説明

シート成形装置

【課題】本発明は、樹脂シートのロール成形と同時に表面に深い凹凸の微細構造を形成することのできるシート成形装置を提供することを課題とする。
【解決手段】シート成形装置は、樹脂シートを成形しながら樹脂シートの表面に微細構造を転写する。主ロール11は転写すべき微細構造が表面11aに形成された最外層11bを有する。従ロール12は、主ロール11から所定距離離間して回転し、主ロール11との間に供給された樹脂を加圧して樹脂シートに成形する。主ロール11は微細構造が形成された最外層11bの内側に断熱層14を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシート成形装置に係わり、特にシート成形時にシート表面に微細構造を形成するシート成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)やその他の表示装置の分野において、各種の光学機能を有する光学機能フィルムあるいはシートが用いられている。光学機能フィルムの例として、例えば、1)表面に形成された微細なV溝構造を光の通路として入射光を画面に導くための導光板、2)各種多層フィルムを用いて通過する光の位相を調整する位相板、3)画面方向への発光効率を向上させる輝度向上フィルム、などが挙げられる。
【0003】
上述の各種光学フィルムは、その表面構造から2種類に分けられる。一つは、表面に形成されたV溝などの微細構造が、光に対する何らかの作用を有する微細構造付帯フィルム/シートである。もう一つは、光の波長と同じ程度の厚みの膜を積層し、光学特性の波長依存性を利用して光に対する何らかの作用を有するものである。
【0004】
上述の微細構造付帯フィルム/シートについては、従来、小面積のものは射出成形により微細構造を同時に形成し、大面積のものについては、シート/フィルムを成形した後にプレス等で微細構造を型転写する製造方法が用いられていた。しかし、大面積のものについても、製造コスト削減の観点から、シート/フィルムの成形と同時にあるいは同じ工程で微細構造を転写したいという要望がある。
【0005】
そこで、シート成形用のローラ上に転写パターンを形成してエンボスローラとし、エンボスローラを加熱しながら樹脂シートを成形し、成形直後の樹脂シートを当該エンボスローラに巻き付けることにより転写性を向上さる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開2001−129881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1に記載の転写技術によれば、加熱したシート成形用のエンボスローラにシートを巻き付けて転写部分の面積を大きくし、エンボスローラの凹凸の転写性を向上させるが、転写する凹凸は平均粗さ(Ra)が0.5〜5μm程度の小さな凹凸である。
【0007】
一方、上述の光学フィルム/シートとして用いる微細構造付帯フィルム/シートとしては、例えば、溝間ピッチが50μmで深さが70μm程度のV溝を形成することが要求される。したがって、このような深いV溝のような凹凸を形成する用途には、特許文献1に記載の転写技術を用いることはできない。
【0008】
アスペクト比の大きい凹凸を形成するには、樹脂が成形ローラによりシート状に形成される際に、樹脂が軟化した状態のままで凹凸を転写する必要がある。ところが、溶融した樹脂が成形ローラに接触した瞬間に、樹脂の熱がローラに吸収されて樹脂は冷却される。これにより、溶融樹脂が成形ローラに接触してから凹凸が転写される前に、樹脂の表面は固化してしまい、深い凹部まで押し込むことができず、微細構造を精密に形成することができないという問題がある。
【0009】
また、成形ローラの凹部の奥深くまで樹脂を押し込むには、成形中の樹脂に大きな圧力を加えながら、ある程度の時間保持する必要があるが、成形ローラの断面は円形であるため、樹脂と成形ローラは線接触するだけであり、転写用の加圧時間を長くとれないという問題もある。
【0010】
本発明は上述の問題に鑑みなされたものであり、樹脂シートのロール成形と同時に表面に深い凹凸の微細構造を形成することのできるシート成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するために、本発明によれば、樹脂シートを成形しながら樹脂シートの表面に微細構造を転写するシート成形装置であって、転写すべき該微細構造が表面に形成された最外層を有する主ロールと、該主ロールから所定距離離間して回転し、前記主ロールとの間に供給された樹脂を加圧して該樹脂シートに成形する従ロールとを有し、前記主ロールは該微細構造が形成された最外層の内側に断熱層を有することを特徴とするシート成形装置が提供される。
【0012】
本発明のシート成形装置において、前記最外層の厚みが、10μm〜1mmであることが好ましい。あるいは、前記最外層の厚みが、前記断熱層を設けない場合に樹脂が前記主ロールに接触した際に該樹脂の表面に形成される固化層の厚みの1〜5倍であることが好ましい。また、前記従ロールは、弾性体ロールであることが好ましい。また、前記主ロールの前記最外層を加熱する加熱部をさらに有することとしてもよい。前記加熱部は、前記主ロールの前記最外層に埋め込まれていることとしてもよい。また、前記加熱部は、前記最外層の全体にわたって埋め込まれた複数の電熱体であり、該電熱体の各々は独立に通電可能であることとしてもよい。あるいは、前記加熱部は、前記最外層の外部に設けられ、前記最外層の所定位置に熱線を照射する輻射加熱装置であることとしてもよい。
【0013】
また、本発明によれば、樹脂シートを成形しながら樹脂シートの表面に微細構造を転写するシート成形装置であって、第1の樹脂シートを成形するための第1のロール対を有する第1のシート成形部と、該第1のロール対で形成された第1の樹脂シート上に第2の樹脂シートを成形しながら該第2の樹脂シート上に微細構造を転写する第2のシート成形部とを有し、該第2のシート成形部は、上述のシート成形装置を含むことを特徴とするシート成形装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、樹脂シートのロール成形と同時に表面に深い凹凸の微細構造を精度よく形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
まず、本発明の基礎となる樹脂シートのロール成形について、図1を参照しながら簡単に説明する。図1は樹脂シートのロール成形において、溶融樹脂が一対のロールにより押圧されてシート状に成形される部分の拡大図である。
【0017】
通常、所定距離離間した金属製の一対のロール(ローラとも称する)1,2の間に、加熱溶融した樹脂を押しだし、ロール1,2で樹脂を冷却して固化させると共に、ロール1,2の間を通過させることで、所定の厚みのシート状に成形する。ロール1,2に接触するまでは、樹脂は溶融あるいは軟化した状態であるが、樹脂がロール1,2の表面に接触すると、ローラ1,2により急速に熱が吸収されて、まず樹脂の表面から10〜100μm程度の厚みの部分までが極めて短時間で固化状態となり、固化層が形成される。樹脂を単にシート状に成形する場合は、表面の固化層の内側はまだ軟化した状態であるので、ロール1,2により押圧することで樹脂をシート状に成形することができる。
【0018】
ここで、図1に示すように、ロール1の表面に微細構造として例えば深さ50μm程度V溝が設けられている場合を考える。ロール1,2の間を通過する際に樹脂3はロール1のV溝に押し付けられV溝に押し込まれるが、表面に固化層3aが形成されているため、V溝の先端部分まで樹脂を完全に押し込むことができない。したがって、V溝により転写された部分はV溝の先端の形状に対応した形状ではなくなってしまい、正確な転写形状を得ることができない。すなわち、V溝の深さと同じ程度あるいはそれ以上の厚みの固化層3aが溶融樹脂3の表面に形成されてしまうため、この固化層3aが妨げとなって、ローラ1,2により樹脂3に圧力をかけても、樹脂3をV溝に完全に充填することができない。
【0019】
そこで、本発明者は、樹脂への微細構造の転写より以前に、溶融樹脂表面に固化層が形成されないか、形成されても極薄い固化層となるように、ロールによる樹脂の冷却を、転写の後まで遅延させることを考えた。
【0020】
図2は本発明の第1実施形態によるシート成形装置の概要を示す図である。
【0021】
図2において、樹脂ノズル10から押し出された樹脂13は、主ロール11と従ロール12との間に供給され、主ロールと従ロール12とにより圧力が加えられてシート状に成形される。
【0022】
主ロール11は金属等の剛性材料で形成されており、外周表面11aに図3に示すようにV溝が形成されている。V溝は樹脂に転写する形状であり、V溝が形成された部分を意匠転写部と称することもある。主ロール11の外周から僅かに内側に、断熱層14が設けられている。断熱層14は、例えば酸化シリコンや酸化ジルコニウムのような断熱性の大きな材料により形成されている。断熱層14は、断熱層14の外側の最外層11bを断熱するために設けられるが、その厚みは比較的に小さく、最外層11bからの熱の主ロール11の内部への伝導を一時的に遅延させるように作用する。主ロール11の内部は冷却水通路となっており、主ロール11を例えば70℃〜80℃の温度に維持するように構成されている。
【0023】
従ロール12は、主ロール11と同様に金属等の剛性材料で形成されており、その内部は、冷却水通路となっており、従ロール12を例えば70℃〜80℃の温度に維持するように構成されている。
【0024】
主ロール11の最外層11bの表面、すなわち主ロールの外周表面11aには、微細構造として深さが50μm程度のV溝が形成されている。樹脂13が主ロール11と従ロール12の間を通過してシート状に成形される際に、樹脂13の表面が外周表面11aの微細構造に押し付けられ、微細構造が樹脂13に転写される。微細構造が転写される部分を意匠転写部Aと称する。
【0025】
図3は図2に示す意匠転写部Aの拡大図である。図3に示すように、主ロール11の外周表面11aには、深さが50μm程度のV溝が形成されている。そして、V溝の内側には、断熱層14が設けられている。ここまでは、V溝の深さを50μmとして説明したが、本発明では、V溝の深さを1〜50μmとすることができる。この場合には、V溝が形成された最外層11bの厚みを10μm〜1mmとすることが好ましい。また、本発明による対策を施さない場合に樹脂表面に形成される樹脂固化層の厚さを代表厚さとすると(すなわち、本発明による断熱層14を設けない場合に樹脂13が主ロール11に接触した際に樹脂表面に形成される固化層の厚みを代表厚さとすると)、最外層11bの厚さはこの代表厚さの1〜5倍程度とすることが好ましい。なお、この代表厚さは樹脂材料等の特性により決定される。最外層11bの厚みをこの程度の厚みとすることにより、最外層11bの熱容量を小さくし、樹脂13が主ロール11の外周表面11aに接触してから意匠転写部Aまで移動する間は、樹脂13から急激に熱を吸収することがなく、樹脂13の表面に固化層が形成されないか、形成されても極めて薄くすることができる。
【0026】
すなわち、最外層11bの厚みが薄く、且つ断熱層14により断熱されているため、樹脂13が最外層11bに接触しても急激に冷却されず、溶融あるいは軟化した状態(ガラス転移温度以上の温度)に維持される。したがって、意匠転写部Aにおいて樹脂13は主ロール11と従ロール12との間で加圧され、樹脂13は容易にV溝の奥まで押込まれる、V溝全体に充填される。これにより、シート状に成形された樹脂13の表面にV溝の形状が精度よく転写される。
【0027】
樹脂13が意匠転写部Aを通過すると樹脂13は主ロール11により冷却されて固化する。断熱層14は薄いため、樹脂13が最外層11bの外周表面11aに接触してから意匠転写部Aを通過するまでの短い時間は、最外層11bの温度を例えば樹脂13のガラス転移温度以上の高い温度に維持しておくことができ。しかし、それ以降は断熱層14により主ローラ11の内部と最外層11bとの間の温度勾配を維持することができず、樹脂13から主ローラ11に向かう熱移動量が大きくなり、樹脂13は冷却されて固化する。
【0028】
以上のように、本実施形態によれば、微細構造が外周表面11aに形成された主ロール11に断熱層14を設けることにより、樹脂13から主ローラ11への熱の移動を遅延させることができる。これにより、意匠転写部Aに移動した樹脂13には固化層が形成されていないか、形成されていても極めて薄い固化層である。したがって、樹脂13に微細構造を容易に精度よく転写することができる。
【0029】
次に本発明の第2実施形態について、図4を参照しながら説明する。図4において図2に示す構成部品には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0030】
本発明の第2実施形態では、従ロール12として弾性体ロールを用いて意匠転写部Aの面積を大きくし、さらに転写性を向上させている。
【0031】
図4に示す弾性体ロール20は、金属製のフレキシブルスリーブ21の内部にゴム製のラバーロール22が組み込まれ、フレキシブルスリーブ21とラバーロール22の間に冷却水の通路が形成されている。フレキシブルスリーブ21は、例えばニッケルの薄い板で形成されており、主ロール11と当接する部分で容易に主ロール11の外形に沿って変形することができる。ラバーロール22は弾性を有し、フレキシブルスリーブ21と共に変形するが、フレキシブルスリーブ21の変形を元に戻そうとする力を発生する。以上のような構造の弾性体ロール20は周知のロール体であり、市販されているものを用いることができる。
【0032】
弾性体ロール20は、樹脂13を挟んで主ロール11に押圧される部分が主ローラ11に沿って弾性変形する。これにより、面積の大きいニップ部が形成され、ニップ部全体にわたってほぼ一様な押圧力を樹脂13に加えることができる。このニップ部は意匠転写部Aに相当する。したがって、本実施形態では、微細構造(V溝)を樹脂13に転写するための圧力を一定としながらより長い時間、樹脂13を微細構造に押圧することができる。これにより、転写性をさらに一層向上させることができ、より複雑で転写しにくい微細構造でも精度よく転写することができる。
【0033】
次に、本発明の第3実施形態について図5を参照しながら説明する。図5において、図4に示す構成部品と同等な部品には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0034】
本発明の第3実施形態では、図4に示す構成において、主ロール11の最外層11bに加熱部30を設け、さらに意匠転写部Aから出てきた成形された樹脂13を冷却するための送風機32を設けている。加熱部30は、電熱ヒータやペルチェ素子等の電熱体であり、最外層11bの全周に渡って設けられる。
【0035】
最外層11bに加熱部30を設けることで、最外層11bの温度を樹脂13のガラス転移温度以上の温度にすることができる。これにより、意匠転写部Aにおいて最外層11bを樹脂13のガラス転移温度以上の温度にすることができ、意匠転写部Aにおいて、樹脂13の表面に固化層が形成されず、主ロール11の微細構造を樹脂13に精度よく転写することができる。
【0036】
ただし、意匠転写部A以外の部分では、樹脂13を冷却してする必要があるため、意匠転写部Aの出口付近に送風機(ブロア)32を設けて樹脂13を空冷する。
【0037】
また、例えば、加熱部30として複数本の電熱ヒータを、主ロール11の回転軸に平行に最外層11bに埋め込み、電熱ヒータの各々には独立して通電できるように構成してもよい。これにより、主ロール11の回転に伴い電熱ヒータも回転する。そこで、樹脂13が接触する僅かに手前の位置で電熱ヒータに通電を開始し、その電熱ヒータが意匠転写部Aを通過した後で通電を停止する。図5において、黒丸で示した加熱部30が通電された電熱ヒータを示し、白丸で示した加熱部30が通電されていない電熱ヒータを示す。
【0038】
このように、主ロール11の回転中に順次電熱ヒータの通電及び通電の停止を行うことにより、主ロール11の回転中に意匠転写部A近傍の電熱ヒータのみに選択的に通電することとなる。すなわち、意匠転写部A付近の最外層11bのみ加熱部30により加熱され、その他の部分では加熱はおこなわれない。したがって、意匠転写部A付近では、最外層11bを樹脂Aのガラス転移温度以上の温度とすることで、樹脂13の表面に固化層が形成されず、意匠転写部Aを通過して転写が終了した後は樹脂13から最外層11bに熱が伝わり、樹脂13を冷却することができる。
【0039】
本実施形態では、意匠転写部Aにおける最外層11bを加熱部30により積極的に加熱するので、意匠転写部Aを通過した後の樹脂13を送風機32からの送風により冷却するように構成しているが、上述のように加熱部30に選択的に通電して意匠転写部Aの近傍のみ加熱する場合は、送風機32による冷却を行わなくて十分冷却できる場合もある。あるいは、最外層11bの中で加熱部30の間に冷却管を埋め込み、冷却水を選択的に流して意匠転写部Aを通過した部分を冷却することとしてもよい。
【0040】
なお、本実施形態では、従ロールとして図4に示す弾性体ロール20を用いているが、弾性体ロール20ではなく、図2に示すように剛性材料の従ロール12を用いてもよい。
【0041】
また、図4に示す実施形態ではフレキシブルスリーブ21とラバーロール22の間に冷却水を流して弾性体ロール20を冷却しているが、本実施形態ではフレキシブルスリーブ21とラバーロール22の間に圧縮気体を充填している。圧縮気体は断熱層として機能し、フレキシブルスリーブ21の温度を高温に維持して意匠転写部Aの温度を高温に維持する。
【0042】
次に、本発明の第4実施形態について図6を参照しながら説明する。図6において、図5に示す構成部品と同等な部品には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0043】
本発明の第4実施形態では、図5に示す構成において、主ロール11の最外層11bに設けた加熱部30の代わりに、主ロール11の最外層11bを外部から加熱する輻射加熱装置40を設けている。輻射加熱装置40は、レーザやハロゲンランプのような熱線(レーザ光やランプ光)を射出する装置であり、射出された熱線はレンズや反射板等よりなる光学系を介して、主ロール11の外周表面11aの意匠転写部Aの直前位置に照射される。これにより、意匠転写部Aに入る直前で最外層11bが樹脂13のガラス転移温度以上の温度に加熱される。したがって、意匠転写部Aにおいて、樹脂13の表面に固化層が形成されず、主ロール11の微細構造を樹脂13に精度よく転写することができる。
【0044】
次に、本発明の第5実施形態について図7を参照しながら説明する。図7において、図4に示す構成部品と同等な部品には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0045】
本発明の第5実施形態によるシート成形装置は、微細構造が転写された厚膜の樹脂シートを形成するための装置である。厚膜の樹脂シートに微細構造を転写する場合、意匠転写部Aにおける樹脂の大部分が溶融あるいは軟化した樹脂であり、ニップ部における圧力が分散してしまい、十分な転写圧を加えることができないおそれがある。
【0046】
そこで、本実施形態では、樹脂シートの成形工程を2つに分け、まず基材となる厚膜の樹脂シートを形成し、形成した厚膜の樹脂シートの上に薄い樹脂シートを形成しながらその表面に微細構造を転写する。
【0047】
図7において、右側の主ロール11と弾性体ロール20の組合わせ(第1のシート成形部)により厚膜の樹脂シートを形成し、左側の主ロールと弾性体ロール20との組合わせ(第2のシート成形部)により薄膜で転写可能な樹脂シートを形成する。右側の主ロール11上で形成された厚膜の樹脂シートは、主ロール11から離れると、左側の弾性体ロール20に巻きとられ、左側のロール対のニップ部に搬送される。ここで、厚膜の樹脂シートの表面にさらに樹脂13が供給され、薄膜の樹脂シートが厚膜の樹脂シート上に形成される。このとき、意匠転写部Aにおいて薄膜の樹脂シートの表面に微細構造が転写される。
【0048】
以上のように、本実施形態では、厚膜の樹脂シートを形成してからその上に薄膜の樹脂シートを形成しながら微細構造の転写を行うので、微細構造の転写は薄膜の樹脂シートに対して行われる。したがって、樹脂シートの厚みに起因する転写圧不足の問題は発生せず、厚膜で且つ微細構造が精度よく転写された樹脂シートを連続した工程で容易に短時間で形成することがきる。
【0049】
なお、微細構造を転写しながら薄膜の樹脂シートを形成する第2のシート成形部の構成は、図7に示す構成に限ることなく、上述の他の実施形態の構成を用いることとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】樹脂シートのロール成形において、溶融樹脂が一対のロールにより押圧されてシート状に成形される部分の拡大図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるシート成形装置の概要を示す図である。
【図3】図2に示す意匠転写部Aの拡大図である。
【図4】本発明の第2実施形態によるシート成形装置の概要を示す図である。
【図5】本発明の第3実施形態によるシート成形装置の概要を示す図である。
【図6】本発明の第4実施形態によるシート成形装置の概要を示す図である。
【図7】本発明の第5実施形態によるシート成形装置の概要を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1,11 主ロール
2,12 従ロール
3,13 樹脂
3a,13a 固化層
11a 外周表面
11b 最外層
14 断熱層
20 弾性体ロール
21 フレキシブルスリーブ
22 ラバーロール
30 加熱部
32 送風機
40 輻射加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートを成形しながら樹脂シートの表面に微細構造を転写するシート成形装置であって、
転写すべき該微細構造が表面に形成された最外層を有する主ロールと、
該主ロールから所定距離離間して回転し、前記主ロールとの間に供給された樹脂を加圧して該樹脂シートに成形する従ロールと
を有し、
前記主ロールは該微細構造が形成された最外層の内側に断熱層を有することを特徴とするシート成形装置。
【請求項2】
請求項1記載のシート成形装置であって、
前記最外層の厚みが、10μm〜1mmであることを特徴とするシート成形装置。
【請求項3】
請求項1記載のシート成形装置であって、
前記最外層の厚みが、前記断熱層を設けない場合に樹脂が前記主ロールに接触した際に該樹脂の表面に形成される固化層の厚みの1〜5倍であることを特徴とするシート成形装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか一項記載のシート成形装置であって、
前記従ロールは、弾性体ロールであることを特徴とするシート成形装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちいずれか一項記載のシート成形装置であって、
前記主ロールの前記最外層を加熱する加熱部をさらに有することを特徴とするシート成形装置。
【請求項6】
請求項5記載のシート成形装置であって、
前記加熱部は、前記主ロールの前記最外層に埋め込まれていることを特徴とするシート成形装置。
【請求項7】
請求項6記載のシート成形装置であって、
前記加熱部は、前記最外層の全体にわたって埋め込まれた複数の電熱体であり、該電熱体の各々は独立に通電可能であることを特徴とするシート成形装置。
【請求項8】
請求項5記載のシート成形装置であって、
前記加熱部は、前記最外層の外部に設けられ、前記最外層の所定位置に熱線を照射する輻射加熱装置であることを特徴とするシート成形装置。
【請求項9】
樹脂シートを成形しながら樹脂シートの表面に微細構造を転写するシート成形装置であって、
第1の樹脂シートを成形するための第1のロール対を有する第1のシート成形部と、
該第1のロール対で形成された第1の樹脂シート上に第2の樹脂シートを成形しながら該第2の樹脂シート上に微細構造を転写する第2のシート成形部と
を有し、
該第2のシート成形部は、請求項1乃至8のうちいずれか一項記載のシート成形装置を含むことを特徴とするシート成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−18629(P2008−18629A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−192758(P2006−192758)
【出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】