説明

シートフレーム構造

【課題】シートフレームによる電波の吸収・反射を抑制できるシートフレーム構造の提供を課題とする。
【解決手段】シート14に設けられたシートフレーム16と、シートフレーム16の車体後方側に配置された導電性の車体部材20と、シートフレーム16と車体部材20とを高周波的に接続する接続部材30と、を有するシートフレーム構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアウインドウガラスにプリントアンテナが形成された自動車等の車両におけるシートフレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
リアウインドウガラスに形成されたプリントアンテナは、車室内の金属物の影響により、そのアンテナ感度が低減される懸念がある(例えば、特許文献1参照)。特に、シートのシートバック内に設けられるシートフレームは、アンテナ受信性能を劣化させる要因となる。つまり、そのシートフレームが疑似アンテナとなって、電波のエネルギーを吸収したり、電波を反射させることがあり、リアウインドウガラスに形成されたプリントアンテナの受信感度が、それによって低下してしまう問題がある。
【特許文献1】実開平5−34060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、シートフレームによる電波の吸収・反射を抑制できるシートフレーム構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載のシートフレーム構造は、シートに設けられたシートフレームと、前記シートフレームの車体後方側に配置された導電性の車体部材と、前記シートフレームと前記車体部材とを高周波的に接続する接続部材と、を有することを特徴としている。
【0005】
請求項1に記載の発明によれば、接続部材により、シートのシートフレームが車体部材に高周波的に接続される(少なくとも高周波域で電気的に結合されてアースされる)ので、シートフレームによる電波の吸収・反射を抑制することができる。したがって、リアウインドウガラスに形成されたプリントアンテナの受信感度の低下を軽減することができる。なお、ここで言う「高周波」とは、一般的に用いられる数MHz以上の周波数のことである。
【0006】
また、請求項2に記載のシートフレーム構造は、請求項1に記載のシートフレーム構造において、前記接続部材の一端が前記シートフレームに固着され、前記接続部材の他端が前記車体部材に圧接されていることを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載の発明によれば、接続部材は、シートフレームにのみ固着され、車体部材には圧接するだけなので、車体部材側の設計を変更しなくて済む利点がある。
【0008】
また、本発明に係る請求項3に記載のシートフレーム構造は、シートに設けられたシートフレームと、前記シートフレームの車体後方側に配置された導電性の車体部材と、前記シートフレームに一端が固着され、前記車体部材に他端が圧接される接続部材と、を有することを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の発明によれば、接続部材の一端がシートフレームに固着され、接続部材の他端が車体部材に圧接するので、シートのシートフレームが車体部材に電気的に結合されてアースされる。したがって、シートフレームによる電波の吸収・反射を抑制することができ、リアウインドウガラスに形成されたプリントアンテナの受信感度の低下を軽減することができる。また、接続部材は、シートフレームにのみ固着され、車体部材には圧接するだけなので、車体部材側の設計を変更しなくて済む利点がある。
【0010】
また、請求項4に記載のシートフレーム構造は、請求項2又は請求項3に記載のシートフレーム構造において、前記接続部材が弾性を有することを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載の発明によれば、接続部材が弾性を有するので、シートフレームと車体部材は、その弾性を利用して接触状態を保つことができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、シートフレームによる電波の吸収・反射を抑制できるシートフレーム構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の最良な実施の形態について、図面に示す実施例を基に詳細に説明する。図1は車両の一例である自動車の後部の構造を示す概略側断面図であり、図2は接続部材の構成を示す概略側断面図である。そして、図3はシートフレームの接続部材が固着される位置の一例を示す概略正面図である。なお、各図において、車体前方向を矢印FRで示し、車体上方向を矢印UPで示す。
【0014】
図1で示すように、自動車10の車室12にはリアシート14が設けられており、リアシート14の車体後方側には、導電性の車体部材であるルームパーテーションパネル20が配置されている。リアシート14のシートバック14Aの内部には、シートフレーム16が埋設されており、このシートフレーム16は、ルームパーテーションパネル20に、導電性の取付手段40、例えばボルト42とナット44によって複数位置で固定されている(図3参照)。
【0015】
つまり、このリアシート14のシートバック14Aはリクライニング不能とされている。また、ルームパーテーションパネル20の車体後方側が荷室18とされており、荷室18の車体上方側にはアッパーバックパネル22が配置されている。アッパーバックパネル22の車体上方側にはリアウインドウガラス28が配設されており、リアウインドウガラス28の車体上方側の端部にはプリントアンテナ26が形成されている。
【0016】
また、アッパーバックパネル22の車体前方側の端部は、車体下方側に向かって屈曲されており、その屈曲された先端部分がルームパーテーションパネル20に接合されている。そして、ルームパーテーションパネル20の車体上方側の端部は、車体後方側に向かって屈曲されており、その屈曲された先端部分がアッパーバックパネル22に接合されている。これにより、アッパーバックパネル22の車体前方側で、ルームパーテーションパネル20の車体上方側に、閉断面構造部24が形成されている。
【0017】
また、図2で詳細に示すように、シートフレーム16の所定位置には、導電性の接続部材30を構成する金属製の板バネ32の基部32Aが溶接等の固着手段によって固着されている。そして、リアシート14のシートバック14Aに形成された開口部14Bから突出している板バネ32の湾曲された先端部32Bには、その板バネ32と共に導電性の接続部材30を構成する金属プレート34が一体的に固着されている。
【0018】
この金属プレート34が、板バネ32の弾性力(付勢力)によって、ルームパーテーションパネル20の所定位置(例えば閉断面構造部24の車幅方向両端部近傍等)に、所定範囲の圧力で面接触(圧接)することにより、シートフレーム16とルームパーテーションパネル20とが高周波的に接続される構成である。つまり、シートフレーム16が車体側(ボデー側)に、少なくとも高周波域で電気的に結合されてアースされる構成である。
【0019】
なお、板バネ32を固着する部位は任意であるが、図3で示すように、シートフレーム16は、金属製の線状部材15が複数本張り巡らされた複雑な構造となっているため、例えばプリントアンテナ26に近い車幅方向両端部の車体上方側や車幅方向中央部の車体上方側等に固着するのが好ましい。また、板バネ32及び金属プレート34からなる接続部材30の数量も任意であるが、プリントアンテナ26の受信感度向上のためには、なるべく多くすることが好ましい。
【0020】
以上のようなシートフレーム構造において、次にその作用について説明する。リアシート14のシートバック14Aに埋設されているシートフレーム16は、ルームパーテーションパネル20に、導電性のボルト42とナット44によって、複数位置で固定されている。そして、シートフレーム16の所定位置には、板バネ32の基部32Aが溶接等によって固着されており、板バネ32の先端部32Bに一体的に固着されている金属プレート34は、ルームパーテーションパネル20の所定位置に所定範囲の圧力で面接触(圧接)している。
【0021】
ここで、シートフレーム16、ルームパーテーションパネル20、板バネ32及び金属プレート34(接続部材30)は、導電性部材であるため、その板バネ32及び金属プレート34(接続部材30)を介して、シートフレーム16とルームパーテーションパネル20とが高周波的に接続される。つまり、シートフレーム16が、車体側(ボデー側)であるルームパーテーションパネル20に、少なくとも高周波域で電気的に結合されてアースされる。
【0022】
したがって、リアウインドウガラス28に形成されているプリントアンテナ26の受信感度の低下(受信性能の劣化)を軽減することができる。つまり、プリントアンテナ26の比較的近傍に配置されるシートフレーム16が疑似アンテナとなって、電波のエネルギーを吸収したり、電波を反射させたりする現象を抑制することができる。
【0023】
なお、シートフレーム16をルームパーテーションパネル20に固定する導電性のボルト42及びナット44(取付手段40)によっても、そのシートフレーム16がアースされるため、この取付手段40を増やす方法も考えられたが、取付手段40を増やすと、製造コストや組付作業工程が増加してしまう。
【0024】
そのため、シートフレーム16に接続部材30の一端部(板バネ32の基部32A)を固着し、接続部材30の他端部(板バネ32の先端部32Bに固着された金属プレート34)をルームパーテーションパネル20に所定範囲の圧力で面接触(圧接)させて、シートフレーム16をアースする構成としている。つまり、板バネ32の弾性力(付勢力)を利用し、金属プレート34を車体側(ボデー側)に所定範囲の圧力で面接触(圧接)させるという簡易な構成としている。
【0025】
したがって、組付作業工程を増やすことなく、シートフレーム16とルームパーテーションパネル20との接触状態を確保することができ、取付手段40を増やしたときと同等の効果が容易に得られる。なお、接続部材30は、シートフレーム16にのみ固着され、ルームパーテーションパネル20には所定範囲の圧力で面接触(圧接)するだけであるため、ルームパーテーションパネル20側(車体部材側)の設計を変更しなくて済む利点がある。
【0026】
また、接続部材30としての板バネ32を固着する箇所は、図3で示したように、シートフレーム16の車幅方向両端部の車体上方側や、シートフレーム16の車幅方向中央部の車体上方側等が好ましいが、シートフレーム16をルームパーテーションパネル20に取り付ける取付手段40を避けた位置であれば、どこでもよく、特に限定されない。
【0027】
また、接続部材30の数量も、プリントアンテナ26の感度向上の観点からは多い方が好ましいが、少なくとも1箇所でシートフレーム16とルームパーテーションパネル20とが接続されるように構成されていればよく、特に限定されない。更に、取付手段40も導電性部材で構成されていればよく、ボルト42とナット44に限定されるものではない。
【0028】
また、接続部材30は、図1、図2で示した板バネ32に限定されるものではない。すなわち、図4で示すように、1個又は複数個(図示のものは2個)の導電性のコイルスプリング36の一端部36Aをシートフレーム16に溶接等の固着手段によって固着し、リアシート14のシートバック14Aに形成された開口部14Bから突出させた各コイルスプリング36の他端部36Bに金属プレート35を固着して、その金属プレート35をルームパーテーションパネル20に所定範囲の圧力で面接触(圧接)させて、シートフレーム16をアースする構成としてもよい。
【0029】
そして更に、図5で示すように、リアシート14のシートバック14Aに形成された開口部14Bにおけるシートフレーム16とルームパーテーションパネル20との間に、導電性の軟質物(弾性物)、例えば導電性ゴム38を配設し、シートフレーム16とルームパーテーションパネル20とで、その導電性ゴム38を所定範囲の圧力で狭持するようにして(又は導電性ゴム38の一方の面をシートフレーム16に、他方の面をルームパーテーションパネル20にそれぞれ貼着して)、シートフレーム16をアースする構成としてもよい。
【0030】
何れにしても、接続部材30は、ルームパーテーションパネル20に所定範囲の圧力で面接触(圧接)可能な状態を保てるように、弾性を有する構成とされていることが望ましい。このような構成にすると、仮にリアシート14のシートバック14Aがリクライニング可能とされ、シートフレーム16と車体部材との間の距離が変化しても、接続部材30の付勢力(弾性力)により、シートフレーム16と車体部材との接触状態を維持することが可能となる。
【0031】
なお、本実施形態では、板バネ32の基部32Aやコイルスプリング36の一端部36Aをシートフレーム16に溶接等の固着手段によって取り付け、その先端部32Bや他端部36Bに固着された金属プレート34をルームパーテーションパネル20に所定範囲の圧力で面接触(圧接)させる構成にしたが、板バネ32の基部32Aやコイルスプリング36の一端部36Aをルームパーテーションパネル20に取り付け、その先端部32Bや他端部36Bに固着された金属プレート34をシートフレーム16に所定範囲の圧力で面接触(圧接)させる構成にしてもよい。
【0032】
また、車体側(ボデー側)であるルームパーテーションパネル20が塗装され、接続部材30と直流的には絶縁される状態になっていても、ある程度の面積で導電性のある物質(導電性部材)同士が接触する構成になっていれば、FM放送(例えば76MHz)以上の高周波的には結合される。更に、錆び等を気にしなければ、ルームパーテーションパネル20に塗装しない部位を形成し、その部位と接続部材30とを所定範囲の圧力で点接触(圧接)させても同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】自動車の後部の構造を示す概略側断面図
【図2】接続部材の構成を示す概略側断面図
【図3】シートフレームの接続部材が固着される位置の一例を示す概略正面図
【図4】接続部材の別の構成を示す概略側断面図
【図5】接続部材の別の構成を示す概略側断面図
【符号の説明】
【0034】
10 自動車
12 車室
14 リアシート(シート)
16 シートフレーム
20 ルームパーテーションパネル(車体部材)
26 プリントアンテナ
28 リアウインドウガラス
30 接続部材
32 板バネ
34 金属プレート
35 金属プレート
36 コイルスプリング
38 導電性ゴム
40 取付手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに設けられたシートフレームと、
前記シートフレームの車体後方側に配置された導電性の車体部材と、
前記シートフレームと前記車体部材とを高周波的に接続する接続部材と、
を有することを特徴とするシートフレーム構造。
【請求項2】
前記接続部材の一端が前記シートフレームに固着され、前記接続部材の他端が前記車体部材に圧接されていることを特徴とする請求項1に記載のシートフレーム構造。
【請求項3】
シートに設けられたシートフレームと、
前記シートフレームの車体後方側に配置された導電性の車体部材と、
前記シートフレームに一端が固着され、前記車体部材に他端が圧接される接続部材と、
を有することを特徴とするシートフレーム構造。
【請求項4】
前記接続部材が弾性を有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のシートフレーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−279882(P2008−279882A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−125389(P2007−125389)
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】