説明

シース熱電対と補償導線のコネクタ

【課題】シース熱電対のみを取り替えることができる、シース熱電対と補償導線のコネクタを提供する。
【解決手段】枢軸を介して開閉可能に接続された樹脂製の上板2および下板3と、上板および下板の各接触面を密着させる固定具7とを有し、下板の上記接触面には、シース熱電対4を配置するための熱電対溝と、シース熱電対の2本の熱電対素線を分離する仕切部3cと、補償導線6を配置する補償導線溝3eとが連設され、2枚の電極板を固定するための電極板凹部3dが形成され、その電極板凹部に電極板が固定され、補償導線6は補償導線溝に固定され、2本の芯線が電極板にそれぞれ接続され、さらに、上板の接触面には、補償導線を押圧するための突部2eおよび熱電対素線を電極板に押し付けるための突起2dが設けられ、突起は、仕切部によって分離された2本の熱電対素線4aをそれぞれ電極板上に押圧して固定するように構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
シース熱電対は高温雰囲気や腐食性雰囲気といった過酷な環境で使用されることが多々あり、このような環境で使用されることによって破損したり、寿命が尽きたシース熱電対は取り替える必要が生じる。一方、補償導線はシース熱電対の信号伝送をするためのもので、過酷な環境で使用されることは無く、通常、長期に使用可能である。本発明は、上記シース熱電対と補償導線を繋ぐコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来より一般に使用されているシース熱電対の断面図を示したものであり、同図(a)はシース熱電対をその長手方向に切断した断面図、同図(b)は図6(a)のI−I断面図である。
【0003】
シース熱電対20は、金属シース20a内に、マグネシア、アルミナ等を材質とする粉末の無機絶縁材20bを介在させて一対の熱電対素線20cを収容したもので、端部(図6の右端)には湿分の侵入による無機絶縁材の絶縁低下を防ぐため、樹脂等によるシール20dが施されている。
【0004】
なお、図6は、熱電対素線20cの先端(図の左端)がシースの先端部と接触していない非接地型シース熱電対を示しているが、熱電対素線20cの先端とシースの先端部が接触している接地型シース熱電対もある。
【0005】
また、図7は、シース熱電対と補償導線を繋ぐ従来のスリーブ部断面図を示したものである。
【0006】
同図に示すように、シース熱電対20と補償導線21の接続は、シース熱電対20の端部近傍部分20eに円筒状の金属スリーブ22を溶接やカシメにより取り付け、その内部の中間部分22aの位置で、熱電対素線20cと補償導線21の芯線21aとをロウ付けや、かしめなどにより接続しており、これらを固定するために、金属スリーブ22内の空隙部に樹脂等の接着材23を充填したものが一般的である(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
なお、図中21bは補償導線21の外側被覆、21cは同じく芯線の絶縁被覆である。
【0008】
図示しないが、導線(熱電対素線20c、補償導線の芯線21a)間の接触防止や導線とスリーブ22の接触防止のための、絶縁物で作ったスペーサ等が金属スリーブ22内に設けられることもある。
【0009】
その他、空隙部の充填物を樹脂ではなく、マグネシア、アルミナ等の無機絶縁材粉末としたものや、図8に示すように、金属スリーブ22を用いずに、樹脂でモールドしたもの等がある。樹脂モールド24の場合も、上記金属スリーブ22の場合と同様に絶縁物で作ったスペーサ等が設けられることもある。
【0010】
なお、図8において、図7と同じ構成要素については同一符号を付してその説明を省略している。また、図7、図8は金属スリーブ、樹脂モールド部分のみを断面を示し、シース熱電対20及び補償導線21はその外形を表わしている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】「新編 温度計の正しい使い方」第2版、著者 社団法人日本電気計測工業会、出版社 日本工業出版株式会社、2003年3月10日発行、p.62
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記した従来のシース熱電対20と補償導線21の接続構造では、シース熱電対20と補償導線21の脱着が不可能で、シース熱電対20が破損や寿命などによって使用できなくなった場合は、シース熱電対20と補償導線21をともに取り替えなければならなかった。
【0013】
本発明は以上のような従来のシース熱電対と補償導線の接続構造における課題を考慮してなされたものであり、破損や寿命などによってシース熱電対を取り替える必要が生じた際に、シース熱電対のみを取り替えることができる、シース熱電対と補償導線のコネクタを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、枢軸を介して開閉可能に接続された樹脂製の上板および下板と、閉じられた上記上板および上記下板の各接触面を密着させる固定具とを有し、
上記下板の上記接触面には、シース熱電対の外径より浅い溝からなり上記シース熱電対を配置するための熱電対溝と、上記シース熱電対の2本の熱電対素線を分離する仕切部と、補償導線を配置する補償導線溝とが連設され、
上記仕切部を挟んでその両側には2枚の電極板を固定するための電極板凹部が形成され、
その電極板凹部に上記電極板が接着剤を介して固定され、
上記補償導線は上記補償導線溝に接着剤を介して固定され、
上記補償導線先端の剥き出された2本の芯線が上記電極板にそれぞれ接続され、
さらに、上記上板の上記接触面には、上記補償導線溝に配置された上記補償導線を押圧するための突部および上記熱電対素線を上記電極板に押し付けるための突起が設けられ、
上記突起は、上記上板を上記枢軸まわりに回転させて上記下板と接触させ、上記固定具によって密着させた際に、上記仕切部によって分離された2本の熱電対素線をそれぞれ上記電極板上に押圧して固定するように構成されているシース熱電対と補償導線のコネクタである。
【0015】
本発明において、上記上板の上記接触面に、さらに上記シース熱電対を押さえ付けて固定するための突部を設け、上記下板の上記接触面にその突部と係合する凹溝を設け、上記突部および上記凹溝を、上記熱電対溝と交差する方向に配設することができる。
【0016】
本発明において、上記電極板として金属製の平型圧着端子を使用する場合、これらの平型圧着端子に上記補償導線の芯線を、それぞれかしめにより接続することができる。
【0017】
本発明において、上記上板における上記仕切部と対応する位置に貫通孔を有する場合、上記仕切部は、上記上板と上記下板が閉じられた際に、上記貫通孔に挿入し得る柱体で構成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、シース熱電対の破損、寿命などにより取り替える必要が生じた際に、シース熱電対のみを取り替えることができ、補償導線を取り替える必要がない。また、シース熱電対の脱着が容易で、かつ短時間に行うことができる。
【0019】
また、本発明によれば、構造が簡単で、安価なコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る第一実施例の構成を示す分解斜視図である。
【図2】図1のコネクタを閉じた状態を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る第二実施例の構成を示す分解斜視図である。
【図4】図3のコネクタを閉じた状態を示す斜視図である。
【図5】第一及び第二実施例に係る電極板の変形例としての平型圧着端子を示す斜視図である。
【図6】(a)は従来のシース熱電対の長手方向断面図、(b)は図6(a)のI−I断面図である。
【図7】従来のシース熱電対と補償導線の金属スリーブによる接続構造を一部断面で示した正面図である。
【図8】従来のシース熱電対と補償導線の樹脂モールドによる接続構造を一部断面で示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に示した実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0022】
1 シース熱電対と補償導線のコネクタの基本構成
本発明のコネクタは、枢軸を介して開閉可能に接続された樹脂製の上板および下板と、閉じられた上記上板および下板の各接触面を密着させる固定具としてのクリップまたは締付けビスより構成されている。
【0023】
上記下板の接触面には、シース熱電対を位置決めするための熱電対溝、シース熱電対の2本の熱電対素線を分離するための柱状の仕切部、補償導線を設置するための補償導線溝がそれぞれ一列に配置されている。上記熱電対素線を分離する上記仕切部の両側には、2枚の電極板を貼り付けるための2つの電極板凹部が形成されている。
【0024】
上記熱電対溝の深さは、シース熱電対の外径より浅く、したがって、熱電対溝にシース熱電対をはめ込むと、シース熱電対の上面部(外周面の一部)が熱電対溝の上面より突出するようになっている。
【0025】
上記補償導線は一般的に、2本の芯線をそれぞれビニルやシリコンゴム等の絶縁体で被覆し、さらにその外側をビニルやシリコン等で被覆してなる、2本の絶縁被覆された芯線を束ねた構造を有している。
【0026】
この補償導線は上記下板の補償導線溝にはめ込まれ、補償導線と下板の溝部は接着材により接着される。
【0027】
補償導線の先端は、芯線が剥き出されており、2本の芯線の先端にはそれぞれに金属を材料とする板状の電極板がロウ付け、半田付け等により取り付けられており、これら2枚の電極板は、下板の電極板凹部に接着剤を用いて接着されている。
【0028】
一方、上記上板の接触面には、補償導線を固定するための突部、熱電対素線を電極板に押し付けるための突起がそれぞれ形成されている。
【0029】
1.1 シース熱電対の取り付け、取り外し方法
シース熱電対の取り付けは、上板と下板を開いた状態にし、その下板において、シース熱電対の先端の2本の熱電対素線が仕切部を挟んで2つの電極板の上面に位置するよう、シース熱電対を熱電対溝に配置する。
【0030】
続いて上板を、上記枢軸まわりに回転させて上板と下板を接触させ、ダブルクリップ、スライド式クリップ、ガチャック(登録商標)等のクリップでその接触した上板と下板を挟むことにより、または、締付けネジによって締め付けることにより、上板と下板の接触面を密着させた状態で固定する。
【0031】
シース熱電対の取り外しは、クリップ又は締付けネジを取り外し、上板又は下板を、前記枢軸まわりに回転させて両板間を開くと、シース熱電対を取り外すことができる。
【0032】
上記構成を有するコネクタを用いてシース熱電対を取り付けると、シース熱電対は、その上面部が熱電対溝の上面よりも上に突出した状態で上板により押圧され固定されるため、抜けることがない。
【0033】
補償導線も補償導線溝に接着され、かつ上板の突部により押えつけられるために、抜けることがない。
【0034】
また、シース熱電対の熱電対素線は上板の突起によって電極板に押し付けられるため、補償導線芯線との接触を確実に行うことができ、加えて、シース熱電対の2本の熱電対素線を分離する仕切部があるために、2本の熱電対素線が接触した状態で締付けられることもない。
【0035】
さらに補償導線の剥きだされた芯線は、これに接続されている電極板が電極板凹部に接着剤を用いて固定されているため、2本の芯線が接触する虞がない。
【0036】
また、上板の接触面(シース熱電対側)に、シース熱電対を押え付けて強固に固定するための突部を設け、下板の接触面にその突部が係合する凹溝を設け、上記突部と凹溝を熱電対溝と交差する方向に設ければ、凹溝と熱電対溝とが交差する溝交差部は凹溝が形成されている分、熱電対溝が浅くなり、その結果、溝交差部では熱電対溝にはめ込まれたシース熱電対の上面部がより多く露出することになり、この露出部分を上板の突部が押え付けることになるため、結果としてシース熱電対はより強固に固定される。
【0037】
また、上記電極板として平型圧着端子を使用してもよい。この場合、平型圧着端子は補償導線の芯線に、かしめにより取り付け、電極板を貼り付けるための電極板凹部に対して接着剤で接着される。
【0038】
このように平型圧着端子を使用すれば、芯線に対する電極板取り付けをかしめで行うため、電極板に補償導線芯線をロウ付けまたは半田付けするのに比べてコネクタの製作作業が簡単になるという利点がある。
【0039】
さらに、熱電対素線を分離する仕切部が貫通する貫通孔を上板に設ければ、仕切部の高さを高くすることができ、それにより、2本の熱電対素線をより確実に分離することができる。
【実施例】
【0040】
2 第一実施例
図1および図2は本発明の第一実施例を示したものである。
【0041】
図1は、シース熱電対と補償導線のコネクタ(以下、コネクタと略称する)に係る構成を示した斜視図であり、上板2と下板3の構成が理解しやすいように両板を分解した状態(枢軸2aを枢軸挿入孔3aに挿入していない状態)で図示している。
【0042】
図2は、上板2と下板3を閉じて使用状態にした構成を示す斜視図である。
【0043】
2.1 コネクタの構成
図1に示すように、下板3の基端部には枢軸挿入孔3aが形成され、先端部にはシース熱電対4を位置決めする熱電対溝3bが形成され、中央部にはシース熱電対4の2本の熱電対素線を分離する柱状の仕切部(柱体)3cが形成され、この仕切部3cの両側(下板3の幅方向)には電極板5を接着するための一対の電極板凹部3dが形成されている。
【0044】
上記電極板凹部3dには一対の金属製の電極板5が接着剤で貼り付けられるようになっており、さらに、下板3の補償導線接続側には補償導線6を配置するための補償導線溝3eが形成されている。
【0045】
また、上板2にはシース熱電対4を押え付けるための2本の突部2bが線状に形成され、下板3にはそれら突部2bと係合する2本の凹溝3fが形成されている。
【0046】
補償導線6は補償導線溝3eに配置され、補償導線6の外周の被覆6aと補償導線溝3eは接着材で固定されている。補償導線6先端の2本の芯線6bは剥き出され、各芯線6bは電極板5の上面角部(補償導線側の角部)に半田付けされている。なお、6cは芯線の絶縁被覆である。
【0047】
上板2における基端部側面には、枢軸2aが反対向きに突設されており、また、仕切部3cと対応する部位の上板2にはその仕切部3cを貫通させる貫通孔2cが形成されている。
【0048】
上記貫通孔2cの両側(上板の幅方向)には、熱電対素線4aを電極板5に押し付けるための突起2dが形成されている。さらに、上板2の基端部寄りには補償導線6を押え付けるための突部2eが形成されている。
【0049】
2.2 シース熱電対の接続
上記コネクタ1にシース熱電対4を接続する場合、まず、上板2の枢軸2aを下板3の枢軸挿入孔3aに挿入する。
【0050】
次いで、シース熱電対4を熱電対溝3bにはめ込み、先端の2本の熱電対素線4aが仕切部3cを挟んで2つの電極板5の上面に位置するように配置する。この状態で枢軸2aまわりに上板2を回転させ、上板2と下板3を閉じた後、固定具としてのクリップ7を矢印A方向に押し込み、図2に示すように、上板2と下板3を挟んで固定する。
【0051】
また、シース熱電対4を取り替える場合には、クリップ7を矢印A方向と逆方向に引き抜き、枢軸2aまわりに上板2を回転させて上板2と下板3を開き、シース熱電対4を取り外す。シース熱電対4はコネクタ1におけるどの部分に対しても接着、溶接などで固定されていないため、簡単に取り外すことができる。
【0052】
上記第一実施例では、上板2及び下板3をポリカーボネート樹脂で成形したが、コネクタ1に必要とされる強度を備えていれば、ポリカーボネート樹脂に限らず、他の任意の樹脂を使用することができる。
【0053】
また、固定具としてのクリップ7はバネ鋼からなるスライド式クリップで構成したが、ダブルクリップやガチャック等の他の形式のクリップを使用してもよい。
【0054】
2.3 第一実施例のコネクタの特長
コネクタ1における熱電対溝3bの深さは、シース熱電対4の外径より浅いため、熱電対溝3bにシース熱電対4をはめ込むと、シース熱電対4の上面部が熱電対溝3bの上面より突出するため、上板2を閉じてクリップ7で締付け固定すると、上板2のフラットな接触面2fによってシース熱電対4が下板3に押し付けられるため、シース熱電対4の抜けが防止される。
【0055】
さらに、本第一実施例では、上板2にシース熱電対4を押え付ける2本の突部2bを設けるとともに、下板3にはそれら突部2bと係合する2つの凹溝3fを設け、シース熱電対4を確実に固定できるようにしている。
【0056】
凹溝3fと熱電対溝3bが交差する箇所は、凹溝3fの溝深さ分だけ熱電対溝3bの深さが浅くなるため、その交差部ではシース熱電対4の上面部がより多く露出することになり、その露出した上面部を上板2の突部2bが押え付けるため、シース熱電対4はコネクタ1に強固に固定される。
【0057】
なお、シース熱電対4の2本の熱電対素線4aは、仕切部3cによって分離されているため、互いに接触することがない。
【0058】
また、熱電対素線4aを電極板5に押し付ける突起2dの長さ(上板2の長手方向)は、電極板5の補償導線側の隅に位置する補償導線6の芯線6bと電極板5との半田接着部を避けるように、電極板5の長さより短く形成されている。したがって、突起2dは電極板5の平坦部分を押え付けることができ、それにより、突起2dにより熱電対素線4aは電極板5に対して確実に押し付けられ、電極板5と熱電対素線4aとの間で接触不良が生じることがない。
【0059】
一方、補償導線6は、補償導線溝3eに接着材で固定されるとともに、上板2の基端部寄りに形成された突部2eによって押え付けられるために、抜けることがない。また、補償導線6の剥きだされた芯線6bは電極板5に半田付けされており、その電極板5は下板3に形成された電極板凹部3dに接着剤で固定されているため、2本の芯線6bが接触する虞もない。
【0060】
下板3におけるクリップ装着側の枠幅aは、サイズが決まっている市販のスライド式のクリップ7を図2に示すように装着した際に、その先端部が上板2の幅方向中央部、具体的には、熱電対溝3b、電極板5、補償導線溝3e上に位置することができるような長さに決められている。
【0061】
すなわち、クリップ7はその先端部が最も締付ける力が大きいため、シース熱電対4と補償導線6の固定、および熱電対素線4aと電極板5との当接を、最も高い締付力が得られるクリップ7の先端部で確実に行うことができる。
【0062】
上記したように、上板2は、突部2eにより補償導線6を押え、突起2dにより電極5に対し熱電対素線4aを押し付け、上板2のフラットな接触面2fによりシース熱電対4を押え、加えて、突部2bでもシース熱電対4を押えるようになっている。
【0063】
このうち補償導線6はその絶縁被覆6a,6cに弾力性があるので他の押付け力には影響を与えない。また、上板2、下板3は樹脂製でありそれ自体、可撓性を備えているため、突起2d、突部2bを適切な高さにすれば、突起2d、フラットな接触面2f及び突部2bの押付け力が相互に作用し、特定の部位において押付け力が不足することは無い。
【0064】
第一実施例において、コネクタ1へのシース熱電対4の取り付けは、下板3へのシース熱電対4の配置、上板2の回転、クリップ7の装着というシンプルな操作で簡単に行うことができる。また、シース熱電対4を取り外す場合においても、クリップ7を取り外し、上板2を回転させて開くことにより、簡単に行うことができる。
【0065】
3. 第二実施例
図3および図4は本発明の第二実施例を示したものである。
【0066】
図3は、別のコネクタ10の構成を示した斜視図であり、上板11と下板12の構成が理解しやすいように両板を分解した状態(枢軸2aを枢軸挿入孔3aに挿入していない状態)で図示している。なお、図3において図1と同じ構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0067】
図4は、上板11と下板12を閉じて使用状態にした構成を示す斜視図である。
【0068】
3.1 別のコネクタの構成
第二実施例のコネクタは上記第一実施例とは形状が若干、異なっており、機能的には、上板11と下板12との締付をクリップではなく、固定具としての2本のビス13およびナット14で行なっている点で相違している。
【0069】
以下、相違点について詳しく説明する。
【0070】
下板12にはその幅方向に突出部12a,12bが形成されており、各突出部12a,12bにはそれぞれ貫通孔12cが縦方向に設けられている。
【0071】
上記突出部12a,12b底面における貫通孔12cの縁部には六角ナット14を収容するための六角凹部(図示しない)が形成されている。
【0072】
上記六角凹部に接着剤が塗布され、上記六角ナット14がはめ込まれることにより、六角ナット14は回転しない状態で下板12に固定されている。
【0073】
一方、上板11には上記突出部12a,12bと対向する位置に突出部11a,11bが形成され、突出部11a,11bには上記貫通孔12cと連絡する貫通孔11cがそれぞれ形成されている。
【0074】
3.2 シース熱電対の接続
第二実施例のコネクタ10にシース熱電対を接続する際は、まず、上板11の枢軸2aを下板12の枢軸挿入孔3aに挿入する。
【0075】
次いで、シース熱電対4を熱電対溝3bにはめ込み、先端の2本の熱電対素線4aが仕切部3cを挟んで2つの電極板5の上面に位置するように配置する。
【0076】
この状態で枢軸2aまわりに上板11を回転させ、上板11と下板12を閉じた後、ビス13を貫通孔11c→12cに挿入し、六角ナット14に螺合させることにより、図4に示すように上板11と下板12を締付け固定する。
【0077】
シース熱電対4を取り替える場合には、ビス13を外し、枢軸2aまわりに上板11を回転させて上板11と下板12を開き、シース熱電対4を取り外す。シース熱電対4はコネクタ1におけるどの部分に対しても接着、溶接などで固定されていないため、簡単に取り外すことができる。
【0078】
3.3 別のコネクタの特長
上記第一実施例と異なる第二実施例に係るコネクタの特長は以下のとおりである。
【0079】
クリップ7に換えてビス13を使用しているため、図1に示した枠幅aをクリップ7のサイズに合わせる必要がない。
【0080】
シース熱電対4のコネクタ10への取り付けは、シース熱電対4を熱電対溝3bへ配置し、上板11を回転させ、ビス13で締め付けることにより行われる。
【0081】
上記第一実施例に比べるとビス13の締付作業にやや時間を要するが、シンプルな操作で簡単にシース熱電対4を接続できる点に変わりはない。また、シース熱電対4を取り外す場合においても、ビス13を取り外し、上板11を回転させて開くことにより、簡単に行うことができる。
【0082】
以上2つの実施例を示したが、電極板5に変えて図5に示す金属製の平型圧着端子15を用いることもできる。
【0083】
上記平型圧着端子15を補償導線の芯線6bに、かしめによって取付け、電極板凹部3dに接着剤を用いて接着してもよい。
【0084】
上記平型圧着端子15を使用すれば、芯線6bの電極板への取り付けがかしめによって行われるため、電極板5に芯線6bをロウ付けまたは半田付けするのに比べて製作作業が簡単になる。
【0085】
また、上記実施例では、シース熱電対4の熱電対素線4aを分離する仕切部3cを円柱状としたが、熱電対素線4aの先端部を電極板5上へ簡単に位置決めすることを目的として仕切部3cの断面(平面から見て)を楔状、具体的には断面が三角形状で1つの頂点がシース熱電対4側を向いたものにするなど、他の断面形状としてもよい。
【0086】
上記第一および第二実施例に示したように、本発明のコネクタは構造がシンプルなため、従来のシース熱電対と補償導線とのコネクタ構造に比べて高価になることがなく、加えてシース熱電対の脱着も可能になるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、シース熱電対と補償導線を接続するコネクタに好適であるが、マイクロヒータと電源ケーブルの脱着可能なコネクタとして使用することもでき、さらに、ケーブル同士の脱着可能なコネクタとしても使用することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 コネクタ
2 上板
2a 枢軸
2b 突部
2c 貫通孔
2d 突起
2e 突部
2f フラットな接触面
3 下板
3a 枢軸挿入孔
3b 熱電対溝
3c 仕切部
3d 電極板凹部
3e 補償導線溝
3f 凹溝
4 シース熱電対
4a 熱電対素線
5 電極板
6 補償導線
6a 被覆
6b 芯線
7 クリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枢軸を介して開閉可能に接続された樹脂製の上板および下板と、閉じられた上記上板および上記下板の各接触面を密着させる固定具とを有し、
上記下板の上記接触面には、シース熱電対の外径より浅い溝からなり上記シース熱電対を配置するための熱電対溝と、上記シース熱電対の2本の熱電対素線を分離する仕切部と、補償導線を配置する補償導線溝とが連設され、
上記仕切部を挟んでその両側には2枚の電極板を固定するための電極板凹部が形成され、
その電極板凹部に上記電極板が接着剤を介して固定され、
上記補償導線は上記補償導線溝に接着剤を介して固定され、
上記補償導線先端の剥き出された2本の芯線が上記電極板にそれぞれ接続され、
さらに、上記上板の上記接触面には、上記補償導線溝に配置された上記補償導線を押圧するための突部および上記熱電対素線を上記電極板に押し付けるための突起が設けられ、
上記突起は、上記上板を上記枢軸まわりに回転させて上記下板と接触させ、上記固定具によって密着させた際に、上記仕切部によって分離された2本の熱電対素線をそれぞれ上記電極板上に押圧して固定するように構成されていることを特徴とするシース熱電対と補償導線のコネクタ。
【請求項2】
上記上板の上記接触面に、さらに上記シース熱電対を押さえ付けて固定するための突部が設けられ、上記下板の上記接触面にその突部と係合する凹溝が設けられ、上記突部および上記凹溝は、上記熱電対溝と交差する方向に配設されている請求項1記載のシース熱電対と補償導線のコネクタ。
【請求項3】
上記電極板として金属製の平型圧着端子を使用し、これらの平型圧着端子に上記補償導線の芯線が、それぞれかしめにより接続されている請求項1または2記載のシース熱電対と補償導線のコネクタ。
【請求項4】
上記上板における上記仕切部と対応する位置に貫通孔を有し、上記仕切部は、上記上板と上記下板が閉じられた際に、上記貫通孔に挿入し得る柱体で構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のシース熱電対と補償導線のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−230505(P2010−230505A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78718(P2009−78718)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000140454)株式会社岡崎製作所 (34)
【Fターム(参考)】