、その結果を表1に示した。
【0146】
【表1】

【0147】
(シンチレータパネルの評価)
(鮮鋭性)
各試料を縦10cm×横10cmのCMOSフラットパネル(ラドアイコン社製X線CMOSカメラシステムShad−o−Box 4KEV)にセットし、12bitの出力データよりMTFを試料ごとに測定・算出する。
【0148】
具体的には、鉛製のMTFチャートを通して管電圧80kVpのX線を各試料の裏面(第2の保護フィルム側)から照射し、画像データをCMOSフラットパネルで検出してハードディスクに記録した。その後、ハードディスク上の記録をコンピュータで分析して当該ハードディスクに記録されたX線像の変調伝達関数(MTF(Modulation Transfer Function))を算出した。その算出結果(空間周波数1サイクル/mmにおけるMTF値(%))を求めた。MTF値が高いほど鮮鋭性に優れている。
【0149】
(耐湿性)
上記で得られたシンチレータパネルを70℃90%RHの環境下に3日間放置した後に、シンチレータ層の表面形状を光学顕微鏡で目視評価した。下記判断基準に基づき3段階にランク分けした。
【0150】
1:変化なし
2:結晶先端部一部で融解が認められ、その融解率が結晶面積の全体の0.5%未満
3:結晶先端部の融解率が結晶面積全体の0.5%〜5%。
【0151】
(取り扱い性)
シンチレータパネルを一旦光電変換パネルにセットした後、取り出して、シンチレータパネルの保護フィルムを封止解除する。保護フィルムの耳部を目視観察し、ダメージの大きい耳部、テント部とその周辺を含む保護フィルムを切り出す。該テント部の開口部を上、耳部を下にして、該テント部にリークチェッカー(エージレスシール用チェック液;三菱ガス化学株式会社製)をスポイトで滴下し、2時間放置後にマイクロスコープで観察する。
【0152】
1:保護フィルムの耳部のリークが無い
2:保護フィルムの耳部のリークがある。
【0153】
(衝撃耐性)
シンチレータパネルを光電変換パネルにセットして、X、Y、Zの各軸方向に6回(±各3回)、20G、2msでハーフサイン波により衝撃を与えた後、光電変換パネルよりシンチレータパネルを取り出して目視で観察する。
【0154】
1:変化なし
2:保護フィルム耳部の一部に変形があるが、保護フィルムの破れなし
3:保護フィルム耳部の一部に変形があり、保護フィルムの破れあり。
【0155】
(写り込み性)
各試料を縦10cm、横10cmのCMOS光電変換パネル(ラドアイコン社製X線CMOSカメラシステムShad−o−Box 4KEV)にセットし、管電圧80kVpのX線を各試料の前記裏面から照射し、未補正画像を撮影した。これを画像再生装置により画像として再生し、封止耳部の画像を観察し、保護部材の写り込みを評価した。
【0156】
1:保護部材の写り込みなし
2:一部の領域で保護部材有り無しの境界が確認される
3:全ての領域で保護部材有り無しの境界が確認される。
【0157】
表1より、本発明によれば、鮮鋭性、耐湿性、取り扱い性、衝撃耐性及び写り込み性が同時に改善され、特に耐湿性が改善されていることが分かる。
【符号の説明】
【0158】
1 シンチレータパネル
2 シンチレータ層
3 反射層
4 基板
5 下引き層
10 第2の保護フィルム
20 第1の保護フィルム
30 板状加工物
31 液状組成物の硬化物
32 板状加工物
33 接着剤
34 メタルテープ
35 液状組成物の硬化物
200 蒸着装置
201 真空容器
202 蒸発源
203 基板ホルダ
204 基板回転機構
205 真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と前記基板上に設けられたシンチレータ層を有するシンチレータパネルにおいて、該基板とシンチレータ層が前記シンチレータ層側に配置した第1の保護フィルムと、前記基板側に配置した第2の保護フィルムとにより封止されており、前記シンチレータパネルの外周部が保護フィルムから形成された耳部からなり、X線吸収率が5%以下であり、厚さが10μm〜1000μmである保護部材により、該耳部が覆われていることを特徴とするシンチレータパネル。
【請求項2】
前記保護部材が板状加工物であって、該板状加工物が、シンチレータ層と重なる領域の第2の保護フィルムの全面に、接着されていることを特徴とする請求項1に記載のシンチレータパネル。
【請求項3】
前記保護部材が主に耳部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のシンチレータパネル。
【請求項4】
前記保護部材が液状組成物を硬化することにより形成された保護部材であることを特徴とする請求項3に記載のシンチレータパネル。
【請求項5】
前記保護部材が厚さ10μm〜500μmの板状加工物であることを特徴とする請求項3又は4に記載のシンチレータパネル。
【請求項6】
前記保護フィルムと前記保護部材の厚みの合計が、100μm〜1300μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のシンチレータパネル。
【請求項7】
前記シンチレータ層がヨウ化セシウムを含有する柱状結晶構造を有し、気相法により形成されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のシンチレータパネル。
【請求項8】
前記基板上に反射層、下引き層及びシンチレータ層を順に設けることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のシンチレータパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−22068(P2011−22068A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168788(P2009−168788)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】