説明

シートの製造方法

【課題】ネット材をフレーム構造体に張設した張力によって着座荷重を支持するクッション構造において、ネット材により発揮される支持力を簡単に調整できるようにする。
【解決手段】バックフレーム20に対してネット材40Aを張設することで着座荷重を弾性支持するシート1の製造方法である。ネット材40Aのバックフレーム20への張設は、バックフレーム20の枠形状に沿って形成された被取付部位21に対し、同枠形状に沿って形成されたネット材40Aの取付部位41を張り合わせた状態で固定することにより行われ、取付部位41は、その支持部位箇所に応じて、バックフレーム20に形成された対応する被取付部位21に向けて引張り込まれる引張り込み長さが異なり、引張り込み長さに対応する引張力が付与された状態でバックフレーム20に形成された対応する被取付部位21に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの製造方法に関する。詳しくは、シートの骨格を成す枠形状のフレーム構造体に対してネット材等の面状弾性部材を張設することによりシートに着座した乗員の着座荷重を弾性的に支持するクッション構造を構成するシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートのクッション構造としては、例えば特許文献1に開示されている構成のものが知られている。この開示では、シートの骨格を成すフレーム構造体に対してネット材等の面状弾性部材が張設されており、この面状弾性部材によって、ウレタンパッド等のクッション部材を弾性的に面で支持するようにしている。これにより、例えばクッション部材をSバネ等のワイヤ部材によって線や点で支持するようにした構成と比べて、乗員がシートに着座した際の着座感の向上や、シート構造全体の軽量化を図ることができる。すなわち、クッション部材が面で支持されているため、乗員の着座荷重によってクッション部材が圧縮変形しても、乗員がワイヤ部材等の局所的な突出物に干渉するなどして異物感を感じることがなくなるからである。また、これにより、クッション部材を薄肉化して使用することが可能となるため、かかる重量を軽減することができるからである。
ところで、上記のようにネット材等の面状弾性部材の張力によって乗員の着座荷重を支持する構成においては、例えば乗員の腰部等のように比較的高い支持力の必要とされる部位を、局所的に、その好適とされる支持力によって支持することは難しい。そこで、このような問題に対処するために、例えば特許文献2では、面状弾性部材たるネット材の比較的高い支持力の必要とされる部位を高密度に編み込んだ構成としている。これにより、同部位において、局所的に、所望の支持力を発揮させることができる。
【0003】
【特許文献1】特開2004−135836号公報
【特許文献2】特開2004−33542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術、すなわちネット材を局所的に高密度に編み込んで支持力を高めるようにする技術では、シートタイプが異なる毎に編み込み密度を変化させたり、高密度に形成した部分をフレーム構造体に対する所望の位置に精度良く張設したりすることに手間のかかるものであった。
【0005】
本発明は、上記した問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、ネット材等の面状弾性部材をフレーム構造体に張設した張力によって乗員の着座荷重を支持するクッション構造において、面状弾性部材により発揮される支持力を簡単に調整できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のシートの製造方法は次の手段をとる。
先ず、第1の発明は、シートの骨格を成す枠形状のフレーム構造体に対してネット材等の面状弾性部材を張設することによりシートに着座した乗員の着座荷重を弾性的に支持するクッション構造を構成するシートの製造方法であって、面状弾性部材のフレーム構造体への張設は、フレーム構造体の枠形状に沿って形成された被取付部位に対し、同枠形状に沿って形成された面状弾性部材の取付部位を張り合わせた状態で固定することにより行われ、面状弾性部材の取付部位は、シートに着座した乗員を支持する面状弾性部材の支持部位箇所に応じて、フレーム構造体に形成された対応する被取付部位に向けて引張り込まれる引張り込み長さが異なり、引張り込み長さに対応する引張力が付与された状態でフレーム構造体に形成された対応する被取付部位に固定されるものである。
ここで、面状弾性部材に形成された取付部位やフレーム構造体に形成された被取付部位は、フレーム構造体の枠形状に沿って連続的或いは断続的に形成されているものである。
この第1の発明によれば、面状弾性部材の取付部位をフレーム構造体に形成された対応する被取付部位に向けて引張り込む長さが異なると、面状弾性部材にかかる張力作用によって、乗員の着座荷重を支持する支持力も異なる。したがって、乗員の着座荷重を支持する支持部位箇所に応じて取付部位を引張り込む長さを変化させることにより、例えば腰部のように比較的高い支持力の必要とされる部位箇所を支持する支持力を局所的に高めることが可能となる。
【0007】
次に、第2の発明は、上述した第1の発明において、面状弾性部材の対向する位置にある取付部位同士を互いに引張り込んだ緊張状態として保持する引張保持工程と、引張保持工程により緊張状態とされた面状弾性部材の取付部位上にフレーム構造体に形成された対応する被取付部位を位置合わせして押し当てる押当工程と、押当工程により当接した面状弾性部材の取付部位とフレーム構造体に形成された対応する被取付部位との当接部位を当接部位間に塗布された熱接着性樹脂によって接着し固定する固着工程と、を有するものである。
この第2の発明によれば、引張保持工程によって、面状弾性部材は、取付部位が対向する方向の引張方向、例えばシートの車幅方向や高さ方向に引張り込まれた緊張状態とされて保持される。そして、押当工程において、上記緊張状態とされた面状弾性部材の取付部位に、フレーム構造体に形成された対応する被取付部位が押し当てられる。そして、固着工程において、上記押当状態とされた取付部位と対応する被取付部位とが固定される。すなわち、予め所望の緊張状態に形作られた状態の面状弾性部材に対して、フレーム構造体が押し当てられて張設が行われる。
【0008】
次に、第3の発明は、上述した第2の発明において、引張保持工程は、面状弾性部材の一方側の面を互いに離間配置されて立設された支持板間に覆い架け渡すと共に、その架け渡した両端側の部位を立設された両支持板の外側の根元側部に向けて引張り込んで面状弾性部材を緊張させた状態として保持することにより行われ、押当工程は、フレーム構造体に形成された被取付部位を緊張状態として保持されている面状弾性部材の他方側の面上に設定された取付部位上に位置合わせした状態で、フレーム構造体の背裏側に当て交われる押込具の押し込み操作によって枠形状のフレーム構造体に形成された被取付部位を支持板間に押し込んで面状弾性部材の取付部位に押し当てることにより行われるものである。
この第3の発明によれば、面状弾性部材は、支持板間に架け渡された両端側の部位が両支持板の外側の根元側部に引張り込まれた状態として保持される。したがって、例えばフレーム構造体に上記両支持板の外側位置に向けて張り出す形状の張出部位が形成されている場合に、この張出部位と両支持板の外側に引張り出された面状弾性部材の張出面とが干渉することを回避することができる。
【0009】
次に、第4の発明は、上述した第3の発明において、面状弾性部材は、支持板間に架け渡された両端側の部位が両支持板の根元側部に向けて斜め方向に引張り込まれた仮引張状態として固定された状態で、両支持板の根元側部に向けて斜め方向に仮引張りされた両引張斜面が両支持板の両外側から両支持板の外側面に向けて押動される押動部材により両支持板の外側面に向けて押し込まれる押し込み長さによって、取付部位の引張り込み長さが調整されるものである。
この第4の発明によれば、面状弾性部材は、両引張斜面が押動部材によって両支持板の外側面に向けて押し込まれることにより、引張力が付与されて引張り込み長さが調整される。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述した手段をとることにより、次の効果を得ることができる。
先ず、第1の発明によれば、ネット材等の面状弾性部材をフレーム構造体に張設した張力によって乗員の着座荷重を支持するクッション構造において、面状弾性部材により発揮される支持力を局所的に高めたり低めたりする調整を簡単に行うことができる。
更に、第2の発明によれば、所望の緊張状態に形作られた面状弾性部材をフレーム構造体に精度良く固定することができる。
更に、第3の発明によれば、例えばフレーム構造体に両支持板の外側位置に向けて張り出す形状の張出部位が形成された構成の場合でも、面状弾性部材をフレーム構造体に好適に張設することができる。
更に、第4の発明によれば、面状弾性部材の引張り込み長さの調整を簡単で、かつ、精度良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための最良の形態の実施例について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0012】
始めに、実施例1のシート1について、図1〜図7を用いて説明する。図1はシート1の概略構成を表した斜視図、図2は図1のY−Y線断面図、図3はネット材40Aが比較的弱い緊張状態とされて保持された状態を表した正面図、図4は図3のネット材40Aにバックフレーム20を押し当てた状態を表した正面図、図5はネット材40Aが比較的強い緊張状態とされて保持された状態を表した正面図、図6は図5のネット材40Aにバックフレーム20を押し当てた状態を表した正面図、図7はシート1にパッドPa,Pbが組み付けられた状態を表した斜視図である。なお、図1では、シート1の表皮部材となるカバーやクッション部材となるパッドPa,Pb(図7参照)等の構成が省略された状態で表されている。
【0013】
本実施例のシート1は、図1に良く示されるように、着座した乗員の背もたれ部となるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、を有する。このシート1は、シートバック2の骨格を成す枠形状のバックフレーム20やシートクッション3の骨格を成す枠形状のクッションフレーム30に対してネット材40A,40Bがそれぞれ張設されている。そして、図7に良く示されるように、これらネット材40A,40Bの表側面42a,42bには、クッション部材としてのパッドPa,Pb(ウレタンパッド)がそれぞれ組み付けられている。したがって、これらパッドPa,Pbは、ネット材40A,40Bの張力作用によって、バックフレーム20やクッションフレーム30(図1参照)に対して弾性的に支持される。すなわち、これらパッドPa,Pbやネット材40A,40Bによる支持構造によって、シート1に着座した乗員の着座荷重を弾性的に支持可能なクッション構造が構成されている。
ここで、図1に良く示されるように、バックフレーム20やクッションフレーム30が本発明のフレーム構造体に相当し、表側面42a,42bが本発明の一方側の面に相当する。
【0014】
上記ネット材40A,40Bは、全体が略均一な編込み密度によって形成された網目構造を有するが、バックフレーム20やクッションフレーム30に張設されることによって発揮される張力が、乗員の着座荷重を支持する支持部位箇所に応じて異なる構成となっている。具体的には、図2に良く示されるように、例えばバックフレーム20に張設されるネット材40Aは、乗員の腰部を支持する下方側寄りの部位、すなわち比較的高い支持力の必要とされる部位Sは、張力が高められた状態で張設されている。また、その他の部位Wは、上記比較的高い支持力の必要とされる部位Sと比べると、張力が低められた状態で張設されている。なお、図1に示されるクッションフレーム30に張設されるネット材40Bは、図示は省略されているが、乗員の大腿部を支持する前方側寄りの部位、すなわち比較的高い支持力の必要とされる部位は、張力が高められた状態で張設されている。また、その他の部位は、上記比較的高い支持力の必要とされる部位と比べると、張力が低められた状態で張設されている。
より具体的に説明すると、ネット材40A,40Bは、シート1の車幅方向WDに引張り込まれた緊張状態で張設されており、この車幅方向WDに引張り込まれる際の引張力の高低が上記乗員の着座荷重を支持する支持部位箇所に応じて調整されている。すなわち、ネット材40A,40Bの張設状態によって、乗員の着座荷重を支持する支持部位箇所に適した支持弾性が発揮されるようになっている。これにより、シート1全体の着座感の向上が図られている。
【0015】
詳しくは、ネット材40Aは、以下の方法によってバックフレーム20に張設されている。
すなわち、図1に良く示されるように、ネット材40Aのバックフレーム20への張設は、バックフレーム20の枠形状に沿って形成された被取付部位21に対し、同じく枠形状に沿って形作られたネット材40Aの取付部位41を張り合わせた状態で固定することによって行われている。このネット材40Aとバックフレーム20との固定は、図2に良く示されるように、バックフレーム20の被取付部位21に塗布された熱接着性樹脂50による接着によって行われている。この熱接着性樹脂50による接着は、熱接着性樹脂50を塗布したバックフレーム20を予め加熱した状態でネット材40Aと張り合わせることによって行ってもよいし、ネット材40Aと張り合わせた状態で熱接着性樹脂50を塗布したバックフレーム20を加熱して行ってもよい。また、ネット材40Aの取付部位41の枠形状は、図3に良く示されるように、ネット材40Aを車幅方向WDに引張り込んだ緊張状態として保持することのできるネット保持治具60によって形作られている。
【0016】
ここで、ネット保持治具60は、図3に良く示されるように、バックフレーム20の枠形状に沿って形成された被取付部位21の外周縁を取り囲む形状として形成された支持板61と、この支持板61に覆い架け渡されたネット材40Aの端部44a,44bを支持板61の外側の根元側部に向けて斜め方向にそれぞれ引張り込んだ状態として保持する固定部材62a,62bと、支持板61及び固定部材62a,62bを固定支持する固定台63と、を有する。
先ず、支持板61は、上記バックフレーム20の被取付部位21の外周縁を取り囲む形状として連続的に形成されているが、図3ではバックフレーム20のサイドフレーム22a,22bに形成された被取付部位21の外周縁を取り囲む形状として、図3で見て左右の支持板61a,61bが車幅方向WDに離間配置された状態として表されている。この支持板61a,61bは、同図で示す紙面内上方向に向けて立設されている。そして、支持板61a,61bの上面間にネット材40Aの表側面42a(同図で示す下側の面)が覆い架け渡されることにより、この支持板61a,61bの上面形状に沿った内周縁部位に、同じ枠形状の取付部位41を形作る。
次いで、固定部材62a,62bは、支持板61a,61bの外側の根元側部に配設されており、支持板61a,61bに対する相対的離間位置を調整移動可能な状態として固定台63に取付けられている。
【0017】
したがって、図3及び図5に良く示されるように、固定部材62a,62bの取付位置を変化させることにより、支持板61a,61bに覆い架け渡されたネット材40Aの端部44a,44bを引張り込む引張り込み長さを異ならせるべく調整することができる。詳しくは、図3では、固定部材62a,62bが支持板61a,61bに接近した位置に取付けられた状態として表されており、図5では、支持板61a,61bから離間した位置に取付けられた状態として表されている。
そして、例えば、前述したその他の部位W(図2参照)の張設状態に対応させてネット材40Aの取付部位41の枠形状を形作る場合には、以下のようにして行われる。すなわち、先ず、図3の仮想線で示されるように、固定部材62a,62bが支持板61a,61bに接近した位置に取付けられた状態で、ネット材40Aの端部44a,44bを固定部材62a,62bの取付位置まで引張り込んだ仮引張状態として保持する。次いで、同図の実線で示されるように、支持板61a,61bの根元側部に向けて斜め方向に仮引張りされた引張斜面45a,45bを、支持板61a,61bの両外側から支持板61a,61bの外側面Oa,Obに向けて押動されるネット張力調整治具90A,90Bによって、支持板61a,61bの外側面Oa,Obに向けて押し込む。これにより、ネット材40Aは、ネット張力調整治具90A,90Bが押し込まれる押し込み長さによって、車幅方向WDに引張り込まれる引張り込み長さが調整される。この引張り込み長さの調整された状態では、ネット材40Aは、ネット張力調整治具90A,90Bによって上記引張り込み長さに対応する引張力が付与された緊張状態として保持される。そして、これにより、ネット材40Aの取付部位41は、支持板61a,61bの上面形状に沿った枠形状として形作られる。ここで、ネット張力調整治具90A,90Bが本発明の押動部材に相当する。
また、比較的高い支持力の必要とされる部位S(図2参照)の張設状態に対応させてネット材40Aの取付部位41の枠形状を形作る場合には、以下のようにして行われる。すなわち、先ず、図5の仮想線で示されるように、固定部材62a,62bが支持板61a,61bから離間した位置に取付けられた状態で、ネット材40Aの端部44a,44bを固定部材62a,62bの取付位置まで引張り込んだ仮引張状態として保持する。次いで、同図の実線で示されるように、斜め方向に仮引張りされた引張斜面45a,45bを、ネット張力調整治具90A,90Bによって、支持板61a,61bの外側面Oa,Obに向けて押し込む。このとき、ネット材40Aの引張斜面45a,45bがネット張力調整治具90A,90Bによって押し込まれる押し込み長さは、上述したその他の部位W(図2参照)を形成する際の押し込み長さと比べると長くなる。したがって、ネット材40Aは、上述したその他の部位Wの形成時と比べると、車幅方向WDに長く引張り込まれた緊張状態として、高い引張力が付与された状態で保持される。
【0018】
そして、図4及び図6に良く示されるように、上記支持部位箇所に適した引張り込み状態として形作られたネット材40Aは、その裏側面43a(同図で示す上側の面)の面上に形成された枠形状の取付部位41に、バックフレーム20の対応する被取付部位21が押し当てられる。このバックフレーム20をネット材40Aの裏側面43aに押し当てる作業は、バックフレーム20の背裏側に当て交われる押込具70の押し込み操作によって行われる。ここで、裏側面43aが本発明の他方側の面に相当する。
具体的には、押込具70の押し込み操作は、図3に良く示されるように、ネット保持治具60と一体に設けられた押込治具80A,80Bにセットされて行われる。この押込治具80A,80Bは、押し込み操作用のレバー81a,81bと、このレバー81a,81bの操作に連動して押込具70を同図で示す下方に向けて押動する押動部82a,82bと、を有する。また、押込具70は、バックフレーム20の背裏側に当て交われることにより、被取付部位21の背裏側に当接する脚部71a,71bを一体に有する。したがって、図4及び図6に良く示されるように、押込治具80A,80Bのレバー81a,81bの操作を行うことにより、押込具70をバックフレーム20の背裏側に当て交って、緊張状態とされたネット材40Aの取付部位41に、バックフレーム20の対応する被取付部位21を位置合わせした状態で押し当てることができる。そして、バックフレーム20の被取付部位21に塗布された熱接着性樹脂50(図2参照)によって、当接状態のネット材40Aの取付部位41とバックフレーム20の対応する被取付部位21とを接着させて固定することができる。なお、ネット材40Aを緊張させた状態として保持するための引張斜面45a,45b等の代部分(図3及び図5参照)は、上記接着処理された後に、裁断されて切り落とされる。
【0019】
ここで、図1に良く示されるように、バックフレーム20のサイドフレーム22a,22bは、車両前方に向けて張り出す形状に形成されている。このサイドフレーム22a,22bの張出部位23a,23b間の寸法は、図3及び図5に良く示されるように、支持板61a,61bの離間寸法よりもひと回り大きくなっている。したがって、図4及び図6に良く示されるように、バックフレーム20がネット材40Aに向けて押込まれる際には、張出部位23a,23bが支持板61a,61bの外側位置に向けて張り出す位置に配置される。しかしながら、図3及び図5で示したように、この張出部位23a,23bが支持板61a,61bの外側位置に押込まれる状態時には、斜め方向に仮引張りされていた張出面たる引張斜面45a,45bが支持板61a,61bの外側面Oa,Obに向けて押し込まれた窄み込み状態とされている。したがって、張出部位23a,23bと引張斜面45a,45bとの干渉を回避することができ、バックフレーム20の押し当て作業を好適に行うことができる。
また、支持板61a,61bは、前述したように、バックフレーム20の枠形状に沿って形成された被取付部位21の外周縁を取り囲む形状として形成されている。したがって、図4及び図6に良く示されるように、被取付部位21を、支持板61a,61b間に押し込みながら、ネット材40Aに形成された対応する取付部位41に押し当てることができる。
なお、図1に示されるネット材40Bをクッションフレーム30に張設する場合については、上述した方法と同様にして行うことができるため、詳細な説明を省略する。
【0020】
続いて、本実施例の使用方法について説明する。
すなわち、バックフレーム20にネット材40Aを張設する場合には、先ず、図3及び図5に良く示されるように、ネット保持治具60によって、ネット材40Aを、乗員の着座荷重を支持する支持部位箇所に応じて引張り込み長さを調整した緊張状態として保持する(引張保持工程)。次いで、図4及び図6に良く示されるように、上記引張保持されて緊張状態とされたネット材40Aの取付部位41上に、バックフレーム20に形成された対応する被取付部位21を位置合わせして押し当てる(押当工程)。そして、この被取付部位21に塗布された熱接着性樹脂50(図2参照)によって、ネット材40Aの取付部位41とバックフレーム20の対応する被取付部位21とを接着させて固定する。なお、図1に示されるクッションフレーム30にネット材40Aを張設する場合には、上述した方法と同様にして行うことができる。
これにより、図1に良く示されるように、乗員の着座荷重を支持する支持部位箇所に適した支持弾性が発揮されるように、バックフレーム20やクッションフレーム30にネット材40A,40Bをそれぞれ張設することができる。
【0021】
このように、本実施例のシート1の製造方法によれば、ネット材40A,40Bをバックフレーム20やクッションフレーム30に張設した張力によって乗員の着座荷重を支持するクッション構造において、ネット材40A,40Bにより発揮される支持力を局所的に高めたり低めたりする調整を簡単で、かつ、精度良く行うことができる。すなわち、所望の緊張状態に形作られたネット材40A,40Bに対してバックフレーム20やクッションフレーム30を押し当てて固定する方法であるため、例えばネット材40A,40Bをバックフレーム20やクッションフレーム30に押し当てながら引張り込み長さを調整するような方法と比べると、高い位置決め精度で張設することができる。更に、本実施例のようにバックフレーム20に支持板61a,61bの外側位置に向けて張り出す形状の張出部位23a,23bが形成された構成の場合でも、ネット材40Aをバックフレーム20に好適に張設することができる。
【0022】
以上、本発明の実施形態を1つの実施例により説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施ができるものである。
例えば、バックフレームやクッションフレームに張設されたネット材にパッドを組み付けることなく、ネット材のみによって乗員の着座荷重を支持するクッション構造として構成してもよい。
また、バックフレームやクッションフレームに張設されるネット材に代替して、例えば弾性を備えた布材や、いわゆる3次元の編み込み構造を有するネット材等、種々の面状弾性部材が適用可能である。
また、ネット材をシートの車幅方向に引張り込んで張設したものを示したが、使用目的に合わせてシートの高さ方向等、他の方向に引張り込んだ状態として張設してもよい。
また、ネット材に形成された取付部位や、バックフレームやクッションフレームに形成された被取付部位は、枠形状に沿って連続的に形成されているもの或いは断続的に形成されているもののどちらであっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】シートの概略構成を表した斜視図である。
【図2】図1のY−Y線断面図である。
【図3】ネット材が比較的弱い緊張状態とされて保持された状態を表した正面図である。
【図4】図3のネット材にバックフレームを押し当てた状態を表した正面図である。
【図5】ネット材が比較的強い緊張状態とされて保持された状態を表した正面図である。
【図6】図5のネット材にバックフレームを押し当てた状態を表した正面図である。
【図7】シートにパッドが組み付けられた状態を表した斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
1 シート
2 シートバック
3 シートクッション
20 バックフレーム(フレーム構造体)
21 被取付部位
22a,22b サイドフレーム
23a,23b 張出部位
30 クッションフレーム(フレーム構造体)
40A,40B ネット材
41 取付部位
42a,42b 表側面(一方側の面)
43a 裏側面(他方側の面)
44a,44b 端部
45a,45b 引張斜面
50 熱接着性樹脂
60 ネット保持治具
61 支持板
61a,61b 支持板
62a,62b 固定部材
63 固定台
70 押込具
71a,71b 脚部
80A,80B 押込治具
81a,81b レバー
82a,82b 押動部
90A,90B ネット張力調整治具(押動部材)
S 比較的高い支持力の必要とされる部位
W その他の部位
Oa,Ob 外側面
Pa,Pb パッド
WD 車幅方向


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの骨格を成す枠形状のフレーム構造体に対してネット材等の面状弾性部材を張設することにより前記シートに着座した乗員の着座荷重を弾性的に支持するクッション構造を構成するシートの製造方法であって、
前記面状弾性部材の前記フレーム構造体への張設は、前記フレーム構造体の枠形状に沿って形成された被取付部位に対し、同枠形状に沿って形成された前記面状弾性部材の取付部位を張り合わせた状態で固定することにより行われ、
前記面状弾性部材の取付部位は、前記シートに着座した乗員を支持する前記面状弾性部材の支持部位箇所に応じて、前記フレーム構造体に形成された対応する被取付部位に向けて引張り込まれる引張り込み長さが異なり、該引張り込み長さに対応する引張力が付与された状態で前記フレーム構造体に形成された対応する被取付部位に固定されることを特徴とするシートの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のシートの製造方法であって、
前記面状弾性部材の対向する位置にある取付部位同士を互いに引張り込んだ緊張状態として保持する引張保持工程と、
該引張保持工程により緊張状態とされた面状弾性部材の取付部位上に前記フレーム構造体に形成された対応する被取付部位を位置合わせして押し当てる押当工程と、
該押当工程により当接した前記面状弾性部材の取付部位と前記フレーム構造体に形成された対応する被取付部位との当接部位を該当接部位間に塗布された熱接着性樹脂によって接着し固定する固着工程と、
を有することを特徴とするシートの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のシートの製造方法であって、
前記引張保持工程は、前記面状弾性部材の一方側の面を互いに離間配置されて立設された支持板間に覆い架け渡すと共に、その架け渡した両端側の部位を前記立設された両支持板の外側の根元側部に向けて引張り込んで前記面状弾性部材を緊張させた状態として保持することにより行われ、
前記押当工程は、前記フレーム構造体に形成された被取付部位を前記緊張状態として保持されている前記面状弾性部材の他方側の面上に設定された取付部位上に位置合わせした状態で、前記フレーム構造体の背裏側に当て交われる押込具の押し込み操作によって該枠形状のフレーム構造体に形成された被取付部位を前記支持板間に押し込んで前記面状弾性部材の取付部位に押し当てることにより行われることを特徴とするシートの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のシートの製造方法であって、
前記面状弾性部材は、前記支持板間に架け渡された両端側の部位が両支持板の根元側部に向けて斜め方向に引張り込まれた仮引張状態として固定された状態で、前記両支持板の根元側部に向けて斜め方向に仮引張りされた両引張斜面が前記両支持板の両外側から当該両支持板の外側面に向けて押動される押動部材により当該両支持板の外側面に向けて押し込まれる押し込み長さによって、前記取付部位の引張り込み長さが調整されることを特徴とするシートの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−143670(P2007−143670A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−339551(P2005−339551)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(597093894)旭ゴム化工株式会社 (11)