説明

シート巻取ローラおよびその製造方法

【課題】巻き取ったシート状材料に生じる跡の発生を低減でき、シート状材料の巻き取りが容易で使用上の利便性がよいシート巻取ローラおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】
円筒状または円柱状をなす芯材11と、該芯材11の外周部に形成したシート巻取層12とを備え、該シート巻取層12は、外周部の一部に軸方向に沿って延びる溝14を有しシートSを粘着不可能な非粘着部13と、前記溝14内に設けられシートSを粘着可能な粘着部15とからなる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂フィルム、紙および布などのシート状材料を巻き取るために使用するシート巻取ローラおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LCD(液晶ディスプレイ)や有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネルなどは、基板上に合成樹脂製のフィルムがラミネートされている。この合成樹脂フィルムは、所定幅でその幅方向に対する直交方向に連続した一枚のシートとして形成され、コアに対して規定長さで巻回させた状態で納品される。そして、この合成樹脂フィルムは、製造時に所定量巻き出して使用される。同様に、紙製品を製造する原料である紙や、衣服を製造する原料である布も、コアに巻回した状態で納品される。
【0003】
このようなシート状材料のコアとなるシート巻取ローラが特許文献1,2に記載されている。特許文献1のシート巻取ローラは、図10(A)に示すように、円筒状をなす硬質なコア本体1を備え、その全外周部に、シート材料を粘着可能なゴム層2を形成している。また、特許文献2のシート巻取ローラは、図10(B)に示すように、円柱状の巻付けコア3を備え、その外周部に、軸方向に沿って延びるように粘着テープ4を貼着する構成としている。なお、粘着テープ4としては、基材の両面に粘着層を有する両面テープと、基材の一面だけに粘着層を有する片面テープとが使用されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1のシート巻取ローラは、シートSの巻取作業性が極めて悪いという問題がある。具体的には、この巻取作業は、巻き始めが最も重要であり、巻き始めの第1層に皺を生じさせると、その外周部に巻回したシートにも皺が生じる。そして、ゴム層2の外周部全面が粘着性を有する場合には、1層目の巻回時に僅かな位置ズレがあっても皺を生じさせてしまう。なお、この皺は、シートSが合成樹脂フィルムの場合、巻回後にフィルムが僅かに収縮して締まるため、巻き出した状態でも皺が跡となって鮮明に残る。そのため、その部分は製品を製造するための原料として使用することはできない。
【0005】
一方、特許文献2のシート巻取ローラは、粘着性を有する部分が巻付けコア3の一部だけであるため、粘着性が無い部分にシートを巻き付ける際には、有る程度の滑りが作用するため、巻き始めの第1層に皺を発生させることは少ない。
【0006】
しかしながら、この特許文献2では、巻き始めの端部を位置決めする粘着テープ4の厚さ(約35μm)とシートSの厚さ(合成樹脂フィルムの場合には約30〜100μm)とを加えた厚さ分の段差が生じる。そして、この段差は、その外周に巻回するシートSに跡となって残るため、その跡が付いた部分は前記と同様に製品の原料として使用することはできない。また、粘着テープ4による粘着部(領域)は、1回シートSを貼着すると、粘着テープ4が部分的にシートSに貼り付いたまま巻付けコア3から剥がれてしまうため、再使用できない。そのため、粘着テープ4の貼り替えが必要になるが、その際に巻付けコア3の外周面に僅かでも粘着剤が残存すると、特許文献1と同様の問題が生じる。そのため、強い溶剤で粘着剤を確実に拭き取る必要があるため、作業性が悪いという問題がある。また、巻取ローラを再使用する度に粘着テープ4を貼り替えると、コスト高になるという問題がある。しかも、粘着テープ4を巻取りコア3の外周部に軸方向に沿って直線的に貼着する作業は、非常に面倒である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−327186号公報
【特許文献2】特開2007−253422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の問題に鑑みてなされたもので、巻き取ったシート状材料に生じる跡の発生を低減でき、シート状材料の巻き取りが容易で使用上の利便性がよいシート巻取ローラおよびその製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明のシート巻取ローラは、円筒状または円柱状をなす芯材と、該芯材の外周部に形成したシート巻取層とを備え、該シート巻取層は、外周部の一部に軸方向に沿って延びる溝を有しシートを粘着不可能な非粘着部と、前記溝内に設けられシートを粘着可能な粘着部とからなる構成としている。
【0010】
このシート巻取ローラは、シートを粘着可能な粘着部がシート巻取層の一部のみであるため、シートの巻き始めである第1層の巻付時に皺を生じさせることを防止できる。また、シートを巻き付けることにより生じる段差は、極めて薄いシートの肉厚分だけであるため、その第2層目以後に巻き付けられたシートに巻き跡が生じることも抑制できる。しかも、この巻取ローラの粘着部は、ゴム弾性体であるため、洗浄液で洗い流したり、拭き取ることにより再使用が可能である。そのため、使用上の利便性を向上できるうえ、使用につれて必要なコストが増大することはない。
【0011】
このシート巻取ローラでは、前記シート巻取層は弾性を有するもので、前記粘着部を、非粘着部の硬度と略同一とすることが好ましい。
また、前記粘着部の粘着力を120〜180hpaとすることが好ましい。
このようにすれば、所定肉厚のシートの端部を確実に貼着して、巻き付けることができる。
【0012】
さらに、前記粘着部は、非粘着部の配合材料に粘着付与剤を更に配合してなることが好ましい。即ち、粘着部は、非粘着部と同質材料で構成することが好ましい。このようにすれば、非粘着部と粘着部との境界部分に分離を生じさせることなく、一体的なシート巻取層を構成できる。
【0013】
さらにまた、前記非粘着部と粘着部とは、その境界部分に段差がない外周面を形成することが好ましい。このようにすれば、巻取状態のシートに巻き跡が生じることを防止できる。
【0014】
そして、前記非粘着部と粘着部とを、異なる配色とすることが好ましい。このようにすれば、作業者が非粘着部と粘着部とを明確に識別できるため、シート端部の位置決め作業性を向上できる。
【0015】
また、このシート巻取ローラの製造方法は、円筒状または円柱状をなす芯材の外周部にシート巻取層を形成するもので、前記シート巻取層は、前記芯材の外周部にシートを粘着不可能な配合材料を巻き付けて非粘着部を形成し、前記非粘着部の外周部に軸方向に沿って延びる溝を形成し、前記溝にシートを粘着可能な配合材料を充填するように配設して粘着部を形成するものである。
【0016】
この製造方法では、前記溝を、前記芯材の表面まで切削して設け、露出した芯材に接着剤を塗布して粘着部を形成すること好ましい。
【0017】
このようにすれば、芯材の外周部に非粘着部と粘着部とからなる2種のシート巻取層を成形することができる。また、非粘着層に形成する溝を芯材の表面まで切削して設け、露出した芯材に接着剤を塗布して粘着部を成形することにより、後から別に成形する粘着部が分離することを確実に防止できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のシート巻取ローラでは、粘着部をシート巻取層の一部のみに成形しているため、シートの巻付時に皺を生じさせることを防止できる。また、シートを巻き付けにより生じる段差は、シートの肉厚分だけであるため、その第2層目以後に巻き付けられたシートに巻き跡が生じることも抑制できる。しかも、この巻取ローラの粘着部は再使用が可能であるため、使用上の利便性を向上できるうえ、使用につれて必要なコストが増大することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る実施形態のシート巻取ローラを示す斜視図である。
【図2】図1の要部断面図である。
【図3】(A),(B),(C)はシート巻取ローラの製造工程を示す斜視図である。
【図4】シート巻取層の配合例を示す図表である。
【図5】シート巻取ローラによる巻取状態を示す要部拡大断面図である。
【図6】本発明のシート巻取ローラの変形例を示す要部断面図である。
【図7】本発明のシート巻取ローラの他の変形例を示す要部拡大断面図である。
【図8】本発明のシート巻取ローラの他の変形例を示す要部拡大断面図である。
【図9】本発明のシート巻取ローラの他の変形例を示す要部拡大断面図である。
【図10】従来のシート巻取ローラを示し、(A)は従来例の斜視図、(B)は第2従来例の斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0021】
図1および図2は、本発明の実施形態に係るシート巻取ローラ10を示す。このシート巻取ローラ10は、芯材11の外周部に円環状をなすようにシート巻取層12を形成し、このシート巻取層12を非粘着部13と粘着部15とで構成したものである。
【0022】
前記芯材11は、鉄、銅、アルミニュウムなどの金属、または、G−FRP(ガラス繊維)、または、C−FRP(カーボン繊維)、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂)、塩化ビニル樹脂などの樹脂、または、紙からなる。本実施形態では、重量面および強度面からC−FRPを円筒形状に形成したものを用いている。なお、この芯材11は、内部空間がない円柱形状に形成してもよい。また、断面円形状に限られず、多角形状としてもよい。
【0023】
前記シート巻取層12は、シートSを粘着不可能な非粘着部13の周方向の一部に、シートSを粘着可能な粘着部15を軸方向に延びるように設けたものである。非粘着部13は、ブチルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム・エチレンプロピレン共重合体、ネオプレンゴムを主体とした原料を使用したもので、芯材11に対して接着剤を介して接着されている。この非粘着部13には、軸方向に沿って延びる溝14が設けられている。この溝14は、非粘着部13の外周部から芯材11の表面にかけて設けられている。粘着部15は、非粘着部13と同質の材料(原料)に、粘着付与剤を配合して粘着性を具備させたものである。この粘着部15は、溝14に嵌め込んだ状態で、芯材11に対して接着剤を介して接着されている。そして、これら非粘着部13と粘着部15とは、その境界部分に段差がない平滑な外周面(円形)を形成する構成としている。
【0024】
前記非粘着部13の溝14は、周方向の幅が30〜200mmの範囲で設けられている。これは、30mmより幅を小さくした場合には、粘着部15にシートSの端部Seを位置決めして貼着する際の作業性が悪くなり、200mmより幅を大きくした場合には、粘着部15にシートSを貼着する際にズレが生じると皺が発生し易くなるためである。勿論、非粘着部13の外周は、溝14を形成する幅より大きい。また、非粘着部13は弾性を有し、そのゴム硬度はJIS−A15度〜30度の範囲とされている。これは、ゴム硬度を15度より柔らかくした場合には、シートSの巻取時に皺が付き易いという問題があり、30度より硬くした場合には、シートSの端部Seにより跡が残るという問題があるためである。
【0025】
一方、粘着部15は、非粘着部13と同様に、そのゴム硬度がJIS−A15度〜30度の範囲とされている。そして、この粘着部15は、この硬度範囲内において非粘着部13と略同一硬度となるように構成している。ここで、本実施形態では、略同一の硬度とは、差が±10度未満のことを意味する。これは、硬度差が10度以上になると、境界部分の硬度差によりシートSに跡が生じるためである。また、粘着部15は、粘着付与剤の添加により、粘着力が120〜180hpaの範囲とされている。これは、粘着力を120hpaより小さくした場合には、粘着性能が低下するためシートSの端部Seを確実に粘着できない一方、粘着力を180hpaより大きくした場合には、粘着性能が高くなり過ぎるため巻き出し後にシートSの端部Seの剥離作業が困難になるためである。
【0026】
なお、図4に非粘着部13および粘着部15の配合材料の一例を示す。非粘着部13および粘着部15は、ブチルゴム、加硫剤、加硫助剤、充填剤、加工助剤、軟化剤および着色剤を所定量で配合したもので、粘着部15には更に粘着付与剤が添加されている。
【0027】
ブチルゴムは、イソプレンとイソブチレンが共重合した合成ゴムであり、シート巻取層12の主体となるものである。加硫剤は、ゴムを加硫させるためのもので、細井化学工業社製の「粉末硫黄」が適用可能である。加硫助剤は、加硫を適正に行うためのもので、正同化学社製の「亜鉛花」が適用可能である。充填剤は、ゴムを補強するためのもので、トクヤマ社製の「トクシール−U」が適用可能である。加工助剤は、ゴムの加工をスムーズに行うためのもので、新日本理化社製の「ステアリン酸」が適用可能である。軟化剤は、加硫物の硬度を調整するためのもので、日本サン石油社製の「サンパー150」が適用可能である。着色剤は、非粘着部13と粘着部15とを明確に識別できるように異なる配色とするためのもので、非粘着部13には住化カラー社製の「CB305イエロー」が適用可能であり、粘着部15には同社製の「CB510ブルー」が適用可能である。なお、この配合とすることにより、非粘着部13は略黄色となり、粘着部15は水色となる。粘着付与剤は、ゴムに粘着性を付与するためのもので、日本石油化学社製の「HV300」が適用可能である。
【0028】
そして、本実施形態では、非粘着部13は、ブチルゴムを100重量部、加硫剤を2重量部、加硫助剤を5重量部、充填剤を20重量部、加工助剤を1重量部、軟化剤を40重量部、そして、着色剤を1重量部、配合している。第1の粘着部15は、ブチルゴムを100重量部、加硫剤を2重量部、加硫助剤を5重量部、充填剤を20重量部、加工助剤を1重量部、粘着付与剤を10重量部、軟化剤を40重量部、そして、着色剤を1重量部、配合している。また、第2の粘着部15は、粘着付与剤を20重量部配合している点でのみ相違している。このように構成した非粘着部13は、ゴム硬度が20度で、シートSを粘着するような粘着力を具備しない。また、第1の粘着部15は、ゴム硬度が30度で、シートSを貼着するための粘着力を120hpaとすることができる。第2の貼着部は、ゴム硬度が15度で、シートSを貼着するための粘着力を180hpaとすることができる。
【0029】
次に、前記構成のシート巻取ローラ10の製造方法について具体的に説明する。
【0030】
まず、芯材11に対するシート巻取層12の接着性を安定させるために、芯材11の表面に対して研磨剤を圧縮空気によって吹き付け、表面の酸化物や異物を取り除くブラスト処理を施した後、芯材11の表面を溶剤によって更に洗浄することにより油分を除去する。ついで、芯材11の表面に所定の接着剤を塗布し、その接着剤を乾燥させた後、2〜4mmの厚さに調整した非粘着部13の配合材料を、芯材11の外周面に8mmから15mmの厚さで巻き付ける。
【0031】
その後、非粘着部13の外面にフィルムまたは布によりラッピングし、蒸気またはプレスにより加硫する。そして、加硫処理が終了すると、放冷(自然冷却)した後、予め設定した完成品肉厚(5mm)より約2mm大きい直径となるように、グラインダにて研磨を行う。これにより、図3(A)に示すように、芯材11の外周面に1種の非粘着部13からなるシート巻取層12’を成形したローラが形成される。
【0032】
次に、成形した非粘着部13を、ナイフまたはカッターによって周方向の一部を所定幅で軸方向に平行に延びるように取り除いて切削を行う。この際、図3(B)に示すように、非粘着部13の外周面から内部の芯材11の表面にかけて切削加工を行う。これにより、非粘着部13に溝14が形成される。なお、この切削加工時には、芯材11の外周面に非粘着部13によるシート巻取層12’を形成するために塗布した接着剤も、完全に完全に取り除く。
【0033】
ついで、切削加工により露出した芯材11の表面に、粘着部15を接着するための接着剤を塗布した後、第1または第2の粘着部15の配合材料を溝14に充填するように配設する。この際、図3(C)に示すように、粘着部15の配合材料は、既に成形されている非粘着部13の外周面より外方向に5mm以上高く突出するように積層する。
【0034】
その後、非粘着部13を成形する場合と同様に、非粘着部13および粘着部15を含む全外面にフィルムまたは布によりラッピングし、蒸気またはプレスにより加硫する。加硫処理が終了すると、放冷(1〜3日熟成)した後、予め設定した完成品肉厚となるように砥石により表面粗さが約RZ5〜10μとなるように研磨および仕上げ加工を行う。これにより、図1に示すように、芯材11の外周面に非粘着部13と粘着部15とからなるシート巻取層12を成形したシート巻取ローラ10が形成される。
【0035】
このように製造したシートSを粘着可能な粘着部15がシート巻取層12の一部のみであるため、シートSの巻き始めである第1層の巻付時に皺を生じさせることを防止できる。また、非粘着部と粘着部15とは境界部分にも段差がない外周面を構成し、図5に示すように、シートSを巻き付けることにより生じる段差は、極めて薄いシートSの肉厚分だけであるため、その第2層目以後に巻き付けられたシートSに巻き跡が生じることも抑制できる。
【0036】
具体的には、肉厚が30〜100μmのフィルムを、肉厚が35μmの粘着(両面)テープ4によって貼着して巻き取った場合、その段差により発生した巻き跡は200mにわたって残った。これに対して、本発明のシート巻取ローラ10では、0.6mしか巻き跡は残らなかった。即ち、巻き取るシートSに生じる巻き跡(ロス)を1%以下に低減できる。勿論、極薄手(5〜10μm)のフィルムから汎用(30〜100μm)のフィルムまで問題なく使用できる。
【0037】
さらに、本実施形態の粘着部15は、ゴム弾性体であるため、洗浄液で洗い流したり、拭き取ることによりシートSを貼着するための粘着性能を復活させることができるため、再使用が可能である。そのため、粘着テープ4の貼り替えや、それに伴う煩雑な清掃作業も不要であるため、使用上の利便性を向上できる。しかも、使用につれて必要なコストが増大することはない。
【0038】
また、粘着部15は、非粘着部13の配合材料に粘着付与剤を更に配合してなる同質材料で構成されているため、成形後の非粘着部13と粘着部15との境界部分に分離を生じさせることなく、一体的なシート巻取層12を構成できる。しかも、本実施形態では、非粘着層に形成する溝14を芯材11の表面まで切削して設け、露出した芯材11に接着剤を塗布して粘着部15を成形しているため、万が一にも境界部分に分離が生じても、後から別に成形した粘着部15が分離することを確実に防止できる。
【0039】
さらに、非粘着部13と粘着部15とは、異なる着色剤を配合することにより、異なる配色としているため、作業者が非粘着部13と粘着部15とを明確に識別できる。その結果、シートSの端部Seの位置決め作業性を向上できる。
【0040】
なお、本発明のシート巻取ローラ10は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0041】
例えば、前記実施形態では、溝14を非粘着部13の外周面から芯材11の表面にかけて設けたが、図6に示すように、芯材11は露出しない凹溝により構成してもよい。この場合、その溝14の深さは3mm以上とすることにより、非粘着部13と粘着部15との分離を防止することが好ましい。
【0042】
また、前記実施形態では、非粘着部13と粘着部15とを、硬度差が±10度未満となるように成形したが、この範囲内において粘着部15を非粘着部13より最大限にゴム硬度が低く(15度)なるように構成してもよい。このようにすれば、図7に示すように、段差が生じるシートSの端部Seを弾性的に埋没させることができる。その結果、巻き跡の発生を更に抑制できる。
【0043】
または、粘着部15のゴム硬度を最大限に低くなるように構成する場合、図8に示すように、該粘着部15の外周面が非粘着部13の外周面より膨出するように小曲率で形成してもよい。このようにすれば、シートSの端部Seを弾性的に埋没する一方、その上側に巻き付けられる2層目との隙間を粘着部15で補えるため、同様に巻き跡の発生を更に抑制できる。
【0044】
さらに、粘着部15は、許容硬度差の範囲内であれば、非粘着部13より高い硬度(30度)としてもよい。この場合、粘着部15の外面は、図9に示すように、溝14の上端縁間にかけて延びる平面となるように構成する。このように、所謂外周面の一部を面取りした形状とすれば、シートSの端部Seが巻取によりできる円の内部に位置することになる。その結果、前記と同様に、巻き跡の発生を更に抑制できる。
【0045】
さらにまた、前記実施形態では、非粘着部13に対して溝14を軸方向の全体(全長)にかけて設けたが、所定間隔をもって設けてもよい。即ち、非粘着部15を軸方向に所定間隔をもって設けてもよい。
【0046】
そして、シート巻取ローラ10は、合成樹脂フィルムに限られず、紙および布などのシート状材料を巻き取るコアとして使用すれば、同様の作用および効果を得ることができる。そして、非粘着部13および粘着部15のゴム硬度や粘着力は、巻き取るシート状材料の素材や厚みなどに応じて変更することが好ましい。
【符号の説明】
【0047】
10…シート巻取ローラ
11…芯材
12,12’…シート巻取層
13…非粘着部
14…溝
15…粘着部
S…シート
Se…端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状または円柱状をなす芯材と、該芯材の外周部に形成したシート巻取層とを備え、該シート巻取層は、外周部の一部に軸方向に沿って延びる溝を有しシートを粘着不可能な非粘着部と、前記溝内に設けられシートを粘着可能な粘着部とからなることを特徴とするシート巻取ローラ。
【請求項2】
前記シート巻取層は弾性を有するもので、前記粘着部を、非粘着部の硬度と略同一としたことを特徴とする請求項1に記載のシート巻取ローラ。
【請求項3】
前記粘着部の粘着力を120〜180hpaとしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシート巻取ローラ。
【請求項4】
前記粘着部は、非粘着部の配合材料に粘着付与剤を更に配合してなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のシート巻取ローラ。
【請求項5】
前記非粘着部と粘着部とは、その境界部分に段差がない外周面を形成していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のシート巻取ローラ。
【請求項6】
前記非粘着部と粘着部とを、異なる配色としたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のシート巻取ローラ。
【請求項7】
円筒状または円柱状をなす芯材の外周部にシート巻取層を形成するもので、
前記シート巻取層は、
前記芯材の外周部にシートを粘着不可能な配合材料を巻き付けて非粘着部を形成し、
前記非粘着部の外周部に軸方向に沿って延びる溝を形成し、
前記溝にシートを粘着可能な配合材料を充填するように配設して粘着部を形成する
ことを特徴とするシート巻取ローラの製造方法。
【請求項8】
前記溝を、前記芯材の表面まで切削して設け、露出した芯材に接着剤を塗布して粘着部を形成することを特徴とする請求項7に記載のシート巻取ローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−179989(P2010−179989A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23500(P2009−23500)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(390003344)株式会社加貫ローラ製作所 (9)
【Fターム(参考)】