説明

シート排出装置及び画像形成装置

【課題】画像品位を低下させることなく、確実にシートを排出することのできるシート排出装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】排紙ローラ30に圧接する円筒部46Aと、円筒部46Aと同軸上に設けられ、周面に円筒部46Aよりも外方に突出してシートの排出方向上流端を押圧する複数の蹴り出し部47a〜47dが形成された蹴り出し部材47とを有する排紙コロ34Aを、蹴り出し部材47の蹴り出し部47a〜47dが排紙ローラ30と円筒部46Aとにより形成される圧接領域及び圧接領域のシート排出方向上流では円筒部46Aから外方に突出せず、圧接領域よりシート排出方向下流では円筒部46Aから外方に突出するように回転させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート排出装置及び画像形成装置に関し、特に画像が形成されたシートを蹴り出し部材により排紙トレイに蹴り出すようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンタ、ファクシミリ及びそれらの複合機等の画像形成装置においては、シートに画像を形成する画像形成部と、画像が形成されたシートを排紙ローラ対により排出してシート積載部に積載するシート排出装置を備えている。
【0003】
そして、このような画像形成装置では、シートに画像を形成する場合は、まず画像形成部に設けられた感光体ドラムの表面に静電潜像を形成した後、静電潜像をトナーにより現像することにより、感光体ドラム表面にトナー画像を形成する。次に、トナー画像をシート上に転写し、この後、トナー画像が転写されたシートを定着部において加熱及び加圧することによりトナー画像をシートに定着する。そして、このようにトナー像が定着されたシートをシート排出装置に設けられた排紙ローラ対によってシート排出口からシート積載部に排出する。
【0004】
このような構成の排紙ローラ対を備えたシート排出装置としては、排紙コロの回転軸上に、排紙コロの外径より大きな突起形状を持つ蹴り出し部材を回転自在に設けたものがある(特許文献1参照)。この蹴り出し部材は自重により突起形状が駆動ローラ側に戻るように形成されている。そして、この蹴り出し部材は、シートが排紙ローラ対のニップを通過する際、シートに押圧されて回転し、シートがニップを抜けた後、自重により回転することによって蹴り出し形状がニップ付近に残るシートの後端を押し出すことにより、シートを排出する。
【0005】
図14は、このような従来のシート排出装置に設けられた排紙ローラ対の構成を示す図である。排紙ローラ対1は、モールド、金属等で形成されるシャフト部2aとゴム等で形成されるローラ本体2bとから成り、矢印Aで示す時計方向に駆動力を得る排紙ローラ2と、モールド等で形成される排紙コロ3とから構成される。なお、排紙コロ3は、排紙ローラ2に不図示のバネにより、矢印15方向に付勢されて排紙ローラ2との間でニップを形成すると共に、排紙ローラ2の回転に伴って矢印Bで示す反時計方向に従動回転し、矢印13で示す排紙トレイ方向にシートを排出する。
【0006】
排紙コロ3は、回転軸6と、回転軸6に設けられ、排紙ローラ2(のローラ本体2b)と圧接してニップ部を形成する円筒部4を備えている。ここで、排紙コロ3の回転軸6は、排紙ローラ2のシャフト部2aに対し、シート排出方向に傾斜して配置されており、これにより排紙コロ3の円筒部4におけるニップ付近での矢印12で示す回転方向に対し、矢印13で示す実際のシート排出方向は斜めになる。
【0007】
なお、図14においては、図示していないが、排紙ローラ2は複数のローラ本体2bを備え、またそれぞれのローラ本体2bに排紙コロ3の円筒部4が圧接している。そして、排紙ローラ対1は、これら複数のローラ本体2bと、円筒部4とにより形成される、例えば4つのニップを備えている。また、4つのニップにおける矢印12で示す円筒部4の回転方向は、シートのシート排出方向と直交する幅方向(軸方向)の中心を境にして、それぞれ中心から外側に向くように配置されている。
【0008】
つまり、従来の排紙ローラ対は、図14に示すような構成のローラ本体2bと、円筒部4とにより構成され、円筒部4の回転方向がシートの幅方向の中心を境にして、それぞれ中心から外側に向く4つのニップ部を備えている。これにより、シートを幅方向の中心を境にしてそれぞれ左右に引き伸ばすことができ、排出時、シートにしわが発生するのを防ぐことができる。
【0009】
排紙コロ3は、周面にシートを排紙トレイ方向に蹴り出すための複数の蹴り出し部5A〜5Dが形成された蹴り出し部材5を有している。ここで、この蹴り出し部材5は、円筒部4のシートの幅方向の中心側に設けられており、これにより蹴り出し部材5の蹴り出し部5A〜5Dは排紙ローラと排紙コロのニップよりもシート排出方向上流でシート搬送領域に突出するようになる。また、蹴り出し部材5の外径8は円筒部4の外径7より大きくなるように形成されている。これにより、排紙コロ3が回転して蹴り出し部材5が回転すると、蹴り出し部材5の周面に設けられた蹴り出し部5A〜5Dにより後端が押されてシートが排紙トレイ方向に蹴り出され、シートを排紙トレイに排出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−71056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、このような従来のシート排出装置及び画像形成装置においては、既述したように蹴り出し部材5の蹴り出し部5A〜5Dは、排紙ローラ2と排紙コロ3のニップよりもシート排出方向上流でシート搬送領域に突出している。これにより、排紙コロ3が回転すると、蹴り出し部5A〜5Dは、図15に示す破線133で示す回転軌跡で回転する。なお、図15において、点線で示す134は、排紙コロ3の円筒部4の回転軌跡である。
【0012】
また、排紙トレイに排出される前、シートSは、先端部が排紙ローラ対1のニップ部(ニップ領域)130で規制され、後端部は不図示のガイドやシート排出方向上流の定着ユニットのニップ等で規制された状態となり、シートSの前後端部が拘束される。そして、シートSの前後端部が拘束されている状態のとき、排紙コロ3と一体に回転する蹴り出し部材5の蹴り出し部5A〜5Dが、ニップ部130の上流でシート搬送領域135に突出すると、蹴り出し部5A〜5DはシートSに突き刺さるように接触する。これにより、定着直後のシートSの印字面に傷が付くようになる。具体的には、蹴り出し部材5の蹴り出し部5A〜5Dが、周期的にシートSに接触することで、印字面には周期的に打痕跡が発生し、画像品位が低下する。
【0013】
また、蹴り出し部5A〜5Dが排出されるシートSに接触することにより、排紙コロ3の従動回転が妨げられて蹴り出し部材5が停止する場合がある。この場合、停止した蹴り出し部5A〜5Dが搬送されるシートSを擦るようになりシートSの印字面にシート排出方向に伸びたスジ状の傷が発生する。
【0014】
なお、特許文献1に記載されているように蹴り出し部材を回転自在に設けた場合、蹴り出し部材はニップを通過するシートに押圧されて回転するため、シートに傷をつけることは少ない。しかし、蹴り出し部材は、自重によりシートの後端を押し出すものであるため、蹴り出し機能が十分でなく、シートを確実に排出することはできない。
【0015】
そこで、本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、画像品位を低下させることなく、確実にシートを排出することのできるシート排出装置及び画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、画像が形成されたシートを排紙部により排出するシート排出装置において、
前記排紙部は、排紙ローラと、前記排紙ローラに圧接する圧接部及び前記圧接部の軸方向端部の一方の側に設けられ、周面に前記圧接部よりも排紙ローラ側に突出してシートの排出方向上流端を押圧する複数の突起が形成された押出部材を有し、シートのシート排出方向と直交する幅方向の中央を中心として対称的に、前記押出部材が設けられた側を中央側としてシート排出方向下流に傾斜するように軸支された複数の従動回転体と、を備え、前記複数の従動回転体を、前記押出部材の前記突起が前記排紙ローラと前記圧接部とにより形成される圧接領域及び前記圧接領域のシート排出方向上流では前記圧接部よりも前記排紙ローラ側に突出せず、前記圧接領域よりシート排出方向下流では前記圧接部よりも前記排紙ローラ側に突出するように回転させること特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、周面にシートの排出方向上流端を押圧する複数の突起を有する押出部材を備えた複数の回転体を、突起が排紙ローラと圧接部との圧接領域及び圧接領域のシート排出方向上流では圧接部から排紙ローラ側に突出しないように回転させるようにする。また、複数の回転体を、突起が圧接領域よりシート排出方向下流では圧接部から排紙ローラ側に突出するように回転させるようにする。これにより、画像品位を低下させることなく、確実にシートを排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るシート排出装置及びこれを備えた画像形成装置の一例としてのレーザプリンタの概略構成を示す図。
【図2】上記レーザプリンタに設けられたシート排出装置の構成を示す第1の図。
【図3】上記シート排出装置の構成を示す第2の図。
【図4】上記シート排出装置のシートを排出している状態を示す図。
【図5】上記シート排出装置に設けられた排紙ローラ対の構成を説明する図。
【図6】上記シート排出装置の排紙動作を説明する図。
【図7】上記排紙ローラ対をシャフト方向から見た模式図。
【図8】本実施の形態の比較例に係る排紙ローラ対をシャフト方向から見た模式図。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係るシート排出装置の構成を示す図。
【図10】上記シート排出装置に設けられた排紙ローラ対の構成を説明する第1の図。
【図11】上記シート排出装置の構成を示す第2の図。
【図12】上記シート排出装置の排紙動作を説明する図。
【図13】上記排紙ローラ対をシャフト方向から見た模式図。
【図14】従来のシート排出装置に設けられた排紙ローラ対の構成を示す図。
【図15】上記従来の排紙ローラ対をシャフト方向から見た模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るシート排出装置及びこれを備えた画像形成装置の一例としてのレーザプリンタの概略構成を示す図である。
【0021】
図1において、20はレーザプリンタ、21はレーザプリンタ本体(以下、装置本体という)であり、この装置本体21は電子写真方式により画像を形成する画像形成部20Aと、画像形成部20Aにシートを給送するシート給送装置20Bが設けられている。
【0022】
ここで、画像形成部20Aは、像担持体としての感光体ドラム22を有するプロセスカートリッジユニット21Aと、感光体ドラム22を露光するレーザスキャナ24を備えている。そして、画像形成の際には、レーザスキャナ24により感光体ドラム22を露光して感光体ドラム表面に潜像を形成し、この後、この潜像を現像することにより、感光体ドラム表面にトナー画像を形成するようにしている。
【0023】
また、シート給送装置20Bは、装置本体21に着脱可能に設けられた給紙カセット26と、この給紙カセット26の上方に設けられ、給紙カセット26に収納されたシートSを送り出す給送ローラ26aとを備えている。
【0024】
そして、シート給送装置20Bは、上述した画像形成部20Aのトナー画像形成動作に並行して、給紙カセット26に収納されたシートSを給送ローラ26aにより送り出した後、搬送ローラ27によりレジストローラ対27Aに搬送する。なお、このようにレジストローラ対27Aに搬送された後、シートSは、レジストローラ対27Aによって所定のタイミングで感光体ドラム22と転写ローラ23とにより形成される転写部に搬送される。
【0025】
次に、転写部に搬送されたシートSは、この転写部において感光体ドラム22表面に形成されたトナー画像が転写され、この後、定着器28に搬送され、定着器28において加熱及び加圧されることにより、トナー像が定着される。次に、このようにして画像が定着された後、シートSは、排紙通路Rを経てシート排出装置20Cに設けられた排紙ローラ対29により装置本体上面に設けられた排紙トレイ20Dに排出される。
【0026】
図2は、排紙トレイ20Dにシートを排出するシート排出装置20Cの構成を示す図である。シート排出装置20Cは、排紙フレーム43、排紙フレーム43に回転自在に支持された排紙ローラ対29を備えている。ここで、この排紙部を構成する排紙ローラ対29は、排紙ローラ30と、後述する図3に示す排紙コロバネ38A〜38Dにより付勢されて排紙ローラ30に圧接する複数の従動回転体である排紙コロ34A〜34Dを備えている。
【0027】
なお、排紙ローラ30は排紙フレーム43に設けられた軸受32により回転自在に支持されるモールド部材のシャフト部38及びシャフト部38に形成されたゴム部材のローラ本体40A〜40Dを備えている。また、排紙コロ34A〜34Dは、不図示の軸支部であるフレームに回転自在に支持されると共に、排紙コロバネ38A〜38Dにより付勢され、それぞれ排紙ローラ30のローラ本体40A〜40Dに圧接し、4組のニップ部44A〜44Dを形成している。
【0028】
なお、図3に示すように、シート排出装置20Cは、図1に示す排紙通路Rのシート搬送面を形成する搬送リブ36と、排紙通路Rを通過するシートに接触する搬送コロ37A〜37Dを備えている。そして、この搬送リブ36と、搬送コロ37A〜37Dとにより、シートをスムーズに通過させることができる。
【0029】
また、図2に示すように、排紙ローラ30のシャフト部38には、シートにコシを付けるためのシャフトリブ39及びコシ付けゴム41A,41Bが取り付けられ、シャフト38の先端には排紙駆動ギア42が取り付けられている。ここで、排紙駆動ギア42は不図示の装置本体側のギアから駆動が伝達されることにより、排紙ローラ30を矢印A方向(時計回り)に回転させる。また、シャフトリブ39、コシ付けゴム41A,41Bはローラ本体40A〜40Dより外径が大きくなっており、これによりシートSを排出する際、シートにコシ付けすることができる。
【0030】
図4は、このような構成のシート排出装置20CがシートSを排出している状態を示す図である。図4の(a)に示すように、排紙駆動ギア42により排紙ローラ30のシャフト部38及びローラ本体40A〜40Dが矢印方向に回転し、ニップ部44A〜44Dを通過するシートSを矢印で示す排紙トレイ方向に排出する。なお、図4の(b)は、シート排出装置20CがシートSを排出する状態を下方から見た状態を示しており、排紙コロ34A〜34Dは、ニップ部44A〜44Dを通過するシートSとの摩擦力で、矢印で示す反時計回りの方向に回転する。
【0031】
図5は排紙ローラ対29の構成を説明する図である。図5に示すように、排紙コロ34Aは、不図示のフレームに回転自在に支持される回転軸48と、回転軸48に設けられ、排紙ローラ30(のローラ本体40A)と圧接してニップ部44Aを形成する圧接部である円筒部46Aを備えている。ここで、排紙コロ34Aの回転軸48は、排紙ローラ30のシャフト部38に対し、シート排出方向に傾斜して配置されている。これにより、排紙コロ34Aの円筒部46Aにおけるニップ付近での矢印55Aで示す回転方向は、矢印56で示す実際のシート排出方向に対して斜めになる。
【0032】
なお、図5では、排紙ローラ対29の4つのニップ部44A〜44Dのうちの1つのニップ部44Aを説明しているが、他のニップ部44B〜44Dも基本的な構成は同じである。しかし、図6に示すように、排紙コロ34Bの回転軸48は、不図示のフレームにより排紙ローラ30のシャフト部38に対し、排紙コロ34Aと同じ方向に傾斜して軸支されている。また、排紙コロ34A,34Bと、シートのシート排出方向と直交する幅方向の中心ライン57に対して反対側に位置する排紙コロ34C,34Dの回転軸48は、排紙ローラ30のシャフト部38に対し、排紙コロ34Aと逆方向に傾斜している。
【0033】
つまり、排紙コロ34A〜34Dは、後述する蹴り出し部材47が設けられている側を中央側として、シート排出方向に対称的に傾斜させて設けられている。言い換えれば、排紙コロ34A〜34Dは、幅方向の中心ライン57を境にしてニップ部付近での回転方向55A〜55Dが中心ライン57から、それぞれ外側に向くように斜めに配置されている。
【0034】
そして、このように排紙コロ34A〜34Dを傾斜させることにより、シートを幅方向の中心を境にしてそれぞれ左右に引き伸ばすことができ、排出時、シートにしわが発生するのを防ぐことができる。なお、本実施の形態において、排紙コロ34A〜34Dの回転軸48と、シャフト38との角度58は11°となっている。
【0035】
また、図5に示すように排紙コロ34Aの円筒部46Aの、軸方向端部の一方の側である中心ライン57側には、周面にシートの後端(シート排出方向上流端)を押圧する複数の突起である蹴り出し部47a〜47dを設けた蹴り出し部材47が設けられている。なお、本実施の形態では、この蹴り出し部47a〜47dによりシートを排出する(押し出す)押出部材である蹴り出し部材47の、円筒部中心から円筒部46Aの同軸上に設けられた蹴り出し部材47までの距離(間隔)51は12.5mmとなっている。
また、蹴り出し部材47の蹴り出し部47a〜47dの先端までの外径52は11mm、その付近の外径53は10.4mmである。また円筒部46の外径54は10.5mmである。このように、蹴り出し部47a〜47dの先端の外径52は円筒部46の外径54より半径方向で0.25mm凸となっている。即ち、蹴り出し部47a〜47dは、円筒部46の周面よりも0.25mm外方、すなわち排紙ローラ側に突出している。
【0036】
図7は、図5をシャフト38方向から見た模式図であり、排紙コロ34Aはモールド部材であり、ローラ本体40Aはゴム材質であることから、ニップ部44Aにおいてローラ本体40Aが撓み、これによりニップ領域60は一定の面積を有する。図7において、点線で示す64は、排紙コロ34Aの円筒部46Aの回転軌跡を示している。
【0037】
また、破線で示す63は、蹴り出し部47a〜47dの回転軌跡を示すものである。そして、この蹴り出し部47a〜47dの回転軌跡63は、ニップ領域(圧接領域)60及びニップ領域60よりシート排出方向上流域65では円筒部46Aの回転軌跡64の内側にあり、回転軌跡64の外側、すなわち排紙ローラ側へは突出していない。また、蹴り出し部47a〜47dの回転軌跡63は、ローラ本体40Aの回転軌跡67の外側にあり、回転軌跡67の内側へは突出していない。さらに、蹴り出し部47a〜47dの回転軌跡63は、ニップ領域60のシート排出方向下流域66では円筒部46Aの回転軌跡64の外側、すなわち排紙ローラ側に突出している。
【0038】
ここで、このように蹴り出し部47a〜47dの回転軌跡63を設定した場合、シート排出方向上流域65では、蹴り出し部47a〜47dは円筒部46Aよりもローラ本体40A側(外方)に突出することは無い。このため、搬送中のシートSに蹴り出し部47a〜47dが衝突してシートSに傷等が付くことはない。また、ニップ部44A直後のシート排出方向下流域66では、円筒部46Aよりも径の大きい蹴り出し部47a〜47dが円筒部46よりもローラ本体40A側に突出するので、ニップ部44A通過直後のシートSの後端を蹴り出すことが可能となる。このため、確実にシートSを排出することができる。
【0039】
なお、図8は、本実施の形態の比較例に係る排紙ローラ対をシャフト方向から見た模式図であり、排紙コロ34Aは排紙ローラ30のシャフト38に対して平行または傾き角が11°以下となっている。この蹴り出し部47a〜47dの回転軌跡63は、ニップ領域60よりシート排出方向上流域65では円筒部46Aの回転軌跡64からローラ本体40A側(外方)に突出している。すなわち、この蹴り出し部47a〜47dの回転軌跡63は、ローラ本体40Aの回転軌跡67の内側へ突出している。
【0040】
この場合、シート排出方向上流域65で、蹴り出し部47a〜47dがシートSに接触し、シートSの印字面に蹴り出し部47a〜47dの先端跡が、その間隔で残り、画像品位が低下する。また、蹴り出し部47a〜47dがシートSに接触することで、排紙コロ34Aが停止する場合がある。この場合には停止した蹴り出し部47a〜47dが搬送されるシートSを擦るようになりシートSの印字面にシート排出方向に伸びたスジ状の傷が発生する。
【0041】
このように、本実施の形態においては、円筒部中心から円筒部46Aの同軸上に設けられた蹴り出し部材47までの距離51を12.5mmとし、排紙コロ34A〜34Dの回転軸48と、シャフト38との角度58を11°としている。これにより、蹴り出し部47a〜47dがニップ領域60及びニップ領域60よりシート排出方向上流域65では円筒部46Aの回転軌跡64から突出しないような軌跡で蹴り出し部47a〜47dを回転させることができる。また、蹴り出し部47a〜47dがニップ領域60のシート排出方向下流域66では円筒部46Aの回転軌跡64から外側(排紙ローラ側)に突出するような軌跡で蹴り出し部47a〜47dを回転させることができる。
【0042】
これにより、搬送されるシートに蹴り出し部47a〜47dが突き刺さるように接触することがないためシートの印字面を傷つけることなく、十分な蹴り出し性能を有してシートを排紙トレイ20Dに排出することができる。
【0043】
つまり、本実施の形態においては、蹴り出し部材47蹴り出し部47a〜47dがニップ領域60及びニップ領域60よりシート排出方向上流域65では円筒部46Aから突出しないような軌跡で排紙コロ34A〜34Dを回転させるようにしている。また、蹴り出し部材47の蹴り出し部47a〜47dがニップ領域60のシート排出方向下流域66では円筒部46Aから排紙ローラ側に突出するような軌跡で排紙コロ34A〜34Dを回転させるようにしている。これにより、画像品位を低下させることなく、確実にシートを排出することができる。
【0044】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図9は、本実施の形態に係るシート排出装置20Cの構成を示す図である。なお、図9において、既述した図2と同一符号は、同一又は相当部分を示している。
【0045】
図9に示すように、シート排出装置20Cは、排紙ローラ対70を備えている。ここで、この排紙ローラ対70は、排紙ローラ71と、排紙コロユニット73A,73Bを備えている。なお、排紙ローラ71はモールド部材のシャフト部72及びシャフト部72に形成されたゴム部材のローラ本体71A,71Bを備えている。また、排紙コロユニット73Aは、図10に示すように、それぞれ不図示の排紙コロバネにより付勢されて排紙ローラ71のローラ本体71Aに圧接する2つの排紙コロ74,75を備えている。
【0046】
ここで、図10に示すように、排紙コロ74,75は軸支部であるコロホルダ78に回転自在に保持され、それぞれ矢印方向(反時計回り)に回転する。また、排紙コロ74,75はコロホルダ78を介してコロホルダバネ84によりローラ本体71Aに付勢され、図11に示すように2つのニップ部110a,110bを形成している。
【0047】
排紙コロ74,75のうち、シート排出方向下流の排紙コロ74は、回転軸76上に設けられた円筒部102と、円筒部102の一側方に同軸上に設けられ、周面に蹴り出し部101a〜101dを有する蹴り出し部材101とを備えている。また、排紙コロ74は、円筒部102の他方に設けられた蹴り出しゴム79を備えている。
【0048】
排紙コロ74,75のうち、シート排出方向上流の排紙コロ75は、図11に示すように回転軸上77に設けられた円筒部103を備えている。なお、排紙コロ74の回転軸76と排紙コロ75のコロ回転軸77は平行に配置されると共に、排紙ローラ71のシャフト部72に対して斜めに配置されている。これにより、図11に示す、排紙コロ74、排紙コロ75の円筒部102,103におけるニップ部110a,110b付近での矢印111で示す回転方向は、矢印112で示す実際のシート排出方向に対して斜めになる。
【0049】
なお、排紙コロユニット73Aのシートの幅方向の中心ラインに対して反対側に位置する排紙コロユニット73Bも、図12に示すように、同様にローラ本体71Bに圧接する排紙コロ79,80を備えている。そして、この排紙コロ79,80も、それぞれ排紙ローラ71のローラ本体71Bに圧接して図9に示すニップ111を形成している。しかし、図12に示すように、排紙コロユニット73Bの排紙コロ79,80の回転軸は、排紙ローラ71のシャフト部72に対し、排紙コロユニット73Aの排紙コロ74,75と逆方向に傾斜している。
【0050】
そして、このように2つの排紙コロユニット73Aの排紙コロ74,75及び排紙コロユニット73Bの排紙コロ79,80を傾斜させることにより、シートを幅方向の中心ライン114を境にしてそれぞれ左右に引き伸ばすことができる。これにより、排出時、シートにしわが発生するのを防ぐことができる。なお、本実施の形態において、排紙コロユニット73Aの排紙コロ74,75及び排紙コロユニット73Bの排紙コロ79,80と、排紙ローラ71のシャフト部72との角度81は11°となっている。
【0051】
ところで、図11に示すように、排紙コロ74の円筒部102の外径は10.5mm、蹴り出し部101a〜101dの外径120は11mm、その周辺部の外径121は10.4mmとなっている。よって蹴り出し部101a〜101dの先端の外径120は円筒部102の外径より半径方向で0.25mm凸となっている。
【0052】
図13は、図10をシャフト72方向から見た模式図であり、排紙コロ74,75はモールド部材であり、ローラ本体71Aはゴム材質であることから、ニップ部110aにおいてローラ本体71Aが撓み、これによりニップ領域89は一定の面積を有する。
【0053】
また、図13において、点線で示す91は、排紙コロ74の円筒部74の回転軌跡を示し、点線で示す90は、蹴り出し部材101の蹴り出し部101a〜101dの回転軌跡を示している。そして、この蹴り出し部47a〜47dの回転軌跡90は、ニップ領域89よりシート排出方向上流域92では円筒部74の回転軌跡91の内側にあり、外側(排紙ローラ側)へは突出していない。
【0054】
さらに、蹴り出し部101a〜101dの回転軌跡90は、ローラ本体71Aの回転軌跡94の外側にあり、回転軌跡94の内側へは突出していない。また、蹴り出し部101a〜101dの回転軌跡90は、ニップ領域89及びニップ領域89のシート排出方向下流域93では円筒部102の回転軌跡91の外側(排紙ローラ側)に突出している。
【0055】
ここで、このように蹴り出し部101a〜101dの回転軌跡90を設定した場合、シート排出方向上流域92では、蹴り出し部101a〜101dは円筒部102よりもローラ本体71A側に突出することは無い。このため、排紙コロ75によりニップ部110aに案内されたシートSに蹴り出し部101a〜101dが衝突してシートSに傷等が付くことはない。また、ニップ部110a直後のシート排出方向下流域93では、円筒部102よりも径の大きい蹴り出し部101a〜101dが円筒部102よりも上方に突出するので、ニップ部通過直後のシートSの後端を蹴り出すことが可能となる。このため、確実にシートSを排出することができる。
【符号の説明】
【0056】
20…レーザプリンタ、20A…画像形成部、20C…シート排出装置、20D…排紙トレイ、21…レーザプリンタ本体、29…排紙ローラ対、30…排紙ローラ、34A〜34D…排紙コロ、38…シャフト部、40A〜40D…ローラ本体、44A〜44D…ニップ部、48…回転軸、46A…円筒部、47…蹴り出し部材、47a〜47d…蹴り出し部、60…ニップ領域、63…蹴り出し部の回転軌跡、64…排紙コロの円筒部の回転軌跡、65…ニップ領域のシート排出方向上流域、66…ニップ領域のシート排出方向下流域、67…ローラ本体の回転軌跡、70…排紙ローラ対、71…排紙ローラ、71A,71B…ローラ本体、72…シャフト部、73A,73B…排紙コロユニット、74,75…排紙コロ、76,77…回転軸、78…コロホルダ、79,80…排紙コロ、89…ニップ領域、90…蹴り出し部の回転軌跡、91…排紙コロの円筒部の回転軌跡、92…ニップ領域のシート排出方向上流域、93…ニップ領域のシート排出方向下流域、101…蹴り出し部材、101a〜101d…蹴り出し部、102,103…円筒部、110a,110b…ニップ部、111…ニップ、R…排紙通路、S…シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像が形成されたシートを排紙部により排出するシート排出装置において、
前記排紙部は、
排紙ローラと、
前記排紙ローラに圧接する圧接部及び前記圧接部の軸方向端部の一方の側に設けられ、周面に前記圧接部よりも排紙ローラ側に突出してシートの排出方向上流端を押圧する複数の突起が形成された押出部材を有し、シートのシート排出方向と直交する幅方向の中央を中心として対称的に、前記押出部材が設けられた側を中央側としてシート排出方向下流に傾斜するように軸支された複数の従動回転体と、を備え、
前記複数の従動回転体を、前記押出部材の前記突起が前記排紙ローラと前記圧接部とにより形成される圧接領域及び前記圧接領域のシート排出方向上流では前記圧接部よりも前記排紙ローラ側に突出せず、前記圧接領域よりシート排出方向下流では前記圧接部よりも前記排紙ローラ側に突出するように回転させること特徴とするシート排出装置。
【請求項2】
前記複数の回転体を傾斜させる角度を、前記押出部材の前記突起が前記排紙ローラと前記圧接部とにより形成される圧接領域及び前記圧接領域のシート排出方向上流では前記圧接部よりも前記排紙ローラ側に突出せず、前記圧接領域よりシート排出方向下流では前記圧接部よりも前記排紙ローラ側に突出するように回転するような角度とすること特徴とする請求項1記載のシート排出装置。
【請求項3】
前記複数の回転体の前記押出部材と前記圧接部との間隔を、前記押出部材の前記突起が前記排紙ローラと前記圧接部とにより形成される圧接領域及び前記圧接領域のシート排出方向上流では前記圧接部よりも前記排紙ローラ側に突出せず、前記圧接領域よりシート排出方向下流では前記圧接部よりも前記排紙ローラ側に突出するような間隔としたこと特徴とする請求項1又は2記載のシート排出装置。
【請求項4】
前記複数の回転体のシート排出方向上流に、前記排紙ローラに圧接し、シートを前記複数の回転体との圧接領域に案内する他の複数の回転体を、前記複数の回転体と平行に設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシート排出装置。
【請求項5】
シートに画像を形成する画像形成部と、画像が形成されたシートを排出する請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシート排出装置と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−126481(P2012−126481A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277647(P2010−277647)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】