説明

シート体識別子の設定方法、文書識別子の設定方法及び、シート体管理システム

【課題】 表面状態が変化しても原本であるか否かを的確に判定可能とする。
【解決手段】 文書の作成に用いる用紙16には、磁性線材がランダムに漉き込んであり、この用紙が装填される文書情報読取り部22には、交番磁界を発生する励磁コイル28と、交番磁界が加えられることによる磁性線材が発するパルス状の応答信号を検知する検知コイル30を一体にしたアンテナユニット32が、用紙の予め設定した検知位置に対向するように二次元的に配置している。文書IDを設定するときには、検知位置と、各検知位置で検知コイルで検知する応答信号の強度による用紙情報を取得し、この用紙情報を検知位置に基づいて二次元的に配列したデータを用いる。このデータを用いることにより、文書を的確に識別可能な文書IDを得ることができると共に、用紙の表面に画像等が印刷されたり汚れが付着しても、的確な真偽判定が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文書が原本であるか否かを認証に係り、詳細には、シート対を特定可能とするシート体識別子の設定方法、文書識別子の設定方法及びシート体管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機やプリンタの性能向上、パーソナルコンピュータなどの処理性能の向上に伴って、原稿に記録されている画像を高精細で複写可能となっている。これにより、原稿と複写物の見分けがつかないほどの高品質の画像形成が可能となっている。
【0003】
ところで、原稿と複写物との判別が困難となる画像複写が可能となることにより、紙幣や有価証券のみならず、旅券、各種の権利証書、各種の照明書等の各種の文書が複製される可能性が高まっており、各種の文書が原本であるか否かの真偽を高精度で判定可能とする技術の確立が望まれている。
【0004】
ここから、紙を漉くときに植物繊維が作り出すランダムなパターン画像を用い、原本のパターン画像の特徴量を抽出して記憶しておき、比較対象の該当特徴量と、記憶している原本の特徴量を比較することにより、比較対象が原本か否かの真偽判定を行う紙識別方法の提案がなされている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、原本を形成している紙の厚さ斑状態を検出して記憶しておき、比較対象の表面状態と比較することにより、比較対象が原本か否かの真偽判定を行う書類確認方法などの提案がなされている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2004−102562号公報
【特許文献2】特開2004−148611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、表面状態や植物繊維によるランダムなパターン画像などに基づいた特徴量は、原本を形成している紙を特定することは可能であるが、特徴量として記憶している紙上の部位に画像や文字などが印刷されるなどしたり、また、汚れ等が付着して、原本として特定するための特徴量を光学的に読み取ることができなくなってしまうと、真偽の判別が困難となってしまうという問題がある。
【0007】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、記録用紙などのシート体が原本であるか否かを的確に判定可能とするシート体識別子の設定方法、文書識別子の設定方法及び、シート体管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、識別子を付与する対象のシート体として、交番磁界が与えられることによりパルス状の応答信号を発する磁性線材をランダムに埋め込んだシート体を用い、該シート体表面の予め設定した複数の検知位置のそれぞれで、前記応答信号の強度を検知し、該検知結果を、前記検知位置に基づいて一次元的又は二次元的に配列し、該配列によって得られるデータを、前記対象シート体を特定する識別子に設定することを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、バルクハウゼン効果を用いて、シート体にランダムに埋め込んだ磁性線材の応答信号の強度を、シート体上に予め設定している複数位置で検知する。
【0010】
シート体に埋め込まれる磁性線材が発するパルス状の応答信号は、検知位置と磁性線材の距離などによって強度が変化する。また、磁性線材をランダムに埋め込むことにより、シート体が異なれば、同じ位置であっても応答信号の強度は変化する。
【0011】
ここから、本発明では、シート体上の予め設定している複数の検知位置での応答信号の強度の配列を、シート体の識別子に設定する。これにより、シート体の表面が汚れるなどして表面状態が変化しても、的確な真偽判定が可能となる。
【0012】
このような本発明のシート体としては、記録用紙などは勿論、樹脂プレートなどの任意の材質でシート状に形成したものを適用することができる。
【0013】
本発明の文書識別子の設定方法は、記録用紙に画像ないし文字を形成して作成した文書を特定可能とする文書識別子の設定方法であって、前記記録用紙を、交番磁界が与えられることによりパルス状の応答信号を発する磁性線材をランダムに漉き込んで生成し、該記録用紙上の予め設定した複数の検知位置のそれぞれで、前記応答信号の強度を検知し、該検知結果を、前記検知位置に基づいて一次元的又は二次元的に配列し、該配列によって得られるデータを、前記記録用紙を用いて作成する文書の文書識別子に設定することを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、シート体として記録用紙などの紙材を適用し、磁性線材をランダムに漉き込んだ記録用紙を用いた文書に識別子を設定するときに、記録用紙の識別子を用いる。
【0015】
これにより、文書に新たな書込みがなされたり、汚れが付着するなどしても、的確な真偽の認証が可能となる。
【0016】
このような本発明では、前記応答信号の検知位置を、前記記録用紙上に仮想した格子の交点とすることができる。すなわち、縦横に所定の間隔で検知位置を設定して、それぞれの検知位置での応答信号の強度を用いて、識別子を設定しており、これにより、識別子の設定は勿論、的確な認証も可能となる。
【0017】
このような本発明が適用されるシート体管理システムは、交番磁界が与えられることによりパルス状の応答信号を発する磁性線材をランダムに埋め込んだシート体に対して、該シート体を特定可能とする識別子を付与して管理する管理システムであって、前記交番磁界を発する発信手段及び、前記シート体状の予め設定されている複数の検知位置での、前記発信手段によって発せられる前記交番磁界に対する前記応答信号の強度を検知する検知手段と、前記各検知位置での前記検出手段の検知結果に基づいてデータ配列から前記シート体の識別子を設定する設定手段と、を含むものであれば良い。
【0018】
また、本発明のシート体管理システムは、前記発信手段をなす励磁コイル及び前記検知手段をなす検知コイルを一体にしたコイルユニットを備えることができ、また、前記検知手段又は前記検知ユニットを、それぞれが前記シート体の検知位置に対向可能に二次元配列されていても良い。
【0019】
さらに、本発明は、前記設定手段が、前記検知強度の離散値を用いて前記識別子を設定することが好ましく、また、前記設定手段が、前記離散値に基づいたビットデータを用いて前記識別子を設定することがより好ましい。
【0020】
このようにして検知したデータに対する処理を行うことにより、測定条件にかかわらず一定のデータ配列を得ることができるので、的確に認証可能となる識別子が得られる。
【0021】
また、本発明は、前記設定された前記シート体ごとの前記識別子を含むシート体情報を記憶する記憶手段を備えることが好ましく、さらに、新たなシート体に対する前記検知手段の検知結果と、前記記憶手段に記憶されている前記識別子を照合する照合手段を、含むものであれば良い。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明によれば、磁性線材をランダムに埋め込んでいるシート対上の予め設定した複数の検知位置で、交番磁界に対する応答信号の強度を検知し、検知位置及び検知した応答信号の強度に基づいて識別子を設定するので、シート体の表面状態に変化が生じても、的確な真偽判定が可能となるという優れ効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。図1には、本実施の形態に適用した文書管理システム10の概略構成を示している。
【0024】
この文書管理システム10には、文書登録装置12と共に、多数の複写装置14によって形成されており、文書管理システム10では、文書登録装置12と複写装置14のそれぞれを、ネットワーク接続するなどして、データ交換が可能となるようにしている。
【0025】
なお、文書登録装置12と複写装置14の接続は、これに限らず、少なくとも文書登録装置12から各複写装置14へデータ伝送が可能であればよく、好ましくは相互にデータ伝送が可能であればよく、これを達成できる構成であれば任意の構成を適用することができる。
【0026】
文書登録装置12では、所定サイズの用紙16に画像や文字などを印刷して形成した文書18を原本として登録する。このとき、文書登録装置12では、登録する文書18ごとに文書識別子(以下、文書IDとする)を設定して、この文書IDを用い、複写装置14による複写制限管理が可能となるようにしている。
【0027】
図2には、本実施の形態にシート体として適用した記録用紙(以下、用紙16とする)の概略構成を示している。なお、本実施の形態では、シート体として記録用紙を用いて説明するが、本発明は、これに限らず、樹脂プレート、アルミ箔、アルミ板など、磁化されていない任意の材質の部材をシート状に形成したシート体に適用することができる。
【0028】
用紙16は、一般的手法で所定の厚さで漉かれて生成された、例えばPPC(Plain Paper Copier)用紙などを適用することができる。
【0029】
また、この用紙16には、磁性材料によって形成した微小径でランダムな長さの線材(以下、磁性線材20とする)がランダムに漉き込まれている。この磁性材料20としては、線径が30μm以上(半径が15μm以上)であることが好ましく、例えば、用紙16の厚さが80μm程度であるときには、40μm程度とすることにより、磁性線材20が用紙16の表面に凸部を生じさせてしまうことがなく、磁性線材20が目立たなくなり、用紙16内に磁性線材20が漉き込まれているのを目視での判断が難しくなるために好ましい。
【0030】
また、磁性線材20の長さは、バルクハウゼン効果を用いて検出可能とするために、5mm以上、好ましくは、15mm程度の任意の長さを適用することができる。なお、5mm以下では、磁性線材20と見なさいものとしても良い。
【0031】
さらに、磁性線材20としては、Co−Fe−Ni−B−Siからなるアモルファスシリコンなど、保持力が低い任意の磁性材料を用いて形成することができる。
【0032】
用紙16では、所定長さ(例えば、15mm程度)の任意の長さの多数の磁性線材20がランダムに漉き込まれていることにより、磁性線材20の配置が同じものが存在する確率が極めて低くなっている。すなわち、磁性線材の長さ、配置位置、配列が実質的に同じものが生じないとみなすことができる。
【0033】
図1に示すように、文書登録装置12は、文書情報読取り部22と、文書情報読取り部22で読み取った文書情報(用紙情報)に対して所定の処理を施す情報処理部24を含んで形成されている。
【0034】
この情報処理部24としては、パーソナルコンピュータやワークステーションなど、予め記憶しているプログラムに基づいた各種の処理が可能であれば、任意の構成の情報処理装置を適用することができる。
【0035】
また、文書情報読取り部22は、文書18に形成されている画像を読み取るスキャナ機能を含んでも良く、さらに、用紙16に所定の画像や文字等を形成する印刷機能を備えた複合機などに、文書情報読取り機能を付加したものなどを適用することができる。
【0036】
文書情報読取り部22では、バルクハウゼン効果を利用して文書18の用紙16に漉き込まれている磁性線材20の配列に基づいた情報(以下、用紙情報とする)を取得する。
【0037】
すなわち、磁性線材20は、保持力が比較的小さく、このためにヒシテリシスループが略矩形状となっており(図示省略)、急峻な磁化反転が生じるようになっている。文書情報読取り部22では、このような磁性線材20が漉き込まれている用紙16に、図3(A)に示す如き交番磁界を与える。磁性線材20は、交番磁界が与えられることにより、図3(B)に示すように、磁化反転ポイントHPで磁化反転を生じるとき、パルス状の応答信号(磁気ノイズ)を発生する。
【0038】
文書情報読取り部22では、予め設定している用紙16の二次元上の位置で磁性線材20の発する応答信号を検出して(例えば電圧変化として検出)、強度配列を用紙情報として出力する。
【0039】
図4には、このような文書情報読取り部22の概略構成を示している。文書情報読取り部22では、交番磁界の発生に用いる電源(例えば、交流電源)26が設けられている。また、文書情報読取り部22には、電源26から供給される電力によって交番磁界を発生するアンテナとなる励磁コイル28及び、磁性線材20が発生する放蕩信号を検知する検知アンテナとなる検知コイル30からなる複数のアンテナユニット32が設けられている。
【0040】
文書情報読取り部22では、電源26から交流電力を各励磁コイル28へ供給することにより、励磁コイル28のそれぞれで交番磁界を発生させるようになっている。また、検知コイル30には、対応する励磁コイル28によって発生される交番磁界に応じた電流が誘起される。このとき、励磁コイル28が、用紙16の磁性線材20に対向し、交番磁界によって磁性線材20がパルス状の応答信号を発生することにより、この応答信号に応じた電流が誘起されるようになっている。
【0041】
文書情報読取り部22には、検知コイル30のそれぞれに対応して、ハイパスフィルタ(HPF)34、積分器36及びA/D変換器38が設けられている。なお、ここでは、HPF34、積分器36及びA/D変換器38を個別に図示せずに、それぞれを一括して図示している。
【0042】
検知コイル30のそれぞれに誘起される電流は、HPF34に入力されるようになっており、HPF32のそれぞれでは、入力された電流から低周波数成分を除去している。電源26の周波数は、磁性線材20が発する応答信号の周波数よりも低くなっており、HPF34では、電源26の周波数成分を除去して、応答信号成分のみを通過させるようにしている。
【0043】
積分器36のそれぞれでは、HPF34を通過した電流を積分処理し、A/D変換器38は、積分処理された電気信号をA/D変換する。これにより、検知コイル30で検知した電流に、磁性線材20から発生される応答信号が含まれることにより、該応答信号の強度に応じた電圧が、デジタルデータとして出力される。
【0044】
一方、文書情報読取り部22では、例えば、図5に示されるように、プラテンガラス40と、プラテンガラス40の上面側を覆う原稿カバー42を備えており、用紙情報を読み込むときには、プラテンガラス40上の所定位置に用紙16又は、用紙16を用いた文書18(以下、総称して用紙16とする)を配置して、原稿カバー42によって覆うようになっている。
【0045】
図6に示すように、原稿カバー42には、プラテンガラス40側の面に、アンテナユニット32が配置されている。
【0046】
このアンテナユニット32は、用紙16に対向する領域内に、予め設定している一定の間隔で配置されている。これにより、文書情報読取り部22に用紙16を配置したときに、用紙16の表面に対して一定間隔でアンテナユニット32が対向するようになっている。なお、このようなアンテナユニット32は、例えば、20mm程度の大きさで形成することができ、ここから、アンテナユニット32は、例えば、30mm程度の間隔で配列することができる。
【0047】
用紙16は、プラテンガラス40上で予め設定した基準位置に合わせて配置されることにより、一定位置がアンテナユニット32に対向するようになっている。
【0048】
これにより、例えば、図6の紙面右上を原点O(0、0)とすると、各アンテナユニット32の中心点の点Pxyの座標を、P11(x1、y1)〜P1m(x1、ym)、・・、Pn1(xn、y1)〜Pnm(xn、ym)とすることができ、この点P11〜Pnmが、用紙16上の座標位置となる。
【0049】
一方、各アンテナユニット32では、対向するか近接している磁性線材20(図6では図示省略、図2参照)の数、それぞれの磁性線材20ごとの点Pxyに対する位置、傾き及び磁性線材20の長さによって、検知する応答信号のレベル(強度)が異なる。
【0050】
また、各アンテナユニット32で検知する応答信号のレベルは、用紙16ごとに異なり、同じ用紙16であれば、それぞれのアンテナユニット32で検知する応答信号のレベルが同じとなる。
【0051】
文書情報読取り部22では、各アンテナユニット32の検知コイル30で検知される応答信号の強度に応じた電圧を出力する。すなわち、点Pnmに対応する位置での、用紙16上での磁性線材20に基づいた用紙情報が得られる。
【0052】
ここで、情報処理部24では、文書情報読取り部22から出力(用紙情報)から得られたデータが全て「0」であるときには、該当用紙16又は文書18が、登録すべき用紙16又は文書18でないと判断する。
【0053】
これに対して、点Pxyの何れかの電圧Vxyが、磁性線材20によって大きなレベルとなっているとき(例えば、磁性線材20が存在していると判断できるように予め設定している値以上)には、該当用紙16又は文書18の登録を行う。
【0054】
情報処理部24では、文書情報読取り部22から入力される点Pxy(ただし、xは1〜n、yは1〜m)ごとの電圧Vxyを、用紙16ごとの二次元配列のデータ(2次元ベクトル)とし、文書18(文書18を形成している用紙16)を特定する文書IDを生成する。
【0055】
点Pxyごとに得られるデータの配列は、
11、V12、・ ・、V1m
21、V22、・ ・、V2m
・・ ・ ・ ・ ・ ・
n1、Vn2、・ ・、Vnm
となる。文書管理システム10では、このデータの配列を文書IDに設定する。
【0056】
なお、電圧Vxyの最大値を1として得られたデータを正規化し、0〜1の実数値で保持するようにしても良い。これにより、例えば、図7(A)に示すデータを文書IDとして用いることができる。
【0057】
また、閾値を設定しておき、離散値に対して、この閾値を越えるときに「1」、閾値に満たないときに「0」となるように設定しても良く、これにより、例えば、閾値を0.8とすると、図7(A)に示す文書IDから、図7(B)に示すビットデータで形成することができる。
【0058】
このようにしてデータ処理を行うことにより、検知条件にかかわらず一定の値のデータを得ることができる。すなわち、文書情報読取り部22で読取りを行うときの電源26の電圧、交番磁界の周期(電源周波数)などの測定条件によって得られる値が異なるが、離散値を用いることにより、測定条件にかかわらず略一定の値を得ることができ、また、ビットデータとすることにより、データ量の削減や設定した文書IDを用いた照合処理などが容易となる。
【0059】
なお、ここでは、応答信号の二次元配列を文書IDとするが、一次元に変換して、一次元のデータを文書IDとしても良い。
【0060】
一方、図1に示すように、情報処理部24には、管理データ記憶部46が設けられており、情報処理部24では、用紙16又は文書18が登録すべきものであると判断したときには、文書18に関する情報と共に、設定した文書IDを、管理データ記憶部46に格納して、文書18の登録を行うようにしている。
【0061】
一方、文書管理システム10に設けている複写装置14には、スキャナ部48とプリント部50が含まれており、スキャナ部48で原稿に記録された画像を読み込んで、画像データを生成し、この画像データをプリント部50へ出力することにより、画像データに応じた画像を用紙16などに形成して出力することができる。
【0062】
このような複写装置14としては、プリンタ機能を備えたものであっても良く、このときには、パーソナルコンピュータなどの画像処理装置から入力される画像データに応じた画像の印刷出力を行うものであっても良い。
【0063】
この複写装置14のスキャナ部48には、文書情報読取り部52及び、複写制御部54が設けられている。
【0064】
文書読取り部52は、前記した文書情報読取り部22と同じ構成を適用することができる(図4、図5参照)。すなわち、スキャナ部48に設けている原稿カバー42に、アンテナユニット32が、所定間隔で配置され、用紙16を基準位置に合わせて装填することより、用紙16上の点Pxyでの、バルクハウゼン効果を用いた応答信号の検出及び、検出した応答信号に基づいた用紙情報の出力が可能となっている。
【0065】
文書情報読取り部52では、読み取った用紙情報を、複写制御部54へ出力する。複写制御部54では、文書情報読取り部52から入力された用紙情報に、予め設定しているレベル以上の電圧が含まれるときには、該当用紙16又は文書18が、文書管理システム10に登録されている可能性があると判断して、文書IDの照合を行う。
【0066】
また、複写制御部54は、情報処理部24の管理データ記憶部46に接続しており、文書IDの照合を行うときには、管理データ記憶部46に格納している文書18の文書IDを読み出し、文書情報読取り部52で読み取った文書を比較する。このとき、文書IDがビットデータであるときには、文書情報読取り部52から入力された用紙情報を所定の閾値に基づいてビットデータに変換するなどして、用紙情報を文書IDに応じたデータに変換するものであれば良い。
【0067】
ここで、文書制御部54では、登録されている文書IDと、文書情報読取り部52から入力された文書IDが一致すると、文書情報読取り部52に装填された用紙16が、登録されている用紙16(文書18)であると判断し、この用紙16に形成されている画像の複写を制限するようにしている。
【0068】
このように構成されている文書管理システム10では、例えば、各種の証書などの複写を制限又は禁止する文書18を作成するときには、磁性線材20をランダムに漉きこんでいる用紙16を用い、この用紙16に所定の画像を形成する。また、用紙16を用いて作成した文書18を複写制限対象として登録する。
【0069】
このときには、登録すべき文書18又は文書18の作成に用いる用紙16(以下、用紙16とする)を文書情報読取り部22に装填し、用紙16から用紙情報を読み込む。
【0070】
この後、読み込んだ用紙情報から登録可能な用紙であるか否か、すなわち、装填された用紙16に磁性線材20が埋め込まれているいるか否かを確認し、用紙16に埋め込まれた磁性線材20を検知でき、登録可能な用紙16であるときに、用紙16を用いた文書18の登録を行う。
【0071】
用紙16を用いる文書18の登録は、読み込んだ用紙情報、すなわち、用紙16にランダムに漉きこんでいる磁性線材20に基づいた用紙情報から、該当用紙16を用いて作成している文書18の文書IDを設定する。
【0072】
この後、設定した文書IDと共に、文書18に関する情報などを含めて、管理データ記憶部46に格納することにより文書登録を行う。
【0073】
このような文書登録は、用紙16に画像を形成する前に行っても良く、また、用紙16に画像を形成した後に行うこともできる。すなわち、文書管理システム10では、用紙16に漉きこんでいる磁性材料20の配列に基づいて文書IDを設定するので、用紙16上に画像や文字などが記録されていても、的確に用紙情報を読み取ることができるようになっている。
【0074】
一方、文書管理システム10に設けている複写装置14では、任意の文書について登録されている文書18であるか否かの確認を行うことができる。登録文書であるか否かの確認は、対象文書を文書情報読取り部52に装填し、文書が形成されている用紙の用紙情報を読み込む。
【0075】
ここで、対象文書の用紙が、磁性線材20の漉きこまれていないものであるときには、アンテナユニット32の何れでも、交番磁界に対する応答信号を検知しない。
【0076】
これに対して、磁性線材20が漉き込まれている用紙16であるときには、文書情報読取り部52から磁性線材20の配列に応じた用紙情報が出力されるので、文書情報読取り部52の出力する用紙情報から、用紙に磁性線材20が漉き込まれているか否かの判断が可能となっている。
【0077】
また、複写装置14では、磁性線材20が漉き込まれている用紙16であるときには、対象文書から読み出した用紙情報と、文書登録装置12の管理データ記憶部46に格納されている文書IDを比較する。この比較は、複写装置14から用紙情報を、文書登録装置12で伝送し、文書登録装置12の情報処理部24で行うようにしても良く、また、複写装置14が、文書登録装置12の管理データ記憶部46から文書IDを読み出して行うものであっても良い。
【0078】
また、用紙情報と文書IDの比較確認は、例えば、文書IDがビットデータであれば、対象文書の用紙情報をビットデータに変換することにより可能となる。
【0079】
ここで、用紙16には、ランダムに磁性線材20が漉きこまれており、このために、用紙情報は、実質的に用紙16ごとに異なる。
【0080】
ここから、用紙情報が文書IDと一致するときには、対処文書が登録されている文書18であると判断することができる。
【0081】
このような判断がなされたときには、例えば、複写装置14での文書18に対する複写処理を禁止したり、また、複写操作を行うユーザーのユーザー認証を行って、その結果に基づいて複写処理が実行されるなどの処理を行うことができる。
【0082】
これにより、登録されている文書18を原本とする複写がなされてしまうのを確実に防止することができる。
【0083】
また、登録されている文書18であるか否かの的確な特定が可能とであるので、該当文書の出所を的確に判断することができ、機密文書などが意図せずに外部へ流出してしまうのを抑えることができる。
【0084】
なお、文書登録を行っていない場合、用紙16に磁性線材20が漉きこまれているにもかかわらず、用紙情報と一致する文書IDが存在しないことになる。このようなときには、文書登録装置12が該当文書の用紙情報を取得し、出力した用紙情報から文書IDを作成することにより、該当文書を原稿とした複写履歴を把握することができる。
【0085】
また、文書管理システム10では、磁性線材20が漉き込まれている用紙16を用い、この用紙16内の磁性線材20の配列に基づいて登録されている文書18であるか否かを確認するようにしているので、例えば、文書18を登録した後に、汚れが付着したり、また、書込みがなされても、登録されている文書18であるか否かの的確な判断が可能となる。
【0086】
なお、以上説明した本実施の形態は、本発明の構成を限定するものではない。例えば、本実施の形態では、所定間隔で二次元上に配置したアンテナユニット32を用いて用紙情報の読込みを行うようにしたが、本発明は、これに限るものではなく、用紙16で二次元的に設定したそれぞれの位置で、磁性線材20が発する応答信号を検知可能とするものであれば任意の構成を適用することができる。
【0087】
例えば、本実施の形態では、励磁コイル28と検知コイル30を一体にしたアンテナユニット32を用いたが、これに限らず、多数の検知ユニット30のみを二次元的に配列し、プラテンガラス40の下面側に一つないし複数の励磁コイルを設けるようにしても良い。このとき、励磁コイルを移動せずに用紙16の全域に交番磁界を与えることができるようにしても良く、また、励磁コイルを走査移動させて、複数の検知コイルのそれぞれに対応可能となるようにしても良い。
【0088】
また、用紙16の縦又は、横方向に沿って所定間隔でアンテナユニット32を一次元的に配置し、配置方向と直交する方向に走査移動させながら、磁性線材20の発する応答信号を検知するものであっても良い。
【0089】
さらに、一つのアンテナユニット32を用い、該アンテナユニット32を、用紙16の縦方向及び横方向のそれぞれに走査移動させながら、磁性線材20の発する応答信号を検知するようにするなどの種々の構成を適用することができる。
【0090】
また、本実施の形態では、用紙16の縦方向及び横方向に沿って所定間隔を置いた位置ごとに磁性線材20が発する応答信号を検知するようにしたが、応答信号を検知する位置は、予め設定した位置であれば任意の位置及び数を適用することができる。
【0091】
すなわち、磁性線材20の発する応答信号を検知するポイントは、多くすることにより、用紙16の的確な差別が可能となるが、必ずしも一定間隔位置である必要はなく、用紙16の表面に対して予め設定した位置であれば、任意の位置での応答信号の検知結果を用いて文書IDを作成するものであって良い。
【0092】
また、本実施の形態では、文書管理システム10を例に説明したが、本発明はこれに限らず、用紙16からの磁性線材20が発する応答信号の読取り、読み取った応答信号に基づいた文書IDの設定、登録及び、登録している文書IDを用いた用紙16の真偽の照合が可能であれば任意の構成を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本実施の形態に適用した文書管理システムの概略校正図である。
【図2】用紙への磁性線材の配置の一例を示す概略図である。
【図3】(A)は交番磁界の概略を示す線図、(B)は(A)の交番磁界に対応する応答信号の概略を示す線図である。
【図4】文書情報読取り部の一例を示す概略構成図である。
【図5】文書情報読取り部の要部の一例を示す概略構成図である。
【図6】アンテナユニットを設けた原稿カバーの概略図である。
【図7】(A)、(B)は文書IDの一例を示す文字列である。
【符号の説明】
【0094】
10 文書管理システム(シート体管理システム)
12 文書登録装置
14 複写装置
16 用紙(記録用紙、シート体)
18 文書
20 磁性線材
22 文書情報読取り部(発信手段、検知手段)
24 情報処理部(設定手段、照合手段)
26 電源(発信手段)
28 励磁コイル(発信手段)
30 検知コイル(検知手段)
32 アンテナユニット(検知ユニット)
46 管理データ記憶部(記録手段)
52 文書情報読取り部(発信手段、検知手段)
54 複写制御部(照合手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
識別子を付与する対象のシート体として、
交番磁界が与えられることによりパルス状の応答信号を発する磁性線材をランダムに埋め込んだシート体を用い、
該シート体表面の予め設定した複数の検知位置のそれぞれで、前記応答信号の強度を検知し、
該検知結果を、前記検知位置に基づいて一次元的又は二次元的に配列し、該配列によって得られるデータを、前記対象シート体を特定する識別子に設定することを特徴とするシート体識別子の設定方法。
【請求項2】
記録用紙に画像ないし文字を形成して作成した文書を特定可能とする文書識別子の設定方法であって、
前記記録用紙を、交番磁界が与えられることによりパルス状の応答信号を発する磁性線材をランダムに漉き込んで生成し、
該記録用紙上の予め設定した複数の検知位置のそれぞれで、前記応答信号の強度を検知し、
該検知結果を、前記検知位置に基づいて一次元的又は二次元的に配列し、該配列によって得られるデータを、前記記録用紙を用いて作成する文書の文書識別子に設定することを特徴とする文書識別子の設定方法。
【請求項3】
前記応答信号の検知位置を、前記記録用紙上に仮想した格子の交点としていることを特徴とする請求項2に記載の文書識別子の設定方法。
【請求項4】
交番磁界が与えられることによりパルス状の応答信号を発する磁性線材をランダムに埋め込んだシート体に対して、該シート体を特定可能とする識別子を付与して管理する管理システムであって、
前記交番磁界を発する発信手段及び、
前記シート体状の予め設定されている複数の検知位置での、前記発信手段によって発せられる前記交番磁界に対する前記応答信号の強度を検知する検知手段と、
前記各検知位置での前記検出手段の検知結果に基づいてデータ配列から前記シート体の識別子を設定する設定手段と、
を含むことを特徴とするシート体管理システム。
【請求項5】
前記発信手段をなす励磁コイル及び前記検知手段をなす検知コイルを一体にした検知ユニットを備えたことを特徴とする請求項4に記載のシート体管理システム。
【請求項6】
前記検知手段又は前記検知ユニットを、それぞれが前記シート体の検知位置に対向可能に二次元配列されていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のシート体管理システム。
【請求項7】
前記設定手段が、前記検知強度の離散値を用いて前記識別子を設定することを特徴とする請求項4から請求項6の何れか1項に記載のシート体管理システム。
【請求項8】
前記設定手段が、前記離散値に基づいたビットデータを用いて前記識別子を設定することを特徴とする請求項7に記載のシート体管理システム。
【請求項9】
前記設定された前記シート体ごとの前記識別子を含むシート体情報を記憶する記憶手段を備えたことを特徴とする請求項4から請求項8の何れか1項に記載のシート体管理システム。
【請求項10】
新たなシート体に対する前記検知手段の検知結果と、前記記憶手段に記憶されている前記識別子を照合する照合手段を、含むことを特徴とする請求項9に記載のシート体管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−257564(P2006−257564A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−73998(P2005−73998)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】