説明

シートカバー

【課題】シートベルトを備えた自動車のリアシートに装着することができ、しかも留め具による連結状態が容易に解除されるのを抑制することができるシートカバーを提供する。
【解決手段】シートカバー11は、座面カバー25と背もたれ面カバー27とが車幅方向Wの側端から少なくともシートベルト21に対応する位置まで互いに分離している分離領域11L,11Rに設けられる連結部71を備えている。連結部71は、座面カバー25を背もたれ面カバー27に対して着脱可能に連結する留め具29と、座面カバー25及び背もたれ面カバー27の一方につながり、かつ座面カバー25と背もたれ面カバー27とに跨がって留め具29を覆う留め具カバー31と、座面カバー25及び背もたれ面カバー27の他方に対して留め具カバー31を着脱可能に接合する接合部33と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のリアシートに装着されるシートカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車のリアシートは、座面を有する座部と、背もたれ面を有する背もたれ部とを備えている。背もたれ部は、座部の後端部から上方に起立している。例えば特許文献1には、自動車のリアシートに装着されるシートカバーが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載のシートカバーは、リアシートの座面を覆う座面カバーと、リアシートの背もたれ面を覆う背もたれ面カバーとを備えている。座面カバーは、背もたれ面カバーに対して線ファスナーによって着脱可能に連結される。特許文献1には、例えばタクシー関連業界などのようにシートカバーを頻繁に交換する必要がある場合であっても、容易、迅速にシートカバーの取り付け及び取り外しができる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平4―40844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているようなシートカバー、すなわち座面カバーと背もたれ面カバーとが線ファスナーによって連結される連結構造を有し、容易、迅速に取り付け及び取り外しができるシートカバーでは、ユーザーの意図に反して線ファスナーが容易に開かれる可能性がある。具体的に、例えば警察車両において被疑者を移送するような場合には、隙間などに証拠品が隠されるのを防止する必要があるため、線ファスナーを容易に開くことができるような連結構造は好ましくない。
【0006】
一方、座面カバーと背もたれ面カバーとが車幅方向全体において一体的に連続し、切れ目のない構造を有するシートカバーであれは、線ファスナーなどの留め具を設ける必要がないので、留め具による連結状態が容易に解除されるという上記のような問題は生じない。しかし、一般に、リアシートにはシートベルトが設けられているので、切れ目のないシートカバーをリアシートに装着すると、シートベルトは、座面及び背もたれ面とともにシートカバーによって覆われてしまう。
【0007】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、シートベルトを備えた自動車のリアシートに装着することができ、しかも留め具による連結状態が容易に解除されるのを抑制することができるシートカバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明のシートカバーは、座面を有する座部と、背もたれ面を有し、前記座部の後端部から上方に起立する背もたれ部と、前記座部の後端部と前記背もたれ部の下端部とが対向する部位から延びるシートベルトと、を備えた自動車のリアシートに装着され、前記座面及び前記背もたれ面を覆うためのものである。前記シートカバーは、前記座面を覆う座面カバーと、前記背もたれ面を覆う背もたれ面カバーと、前記座面カバーと前記背もたれ面カバーとが車幅方向の側端から少なくとも前記シートベルトに対応する位置まで互いに分離している分離領域に設けられる連結部と、を備えている。前記連結部は、前記分離領域において前記座面カバーを前記背もたれ面カバーに対して着脱可能に連結する留め具と、前記分離領域において前記座面カバー及び前記背もたれ面カバーの一方につながり、かつ前記座面カバーと前記背もたれ面カバーとに跨がって前記留め具を覆う留め具カバーと、前記座面カバー及び前記背もたれ面カバーの他方に対して前記留め具カバーを着脱可能に接合する接合部と、を備えている。
【0009】
この構成では、シートカバーには、座面カバーと背もたれ面カバーとが車幅方向の側端から少なくともシートベルトに対応する位置まで互いに分離している分離領域が形成されている。したがって、シートベルトを備えた自動車のリアシートに対してシートカバーを装着することができる。すなわち、シートカバーは、シートベルトを分離領域に挟み込んだ状態でリアシートに装着される。これにより、シートカバーによって座面及び背もたれ面を覆いつつ、シートベルトをシートカバーの外側に出すことができる。
【0010】
また、この構成では、前記連結部を備えているので、留め具による連結状態が容易に解除されるのを阻止することができる。すなわち、この構成では、単に留め具によって座面カバーを背もたれ面カバーに連結するだけでなく、座面カバー及び背もたれ面カバーの一方につながる留め具カバーによって留め具を覆い、さらにこの留め具カバーを座面カバー及び前記背もたれ面カバーの他方に対して接合部によって着脱可能に接合する。したがって、留め具による連結状態を解除するためには、その前に接合部による接合状態を解除し、さらに留め具カバーにより覆われた状態を解除するという複数の段階を経る必要がある。このことは、留め具による連結状態が容易に解除されるのを阻む。
【0011】
(2)前記シートカバーにおいて、前記座面カバー又は前記背もたれ面カバーに接続され、前記シートベルトの周囲を覆うベルトカバーをさらに備えているのが好ましい。
【0012】
この構成では、座面カバー又は背もたれ面カバーに接続されたベルトカバーによってシートベルトの周囲が覆われるので、シートベルトとシートカバーとの間に生じ得る隙間をより小さくすることができる。これにより、ユーザーの意図に反してシートベルトとシートカバーとの隙間に物が差し入れられる可能性を低減できる。
【0013】
(3)前記シートカバーにおいて、前記留め具は、着脱時に把持される引き手を有する線ファスナーであり、前記引き手は、前記留め具によって前記座面カバーが前記背もたれ面カバーに対して連結された状態のときに、前記ベルトカバーと前記シートベルトとの間に収容可能な位置に配置されるのが好ましい。
【0014】
この構成では、線ファスナーの引き手をベルトカバーとシートベルトとの間に収容することができるので、線ファスナーによる連結状態を解除するには、その前にベルトカバーに収容された線ファスナーの引き手をベルトカバーの外に取り出す必要がある。したがって、ユーザーの意図に反して線ファスナーが開かれる可能性をさらに低減できる。
【0015】
(4)前記シートカバーにおいて、前記ベルトカバーは、前記座面カバーに接続されており、前記シートベルトの前面を覆う前面カバー部と、前記前面カバー部における一方の側部から延び、前記シートベルトの後面側に折り返されて前記シートベルトの後面を覆う第1後面カバー部と、前記前面カバー部における他方の側部から延び、前記シートベルトの後面側に折り返されて前記シートベルトの後面を覆う第2後面カバー部と、前記シートベルトの後面側において前記第1後面カバー部と前記第2後面カバー部とを着脱可能に接合するベルトカバー接合部と、を有しているのが好ましい。
【0016】
この構成では、ベルトカバーの前面カバー部が背もたれ面カバーではなく座面カバーに接続されているので、前面カバー部と座面カバーとの間には隙間が形成されない。これにより、物を差し入れ得る隙間をさらに少なくすることができる。
【0017】
また、この構成では、第1後面カバー部と第2後面カバー部とがシートベルトの後面側にそれぞれ折り返され、この後面側においてベルトカバー接合部によって互いに接続される。すなわち、第1後面カバー部と第2後面カバー部との接合構造は、ベルトカバーの前面側から目視しても判別できない。しかも、シートベルトの後面側において第1後面カバー部と第2後面カバー部とが接合されているので、前面側において接合されている場合に比べて接合状態を解除する作業を行いにくい。よって、ユーザーの意図に反してベルトカバーによりシートベルトが覆われた状態が解除されるのを抑制できる。
【0018】
(5)前記シートカバーにおいて、前記分離領域以外の領域において前記座面カバーと前記背もたれ面カバーとが互いに分離できない状態でつながる一体領域を有しているのが好ましい。
【0019】
この構成では、シートベルトをシートカバーの外側に出すために必要な分離領域以外の領域が互いに分離できない状態でつながる一体領域であるので、シートカバーの装着時には、必要最小限の部位(分離領域)を連結部によって連結すればよい。これにより、シートカバーの装着時の作業性を向上させることができる。
【0020】
(6)前記シートカバーにおいて、前記リアシートは、シートベルトを着脱するためのバックルをさらに備えており、前記座面カバー又は前記背もたれ面カバーには、前記バックルを挿通する孔部と、前記孔部の周縁と前記バックルの側面との隙間を埋める隙間埋め部材とが設けられているのが好ましい。
【0021】
この構成では、孔部の周縁とバックルの側面との隙間を埋めることができるので、ユーザーの意図に反してこの隙間に物が入れられるのを抑制できる。これにより、物を差し入れ得る隙間をさらに少なくすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のシートカバーによれば、シートベルトを備えた自動車のリアシートに装着することができ、しかも留め具による連結状態が容易に解除されるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】自動車のリアシートを示す斜視図である。
【図2】前記リアシートの断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るシートカバーを前記リアシートに装着した状態を示す斜視図である。
【図4】前記シートカバーの座面カバーと背もたれ面カバーとを連結部によって連結した状態を示す斜視図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】図4における連結部による連結を解除した状態を示す斜視図である。
【図7】前記シートカバーにおける分離領域を示す平面図である。
【図8】図4のVIII−VIII線断面図である。
【図9】前記リアシートのバックル及びその周辺を示す斜視図である。
【図10】前記バックルを座面カバーの孔部に挿通し、この孔部の周縁と前記バックルの側面との隙間を隙間埋め部材によって埋めた状態を示す斜視図である。
【図11】前記隙間埋め部材を前記バックルの周囲に配設する際の手順を示す斜視図である。
【図12】前記シートカバーの装着手順を示す斜視図である。
【図13】前記シートカバーの装着手順を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係るシートカバー11について図面を参照して説明する。本実施形態に係るシートカバー11は、例えば図1及び図2に示す自動車のリアシート23に装着される。なお、図面において、自動車の車幅方向(左右方向)を符号Wで示し、車幅方向Wの右方を符号Rで示し、車幅方向Wの左方を符号Lで示す。また、前方を符号Fで示し、後方を符号Rで示す。
【0025】
<リアシートの構造>
図1及び図2に示すように、リアシート23は、座面13を有する座部15と、背もたれ面17を有する背もたれ部19と、複数のシートベルト21とを備えている。背もたれ部19は、座部15の後端部15aから上方に起立している。リアシート23は、3人掛けの座席である。座部15及び背もたれ部19は、弾力性を有している。
【0026】
座面13は、座部15の上面であり、車幅方向Wに連続した単一の面によって構成されている。座面13は、3人が同時に着席できる程度の幅(車幅方向Wの長さ)を有している。背もたれ面17は、背もたれ部19の前面であり、車幅方向Wに連続した単一の面によって構成されている。背もたれ面17は、3人が同時にもたれ掛かることができる程度の幅(車幅方向Wの長さ)を有している。
【0027】
複数のシートベルト21は、左側に配置されたシートベルト21Lと、右側に配置されたシートベルト21Rと、これらの間に配置されたシートベルト21Cとを含む。これらのシートベルト21は、車幅方向Wに互いに間隔をあけて配置されている。各シートベルト21は3点式シートベルトである。各シートベルト21にはタングプレート41が取り付けられている。座部15には、3つのタングプレート41がそれぞれ嵌合する3つバックル39が設けられている。
【0028】
各バックル39は、その上面が露出するように座部15に一部が埋設された状態で設けられている。シートベルト21L及びシートベルト21Cのタングプレート41を嵌合させるバックル39,39は、座部15における車幅方向Wの左から約1/3の位置に、互いに隣接して設けられている。シートベルト21Rのタングプレート41を嵌合させるバックル39は、座部15における車幅方向Wの右から約1/3の位置に設けられている。
【0029】
各シートベルト21は、背もたれ部19の下端部19aと上端部19bとの間に架け渡されており、背もたれ面17に沿って上下方向に延びている。各シートベルト21の根元部21bは、座部15の後端部15aと背もたれ部19の下端部19aとの対向部位Pに位置している。
【0030】
各シートベルト21の一端は、対向部位Pの後方Bにおいて、図略の自動車本体に対して固定されている。各シートベルト21は、固定された前記一端から前方Fに延び、対向部位Pの隙間、すなわち座部15の後端部15aと背もたれ部19の下端部19aとの隙間を通じて対向部位Pの前方Fに出されている。
【0031】
各シートベルト21の上部21aは、背もたれ部19の上端部19bに設けられた位置決め部材51によって位置決めされている。位置決め部材51は、シートベルト21を挿通する挿通口を有している。各シートベルト21は、位置決め部材51の挿通口に挿通された状態でスライド可能に位置決め部材51に支持されている。各シートベルト21は、位置決め部材51に対して着脱可能である。
【0032】
各シートベルト21は、上部21aからさらに後方Bに延びており、その端部(前記一端の反対側の端部)は、図略の自動巻取り装置に取り付けられている。これにより、ユーザーは、リアシート23に着席する際にシートベルト21の長さを適宜調節することができる。
【0033】
背もたれ部19は、一対のヘッドレスト53,53と、ヘッドレスト53,53以外の部位である背もたれ本体52とを有している。一対のヘッドレスト53は、背もたれ本体52の上端部の両サイドに設けられている。各ヘッドレスト53は、背もたれ本体52に対して着脱可能である。具体的に、各ヘッドレスト53は、その下面から下方に延びる一対の支持棒54を有している(図3参照)。背もたれ本体52の上端部には、一対の支持棒54が挿入される一対の挿入孔(図示省略)が設けられている。
【0034】
<シートカバーの全体構造>
図3に示すように、シートカバー11は、リアシート23の座面13及び背もたれ面17を覆うためのものである。シートカバー11は、座面13及び背もたれ面17の全体を覆うことができる大きさを有している。図3及び図4に示すように、シートカバー11は、座面13を覆う座面カバー25と、背もたれ面17を覆う背もたれ面カバー27と、複数の連結部71と、複数のベルトカバー35とを備えている。
【0035】
図3及び図7に示すように、シートカバー11は、座面カバー25と背もたれ面カバー27との間に切れ目が設けられている2つの分離領域11L,11Rと、座面カバー25と背もたれ面カバー27とが互いに分離できない状態でつながっている一体領域11Cとを有している。
【0036】
一体領域11Cは、左側のシートベルト21Lの根元部21bに対応する位置から中央のシートベルト21Cの根元部21bに対応する位置までの領域である。分離領域11Lは、左側のシートベルト21Lの根元部21bに対応する位置から車幅方向Wの左側端までの領域である。分離領域11Rは、中央のシートベルト21Cの根元部21bに対応する位置から車幅方向Wの右側端までの領域である。
【0037】
複数の連結部71は、分離領域11L,11Rにおいて、座面カバー25と背もたれ面カバー27とを着脱可能に連結する。連結部71の詳細については後述する。
【0038】
座面カバー25は、座部15の座面13だけでなく、座部15の左右の側面及び前面を覆っている。座面カバー25における後端側の部位には、複数のバックル39に対応する箇所に孔部59が設けられている。具体的に、車幅方向Wの左側において互いに隣接して設けられているバックル39,39に対応する箇所と、車幅方向Wの右側に設けられているバックル39に対応する箇所に孔部59が設けられている。孔部59の周縁とバックル39の側面との隙間を埋める構造については後述する。
【0039】
背もたれ面カバー27は、背もたれ部19の背もたれ面17だけでなく、背もたれ部19の左右の側面及び上面を覆っている。背もたれ面カバー27の上部には、各位置決め部材51に対応する箇所に孔部57が設けられている。各孔部57には、対応する位置決め部材51が嵌まり込む。
【0040】
背もたれ面カバー27の上部には、ヘッドレスト53における一対の支持棒54を挿通する図略の孔部が設けられている。図3に示すように、背もたれ面カバー27の上部は、ヘッドレスト53を背もたれ本体52から外した状態で背もたれ本体52に被せられる。その後、ヘッドレスト53が背もたれ本体52に装着される。これにより、背もたれ面カバー27の上部は、背もたれ本体52とヘッドレスト53によって挟み込まれて安定的に位置決めされる。
【0041】
ベルトカバー35は、左側のシートベルト21Lの根元部21bの周囲を覆うベルトカバー35Lと、中央のシートベルト21Cの根元部21bの周囲を覆うベルトカバー35Cと、右側のシートベルト21Rの根元部21bの周囲を覆うベルトカバー35Rとを含む。ベルトカバー35の詳細については後述する。
【0042】
背もたれ面カバー27の下縁部27aには、各シートベルト21に対応する位置(ベルトカバー35に対応する位置)に、延出片53が設けられている(図7参照)。各延出片53は、その下端部が背もたれ面カバー27の下縁部27aに固定されており、上方に帯状に延びている。各延出片53は、長方形状を有している。後述するように、延出片53は、ベルトカバー35内にシートベルト21とともに収容されることにより、ベルトカバー35と背もたれ面カバー27との間に隙間が生じるのを防止できる。
【0043】
<連結部の構造>
次に、連結部71の構造について説明する。図3に示すように、複数の連結部71は、左側の分離領域11Lを連結する連結部711と、右側の分離領域11Rを連結する一対の連結部712,713とを含む。連結部711、連結部712及び連結部713は、細部を除いて同様の構造を有している。なお、以下において、連結部711、連結部712及び連結部713に共通する説明の場合には、単に連結部71と記載する。
【0044】
図5、図6及び図7に示すように、各連結部71は、留め具29と、留め具カバー31と、接合部33とを備えている。本実施形態では、留め具29は、線ファスナーであり、接合部33は、面ファスナーである。
【0045】
留め具29は、座面カバー25の後縁部25aを背もたれ面カバー27の下縁部27aに対して着脱可能に連結する。この留め具29は、テープ状の一対の基材29a,29aと、各基材29aの縁に沿って設けられた務歯29bと、一対の務歯29b,29bを係合又は係合解除させるためのスライダー29cとを有している。
【0046】
スライダー29cは、着脱時に把持される引き手29dを有している。一方の基材29aは、座面カバー25の後縁部25aに固定されており、他方の基材29aは、背もたれ面カバー27の下縁部27aに固定されている。ユーザーは、引き手29dを把持しスライダー29cを動かすことにより、線ファスナーを自在に開閉できる。
【0047】
留め具カバー31は、座面カバー25の後縁部25aと背もたれ面カバー27の下縁部27aとの間に跨がって留め具29を覆う。留め具カバー31は、車幅方向Wに帯状に延びる細長い形状を有している。留め具カバー31は、背もたれ面カバー27の下縁部27aに対して例えば縫い付けられることによって連結されている。留め具カバー31は、留め具29を覆うことができ、かつ下面に接合部33を取り付けることができる程度の幅を有している。
【0048】
接合部33は、留め具カバー31を座面カバー25の後縁部25aに対して着脱可能に接合する。接合部33は、フック状に起毛されたフック部33aとループ状に密集して起毛されたループ部33bとを有している。例えばフック部33aを留め具カバー31の下面に取り付け、ループ部33bを座面カバー25の後縁部25aの上面に取り付ける。フック部33aとループ部33bとは、互いに押し付けられることにより貼り付く。また、留め具カバー31に所定の力を加えて引っ張ることにより、フック部33aとループ部33bとは引き離される。
【0049】
次に、右側の分離領域11Rの連結構造について詳しく説明する。図6及び図7に示すように、右側の分離領域11Rは、車幅方向Wに直線状に並ぶ連結部712と連結部713により連結される。
【0050】
連結部712は、固定領域712aと、左側自由端領域712bと、右側自由端領域712cとを有している。固定領域712aでは、基材29a,29aが座面カバー25の後縁部25a及び背もたれ面カバー27の下縁部27aにそれぞれ固定されている。
【0051】
左側自由端領域712bは、固定領域712aから基材29a,29aがさらに左方Lに延出されている領域であり、この領域の基材29a,29aは、座面カバー25及び背もたれ面カバー27に固定されていない。左側自由端領域712bは、ベルトカバー35Cに対して前後方向に対向する位置まで延びている。これにより、左側自由端領域712bをベルトカバー35C内に収容することができる。
【0052】
右側自由端領域712cは、固定領域712aから基材29a,29aがさらに右方Rに延出されている領域であり、この領域の基材29a,29aは、座面カバー25及び背もたれ面カバー27に固定されていない。右側自由端領域712cは、ベルトカバー35Rに対して前後方向に対向する位置まで延びている。これにより、右側自由端領域712cをベルトカバー35R内に収容することができる。すなわち、留め具29が閉じられた状態(務歯同士が係合した状態)で引き手29dを含むスライダー29cをベルトカバー35R内に収容できる。
【0053】
連結部713は、上述の連結部712と同様に、固定領域713aと、左側自由端領域713bと、右側自由端領域713cとを有している。左側自由端領域713bは、ベルトカバー35Rに対して前後方向に対向する位置まで延びている。これにより、左側自由端領域713bをベルトカバー35R内に収容することができる。
【0054】
右側自由端領域713cは、座面カバー25の右側端25e及び背もたれ面カバー27の右側端27eよりも右方Rに延出している。この右側自由端領域713cは、留め具29が閉じられた状態で引き手29dを含むスライダー29cとともに、座面カバー25又は背もたれ面カバー27の裏面側に折り返されて座面カバー25又は背もたれ面カバー27とリアシート23との隙間に収容される。
【0055】
<ベルトカバーの構造>
ベルトカバー35は、シートベルト21の根元部21bの周囲を覆う。ベルトカバー35は、前面カバー部36と、第1後面カバー部37と、第2後面カバー部38と、ベルトカバー接合部40とを有している。
【0056】
前面カバー部36は、シートベルト21の根元部21bの前面を覆う。ベルトカバー35は、前面カバー部36の下端部において座面カバー25につながっている。前面カバー部36は、長方形状を有している。前面カバー部36の幅は、シートベルト21の幅と同じ又はこれよりも若干大きい。前面カバー部36の高さは、前面カバー部36の幅よりも大きい。
【0057】
第1後面カバー部37は、前面カバー部36における左側部につながっており、長方形状を有している。第1後面カバー部37は、シートベルト21の根元部21bの後面側に折り返されてシートベルト21の根元部21bの後面を覆う。第2後面カバー部38は、前面カバー部36における右側部につながっており、長方形状を有している。第2後面カバー部38は、シートベルト21の根元部21bの後面側に折り返されてシートベルト21の根元部21bの後面を覆う。第1後面カバー部37の幅及び第2後面カバー部38の幅は、双方を後面側に折り返したときに互いに前後方向に重なるように設計されている。
【0058】
ベルトカバー接合部40は、シートベルト21の根元部21bの後面側において第1後面カバー部37と第2後面カバー部38とを着脱可能に接合する。本実施形態では、ベルトカバー接合部40は、面ファスナーである。ベルトカバー接合部40は、フック状に起毛されたフック部40aとループ状に密集して起毛されたループ部40bとを有している。例えばフック部40aを第1後面カバー部37の表面に取り付け、ループ部40bを第2後面カバー部38の表面に取り付ける。
【0059】
図8は、ベルトカバー35及びその周辺の断面図である。図8に示すように、ベルトカバー35によってシートベルト21の根元部21bの周囲が覆われた状態では、シートベルト21の根元部21bの前方Fに前面カバー部36が配置されている。シートベルト21の根元部21bの後方Bには、延出片53、第1後面カバー部37及び第2後面カバー部38がこの順に配置されている。第1後面カバー部37と第2後面カバー部38の間にはベルトカバー接合部40が位置している。
【0060】
前面カバー部36とシートベルト21との間には、連結部712の右側自由端領域712c及び連結部713の左側自由端領域713bが配置されている。連結部712の右側自由端領域712cには、引き手29dを含むスライダー29cが位置している。すなわち、右側自由端領域712c及び左側自由端領域713bは、各留め具29によって座面カバー25の後縁部25aが背もたれ面カバー27の下縁部27aに対して連結された状態で、ベルトカバー35とシートベルト21の根元部21bとの間に収容されている。
【0061】
<バックル周囲の構造>
図9に示すように、各バックル39は、座部15に設けられている。各バックル39は、その上面が座面13の外に露出するように座部15に埋設された状態で設けられている。各バックル39と座部15との間には隙間Gが形成される。
【0062】
図10に示すように、本実施形態のシートカバー11の座面カバー25には、バックル39を挿通する孔部61と、孔部61の周縁とバックル39の側面との隙間を埋める隙間埋め部材55とが設けられている。隙間埋め部材55は、筒形状を有している。隙間埋め部材55は、例えば布などの材料を用いて形成されている。隙間埋め部材55は、伸縮性を有しているのが好ましい。隙間埋め部材55における一方の開口端部55aは、孔部61の周縁に例えば縫い付けられることにより固定されている。
【0063】
図11は、隙間埋め部材55をバックル39の周囲に配設する際の手順を示す斜視図である。図11に示すように、隙間埋め部材55における他方の開口端部55bを通じてバックル39を隙間埋め部材55の内部に配置する。この状態で、結束ベルト57を隙間埋め部材55を介してバックル39の側面に巻き付ける。これにより、隙間埋め部材55の開口端部55b側の部位がバックル39に固定される。その後、座面カバー25を座面13上に配置することにより、図10に示すように孔部61の周縁とバックル39の側面との隙間が隙間埋め部材55により埋められる。その結果、バックル39と座部15との隙間Gは、隙間埋め部材55によって覆われる。
【0064】
<シートカバーの装着手順>
次に、シートカバー11をリアシート23に装着する手順について説明する。まず、図1に示すリアシート23にシートカバー11をおおまかに被せる。
【0065】
次に、リアシート23の左側のシートベルト21Lの根元部21bを左側の分離領域11Lに挟むようにしてシートベルト21Lを背もたれ面カバー27の外側(前方)に出す。同様に、リアシート23の中央のシートベルト21Cの根元部21b及び右側のシートベルト21Rの根元部21bを右側の分離領域11Rに挟むようにしてシートベルト21C,21Rを背もたれ面カバー27の外側(前方)に出す。
【0066】
次に、分離領域11Rにおいて、座面カバー25と背もたれ面カバー27とを連結部712,713により連結する。具体的に、まず、留め具29,29のスライダー29cを移動させて座面カバー25の後縁部25aと背もたれ面カバー27の下縁部27aと連結する(図12参照)。
【0067】
その後、ベルトカバー35C内に左側自由端領域712bを収容した状態でベルトカバー35Cをシートベルト21Cの根元部21bに巻き付けて第1後面カバー部37と第2後面カバー部38とをベルトカバー接合部40により接合する。同様に、ベルトカバー35R内に右側自由端領域712c及び左側自由端領域713bを収容した状態でベルトカバー35Rをシートベルト21Rの根元部21bに巻き付けて第1後面カバー部37と第2後面カバー部38とをベルトカバー接合部40により接合する(図13参照)。右側自由端領域713cは、座面カバー25又は背もたれ面カバー27の裏面側に折り返して座面カバー25又は背もたれ面カバー27とリアシート23との隙間に収容する。
【0068】
次に、各留め具カバー31を下方に倒すとともに下方に押圧して各留め具カバー31と座面カバー25とを接合部33により接合する(図4参照)。
【0069】
分離領域11Lにおいても上記と同様にして座面カバー25と背もたれ面カバー27とを連結部711により連結する。以上により、シートカバーの装着が完了する。なお、隙間埋め部材55をバックル39の周囲に配設する際の手順は、上述した通りであるので説明を省略する。
【0070】
<シートカバーの取り外し手順>
リアシート23に装着されたシートカバー11を取り外す手順は、上記した装着手順のおおよそ逆の流れとなる。
【0071】
まず、各ベルトカバー35において、シートベルト21の後面側で互いに接合されている第1後面カバー部37と第2後面カバー部38との接合を解除する。この接合を解除するには、作業者は、シートベルト21の後面側に手をまわして第1後面カバー部37と第2後面カバー部38とを両サイドに引き離す必要がある。
【0072】
次に、ベルトカバー35内に収容されている自由端領域をベルトカバー35の外に出す。次に、各留め具カバー31を上方に引き上げて各留め具カバー31と座面カバー25との接合を解除する。
【0073】
次に、各留め具29のスライダー29cを移動させて座面カバー25の後縁部25aと背もたれ面カバー27の下縁部27aとの連結を解除する。この解除動作のときには、留め具カバー31を上方に引き上げた状態を維持するために、留め具カバー31を支えておく必要がある。留め具カバー31は、支えがなければ重力の方向、すなわち下方に倒れて再び接合部33によって座面カバー25に接合されてしまうからである。
【0074】
上記のように各連結部における連結状態が解除されることにより、シートカバー11をリアシート23から取り外すことができる。
【0075】
以上のように留め具29による連結状態を解除するためには、その前に上記のような複数の段階を経る必要がある。このことは、留め具29による連結状態が容易に解除されるのを阻む。
【0076】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。
【0077】
例えば、前記実施形態では、シートカバーがベルトカバーを備えている場合を例示したが、これに限定されない。ベルトカバーは省略することもできる。
【0078】
前記実施形態では、留め具カバーが背もたれ面カバーの下縁部に対して取り外しできない状態でつながっている場合を例示したが、これに限定されない。例えば、留め具カバーは、座面カバーの後縁部に対して取り外しできない状態でつながっていてもよく、この場合には、接合部は、背もたれ面カバーの下縁部に対して留め具カバーを着脱可能に接合する。また、留め具カバーは、座面カバー及び背もたれ面カバーのいずれにも固定されていなくてもよく、座面カバー及び背もたれ面カバーとは別体の部材であってもよい。この場合、留め具カバーは、座面カバーに接合部によって接合されるとともに、背もたれ面カバーにも接合部によって接合される。
【0079】
前記実施形態では、線ファスナーの引き手がベルトカバーとシートベルトの根元部との間に収容される場合を例示したが、これに限定されない。
【0080】
前記実施形態では、シートカバー11は、座面カバー25と背もたれ面カバー27とが互いに分離できない状態でつながっている一体領域11Cを有している場合を例示したが、これに限定されない。座面カバー25と背もたれ面カバー27とは、車幅方向W全体にわたって分離できる構造であってもよい。
【0081】
前記実施形態では、バックルを挿通する孔部と、孔部の周縁と前記バックルの側面との隙間を埋める隙間埋め部材とが座面カバーに設けられている場合を例示したが、これらは、背もたれ面カバーに設けられていてもよい。また、隙間埋め部材は、省略することもできる。
【0082】
前記実施形態では、留め具が線ファスナーであり、接合部及びベルトカバー接合部が面ファスナーである場合を例示したが、これに限定されない。各留め具及び各接合部としては、線ファスナー、面ファスナーなどの種々の接続手段を採用することができる。具体的に、例えば、複数のボタンとこれらをはめる複数の穴とを有する接続手段、複数の凸部と複数の凹部とが互いに嵌合する接続手段などが例示できる。
【符号の説明】
【0083】
11 シートカバー
13 座面
15 座部
15a 後端部
17 背もたれ面
19 背もたれ部
19a 下端部
21 シートベルト
21L 左側のシートベルト
21R 右側のシートベルト
21C 中央のシートベルト
21b シートベルトの根元部
23 リアシート
25 座面カバー
25a 座面カバーの後縁部
27 背もたれ面カバー
27a 背もたれ面カバーの下縁部
29 留め具
29d 引き手
31 留め具カバー
33 接合部
35 ベルトカバー
36 前面カバー部
37 第1後面カバー部
38 第2後面カバー部
39 バックル
40 ベルトカバー接合部
41 タングプレート
71 連結部
711 左側の分離領域を連結する連結部
712,713 右側の分離領域を連結する一対の連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座面を有する座部と、背もたれ面を有し、前記座部の後端部から上方に起立する背もたれ部と、前記座部の後端部と前記背もたれ部の下端部とが対向する部位から延びるシートベルトと、を備えた自動車のリアシートに装着され、前記座面及び前記背もたれ面を覆うためのシートカバーであって、
前記座面を覆う座面カバーと、
前記背もたれ面を覆う背もたれ面カバーと、
前記座面カバーと前記背もたれ面カバーとが車幅方向の側端から少なくとも前記シートベルトに対応する位置まで互いに分離している分離領域に設けられる連結部と、を備え、
前記連結部は、
前記分離領域において前記座面カバーを前記背もたれ面カバーに対して着脱可能に連結する留め具と、
前記分離領域において前記座面カバー及び前記背もたれ面カバーの一方につながり、かつ前記座面カバーと前記背もたれ面カバーとに跨がって前記留め具を覆う留め具カバーと、
前記座面カバー及び前記背もたれ面カバーの他方に対して前記留め具カバーを着脱可能に接合する接合部と、を備えているシートカバー。
【請求項2】
前記座面カバー又は前記背もたれ面カバーに接続され、前記シートベルトの周囲を覆うベルトカバーをさらに備えている、請求項1に記載のシートカバー。
【請求項3】
前記留め具は、着脱時に把持される引き手を有する線ファスナーであり、
前記引き手は、前記留め具によって前記座面カバーが前記背もたれ面カバーに対して連結された状態のときに、前記ベルトカバーと前記シートベルトとの間に収容可能な位置に配置される、請求項2に記載のシートカバー。
【請求項4】
前記ベルトカバーは、
前記座面カバーに接続されており、前記シートベルトの前面を覆う前面カバー部と、
前記前面カバー部における一方の側部から延び、前記シートベルトの後面側に折り返されて前記シートベルトの後面を覆う第1後面カバー部と、
前記前面カバー部における他方の側部から延び、前記シートベルトの後面側に折り返されて前記シートベルトの後面を覆う第2後面カバー部と、
前記シートベルトの後面側において前記第1後面カバー部と前記第2後面カバー部とを着脱可能に接合するベルトカバー接合部と、を有している、請求項2又は3に記載のシートカバー。
【請求項5】
前記分離領域以外の領域において前記座面カバーと前記背もたれ面カバーとが互いに分離できない状態でつながる一体領域を有している、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシートカバー。
【請求項6】
前記リアシートは、シートベルトを着脱するためのバックルをさらに備えており、
前記座面カバー又は前記背もたれ面カバーには、前記バックルを挿通する孔部と、前記孔部の周縁と前記バックルの側面との隙間を埋める隙間埋め部材とが設けられている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシートカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−22379(P2013−22379A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162404(P2011−162404)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(504251551)株式会社コイズミ (5)
【Fターム(参考)】