説明

シート体の搬送装置及び積層電池の製造装置

【課題】押さえ手段を有してなるものにおいて、シート体の搬送に際しての脱落や折れ曲がりを抑制でき、もって品質低下や製造効率低下を抑制することのできるシート体の搬送装置及び積層電池の製造装置を提供する。
【解決手段】吸着手段16が第1吸着部21と第2吸着部22とを備え、両者が相対移動可能となっている。セパレータ2及び電極箔(負極箔1又は正極箔3)を搬送するときは第1吸着部21と第2吸着部22とで吸着しつつ搬送することで、セパレータ2等は全域において吸着され、搬送に際しての脱落や折れ曲がりを抑制できる。積層ステージ13上にセパレータ2等を載置するときは、第1吸着部21から第2吸着部22を相対的に離間させることで、第1吸着部21のみによって吸着状態を維持する。そのため、第2吸着部22が押さえ爪に当たってしまうといった事態を回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば積層電池の製造過程等において用いられるシート体の搬送装置及び積層電池の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層構造型の電池の製造過程においては、シート状をなす正極箔及び負極箔が、同じくシート状をなすセパレータを介して交互に積層される。正極箔及び負極箔は、それぞれ所定の金属製の極箔本体に活物質が塗布されることで構成されている。また、セパレータは、例えば電気絶縁性の多孔質樹脂フィルムにより構成されている。
【0003】
従来、これら正極箔及び負極箔並びにセパレータを積層するに際しては、種々の方法が採用される。例えば、正極箔及び負極箔、並びに、セパレータにそれぞれ対応させて、複数の搬送装置を用意し、各搬送装置を用いて、所定の「積層位置」に極箔、セパレータを交互に積層する手法がある。また、搬送装置を用いて各極箔やセパレータをそれぞれ「所定位置」に供給し、各所定位置に供給された極箔やセパレータを、別途の積層装置を用いて、前記所定位置とは異なる「積層位置」に積層する手法もある(例えば、特許文献1等参照)。
【0004】
いずれの手法を採用するにせよ、「所定位置」或いは「積層位置」に積層される正極箔や負極箔やセパレータといったシート体は、品質保持等の観点から位置ずれを起こしてはならない。このため、従来では、「所定位置」或いは「積層位置」に積層されるシート体は、その側縁部が押さえ爪等で押さえつけられるのが一般的となっている。
【0005】
また、上記従来技術におけるシート体は、多数の吸着孔を有する吸着プレートを用いて搬送される。すなわち、シート体は、第1の位置において吸着プレートで吸着され、第2の位置である「所定位置」或いは「積層位置」へと搬送され、載置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−50583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、「所定位置」或いは「積層位置」において、上述した押さえ爪等が設けられている場合には、当該押さえ爪に対し吸着プレートが当たってしまうといった事態を避ける必要がある。従って、このような場合には、押さえ爪との干渉を避けるべく、吸着プレートがシート体よりも一回り小さいものとなっているのが実情である。
【0008】
しかしながら、吸着プレートがシート体よりも相当程度小さいと、シート体の搬送過程において、シート体のはみ出し部分が、搬送時に空気抵抗を受けることとなり、シート体が吸着プレートから剥離、脱落してしまうおそれがある。また、剥離、脱落には至らないものの、シート体が空気抵抗により折れ曲がったまま積層されてしまうおそれもある。このような事態が生じると、品質に悪影響を与えたり、製造効率の低下を招いたりすることが懸念される。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電極箔やセパレータ等のシート体を押さえつけるための押さえ手段を有してなるものにおいて、シート体の搬送に際しての脱落や折れ曲がりを抑制でき、もって品質低下や製造効率低下を抑制することのできるシート体の搬送装置及び積層電池の製造装置を提供することを主たる目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0011】
手段1.シート体を吸着可能な吸着手段と、
前記吸着手段を移動させることで、第1位置にあるシート体を、当該第1位置とは別の第2位置へと搬送し、該第2位置上に前記シート体を載置可能とする移動手段とを備え、
前記第2位置においては、前記シート体の縁部を押さえつけるための押さえ手段が設けられてなるシート体の搬送装置であって、
前記吸着手段は、前記押さえ手段と干渉しない第1吸着部と、当該第1吸着部の外側に位置し前記押さえ手段と干渉する第2吸着部とを備え、
前記第1吸着部と第2吸着部とを相対移動可能に構成したことを特徴とするシート体の搬送装置。
【0012】
手段1によれば、吸着手段は、第1吸着部と第2吸着部とを備え、両者が相対移動可能となっている。このため、シート体を搬送するときは第1吸着部と第2吸着部とで吸着しつつ搬送することで、シート体は比較的広範な領域で吸着されることとなる。従って、シート体の搬送に際しての脱落や折れ曲がりを抑制できる。その結果、脱落により装置の停止を余儀なくされる懸念を払拭でき、また、折れ曲がったまま積層等されてしまうことによる不具合を防止できる。その結果、品質低下や製造効率低下を抑制することができる。
【0013】
また、第2位置上にシート体を載置するときは、第1吸着部から第2吸着部を相対的に離間させることで、第1吸着部のみによって吸着状態を維持することができる。そのため、載置に際しては、第1吸着部のみが載置動作に関わることとなり、第2吸着部の押さえ手段への当接といった事態を回避することができ、安定した載置(積層)を実現できる。
【0014】
手段2.前記第1位置にある前記シート体を吸着し、該シート体を前記第2位置の上方に搬送するに際しては前記第1吸着部の吸着面と前記第2吸着部の吸着面とが面一となるようにし、
前記シート体が前記第2位置の上方に位置する所定タイミングにおいて、前記第1吸着部の吸着面と前記第2吸着部の吸着面とがずれるよう、前記第1吸着部を前記第2吸着部から相対的に離間させ、
前記第2位置上に前記シート体が載置される直前には、前記第1吸着部のみが前記シート体を吸着するよう構成したことを特徴とする手段1に記載のシート体の搬送装置。
【0015】
手段2によれば、第1位置にあるシート体が吸着され、該シート体が第2位置の上方に搬送されるに際しては、第1吸着部の吸着面と第2吸着部の吸着面とが面一とされる。このため、上述したとおり、シート体は比較的広範な領域で吸着されることとなり、シート体の搬送に際しての脱落や折れ曲がりを抑制できる。また、シート体が第2位置の上方に位置する所定タイミングにおいて、第1吸着部の吸着面と第2吸着部の吸着面とがずれるよう、第1吸着部が第2吸着部から相対的に離間させられ、第2位置上にシート体が載置される直前には、第1吸着部のみによってシート体が吸着される。従って、上述したとおり、載置に際しては、第1吸着部のみが載置動作に関わることとなり、第2吸着部の押さえ手段への当接といった事態を回避することができ、安定した載置(積層)を実現できる。
【0016】
手段3.前記所定タイミングに同期させて、前記第2吸着部による吸着を解除するよう構成したことを特徴とする手段2に記載のシート体の搬送装置。
【0017】
手段3によれば、手段2の作用効果に加え、第1吸着部が第2吸着部から相対的に離間させられるのに際し、第2吸着部による吸着が解除される。このため、第2吸着部によってシート体が引っ張られてしまい、位置ずれ等を起こしてしまうといった不具合を防止することができる。
【0018】
手段4.前記吸着手段の外形が、前記シート体の外形と同等に設定されていることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載のシート体の搬送装置。
【0019】
手段4によれば、シート体の搬送に際しては、シート体のほぼ全面が吸着手段で吸着されることとなる。そのため、シート体が吸着手段からはみ出した状態で搬送されることによる脱落や折れ曲がりをより一層確実に抑制することができる。
【0020】
手段5.手段1乃至4のいずれかに記載の搬送装置を備えてなり、
前記シート体は、積層電池用の電極箔及びセパレータのうち少なくとも一方であることを特徴とする積層電池の製造装置。
【0021】
手段5によれば、積層電池の製造過程において、上述した作用効果が奏されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】一実施形態における搬送装置の主要部を示す側面図である。
【図2】積層電池の製造装置の一部を示す概略構成図である。
【図3】積層体の概念を示す斜視図である。
【図4】積層ステージ上の積層体及び押さえ爪を示す平面図である。
【図5】吸着手段の概略構成を示す平面模式図である。
【図6】(a)〜(c)は電極箔(正極箔、負極箔)及びセパレータの搬送工程を説明する工程図である。
【図7】載置に際しての搬送装置の主要部を示す側面図である。
【図8】(a),(b)は載置に際しての吸着手段及び押さえ爪の位置関係を説明する側面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図3に示すように、積層電池を構成する積層体4は、下から順に負極箔1、セパレータ2、及び、正極箔3、セパレータ2がこの順序で繰り返し積み上げられるようにして積層されている(勿論、正極箔3が最下層に位置し、その上にセパレータ2、負極箔1、セパレータ2、正極箔3、・・・の順で積層されていてもよい)。負極箔1及び正極箔3は、金属箔よりなる極箔本体の表裏両面に活物質が塗布形成されることにより構成され、その一側縁部が活物質の塗布されていない未塗工部1A,3Aとなっている。尚、負極箔1の極箔本体は、銅により構成され、正極箔3の極箔本体は、アルミニウムにより構成されている。また、以降において、特に正・負を区別する必要のないときには、負極箔1、正極箔3を総称して「電極箔」と称することもある。
【0025】
セパレータ2は、電気絶縁性のシート状の多孔質樹脂フィルムにより構成されており、前記負極箔1、正極箔3の平面矩形状の部分(塗工部)よりもとほぼ同等又は一回り大きい矩形状をなしている。適正な積層状態においては、正極箔3及び負極箔1の矩形状部分(塗工部)は、前記セパレータ2によって完全に覆われており(はみ出しておらず)、正極箔3及び負極箔1の各突出部、すなわち、未塗工部1A,3Aのみが、それぞれ異なる位置においてセパレータ2からはみ出すようにして突出している。当該各未塗工部1A,3Aは、負極タブ、正極タブに相当するものであり、積層電池の内部で電極端子の負極および正極にそれぞれ電気的に接続される領域である。尚、本実施形態では、負極箔1、正極箔3、セパレータ2が、シート体を構成する。
【0026】
図2は、積層電池の製造装置(積層体4を得るための装置)10の主要部分を示す概略構成図(平面図)である。同図に示すように、製造装置10は、セパレータ供給ステージ11、電極箔供給ステージ12、及び積層ステージ13を備えている。セパレータ供給ステージ11上には、積層の都度、図示しないセパレータ供給手段によって上記セパレータ2が1枚ずつ供給されるようになっている。また、電極箔供給ステージ12上には、積層の都度、図示しない電極箔供給手段によって負極箔1及び正極箔3が、交互に1枚ずつ供給されるようになっている。さらに、積層ステージ13には、所定の積層位置において、押さえ手段としての押さえ爪18が設けられている(図4参照)。当該押さえ爪18は、図示しないアクチュエータにより、自身の先端が積層体を押さえつける押さえ位置と、自身の先端が積層体を押さえつけない開放位置との間で位置切換可能に構成されている。
【0027】
製造装置10はまた、上記各ステージ11〜13の中心の上方を通るようにして設けられたガイドレール14を備えている。当該ガイドレール14は、図示しない支柱により支持されている。そして、ガイドレール14には搬送アーム15(図1参照)が垂下状態で支持され、当該搬送アーム15の下端には吸着手段16が設けられている。
【0028】
搬送アーム15は、図示しないモータ等の駆動手段により前記ガイドレール14に沿って移動可能に設けられているとともに、後述するサーボモータ24(図1参照)の作動により、上下方向(図2では紙面奥行方向)に伸縮可能となっている(これについても後述する)。搬送アーム15がガイドレール14に沿って移動することにより、吸着手段16もまた、ガイドレール14に沿って移動する。また、搬送アーム15が伸縮することにより、吸着手段16が上下動するようになっている。
【0029】
上記の製造装置10を用いた積層体4の積層の概略について説明すると、積層に際しては先ず、電極箔供給ステージ12上にある負極箔1が吸着手段16に吸着させられる。そして、吸着手段16により負極箔1が吸着させられた状態で、今度は積層ステージ13上へと案内され、該積層ステージ13上の所定の積層位置へと載置させられる。当該載置に際しては、前記押さえ爪18により、負極箔1が位置ズレを極力起こさないよう、押さえ付けられる。
【0030】
次に、吸着手段16はセパレータ供給ステージ11上に案内され、上記と同様の要領で、セパレータ供給ステージ11上にあるセパレータ2が吸着手段16により吸着させられ、積層ステージ13上へと案内され、該積層ステージ13上の前記積層位置へと載置させられる。次に、再度吸着手段16は、電極箔供給ステージ12上へと移動させられる。この時点において、電極箔供給ステージ12上には正極箔3が供給されており、当該正極箔3が吸着手段16に吸着させられる。また、吸着手段16により正極箔3が吸着させられた状態で、今度は積層ステージ13上へと案内され、該積層ステージ13上の前記積層位置へと載置させられる。次に、再度吸着手段16は、セパレータ供給手段11上に案内され、該セパレータ供給ステージ11上にあるセパレータ2が吸着手段16により吸着させられる。そして、積層ステージ13上へと案内され、該積層ステージ13上の前記積層位置へと載置される。上記動作を所定回数繰り返すことで、下から順に負極箔1、セパレータ2、及び、正極箔3、セパレータ2が繰り返し積み上げられる。これにより、上述した積層体4が得られるのである。尚、本実施形態では、セパレータ供給ステージ11、及び、電極箔供給ステージ12が第1位置に相当し、積層ステージ13上の積層位置が第2位置に相当する。
【0031】
さて、本実施形態においては、吸着手段16等に特徴があるので、次には、当該吸着手段16等の構成について説明する。
【0032】
図1、図5、図7に示すように、吸着手段16は、第1吸着部21と第2吸着部22とを備えている。第1吸着部21は、前記シート体よりも小さい矩形状をなしている。当該第1吸着部21の外周側に位置するようにして平面視ロ字状をなす第2吸着部22が上下方向に相対移動可能に設けられている。吸着手段16が積層ステージ13の上方の所定の積層位置にあるとき、第1吸着部21は押さえ爪18と干渉しないようになっており、第2吸着部22は、押さえ爪18と干渉する(平面視において重なり合う)ように構成されている。
【0033】
第1吸着部21及び第2吸着部22は、いずれも板状のベース部材21A,22Aと、ベース部材21A,22Aの下面に設けられた多孔質吸着パッド21B,22Bとを備えている。両吸着部21,22のベース部材21A,22Aには、図示しない吸引孔が形成されている。第1吸着部21のベース部材21Aの上側に開口する吸引孔には、第1バキュームホース28の一端が接続され、第2吸着部22のベース部材22A上側に開口する吸引孔には、第2バキュームホース29の一端が接続されている。両ベース部材21A,22A下側には、複数本に分岐された吸引孔の他端側が開口状態で臨んでおり、それらが多孔質吸着パッド21B,22Bの複数箇所に連通されている。さらに、第1、第2バキュームホース28,29の他端には、それぞれ図示しないバキュームポンプが接続されている。そして、各バキュームポンプがオン状態とされることで、前記第1、第2バキュームホース28,29及び吸引孔を介して多孔質吸着パッド21B,22Bからの吸引が行われるようになっている。本実施形態では、第2吸着部22の外形が、前記シート体(電極箔6)の外形と同等に設定されており、第1吸着部21と第2吸着部22の多孔質吸着パッド21B,22B同士が面一となることで、前記シート体(電極箔6)の全体がほとんどはみ出すことなく吸引されるようになっている。
【0034】
前記搬送アーム15が垂下状態で支持されている点については上述したが、当該搬送アーム15の下端にはボールねじ23及びサーボモータ24が一体となった駆動手段25を介して前記第1吸着部21(のベース部材)が連結されている。そして、前記サーボモータ24の作動により、吸着手段16(第1吸着部21)等が上下動するようになっている。本実施形態では、前述したモータ等の駆動手段及び当該サーボモータ24等の駆動手段25により吸着手段16が移動させられることとなり、両駆動手段によって移動手段が構成されている。
【0035】
前記第1吸着部21のベース部材21Aには、ブラケット31が立設されており、該ブラケット31を介してシリンダ32が設けられている。シリンダ32の下部には、ロッド33が出没可能に設けられており、該ロッド33の下端には前記第2吸着部22(のベース部材22A)が連結されている。そして、図1に示すようにロッド33が突出状態にある場合には、第1吸着部21と第2吸着部22の多孔質吸着パッド21B,22B同士が面一となり、図7に示すように、ロッド33がシリンダ32内に没入状態にある場合には、第2吸着部22が、第1吸着部21に対し相対的に上動するようになっている。
【0036】
次に、上記の吸着手段16の動作について、上述した積層過程を中心に詳細に図6等を参照しつつ説明する。先ず、搬送アーム15がセパレータ供給ステージ11又は電極箔供給ステージ12の上に案内され、その位置において搬送アーム15が伸張させられ吸着手段16が下動させられる。このとき、セパレータ供給ステージ11又は電極箔供給ステージ12上には、図示しないセパレータ供給手段又は電極箔供給手段によって既にセパレータ2又は電極箔(負極箔1又は正極箔3)が所定の位置に所定の角度で供給されている。そして、前記バキュームポンプがオン状態とされることにより、吸着手段16による吸引が開始させられる。このとき、前記ロッド33は突出状態にあり、第1吸着部21及び第2吸着部22の多孔質吸着パッド21B,22B同士は面一となっている。このため、図6(a),(b),(c)に示すように、セパレータ2の全面が吸着手段16で吸着させられる。
【0037】
そして、吸着手段16によりセパレータ2又は電極箔(負極箔1又は正極箔3)が吸着させられた状態で、搬送アーム15が再度収縮させられ、吸着手段16が上動させられ、今度は積層ステージ13上へと案内される。
【0038】
吸着手段16が積層ステージ13上へ案内された所定のタイミングにおいて、図7に示すように、ロッド33がシリンダ32内に没入状態とされる。これにより、第2吸着部22が、第1吸着部21に対し相対的に上動する。また、当該ロッド33の没入動作と同期して、第2バキュームホース29側のバキュームポンプがオフとされる。このため、第1吸着部21の吸着面と第2吸着部22の吸着面とがずれるよう、第1吸着部21が第2吸着部22から相対的に離間させられるとともに、当該離間に際し、第2吸着部22による吸着が解除される。そして、セパレータ2又は電極箔(負極箔1又は正極箔3)は、第1吸着部21のみによって吸着されることとなる。
【0039】
その後、図8(a)に示すように、搬送アーム15が伸張させられ、吸着手段16が下動させられる。すると、下動した吸着手段16のうち、第1吸着部21のみがセパレータ2又は電極箔(負極箔1又は正極箔3)を介して積層ステージ13上(それまで積層されている積層体があればその上)に当接させられる。そして、その状態から第1バキュームホース28側のバキュームポンプがオフとされる。これにより、第1吸着部21による吸着が解除され、セパレータ2又は電極箔(負極箔1又は正極箔3)は積層ステージ13上に載置されることとなる。
【0040】
さらに、図8(b)に示すように、押さえ爪18が載置されたセパレータ2又は電極箔(負極箔1又は正極箔3)の側縁部を押さえることで、位置ずれのない安定した積層が実行される。
【0041】
以上詳述したように、本実施形態によれば、吸着手段16が第1吸着部21と第2吸着部22とを備え、両者が相対移動可能となっている。このため、セパレータ2又は電極箔(負極箔1又は正極箔3)を搬送するときは第1吸着部21と第2吸着部22とで吸着しつつ搬送することで、セパレータ2又は電極箔(負極箔1又は正極箔3)はほぼ全域において吸着されることとなる。従って、セパレータ2又は電極箔(負極箔1又は正極箔3)の搬送に際しての脱落や折れ曲がりを抑制できる。その結果、脱落により装置の停止を余儀なくされてしまうといった懸念を払拭でき、また、折れ曲がったまま積層等されてしまうことによる不具合を防止できる。その結果、品質低下や製造効率低下を抑制することができる。
【0042】
また、積層ステージ13上にセパレータ2又は電極箔(負極箔1又は正極箔3)を載置するときは、第1吸着部21から第2吸着部22を相対的に離間させることで、第1吸着部21のみによって吸着状態を維持することができる。そのため、載置に際しては、第1吸着部21のみが載置動作に関わることとなり、第2吸着部22が押さえ爪18に当たってしまうといった事態を回避することができ、安定した載置(積層)を実現できる。
【0043】
また、本実施形態では、第1吸着部21から第2吸着部22を相対的に離間させるタイミングに同期させて、第2吸着部22による吸着を解除するようにした。このため、第2吸着部22によってセパレータ2又は電極箔(負極箔1又は正極箔3)が引っ張られてしまい、位置ずれ等を起こしてしまうといった不具合を防止することができる。また、同様に載置に際しても第1吸着部21による吸着を解除することとしている。そのため、位置ずれ等を起こすことなく正確な載置(積層)を実現することができる。
【0044】
尚、上述した実施形態の記載内容に限定されることなく、例えば次のように実施してもよい。
【0045】
(a)上記実施形態では、第1吸着部21から第2吸着部22を相対的に離間させるタイミングに同期させて、単にバキュームポンプをオフとする点しか例示していないが、別途、空気を噴射して(正圧状態として)もよい。かかる構成とすることで、第2吸着部22による吸着がより確実に解除されることとなる。また、同様に、載置に際して第1吸着部21による吸着を解除するときにおいても、空気を噴射して(正圧状態として)もよい。
【0046】
(b)上記実施形態では、第1吸着部21が矩形状をなし、その外周側に位置する第2吸着部22が平面視ロ字状をなす場合について例示しているが、必ずしも上記形状に拘泥されるものではない。例えば、第2吸着部を平面視コ字状としてもよいし、第2吸着部が複数個から構成されていてもよい。いずれにせよ、第1吸着部が押さえ爪と干渉せず、第2吸着部が押さえ爪と干渉する配置構成であればよい。
【0047】
(c)上記実施形態では、負極箔1及び正極箔3共通の電極箔供給ステージ12が設けられる構成としているが、それぞれ別の電極箔供給ステージ12が設けられる構成としてもよい。すなわち、負極箔供給ステージ及び正極箔供給ステージがそれぞれ別に設けられていてもよい。
【0048】
(d)上記実施形態では、吸着手段16に対し、セパレータ2又は電極箔(負極箔1又は正極箔3)が1枚ずつ積層ステージ13に搬送され積層される構成を採用しているが、セパレータ2が多孔質素材により構成されていることを勘案すると、セパレータ2を介して負極箔1又は正極箔3を吸着することもできる。すなわち、吸着手段16により先ずセパレータ2を吸着し、次にその状態で、電極箔供給ステージ12にある負極箔1又は正極箔3を、セパレータ2を介して吸着し、一組のセパレータ2と負極箔1又は正極箔3とを積層ステージ13上へ載置する構成としてもよい。
【0049】
(e)上記実施形態では、個々の供給手段を用いてセパレータ2及び電極箔(負極箔1又は正極箔3)等をそれぞれ所定位置(セパレータ供給ステージ11、電極箔供給ステージ12等)に供給し、各所定位置(セパレータ供給ステージ11、電極箔供給ステージ12等)に供給されたセパレータ2や電極箔(負極箔1又は正極箔3)を、製造装置10を用いて、前記所定位置とは異なる積層ステージ13に積層する場合について具体化されている。これに対し、正極箔3及び負極箔1、並びに、セパレータ2にそれぞれ対応させて、複数の搬送装置を用意し、各搬送装置を用いて、所定の積層位置(積層ステージ13)に正極箔3及び負極箔1、並びに、セパレータ2を交互に積層することとしてもよい。いずれにせよ、上記実施形態に記載された搬送装置に関する技術思想は、正極箔3や負極箔1、或いはセパレータ2を少なくとも1枚ずつ搬送する必要のある場合において種々の搬送装置として具現化可能である。
【0050】
(f)上記実施形態において用いられているガイドレールに代えて、チェーンコンベア等の他の手段を用いてもよい。
【0051】
(g)上記実施形態では、正極箔3や負極箔1、或いはセパレータ2の両側縁部を押さえつける4つの押さえ爪18を押さえ手段として採用することとしているが、押さえ爪の個数は特に限定されるものではない。また、押さえ爪に代えて、上下動可能な押さえ棒等を採用することも可能である。
【0052】
(h)第1吸着部21と第2吸着部22とがそれぞれ独立して駆動させられることとしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…負極箔、2…セパレータ、3…正極箔、4…積層体、10…製造装置、11…セパレータ供給ステージ(第1位置)、12…電極箔供給ステージ(第1位置)、13…積層ステージ(第2位置)、16…吸着手段、18…押さえ手段としての押さえ爪、21…第1吸着部、22…第2吸着部、24…サーボモータ、25…駆動手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート体を吸着可能な吸着手段と、
前記吸着手段を移動させることで、第1位置にあるシート体を、当該第1位置とは別の第2位置へと搬送し、該第2位置上に前記シート体を載置可能とする移動手段とを備え、
前記第2位置においては、前記シート体の縁部を押さえつけるための押さえ手段が設けられてなるシート体の搬送装置であって、
前記吸着手段は、前記押さえ手段と干渉しない第1吸着部と、当該第1吸着部の外側に位置し前記押さえ手段と干渉する第2吸着部とを備え、
前記第1吸着部と第2吸着部とを相対移動可能に構成したことを特徴とするシート体の搬送装置。
【請求項2】
前記第1位置にある前記シート体を吸着し、該シート体を前記第2位置の上方に搬送するに際しては前記第1吸着部の吸着面と前記第2吸着部の吸着面とが面一となるようにし、
前記シート体が前記第2位置の上方に位置する所定タイミングにおいて、前記第1吸着部の吸着面と前記第2吸着部の吸着面とがずれるよう、前記第1吸着部を前記第2吸着部から相対的に離間させ、
前記第2位置上に前記シート体が載置される直前には、前記第1吸着部のみが前記シート体を吸着するよう構成したことを特徴とする請求項1に記載のシート体の搬送装置。
【請求項3】
前記所定タイミングに同期させて、前記第2吸着部による吸着を解除するよう構成したことを特徴とする請求項2に記載のシート体の搬送装置。
【請求項4】
前記吸着手段の外形が、前記シート体の外形と同等に設定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のシート体の搬送装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の搬送装置を備えてなり、
前記シート体は、積層電池用の電極箔及びセパレータのうち少なくとも一方であることを特徴とする積層電池の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−1489(P2013−1489A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133124(P2011−133124)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000106760)CKD株式会社 (627)
【Fターム(参考)】