説明

シートの巻取り方法及び装置並びにシート巻取り体

【課題】芯部材に加工を施さなくともシートの凹凸を少なくすることができるシートの巻取り方法及び装置並びにシート巻取り体を提供する。
【解決手段】シート12のシートの巻取り方向先端を加熱部材24により加熱すると共に、芯部材14に押圧して、シート12の先端をシート12の本体部よりも薄く形成し、シート12を芯部材14に巻き取る。シートは熱可塑性樹脂であり、シートの先端への加熱は、シートの温度が軟化点以上又は溶融点以上となるように行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの巻取り方法及び装置並びにシート巻取り体に関する。
【背景技術】
【0002】
シートを円筒状の芯部材に巻き取る場合に、シートの巻取り方向先端に段差が生じ、シート巻取り体の外観が損なわれ、段差による凹凸が大きい場合には層間で剥離等の欠陥を生じる。また、巻き取られるシート間に段差が生じると、その段の上に巻き取られる部分が皺となり、この皺が積み重ねられてコブ状となり、例えば数メートルに渡って不良品が発生する。特に粘着テープを巻き取る場合は、シート間に滑りが生じないために凹凸が緩和されず、凹凸が顕著に出現してしまうので、巻き始めに凹凸を緩和することが特に重要となる。このため、シートを巻き取る際に生じるシート端面由来の凹凸を抑制する方法が従来より提案されている。例えば特許文献1においては、芯部材に、スポンジ等の発泡体や密度の低い紙等の弾性変形や塑性変形を起こしやすい変形体を用いて、巻き始めの端部によってできる段差により、シートの表面に段差の痕跡、つまり巻き始めの端部の段差が転写した凹みが発生するのを防止する方法が開示されている。
【0003】
しかし、発泡体や低密度の紙等の変形体は、弾性変形の割合が大きく、塑性変形を起こしにくいことから応力が生じるため、段差によってシート状部材に生じる凹凸を完全に消し去ることは難しい。そこで、従来から、断面くさび型の柔軟部材をシートの端部にあてがってシート表面と芯部材表面との段差をなだらかに埋める方法が提案されている(特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】特開平11−263537号公報
【特許文献2】特開2004−217349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来においては、芯部材に対して切削加工を施したり、あるいは芯部材に発泡体を巻く等、芯部材に対して特別な加工が必要であるという問題点があった。
【0006】
本発明の目的は、上記問題点を解消し、芯部材に加工を施さなくともシートの凹凸を少なくすることができるシートの巻取り方法及び装置並びにシート巻取り体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の特徴とするところは、シートの巻取り方向先端を加熱して、前記シートの先端を前記シートの本体部よりも薄く形成し、前記シートを芯部材に巻き取るシートの巻取り方法にある。
【0008】
好適には、さらに前記シートの先端を前記芯部材に押圧するようにする。
【0009】
また、好適には、前記シートは熱可塑性樹脂である。
【0010】
また、好適には、前記シートは、基材フィルムと、この基材フィルムの表面の少なくとも一部に設けられた粘着剤とを有する。
【0011】
また、好適には、前記シートの先端への加熱は、前記シートの温度が軟化点以上となるように行うか、又は前記シートの温度が溶融点以上となるように行う。
【0012】
本発明の第2の特徴とするところは、シートを巻き取る芯部材を回転させる駆動装置と、前記シートの先端が前記芯部材に当たる際に前記シートの巻取り方向先端を加熱する加熱手段と、を有するシートの巻取り装置にある。
【0013】
好適には、前記加熱手段は、さらに前記シートの先端を前記芯部材に押圧するように構成する。
【0014】
本発明の第3の特徴とするところは、周囲に巻取り面を有する芯部材と、この芯部材の巻取り面に巻き取られたシートとを有し、前記シートは、前記シートの巻取り方向先端が前記シートの本体部よりも薄く形成されているシート巻取り体にある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、芯部材に加工を施さなくともシートの凹凸を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1において、本発明の実施形態に係るシート巻取り装置10が示されている。このシート巻取り装置10は、シート12を円筒状の芯部材14に巻き取るためのものである。
【0017】
シート12は、例えば熱可塑性樹脂シートである。熱可塑性樹脂には、周知のように、汎用樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン(PS)、アクリロトリル/ブタンジエン/スチレン樹脂(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリル/スチレン樹脂(AS)、メタクリル樹脂(PMMA)等があり、汎用エンジニアリング樹脂として、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、GF強化ポリエチレンテレフタレート(GF-PET)、超高分子量ポリエチレン(UHPE)等があり、さらにスーパーエンジニアリング樹脂として、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等がある。さらに熱可塑性樹脂として、アイモノマー、エチレン−酢酸ビニル樹脂がある。
特に好ましいのは、ポリエチレン系やポリプロピレン系等のポリオレフィン系である。
なお、シート12の先端裏面には、低い温度で芯部材14に接着されるように、シート12の本体部よりも低い軟化点又は溶融点を有する接着層を設けることができる。
さらにシート12としては、基材フィルムに粘着剤を設けたもの、例えば基材フィルムの片面に粘着剤を塗布したダイシング用の粘着シートであってもよい。
【0018】
芯部材14は、耐熱性を有する材料から構成され、例えばステンレス等の金属、又はABS等の樹脂からなる。この芯部材14は、円筒状に形成されて周囲に巻取り面を有し、この巻取り面にシート12が巻き取られる。
【0019】
搬送ロール16は、芯部材14の上流側に設けられ、シート12を芯部材14の上端に向けて搬送する。この搬送ロール16は、モータからなる第1の駆動装置18により回転駆動される。
【0020】
前述した芯部材14は、同じくモータからなる第2の駆動装置20により、図中時計方向に回転される。
【0021】
シート検出器22は、例えば搬送ロール16の出口部分に設けられている。このシート検出器22は、例えば発光素子と受光素子からなり、発光素子からの光を受光素子が受けた状態からシートの先端が発光素子と受光素子との間を通過すると、光の一部又は全部が遮断されてシートの先端が通過したことを検出する。また、光が遮断された状態からシートの後端が受光素子と発光素子との間を通過すると、受光素子により光が受光されてシートの後端が通過したことを検出する。
【0022】
加熱手段を構成する加熱部材24は、例えば円筒状に形成され、表面に例えばフッ素樹脂等の離型層を有し、内部にはヒータ26が配置されており、このヒータ26に通電することによって表面を加熱することができる。また、加熱部材24の表面の温度を検出する温度センサ28が設けられている。
なお、この実施形態においては、加熱部材24の内部にヒータ26を設けたが、他の実施形態として、加熱部材24を外部から加熱するようにしてもよい。
【0023】
上記加熱部材24は、アーム30に支持されている。このアーム30は、モータである第3の駆動装置32により回転される。加熱部材24は、実線で示す位置を初期位置として、第3の駆動装置32からの駆動を受けて反時計方向に回転し、2点鎖線で示すように、芯部材14の上端付近を通り、さらに回転して初期位置に戻されるようになっている。
【0024】
加熱部材24は、2点鎖線で示す位置まで移動した時に芯部材14に最も近づく。この場合の加熱部材24と芯部材14との間の距離はシート12の厚さよりも小さく、略0となるようにすることが好ましい。また、加熱部材24の公転による周速は、芯部材14の周速よりも速い方が好ましい。加熱部材24の周速が芯部材14の周速よりも速いことにより、シート12の先端を滑らかな曲面をもって徐々に薄く形成することができる。
【0025】
なお、加熱部材24は、アーム30に固定されるようにしてもよいが、アーム30に回転自在に支持されるようにしてもよく、さらに反時計方向に回転駆動されるようにしてもよい。この場合、加熱部材24の自転による周速は、芯部材14の周速よりも速い方が好ましい。加熱部材24の周速が芯部材14の周速よりも速いことにより、シート12の先端を滑らかな曲面をもって徐々に薄く形成することができる。
【0026】
制御部34は、例えばコンピュータから構成され、シート検出器22及び温度センサ28からの検出信号が入力されると共に、第1の駆動装置18、第2の駆動装置20、第3の駆動装置30及びヒータ26を制御する。
【0027】
図2において、上記制御部34の制御フローが示されている。
まず、ステップS10において、温度センサ28からの検出信号をモニタしながらヒータ26に通電して加熱部材24の表面を所定温度以上に加熱する。所定温度とは、シート12との接触時にシート12が軟化点又は溶融点以上となる温度である。軟化点とは、物体が温度により変形を起こし始める温度であり、溶融点とは、物体が固体から液体へ相変化を起こし始める温度である。
【0028】
次のステップS12においては、第1の駆動装置18を駆動して搬送ロール16を回転させ、シート12を芯部材14の上端に向けて搬送する。次のステップ14においては、第2の駆動装置20を駆動して芯部材14を回転させ、シート巻取りの準備を行う。
【0029】
次のステップS16においては、シート検出器22からの出力に基づいてシート12の先端がシート検出器22を通過したか否かを判定する。このステップ16において、シート12の先端がシート検出器22を通過したと判定された場合は次のステップS18に進み、シート12の先端がシート検出器22を未だ通過していないと判定された場合にはシート12の先端が検出されるまで待機する。
【0030】
ステップS18においては、シート12の先端が芯部材14の上端の巻取り開始位置に到達した時に加熱部材24が巻取り開始位置に到達するように、シート検出器22からの出力に基づいてタイミングをとって第3の駆動装置30を駆動する。そして、加熱部材24が図1の2点鎖線の位置からさらに反時計方向に回転し、初期位置に到達した段階でステップS20に進み、第3の駆動承知30の駆動を停止して加熱部材24を初期位置に戻す。さらに次のステップS22においては、ヒータ26の加熱を停止する。
【0031】
次のステップS24においては、シート12の芯部材14への巻取りが終了したか否かを判定する。巻取りが終了したか否かの判定は、例えばシート検出器22によりシート12の後端が通過した時から所定時間が経過したか否かにより行うことができる。このステップS24において、シート12の巻取りが終了したと判定された場合は、次のステップS26に進み、シート12の巻取りが終了していないと判定された場合、シート12の巻取りが終了するまで待機する。
【0032】
次のステップS26においては、第1の駆動装置18の駆動を停止して搬送ロール16の回転を停止し、次のステップS28において、第2の駆動措置20の駆動を停止して芯部材14の回転を停止し、処理を終了する。
【0033】
次に上述したシートの巻取り方法を実施した場合の作用について説明する。
図3に示すように、シート12が芯部材14に巻かれる開始位置でシート12の軟化点又は溶融点以上に加熱された加熱部材24がシート12の先端に押圧するように接触するので、シート12の先端は加熱部材24からの熱及び圧力により、先端に向かって徐々に薄くなるように変形される。即ち、図4に示すように、シート12は、先端部36が本体部38よりも徐々に薄くなるように滑らかな曲面となるように変形され、段差が軽減される。ここで、段差とは、シート12を巻き取る際のシート先端により発生する芯部材14とシート12との半径方向の差をいう。
【0034】
このような変形と同時にシート12の先端部36には加熱部材24からの熱及び圧力が作用するので、先端部36の裏面が芯部材14に接着され、シート12の先端が芯部材14から離れることなくシート12を芯部材14に巻き取ることができる。
【0035】
そして、図5に示すように、2周目のシート12が先端部を乗り上げるように巻き付けられるので、シート12の凹凸の発生を少ないシート巻取り体40を得ることができる。ここで、凹凸とは、シート12の先端により発生した段差が巻取り済みのシートに転写されることにより生じる凹凸をいう。
【0036】
次に実施例について説明する。
厚さ25μmのアクリル樹脂粘着剤層をもつアイモノマー樹脂フィルムを10cm/分の搬送速度で搬送しながら、ABS樹脂製の芯部材にロール状に巻き取るにあたり、フィルム先端を芯部材にあてがい、200°C以上に加熱したSUS304製の加熱部材に接触させた後、芯部材に巻き取った。なお、加熱部材はフィルム先端に接触、加工後、即時にフィルムから離反させた。加熱部材を用いずに巻き取ったものと比較して凹凸が少ないフィルム巻取り体を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係るシート巻取り装置を示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係るシート巻取り装置の制御フローを示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態に係るシート巻取り装置のシート巻取り開始時を示す側面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るシート巻取り装置によるシート巻取り開始時のシートの状態を示す側面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るシート巻取り装置のシート巻取り開始後を示す側面図である。
【符号の説明】
【0038】
10 シート巻取り装置
12 シート
14 芯部材
16 搬送ロール
18 第1の駆動装置
20 第2の駆動装置
22 シート検出器
24 加熱部材
26 ヒータ
28 温度センサ
30 アーム
32 第3の駆動装置
34 制御部
36 先端部
38 本体部
40 シート巻取り体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの巻取り方向先端を加熱して、前記シートの先端を前記シートの本体部よりも薄く形成し、前記シートを芯部材に巻き取ることを特徴とするシートの巻取り方法。
【請求項2】
さらに前記シートの先端を前記芯部材に押圧することを特徴とする請求項1記載のシートの巻取り方法。
【請求項3】
前記シートは熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1又は2記載のシートの巻取り方法。
【請求項4】
前記シートは、基材フィルムと、この基材フィルムの表面の少なくとも一部に設けられた粘着剤とを有する請求項1又は2記載のシート巻取り方法。
【請求項5】
前記シートの先端への加熱は、前記シートの温度が軟化点以上となるように行うことを特徴とする請求項3記載のシートの巻取り方法。
【請求項6】
前記シートの先端への加熱は、前記シートの温度が溶融点以上となるように行うことを特徴とする請求項3記載のシートの巻取り方法。
【請求項7】
シートを巻き取る芯部材を回転させる駆動装置と、前記シートの先端が前記芯部材に当たる際に前記シートの巻取り方向先端を加熱する加熱手段と、を有することを特徴とするシートの巻取り装置。
【請求項8】
前記加熱手段は、さらに前記シートの先端を前記芯部材に押圧することを特徴とする請求項7記載のシートの巻取り装置。
【請求項9】
周囲に巻取り面を有する芯部材と、この芯部材の巻取り面に巻き取られたシートとを有し、前記シートは、前記シートの巻取り方向先端が前記シートの本体部よりも薄く形成されていることを特徴とするシート巻取り体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−137737(P2008−137737A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−323160(P2006−323160)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】