説明

シーソーローダ

【課題】工作機械に対してワークを供給するとき、もしくは工作機械からワークを引き取るとき、これらの作業性を向上させることができるシーソーローダを提供することである。
【解決手段】アーム53を有する移動体20を備え、そのアーム53を工作機械に対して進退させることで、該工作機械に対してワークWの受け渡しを行うシーソーローダであって、移動体20に対してアーム53を揺動させる揺動機構と、移動体20に対してアーム53を進退させる伸縮機構とを備えており、これら両機構によってアーム53の先端はアーム53の進退に伴って略8字を描く格好で工作機械に対して進退可能となっており、アーム53の先端には、ワークWを引っ掛け可能なフック55が形成されており、フック55にワークWを引っ掛けた状態で工作機械に対して未加工のワークWの供給を行う、もしくはフック55によって工作機械で加工された加工済みのワークWの引き取りを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーソーローダに関し、詳しくは、工作機械に対して未加工のワークの供給を行う、もしくは工作機械で加工された加工済のワークの引き取りを行うシーソーローダに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシーソーローダとして、例えば、特許文献1に関する技術が既に知られている。この技術では、先端にワークを把持可能なチャック機構を有するローダと同アンローダとを交互に動作させることによって工作機械に対してワークの受け渡し(供給および引き取り)が行われている。
【特許文献1】昭55−77442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したシーソーローダでは、チャック機構によってワークを把持する構造であるため、工作機械に対してワークの受け渡しを行うとき、受け渡しを確実に行うために、受け渡しの都度、ローダとアンローダの動作を停止させなければいけなかった。そのため、ワークの受け渡しを行うとき、ローダとアンローダを停止させる無駄な時間が生じることとなっていた。
【0004】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、工作機械に対してワークを供給するとき、もしくは工作機械からワークを引き取るとき、これらの作業性を向上させることができるシーソーローダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、アームを有する移動体を備え、そのアームを工作機械に対して進退させることで、該工作機械に対して未加工のワークの供給を行う、もしくは該工作機械で加工された加工済のワークの引き取りを行うシーソーローダであって、移動体に対してアームを揺動させる揺動機構と、移動体に対してアームを進退させる伸縮機構とを備えており、これら両機構によってアームの先端はアームの進退に伴って略8字を描く格好で工作機械に対して進退可能となっており、アームの先端には、ワークを引っ掛け可能なフックが形成されており、フックにワークを引っ掛けた状態で工作機械に対して未加工のワークの供給を行う、もしくはフックにワークを引っ掛けて工作機械で加工された加工済みのワークの引き取りを行うことを特徴とする。
この構成によれば、アームの先端のフックは略8字を描く格好で工作機械に対して進退可能となっている。また、フックはワークを引っ掛け可能となっている。これにより、
工作機械に対してワークを供給するとき、その供給場所を略8字の軌跡上に設定しておけば、アームの動作を停止させることなく工作機械に対してスムーズにワークを供給することができる。このことは、工作機械からワークを引き取るときも同様である。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のシーソーローダであって、アームは、移動体において1対設けられており、移動体に対して両アームを一体的に揺動させる揺動機構と、移動体に対して両アームを交互に進退させる伸縮機構とを備えており、これら両機構によって両アームの先端は両アームの進退に伴ってアームの進退方向に対して略対象となるように略8字を描く格好で工作機械に対して進退可能となっており、両アームの先端には、ワークを引っ掛け可能なフックがそれぞれ形成されており、一方のフックにワークを引っ掛けた状態で工作機械に対して未加工のワークの供給を行い、他方のフックにワークを引っ掛けて該工作機械で加工された加工済みのワークの引き取りを行うことを特徴とする。
この構成によれば、2本のアームのうち、一方のアームをワーク供給用のアーム、他方のアームをワーク引き取り用のアームに適用させることができる。そのため、請求項1で説明した1本のアームでワークの供給を行う場合と比較すると、この供給作業の合い間にワークの引き取り作業を入れることができる。したがって、ワークの供給および引き取りを効率良く行うことができる。
【0007】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のシーソーローダであって、移動体は、モータを有する本体と、本体に対して軸支されると共に2本のアームをアームの進退方向に案内するガイド体とから構成されており、揺動機構は、モータの出力軸が一方向に回転することによって、出力軸と機械的に連結されたプレートが回転し、回転したプレートに形成された略楕円形状の溝内をガイド体に突設された突起が移動することによって、ガイド体が本体に対して揺動する構成からなっており、伸縮機構は、モータの出力軸が一方向に回転することによって、出力軸と機械的に連結されたピニオンギヤが正逆に回転し、正逆に回転したピニオンギヤの外周面に対向するように噛み合わされた両アームが工作機械に対して進退する構成からなっていることを特徴とする。
この構成によれば、揺動機構の駆動源および伸縮機構の駆動源を1つのモータで実施できる。そのため、複数の駆動源を必要としないため、簡便な構成で実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図1〜6を用いて説明する。図1は、本発明のシーソーローダの全体構成を示す正面図である。図2は、本発明のシーソーローダに係る両アーム53、54の駆動機構を示す左側面図である。図3は、図2の駆動機構のうち両アーム53、54の伸縮機構を示す斜視図である。図4は、図2の駆動機構のうち両アーム53、54の揺動機構を示す斜視図である。図5は、図4のプレート42においてシャフト41と反対側の側面図である。図6は、図1における右アーム54の駆動軌跡を示す図である。
【0009】
図1に示すように、シーソーローダは、主として矩形状に形成された枠体10と、この枠体10の上辺に取り付けられたビーム11に沿って移動可能な移動体20とから構成されている。この移動体20は、図示しない駆動手段によってビーム11に沿って移動可能となっている。
【0010】
移動体20は、モータ31を有する本体30と、この本体30に対して軸支されたガイド体50とから構成されている。ガイド体50は、主として筒状に形成された2本の左右ガイド51、52から構成されており、これら2本の左右ガイド51、52によって2本の左右アーム53、54が上下移動自在に案内されている。この左右アーム53、54が特許請求の範囲に記載の「アームは、移動体において左右対称となるように1対設けられており」に相当する。
【0011】
2本の左右アーム53、54の先端には、ワークWを引っ掛け可能な略J字形状のフック55、56がそれぞれ取り付けられている。これら両フック55、56は、図2からも明らかなように、ワークWを橋渡す格好で引っ掛けるため、両フック55、56はそれぞれ2個ずつ取り付けられている。
【0012】
このように両フック55、56にワークWを引っ掛けた状態で両アーム53、54を工作機械(図示しない)のワーク支持架台22に対して進退させることで、該工作機械に対して未加工のワークWの供給を行うと共に、該工作機械で加工された加工済のワークWの引き取りを行うことができる。
【0013】
続いて、上記した両アーム53、54を進退させる機構について詳述する。この進退させる機構は、両アーム53、54が工作機械のワーク支持架台22に対して進退する伸縮機構と、ガイド体50が本体30に対して揺動する揺動機構とから構成されている。以下に、これらの構成を個別に説明する。
【0014】
はじめに、伸縮機構を説明する。図2、3に示すように、モータ31の出力軸31aはギヤ32と締結されている。ギヤ32の出力軸31aと反対側の面には、この出力軸31aに対して偏心状態で凸部32aが突設されている。この凸部32a側には、ラック33が配設されており、このラック33には、ラック33の長手方向に対して垂直方向に2本の平行体33aが設けられている。
【0015】
上記凸部32aは、この2本の平行体33aの間に嵌り込む格好となっている。また、ラック33と噛み合うようにギヤ34が設けられており、ギヤ34はシャフト35を介してピニオンギヤ36と締結されている。これらの記載が、特許請求の範囲に記載の「出力軸と機械的に連結されたピニオンギヤ」に相当する。また、上記した2本の左右アーム53、54の対向する内面には長手方向に沿って歯が形成されており、これらの歯とピニオンギヤ36の外周面とが噛み合わされるようになっている。
【0016】
なお、図2からも明らかなように、上記したモータ31、ギヤ32、ラック33は本体30側に設けられており、上記したピニオンギヤ36をガイド体50側に設けられている。そして、上記シャフト35によって、ガイド体50は本体30に対して軸支されている。
【0017】
この伸縮機構によって、モータ31の出力軸31aが一方向に回転すると、出力軸31aと機械的に連結されたピニオンギヤ36が正逆に回転し、この正逆に回転したピニオンギヤ36の外周面に対向するように噛み合わされた2本の左右アーム53、54が工作機械のワーク支持架台に対して進退する。
【0018】
次に、揺動機構を説明する。図2、4に示すように、モータ31の出力軸31aと締結されたギヤ32と噛み合い可能なギヤ40が設けられている。ギヤ40はシャフト41を介して円板形状のプレート42と締結されている。これらの記載が、特許請求の範囲に記載の「出力軸と機械的に連結されたプレート」に相当する。プレート42のシャフト41と反対側の面には、シャフト41を中心とする略楕円形状の溝42aが形成されている。
【0019】
この溝42aには、ガイド体50に突設された突起57が嵌め込み可能となっており、この突起57は溝42a内を移動可能となっている(図5参照)。この突起57によって、ガイド体50が本体30に対して揺動可能な範囲が規制されることになる。なお、この揺動可能な範囲は、上記した溝42aにおける略楕円形状の長径、短径の長さによって決められるものであり、所望するシーソーローダの仕様によって決められる設計的事項である。また、図5に記した角度は、ギヤ32に突設された凸部32aの基準位置に対する回転角度と対応している。この回転角度は、後述する図6に記す角度とも対応している。
【0020】
続いて、上記したシーソーローダの動作を説明する。右アーム54のフック56に未加工のワークWが引っ掛けられた状態で、移動体20はビーム11沿いにワーク支持架台22側へと移動していく(図1において、左方向へと移動していく)。この移動が完了してモータ31の出力軸31aが回転すると、図6に示すように、上記伸縮機構と揺動機構によって、左アーム53は中心位置(図6において、0°位置)を起点に左下位置(図6において、76°位置)、右下位置(図6において、104°位置)、左上位置(図6において、256°位置)、右上位置(図6において、284°位置)へと駆動していき、その後、中心位置へと戻されるよう略8字を描く格好で駆動していく。
【0021】
この駆動途中、右下位置から左上位置へ駆動していくとき、左アーム53はワーク支持架台22に載置された加工済みのワークWの引き取り動作を行う。もちろん、この段階では初期動作であるため、まだ、ワーク支持架台22に加工済みのワークWは載置されていない。なお、このワーク支持架台22は、両フック55、56の移動の軌跡上に設定されている。
【0022】
このように左アーム53が駆動するとき、右アーム54は左アーム53に対して、左右方向は同じ動作を行い上下方向は逆の動作を行う。そのため、上述したように、左アーム53がワークWの引き取り動作を行った後に、引き続いて、右アーム54はワーク支持架台22に未加工のワークWを載置させる動作を行う。この未加工のワークWは、工作機械(図示しない)に引き取られ所望する加工が行われた後にワーク支持架台22に戻される。
【0023】
そして、両アーム53、54が中心位置へと戻されると、移動体20はビーム11沿いにワーク支持架台22と反対側へと移動していく(図1において、右方向へと移動していく)。ここで、再度、右アーム54のフック56に未加工のワークWが引っ掛けられる。その後、移動体20および両アーム53、54は上述した動作を繰り返す。
【0024】
これにより、左アーム53によって加工済みのワークWを引き取ると、直ぐに、右アーム54によって未加工のワークWを供給できる。そのため、ワークの供給作業および引き取り作業の作業性を向上させることができる。また、上記した伸縮機構および揺動機構は1つのモータ31を共通の駆動源として駆動している。そのため、これら両機構を1つの駆動源で駆動させることができる。したがって、簡便な構成で実施できる。
【0025】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
実施例では、アームが左右対称に2本設けられている場合を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、アームが1本のみ設けられている場合であっても構わない。この場合には、アームは、ワーク供給用、もしくはワーク引き取り用のいずれか一方となる。そして、この場合であっても、従来技術と比較した場合、実施例の説明と同様の理由で、ワークの供給作業および引き取り作業の作業性を向上させることができる。
【0026】
また、実施例では、アームが左右対称に2本設けられている場合を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、アームが左右非対称に2本設けられている場合(例えば、左右でアームの長さが異なる場合)であっても構わない。この場合には、左右のアームごとにそれぞれワーク支持架台を設ける必要がある。そして、この場合であっても、従来技術と比較した場合、実施例の説明と同様の理由で、ワークの供給作業および引き取り作業の作業性を向上させることができる。
【0027】
また、実施例では、遥動機構の例として、プレート42と突起57とからなる構成を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、公知のリンク機構、ギヤ機構、チェーン機構等からなる構成であっても構わない。このことは、伸縮機構も同様である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明のシーソーローダの全体構成を示す正面図である。
【図2】図2は、本発明のシーソーローダに係る両アーム53、54の駆動機構を示す左側面図である。
【図3】図3は、図2の駆動機構のうち両アーム53、54の伸縮機構を示す斜視図である。
【図4】図4は、図2の駆動機構のうち両アーム53、54の揺動機構を示す斜視図である。
【図5】図5は、図4のプレート42においてシャフト41と反対側の側面図である。
【図6】図6は、図1における右アーム54の駆動軌跡を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
20 移動体
30 本体
31 モータ
31a 出力軸
36 ピニオンギヤ
42 プレート
42a 溝
50 ガイド体
53 左アーム
54 右アーム
57 突起
W ワーク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームを有する移動体を備え、そのアームを工作機械に対して進退させることで、該工作機械に対して未加工のワークの供給を行う、もしくは該工作機械で加工された加工済のワークの引き取りを行うシーソーローダであって、
移動体に対してアームを揺動させる揺動機構と、移動体に対してアームを進退させる伸縮機構とを備えており、これら両機構によってアームの先端はアームの進退に伴って略8字を描く格好で工作機械に対して進退可能となっており、
アームの先端には、ワークを引っ掛け可能なフックが形成されており、フックにワークを引っ掛けた状態で工作機械に対して未加工のワークの供給を行う、もしくはフックにワークを引っ掛けて工作機械で加工された加工済みのワークの引き取りを行う、ことを特徴とするシーソーローダ。
【請求項2】
請求項1に記載のシーソーローダであって、
アームは、移動体において1対設けられており、
移動体に対して両アームを一体的に揺動させる揺動機構と、移動体に対して両アームを交互に進退させる伸縮機構とを備えており、これら両機構によって両アームの先端は両アームの進退に伴ってアームの進退方向に対して略対象となるように略8字を描く格好で工作機械に対して進退可能となっており、
両アームの先端には、ワークを引っ掛け可能なフックがそれぞれ形成されており、一方のフックにワークを引っ掛けた状態で工作機械に対して未加工のワークの供給を行い、他方のフックにワークを引っ掛けて該工作機械で加工された加工済みのワークの引き取りを行う、ことを特徴とするシーソーローダ。
【請求項3】
請求項2に記載のシーソーローダであって、
移動体は、モータを有する本体と、本体に対して軸支されると共に2本のアームをアームの進退方向に案内するガイド体とから構成されており、
揺動機構は、モータの出力軸が一方向に回転することによって、出力軸と機械的に連結されたプレートが回転し、回転したプレートに形成された略楕円形状の溝内をガイド体に突設された突起が移動することによって、ガイド体が本体に対して揺動する構成からなっており、
伸縮機構は、モータの出力軸が一方向に回転することによって、出力軸と機械的に連結されたピニオンギヤが正逆に回転し、正逆に回転したピニオンギヤの外周面に対向するように噛み合わされた両アームが工作機械に対して進退する構成からなっている、ことを特徴とするシーソーローダ。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate