説明

シート形成用スクリーン

多層布帛として形成されるシート形成用スクリーンであって、該布帛は16本の経糸から成る経糸の繰り返しがあり、その16本のうちの4本の経糸((11)〜(14))が上部経糸として形成され、その16本のうちの8本の経糸((31)〜(38))が下部経糸として形成され、そしてその16本のうちの残りの4本の経糸((21)〜(24))が(第1の織りを交互に完成させる)互いに隣接してそれぞれ配置された2本の経糸から成る2組の機能的経糸ペアを形成し、ここで、かかる2組の機能的経糸ペアを形成する4本の経糸のうちの少なくとも1本が、上部布帛層の中と下部布帛層の中の両方に延在し、それにより下部布帛層を上部布帛層に結合させることを特徴とする前記シート形成用スクリーンを記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維懸濁液の水を切るための抄紙機のウエットエンド部のシート形成区画において抄紙プロセスに使用される、多層布帛で作られたシート形成用スクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
抄紙における主たるプロセスは、いわゆるシート形成用スクリーン又は抄紙機スクリーンを使用することによって抄紙機のウエットエンド部のシート形成区画における濾過で繊維懸濁液から水を抜くことによって達成されるシートの形成(=シート形成)である。
【0003】
この点に関して、繊維懸濁液は、水に懸濁された木質繊維又はセルロース繊維、増量剤、及び補助化学薬品の混合物である。
【0004】
できるだけ均一な紙シートを生産できるように、シート形成直前の繊維懸濁液中の水の量を約99%まで増やすか又は設定する必要がある。このことは繊維が水中で均一に分配されるのを確実にし、そして形成されるシートの品質に有益である。
【0005】
水の量は、シート形成区画内での上述の濾過プロセスによって、すなわち、シート形成プロセスの間に約80%まで減らされる。紙繊維、増量剤、及び補助化学薬品は、抄紙用スクリーン上に不織布の形に均一に分配された状態で留まる。
【0006】
過去には、脱水プロセスは主に長網抄紙機に適合させた抄紙機スクリーンによって行われていたが、最近では主に、例えば、いわゆるギャップフォーマの形態の、ツインワイヤ式抄紙機が使用されるようになっている。これらのツインワイヤ式抄紙機は、繊維懸濁液が2つの抄紙機スクリーンの間にできた間隙にスプレーされ、脱水が両方のスクリーンを通って同時に行われることを特徴としており、それにより濾過プロセスを著しく加速し、それに伴って、抄紙機の生産速度も著しく加速することが可能である。最近では低い表面重量を有する紙のタイプ向けの抄紙機が存在し、それは2000m/分を超えるスピードでの生産が可能である。
【0007】
生産される紙に対するこれらの極端な要件と抄紙機の現行の条件は、この目的のために特別に設計され、そして高い繊維支持、高い透過性(openness)、及び高い機械的安定性を同時に提供するシート形成用スクリーンを求めている。加えて、織物のマーキングの低下傾向、すなわち、紙形成用スクリーンの高い均一性が、特にグラフィック紙の分野では必要である。
【0008】
過去の数年にわたって、異なった様式で形成された二つの面を備えた多層抄紙機用スクリーンが、これらの分野への適用に関して価値を持ち、そしてそれらを特定の使用目的に適合させた。このタイプのスクリーンには、上部組織の上側によって形作られる紙側がある。習慣的な言語の使用の中で、紙側は、スクリーンの上側とも呼ばれ、紙シートの形成にも当てはまる。加えて、これらのスクリーンには、下部布帛の下側によって形作られる機械側がある。スクリーンの下側とも呼ぶことができる機械側は、抄紙機の一部と接触する。それぞれのスクリーン側には、縦方向と横方向がある。この点に関して、機械方向(又は「machine direction」のMD)は、ペーパー・ウェブの動作方向、そのため同様に抄紙機スクリーンの動作方向を指す。そして機械と交差する方向と呼ばれることもある横方向(又は「cross machine direction」のCMD)は、抄紙機スクリーンの平面において90°回転した方向、すなわち、紙およびスクリーンの動作方向に対して直角に位置する方向である。
【0009】
最新の抄紙機スクリーンの非常に特異的な構成のため、通常、紙側と機械側も機械方向と横方向も交換不可能であり、それでなければスクリーンの作動モードが確保されないか、又は十分に確保にされないであろう。例えば、スクリーンの移動/循環を実現する機械側の機械方向の糸(=経糸又は長軸の糸)は、著しく突出している又ははみ出している緯糸による摩耗に対して保護され得る。紙側の長軸の糸(経糸)と横軸の糸(緯糸)のバランスのとれた相関関係を提供することで、紙繊維の良好な堆積の可能性を確保できる。繊維支持に関して、だがスクリーンのマーキング傾向に関しても、最も単純な、そして同時に繊維工学の最も古い基本的な織り方、いわゆる平織が、上部織物、よって紙側のための価値が実証された。この類の織り方では、その繰り返し(=織り方の最少繰り返し単位)は、2本の縦糸(warp threads)(原則として、スクリーンの長軸の糸/機械方向の糸は縦糸によって形成される)と2本の横糸(weft threads)(原則として、スクリーンの横軸の糸は横糸によって形成される)によって厳密に形成され、それらの糸は特に密接かつ均一な様式で織物に接続される。平織は紙シートを形成するのに非常によく適していて、そのため紙側に非常によく適しているが、通常、機械側にはそれほど適していない。そのため、抄紙機スクリーンが平織の紙側を提供するのであれば、スクリーンの機械側を形成する第2の繊維層を平織の下に備えるのが賢明であり、それがスクリーンに十分な安定性と摩耗の可能性をもたらす。
【0010】
この点に関して、2つの層(すなわち、紙側を形成する上部布帛、及び機械側を形成する下部布帛)の接続は、特に課題であり、とりわけ、紙側に好ましい平織はそのような層の接続のために特に好ましくない前提条件を伴うという事実に起因する。
【0011】
当該技術分野の現状は、2枚のスクリーン織物層を接続するための異なるアプローチを記載しており、そのうち一方のアプローチは、長軸方向ま又は横軸方向に延在する追加の、別個の結合糸の使用を記載している。このアプローチによると、2枚の完成品の完全な織物層が、別個の織物外部の結合糸によって互いに接続されるが、その結合糸は対応する織物層の織り方に寄与していない/必要とされていない。両方の織物層は、それぞれの織物層の中にもっぱら延在し、その結果それぞれの織物層のパターン、及び/又はそれぞれの織物層の織り方を完全に作り出す、長軸の糸と横軸の糸から成る。例えば、CA1115177A1に記載のこのアプローチでは、上部織物の縦糸と下部織物の縦糸を結合する別個の結合横糸が使用され、そしてDE3928484A1では、そのなかで別個の縦糸が結合糸として使用されている。他の例は、DE4229828A1、WO93/00472、及びEP0136284A2に見られる。織物を形成する糸に加えて結合糸が織物構造の中に含まれなければならない場合、別個の結合糸は、通常、それぞれの織物層を形成する糸より細くなるように構成される(例えば、CA1115177A1を参照のこと)。この点に関して、特に平織ではそのような別個の結合糸にスペースはほとんど提供されない。さもなければ、結合糸が織り方の元々均質な構造を妨げ、そのため紙にマーキングを引き起こす欠点が紙側に提供される平織で特に生じるであろう。しかしながら、実践では、細い結合糸が、特に多量の抗磨耗増量剤を加工する抄紙機、又は機械方向に曲がるスクリーン上に重い負担をかける構造においてかなり速く擦り減り、そして破れて、そのため2枚の織物層が最初にずれて、次いでその結果として切り離されることが示された。言うまでもないが、そのような様式で変更された織物/スクリーンによって高品質な紙を作り出すことは不可能である。
【0012】
代替手段として、いわゆる機能的横軸糸ペアとして相互作用する少なくとも2本の横軸糸(緯糸)が使用される。あるいは、機能的ペアの横軸糸の一方又は両方が上部布帛と下部布帛の中に交互に延在する。この点に関して、機能的ペアの両方の横軸糸は、紙側の平織の実質的にとぎれない横軸糸、すなわち上部の相互接続された横軸糸を形成できる。現在のところ紙側で実質的にとぎれない横軸糸を形成する必要のない機能的ペアのそれらの糸部分は、織物の内部に延在し、そして上部布帛に下部布帛を結合するために使用できる。この点に関して、下部布帛に結合する糸部分は、例えば、同時に下部布帛又はその織りを完成させることができる。例えば、上部の横軸糸は、2組の機能的横軸糸ペアの間に提供し得るが、それはもっぱら平織(すなわち、上部布帛の中にのみ延在する)を完成させるが、結合機能を持たない。このアプローチの代表的な実施形態は、例えば、EP0097966A2、EP794283A1、WO99/06630A1、WO99/06632A1、及びWO02/14601A1に見られる。結合糸、及び上部布帛を形成する横軸糸が同じ直径を有し、それにより紙側の均一性が増強できることがこの解決策の利点である。加えて、原料の使用法が限定できる。その一方で、接合強度が低下する。そのうえ、このアプローチでは、内部摩耗と、それを用いて十分な様式で接続された層の分離を避けることができなかった。抄紙機のローラーや脱水部材に対するスクリーンのたわみは、長軸方向におけるスクリーンの折れ曲がりにつながる。この点に関して、常に2枚の織物層のうちの1枚が圧縮され、その一方でもう片方は伸長される。摩擦は2枚の個々の層の内側にて起こり、それが内部の摩耗につながる。そのうえ、横軸方向に向けられる結合糸が布帛内でわずかに動くが、それが横軸方向に向けられた結合糸ともっぱら1つの層内に組み込まれた糸の間でも摩擦につながり、そのため摩耗する。
【0013】
別の代替手段は、いわゆる機能的長軸糸(経糸)ペアによる層の接続でであってもよい。両方の織物層が主たる折れ曲がり方向に延在する糸によって貫通されているのであれば、長さの違いは非常に短い間隔でバランスがとられる。内部の相対的運動の可能性は、実践においてもはや関係がない程度まで低下する。これに関連して、DE10030650C1及びUS2007/0157988に記載の解決策は、そこに記載された機能的長軸糸ペアによる紙側の平織への機械側の結合がもはや層の分離につながらないことを実践において示した。機械側の横方向の糸の長い浮上、いわゆる縦糸の位置変化の数と分布、および機械側の機械方向の糸への紙の分散のため、これらの織物は、紙のマーキング、織物の水分含量、及び繊維支持に関する制限を満たすので、軽量グラフィック紙に辛うじて使用できる。
【0014】
EP0069101とEP093096もまた、機能的長軸糸ペアによる層の接続を示している。
【0015】
EP1767692A2は多層布帛を開示しており、ここで紙側の平織は機械側の4軸織に結合されている。上部布帛では、上部布帛中にもっぱら延在する上部長軸糸(経糸)と長軸糸(経糸)の機能的ペアが交互に提供される。それぞれの上部長軸糸は、互いに隣接するペアで配置された2本の下部長軸糸の上に延在し、それはもっぱら下部布帛内に延在する。それぞれの機能的長軸糸ペアは、一方で上部布帛において上部の複合長軸糸を形成し、そしてもう一方で、上部の複合長軸糸の下に配置され、かつ、もっぱら下部布帛内に延在する下部の長軸糸の左手側と右手側に下部布帛を結合する。下部布帛は、下部の横軸糸(緯糸)と下部の長軸糸から完全に構成され、そして機能的長軸糸ペアの糸部分によって上部布帛だけに結合されるが、その一方で下部布帛内に延在している(別個の布帛外結合糸として機能する結合糸部分)。布帛には、18本の長軸糸から成る長軸糸の繰り返しがあり、そのうちの3本が上部長軸糸として形成され、そして9本が下部長軸糸として形成され、残りの6本の長軸糸で3組の機能的ペアを形成する。定義(以下を参照のこと)によって、2:3(6:9)又は1:2(6:12)の長軸糸比を得る(当業者が互いに隣接したペアで配置された下部長軸糸をそれぞれ1本の下部長軸糸とみなせば、1:1(6:6)または2:3(6:9)の比を得る)。
【0016】
同様のアプローチが、WO2004/085740A2及びWO2004/085741A1に記載されており、ここで、WO2004/085740A2は、4本の上部長軸糸、4組の機能的ペア、及び8本の下部長軸糸に分配された20本の糸から成る長軸糸の繰り返しを有する布帛を示す。WO2004/085741A1に示された布帛には、4本の上部長軸糸、4組の機能的ペア、及び4本の下部長軸糸に分配された16本の糸から成る長軸糸の繰り返しがあり、そのため2:1(8:4)または1:1(8:8)の長軸糸比が得られる。両方の布帛において、下部布帛は機能的ペアの糸部分によって上部布帛だけに結合する、すなわち下部布帛は下部長軸糸(経糸)と下部横軸糸(緯糸)によって完全に、かつ、最終的に形成される。
【0017】
EP1826316A2には、4本の上部長軸糸、12本の下部長軸糸、及び4組の機能的ペアから成る長軸糸の繰り返し(すなわち、24本の糸から成る長軸糸の繰り返し)を有する布帛が記載されている。上部縦糸及び機能的ペアが、機能的ペアによって完全な下側に結合される紙側の平織を形成する。少なくとも3本の異なった縦糸系が、布帛を作るのに必要である。上部長軸糸と機能的ペアが交互に配置され、それが2つの異なった上部縦糸系で覆われた紙側の織目につながる。
【0018】
EP1527229B1およびEP1220964B1それぞれが3本の長軸糸で構成されたトリプレット縦糸を開示し、その縦糸のそれぞれが上部布帛と下部布帛の中に延在する。
【発明の概要】
【0019】
本発明の課題は、多層布帛で作られたシート形成用スクリーンを提供することであり、それは製造が容易であり、先に記載した要件、すなわち、例えば、高い繊維支持、高い機械的安定性、低いマーキング傾向、及び安定した層接続を満たす。
【0020】
かかる課題を解決するために、本発明は、請求項1によるシート形成用スクリーンを提供する。本発明によるスクリーンのさらなる実施形態を従属クレームに記載する。
【0021】
本発明によれば、シート形成用スクリーンは、16本の長軸糸、上部長軸糸として形成されるうちの4本の長軸糸、及び下部長軸糸として形成されるうちの8本の長軸糸から成る長軸糸の繰り返しを有する多層布帛から形成される。残りの4本の長軸糸で、それぞれ互いに隣接して配置された2本の長軸糸から成る2組の機能的長軸糸ペアを形成する。
【0022】
本発明の第1の実施形態によれば、2組の機能的長軸糸ペアを形成する4本の長軸糸(経糸)のそれぞれは、上部布帛層の中と下部布帛層の中の両方に延在し、それによって上部布帛層は下部布帛層にしっかり接続される。
【0023】
本発明の第1の実施形態によれば、上部長軸糸は、上部布帛層に延在する横軸糸と一緒に上部布帛層の織り(例えば、これは紙側の織りである)を部分的に形成し、8本の下部長軸糸は、下部布帛層に延在する横軸糸と一緒に下部布帛層の織り(これは、例えば、機械側の織りである)を部分的に形成し、そして残りの4本の長軸糸から成る2組の機能的長軸糸ペアが、上部布帛層の織りと下部布帛層の織りの両方を完成する。この点に関して、2組の機能的ペアの長軸糸は、対応する織目の中に挿入する2本の上部複合長軸糸と2本の下部複合長軸糸を形成する。
【0024】
本発明の第2の実施形態によれば、2組の機能的長軸糸ペアを形成する4本の長軸糸(経糸)のうちの少なくとも1本が、上部布帛層の中と下部布帛層の中に延在し、それによって上部布帛層が下部布帛層に接続される。両方の布帛層の中に延在しない2組の長軸糸ペアの長軸糸は、上部層の中と2つの層の間に交互に、すなわち上部層と織物の内部に交互に延在する。本発明の第2の実施形態において、好ましくは、2組の機能的長軸糸ペアを形成する4本の長軸糸すべてが、同じく上部布帛層の中と下部布帛層の中に延在するので、織物層の確実な接続が確保される。
【0025】
本発明の第2の実施形態によれば、上部長軸糸は、上部織物層に延在する横軸糸と一緒に上部布帛層の織り(例えば、これは紙側の織りである)を部分的に形成し、そして8本の下部長軸糸は、下部布帛層に延在する横軸糸と一緒に下部布帛層の完全な織り(これは、例えば、機械側の織り方である)をすでに形成している。それぞれの長軸糸ペアの2本の長軸糸で、上部布帛層の織りを交互に完成する。よって、2組の機能的ペアの長軸糸で、上部布帛層の織りを完成する2本の上部の複合長軸糸を形成する。加えて、下部と上部布帛層の中の両方に延在する少なくとも1本の長軸糸で、下部の長軸糸によって完全に形成された下部布帛層を上部布帛層に結合させ、別個の結合糸として機能する。機能的ペアの両方の長軸糸が上部布帛層の中と下部布帛層の中の両方に延在すると、長軸糸ペアの2本の長軸糸で第1の織りを交互に完成し、加えて下部の長軸糸によって完全に形成された下部布帛層を上部布帛層に交互に結合する。このことは、後者の場合には、現在上部の複合長軸糸を形成するのに使用されていない機能的ペアの糸部分が、下部布帛の中に延在している少なくとも1本の横軸糸を組み込み、そしてそれによって下部布帛層を上部布帛層に接続するために別個の結合糸として機能することを意味する。これには、結合点の数の増加とそれ故のより強い層の接続といった利点がある。加えて、機能的ペアの両方の糸は、後者の場合、同じ糸長を有し、そのことは均一な織り合わせにつながる。
【0026】
本発明によれば、上部層の下部層への接続は、そのため、別個の接続糸によるか、又は機能的横軸糸ペアによる層の接続と比較して先に記載の利点をもたらす機能的長軸糸ペアによって(少なくとも一部)実現される。しかしながら、本発明にはさらに、例えば、別個の接続糸が機能的長軸糸ペアに加えて提供されるようなタイプのスクリーンも含まれるはずである。
【0027】
織物には16本の長軸糸から成る長軸糸の繰り返しがあるという事実のため、そして4本の上部の長軸糸、8本の下部の長軸糸および2組の機能的ペアへの16本の長軸糸の特許請求する分布のため、本発明による紙形成用スクリーンは(長軸糸が縦糸によって形成されるとすると)16本の軸と2本の縦糸ビームから成る軸パッケージを備えた織機によって製造できる。この点に関して、16本の長軸糸は、それぞれ8本の糸から成る2本の縦糸ビーム単位に切り離されことができ、その第1の単位がそれぞれの繰り返しの8本の下部の長軸糸を含んでなり、そして第2の単位がそれぞれの繰り返しの残りの8本の長軸糸を含んでなる。16本の軸と2本の縦糸ビームを備えた織機は、他の多くの織物/スクリーンの製造に必要であるので、本発明によるスクリーンは既存の織機によって全く問題なく製造できる。このことは、本発明によるスクリーンを製造するために別々の織機を使用するか、又は(例えば、軸を加えるか、もしくは引き抜くことによって)既存の織機を再構築する必要がないことを意味している。むしろ、本発明によるスクリーンは、別の16軸スクリーンの製造の合間に必要な機械を予め再構築せずに製造できる。
【0028】
特許請求する、16本の長軸糸の分布/割り当てが、4:8又は1:2の上部長軸糸に対する下部長軸糸の比を結果としてもたらす。本発明によるスクリーンの第1の実施形態において、それぞれ2組の機能的ペアの4本の長軸糸のうちの2本は、これらの4本の長軸糸が下部及び上部布帛(織物)層の両方の層で布帛(織物)の形成に寄与し、そしてそれぞれ2本の複合長軸糸を形成する場合、下部及び上部織物層にそれぞれ割り当てられることができるので、6:10または3:5の総長軸糸比が得られる。本発明によるスクリーンの第2の実施形態において、長軸糸比を計算するとき、2本の上部複合長軸糸だけが考慮されるとすると、6:8又は3:4の長軸糸比が得られる。(下部織物層の少なくとも1本の長軸糸だけが別個の結合糸として機能するが)4本の長軸糸が均しく上部織物と下部織物に分配されるとすると、まさしく第1の実施形態のように、6:10又は3:5の比が得られる。3:5又は3:4の記載した長軸糸比や、(通常、紙側を形成する)かかる上部織物層の長軸糸数の減少は、紙側のクロスメッシュの形成には好都合であり、そしてクロスメッシュの伸びはスクリーンの長軸方向に比べてスクリーン横軸方向でより大きい。抄紙機の操作やそのヘッドボックス内の流動状態により紙繊維が主に長軸方向に向けられる場合、こういったクロスメッシュは高い繊維支持を可能にする。このことは、スクリーン表面が、均一な総糸数、同程度の透過性、及び同程度のデザインを備えたより高い繊維支持能力を有することを意味する。したがって、むしろ横軸の様式に向けられたスクリーンの紙側は改良された繊維支持を提供する。比較的に多い下部長軸糸の数が、紙側の強度の低下と、クロスメッシュの形成に付随する機械方向のスクリーン伸長の増大のバランスをとっている、すなわち、紙側の長軸糸の減少によって引き起こされた重要な機械方向でのスクリーンの強度の低下と伸長の増大は、より多くの機械側の長軸糸の数によって相殺できる。
【0029】
本発明のある実施形態によれば、ちょうど2本の上部長軸糸、及び/又はちょうど4本の下部長軸糸が、2組の機能的長軸糸ペアの間で織物の中に配置され、それによってそれぞれ特に均一な紙側及び機械側が提示できる。
【0030】
本発明のもう1つの実施形態によれば、上部長軸糸と機能的ペアの長軸糸は、実質的に同じ直径を有する。そのため、長軸糸が縦糸によって形成されるとすると、上部長軸糸と機能的ペアの長軸糸は、共通の縦糸ビームに巻きつけられる可能性がある。例えば、(特に本発明の第1の実施形態において)下部長軸糸の直径が上部長軸糸の直径や機能的ペアの長軸糸と等しくてもよい。あるいは、(特に本発明の第2の実施形態において)下部長軸糸の直径が上部長軸糸や機能的ペアの長軸糸の直径より大きくてもよい。
【0031】
本発明のもう1つの実施形態によれば、上部織物の中に延在するすべての横軸糸が、もっぱら上部織物の中に配置される上部横軸糸として形成される、及び/又は下部織物の中に延在するすべての横軸糸が、もっぱら下部織物の中に配置される下部横軸糸として形成される。
【0032】
例えば、下部織物層の中に延在する横軸糸は、上部織物層の中に延在する横軸糸より直径が大きくてもよい。
【0033】
例えば、上部織物の中に延在する横軸糸に対する下部織物の中に延在する横軸糸の比は、1よりも大きく、例えば、少なくとも若しくはちょうど2:1、又は、例えば、少なくとも若しくはちょうど3:2であってもよい。上部織物の中に延在する横軸糸の数がより多いことは、先に記載した紙側の横軸メッシュの形成に都合がよい。しかしながら、本発明は、下部織物の中及び上部織物の中に延在する横軸糸を特定の数に限定することはない。
【0034】
例えば、第1の織り(=上部織物層の織り方)は平織であってもよく、例えば、第2の織り(=下部織物層の織り)は5軸織(特に、本発明の第1の実施形態/本発明の代替手段において;この点に関して、2組の機能的ペアの4本の長軸糸は、第2の織りの説明/評価のための2本の下部長軸糸とみなされる2本の下部複合長軸糸を形成する)又は(特に、本発明の第2の実施形態/代替手段において)4軸織(この点に関して、4軸織り又は5軸織りは、その織り方が4又は5本の軸によってできていることを意味する;言い換えれば、そのような織り繰り返しには、それぞれ4又は5本の縦糸と長軸糸がある)であってもよい。しかしながら、本発明は、上部織物の特定の織り、又は下部織物の特定の織りに限定されない。例えば、上部織物又は下部織物はさらに、同じ織り、例えば、平織などであってもよい。
【0035】
本発明によるスクリーンのさらなる変形形態は、代表的な実施形態に関する以下の説明から得られる。
【0036】
以下に、本出願で使用される用語のいくつかを規定する:
【0037】
長軸糸(経糸)は、抄紙機の機械方向に配置されている、スクリーン/織物の糸である。平面織スクリーンでは、長軸糸は機織り機の縦糸によって形成される。対照的に、円形織物では、横糸によって長軸糸を実現する。
【0038】
横軸糸(緯糸)は、抄紙機の機械方向に対して横軸に配置された、スクリーン/織物の糸である。平面織スクリーンでは、横軸糸が横糸によって形成される。対照的に、円形織物では、機織り機の縦糸によって横軸糸を実現する。
【0039】
織物層(布帛層)は、横軸糸と長軸糸(又は縦糸と横糸)から成る単層織物である。
【0040】
上部織物(布帛)又は上部織物(布帛)層は、特にキメの細かい様式で通常形成される織物層であって、それはスクリーンの紙側(=外側に向けた上部織物の上側)に通常形成され、その上に紙繊維層が形成される。上部層はスクリーンの「論理上の上側」に位置している。
【0041】
下部織物(布帛)又は下部織物(布帛)層は、特に丈夫な様式で通常形成される織物層であって、それはスクリーンの機械側(=外側に向けた下部織物の下側)に通常形成され、摩耗を生じる抄紙機の駆動部材や脱水部材と直接接触する。
【0042】
上部長軸糸(経糸)は、もっぱら上部織物に位置し、そして上部織物の中に延在する横軸糸とそこで織り合わせられる糸である。上部長軸糸は、上部織物を離れることはない、すなわち、それらは下部織物に移行しない。
【0043】
上部横軸糸(緯糸)は、もっぱら上部織物に位置し、そして上部長軸糸(及び機能的ペアの長軸糸)とそこで織り合わせられる糸である。上部横軸糸は、上部織物を離れることはない、すなわち、それらは下部織物に移行しない。
【0044】
下部長軸糸(経糸)は、もっぱら下部織物に位置し、そして下部織物の中に延在する横軸糸とそこで織り合わせられる糸である。下部長軸糸は、下部織物を離れることはない、すなわち、それらは上部織物に移行しない。
【0045】
下部横軸糸(緯糸)は、もっぱら下部織物に位置し、そして下部長軸糸(及び本発明の第1の実施形態においては、機能的ペアの長軸糸)とそこで織り合わせられる糸である。下部横軸糸は、下部織物を離れることはない、すなわち、それらは上部織物に移行しない。
【0046】
機能的長軸糸(経糸)ペアは、互いに直接隣接して位置する2本の長軸糸から成り、スクリーン/織物におけるその位置は、1つの織物層に制限されない、すなわち、機能的ペアの長軸糸がもっぱら1つの織物層の中に延在するとは限らない。通常、(本発明の第1の実施形態および本発明の第2の実施形態の代替手段において)機能的長軸糸ペアの両方の長軸糸は、下部織物の中と上部織物の中の両方に延在する、すなわち、長軸糸ペアの長軸糸は、上部織物層と下部織物層の間を移行する。しかしながら、(第2の実施形態の第2の代替手段によれば)機能的ペアの長軸糸の一方又は両方はさらに、2つの層のうちの1つと織物内部の間を移行することもある。本発明の第1の実施形態によれば、機能的ペアの2本の糸は、一緒に上部長軸糸(例えば、上部縦糸)及び下部長軸糸(例えば、下部縦糸)の役割の両方を満たし、加えてがそれらの伸びにより異なる織物層を相互接続する。そのような様式で形成された上部長軸糸及びそのような様式で形成された下部長軸糸はまた、それぞれ「上部及び下部複合長軸糸」とも呼ばれる。本発明の第2の実施形態によれば、機能的ペアの2本の長軸糸は、一緒に上部織物の内部長軸糸(「上部複合長軸糸」)、そして妥当な場合、下部織物の外部結合糸の役割を満たす。
【0047】
長軸糸の繰り返しは、織物の長軸糸の最も小さい繰り返し単位である。長軸糸が縦糸によって形成されると、長軸糸の繰り返しの糸の数は、織物を作り出すのに必要とされる軸の数に相当する。
【0048】
本発明を、以下に2つの代表的な実施形態によって、そして図面に関してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明による織物の図式的に説明した完全な繰り返しに関する透視図を示し、上部織物層が(A)によって示され、そして下部織物層が(B)によって示されている。
【図2】2つの織物層に対する16本の長軸糸の分布に関する簡単な例示を示し、横軸糸は除かれている。
【図3】図1の織物の正面図を示す(長軸糸と横軸糸の延在に関する横断面表面を見ることができる)。
【図4】図1の織物の透視図を示す、ここで図1の織り方の(6)〜(10)の長軸糸(及び縦糸、それぞれ)と、紙側及び機械側の横軸糸の基本的な延在の比を見ることができる。
【図5】図1の織物の紙側の概略平面図を示し、その下に位置している機械側は除かれている。
【図5a】上部織物の織目を示す、上部横軸糸が上部長軸糸又は上部複合長軸糸によって結び付けられる結合位置に「x」で印を付ける。
【図6】(その上に位置している紙側が存在しない)図1の織物の下部織物層の概略平面図を示す。
【図6a】下部織物の織目を示す、下部横軸糸が下部長軸糸又は下部複合長軸糸によって結び付けられる結合位置に「x」で印を付ける。
【図7】図1の織物全体の概略平面図を示す、すなわち、機能的ペアの位置の変化を含めて、紙側(上部織物)とその下に位置する機械側(下部織物)の両方の平面を示す。
【図8】図1〜7の織物を実現するための織機の16本の軸の繰り返しの16本の長軸糸の配列決定に関連する概略平面図を示す。
【図9】本発明の第2の実施形態による多層織物の上部織物層の概略平面図を示し、下部織物層は除かれている。
【図9a】上部織物の織目を示す、上部横軸糸が上部長軸糸又は上部複合長軸糸によって結び付けられる結合位置に「x」で印を付ける。
【図10】本発明の第2の実施形態による多層織物の下部織物層の概略平面図を示す。
【図10a】下部織物の織目を示す、下部横軸糸が下部長軸糸によって結び付けられる結合位置に「x」で印を付け、そして下部織物が機能的長軸糸ペアの長軸糸によって上部織物に結び付けられる結合位置に「−」で印を付ける。
【図11】本発明の第2の実施形態による布帛の概略正面図を示す。
【0050】
図1〜7は、本発明の第1の実施形態による布帛を例示する。上記布帛は、多層布帛であり、例えば、それが紙を抄くプロセス中に必要とされる場合に、スクリーンとして、例えばシート形成用スクリーンとして使用できる。上部織物層は参照数字(A)によって示され、その一方で、下部織物層は参照数字(B)によって示される。例えば、上部層はスクリーンの紙側を形成することができ、そして例えば、下部層はスクリーンの機械側を形成することができる。
織物のちょうど1回の繰り返し、すなわち、織物全体の最も小さい繰り返し単位が図1〜7で例示される。図1〜7によって示されるように、この実施形態による織物の繰り返しは、ちょうど16本の長軸糸(=機械方向の糸)(例えば、図2〜4を参照のこと)及びちょうど30本の横軸糸(=機械の横方向の糸)(例えば、図5〜7を参照のこと)を含む。例えば、長軸糸は縦糸によって形成されることができ、そして例えば、横軸糸は横糸によって形成されることができる。したがって、示した織物は、16本の軸数(16本の糸から成る長軸糸の繰り返しに相当する)(図8を参照のこと)によって製造され得る。
【0051】
16本の長軸糸が、以下のとおり下部織物層と上部織物層に分配される。4本の長軸糸(11)、(12)、(13)及び(14)がもっぱら上部織物層の中に延在し(例えば、図5を参照のこと)、そのため以下に、上部長軸糸と呼ばれるであろう。対照的に、8本の長軸糸(31)、(32)、(33)、(34)、(35)、(36)、(37)および(38)がもっぱら下部織物層の中に延在し(例えば、図6を参照のこと)、そのため以下に、下部長軸糸と呼ばれるであろう。
【0052】
織り方の繰り返しのうちの残りの4本の長軸糸(21)、(22)、(23)及び(24)は、いわゆる2組の機能的ペアとして形成される。互いに直接隣接して配置された2本の長軸糸(21)と(22)が第1の機能的ペアを形成し、そして互いに直接隣接して配置された2本の長軸糸(23)と(24)が第2の機能的ペアを形成する。2組の機能的ペアを形成する4本の長軸糸(21)、(22)、(23)及び(24)がそれぞれ下部織物層の中及び上部織物層の中に延在する、すなわち、これら4本の長軸糸(21)、(22)、(23)及び(24)が上部及び下部織物層の間を移行する。
【0053】
この点に関して、例えば、図5によって示されるように、常に機能的ペアの2本の長軸糸のうちのちょうど1本が紙側に位置している。このことは、ペアの2本の長軸糸のうちの最初の1本が紙側に位置しているとすると、機能的ペアの2本の長軸糸のうちの他の一本が織物内又は機械側に位置していることを意味する。ペアの1本の長軸糸が紙側を離れると、すなわち、織物内又は機械側に移行するとすぐに、もう片方の長軸糸が代わりをして紙側に延在する。示された代表的な実施形態において、機能的ペアの各長軸糸は、紙側を離れる前に紙側の9本の上部横軸糸の経路を渡って延在する。よって、長軸糸(22)は、交互に9本の横軸糸(104)〜(112)の上と下に延在し、そして長軸糸(21)は、交互に(示された繰り返しの)横軸糸(114)〜(120)及び(隣接している繰り返しの)(101)、(102)の上と下に延在する。したがって、両方の機能的ペア(21)、(22)及び(23)、(24)は、2本の「上部複合長軸糸」を形成する。そのため、上部織物層には、1回の繰り返しあたり4本の上部長軸糸と2本の上部複合長軸糸がある(図5を参照のこと)。この実施形態によれば、ちょうど2本の上部長軸糸(12)、(13)が、それぞれ2組の機能的ペア(21)、(22)及び(23)、(24)の間、つまり2本の複合長軸糸の間に配置される。図5によってさらに示されるように、長軸糸ペアの長軸糸の間の移行は、上部横軸糸の下(つまり図6によって示されるとおり、それぞれ下部横軸糸の上及び下部層と上部層の間、つまり織物内部)で起こる。それに由来するいわゆる移行の位置は、図5と6において(A1)、(A2)、(B1)及び(B2)で示されている。示された実施形態によれば、1組の機能的ペアの移行の位置は、もう片方の機能的ペアの移行の位置に対して3本の上部横軸糸によって相殺されるように配置されている。
【0054】
図5aは上部織物の織目を示している。この点に関して、2本の長軸糸(21)、(22)が、紙側の織目の中に挿入される上部複合長軸糸をどのように一緒に形成するのかをはっきりと見せることができる、すなわち、上部複合長軸糸(21)、(22)は紙側の平織を形成するために別段に必要とされる上部長軸糸を置き換える。同じことが長軸糸(23)、(24)に当てはまる。
【0055】
加えて、例えば図6によって示されるように、常に1組の機能的ペアのちょうど2本の長軸糸が、この実施形態による機械側に位置している。このことは、ペアの2本の長軸糸のうちの最初の1本が機械側に位置しているとすると、2本の長軸糸のうちの他の一本が紙側に位置していることを意味する。ペアの1本の長軸糸が機械側を離れるとすぐに、もう片方の長軸糸が代わりをして機械側に延在する。示された代表的な実施形態において、機能的ペアの各長軸糸は、機械側を離れる前に機械側の5本の下部横軸糸の経路を渡って延在する。よって、長軸糸(22)は、交互に9本の横軸糸(104)〜(112)の上と下に延在し、そして長軸糸(21)は、交互に(示された繰り返しの)横軸糸(114)〜(120)および(隣接している繰り返しの)(101)、(102)の上と下に延在する。したがって、両方の機能的ペア(21)、(22)及び(23)、(24)は、2本の「上部複合長軸糸」を形成する。そのため、上部織物層には、1回の繰り返しあたり4本の上部長軸糸と2本の上部複合長軸糸がある(図5を参照のこと)。この実施形態によれば、ちょうど2本の上部長軸糸(12)、(13)が、それぞれ2組の機能的ペア(21)、(22)及び(23)、(24)の間、つまり2本の複合長軸糸の間に配置される。よって、2組の機能的ペア(21)、(22)及び(23)、(24)は、2本の「上部複合長軸糸」と2本の「下部複合長軸糸」を同時に形成する。したがって、下部織物層には、1回の繰り返しあたり8本の下部長軸糸と2本の下部複合長軸糸がある(図6を参照のこと)。この実施形態によれば、ちょうど4本の下部長軸糸(33)、(34)、(35)、(36)が、それぞれ2組の機能的ペア(21)、(22)及び(23)、(24)の間、すなわち2本の複合長軸糸の間に配置される。
【0056】
30本の横軸糸のうち、20本の横軸糸(101)〜(120)はそれぞれ上部織物層および紙側に割り当てられ、そして10本の横軸糸(201)〜(210)はそれぞれ下部織物層および機械側に割り当てられる。上部層の20本の横軸糸(101)〜(120)は、下部層の10本の横軸糸(201)〜(210)より直径が小さい。20本の横軸糸(101)〜(120)はもっぱら上部織物層の中に延在し、そして10本の横軸糸(201)〜(210)はもっぱら下部織物層の中に延在する。このことは、横軸糸(101)〜(120)のいずれも機械側に移行せず、そして横軸糸(201)〜(210)のいずれも紙側に移行しないことを意味している。そのため、以下に、横軸糸(101)〜(120)は上部横軸糸とも呼ばれ、そして横軸糸(201)〜(210)は下部横軸糸とも呼ばれるであろう。本発明が上部及び下部横軸糸の示された数も上部横軸糸に対する下部横軸糸の示された比(ここでは:2:1)も制限しないことに留意すべきである。加えて、例えば、上部横軸糸の直径は、下部横軸糸の直径よりも太い。
【0057】
図5に示されているように、4本の上部長軸糸(11)〜(14)、及び2組の機能的ペア(21)、(22)及び(23)、(24)によって形成された2本の上部複合長軸糸で、それぞれ20本の上部横軸糸(101)〜(120)と一緒に紙側の上および上部織物層の中に平織を形成する。この点に関して、上部長軸糸(11)は、上部横軸糸(101)〜(120)のうちの1本の上とそのうちの1本の下に交互に延在する(連続/配列=1回上、1回下)。同じことが、上部複合長軸糸(21)、(22)に当てはまり、上部横軸糸の上と下への延在は、1本の上部横軸糸によって上部長軸糸(11)の延在に対して相殺されている。このことは、上部長軸糸(11)は上部横軸糸(101)の上に延在し、かつ、上部横軸糸(102)の下に延在すると同時に、上部複合長軸糸(21)、(22)が上部横軸糸(101)の下と上部横軸糸(102)の上に延在することを意味している。上部長軸糸(12)と上部複合長軸糸(23)、(24)は、上部長軸糸(11)と同じく延在し、そして上部横軸糸(101)〜(120)に対する上部長軸糸(13)及び(14)の延在は、上部複合長軸糸(21)、(22)の延在に相当する。言い換えれば、上部長軸糸と上部複合長軸糸のそれぞれは、上部横軸糸おきに織物に結び付く。しかしながら、この点に関して絶対に好適であると判明したとしても、本発明は紙側を平織に限定しないことに留意するべきである。参照数字(A1)によって示された位置では、糸(21)が織物内部に突入し、そして下部層に移行する。移行では、糸(22)が参照番号(A1)によって示された位置にて紙側に移行し、そしてそこで糸(21)と「置き換わる」。参照数字(A2)によって示された位置にて、糸(22)は織物内部に再突入し、そして下部層に移行する。移行では、糸(21)が(A2)によって示された位置にて紙側に移行し、そしてそこで糸(22)と「置き換わる」。
【0058】
図6に示されているように、8本の下部長軸糸(31)〜(38)並びに2組の機能的ペア(21)、(22)及び(23)、(24)によって形成される2本の下部複合長軸糸で、それぞれ10本の下部横軸糸(201)〜(210)と一緒に機械側の上及び下部織物の中に5軸織を形成する。しかしながら、機械側について示された実施形態/構成は、いくつかの可能な代表的な実施形態のうちのたった1つにすぎない、すなわち、示された織り方がこの点に関して適当であると判明したとしても、他の機械側の織り方が提供され得る。図1に示された織物の繰り返しの中の下部長軸糸(31)〜(38)並びに下部複合長軸糸(21)、(22)及び(23)、(24)のそれぞれは、ちょうど2本の下部横軸糸に結合し、そして残りの8本の下部横軸糸の上に浮上する(図6aを参照のこと)。連続/配列は以下のとおりである:「4本の下部横軸糸の上、下部横軸糸の下」。よって、例えば下部長軸糸(31)は、下部横軸糸(201)と(206)に織り込み、そして下部横軸糸(202)〜(205)及び(207)〜(210)の上に浮上する。図6に示された5軸織のピッチは、2本以下の下部横軸糸である。このことは、次の長軸糸(32)(すなわち、下部長軸糸(31)に隣接した下部長軸糸)が下部横軸糸(203)と(208)に織り込まれ、そして続く下部複合長軸糸(21)、(22)が下部横軸糸(205)及び(210)に織り込まれることなどを意味する。下部長軸糸(31)、(32)、(33)、(34)及び下部複合長軸糸(21)、(22)によって形成された5軸織は、下部長軸糸(35)、(36)、(37)、(38)及び下部複合長軸糸(23)、(24)によって繰り返される。言い換えれば、図6は、機械側の5軸織の2回の長軸糸繰り返しを示している(ならびに2回の横軸糸繰り返し、そのため要するに機械側の織り方の4回の繰り返し示されている)。
【0059】
図1〜7に示されている実施形態によれば、上部織物層の織りと下部織物層の織りの両方は、そのため、2組の機能的ペア(21)、(22)及び(23)、(24)によって完成する。このことは、長軸糸(21)、(22)、(23)、(24)(例えば、縦糸)を、上部横軸糸(例えば、表面横糸)と下部横軸糸(例えば、基底(ground)横糸)の両方と織り合わせ、その結果、それぞれの布帛又はそれぞれの織りが完成することを意味する。言い換えれば、紙側の平織及び機械側の5軸織りに対して示された実施形態において、2組の機能的ペア(21)、(22)及び(23)、(24)は、それぞれの織りを形成するのに寄与する。加えて、紙側と機械側は、2組の機能的ペア(21)、(22)及び(23)、(24)によって相互接続される。
【0060】
2組の機能的ペア(21)、(22)及び(23)、(24)の長軸糸は、下部織物と上部織物において織物内部糸としての役割を果たし、そして同時に結合糸として働く。よって、この実施形態によれば、機能的ペアの糸は、下部織物、すなわち機械側のそれぞれ、及び上部織物、すなわち紙側のそれぞれの両方で、対応する織物の不可欠な部分として使用される。それぞれの織物において、それらの織りは、下部織物を上部織物に結合するために役立つだけではなく、対応する織物の中に機能的結合部分を形成するためにも役立つ。
【0061】
先に記載した、2組の機能的ペアによる紙側と機械側の織り方の完成は、図5と6の組み合わせから特に明らかである。この点に関して、図5の糸(22)は、上部横軸糸(104)、(106)、(108)、(110)及び(112)に織り込まれ、そしてこの点に関して紙側の平織が完成する、それと同時に図6の糸(21)は、下部横軸糸(205)に織り込まれ、それによって、機械側の5軸織が完成する(この織りなしでは、横軸糸(205)は織物から抜け落ちるであろう、なぜなら、どの下部長軸糸によっても織り込まれないからである)。図6において、糸(22)が下部横軸糸(210)に織り込まれるように下向きに移行すると、それによって機械側の織りが完成し、糸(21)が上部横軸糸(114)、(116)、(118)及び(120)に織り込まれるように上向きに移行すると、それによって紙側の平織が完成する。その結果、長軸糸(21)と(22)はともに、紙側の織り(この実施形態によると平織)と機械側の織り(この実施形態によると5軸織り)を交互に完成させる。
【0062】
図7は、図5と図6に別個に示された2つの層を「組み立てられた」図面として示している。両方の層は平面図で示されている。上部層はシート形成用スクリーンの紙側を表す。
【0063】
図7に示されているように、上部長軸糸は、基本的に常に織物の平面図において見られるように2本の下部長軸糸の間にある。この点に関して、平面図において、上部長軸糸(11)は実質的に2本の下部長軸糸(31)、(32)の間に位置し、上部長軸糸(12)は主に下部長軸糸(33)、(34)の間に位置し、上部長軸糸(13)は実質的に下部長軸糸(35)、(36)の間に位置し、そして上部長軸糸(14)は実質的に下部長軸糸(37)、(38)の間に位置している。このことは、4:8又は1:2の上部長軸糸に対する下部長軸糸の比につながる。機能的ペアの4本の長軸糸(21)、(22)、(23)、(24)は、下部織物層と上部織物層に均等に分配され(それらが両方の層の織物を形成するのに寄与し、かつ、各層において2本の複合長軸糸を形成する場合)、6:10または3:5の長軸糸比を得る(図2を参照のこと)。
【0064】
図7によっても示されるように、紙側におけるいわゆる横軸メッシュ(機械方向/長軸方向におけるその伸びは横軸方向より少ない)の形成は、(それぞれ6:10及び3:5の長軸糸比に由来する)比較的に少ない数の上部長軸糸と上部複合長軸糸によって助けられる。かかる横軸メッシュは、繊維懸濁液中に含まれる有利な繊維支持を可能にする。比較的に大きな数の下部長軸糸及び下部複合長軸糸は、紙側の強度の低下と機械方向におけるスクリーン伸長の増大のバランスをとり、横軸メッシュの形成に協力している。
【0065】
図7でも示されているように、上部横軸糸は、平面図においてすべての下部横軸糸の上に配置される。加えて、上部横軸糸は、常に2本の下部横軸糸の間に配置される。この結果が、20:10又は2:1の上部横軸糸に対する下部横軸糸の比である。既述したように、この比を変えることもできる。しかしながら、上部横軸糸の数の増加は、横軸メッシュの形成を助ける。
【0066】
図1〜7に示された実施形態によれば、上部長軸糸(11)〜(14)の直径は、機能的ペアの糸(21)〜(24)の直径と等しい。それにより、一方では、均一な紙側を得ることができる。紙側の均一性は、2組の機能的ペアの4つの移行位置(A1)、(A2)、(B1)および(B2)のみによってわずかに影響を受ける。上部複合長軸糸又は上部長軸糸及び上部複合長軸糸だけが交互に提供される当該技術の現状の紙側の織りと比較して、紙側の織り方は、4本の上部長軸糸に対するそれぞれ2組の機能的ペアと2本の上部複合長軸糸の比によっては全くと言ってよいほど「妨げられ」なく、そして上部長軸糸と機能的ペア(機能的ペアの間の2本の上部長軸糸)の示した分布によって特に妨げられることはない。その一方、上部長軸糸(11)〜(14)および機能的ペアの糸(21)〜(24)は、少しの困難もなく同じ縦糸ビーム上に適用される(図8の縦糸ビーム(X2))。
【0067】
例えば、下部長軸糸(31)〜(38)の直径は、図1〜7に示した実施形態による上部長軸糸(11)〜(14)や機能的ペアの糸(21)〜(24)の直径と等しくてもよく、それによって、4つの移行点(A1)、(A2)、(B1)及び(B2)によってのみ妨げられる均一な機械側が得られる。
【0068】
明確化のために、そして非常に簡単な形で、図2は、紙側(A)と機械側(B)への長軸糸の機能的分配をもう一度示す。これはまず、記載した織物がそれぞれ8本の軸によって、そして3:5の長軸糸の繰り返しでできているという印象を与え得る。しかし、図5によって示されるように、上部長軸糸(11)の延在は上部長軸糸(13)の延在と同様でない。
【0069】
図1、3と4は、それぞれ記載した布帛及びシート形成用スクリーンの三次元像を示す。
【0070】
図8は、図1〜7による布帛を製造するための織機の図解を示す。2本の縦糸ビーム(X1)と(X2)が示されている。第1の縦糸ビーム(X1)は下部長軸糸を持ち、そして第2の縦糸ビーム(X2)は上部長軸糸と機能的ペアの長軸糸を持つ。もちろん、図8は、(長軸糸の繰り返しに従って)2本の縦糸ビームのごく一部だけを示す、すなわち、縦糸ビーム(X1)の長軸方向に見られるように、糸(38)には別の糸(31)が続き、次いで別の糸(32)などが続く。縦糸ビーム(X1)の糸(31)は、軸(S1)で引っ掛けられるか、またはそれを通して導かれる。先に言及されたが、示されていないもう片方の糸(31)もまた、(まさしく織物のその他のすべての糸(31)のように)軸(S1)に引っ掛けられる。軸(S1)が持ち上げられるとすると、糸(31)全体が軸(S1)と一緒に持ち上げられる、それにより横糸が糸(31)全体の下に先導される。同様に、上部長軸糸(32)全体が第2軸(S2)に引っ掛けられ、上部長軸糸(33)全体が第11軸(S11)に引っ掛けられるなど。そのため、長軸糸が縦糸で作られるとすると、16本の長軸糸から成る長軸糸の繰り返しを有する、(図8に図式的に示され、そして参照数字(X4)によって示される)図1〜7に示された織物を製造するために、軸パッケージ(X3)が必要であり、そしてそれは16本の軸(S1)、(S2)、(S3)、…、(S16)から成る。
【0071】
このことは、16本の長軸糸が、それぞれ8本の糸から成る2つの単位である、各単位に割り当てられたそれぞれ個々の縦糸ビーム(X1)及び(X2)に切り離され、そしてその糸はそれらの機能に従って機織り機の軸(X3)に配置されることを意味する。これは、先に記載したそれらの機能に従って長軸糸の論理的な割り当てをもたらす。
【0072】
多くの異なる布帛、特に、上部織物と下部織物の接続が機能的長軸糸ペアによって得られる織物が、2つの縦糸ビーム(X1)及び(X2)と接続した16軸の軸パッケージ(X3)から成る記載した組立部品によって製造できる。そのような布帛の例は、例えば、それぞれDE10030650C1やWO2007/087852に記載のスクリーン及び布帛である。したがって、多くの織物/スクリーンは、合間に織機を再建する必要なく全く同一の織機によって製造できる。
【0073】
図9〜11は、本発明の第2の実施形態による多層布帛を示しており、例えば、それは、抄紙プロセス中にそれが必要であるようなスクリーンとして、例えば、シート形成用スクリーンとして使用できる。この点に関して、図9が上部織物層(すなわち、スクリーンの紙側)の平面図を示す一方で、図10は下部織物層の平面図を示す。図11は多層布帛の正面図を示す。
【0074】
図9と10は、布帛のちょうど1回の繰り返しを示す。図9と10に示すように、この実施形態による織物の繰り返しは、ちょうど16本の長軸糸(=機械方向の糸)とちょうど20本の横軸糸(=機械の横軸方向の糸)から成る。例えば、長軸糸を縦糸で形成でき、そして例えば、横軸糸を横糸で形成できる。そのため、第2の実施形態による織物は、16本の軸数により、すなわち例えば、図8に示した組立部品により、まさしく第1の実施形態による織物のように製造できる。
【0075】
16本の長軸糸が以下のとおり下部織物層と上部織物層に分配される。4本の長軸糸(11)、(12)、(13)及び(14)が、上部長軸糸として形成され、そしてもっぱら上部織物層の中に延在し(図9を参照のこと)、その一方で、8本の長軸糸(31)、(32)、(33)、(34)、(35)、(36)、(37)及び(38)が、もっぱら下部織物層の中に延在する下部長軸糸として形成される(図10を参照のこと)。2組の機能的ペアが、織物の繰り返しの4本の残りの長軸糸(21)、(22)、(23)及び(24)から形成され、そして互いに直接隣接して配置された2本の長軸糸(21)と(22)が、第1の機能的ペアを形成し、そして互いに直接隣接して配置された長軸糸(23)と(24)が、この点に関して第2の機能的ペアを形成する。4本の長軸糸(21)、(22)、(23)および(24)のそれぞれが下部織物層の中と上部織物層の中に延在する、すなわち、これらの4本の長軸糸(21)、(22)、(23)及び(24)のそれぞれが繰り返しの中に上部織物層と下部織物層の間を移行する。
【0076】
図9と9aに示すように、機能的ペアの2本の長軸糸のうちのちょうど1本が常にそれぞれ紙側の上及び上部織物層の中に位置している。このことは、ペアの2本の長軸糸のうちの1本がそれぞれ紙側の上及び上部織物層の中に位置しているとすると、機能的ペアの2本の長軸糸のうちの他の一本が織物内(すなわち、上部層と下部層の間)又は下部織物層の中に位置していることを意味する。機能的ペアの1本の長軸糸が紙側を離れるとすぐに、もう片方の長軸糸が代わりをして紙側に延在する。示された代表的な実施形態において、機能的ペアの各長軸糸は、紙側の5本の上部横軸糸の経路を渡って延在し、そして同時に、3本の横軸糸に織り込まれる。したがって、両方の機能的ペア(21)、(22)及び(23)、(24)は、2本の「上部複合長軸糸」を形成し、そのため、上部織物層には、織物の1回の長軸糸の繰り返しあたり4本の上部長軸糸と2本の上部複合長軸糸がある。この実施形態によれば、ちょうど2本の上部長軸糸(12)、(13)が、それぞれ2組の機能的ペア(21)、(22)及び(23)、(24)の間、つまり2本の複合長軸糸の間に配置される。第1の長軸糸ペア(21)、(22)の長軸糸の移行は、上部横軸糸(101)及び(107)の下で起こり、第2の長軸糸ペア(23)、(24)のそれは、上部横軸糸(104)及び(110)の下で起こる。得られた移行位置は、図9の中に参照数字(A1)、(A2)、(B1)及び(B2)によって示される。1組の機能的ペアの移行位置は、もう片方の機能的ペアの移行位置に対して3本の上部横軸糸によって相殺されるように配置される。
【0077】
図10と10aに例示するように、現在上部織物層の中に位置していない機能的長軸糸ペアの長軸糸部分は、少なくとも1本(示した例において、ちょうど1本)の下部横軸糸の下に延在することによって下部織物層を上部織物層に結合し、そしてそれにより、(下部織物層の平面において)かかる長軸糸部分に織り込む。この点に関して、下部織物を結合する機能的糸のペアの長軸糸は、下部織物に関して別個の「織物外部」の結合糸として働く、すなわち、下部織物に結合する糸は、それぞれ機械側の織り方の形成および下部織物の形成に寄与しない。このことは、この実施形態によれば、2組の機能的ペア(21)、(22)及び(23)、(24)がどんな「下部複合長軸糸」も形成しないことを意味する。このことは、例えば、下部長軸糸が、下部織物の横軸糸の上下に交互に延在し、それによって、4本の横軸糸を織り込む一方で、−下部複合糸とみなされるなら−機能的ペアの2本の長軸糸が2本の下部横軸糸に一緒に織り込まれるだけであり、かつ、「1本の横軸糸の下、3本の横軸糸の上」の延在があるという事実によって図10および10aに示される。加えて、機械側の5軸織によれば、各横軸糸は、機械側の繰り返しあたりちょうど2回織り込まれ(図10は機械側の織り方の4回の繰り返しを示す、以下を参照のこと)、機能的ペア(21)、(22)によってすでに織り込まれている下部横軸糸(203)、(207)は、下部長軸糸(32)、(33)によって2回織り込まれる。したがって、下部織物層は、1長軸糸の繰り返しあたりちょうど8本の下部長軸糸を持つ。この実施形態によれば、ちょうど4本の下部長軸糸(33)、(34)、(35)、(36)が、2組の機能的ペア(21)、(22)及び(23)、(24)の間に配置される。
【0078】
20本の横軸糸のうち12本の横軸糸(101)〜(112)が上部織物層に結び付けられ、そして20本の横軸糸のうち8本の横軸糸(201)〜(208)が下部織物層に結び付けられる。上部層の12本の横軸糸(101)〜(112)は、下部層の8本の横軸糸(201)〜(208)より直径が細い。12本の横軸糸(101)〜(112)が上部横軸糸として形成され、もっぱら上部織物層の中に延在し、そして8本の横軸糸(201)〜(208)が下部横軸糸として形成され、もっぱら下部織物層の中に延在する。このことは、横軸糸(101)〜(112)のいずれもそれぞれ機械側および下部織物層の中に移行することがなく、かつ、横軸糸(201)〜(208)のいずれもそれぞれ紙側および上部織物層の中へ移行することがないことを意味している。しかしながら、本発明が、上部および下部横軸糸の示された数にも、上部横軸糸に対する下部横軸糸の示された比(ここでは12:8または3:2)にも制限されないことに留意するべきである。加えて、例えば、上部横軸糸の直径は、下部横軸糸の直径と等しいか、それよりも大きくてもよい。
【0079】
図9に示すように、4本の上部長軸糸(11)〜(14)、及び2組の機能的ペア(21)、(22)及び(23)、(24)によって形成された2本の上部複合長軸糸で、12本の上部横軸糸(101)〜(112)と一緒に紙側の平織を形成する。この点に関して、上部長軸糸(11)は、上部横軸糸(101)〜(112)の上下に交互に延在する(連続/配列=1回上、1回下)。上部複合長軸糸(21)、(22)の延在は、ちょうど1本の上部横軸糸によって上部長軸糸(11)の延在に対して相殺される。上部長軸糸(12)と上部複合長軸糸(23)、(24)は、上部長軸糸(11)と同じく延在し、そして上部長軸糸(13)及び(14)の延在は、上部複合長軸糸(21)、(22)の延在に相当する。したがって、上部長軸糸と上部複合長軸糸のそれぞれは、上部横軸糸ごとに織物に織り込まれる。この織り方が上部織物と紙側のそれぞれに適当であることが立証されたとしても、本発明は紙側の平織に限定されない。
【0080】
図10によって示されるように、8本の下部長軸糸(31)〜(38)が、8本の下部横軸糸(201)〜(208)と一緒に機械側の4軸織を形成する。しかしながら、下部織物について示された実施形態/構成は、いくつかの可能な代表的な実施形態のうちのたった1つにすぎない、すなわち、示された織り方がこの点に関して適当であると判明したとしても、他の機械側の織り方を同様に提供し得る。それぞれ8本の下部長軸糸(31)〜(38)は、下部横軸糸の上下に交互に延在し、そしてそれにより、ちょうど4本の下部横軸糸に織り込まれる。この点に関して、例えば、下部長軸糸(31)は、下部横軸糸(201)、(203)、(205)及び(207)に織り込まれ、そして下部長軸糸(32)は、下部横軸糸(202)、(204)、(206)及び(208)に織り込まれる、すなわち、長軸糸(31)に隣接して配置された長軸糸(32)の延在は1本の横軸糸によって相殺される。長軸糸(32)に隣接して配置された長軸糸(33)の延在は長軸糸(32)の延在に相当し、そして長軸糸(33)に隣接して配置された長軸糸(34)の延在は長軸糸(31)の延在に相当する。下部長軸糸(31)、(32)、(33)及び(34)によって形成された4軸織は、下部長軸糸(35)、(36)、(37)及び(38)によって繰り返される。加えて、機械側の4軸織は、4本の下部横軸糸の後で繰り返される。言い換えれば、機械側の4軸織の4回の繰り返しが図10と10aに示されている。あらゆる下部横軸糸が、機械側の織り方の繰り返しあたり2回織り込まれる。
【0081】
図9〜11に示す実施形態によると、したがって、上部織物層の織り方だけが2組の機能的ペア(21)、(22)及び(23)、(24)の長軸糸によって完成される。下部織物層の織り方は、(下部織物に延在する横軸糸と一緒に)8本の下部長軸糸のみによって形成される。2組の機能的ペア(21)、(22)及び(23)、(24)の長軸糸は、下部織物において別個の結合糸として使用され、それはすでに完全に形成された織物を上部織物に結合する。
【0082】
図9に示す上部織物層を図10に示す下部織物層の上に乗せるとすると(第1の実施形態の図7に相当する)、かかる織物の平面図は、常に2本の下部長軸糸の間の上部長軸糸を示している。この点に関して、平面図において、上部長軸糸(11)は2本の下部長軸糸(31)、(32)の間に実質的にあり(図11を参照のこと)、上部長軸糸(21)は下部長軸糸(33)、(34)の間に実質的にあり、上部長軸糸(13)は下部長軸糸(35)、(36)の間に実質的にあり、そして上部長軸糸(14)は下部長軸糸(37)、(38)の間に実質的にある。このことは、4:8または1:2の上部長軸糸に対する下部長軸糸の比をもたらす。加えて、4本の長軸糸(21)、(22)、(23)、(24)によって形成された2本の上部複合長軸糸を上部織物層に割り当てるとすると、(この実施形態により下部織物層において織物機能を有さないが、別個の織物糸として働くだけの4本の長軸糸(21)、(22)、(23)、(24)のいずれも下部織物層に割り当てられないとすると)6:8または3:4の長軸糸比が得られる。4本の長軸糸(21)、(22)、(23)、(24)を上部織物と下部織物に均等に分配すると、まさしく第1の実施形態のように6:10または3:5の比が得られる。6:8(および6:10、それぞれ)の記載した長軸糸比、及びそれに付随する紙側の長軸糸の数の減少は、有利な繊維支持を可能にする横軸メッシュ(図9を参照のこと)の形成を助ける。比較的に多い下部長軸糸の数は、横軸メッシュの形成に付随する機械方向の強度の低下とスクリーンの伸びの増大のバランスをとっている。
【0083】
まさしく第1の実施形態による織物のように、第2の実施形態による織物の上部長軸糸(11)〜(14)の直径は、機能的ペアの糸(21)〜(24)の直径と等しくできる。それにより、4つの移行位置(A1)、(A2)、(B1)及び(B2)によってわずかにしか妨げられない均一な紙側を得ることができる。加えて、上部長軸糸(11)〜(14)および機能的ペアの糸(21)〜(24)は、少しの困難もなく共通の縦糸ビーム上に配置される(例えば、図8の縦糸ビーム(X2))。
【0084】
例えば、下部長軸糸(31)〜(38)の直径は、まさしく第1の実施形態による織物のように、上部長軸糸(11)〜(14)および機能的ペアの糸(21)〜(24)の直径と等しくできる。しかしながら、下部長軸糸が別個の縦糸ビーム(例えば、図8の縦糸ビーム(X1))に適用され、そして機械側の織り方がもっぱら下部長軸糸によって形成される場合には、下部長軸糸に関してより太い直径を有する糸を使用することもまた可能である。下部長軸糸が機能的ペアの長軸糸に比べて直径が太いとすると、かかる下部長軸糸は、下部織物の中の区画に延在する機能的ペアの長軸糸に比べて機械側からより大きく突き出し、そのため別個の結合糸として働く機能的ペアの長軸糸は擦傷や摩耗に対して下部長軸糸によって保護される。
【0085】
第2の実施形態による織物は、まさしく第1の実施形態による織物のように、図8に示す織機と長軸糸の組立部品によって製造できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の織りを含む上部布帛層(A)と第2の織りを含む下部織物層(B)を有する多層布帛として形成されたシート形成用スクリーンであって、
該多層布帛は、16本の経糸から成る経糸の繰り返しを有し、
該16本の経糸のうちの4本の経糸((11)、(12)、(13)、(14))は、該上部布帛層中にのみ延在し、かつ、該上部布帛層中に延在する緯糸((101)〜(120)、(101)〜(112))と織り合わされた上部経糸として形成され、それにより、該第1の織りを部分的に形成し、
該16本の経糸のうちの8本の経糸((31)、(32)、(33)、(34)、(35)、(36)、(37)、(38))は、該下部布帛層の中にのみ延在し、かつ、該下部布帛層の中に延在する緯糸((201)〜(210)、(201)〜(208))と織り合わされた下部経糸として形成され、そして
該16本の経糸のうちの残りの4本の経糸((21)、(22)、(23)、(24))は、互いに隣接してそれぞれ配置された2本の経糸から成る2組の機能的経糸ペア((21)、(23);(22)、(24))を形成し、該各経糸ペアの2本の経糸は、該第1の織りを交互に完成させ、そして該4本の経糸の1本以上又は全てが、該上部布帛層の中と該下部布帛層の中の両方に延在する2組の機能的経糸ペアを形成し、それにより、該下部布帛層を該上部布帛層に結合させることを特徴とする、前記シート形成用スクリーン。
【請求項2】
前記8本の下部経糸((31)、(32)、(33)、(34)、(35)、(36)、(37)、(38))を、前記下部布帛層の中に延在する緯糸((201)〜(210))と織り合わせ、それにより前記第2の織りを部分的に形成し、そして前記各経糸ペア((21)、(23);(22)、(24))の2本の経糸で、前記第1の織りと前記第2の織りの両者を交互に完成させる、請求項1に記載のシート形成用スクリーン。
【請求項3】
前記8本の下部経糸((31)、(32)、(33)、(34)、(35)、(36)、(37)、(38))を、前記下部布帛層の中に延在する緯糸((201)〜(208))と織り合わせ、それにより前記第2の織りを完全に形成し、そして前記上部布帛層の中と前記下部布帛層の中の両方に延在する少なくとも1本の経糸で、該下部経糸によって完全に形成された下部布帛層を前記上部布帛層に結合させる、請求項1に記載のシート形成用スクリーン。
【請求項4】
前記2組の機能的経糸ペアを形成する4本の経糸のすべてが、前記上部布帛層の中と前記下部布帛層の中の両方に延在し、そして前記各機能的ペアの2本の経糸で、前記下部経糸によって完全に形成された下部布帛層を前記上部布帛層に交互に結合させる、請求項3に記載のシート形成用スクリーン。
【請求項5】
常にちょうど2本の上部経糸((12)、(13))及び/又はちょうど4本の下部経糸((33)、(34)、(35)、(36))が、2組の機能的経糸ペア((21)、(23);(22)、(24))の間の布帛内に配置されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシート形成用スクリーン。
【請求項6】
前記上部経糸((11)〜(14))、前記下部経糸((31)〜(38))及び前記機能的ペアの経糸((21)〜(24))が同じ直径を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシート形成用スクリーン。
【請求項7】
前記上部経糸((11)〜(14))及び前記機能的ペアの経糸((21)〜(24))が同じ直径を有し、そして前記下部経糸((31)〜(38))の直径が、前記上部経糸((11)〜(14))及び前記機能的ペアの経糸((21)〜(24))の直径より大きい、請求項3〜5のいずれか1項に記載のシート形成用スクリーン。
【請求項8】
前記上部布帛層の中に延在するすべての緯糸が、該上部布帛層の中にのみ延在する上部緯糸((101)〜(120)、(101)〜(112))として形成され、そして/又は前記下部布帛層の中に延在するすべての緯糸が、該下部布帛層の中にのみ延在する下部緯糸((201)〜(210)、(201)〜(208))として形成される、請求項1〜7のいずれか1項に記載のシート形成用スクリーン。
【請求項9】
前記上部布帛層の中に延在する緯糸に対する前記下部布帛層の中に延在する緯糸の比が、1超であり、例えば、少なくとも又はちょうど2:1であるか、あるいは例えば、少なくとも又はちょうど3:2である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のシート形成用スクリーン。
【請求項10】
前記第1の織りが平織であり、そして/又は前記第2の織りが5軸織り又は4軸織りである、請求項1〜9のいずれか1項に記載のシート形成用スクリーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図5a】
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【図6】
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【図6a】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図9a】
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【図10】
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【図10a】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−517388(P2013−517388A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548462(P2012−548462)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【国際出願番号】PCT/EP2011/057978
【国際公開番号】WO2011/144616
【国際公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(506247077)アンドリッツ テクノロジー アンド アセット マネージメント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【Fターム(参考)】