説明

シート、放射線検出器、及びシート貼付方法

【課題】放射線検出デバイスに貼り付けるシートの貼付性能を向上させる。
【解決手段】補強フイルム306が貼られ剛性がアップしたシート300を、あらかじめ外形形状を矩形状に加工し、二つの端面102B,102Dを位置決め基準とすることで、放射線検出デバイス102との位置決めが容易に可能とされる。また、剛性をアップ後に外形形状を矩形状に加工することで保護フイルム200を単体で加工するよりも、保護フイルム200の外形を精度良く加工することが可能となる。更に、補強フイルム306が貼られ全体の剛性がアップされているので、貼付性が向上され、かつ補強フイルム306に切込部306Aが形成されているので、胸壁側面102Bと表面102Aとに跨って貼ることが容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出デバイスに貼り付けられるシート、放射線検出器、及びシート貼付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線検出デバイスには、通常、主に絶縁目的等ため、絶縁フイルムが貼り付けられている。絶縁フイルムは薄いので放射線検出デバイスに貼りつける際、シワなどが入ってしまう。そこで、絶縁フイルムに再剥離フイルムを貼り付けたシートとし、このシートを放射線検出デバイスに貼り付け、貼り付け後に再剥離フイルムを剥がすことで、絶縁フイルムをシワなく貼る方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)
【特許文献1】特開2005-172800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1のような方法は、シートを貼って剥離フイルムを剥離したのち、絶縁フイルムの外形形状を放射線検出デバイスの外形形状に沿ってカットする。このため、カットするための工程が必要となる。更に、絶縁フイルムは薄いので、外形形状の精度を確保することが困難となる場合があった。
【0004】
あるいは、貼付性能を向上させるために、再剥離フイルムを厚くし、再剥離フイルムの剛性を高くすると、放射線検出デバイスの曲げ部への貼り付けが困難となる。
【0005】
したがって、このようなシートの貼付性能の向上が望まれている。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、貼付性能が向上された放射線検出デバイスに貼り付けるシート、このシートが貼り付けられた放射線検出器、及びシート貼付方法を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載のシートは、基板上に放射線を電荷に変換する放射線検出層が形成された放射線検出デバイスの側面から、前記放射線検出層の表面に渡って折り曲げられて貼り付けられるシートであって、前記放射線検出デバイスに接着される保護フイルムと、前記保護フイルムに接着され、折り曲げられる部分に切込部が形成された補強フイルムと、を有することを特徴とするとしている。
【0008】
請求項1に記載のシートでは、剥離フイルムが接着され剛性がアップしたシートの端面を位置決め基準とすることで、放射線検出デバイスとの位置決めが容易とされる。更に、補強フイルムが貼られ剛性がアップされるので、シワなく貼ることが容易とされる。更に、補強フイルムに切込部を形成したので折り曲げが容易となる。この結果、例えば、曲面や角部への貼り付けが容易とされる。
【0009】
したがって、シートの貼付性能が向上される。よって、例えば、貼り付け後のシートの貼付位置精度が向上する。
【0010】
請求項2に記載のシートは、請求項1に記載の構成において、前記補強フイルムは、前記放射線検出デバイスに貼り付けられた後に剥離されることを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載のシートでは、放射線検出デバイスに貼り付けられた後に補強フイルムが剥離されるので、放射線検出層における放射線検出の感度が向上される。
【0012】
請求項3に記載のシートは、請求項2に記載の構成において、前記補強フイルムと前記保護フイルムとが接着された接着力は、前記保護フイルムと前記放射線検出デバイスとが接着された接着力よりも弱いことを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載のシートでは、補強フイルムと保護フイルムとが接着された接着力は、保護フイルムと放射線検出デバイスとが接着された接着力よりも弱いので、放射線検出デバイスに貼り付けられた後に補強フイルムが容易に剥離される。
【0014】
請求項4に記載のシートは、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の構成において、前記保護フイルムの接着面には、前記放射線検出デバイスに貼り付けられる前に剥離されるセパレータシートが貼り付けられていることを特徴としている。
【0015】
請求項4に記載のシートでは、セパレータシートが保護フイルムの接着面に貼り付けられているので、放射線検出デバイスに貼り付けられる前の取り扱い性が向上される。
【0016】
請求項5に記載のシートは、請求項4に記載の構成において、前記セパレータシートと前記保護フイルムとが接着された接着力は、前記補強フイルムと前記保護フイルムとが接着された接着力よりも弱いことを特徴としている。
【0017】
請求項5に記載のシートでは、セパレータシートと保護フイルムとが接着された接着力は、補強フイルムと保護フイルムとが接着された接着力よりも弱いので、セパレータシートが容易に剥離される。
【0018】
請求項6に記載の放射線検出器は、基板上に放射線を電荷に変換する放射線検出層が形成された放射線検出デバイスの側面から前記放射線検出層の表面に渡って、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のシートが貼り付けられたことを特徴としている。
【0019】
請求項6に記載の放射線検出器では、貼り付け性能が向上された請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のシートが貼り付けられている。よって、例えば、貼り付け後のシートや保護フイルムの貼付位置精度が向上する。この結果、例えば、放射線検出器の防湿性能や絶縁性能の向上がはかられる。
【0020】
請求項7に記載のシート貼付方法は、基板上に放射線を電荷に変換する放射線検出層が形成された放射線検出デバイスの第一側面から前記放射線検出層の表面に渡ってシートを貼り付けるシート貼付方法であって、
前記シートは、前記放射線検出デバイスに接着される保護フイルムと、前記保護フイルムに接着され、折り曲げられる部分に切込部が形成された補強フイルムと、を有し、
前記シートの第一端面を前記放射線検出層が形成された表面と反対側の裏面に対して位置決めすると共に、前記第一端面と直交する前記シートの第二端面を前記放射線検出デバイスの第一側面と直交する記放射線検出デバイスの第二側面に対して位置決めする位置決め工程と、
前記位置決め工程の後に、前記シートを前記放射線検出デバイスの前記第一側面に貼り付けて、前記切込部で折り曲げて前記放射線検出層の前記表面に貼り付ける貼付工程と
備えることを特徴としている。
【0021】
請求項7に記載のシート貼付方法では、位置決め工程として、シートにおける第一端面を放射線検デバイスの裏面に対して位置決めすると共に、シートにおける第一端面と直交する第二端面を放射線検出デバイスにおける第一側面と直交する第二側面に対して位置決めする。
【0022】
そして、位置決め工程の後に貼付工程として、シートを放射線検出デバイスの第一側面に貼り付けて、切込部で折り曲げて放射線検出層の表面に貼り付ける。
【0023】
このような工程でシートを放射線デバイスに貼り付けるので、シートの貼付性能が向上される。よって、例えば、貼り付け後のシートの貼付位置精度が向上される。
【0024】
請求項8に記載のシート貼付方法は、請求項7に記載の方法において、前記貼付工程の後に、前記補強フイルムを剥離する剥離工程を備えることを特徴としている。
【0025】
請求項8に記載のシート貼付方法では、貼付工程の後の剥離工程で補強フイルムを剥離するので、放射線検出強度が向上される。
【0026】
請求項9に記載のシート貼付方法は、請求項8に記載の構成において、前記補強フイルムと前記保護フイルムとが接着された接着力は、前記保護フイルムと前記放射線検出デバイスとが接着された接着力よりも弱いことを特徴としている。
【0027】
請求項9に記載のシート貼付方法では、補強フイルムと保護フイルムとが接着された接着力は、保護フイルムと放射線検出デバイスとが接着された接着力よりも弱いので、剥離工程において、補強フイルムが容易に剥離される。
【0028】
請求項10に記載のシート貼付方法は、請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載の方法において、前記シートには、セパレータシートが前記保護フイルムの接着面に貼り付けられており、前記貼付工程の前に、前記セパレータを剥離する事前剥離工程を備えることを特徴としている。
【0029】
請求項10に記載のシート貼付方法では、貼付工程の前の事前剥離工程で、保護フイルムの接着面に貼り付けられたセパレータを剥離するので、事前剥離工程以前のシートの取り扱い性が向上される。
【0030】
請求項11に記載のシート貼付方法は、請求項10に記載の方法において、前記セパレータシートと前記保護フイルムとが接着された接着力は、前記補強フイルムと前記保護フイルムとが接着された接着力よりも弱いことを特徴としている。
【0031】
請求項11に記載のシート貼付方法では、セパレータシートと保護フイルムとが接着された接着力は、補強フイルムと保護フイルムとが接着された接着力よりも弱いので、事前剥離工程においてセパレータシートが容易に剥離される。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように本発明によれば、放射線検出デバイスに貼り付けるシートの貼付性能を向上することができる、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に、本発明に係る放射線検出器の実施形態の一例を図面に基づき説明する。
【0034】
本実施形態に係る放射線検出器は、X線撮影装置等に使用されるものであり、放射線の照射を受けることにより導電性を呈する光導電層を含む静電記録部を備えてなり、画像情報を担持する放射線の照射を受けて画像情報を記録し、記録した画像情報を表す画像信号を出力するものである。
【0035】
図1(B)及び図2に示すように、本実施形態における放射線検出器100は、平面視、矩形状の板状をなしている。なお、本実施形態においては、乳房撮影用の放射線検出器100(マンモグラフィー)とされている。よって、図1(A)に模式的に示すように、板状の放射線検出器100を略水平として、乳房902の下方に配置される。また、長辺の一辺部側の側面である胸壁面100Bが胸壁904に当接される。
【0036】
放射線検出器100は、平面視矩形状の板状のガラス製の基板104の上面に放射線検出層106が形成された放射線検出デバイス102の表面102A(放射線検出層106の表面106B)と胸壁側面102Bとに、絶縁性の保護フイルム200が粘着剤層202によって貼り付けられている。なお、この胸壁側面102Bが本発明の第一側面に相当する。
【0037】
放射線検出デバイス102は、平面視、略矩形状のガラス基板104の表面(おもてめん)104Aから放射線が入射されることにより電荷を生成する電荷変換層(図9の電荷変換層604を参考)等からなる放射線検出層106が形成されている。また、放射線106の上面(ガラス基板104と反対側の面)を表面106Bとすると共に、放射線検出層106が形成されている面全体を放射線検出デバイス102の表面102Aとする。なお、放射線検出デバイス102などの詳細構造の例は後述する。
【0038】
つぎに、放射線検出デバイス102に貼り付けられる保護フイルム200を有するシート300について説明する。
【0039】
図2(A)に模式的に示すように、シート300は、下層から順番に、セパレータシート302、粘着剤層202、保護フイルム200、微粘着層304、補強フイルム306が積層(接着)され構成されている。なお、補強フイルム306は、保護フイルム200よりも剛性が高い方が望ましい。
【0040】
本実施形態における各層の仕様は図7の表に示す。なお、本表は、あくまでも本実施形態における例であり、本発明はこの仕様に限定されるものではない。
【0041】
また、この表を見ると判るように、補強フイルム306は、保護フイルム200よりも厚く、剛性が高い。
【0042】
なお、補強フイルム306と保護フイルム200とが接着された接着力は、保護フイルム200と放射線検出デバイス102とが接着される接着力よりも弱い。また、セパレータシート302と保護フイルム200とが接着された接着力は、補強フイルム306と保護フイルム200とが接着された接着力よりも弱い。
【0043】
図2(B)に示すように、シート300の型抜きによって最終的な外形形状(平面視矩形状)にカットされている。なお、最終的な外形形状とは、保護フイルム200(シート300)が、放射線検出デバイス102の表面102Aと胸壁側面102Bとに正確に貼り付けられる外形形状(矩形状)とされる。
【0044】
よって、図2に示すように、シート300における第一端面300Cが放射線検出デバイス102の裏面102C(図1参照)に対する位置決め基準とされ、第一端面300Cと直交する第二端面300D(図2(B)のみ図示)が放射線検出デバイス102の胸壁側面102Bと直交する側面102D(図1(B)参照)に対する位置決め基準とされる(位置決め基準に関する詳細は後述する)。なお、この側面102Dが本発明の第二側面に相当する。
【0045】
更に、補強フイルム306に第一端面300Cに対して平行で且つ所定距離離れた位置に切込部306Aが形成されている。
【0046】
なお、切込部306Aが形成された状態の補強フイルム306を保護フイルム200に貼り付けてもよい。このように事前に切込部306Aを入れた場合、補強フイルム306には剥離フイルム(図示略)を貼り、切込部306Aを形成しても、分割しないようにしておき、保護フイルム200に補強フイルム306を貼ってから剥離フイルムを剥がすようにすればよい。
【0047】
つぎに、放射線検出デバイス102へのシート300の貼り付けに関する概要を、図3を用いて説明する。
【0048】
図3(A)に示すように、シート300の第一端面300Cを放射線検出デバイス102の裏面102Cに対して位置決めし、且つ、第二端面300D(図2(B)参照)を放射線検出デバイス102の側面102D(図1(B)参照)に対して位置決めする。なお、シート300の補強フイルム306を吸引保持する(詳細は後述する)。そして、セパレータシート302(図2(B)参照)を剥がし、粘着剤層202を露出させる。なお、図3(A)はセパレータシート302が剥がされた状態である。また、セパレータシート302が剥がされた状態であってもシート300を図示及び記載する。
【0049】
図3(B)と図3(C)とに示すように、シート300を放射線検出デバイス102の胸壁側面102Bに貼り付けたのち吸引保持を解除し、切込部306Aで折り曲げ、放射線検出デバイス102の表面102A(放射線検出層106の表面106B)に貼り付ける。
【0050】
そして、図3(D)に示すように、補強フイルム306(及び微粘着層304)を剥離する。
【0051】
なお、図8に示すように、保護フイルム200が二枚積層された構成としてもよい。図示は省略するが、更に、保護フイルム200が三枚以上積層された構成としてもよい。つまり、上記と同様の工程で、保護フイルム200の上にもう一枚(或いは更にそれ以上)シート300を貼り付けて補強フイルム306を剥がす工程が追加されてもよい。
【0052】
つぎに、本実施形態の作用について説明する。
【0053】
このように補強フイルム306を貼り付けて、剛性がアップしたシート300を、あらかじめ最終外形形状の矩形状に加工し、二つの直交する端面300B,300Dを位置決め基準とすることで、放射線検出デバイス102との位置決めが容易に可能とされる。また、剛性をアップ後に外形加工を実施することで保護フイルム200を単体で加工するよりも、保護フイルム200の外形を精度良く加工することが可能となる。
【0054】
更に、補強フイルム306が貼られ全体の剛性がアップされているので、貼付性が向上され、かつ補強フイルム306に切込部306Aが形成されているので、胸壁側面102Bと放射線検出層106の表面106Bとに跨って貼ることが容易となる(図3を参照)。
【0055】
したがって、シート300の貼付性能が向上される。よって、例えば、貼り付け後の保護フイルム200の貼付位置精度が向上する。この結果、放射線検出器100の防湿性や絶縁性の向上がはかられる。特に本実施形態においては、図1(A)に示すように、放射線検出器100の上面100Aと胸壁面100Bとが人体に当接されるので、このように正確に保護フイルム200を貼って絶縁が確保されることは、好適である。
【0056】
なお、厚く剛性の高い補強フイルム306は、最後に剥離されるので、放射線検出の感度が向上される(補強フイルム306の厚みや材質は放射線検出に影響を与えない)。また、補強フイルム306と保護フイルム200とが接着された接着力は、保護フイルム200と放射線検出デバイス102とが接着された接着力よりも弱いので、補強フイルム306は容易に剥離される。
【0057】
また、セパレータシート302が保護フイルム200(粘着剤層202)に貼り付けられているので、放射線検出デバイス102に貼り付けられる前の、シート300の取り扱い性が向上される。なお、セパレータシート302と保護フイルム200とが接着された接着力は、補強フイルム306と保護フイルム200とが接着された接着力よりも弱いので、シート300の補強フイルム306を吸引保持した状態において、セパレータシート302が容易に剥離される。
【0058】
なお、上記実施形態では、シート300及び放射線検出デバイス102は、平面視、矩形状のシート状及び板状とされているが、これに限定されない。例えば、位置決めにもちいない、或いは重要でないシート300の端面や放射線デバイス102の側面が丸形状となっていたりカットされていたりしてもよい。
【0059】
つぎに、放射線検出デバイス102へのシート300の貼り付けに関する詳細の一例を、図4(A)〜(H)、図5(A)〜(F)、図6(A)〜(B)を用いて説明する。なお、図4は模式的に示した図であり、図5は治具を含んだより詳細に示した図であり、図6は側面から見た図である。
【0060】
図5−1(A)に示すように、左右のガイド板403、404でガイドさせて、シート300を治具400にセットする。そして、図4−1(A)、及び図5−1(B)に示すように、シート300の補強フイルム306を、治具400の吸着ベース402に吸着させ保持させる。
【0061】
図4−1(B)に示すように、シート300の第一端面300Cと第二端面300Dを、後述する突き当て位置Y1,Y2、Y3,Y4に対応する所定箇所に突き当てて、位置決めする。
【0062】
図5−1(B)に示すように、ガイド板403、404を左右にスライドさせて取り外し、図5−1(B)と図4−1(C)とに示すように、セパレータシート302の剥離タグ302Aを把持して、セパレータシート302を剥がす。なお、セパレータシート302を剥がした以降においても、シート300と記す。
【0063】
図5−2(A)と図4−1(D)とに示すように、放射線検出デバイス102を治具400にセットする。その際、図4−1(D)に示すように、放射線検出デバイス102の胸壁側面102Bの両端部のX1,X2、及び側面102Dの両端部X3,X4を、図5−2(C)の突き当て位置Y1,Y2、Y3,Y4にそれぞれ当接させて位置決めする。
【0064】
図5−2(D)及び図4−2(E)に示すように、シート300(吸着ベース402)をスライドさせて、シート300を放射線検出デバイス102の胸壁側面102Bに貼り付ける。
【0065】
図4−2(E)と図5−3(E)に示すように、シート300の上端部にテンショナー410を取り付けたのち、吸着ベース402を外す。
【0066】
図5−3(F)と図4−2(F)と図6(A)に示すように、補強フイルム306に当接するスポンジロール420を取り付け、更にスポンジロール420の上に金属ロール422を取り付ける。
【0067】
図6(A)、図6(B)及び図4−2(G)に示すように、スポンジロール420と金属ロール422を矢印S方向にスライドさせて、放射線検出デバイス102の表面102A(放射線検出層106の表面106B)にシート300を貼り付ける。
【0068】
最後に、図4−2(H)に示すように、テンショナー410(図4−2(G)等を参照)を外し、補強フイルム306を剥がす。
【0069】
なお、上記工程を再度行い、図8に示す保護フイルム200が二枚積層された構成とする。
【0070】
つぎに、上記実施形態における放射線検出器の詳細構造についての例を[光読取方式の放射線検出器]と[TFT方式の放射線検出器]とで説明する。
【0071】
[光読取方式の放射線検出器の詳細構造]
図9は放射線検出デバイス500(上記実施形態における放射線検出デバイス102に相当)の概略図を示している。放射線検出デバイス500には、TCP802、803と、それを介して接続される読み出し装置804、805と、高電圧を印加するための高電圧印加用配線806と、接続されている。なお、TCP(Tape Carrier Package)とは信号検出用IC(チャージアンプIC)を搭載したフレキシブルの配線基板である。このTCP802、803をACF(Anisotropic Conductive Film 異方性導電膜)を用いて熱圧着にて接続する。
【0072】
放射線を検出する放射線検出層600(上記実施形態における放射線検出層106に相当)は、信号読み出しと高電圧印加のための下部電極606、放射線を電荷に変換する電荷変換層604、高電圧を印加する上部電極602等から構成される。放射線検出層600を構成する上部の上部電極602は、高電圧取り出し部808まで引き出され、高電圧印加用配線806に導電性接着剤にて固定されている。
【0073】
この放射線検出デバイス500の製造は大きく分けて、放射線検出用下部基板502の製造、電荷変換層604及び上部電極602の形成、高圧印加配線806の接続に分けられる。
【0074】
つぎに、放射線検出用下部基板の構造を説明する。
【0075】
図10は、放射線検出用下部基板502の概略構造を示している。なお、この図10においては、TCP802、803は左右1つずつ、チャンネル数も各3チャンネル、合計6チャンネルと単純化されている。
【0076】
放射線検出用下部基板502は、放射線検出部700、ピッチ変換部504、TCP接続部810,811、高電圧取り出し部802等から構成されている。放射線検出部700は信号取り出しのための下部電極606がストライプ上に配置されている。またその下層には、透明の有機透明絶縁層702を介して一部任意の波長の光だけを透過させるカラーフィルター層704が形成されている。
【0077】
なお、カラーフィルター層704の上部にある層を共通Bライン、カラーフィルター層704のない部分にある信号Sラインと呼ぶ。Bラインは放射線検出部700の外側で共通化され、櫛(くし)型電極構造を有している。Sラインは信号ラインとして用いられる。Bライン及びSラインの幅は、例えば、20,10μmでその間隔は10μmである(図10の(C)を参照)。
【0078】
カラーフィルター層704の幅は30μmである。下部電極606は裏面より光を照射するため透明であることと、高電圧印加時の電界集中による破壊などを避けるため平坦性が必要であり、例えば、IZO、ITOが用いられる。IZOを用いた場合、厚さは0.2μm、平坦性はRa=1nm程度である。
【0079】
カラーフィルター層704は顔料を分散させた感光性のレジスト、例えば、LCDのカラーフィルターに用いられる赤色レジストである。また、カラーフィルター層704の段差を無くすために感光性有機の有機透明絶縁層702、例えば、PMMAが用いられる。更に支持部材となる基板706(上記実施形態のガラス基板104に相当)は透明で剛性のあるガラスが望ましく、更にはソーダライムガラスが望ましい。
【0080】
なお、各層の厚さの一例は、IZOが0.2μm、赤レジストが1.2μm、透明絶縁層PMMAが1.8μm、ガラスが1.8mmである。カラーフィルター層704、有機透明絶縁層702は放射線検出部700のみにあり、その境界は、放射線検出部700及びピッチ変換部504にある。このためIZO配線は有機透明絶縁層702の境界段差部分を介してTCP接続部810、811では基板706(ガラス)上に形成される。
【0081】
放射線検出部700では、所定数を単位として左右のTCP802、803への配線が取り出される。なお、図においては、3ライン単位とされている。ライン数の一例は256ラインである。放射線検出部700でのライン幅はTCP接続部810、811でのライン幅と異なりこれを調整することで、所定のTCP接続位置まで配線を引き回すためピッチ変換部にてライン幅が調整される。また、Bラインは共通化されて同様にTCP接続部810、811へ引き出される。
【0082】
TCP接続部810、811では信号Sラインと放射線検出部700の外側で共通化された共通Bラインが配置される。共通Bラインは信号Sラインの外側に配置される。その数の一例としては信号ライン256、共通ライン上下各5ラインを用いてTCP802、803へ接続される。その電極ライン/スヘ゜ースは40/40μmである。またこのTCP接続部810、811にてTCP802、803を接続するためTCP用のアライメントマークが必要である。なお、透明電極で形成することが望ましいが、透明なため認識が難しいので、不透明な材料として、例えば、構成部材であるカラーフィルター層704を用いて合わせマークを形成する。
【0083】
つぎに、好ましい層構成の構成例を示すが、本発明はこれに限定されない。
【0084】
図11は、好ましい層構成をモデル化した断面図である。なお、図11における「上部電極」〜「下引き層」までが放射線検出層600(上記実施形態における放射線検出層106に相当)とされる。
【0085】
<構成例1>
図9、図10に示すような、櫛型電極構造をした(ガラス)基板706(図10参照)の上に、以下の順に層構成を作製した。櫛型電極としては表面粗さRa <1nmの平坦なIZO電極を用いた。
【0086】
下引き層1050 :CeO2 厚み20nm
下電極界面層1048A:As10%ドープアモルファスセレン:LiF500ppmドープ、厚み0.1μm
読取用光電導層1046:アモルファスセレン、厚み7μm
電荷蓄積層1044 :As2Se3、厚み1μm
記録用光導電層1042:アモルファスセレン Naを0.001ppm含有、厚み200μm
上電極界面層1048B:As10%ドープアモルファスセレン、厚み0.2μm
上引き層1052 :Sb2S3、厚み0.5μm
上電極602 :Aμ 厚み70nm
【0087】
<構成例2>
図9、図10に示すような、櫛型電極構造をした(ガラス)基板706(図10参照)の上に、以下の順に層構成を作製した。櫛型電極としては表面粗さRa <1nmの平坦なIZO電極を用いた。
【0088】
下引き層1050 :なし
下電極界面層1048A:As3%ドープアモルファスセレン、厚み0.15μm
読取用光電導層1046:アモルファスセレン、厚み15μm
電荷蓄積層1044 :As2Se3、厚み2μm
記録用光導電層1042:アモルファスセレン Naを0.001ppm含有、厚み180μm
上電極界面層1048B:As10%ドープアモルファスセレン、厚み0.1μm
上引き層1052 :Sb2S3、厚み0.2μm
上電極602 :Au 厚み150nm
【0089】
<構成例3>
図9、図10に示すような、櫛型電極構造をした(ガラス)基板706(図10参照)の上に、以下の順に層構成を作製した。櫛型電極としては表面粗さRa <1nmの平坦なIZO電極を用いた。
【0090】
下引き層1050 :CeO2、厚み30nm
下電極界面層1048A:As6%ドープアモルファスセレン、厚み0.25μm
読取用光電導層1046:アモルファスセレン、厚み10μm
電荷蓄積層1044 :As2Se3、厚み0.6μm
記録用光導電層1042:アモルファスセレン Naを0.001ppm含有、厚み230μm
上電極界面層1048B:As10%ドープアモルファスセレン、厚み0.3μm
上引き層1052 :Sb2S3、厚み0.3μm
上電極602 :Au、厚み100nm
つぎに各層について詳しく説明する(図11を参照)。
【0091】
<表面保護層1100>
放射線照射によって放射線検出デバイスに潜像を形成するため、上部電極には数kVの高電圧を印加する。この上部電極と下部電極との間で沿面放電を生じ、デバイスが破壊される危険がある。よって、上部電極における沿面放電を防止するため、電極に絶縁処理を施す(図12参照)。なお、絶縁処理は電極面を絶縁体で被覆する構造とする。
【0092】
絶縁処理は電極面が全く大気に触れない構造にすることが必要で、絶縁体で密着被覆する構造とする。尚且つ、この絶縁体は印加電位を上回る絶縁破壊強度を有することが必要である。更に、放射線検出デバイスの機能上、放射線透過を妨げない部材であることが必要である。これら要求される被覆性、絶縁破壊強度及び放射線透過率の高い材料及び製法として、絶縁性ポリマーの蒸着又は溶剤塗布が好ましい。具体例としては、常温硬化型エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アクリル樹脂、ポリパラキシレン誘導体をCVD法で成膜する方法等があげられる。この中でも常温硬化型エポキシ樹脂、ポリパラキシリレンをCVD法で成膜するが好ましく、特にポリパラキシリレン誘導体をCVD法で成膜する方法が好ましい。好ましい膜厚は10μm以上1000μm以下であり、更に好ましくは20μm以上100μm以下である。
【0093】
ポリパラキシリレン膜は、室温で形成できるため被着体に熱ストレスを与えることなく、極めて段差被覆性の高い絶縁膜が得られるが、化学的に非常に安定であるため、被着体との密着性は一般に好ましくない場合が多い。被着体との密着性を上げるため、ポリパラキシリレン形成前の被着体への処理として、カップリング剤、コロナ放電、プラズマ処理、オゾン洗浄、酸処理、表面租化等の物理的、化学的処理が一般的に知られており用いることができる。特にシランカップリング剤もしくはシランカップリング剤を必要によりアルコール等で希釈したものを、少なくとも被着体との密着性を向上させたい部分に塗布処理を施した後ポリパラキシリレン膜を形成することで被着体との密着性を向上させる方法が好ましい。
【0094】
更に、放射線検出デバイスの経時劣化防止のため、防湿処理を施すことが好ましい。具体的には防湿部材(上記実施形態における絶縁性の保護フイルム200に相当)で覆う構造とする。防湿部材としては、前記絶縁性ポリマーのような樹脂単独では機能不足であり、ガラス、アルミラミネートフイルムといった少なくとも無機材層が効果的である。但し、ガラスは放射線透過を減衰するため、防湿部材は薄いアルミラミネートフイルムが望ましい。例えば、一般的に防湿包材として用いられているアルミラミネートフイルムとして、PET12μm/圧延アルミ9μm/ナイロン15μmを積層したものがある。アルミの厚みは5μm以上30μm以下が好ましく、前後のPET厚み、ナイロン厚みはそれぞれ10μm以上100μm以下が好ましい。このフイルムのX線減衰は約1%程度であり、防湿効果とX線透過を両立する部材として最適である。ポリパラキシリレンによる絶縁処理を施した放射線検出デバイス全面を防湿フイルムで覆い、放射線検出デバイス領域外において防湿フイルムの周囲を接着剤で基板と接着固定する。これによって、放射線検出デバイスを基板と防湿フイルムで密封した構成とする。
【0095】
この接着固定に際し、ポリパラキシリレンは、化学的に非常に安定であるため、一般的には接着材による他の部材との接着性が悪いが、接着に先立ち紫外光による光照射処理を施すことにより接着性を向上させることが出来る。必要な照射時間は使用する紫外光源の波長、ワット数により適時、最適な時間に調節するが、低圧水銀灯で1から50Wのものが好ましく、光照射は1分から30分で行なうのが好ましい。尚、本願の放射線検出デバイスはアモルファスセレンを用いており、40℃以上の高温ではアモルファスセレンが結晶化して潜像形成の機能が得られなくなることから、接着加工においては加熱処理は適さない。そこで、室温硬化型の接着剤が望ましく、接着強度が高い2液混合室温硬化型エポキシ接着剤が最適である。このエポキシ接着剤を放射線検出デバイスの外周に塗布し、防湿フイルムを被せる。接着部を保護フイルムの上面から均一に押圧固定し、この状態のまま室温環境にて12時間以上置いて硬化させる。接着剤硬化後に押圧を開放して封止構造が完成する。
【0096】
封止構造部材について補足する。放射線検出デバイスをマンモグラフィーに用いる場合、X線撮影における被曝を抑えるため、低線量での撮影検出が望まれる。低線量照射での陰影変化を検出するため、放射線源からデバイスまでの経路における、被写体(マンモ)以外の部材はX線の透過率を高くすること望ましく、これにより明瞭な画像が得られる。
【0097】
好ましい保護層・封止構造の一例を図12に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。表面保護層の形成によりデバイスの湿度環境が30%以下、より好ましくは10%以下になるように維持されることが好ましい。なお、図11においては、図12に示すように、保護フイルム200と絶縁処理層1102とで表面保護層1100が構成されている。
【0098】
<上部電極602>
記録用の光電導層の上面に形成される上部電極602としては金属薄膜が好ましく用いられる。材料としてはAu、Ni、Cr、Au、Pt、Ti、Al、Cu、Pd、Ag、Mg、MgAg3-20%合金、Mg-Ag系金属間化合物、MgCu3-20%合金、Mg-Cu系金属間化合物などの金属から形成するようにすればよい。
特にAuやPt、Mg-Ag系金属間化合物が好ましく用いられる。例えばAuを用いた場合、厚みとして15nm以上200nm以下であることが好ましく、より好ましくは30nm以上100nm以下である。例えばMgAg3-20%合金を用いた場合は、厚さ100nm以上400nm以下を用いることがより好ましい。
【0099】
作成方法は任意であるが、抵抗加熱方式による蒸着により形成されることが好ましい。
たとえば、抵抗加熱方式によりボート内で金属塊が融解後にシャッターを開け、15秒間蒸着し一旦冷却する。抵抗値が十分低くなるまで複数回繰り返すことで形成される。
【0100】
<記録用光導電層1042>
記録用光導電層1042(図11ではX線フォトコン層に相当)は、電磁波を吸収し電荷を発生する光導電物質であり、アモルファスセレン化合物、Bi12MO20 (M:Ti、Si、Ge)、Bi4M3O12 (M:Ti、Si、Ge)、Bi2O3、BiMO4(M:Nb、Ta、V)、Bi2WO6、Bi24B2O39、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe,MNbO3(M:Li、Na、K)、PbO,HgI2、PbI2,CdS、CdSe、CdTe、BiI3、GaAs等のうち少なくとも1つを主成分とする化合物により構成される。この中で特にアモルファスセレン化合物よりなることが好ましい。
【0101】
アモルファスセレン化合物の場合には、その層中にLi, Na, K, Cs, Rb等のアルカリ金属を0.001ppmから1ppmまでの間で微量にドープしたもの、LiF, NaF, KF, CsF, RbF等のフッ化物を10ppmから10000ppmまでの間で微量にドープしたもの、P、As、Sb、Geを50ppmから0.5%までの間添加したもの、Asを10ppmから0.5%までドープしたもの、Cl、Br、Iを1ppmから100ppmの間で微量にドープしたもの、を用いることができる。
特に、Asを10ppmから200ppm程度含有させたアモルファスセレン、Asを0.2%〜1%程度含有させ更にClを5ppm〜100ppm含有させたアモルファスセレン、0.001ppm〜1ppm程度のアルカリ金属を含有させたアモルファスセレンが好ましく用いられる。
【0102】
また、数ナノから数ミクロンのBi12MO20 (M:Ti、Si、Ge)、Bi4M3O12 (M:Ti、Si、Ge)、Bi2O3、BiMO4(M:Nb、Ta、V)、Bi2WO6、Bi24B2O39、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe,MNbO3(M:Li、Na、K)、PbO,HgI2、PbI2,CdS、CdSe、CdTe、BiI3、GaAs等の光導電性物質微粒子を含有させたものも用いることができる。
【0103】
記録用光導電層の厚みは、アモルファスセレンの場合100μm以上2000μm以下であることが好ましい。特にマンモグラフィー用途では150μm以上250μm以下、一般撮影用途においては500μm以上1200μm以下の範囲であることが特に好ましい。
【0104】
<電荷蓄積層1044>
電荷蓄積層1044(図11では潜像蓄積層に相当)は、蓄積したい極性の電荷に対して絶縁性の膜であれば良く、アクリル系有機樹脂、ポリイミド、BCB、PVA、アクリル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド等のポリマーやAs2S3、Sb2S3、ZnS等の硫化物、その他に酸化物、フッ化物より構成される。更には、蓄積したい極性の電荷に対して絶縁性であり、それと逆の極性の電荷に対しては導電性を有する方がより好ましく、移動度×寿命の積が、電荷の極性により3桁以上差がある物質が好ましい。
【0105】
好ましい化合物としては、As2Se3、As2Se3にCl、Br、Iを500ppmから20000ppmまでドープしたもの、As2Se3のSeをTeで50%程度まで置換したAS2(SexTe1-x)3(0.5<x<1)もの、As2Se3からAs濃度を±15%程度変化させたもの、アモルファスSe-Te系でTeを5-30wt%のもの、及び、As2Se3のSeをSで50%程度まで置換したもの、を挙げることができる。
【0106】
この様なカルコゲナイド系元素を含む物質を用いる場合、電荷蓄積層の厚みは0.4μm以上3.0μm以下であること好ましく、より好ましくは0.5μm以上2μm以下である。この様な電荷蓄積層は、1度の製膜で形成しても良いし、複数回に分けて積層しても良い。
【0107】
有機膜を用いた好ましい電荷蓄積層としては、アクリル系有機樹脂、ポリイミド、BCB、PVA、アクリル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド等のポリマーに対し、電荷輸送剤をドープした化合物が好ましく用いられる。好ましい電荷輸送剤としては、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(Alq3)、N,N-ジフェニル-N,N-ジ(m-トリル)ベンジジン(TPD)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリアルキルチオフェン、ポリビニルカルバゾール(PVK)、トリフェニレン(TNF)、金属フタロシアニン、4-(ジシアノメチレン)-2-メチル-6-(p-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン(DCM)、液晶分子、ヘキサペンチロキシトリフェニレン、中心部コアがπ共役縮合環あるいは遷移金属を含有するディスコティック液晶分子、カーボンナノチューブ、フラーレンからなる群より選択される分子を挙げることができる。ドープ量は0.1から50wt.%の間で設定される。
<読取用光電導層1046>
読取用光導電層1046(図11では読取層に相当は、電磁波特に可視光を吸収し電荷を発生する光導電物質であり、アモルファスセレン化合物、アモルファスSi:H、結晶Si、GaAs等のエネルギーギャップが0.7-2.5eVの範囲に含まれる半導体物質を用いることができる。特にアモルファスセレンであることが好ましい)。
【0108】
アモルファスセレン化合物の場合には、その層中にLi, Na, K, Cs, Rb等のアルカリ金属を0.001ppmから1ppmまでの間で微量にドープしたもの、LiF, NaF, KF, CsF, RbF等のフッ化物を10ppmから10000ppmまでの間で微量にドープしたもの、P、As、Sb、Geを50ppmから0.5%までの間添加したもの、Asを10ppmから0.5%までドープしたもの、Cl、Br、Iを1ppmから100ppmの間で微量にドープしたもの、を用いることができる。
特に、Asを10ppmから200ppm程度含有させたアモルファスセレン、Asを0.2%〜1%程度含有させ更にClを5ppm〜100ppm含有させたアモルファスセレン、0.001ppm〜1ppm程度のアルカリ金属を含有させたアモルファスセレンが好ましく用いられる。
【0109】
読取光導電層の厚みは、読取光を十分吸収でき、かつ電荷蓄積層に蓄積された電荷による電界が光励起された電荷をドリフトできれば良く、1μmから30μm程度が好ましい。
【0110】
<電極界面層1048A,B>
電極界面層1048A,B(図11の界面結晶化防止層に相当)は、記録用光伝導層1042と上部電極602の間、あるいは読取用光伝導層1046と下部電極層606の間に敷設される。結晶化を防止する目的において、アモルファスセレンにAsが1%-20%の範囲で添加されたもの、S、Te、P、Sb、Geを1%から10%の範囲で添加したもの、上記の元素と他の元素を組合せて添加したものが好ましい。又は、より結晶化温度の高いAs2S3やAs2Se3も好ましく用いることができる。更に、電極層からの電荷注入を防止する目的で上記、添加元素に加えて、特に正孔注入を防止するためにLi、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ金属や、LiF、NaF、KF、RbF、CsF、LiCl、NaCl、KCl、RbF、CsF、CsCl、CsBr等の分子を10ppm-5000ppmの範囲でト゛ーフ゜することも好ましい。逆に電子注入を防止するためには、Cl、I、Br等のハロゲン元素や、In2O3等の分子を10ppm-5000ppmの範囲でドープすることも好ましい。界面層の厚みは、上記目的を十分果たすように0.05μmから1μmの間に設定されることが好ましい。
【0111】
上記の下部電極界面層、読取用光導電層、電荷蓄積層、記録用光導電層、上部電極界面層は、真空度10-3から10-7Torrの間の真空槽内において、基板を25℃以上70℃以下の間に保持し、上記各合金を入れたボート、あるいはルツボを、抵抗加熱あるいは電子ビームにより昇温し、合金、化合物を蒸発又は昇華させることにより基板上に積層される。
【0112】
合金、化合物の蒸発温度が大きく異なる場合には、複数の蒸着源に対応した複数のボートを同時に加熱し個々に制御することで、添加濃度、ドープ濃度を制御することも好ましく用いられる。例えば、As2Se3・アモルファスセレン・LiFをそれぞれボートに入れ、As2Se3のボートを340℃、アモルファスセレン(a-Se)のボートを240℃、LiFのボートを800℃として、各ボートのシャッターを開閉することで、As10%ドープアモルファスセレンにLiFを5000ppmドープした層を形成することができる。
【0113】
<下引き層1050>
記録用光導電層1046と電荷収集電極(下部電極606)の間には、下引き層1050を設けることができる。結晶化防止層(A層)1048がある場合には、結晶化防止層1048と電荷収集電極の間に設けることが好ましい。下引き層1050は、暗電流、リーク電流低減の観点から、整流特性を有することが好ましい。上部電極に正バイアスが印加される時には電子ブロック性を、負バイアスが印加される時にはホールブロック性を有することが好ましい。
【0114】
この下引き層の抵抗率は、10Ωcm以上であること、膜厚は、0.01μm〜10μmであることが好ましい。電子ブロック性を有する層、すなわち電子注入阻止層としては、Sb2S3,SbTe,ZnTe,CdTe,SbS,AsSe,As2S3等の組成か成る層、又は有機高分子層が好ましい。有機高分子層としては、PVK等のホール輸送性高分子、又はポリカーボネート、ポリスチレン、ポリイミド、ポリシクロオレフィン等の絶縁性高分子に、NPD,TPDを混合した膜を好ましく用いることができる。
【0115】
ホールブロック性を有する層、すなわち正孔注入阻止層としては、CdS,CeO2,等の膜、又は有機高分子層が好ましい。有機高分子層としては、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリイミド、ポリシクロオレフィン等の絶縁性高分子に、C60(フラーレン)、C70等のカーボンクラスターを混合した膜を好ましく用いることができる。
【0116】
一方、薄い絶縁性高分子層も好ましく用いることができ、例えば、パリレン、ポリカーボネート、PVA、PVP,PVB,ポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂が好ましい。この時の膜厚としては、2μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましい。
【0117】
<上引き層1052>
記録用光導電層1042と電圧印加電極(上部電極602)の間には、上引き層1052を設けることができる。結晶化防止層(C層)1048Bがある場合には、結晶化防止層1048Bと電圧印加電極の間に設けることが好ましい。上引き層1052は、暗電流、リーク電流低減の観点から、暗電流、リーク電流低減の観点から、整流特性を有することが好ましい。上部電極に正バイアスが印加される時にはホールブロック性を、負バイアスが印加される時には電子ブロック性を有することが好ましい。この上塗り層の抵抗率は、10Ωcm以上であること、膜厚は、0.01μm〜10μmであることが好ましい。
【0118】
電子ブロック性を有する層、すなわち電子注入阻止層としては、Sb2S3,SbTe,ZnTe,CdTe,SbS,AsSe,As等の組成か成る層、又は有機高分子層が好ましい。有機高分子層としては、PVK等のホール輸送性高分子、又はポリカーボネート、ポリスチレン、ポリイミド、ポリシクロオレフィン等の絶縁性高分子に、NPD,TPDを混合した膜を好ましく用いることができる。
【0119】
ホールブロック性を有する層、すなわち正孔注入阻止層としては、CdS,CeO2,等の膜、又は有機高分子層が好ましい。有機高分子層としては、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリイミド、ポリシクロオレフィン等の絶縁性高分子に、C60(フラーレン)、C70等のカーボンクラスターを混合した膜を好ましく用いることができる。
【0120】
一方、薄い絶縁性高分子層も好ましく用いることができ、例えば、パリレン、ポリカーボネート、PVA、PVP,PVB,ポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂が好ましい。この時の膜厚としては、2μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましい。
【0121】
<櫛(くし)型電極>
図9、図10を用いて説明したように、放射線検出部は信号取り出しのための下部電極がストライプ上に交互配置された櫛型電極構造を有している。またその下層には透明の有機絶縁層を介して一部任意の波長の光だけを透過させるカラーフィルター層が形成されている。そのくし型電極構造を有している下部電極はカラーフィルター層上部にある層を共通Bライン、カラーフィルター層のない部分にある信号Sラインと呼ぶ。Bラインは放射線検出部の外側で共通化される。Sラインは信号ラインとして用いられる。B,Sラインの幅は例えば20,10μmでその間隔は10μmで、50μmピッチで連続している。カラーフィルター層の幅は30μmである。下部電極は裏面より光を照射するため透明であることと、高電圧印加時の電界集中による破壊などを避けるため平坦性が必要であり、例えばIZO、ITOが用いられる。下部電極の厚さと平坦性の一例はIZOにて、0.2μm、Ra=1nmである。
【0122】
<電荷取り出しアンプ>
電荷はアンプを通して増幅後AD変換される。図13は電流検出手段30及び高電圧電源部45の詳細、並びにこれらと画像検出器10(上記実施形態の放射線検出器100)に相当)、電流検出手段30、及び装置1の外部に配された画像処理装置150などとの接続態様を示したブロック図である。TCP上に設けられたチャージアンプIC33は、画像検出器10の各エレメント15aごとに接続された多数のチャージアンプ33a及びサンプルホールド(S/H)33b、各サンプルホールド33bからの信号をマルチプレクスするマルチプレクサ33cを備えている。画像検出器10から流れ出す電流は各チャージアンプ33aにより電圧に変換され、該電圧がサンプルホールド33bにより所定のタイミングでサンプルホールドされ、サンプルホールドされた各エレメント15aに対応する電圧がエレメント15aの配列順に切り替わるようにマルチプレクサ33cから順次出力される(主走査の一部に相当する)。マルチプレクサ33cから順次出力された信号はプリント基板31上に設けられたマルチプレクサ31cに入力され、更に各エレメント15aに対応する電圧がエレメント15aの配列順に切り替わるようにマルチプレクサ31cから順次出力され主走査が完了する。マルチプレクサ31cから順次出力された信号はA/D変換部31aによりデジタル信号に変換され、デジタル信号がメモリ31bに格納される。一旦メモリ31bに格納された画像信号は、信号ケーブル90を介して外部の画像処理装置150に送られ、この画像処理装置150において適当な画像処理が施され、撮影情報と共にネットワーク151にアップロードされ、サーバもしくはプリンタに送られる。
【0123】
<画像取得シーケンス>
画像記録読取システムの画像形成シーケンスは、基本的には、高圧印加中に記録光(例えばX線)を照射し潜像電荷を蓄積する過程、及び、高圧印加を終了後、読取光を照射して潜像電荷を読み出す過程からなる。読取光としてはライン光を電極方向に走査する方法(図14参照)が最適であるが、他の方法でも可能である。更に、必要に応じて、読み残した潜像電荷を十分に消去する過程を組み合わせることができる。この消去過程は、パネル全面に消去光を照射することにより行われ、全面に一度に照射させても、あるいはライン光やスポット光を全面に走査させても良く、読取過程の後、又は/及び、潜像蓄積過程の前に行われる。消去光を照射する際に、高圧印加を組み合わせて消去効率を高めることもできる。また、高圧印加後、記録光を照射する前に「前露光」を行うことにより、高圧印加の際に発生する暗電流による電荷(暗電流電荷)を消去することができる。
【0124】
更に、これら以外の原因によっても静電記録体に種々な電荷が記録光の照射の前に蓄積されることが知られている。これらの残存信号は、残像現象として次に出力される画像情報信号に影響を及ぼすため、補正により低減させることが望ましい。
残像信号を補正する方法として、上記の画像記録読取過程に、残像画像読取過程を加える方法が有効である。この残像画像記録過程は、記録光を照射しないで高圧印加のみ行った後、読取光により「残像画像」を読取ることで行われ、この「残像画像」信号に適当な処理を施し、「記録画像」信号から差し引くことで、残像信号を補正することができる。残像画像読取過程は、画像記録読取過程の前、あるいは後に行われる。また、残像画像読取過程の前、又は/及び後に、適当な消去過程を組み合わせることができる。
【0125】
[TFT方式の放射線検出器の詳細構造]
図15はTFT方式の放射線検出器1400の概要構成を示している。図15に示すように、放射線検出器1400は、放射線としてのX線が入射されることにより電荷を生成する電荷変換層として、電磁波導電性を示す光導電層1404を備えている。光導電層1404としては、バイアス電圧が印加された状態において、暗抵抗が高く、X線照射に対して良好な電磁波導電性を示し、真空蒸着法により低温で大面積成膜が可能な非晶質(アモルファス)材料が好まれ、アモルファスSe(a-Se)膜が用いられている。また、アモルファスSeにAs、Sb、Geをドープした材料が熱安定性に優れ、好適な材料である。
【0126】
光導電層1404上には、光導電層1404へバイアス電圧を印加するための上部電極として、単一のバイアス電極1401が積層されている。バイアス電極1401には、例えば、金(Au)が用いられる。
【0127】
光導電層1404下には、下部電極部としての複数の電荷収集電極1407aが形成されている。各電荷収集電極1407aは、図15に示すように、それぞれ電荷蓄積容量1407c及びスイッチ素子1407bに接続されている。
【0128】
また、光導電層1404とバイアス電極1401との間には、中間層が設けられている。中間層とは、上部電極と電荷変換層の間に存在する層であり,電荷注入阻止層(電荷蓄積とダイオード形成を包含)を兼ねても良い。電荷注入阻止層として、抵抗層や絶縁層が用いられる場合もあるが、好ましくは、電子に対しては導電体でありながら正孔の注入を阻止する正孔注入阻止層や、正孔に対しては導電体でありながら電子の注入を阻止する電子注入阻止層が用いられる。正孔注入阻止層としては、CeO2、ZnS、SbSを用いることができる。このうちZnSは低温で形成できて望ましい。電子注入阻止層としては、SbS、CdS、TeをドープされたSe,CdTe、有機物系の化合物等がある。なお、SbSは設けられる位置により、正孔注入阻止層にも電子注入阻止層にもなる。本実施例では、バイアス電極が正極であるため、中間層として、正孔注入阻止層1402が設けられている。また、光導電層1404と電荷収集電極1407aとの間には、本発明の中間層ではないが、電子注入阻止層1406が設けられている。
【0129】
また、正孔注入阻止層1402と光導電層1404との間と、電子注入阻止層1406と光導電層1404との間とには、それぞれ結晶化防止層1403、1405が設けられている。結晶化防止層1403、1405としてはGeSe、GeSe、SbSe、a-AsSeや、Se−As、Se−Ge、Se−Sb系化合物等を用いることが可能である。
【0130】
なお、本実施形態では、正孔注入阻止層1402、結晶化防止層1403、光導電層1404、結晶化防止層1405、電子注入阻止層1406とから放射線検出層1430(上記実施形態における放射線検出層106に相当)が構成されている。また、電荷収集電極1407aとスイッチ素子1407bと電荷蓄積容量1407cとから電荷検出層1407が形成され、ガラス基板408(上記実施形態のガラス基板104に相当)と電荷検出層1407とからアクティブマトリックス基板1450が構成されている。
【0131】
図16は、放射線検出器1400の1画素単位の構造を示す断面図であり、図17は、その平面図である。図16及び図17に示す1画素のサイズは、0.1mm×0.1mm〜0.3mm×0.3mm程度であり、放射線検出器1400全体としてはこの画素がマトリクス状に500×500〜3000×3000画素程度配列されている。
【0132】
図16に示すように、アクティブマトリックス基板1450は、ガラス基板1408、ゲート電極1411、電荷蓄積容量電極(以下、Cs電極と称する)1418、ゲート絶縁膜1413、ドレイン電極1412、チャネル層1415、コンタクト電極1416、ソース電極1410、絶縁保護膜1417、層間絶縁膜1420、および電荷収集電極1407aを有している。
【0133】
また、ゲート電極1411やゲート絶縁膜1413、ソース電極1410、ドレイン電極1412、チャネル層1415、コンタクト電極1416等により薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)からなるスイッチ素子1407bが構成されており、Cs電極1418やゲート絶縁膜1413、ドレイン電極1412等により電荷蓄積容量1407cが構成されている。
【0134】
ガラス基板1408は支持基板であり、ガラス基板1408としては、例えば、無アルカリガラス基板(例えば、コーニング社製#1737等)を用いることができる。ゲート電極1411及びソース電極1410は、図17に示すように、格子状に配列された電極配線であり、その交点には薄膜トランジスタ(以下TFTと称する)からなるスイッチ素子1407bが形成されている。
【0135】
スイッチ素子1407bのソース・ドレインは、各々ソース電極1410とドレイン電極1412とに接続されている。ソース電極1410は、信号線としての直線部分と、スイッチ素子1407bを構成するための延長部分とを備えており、ドレイン電極1412は、スイッチ素子1407bと電荷蓄積容量1407cとをつなぐように設けられている。
【0136】
ゲート絶縁膜1413はSiNxやSiOx等からなっている。ゲート絶縁膜1413は、ゲート電極1411及びCs電極1418を覆うように設けられており、ゲート電極1411上に位置する部位がスイッチ素子1407bにおけるゲート絶縁膜として作用し、Cs電極1418上に位置する部位は電荷蓄積容量1407cにおける誘電体層として作用する。つまり、電荷蓄積容量1407cは、ゲート電極1411と同一層に形成されたCs電極1418とドレイン電極1412との重畳領域によって形成されている。なお、ゲート絶縁膜1413としては、SiNxやSiOxに限らず、ゲート電極1411及びCs電極1418を陽極酸化した陽極酸化膜を併用することもできる。
【0137】
また、チャネル層(i層)1415はスイッチ素子1407bのチャネル部であり、ソース電極1410とドレイン電極1412とを結ぶ電流の通路である。コンタクト電極(n+層)1416はソース電極1410とドレイン電極1412とのコンタクトを図る。
【0138】
絶縁保護膜1417(上記実施形態における絶縁性の保護フイルム200に相当)は、ソース電極1410及びドレイン電極1412上、つまり、ガラス基板1408上に、ほぼ全面(ほぼ全領域)にわたって形成されている。これにより、ドレイン電極1412とソース電極1410とを保護すると共に、電気的な絶縁分離を図っている。また、絶縁保護膜1417は、その所定位置、つまり、ドレイン電極1412においてCs電極1418と対向している部分上に位置する部位に、コンタクトホール1421を有している。
【0139】
電荷収集電極1407aは、非晶質透明導電酸化膜からなっている。電荷収集電極1407aは、コンタクトホール1421を埋めるようにして形成されており、ソース電極1410上及びドレイン電極1412上に積層されている。電荷収集電極1407aと光導電層1404とは電気的に導通しており、光導電層1404で発生した電荷を電荷収集電極1407aで収集できるようになっている。
【0140】
層間絶縁膜1420は、感光性を有するアクリル樹脂からなり、スイッチ素子1407bの電気的な絶縁分離を図っている。層間絶縁膜1420には、コンタクトホール1421が貫通しており、電荷収集電極1407aはドレイン電極1412に接続されている。コンタクトホール1421は、図16に示すように逆テーパ形状で形成されている。
【0141】
バイアス電極1401とCs電極1418との間には、図示しない高圧電源が接続されている。この高圧電源により、バイアス電極1401とCs電極1418との間に電圧が印加される。これにより、電荷蓄積容量1407cを介してバイアス電極1401と電荷収集電極1407aとの間に電界を発生させることができる。
【0142】
このとき、光導電層1404と電荷蓄積容量1407cとは、電気的に直列に接続された構造になっているので、バイアス電極1401にバイアス電圧を印加しておくと、光導電層1404内で電荷(電子−正孔対)が発生する。光導電層1404で発生した電子は+電極側に、正孔は−電極側に移動し、その結果、電荷蓄積容量1407cに電荷が蓄積される。
【0143】
放射線検出器全体としては、電荷収集電極1407aは1次元または2次元に複数配列されると共に、電荷収集電極1407aに個別に接続された電荷蓄積容量1407cと、電荷蓄積容量1407cに個別に接続されたスイッチ素子1407bとを複数備えている。これにより、1次元または2次元の電磁波情報を一旦電荷蓄積容量1407cに蓄積し、スイッチ素子1407bを順次走査していくことで、1次元または2次元の電荷情報を簡単に読み出すことができる。
【0144】
つぎに、TFT方式の放射線検出器1400の動作原理について説明する。
【0145】
光導電層1404にX線が照射されると、光導電層1404内に電荷(電子−正孔対)が発生する。バイアス電極1401とCs電極1418との間に電圧が印加された状態、すなわちバイアス電極1401とCs電極1418とを介して光導電層1404に電圧が印加された状態において、光導電層1404と電荷蓄積容量1407cとは電気的に直列に接続された構造となっているので、光導電層1404内に発生した電子は+電極側に、正孔は−電極側に移動し、その結果、電荷蓄積容量1407cに電荷が蓄積される。
【0146】
電荷蓄積容量1407cに蓄積された電荷は、ゲート電極1411への入力信号によってスイッチ素子1407bをオン状態にすることによりソース電極1410を介して外部に取り出すことが可能となる。そして、ゲート電極1411とソース電極1410とからなる電極配線、スイッチ素子1407b及び電荷蓄積容量1407cは、すべてマトリクス状に設けられているため、ゲート電極1411に入力する信号を順次走査し、ソース電極1410からの信号をソース電極1410毎に検知することにより、二次元的にX線の画像情報を得ることが可能となる。
【0147】
続いて、電荷収集電極1407aについて詳細に説明する。
【0148】
電荷収集電極1407aは、非晶質透明導電酸化膜によって構成されている。非晶質透明導電酸化膜材料としては、インジウムと錫との酸化物(ITO:Indium-Tin-Oxide)や、インジウムと亜鉛との酸化物(IZO:Indium-Zinc-Oxide)、インジウムとゲルマニウムとの酸化物(IGO:Indium-Germanium-Oxide)等を基本組成とするものを使用することができる。
【0149】
また、電荷収集電極としては、各種の金属膜や導電酸化膜が使用されているが、下記の理由により、ITO(Indium-Tin-Oxide)等の透明導電酸化膜が用いられることが多い。放射線検出器において入射X線量が多い場合、不要な電荷が半導体膜中(あるいは半導体膜と隣接する層との界面付近)に捕獲されることがある。このような残留電荷は、長時間メモリーされたり、時間をかけつつ移動したりするので、以降の画像検出時にX線検出特性が劣化したり、残像(虚像)が現れたりして問題になる。そこで、特開平9−9153号公報(対応米国特許第5563421号)には、光導電層に残留電荷が発生した場合に、光導電層の外側から光を照射することで、残留電荷を励起させて取り除く方法が開示されている。この場合、光導電層の下側(電荷収集電極側)から効率よく光を照射するためには、電荷収集電極が照射光に対して透明である必要がある。また、電荷収集電極の面積充填率(フィルファクター)を大きくする目的、またはスイッチ素子をシールドする目的で、スイッチ素子を覆うように電荷収集電極を形成することが望まれるが、電荷収集電極が不透明であると、電荷収集電極の形成後にスイッチ素子を観察することができない。
例えば、電荷収集電極を形成後、スイッチ素子の特性検査を行う場合、スイッチ素子が不透明な電荷収集電極で覆われていると、スイッチ素子の特性不良が見つかった際、その原因を解明するために光学顕微鏡等で観察することができない。従って、電荷収集電極の形成後もスイッチ素子を容易に観察することができるように、電荷収集電極は透明であることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】(A)は、本発明の実施形態にかかる乳房撮影用の放射線検出器によってX線撮影している様子を模式的に示す図であり、(B)は放射線検出器の概略全体図である。
【図2】本発明の実施形態にかかるシートの、(A)は断面図であり、(B)は平面図である。
【図3】シートを放射線検出デバイスに貼り付ける全体工程の概要を(A)〜(D)へと示す説明図である。
【図4−1】シートを放射線検出デバイスに貼り付ける工程(A)〜(D)を模式的に示す説明図である。
【図4−2】シートを放射線検出デバイスに貼り付ける工程(E)〜(H)を模式的に示す説明図である。
【図5−1】シートを放射線検出デバイスに貼り付ける工程(A)と(B)を示す説明図である。
【図5−2】シートを放射線検出デバイスに貼り付ける工程(C)と(D)を示す説明図である。
【図5−3】シートを放射線検出デバイスに貼り付ける工程(E)と(F)を示す説明図である。
【図6】シートを放射線検出デバイスに貼り付ける工程(A)と(B)を側面から見た説明図である。
【図7】シートの仕様を示す表である。
【図8】保護フイルムが2枚積層された状態を模式的に示す図である。
【図9】光読取方式の放射線検出器の詳細構造における放射線検出デバイスを模式的に示す(A)は平面図であり、(B)は(A)のBB断面図である。
【図10】光読取方式の放射線検出器の詳細構造における放射線検出用下部基板を模式的に示す(A)は平面図であり、(B)は(A)のBB断面図であり、(C)は(A)のCC断面図である。
【図11】光読取方式の放射線検出器の詳細構造における好ましい層構成の構成例をモデル化した断面図である。
【図12】光読取方式の放射線検出器の詳細構造における好ましい表面保護層・封止構造の例を示す斜視図である。
【図13】電流検出手段及び高電圧電源部の詳細、並びに画像検出器、電流検出手段及び装置の外部に配された画像処理装置などとの接続態様を示したブロック図である。
【図14】最適な走査方向を説明する説明図である。
【図15】TFT方式の放射線検出器の構成を示す概略図である。
【図16】TFT方式の放射線検出器の1画素単位の構造を示す断面図である。
【図17】TFT方式の放射線検出器の1画素単位の構造を示す平面図である。
【符号の説明】
【0151】
100 放射線検出器
102 放射線検出デバイス
102B 胸壁側面(第一側面)
102C 裏面
102D 側面(第二側面)
104 ガラス基板(基板)
106 放射線検出層
106B 表面
200 保護フイルム
300 シート
300C 第一端面
300D 第二端面
306 補強フイルム
306A 切込部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に放射線を電荷に変換する放射線検出層が形成された放射線検出デバイスの側面から、前記放射線検出層の表面に渡って折り曲げられて貼り付けられるシートであって、 前記放射線検出デバイスに接着される保護フイルムと、
前記保護フイルムに接着され、折り曲げられる部分に切込部が形成された補強フイルムと、
を有することを特徴とするシート。
【請求項2】
前記補強フイルムは、前記放射線検出デバイスに貼り付けられた後に剥離されることを特徴とする請求項1に記載のシート。
【請求項3】
前記補強フイルムと前記保護フイルムとが接着された接着力は、前記保護フイルムと前記放射線検出デバイスとが接着された接着力よりも弱いことを特徴とする請求項2に記載のシート。
【請求項4】
前記保護フイルムの接着面には、前記放射線検出デバイスに貼り付けられる前に剥離されるセパレータシートが貼り付けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のシート。
【請求項5】
前記セパレータシートと前記保護フイルムとが接着された接着力は、前記補強フイルムと前記保護フイルムとが接着された接着力よりも弱いことを特徴とする請求項4に記載のシート。
【請求項6】
基板上に放射線を電荷に変換する放射線検出層が形成された放射線検出デバイスの側面から前記放射線検出層の表面に渡って、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のシートが貼り付けられたことを特徴とする放射線検出器。
【請求項7】
基板上に放射線を電荷に変換する放射線検出層が形成された放射線検出デバイスの第一側面から前記放射線検出層の表面に渡ってシートを貼り付けるシート貼付方法であって、
前記シートは、
前記放射線検出デバイスに接着される保護フイルムと、
前記保護フイルムに接着され、折り曲げられる部分に切込部が形成された補強フイルムと、
を有し、
前記シートの第一端面を前記放射線検出デバイスの前記放射線検出層が形成された表面と反対側の裏面に対して位置決めすると共に、前記第一端面と直交する前記シートの第二端面を前記放射線検出デバイスの第一側面と直交する前記放射線検出デバイスの第二側面に対して位置決めする位置決め工程と、
前記位置決め工程の後に、前記シートを前記放射線検出デバイスの前記第一側面に貼り付け、前記切込部で折り曲げて前記放射線検出層の前記表面に貼り付ける貼付工程と、
を備えることを特徴とするシート貼付方法。
【請求項8】
前記貼付工程の後に、前記補強フイルムを剥離する剥離工程を備えることを特徴とする請求項7に記載のシート貼付方法。
【請求項9】
前記補強フイルムと前記保護フイルムとが接着された接着力は、前記保護フイルムと前記放射線検出デバイスとが接着された接着力よりも弱いことを特徴とする請求項8に記載のシート貼付方法。
【請求項10】
前記シートの前記保護フイルムの接着面には、セパレータシートが貼り付けられており、
前記貼付工程の前に、前記セパレータを剥離する事前剥離工程を備えることを特徴とする請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載のシート貼付方法。
【請求項11】
前記セパレータシートと前記保護フイルムとが接着された接着力は、前記補強フイルムと前記保護フイルムとが接着された接着力よりも弱いことを特徴とする請求項10に記載のシート貼付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−36569(P2009−36569A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199500(P2007−199500)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】