説明

シートパッド及びその製造方法

【課題】左右方向溝部の周辺部に成形不良が発生することを防止することが可能なシートパッドと、その製造方法を提供する。
【解決手段】シートパッド1の着座者対峙面に、表皮材の一部を収容するための溝部7が設けられている。溝部7は、少なくとも一部が、着座者対峙面の左右方向に延在した左右方向溝部7aとなっている。シートパッド1は、発泡成形用金型内において、着座者対峙面を下向きとされ、且つ該着座者対峙面の左右方向と直交方向の一端側を他端側よりも低位とされて発泡成形されたものである。着座者対峙面の左右方向溝部7aよりも該一端側に、該左右方向溝部7aと対向するように凹部10が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも着座者対峙面に表皮材が装着され、該表皮材の一部が、該着座者対峙面に設けられた溝部に収容されるシートパッドに係り、特に発泡成形用金型内において、該着座者対峙面を下向きとされ、且つ該着座者対峙面の左右方向と直交方向の一端側を他端側よりも低位とされて発泡成形されたシートパッドに関する。また、本発明は、このシートパッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートや家屋内に設置されるソファー等のシートは、一般的に、軟質ポリウレタンフォーム又は半硬質ポリウレタンフォーム等の発泡合成樹脂よりなるシートパッドと、このシートパッドを支持するシートフレームとを有している。このシートパッドは、表皮材によって外面が被覆され、シートフレームに取り付けられる。
【0003】
シートパッドの着座者対峙面に溝部を設け、表皮材の一部をこの溝部に収容して意匠性を高めることが行われている(特開2008−073441)。
【0004】
このようなシートパッド及びその製造方法の一例を第7,8図参照して説明する。なお、第7,8図においては、シートパッドとして、シートの背もたれ部を構成するバックパッドが例示されている。第7図(a)は、従来例に係るシートパッド(バックパッド)101の正面図であり、第7図(b)は第7図(a)のB−B線に沿う断面図であり、第7図(c)は第7図(b)のC部分の拡大図である。第8図(a)は、このシートパッド101を製造するための発泡成形用金型(以下、金型と略すことがある。)130の縦断面図であり、第8図(b),(c)はそれぞれ第8図(a)のB部分の拡大図であり、第8図(b)はウレタン原液の発泡途中時を示し、第8図(c)は発泡完了後を示している。以下、上下方向、左右方向及び前後方向は、このシートパッド101を用いて構成されたシートの着座者にとっての上下方向、左右方向及び前後方向と一致するものとする。
【0005】
シートパッド101は、ポリウレタンフォーム等の発泡合成樹脂よりなるシートパッド本体102と、該シートパッド本体102の後面に沿って配設された、不織布等よりなる面状の補強材120とを備えている。補強材120は、シートパッド本体102と一体成形により一体化されている。このシートパッド101は、前面(着座者対峙面)側に表皮材(図示略)が装着され、シートのバックフレーム(図示略)に取り付けられるものとなっている。
【0006】
第7図(b)の通り、シートパッド本体102は、バックフレームの前面側を覆う主板部103と、該主板部103の上端部から後方へ延出した延出部104と、該延出部104の後端から下方へ張り出した張出部105とを有している。即ち、これらの延出部104及び張出部105は、主板部103の上端部から該主板部103の後面側へ回り込むように延出している。これらの主板部3、延出部4及び張出部5によって囲まれた空間は、バックフレームの上辺が係合する凹所106となっている。この凹所106は、下方に向かって開放している。
【0007】
主板部103の前面には、前記表皮材の一部を収容する(表皮材を意匠線に沿って主板部103の肉厚方向の内部側に吊り込む)ための溝部107が設けられている。第7図(a)の通り、溝部107には、左右方向に延在した左右方向溝部107aと、上下方向に延在した上下方向溝部107b,107cとがある。この従来例では、上下方向溝部107b,107cは、左右方向に間隔をおいて配置されており、左右方向溝部107aは、これらの上下方向溝部107b,107c同士の間に配置されている。左右方向溝部107aの左端及び右端は、各上下方向溝部107b,107cの延在方向の途中部に連なっている。
【0008】
第7図(c)の通り、溝部107の底面に沿って、主板部103中に、表皮材の裏面に取り付けられたフック等の係止具(図示略)を係止させるためのワイヤ108が埋設されている。第7図(a),(c)の通り、溝部107の底面には、該溝部107の延在方向に間隔をおいて、複数個の係止具係止操作用の凹穴109が設けられている。表皮材の裏面には、これらの凹穴109と対応する位置関係にて係止具が配設されている。第7図(c)の通り、これらの凹穴109の底面にそれぞれワイヤ108が露出している。
【0009】
このシートパッド本体102を発泡成形するための金型130は、上型131と、下型132と、該上型131にセットされた中型133とを有している。この金型130内において、シートパッド本体102は、前面を下向きにして発泡成形される。即ち、下型132のキャビティ底面によりシートパッド本体102の前面側が成形され、上型131及び中型133のキャビティ面によりシートパッド本体102の後面側が成形される。以下、便宜上、金型130の各部の方向をシートパッド本体102の上下方向、左右方向及び前後方向に対応させて該金型130の各部の構成について説明する。中型133の上端面(第8図(a)の左端面)からは、前記凹所106を形成するための突出部134が突設されている。下型132のキャビティ底面と中型133の前面との間のキャビティ空間135によりシートパッド本体102の主板部103が成形され、突出部134の突出方向の先端面と下型132のキャビティ側面との間のキャビティ空間136により延出部104が成形され、該突出部134の後面と上型131のキャビティ天井面との間のキャビティ空間137により張出部105が成形される。
【0010】
この従来例のように、シートパッド本体102が、主板部103の上端から該主板部103の後面側に回り込むように延出した延出部104及び張出部105を有している場合、第8図(a)の通り、下型132のキャビティ底面を、該主板部103の上端側(第8図(a)の左端側)が下端側よりも低位となるように傾斜させる。さらに、このような金型130を用いて、下型132の、該主板部103の下端側(即ちキャビティ底面の坂上側)からウレタン原液を流す。
【0011】
このように構成することにより、金型130内に注入されたウレタン原液がキャビティ底面上を主板部103の上端側(即ちキャビティ底面の坂下側)に向って流れ落ちていくので、キャビティ空間135内で発泡したウレタンがシートパッド本体102の上端側からキャビティ空間136,137に回り込み易く、且つシートパッド本体102の下端部に、ウレタンの充填が不十分なことによる欠肉が生じにくくなる。
【0012】
この下型132のキャビティ底面には、溝部107を形成するための溝部形成用凸条138が設けられている。この溝部形成用凸条138のうち左右方向溝部107aに対応する部分は、キャビティ底面を左右方向に横切るように延在している。溝部形成用凸条138の上端部からは、凹穴109を形成するための複数個の凹穴形成用突起140が突設されている。各凹穴形成用突起140の上端部には、ワイヤ108を係止するためのマグネット141が埋設されている。
【0013】
この金型130を用いてシートパッド101を製造する場合、まず、上型131と下型132とを型開きし、中型133に補強材120を被着させる。また、ワイヤ108を、各凹穴形成用突起140の上端面に跨って延在するように配設し、凹穴形成用突起140の上端面のマグネット141に吸着させる。次に、金型130内にウレタン原液を注入する。この際、ウレタン原液は、下型132のキャビティ底面の左右両サイド及び主板部103の下端側(即ちキャビティ底面の坂上側)に散布される。これにより、キャビティ底面の坂上側に散布されたウレタン原液が坂下側へ流れ落ちるため、キャビティ底面にウレタン原液が万遍なく広がるようになる。その際、このウレタン原液は、キャビティ底面の坂の途中で該キャビティ底面を左右方向に横切る溝部形成用凸条138を乗り越えて坂下側へ流れ落ちる。その後、このウレタン原液は、キャビティ空間135,136,137をこの順に充填するように発泡していく。これにより、シートパッド本体102の主板部103、延出部104及び張出部105が一体に形成される。また、これらの裏面に補強材120が一体化される。この発泡ウレタンが硬化した後、上型131と下型132とを型開きしてシートパッド本体102を脱型する。その後、必要に応じバリ取り等の仕上げ作業を行うことにより、シートパッド101が完成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−073441
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記シートパッド101の発泡成形工程においては、金型130内に注入されたウレタン原液は、第8図(b)の通り、キャビティ底面の坂の途中で溝部形成用凸条138を乗り越えて坂下側に流れていく。この際、ウレタン原液は、該凸条138の坂下側に十分に回り込まないうちに坂下側へ流れてしまうおそれがある。この場合、第8図(c)の通り、成形されたシートパッド101の左右方向溝部107aの上縁側にボイドB等の成形不良が発生するおそれがある。
【0016】
本発明は、左右方向溝部の周辺部に成形不良が発生することを防止することが可能なシートパッドと、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明(請求項1)のシートパッドは、発泡成形用金型内において発泡成形された発泡成形体よりなり、少なくとも着座者対峙面に表皮材が装着されるシートパッドであって、該着座者対峙面に、該表皮材の一部を収容するための溝部が設けられており、該溝部は、少なくとも一部が、該着座者対峙面の左右方向に延在した左右方向溝部となっており、該シートパッドは、前記発泡成形用金型内において、該着座者対峙面を下向きとされ、且つ該着座者対峙面の左右方向と直交方向の一端側を他端側よりも低位とされて発泡成形されたものであるシートパッドにおいて、該着座者対峙面の該左右方向溝部よりも該一端側に、該左右方向溝部と対向するように凹部が設けられていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項2のシートパッドは、請求項1において、前記凹部は、前記左右方向溝部と平行方向に延在した溝状であることを特徴とするものである。
【0019】
請求項3のシートパッドは、請求項1又は2において、前記左右方向溝部の延在方向に間隔をおいて複数個の凹部が設けられていることを特徴とするものである。
【0020】
請求項4のシートパッドは、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記溝部の底面に、前記表皮材の係止具が係止される係止部材が埋設されており、該溝部の底面には、該係止具を該係止部材に係止させるための係止具係止操作用の凹穴が設けられており、前記凹部は、該凹穴に対向するように配置されていることを特徴とするものである。
【0021】
請求項5のシートパッドは、請求項1ないし4のいずれか1項において、前記シートパッドはバックパッドであり、該バックパッドは、その上端部から前記着座者対峙面と反対側へ回り込むように延出した回り込み部を有しており、該バックパッドは、前記発泡成形用金型内において、該着座者対峙面の上端側を下端側よりも低位とされて発泡成形されたものであり、該着座者対峙面の前記左右方向溝部よりも該上端側に前記凹部が設けられていることを特徴とするものである。
【0022】
本発明(請求項6)のシートパッドの製造方法は、発泡成形用金型を用いて請求項1ないし5のいずれか1項に記載のシートパッドを製造する方法であって、該発泡成形用金型は、該シートパッドが着座者対峙面を下向きにして成形されるように構成されており、且つ該発泡成形用金型内のキャビティ底面は、該着座者対峙面の前記一端側が他端側よりも低位となるように傾斜しており、該キャビティ底面に、前記溝部を形成するための凸条が設けられており、該凸条の少なくとも一部は、該着座者対峙面の左右方向に延在した左右方向凸条となっており、該キャビティ底面の該左右方向凸条よりも前記一端側に、該左右方向凸条と対向するように、前記凹部を形成するための凸部が設けられていることを特徴とするものである。
【0023】
請求項7のシートパッドの製造方法は、請求項6において、前記キャビティ底面からの前記凸部の起立高さは、該キャビティ底面からの前記凸条の起立高さよりも小さいことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明(請求項1)のシートパッドにあっては、着座者対峙面のうち、シートパッドの発泡成形時に溝部よりもキャビティ底面の坂下側となる位置に、この溝部と対向するように凹部が設けられている。そのため、このシートパッドの発泡成形時には、金型内に注入されたウレタン原液は、キャビティ底面を下っていく途中で左右方向溝部を乗り越えた後、その一部がこの凹部に堰き止められるようにして該左右方向溝部の坂下側に留まる。そこでウレタン原液が発泡、膨張しつつ、左右方向溝部の前後の角部の空気を追い出すため、左右方向溝部の坂下側にも十分に発泡ウレタンが充填されるようになる。これにより、成形後のシートパッドの左右方向溝部の周辺部にボイド等の成形不良が発生することを防止することが可能である。
【0025】
請求項2の通り、凹部は、左右方向溝部と平行方向に延在した溝状であることが好ましい。このように構成することにより、シートパッドに表皮材を装着した状態において、該表皮材の表面に凹部の跡(凹部に重なった部分の凹み等)が殆ど又は全く現れないものとすることができる。
【0026】
請求項3の通り、左右方向溝部の延在方向に間隔をおいて複数個の凹部が設けられてもよい。このように構成することにより、左右方向溝部が長いものであっても、該左右方向溝部の周囲部に成形不良が発生することを防止することができる。
【0027】
溝部の底面に係止具係止操作用の凹穴が設けられている場合、この凹穴は、溝部よりさらに深くなっているので、シートパッドの発泡成形時において、この凹穴の坂下側には、よりウレタン原液が回り込みにくいものとなっている。そのため、請求項4の通り、凹部は、この凹穴に対向するように配置されていることが好ましい。このように構成することにより、凹穴の該坂下側にも十分に発泡ウレタンを充填することができる。
【0028】
請求項5の通り、本発明は、上端部から着座者対峙面と反対側へ回り込むように延出した回り込み部を有したバックパッドに好適である。このバックパッドは、発泡成形用金型内において、着座者対峙面の上端側を下端側よりも低位とされて発泡成形される。そのため、この着座者対峙面の左右方向溝部よりも上端側に凹部を設けることにより、該左右方向溝部の周囲部に成形不良が発生することを防止することができる。
【0029】
本発明(請求項6)のシートパッドの製造方法にあっては、金型内のキャビティ底面に、シートパッドの左右方向溝部を形成するための左右方向凸条が設けられると共に、この左右方向凸条よりもキャビティ底面の坂下側に、シートパッドの凹部を形成するための凸部が設けられているので、金型内に注入されたウレタン原液は、キャビティ底面を下っていく途中で左右方向凸条を乗り越えた後、その一部がこの凸部に堰き止められるようにして該左右方向凸条の坂下側に留まる。そのため、左右方向凸条の坂下側にも十分に発泡ウレタンが充填されるようになる。これにより、成形後のシートパッドの左右方向溝部の周辺部にボイド等の成形不良が発生することを防止することが可能であり、高品質なシートパッドを歩留まり良く製造することが可能となる。
【0030】
請求項7の通り、凸部の高さを凸条よりも低くすることにより、凸条を乗り越えたウレタン原液は、過度に凸部によって堰き止められることなく、比較的容易に該凸部も乗り越えてキャビティ底面の坂下側へ流れていくことができる。これにより、キャビティ底面の坂下側にも十分にウレタン原液が供給される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1の実施の形態に係るシートパッドの構成図である。
【図2】図1のシートパッドを製造するための発泡成形用金型の構成図である。
【図3】図2の発泡成形用金型にウレタン原液を注入する際の注入ノズルの移動経路を示す下型の平面図である。
【図4】図1のシートパッドの発泡成形工程の説明図である。
【図5】第2の実施の形態に係るシートパッド及びその発泡成形用金型の構成図である。
【図6】第3の実施の形態に係るシートパッド及びその発泡成形用金型の構成図である。
【図7】従来例に係る実施の形態に係るシートパッドの構成図である。
【図8】図7のシートパッドを製造するための発泡成形用金型の構成図及びこの発泡成形用金型を用いたシートパッドの発泡成形工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、この実施の形態では、シートパッドとして、車両用シートの背もたれ部を構成するバックパッド及びその製造方法を例示しているが、本発明は、車両用シートの腰掛部を構成するクッションパッド及びその製造方法にも適用可能である。また、本発明は、車両用以外の各種シートを構成するためのシートパッド及びその製造方法にも適用可能である。
【0033】
[第1の実施の形態]
第1図(a)は、第1の実施の形態に係るシートパッドの正面図であり、第1図(b)は第1図(a)のB−B線に沿う断面図であり、第1図(c)は第1図(b)のC部分の拡大図であり、第1図(d)は第1図(a)のD−D線に沿う断面図である。第2図(a)は、このシートパッドを製造するための発泡成形用金型の縦断面図であり、第2図(b)は第2図(a)のB部分の拡大図であり、第2図(c)は第2図(b)のC−C線に沿う断面図である。第3図(a),(b)は、それぞれ、この金型内にウレタン原液を注入する際の注入ノズルの移動経路を示す下型の平面図である。第4図は、シートパッドの発泡成形工程の説明図であり、第4図(a)はウレタン原液注入直後を示し、第4図(b)はウレタン原液の発泡途中時を示し、第4図(c)は発泡完了後を示している。なお、第4図(a)は第2図(a)と同様部分の断面図であり、第4図(b),(c)はそれぞれ第2図(b)と同様部分の断面図である。以下、上下方向、左右方向及び前後方向は、このシートパッドを用いて構成されたシートの着座者にとっての上下方向、左右方向及び前後方向と一致するものとする。
【0034】
この実施の形態では、シートパッド1は、車両用シートの背もたれ部を構成するバックパッドである。このシートパッド1は、ポリウレタンフォーム等の発泡合成樹脂よりなるシートパッド本体2と、該シートパッド本体2の後面(着座者対峙面と反対側の面)に沿って配設された面状の補強材20とを備えている。補強材20は、シートパッド本体2と一体成形により一体化されている。補強材20を構成する材料としては、例えば不織布が好適であるが、不織布以外の材料(例えばフェルトや織布、編布等)により構成されてもよい。補強材20は省略されてもよい。このシートパッド本体2を発泡成形するための金型30の構成、並びにこの金型30を用いたシートパッド1の製造方法の詳細については後述する。このシートパッド1は、表皮材(図示略)によって少なくとも前面(着座者対峙面)が被覆され、シートのバックフレーム(図示略)に取り付けられるものとなっている。
【0035】
第1図(a),(b)の通り、シートパッド本体2は、バックフレームの前面側を覆う主板部3と、該主板部3の後面の上辺から後方へ延出した延出部4と、該延出部4の後端から下方へ張り出した張出部5とを有している。これらの主板部3、延出部4及び張出部5は一体的に形成されている。これらの主板部3、延出部4及び張出部5によって囲まれた空間は、バックフレームの上辺が係合する凹所6となっている。この凹所6は、下方に向かって開放している。この実施の形態では、該延出部4及び張出部5が、主板部3の上端部から該主板部3の後面側へ回り込むように延出した回り込み部となっている。なお、シートパッド本体2の主要部分の構成はこれに限定されない。
【0036】
この実施の形態では、第1図(a)の通り、主板部3は、着座者の背中の上部に当る背上部3aと、背中の下部に当る背下部3bと、該背上部3a及び背下部3bの左右にそれぞれ設けられたサイドサポート部3c,3dとを有している。各サイドサポート部3c,3dは、それぞれ、該背上部3aの上端側から背下部3bの下端側まで連続して形成されている。この実施の形態では、該背上部3a及び背下部3bは、共通のウレタン原液により一連一体に成形されたものとなっている。なお、これらの背上部3a、背下部3b及びサイドサポート部3c,3dは、共通のウレタン原液によって成形されてもよく、異なるウレタン原液によって成形されてもよい。
【0037】
この主板部3の前面には、前記表皮材の一部を収容する(表皮材を意匠線に沿って主板部3の肉厚方向の内部側に吊り込む)ための溝部7が設けられている。この実施の形態では、第1図(a)の通り、溝部7には、背上部3aと背下部3bとの境界に沿って左右方向に延在する左右方向溝部7aと、該背上部3a及び背下部3bと各サイドサポート部3c,3dとの境界に沿ってそれぞれ上下方向に延在した上下方向溝部7b,7cとがある。上下方向溝部7b,7cは、それぞれ主板部3の上端側から下端側まで連続している。左右方向溝部7aの左端及び右端は、それぞれ、左右の上下方向溝部7b,7cの上下方向の途中部に連なっている。なお、溝部7の配置はこれに限定されない。これらの溝部7(7a〜7c)の底面に沿って、主板部3中に、表皮材の裏面に取り付けられたフック等の係止具(図示略)を係止させるためのワイヤ8が埋設されている。なお、表皮材の係止具を係止させるための係止部材はワイヤに限定されるものではなく、例えば係止具が係合する孔等が設けられたプレートなど、種々の構成のものを採用することができる。
【0038】
第1図(a),(c),(d)の通り、溝部7の底面には、該溝部7の延在方向に間隔をおいて、複数個の係止具係止操作用の凹穴9が設けられている。表皮材の裏面には、これらの凹穴9と対応する位置関係にて該凹穴9と同数個の係止具が配設されている。第1図(c)の通り、これらの凹穴9の底面にそれぞれワイヤ8が露出している。(あるいはワイヤ8は、これらの凹穴9の底面に透けて見える程度の深さに埋設されている。)この実施の形態では、第1図(c),(d)に示すように、各凹穴9は、当該凹穴9が臨む溝部7(7a,7b又は7c)の延在方向と直交方向の断面内において、奥側ほど(主板部3の後面に接近するほど)深さ方向と直交方向の幅(以下、単に幅という。)が大きくなる形状となっている。
【0039】
一般的に、主板部3の前面からの溝部7の深さdは15〜60mm特に40〜50mm程度とされ、幅Wは5〜15mm特に8〜12mm程度とされる。主板部3の前面からの各凹穴9の深さdは20〜65mm特に45〜55mm程度とされる。左右方向溝部7aの左右方向の長さ(即ち左右の上下方向溝部7b,7c同士の間隔)Lは300〜600mm特に400〜500mm程度とされる。各凹穴9の最大幅(凹穴9の最奥部の幅)Wは10〜30mm特に15〜20mm程度とされる。各凹穴9の入口側の幅は、溝部7の幅dと同等であってもよく、異なっていてもよい。溝部7の延在方向における各凹穴9の長さLは20〜80mm特に30〜50mm程度とされる。同一の溝部7a,7b又は7cにおいて隣り合う凹穴9同士の間隔Kは50〜200mm特に100〜150mm程度とされる。左右方向溝部7aには、通常、1〜5個特に3個程度の凹穴9が設けられる。
【0040】
この実施の形態では、左右方向溝部7aの上側に、該左右方向溝部7aと対向するように、背上部3aの前面から主板部3の肉厚方向の内部側へ凹陥した凹部10が設けられている。この実施の形態では、該凹部10は、左右方向に延在した溝状となっている。この実施の形態では、1個の凹部10が左右方向溝部7aの延在方向の中間付近に対向するように配設されている。
【0041】
この凹部10は、左右方向溝部7aに設けられた凹穴9と対向するように設けられていることが好ましい。この実施の形態では、第1図(a)の通り、左右方向溝部7aには、その延在方向に間隔をおいて3個の凹穴9が設けられており、凹部10は、この左右方向溝部7aの延在方向の中央部の凹穴9に対向するように配設されている。なお、凹部10の個数及び配置はこれに限定されない。例えば、凹部10は、左右方向溝部7aの延在方向の中央部以外の凹穴9にも対向するように配設されてもよい。
【0042】
この凹部10の左右方向の長さLは、左右方向溝部7aの長さLの5〜25%特に10〜15%程度であり、とりわけ50mm程度であることが好ましい。また、凹部10は、上下方向溝部7b,7cと連続していないことが、左右方向溝部7aと上下方向溝部7b,7cとの交差部の欠陥を防止する上で好ましい。背上部3aの前面からの凹部10の深さd3は、前述の凹穴9の深さd特に溝部7の深さdよりも小さいことが好ましく、具体的には、この凹部10の深さdは10〜60mm特に20〜40mm程度であることが好ましい。この凹部10の上下方向の幅W3は2〜10mm特に3mm程度であることが好ましい。この幅W3が狭すぎると、脱型時にパッドに破れが発生し易く、また、広すぎると、シートパッド1に表皮材を装着した状態において、該表皮材の表面に凹部10の跡(凹部10に重なった部分の凹み等)が現れ易いものとなり易い。
【0043】
この凹部10と左右方向溝部7aとの間隔(凹部10の深さ方向と直交方向の間隔。以下、同様。)Sは20〜80mm特に40〜60mm程度であることが好ましい。この間隔Sが近すぎると、脱型時にパッドに破れが発生し易く、また、広すぎると本発明の効果を充分に得ることができない。
【0044】
この実施の形態では、凹穴9は、奥側ほど幅が大きくなる形状となっているため、第1図(c)の通り、凹部10と左右方向溝部7aの延在方向の中央部の凹穴9との間の部分は、アンダーカット形状となっている。この左右方向溝部7aの延在方向の中央部の凹穴9のうち最も高位となっている部分(この実施の形態では、凹穴9の底面の上端付近)と凹部10との間隔Sは30〜80mm特に50〜70mm程度であることが好ましい。このように構成することにより、脱型時には、この凹部10と凹穴9との間のアンダーカット形状部を比較的容易に後述の金型30の凸条38aと凸部39との間から抜き出すことが可能となる。
【0045】
次に、シートパッド本体2を成形するための金型30について説明する。第2図(a)の通り、この実施の形態では、金型30は、上型31と、下型32と、該上型31にセットされた中型33とを有している。この金型30内において、シートパッド本体2は、前面を下向きにして発泡成形される。即ち、下型32のキャビティ底面によりシートパッド本体2の前面側が成形され、上型31及び中型33のキャビティ天井面によりシートパッド本体2の後面側が成形される。以下、便宜上、金型30の各部の方向をシートパッド本体2の上下方向、左右方向及び前後方向に対応させて該金型30の各部の構成について説明する。中型33の上端面(第2図(a)の左端面)からは、前記凹所6を形成するための突出部34が突設されている。下型32のキャビティ底面と中型33の前面との間のキャビティ空間35によりシートパッド本体2の主板部3が成形され、突出部34の突出方向の先端面と下型32のキャビティ側面との間のキャビティ空間36により延出部4が成形され、該突出部34の後面と上型31のキャビティ天井面との間のキャビティ空間37により張出部5が成形される。
【0046】
第2図(a)の通り、下型32のキャビティ底面は、シートパッド本体2の上端側(第2図(a)の左端側)ほど低位となるように傾斜している。このように構成することにより、金型30内に注入されたウレタン原液がキャビティ底面上をシートパッド本体2の上端側(即ちキャビティ底面の坂下側)へ流れ落ちていくので、キャビティ空間35内で発泡したウレタンがシートパッド本体2の上端側からキャビティ空間36,37に回り込み易くなる。
【0047】
この下型32のキャビティ底面に、溝部7を形成するための溝部形成用凸条38と、凹部10を形成するための凹部形成用凸部39とが設けられている。凸条38には、左右方向溝部7aを形成するための左右方向凸条38と、上下方向溝部7b,7cをそれぞれ形成するための上下方向凸条38b,38cとがある。凸条38の外形は、溝部7の内部形状と合致する形状となっている。この凸条38の上端部からは、凹穴9を形成するための複数個の凹穴形成用突起40が突設されている。これらの突起40は、凹穴9と対応する位置関係にて、凸条38の延在方向に所定の間隔をおいて配設されている。各突起40の外形は、凹穴9の内部形状と合致する形状となっている。即ち、この実施の形態では、該突起40は、第2図(b)の通り、その上端側ほど凸条38の延在方向と直行方向の幅が大きくなる形状となっている。各突起40の上端部には、ワイヤ8を係止するためのマグネット41が埋設されている。なお、ワイヤ8の下型32への係止方法はこれに限定されない。
【0048】
この実施の形態では、凸部39は、左右方向凸条38aと略平行に延在した壁状のものとなっている。この実施の形態では、該凸部39は、左右方向凸条38aの延在方向の中央部、特に該中央部から突設された突起40と対向するように配置されている。
【0049】
凸条38のキャビティ底面からの起立高さd’及びその好適範囲は、前述の溝部7の深さdと実質的に同等である。凸条38の延在方向及び起立方向と直行方向の厚さ(以下、単に厚さという。)W’及びその好適範囲は、前述の溝部7の幅Wと実質的に同等である。また、左右方向凸条38aの延在方向の長さ(即ち左右の上下方向凸条38b,38c同士の間隔)L’及びその好適範囲も、前述の左右方向溝部7aの長さLと実質的に同等である。
【0050】
キャビティ底面から突起40の上端面までの高さd’及びその好適範囲は、前述の凹穴9の深さdと実質的に同等である。各突起40の上端側の最大厚さW’及びその好適範囲は、前述の凹穴9の最大幅Wと実質的に同等である。各突起40の凸条38の延在方向における長さL’及びその好適範囲は、前述の凹穴9の深さ長さLと実質的に同等である。各凸条38a,38b,38cにおいて隣り合う突起40,40同士の間隔K’及びその好適範囲は、前述の凹穴9,9同士の間隔Kと実質的に同等である。
【0051】
凸部39のキャビティ底面からの起立高さd’及びその好適範囲は、前述の凹部10の深さdと実質的に同等である。凸部39の厚さW’及びその好適範囲は、前述の凹部10の幅Wと実質的に同等である。凸部39の左右方向の長さL’及びその好適範囲は、前述の凹部10の長さLと実質的に同等である。凸部39と左右方向凸条38aとの間隔S’、及び凸部39と該左右方向凸条38aの延在方向の中央部の突起40との間隔S’、並びにそれらの好適範囲は、それぞれ、前述の左右方向溝部7aと凹部10との間隔S、及び該左右方向溝部7aの延在方向の中央部の凹穴9と凹部10との間隔Sと実質的に同等である。
【0052】
この金型30を用いてシートパッド1を製造する場合、まず、上型31と下型32とを型開きし、中型33に補強材20を被着させる。また、ワイヤ8を、各突起40の上端面に跨って延在するように配設し、各突起40の上端面のマグネット41に吸着保持させる。次に、ウレタン原液注入ノズル(図示略)から下型32のキャビティ底面に向ってウレタン原液を吐出させ、金型30内にウレタン原液を注入する。
【0053】
第3図(a),(b)は、それぞれ、このウレタン原液注入時における注入ノズルの一般的な移動経路を示している。第3図(a)では、キャビティ底面の坂下側(シートパッド本体2の上端側)の左サイド又は右サイド(第3図(a)では右サイド)から坂上側(シートパッド本体2の下端側)の左右方向の中央付近に向かい、そこからさらに坂下側の注入開始地点と反対サイド(第3図(a)では左サイド)に向かうV字状の移動経路Mが示されている。また、第3図(b)では、キャビティ底面の左サイド又は右サイド(第3図(b)では右サイド)に沿って坂下側から坂上側に向かい、そこから反対サイド(第3図(b)では左サイド)に移動した後、このサイドに沿って坂下側へ向かうコ字状の移動経路Mが示されている。本発明では、図示以外の移動経路を辿って注入ノズルを移動させるようにしてもよいが、M,Mのいずれの移動経路を辿って注入ノズルを移動させることが好ましい。第4図(a)は、このウレタン原液注入直後を示している。
【0054】
このような注入方法によれば、最も欠陥の発生し易い、上下方向溝部7bと左右上下方向溝部7b,7cとの交点、特に該交点のシートパッド上端側の角に欠陥が発生しづらくなる。本実施形態のように、該交点付近において左右方向溝部7aの両端側がシートパッド2の下端方向に湾曲して各上下方向溝部7b,7cと交差している意匠においては、特に上記のように注入することが好ましい。
【0055】
また、凸部10は、上下方向溝部7b,7cと連続していないので、製品脱型時の破れや、欠陥の発生を低減することができる。
【0056】
キャビティ底面の坂上側に散布されたウレタン原液は、徐々に発泡しながら第4図(b)のように坂下側へ流動し、坂の途中で左右方向凸条38aを乗り越える。本発明では、左右方向凸条38aの坂下側に、この左右方向凸条38aに対向するように凸部39が設けられているので、第4図(b)の通り、ウレタン原液の一部は凸部39に堰き止められるようにして左右方向凸条38aの坂下側に留まる。ウレタン原液の残部は、さらに凸部39を乗り越えるか又は迂回して坂下側へ流動する。その後、このウレタン原液は、キャビティ空間35,36,37をこの順に充填するように発泡していく。これにより、シートパッド本体2の主板部3、延出部4及び張出部5が一体に形成される。また、これらの裏面(延出部4及び張出部5においては前記凹所6の内側に臨む面)に補強材20が一体化される。
【0057】
キャビティ空間35〜37を充填した発泡ウレタンが硬化した後、上型31と下型32とを型開きしてシートパッド本体2を脱型する。凸条38、凸部39及び突起40が存在していた部分が脱型後にそれぞれ溝部7、凹部10及び凹穴9となる。その後、必要に応じバリ取り等の仕上げ作業を行うことにより、シートパッド1が完成する。
【0058】
上記の通り、金型30内に注入されたウレタン原液は、キャビティ底面を下っていく途中で左右方向凸条38aを乗り越えた後、その一部は、この左右方向凸条38aに対向した凸部39に堰き止められるようにして該左右方向凸条38aの坂下側に留まる。そのため、第4図(c)の通り、左右方向凸条38aの坂下側にも十分に発泡ウレタンが充填されるようになる。これにより、成形後のシートパッド本体2の左右方向溝部7a付近にボイド等の成形不良が発生することを防止することが可能であり、高品質なシートパッド1を歩留まり良く製造することが可能となる。
【0059】
この実施の形態では、凸部39の高さd’は、好ましくは10〜60mm特に好ましくは20〜40mm程度となっているので、左右方向凸条38a及びその延在方向の中央部の突起40を乗り越えたウレタン原液は、過度に凸部39によって堰き止められることなく、比較的容易に該凸部39も乗り越えてキャビティ底面の坂下側へ流れ、且つ凸部の裏面側に回り込むことができる。これにより、キャビティ底面の坂下側にも十分にウレタン原液が供給される。
【0060】
この実施の形態では、凸部39によって形成される凹部10の幅Wが、好ましくは2〜10mm特に3mm程度となっているので、シートパッド1に表皮材を装着した状態において、該表皮材の表面にこの凹部10の跡(凹部10に重なった部分の凹み等)が殆ど又は全く現われず、シートの意匠性を良好なものとすることができる。
【0061】
[第2の実施の形態]
第5図(a)は、第2の実施の形態に係るシートパッドの正面図であり、第5図(b)は第5図(b)のB−B線に沿う断面図であり、第5図(c)は、このシートパッドの発泡成形用金型の断面図である。なお、第5図(c)は、第2図(c)と同様部分の断面を示している。
【0062】
第1の実施の形態では、1個の凹部10が左右方向溝部7aの中央部(該中央部の凹穴9)と対向するように設けられているが、凹部10の個数及び配置はこれに限定されない。例えば、第5図のシートパッド1Aのように、左右方向に間隔をおいて複数個の凹部10を設け、これらの凹部10がそれぞれ左右方向溝部7aに対向するように構成してもよい。
【0063】
このシートパッド1Aにおいては、左右方向溝部7aには、その延在方向に間隔をおいて3個の凹穴9が設けられており、これらの凹穴9にそれぞれ対向するように3個の凹部10が配設されている。これらの凹部10の各部の寸法や、左右方向溝部7a及び凹穴9との間隔等の好適範囲は、第1の実施の形態と同様である。
【0064】
このシートパッド1Aを発泡成形するための金型30Aにおいては、左右方向凸条38aよりも下型32のキャビティ底面の坂下側(シートパッド本体2の上端側)に、各凹部10を形成するための3個の凸部39が左右方向に間隔をおいて配設されている。この実施の形態では、左右方向凸条38aから3個の凹穴形成用突起40が突設されており、各凸部39は、これらの突起40にそれぞれ対向するように配置されている。これらの凸部39の各部の寸法や、左右方向凸条38a及び突起40との間隔等も、第1の実施の形態と同様である。
【0065】
この実施の形態のシートパッド1A及び金型30Aのその他の構成は、第1の実施の形態のシートパッド1及び金型30と同様であり、第5図において第1〜4図と同一符号は同一部分を示している。
【0066】
このように左右方向溝部7aの延在方向に間隔をおいて複数個の凹部10を設けることにより、左右方向溝部7aの全長にわたってより確実に成形不良を防止することが可能である。
【0067】
また、第5図(c)の通り、各突起40は、比較的高さが大きなものとなっているので、シートパッド1Aの発泡成形工程において、ウレタン原液がキャビティ底面上を坂下側へ流れてきて各突起40を乗り越えたときに、このウレタン原液が各突起40の坂下側に回り込みにくくなっているが、この実施の形態では、各突起40にそれぞれ対向するように凸部39が配設されているので、各凸部39によってウレタン原液を堰き止めるようにして各突起40の坂下側にウレタン原液を留まらせることができる。これにより、発泡ウレタンが各突起40の坂下側にも十分に充填されるようになり、成形後の左右方向溝部7aの各凹穴9の周辺部に成形不良が発生することも十分に防止することができる。また、各突起40は、上下方向溝部7b,7cと連続していないので、左右方向溝部7aと上下方向溝部7b,7cとの交差部の欠陥を防止することができる。
【0068】
[第3の実施の形態]
第6図(a)は、第3の実施の形態に係るシートパッドの正面図であり、第6図(b)は第6図(a)のB−B線に沿う断面図であり、第6図(c)は、このシートパッドの発泡成形用金型の断面図である。なお、第6図(c)は、第2図(a)と同様部分の断面を示している。
【0069】
上記の各実施の形態では、主板部3の上下方向の途中部に1個だけ左右方向溝部7aが設けられているが、第6図のシートパッド1Bのように、上下方向に間隔をおいて複数条の左右方向溝部が設けられてもよい。
【0070】
このシートパッド1Bにおいては、主板部3の前面に、上下方向に間隔をおいて2条の左右方向溝部7a,7dが設けられており、これらの左右方向溝部7a,7dにより、主板部3が上段側から順に背上部3a、背中部3e及び背下部3bに区画されている。即ち、上側の左右方向溝部7aは背上部3aと背中部3eとの境界に沿って延設され、下側の左右方向溝部7dは背中部3eと背下部3bとの境界に沿って延設されている。各左右方向溝部7a,7dの左端側及び右端側はそれぞれ左右の上下方向溝部7b,7cに連通している。この実施の形態では、いずれの左右方向溝部7a,7dにも、各々の延在方向に間隔をおいて、3個の凹穴9が設けられているが、上側の左右方向溝部7aと下側の左右方向溝部7dとで凹穴9の個数や配置が異なっていてもよい。
【0071】
この実施の形態では、各左右方向溝部7a,7dとそれぞれ対向するように2個の凹部10が設けられている。上側の左右方向溝部7aと対向する凹部10は、該左右方向溝部7aの上側の背上部3aの前面に形成され、下側の左右方向溝部7dと対向する凹部10は、該左右方向溝部7a,7d同士の間の背中部3eの前面に形成されている。この実施の形態でも、各凹部10は左右方向に延在した溝状であり、各左右方向溝部7a,7dの延在方向の中央部(該中央部の凹穴9)に対向するように配設されている。これらの凹部10の各部の寸法や、各々が対向する左右方向溝部7a,7d及び凹穴9との間隔等の好適範囲は、第1の実施の形態と同様である。
【0072】
このシートパッド1Bを発泡成形するための金型30Bにおいては、キャビティ底面に、上側の左右方向溝部7aを形成するための左右方向凸条38aと、下側の左右方向溝部7dを形成するための左右方向凸条38dとが設けられている。左右方向凸条38dは、左右方向凸条38aよりもキャビティ底面の坂上側に配置されている。各左右方向凸条38a,38dの坂下側には、それぞれ、これらの左右方向凸条38a,38dの中央部(該中央部の凹穴形成用突起40)と対向するように凹部形成用凸部39が設けられている。各凸部39の形状や寸法、各々が対向する左右方向凸条38a,38d及び突起40との間隔等の好適範囲は前述の実施の形態と同様である。
【0073】
この実施の形態のシートパッド1B及び金型30Bのその他の構成は、第1の実施の形態のシートパッド1及び金型30と同様であり、第6図において第1〜4図と同一符号は同一部分を示している。
【0074】
この実施の形態では、シートパッド本体2の上下方向に間隔をおいてキャビティ底面に2条の左右方向凸条38a,38dが設けられているが、これらと対向するように、これらの坂下側にそれぞれ凸部39が設けられているので、各凸部39によってウレタン原液を堰き止めるようにして各左右方向凸条38a,38dの坂下側にウレタン原液を留まらせることができる。これにより、発泡ウレタンが各左右方向凸条38a,38dの坂下側にも十分に充填されるようになり、成形後の各左右方向溝部7a,7dの周辺部に成形不良が発生することが防止される。
【0075】
なお、左右方向溝部は3条以上設けられてもよい。また、第5図の実施の形態と同様に、各左右方向溝部にそれぞれ2個以上の凹部10が対向するように構成されてもよい。
【0076】
[その他の構成例]
上記の各実施の形態では、凹部形成用凸部39は、その下端側から上端側まで厚さW’が一定となっているが、例えば凸部39を、下端側ほど厚さW’が小さくなるように構成してもよい。このように構成することにより、この凸部39により形成された凹部10は、入口側の幅が小さくなった形状となるので、シートパッド1に表皮材を装着した状態において、凹部10がより目立ちにくいものとなる。
【0077】
[クッションパッド及びその製造方法への適用例]
本発明は、シートの腰掛部を構成するクッションパッド及びその製造方法にも適用可能である。
【0078】
一般的にクッションパッドは、前端側ほど着座者対峙面が高くなる形状となっている。このクッションパッドの発泡成形時には、このクッションパッドは、金型内において、着座者対峙面を下向きとされ、且つ該着座者対峙面の前端側が後端側よりも低位となるように発泡成形される。即ち、このクッションパッド成形用金型においては、キャビティ底面は、該クッションパッドの前端側ほど低位となるように傾斜している。
【0079】
本発明をこのクッションパッド及びその製造方法に適用した場合、キャビティ底面に設けられた、クッションパッドの着座者対峙面の左右方向溝部を形成するための左右方向凸条よりも該キャビティ底面の坂下側に、この左右方向凸条と対向するように凹部形成用凸部が設けられる。これにより、クッションパッドの発泡成形時には、金型にウレタン原液を注入した後、キャビティ底面上を流れ落ちるウレタン原液の一部を凸部によって堰き止めるようにして左右方向凸条の坂下側に留まらせることができる。これにより、発泡ウレタンが右方向凸条の坂下側にも十分に充填されるようになり、成形後のクッションパッドの左右方向溝部の周辺部に成形不良が発生することが防止される。
【0080】
上記の実施の形態はいずれも本発明の一例であり、本発明は図示の形態に限定されない。
【符号の説明】
【0081】
1,1A,1B シートパッド
2 シートパッド本体
3 主板部
4 張出部
5 張出部
6 凹部
7 溝部
7a,7d 左右方向溝部
9 係止具係止操作用凹穴
10 成形不良防止用凹部
10 補強材
30 金型
31 上型
32 下型
33 中型
35〜37 キャビティ空間
38 溝部形成用凸条
38a,38d 左右方向凸条
39 凹部形成用凸部
40 凹穴形成用突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡成形用金型内において発泡成形された発泡成形体よりなり、
少なくとも着座者対峙面に表皮材が装着されるシートパッドであって、
該着座者対峙面に、該表皮材の一部を収容するための溝部が設けられており、
該溝部は、少なくとも一部が、該着座者対峙面の左右方向に延在した左右方向溝部となっており、
該シートパッドは、前記発泡成形用金型内において、該着座者対峙面を下向きとされ、且つ該着座者対峙面の左右方向と直交方向の一端側を他端側よりも低位とされて発泡成形されたものであるシートパッドにおいて、
該着座者対峙面の該左右方向溝部よりも該一端側に、該左右方向溝部と対向するように凹部が設けられていることを特徴とするシートパッド。
【請求項2】
請求項1において、前記凹部は、前記左右方向溝部と平行方向に延在した溝状であることを特徴とするシートパッド。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記左右方向溝部の延在方向に間隔をおいて複数個の凹部が設けられていることを特徴とするシートパッド。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記溝部の底面に、前記表皮材の係止具が係止される係止部材が埋設されており、
該溝部の底面には、該係止具を該係止部材に係止させるための係止具係止操作用の凹穴が設けられており、
前記凹部は、該凹穴に対向するように配置されていることを特徴とするシートパッド。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記シートパッドはバックパッドであり、
該バックパッドは、その上端部から前記着座者対峙面と反対側へ回り込むように延出した回り込み部を有しており、
該バックパッドは、前記発泡成形用金型内において、該着座者対峙面の上端側を下端側よりも低位とされて発泡成形されたものであり、
該着座者対峙面の前記左右方向溝部よりも該上端側に前記凹部が設けられていることを特徴とするシートパッド。
【請求項6】
発泡成形用金型を用いて請求項1ないし5のいずれか1項に記載のシートパッドを製造する方法であって、
該発泡成形用金型は、該シートパッドが着座者対峙面を下向きにして成形されるように構成されており、且つ該発泡成形用金型内のキャビティ底面は、該着座者対峙面の前記一端側が他端側よりも低位となるように傾斜しており、
該キャビティ底面に、前記溝部を形成するための凸条が設けられており、
該凸条の少なくとも一部は、該着座者対峙面の左右方向に延在した左右方向凸条となっており、
該キャビティ底面の該左右方向凸条よりも前記一端側に、該左右方向凸条と対向するように、前記凹部を形成するための凸部が設けられていることを特徴とするシートパッドの製造方法。
【請求項7】
請求項6において、前記キャビティ底面からの前記凸部の起立高さは、該キャビティ底面からの前記凸条の起立高さよりも小さいことを特徴とするシートパッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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