説明

シート搬送装置、画像読取装置および画像形成装置

【課題】第2の搬送手段より下流側へ搬送される厚紙等の腰の強いシートには、曲率半径の比較的小さい曲率部の用紙搬送路から搬送ベルトに受け渡されるとき、変形・座屈に対する復元力が働き、曲率外側方向に向かって搬送される際、第2の搬送手段の下流側に設けられたガイド板対の外側部に強い当接圧で当接しつつ搬送されるため、ガイド板の磨耗や、レイアウトの制約が生じ、装置の小型化を実現することができないという問題点を解決する。
【解決手段】グリップローラ81に搬送ベルト82を介して対向するベルト搬送手段8の上側のプーリ83の軸中心を、グリップローラ81の軸中心に対して第2搬送手段7の用紙搬送方向の下流側にシフト量δだけシフトさせて配置した。これにより、用紙Sはニップ部99の出口方向XAへ搬送される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート搬送装置、そのシート搬送装置を備えた複写機、ファクシミリ、プリンタ、印刷機、インクジェット記録装置、スキャナ等の画像読取装置等またはそれらのうちの少なくとも二つを組み合わせた複合機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PPC(プレイン・ペーパ・コピア:普通紙複写機)等を含む複写機、ファクシミリ、プリンタ、印刷機、インクジェット記録装置等の画像形成装置は、その装置全体の小型化を図るため、その画像が形成される媒体である被画像形成媒体あるいはシート状記録媒体(以下、「シート」という)を、シート収容手段あるいはシートを積載するシート積載手段から画像形成手段本体に搬送して供給するための搬送手段も小型化される傾向がある。以下、シートを収容するシート収容手段を代表して説明する。
【0003】
また、前記画像形成装置では、多様なシートサイズ(以下、例示的に「用紙サイズ」という)やシート種類(以下、例示的に「紙種」という)に対応した機種が一般的である。このような画像形成装置の機種では、例えば、いくつかの用紙サイズおよび紙種からなるシート(以下、例示的に「用紙」という)を、シート収容手段に予め収容しておき、ユーザが適宜選択したシート収容手段から用紙を、または画像形成装置が自動選択した用紙を給送できるようにしている。従って、このような構成の場合には、シート収容手段が画像形成装置内のスペースをより多く占めて消費するので、搬送手段を小型化する要求がより強まる。
【0004】
これらのことから、画像形成装置内におけるシート収容手段と画像形成手段本体との間に形成される搬送路は、両者の位置関係にもよるが、その搬送方向を大きく変更して、搬送路自体の占有スペースを削減するようにしている。その結果、搬送路上には、その搬送方向を連続的かつスムーズに変更するために、湾曲した形状からなる曲率部を設けて、この曲率部の曲率半径を、画像形成装置に通常使用されるシートとしての定型記録紙が搬送できる程度の比較的小さな半径に設定している。
このような画像形成装置におけるシート搬送装置としては、例えば特開2004−338923号公報に記載されている従来技術を挙げることができる(特許文献1参照)。すなわち、同公報の図6および図7に示されているように、画像形成手段本体の下側に、各段にそれぞれ所定のサイズや紙種のシートを所定枚数積載して収容したシート収容手段としての給紙トレイを配置し、給紙トレイと画像形成手段本体との間には、選択された段である給紙トレイの略水平方向に1枚のシートを引き出して上方の画像形成手段本体に向けて給送するシート搬送装置を設けた構成としている。
【0005】
以下、適宜、上記特開2004−338923号公報の各図に示されている符号に括弧を付して説明すると、給紙トレイ(1)内のシート(P)が周知のFRR分離方式で1枚に分離されて送り出され、上側ガイド板(8)および下側ガイド板(7)で形成された曲率部を備えた搬送経路を通過して画像形成手段本体へ搬送される。上記曲率部は、上側ガイド板(8)および下側ガイド板(7)からなる湾曲固定ガイド部材で形成されており、シート(P)は上記曲率部を通過する際に、下側ガイド板(7)に沿って搬送され、搬送が進むにつれて、シート(P)は、上側ガイド板(8)によって押さえ付けられるように経路が矯正され、下側ガイド板(7)の出口に位置する弾性変形可能な案内片(6)に沿って搬送ローラ対(5)に到達する。以下、上側ガイド板(8)および下側ガイド板(7)を、「湾曲固定ガイド部材」という。
けれども、上記のように構成したシート搬送装置では、厚紙等の記録紙や封筒のような剛性が高い特殊紙のシート(P)を搬送させようとすると、搬送経路の曲率部の曲率半径が小さいため、シート(P)がその曲率に従って撓みながら搬送されるときの抵抗が複写用の普通紙のようなシートと比べて格別に大きくなるため、高剛性の記録紙や特殊紙等のシート(P)を進行させることができず、ジャムや搬送不良を生じて安定した給送動作ができないという不具合があった。
【0006】
上記動作をさらに詳しく述ベルト、次のとおりである。シート(P)は、その搬送方向のシート(P)先端部(先端側)が、上側ガイド板(8)および下側ガイド板(7)からなる湾曲固定ガイド部材に至ると、この湾曲固定ガイド部材によって、シート(P)の先端側となる前半部分はその厚さ方向に湾曲される。このため、剛性の高いシート(P)を搬送するときには、この高剛性のシート(P)が湾曲に抗する力が増大して、その搬送を妨げる抵抗力も増大することとなる。従って、高剛性のシート(P)の先端部が下流側の搬送ローラ対(5)に到達せずに、上流側のローラ対(2a,2b)だけで高剛性のシート(P)を搬送して、高剛性のシート(P)が湾曲固定ガイド部材で湾曲されると、この上流側のローラ対(2a,2b)による搬送力だけでは、湾曲された高剛性のシート(P)から生じる抵抗力に対して、搬送方向に進める力として不足をきたすことになる。このため、高剛性のシート(P)の中心線が搬送経路の中心線に一致しなくなる斜行などの搬送不良や、高剛性のシート(P)が湾曲固定ガイド部材に引っ掛かって停止してしまう用紙ジャムが発生しやすくなる。
【0007】
そこで、上記特開2004−338923号公報では、第1の搬送手段から送り出されたシートを、その搬送方向下流側であって略垂直上方に位置する第2の搬送手段まで搬送する給紙装置において、第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に一対の直線状ガイド部材を設け、この直線状ガイド部材の案内によってシートを搬送する給紙装置が提案されている。この給紙装置によれば、ガイド部材を湾曲形状ではなく直線形状の直線状ガイド部材としたので、搬送負荷を低く抑えること、つまり負荷の急激な上昇を抑制でき、紙詰まり、斜行等の搬送不良を防止できるとしている。
換言すれば、上記給紙装置によれば、搬送されるシート上の変形箇所を、湾曲ガイド部材による1箇所の湾曲に集中させずに、その搬送方向における直線状ガイド部材の前後端付近である2箇所での湾曲に分散でき、しかも、直線状ガイド部材を略中間角度の斜め姿勢に設置して、これらの2箇所における湾曲の程度を略均等な同程度にしているので、その搬送時には搬送負荷の急激な上昇を抑制できるとしている。すなわち、シートがその進行方向を変えるため、湾曲される箇所は、上流側のローラ対から直線状ガイド部材に受け渡す箇所と、直線状ガイド部材から下流側のローラ対に受け渡す箇所との2箇所になり、少なくとも、それぞれの湾曲の程度が小さくなり、これに伴い各箇所で湾曲させたことによって生じる抵抗力を低く保てるので、搬送負荷が急激に上昇することを回避できるというものである。
【0008】
上記特開2004−338923号公報(特許文献1)と概略同様に構成された第1,2の搬送手段を有して、第1の搬送手段と第2の搬送手段の間に、第2の搬送手段に至る傾斜面を形成した反転ガイド部材を設け、この反転ガイド部材は、第2の搬送手段に向けて可動するように構成された給紙装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
この給紙装置によれば、反転ガイド部材に用紙後端が接触するときには、用紙後端が接する方向と概略同様な方向に反転ガイド部材が変位して、この変位によって、用紙後端が接触した際のショックを吸収できるので、弾き音を低減できるとしている。
【0009】
また、シートを収容した複数のシート収容手段と、各シート収容手段にそれぞれ個別に設けた搬送路およびシート給送手段とを有し、これらの搬送路の末端を1つの共通搬送路に合流させた構成にするとともに、少なくとも、高剛性のシートを収容したシート収容手段に設けた搬送路は、その末端に設けた前記共通搬送路に合流する際の第1の曲率部の曲率半径を、他の搬送路が合流する際の他の曲率部の曲率半径よりも大きく設定したシート給送装置が知られている(例えば、特許文献3参照)。
このシート給送装置によれば、高剛性のシートは、その搬送時に、搬送路上を進んで曲率半径が大きい第1の曲率部を通過する際には、普通のシートと同程度に湾曲されることなく、普通シートに比べて、十分に緩やかに湾曲されて進み続けるので、その搬送時の抵抗が少なくでき、シートの停滞や遅延を生じることなく共通搬送路に到達させ搬送できるとしている。
【0010】
また、反転ローラ対と、この反転ローラ対により送り込まれたシートを搬送・ガイドするための反転搬送路とを有し、反転搬送路は、シートの搬送方向を変更するための方向変更部位を有し、この方向変更部位における内側に回転可能なローラをシート搬送方向に見て直角方向に配設することにより、反転搬送路に送り込まれたシートを前記ローラに当接させながら送り出すようにした画像形成装置に備えたシート反転手段が知られている(例えば、特許文献4参照)。
このシート反転手段によれば、送り込まれたシートは前記の方向変更部位でその内側の接触部位が、ローラに必ず接することになり、しかもこのローラがシートの搬送方向の進行に伴い従動回転するので、従来のガイド板に比べて、搬送抵抗を軽減でき、つまり固定されたガイド部材と移動するシートとの間に生じる摩擦抵抗を解消して、前記の方向変更部位での搬送方向を変更するガイドができるとしている。
【0011】
【特許文献1】特開2004−338923号公報(第1〜3頁、図1〜図7)
【特許文献2】特開2005−89008号公報(第2〜3頁、図4,5)
【特許文献3】特開平10−129883号公報(第1〜2頁、図1)
【特許文献4】特開2005−1771号公報(第1〜2頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1記載のシート搬送装置では、所詮、搬送するシートのガイド用に固定部材を配置した構成であるため、移動体である搬送されるシートと、固定されたガイド部材との間の速度差は解消されず、ガイド部材の形状や設置姿勢に拘わりなく、両者の間には必ずシートの搬送を妨げる方向に作用する抵抗が生じてしまい、搬送負荷となるという問題点がある。
つまり、前記従来の構成では、上記の搬送不良やジャムを回避する効果が不十分であり、直線状のガイド部材では、たとえ搬送負荷の急激な上昇を抑制できても、搬送負荷を生じることには変わりがないといえる。特に、厚紙や封筒等の剛性の高い用紙(シート)を搬送する際には、上記の搬送不良やジャムおよび用紙後端のハネ音が顕著となってしまう。
【0013】
特許文献2記載の反転ガイド部材を設けた構成では、たとえ用紙後端が接する方向に変位可能であるという意味で可動部材であるとしても、該用紙の向きを変更するガイドとしては固定ガイド部材であり、同様に、その向きを変更してガイドする際には、用紙と反転ガイド部材との間での相対速度差が解消されておらず、搬送負荷が生じている。特に、厚紙や封筒等の剛性の高い用紙(シート)を搬送する際には、上記の搬送不良やジャムおよび用紙後端のハネ音が顕著となってしまう。
【0014】
また、特許文献3記載の技術のように、曲率半径を所定に大きく設定した専用の搬送路を設けた構成でも、この専用の搬送路上を進むシートが緩やかに湾曲されて、シートが搬送路から受ける搬送抵抗が少なくなるとしても、同様に搬送負荷が生じることには変わりない。特に、厚紙や封筒等の剛性の高い用紙(シート)を搬送する際には、上記の搬送不良やジャムが顕著となってしまう。
【0015】
また、特許文献4記載の技術のように、ローラなどの可動部材を、搬送路の方向変更部位における内側の搬送路部分の所定箇所に設けた構成では、その搬送過程において、内側のローラによって、シートの前後端の間の中間部分が支持された状態での両者間の摩擦抵抗を特に有効的に低減できても、このような状態になる前後の状態について、つまりその方向変更部位における外側の搬送路部分とシートとが接した場合の、搬送負荷についての配慮が欠けており、またその搬送過程でのシート先端やシート後端の挙動についても、特に言及されていない。特に、厚紙や封筒等の剛性の高い用紙(シート)を搬送する際には、上記の搬送不良やジャムおよび用紙後端のハネ音が顕著となってしまう。
【0016】
そこで、本願出願人は、前記従来技術の有する問題点を解決できる新規なシート搬送装置およびそのシート搬送装置等を有する画像形成装置を提供することを目的とした発明(例えば平成18年8月7日付けの特願2006−214779号等にて提案した新規な発明を指し、以下、「先願発明」という)を提案した。この先願発明を適用した例の詳細は、本願発明の実施形態を説明する前に後述することとする。この発明によれば、コンパクトで省スペースでありながら、簡単かつ低コストである構成で、シート種類(紙種)対応性に優れたシート搬送装置、該シート搬送装置を備えた画像読取装置、シート搬送装置および/または画像読取装置を備えた画像形成装置を実現し提供することができる。
【0017】
しかしながら、上記先願発明を実用化する上で、次の問題点が残っていることが分かった。すなわち、第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成され、その曲率半径が比較的小さい湾曲した曲率部を備えたシート搬送経路の曲率後に設けられた第2の搬送手段より下流側へ搬送されるシートであって、特に厚紙等の腰の強いシートには、前記曲率部からベルトに受け渡される際に生じる弾性的ともみなせる変形(以下、「座屈」ともいう)に対する復元力が働くため、曲率外側方向に向かって搬送されようとする。この際、第2の搬送手段の下流側に設けられたガイド板対等のガイド部材の外側部に強い当接圧で当接しつつ搬送されるため、ガイド板等のガイド部材の磨耗や、レイアウトの制約が生じ、装置の小型化を実現することができない。そこで本発明は、コンパクトで省スペースでありながら、簡単かつ低コストである構成で前記課題を解決することを主な目的とする。
【0018】
主な請求項ごとの目的を挙げれば、次のとおりである。
第1の搬送手段と第2の搬送手段により狭持されたシートは、座屈しながら搬送されるが、第2の搬送手段より下流へ搬送されるシートのシート搬送方向は、シートの厚みが大きいほど(腰が強いほど)、変形・座屈を戻そうとする方向(外郭方向、すなわちベルト搬送手段のベルトの搬送面方向)となる。特に厚紙のような腰の強い・剛性の高いシートの場合は、第2の搬送手段より下流側に配置されたガイド部材に強い接触圧で接触しながら搬送されるため、ガイド部材の磨耗が懸念される。また、装置の小型化を目的として搬送スペースを小さくするため、弾性部材をガイド部材として用いることもあるが、腰の強いシートをガイドするためには、より弾性力の強い部材を使用する必要があり、コスト面で不利となる。
【0019】
そこで、請求項1,2,3および11記載の発明の目的は、第2の搬送手段より搬送されたシート搬送方向を、装置の第2搬送手段より下流側のレイアウトに応じて、シートのシート搬送方向を設定することで、上記不具合を解消することにある。
【0020】
第2の搬送手段の進入前後で搬送方向を変えたい場合、従来のローラ対を用いた搬送手段においては、搬送手段の挟持部(ニップ部)への進入がスムーズに行われず、進入後の搬送方向に対向するローラにシート先端が追突し、シートの先端のダメージやジャムといった不具合を引き起こす場合がある。
【0021】
そこで、請求項4および11記載の発明の目的は、回転搬送部材の軸に対して、挟持部を形成する側のベルト保持回転部材の軸を、第2の搬送手段のシート搬送方向の下流側へ偏倚させて配置することにより、第2の搬送手段の挟持部への進入をスムーズに行わせつつ、挟持部進入後のシート搬送方向をベルトの搬送面と対向する方向に変更することにより、例えばベルト側の下流部に配置したガイド部材の磨耗を防止するとともに、下流部のレイアウト余裕度向上を図ることにある。
【0022】
請求項5および11記載の発明の目的は、ベルト搬送手段における挟持部(ニップ部)を形成する側のベルト保持回転部材の材質を弾性部材で構成することにより、第2の搬送手段の対向するベルト保持回転部材間で挟持部(ニップ部)を大きく形成することができるため、第2の搬送手段の搬送力を大きくでき、かつ、挟持部からのシートのシート搬送方向(以下、「出口角度」ともいう)をベルトと対向する方向に形成することができるため、シート進入後のシート搬送方向をベルトの搬送面と対向する方向にすることにある。
また、ベルトの見かけのゴム硬度が低くなるため、シートの先端がベルトに当接するときの音、シートの後端がベルト側にはねる際にシートの後端がベルトに当たる際に生じるハネ音の低減を可能とすることにある。
【0023】
請求項6および11記載の発明の目的は、ベルト搬送手段のベルトを比較的低硬度のゴムで形成することにより、第2の搬送手段の対向するベルト保持回転部材間で挟持部(ニップ部)を大きく形成することができるため、第2の搬送手段の搬送力を大きくでき、かつ、挟持部からのシートのシート搬送方向(以下、「出口角度」ともいう)をベルトと対向する方向に形成することができるため、シート進入後のシート搬送方向をベルトの搬送面と対向する方向にすることにある。
また、ベルトのゴム硬度自体が比較的低いため、シートの先端がベルトに当接するときの音、シートの後端がベルト側にはねる際にシートの後端がベルトに当たる時に生じるハネ音の低減を可能とすることにある。
【0024】
請求項7および11記載の発明の目的は、ベルト搬送手段を、シート搬送方向と直交するシート幅方向に複数に分割して構成することにより、それぞれのベルト幅を小さくでき、かつ、ベルト幅方向の厚み偏差の影響を小さくして、安定したベルト搬送を実現することにある。
また、シート幅方向の中央側に配置されたベルト搬送手段において挟持部を形成する側のベルト保持回転部材の軸を、シート幅方向の両側に配置されたベルト搬送手段において挟持部を形成する側のベルト保持回転部材の軸よりも、第2の搬送手段のシート搬送方向の下流側へ偏倚・ずらせて配置することにより、シートのシート搬送方向をベルトの搬送面と対向する方向に変えられるとともに、シートの後端がベルト搬送手段を抜け、例えば下流側に設けたガイド部材に当設するときの音(ハネ音)を低減することにある。
【0025】
請求項8および11記載の発明の目的は、第2の搬送手段における挟持部を形成する側のベルト保持回転部材の軸を、第2の搬送手段のシート搬送方向の下流側へ変位させるための駆動手段を備えた変位手段を配設することにより、シート種類、特にシートの厚みに応じて、挟持部を形成する側のベルト保持回転部材の軸を上記方向に変更できるようにする。詳しくは、シートの先端が挟持部へ進入する際には、挟持部を形成する側のベルト保持回転部材の軸を挟持搬送手段の対向対の他方(回転搬送部材の軸)と対向する位置(初期位置)に位置させ、シートの後端が挟持部を抜ける直前に、挟持部を形成する側のベルト保持回転部材の軸を第2の搬送手段のシート搬送方向の下流側へ変位させることにより、シートの後端がベルト搬送手段および挟持部を抜け、例えば下流側に設けたガイド部材に当設するときの音(ハネ音)を低減することにある。
【0026】
請求項9および11記載の発明の目的は、変位手段の駆動手段として、ソレノイドを用いることにより、低コストかつ容易な制御方式で請求項8および11記載の発明の目的を達成することにある。
【0027】
請求項10および11記載の発明の目的は、変位手段の駆動手段として、パルス入力で回転駆動する駆動モータである例えばステッピングモータを用いることにより、シートの様々な厚みに応じて変位する量を変更することで、請求項9よりもより効果的に請求項8および11記載の発明の目的を達成することにある。
【0028】
請求項12記載の発明の目的は、請求項1ないし11の何れか一つに記載のシート搬送装置を有する画像読取装置として、原稿シートを自動給送する自動原稿送り装置(ADF)等を備えた画像読取装置とすることにより、省スペース、低コストかつシンプルな構成で、自動原稿送り装置等での厚紙原稿等の比較的剛性の高い原稿シート搬送性を向上させることにある。
【0029】
請求項13記載の発明の目的は、請求項1ないし11の何れか一つに記載のシート搬送装置および/または請求項12記載の画像読取装置を有する画像読取装置として、原稿シートを自動給送する自動原稿送り装置(ADFやARDF)等を備えた画像読取装置とすることにより、省スペース、低コストかつシンプルな構成で、シート搬送装置における厚紙等の比較的剛性の高いシート搬送性を向上させ、あるいは自動原稿送り装置等での厚紙原稿等の比較的剛性の高い原稿シート搬送性を向上させ得る画像形成装置を実現し提供することにある。
【0030】
請求項14記載の発明の目的は、画像形成装置は、複写機、ファクシミリ、プリンタ、印刷機およびインクジェット記録装置の何れか一つ、またはそれらの少なくとも二つを組み合わせた複合機において、請求項13記載の発明の目的を達成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明者らは、上述の課題を解決するとともに上述の目的を達成するために、後述の先願発明に係る例や、実施例等に記載の試験等を行い鋭意研究を重ねる中で、シート種類を問わず、特には厚紙や封筒等の比較的剛性の高いシートを、搬送不良やジャムを発生することなく搬送できる簡単な構成として、移動案内手段(ムービングガイド)という簡単な構成を着想するに至り、その具体的手段として最も構成が簡単なベルト搬送手段を種々に工夫し、実用化するに至った。本発明は、このような試験で裏付けられた結果を基本にしてなされたものである。
【0032】
上述した課題を解決するとともに上述した目的を達成するために、請求項ごとの発明では、以下のような特徴ある手段・発明特定事項(以下、「構成」という)を採っている。
請求項1記載の発明は、シートを搬送する第1の搬送手段と、第1の搬送手段のシート搬送方向の下流側に配置され、第1の搬送手段により搬送されてきたシートを前記第1の搬送手段のシート搬送方向と異なるシート搬送方向に搬送する第2の搬送手段とを有し、第1の搬送手段および第2の搬送手段のうちの少なくとも第2の搬送手段は、シートを挟持して搬送する挟持部を形成する挟持搬送手段であり、第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向に配置され、第2の搬送手段の前記挟持部に向けてシートを移動・案内する移動案内手段を具備するシート搬送装置であって、第2の搬送手段より搬送されたシートのシート搬送方向を、前記移動案内手段に対向する方向に変更可能に構成したことを特徴とする。
【0033】
請求項2記載の発明は、シートを搬送する第1の搬送手段と、第1の搬送手段のシート搬送方向の下流側に配置され、第1の搬送手段により搬送されてきたシートを前記第1の搬送手段のシート搬送方向と異なるシート搬送方向に搬送する第2の搬送手段と、第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成される第1のシート搬送経路と、第2の搬送手段の上流から第2の搬送手段に至って形成され、第1のシート搬送経路と異なる第2のシート搬送経路と、第1のシート搬送経路と第2のシート搬送経路とが、第2の搬送手段の上流側で合流する合流搬送経路と、前記合流搬送経路の外郭方向に配置され、第2の搬送手段に向けてシートを移動・案内する移動案内手段とを有し、第1の搬送手段および第2の搬送手段のうちの少なくとも第2の搬送手段は、シートを挟持して搬送する挟持部を形成する挟持搬送手段であるシート搬送装置であって、第2の搬送手段より搬送されたシートのシート搬送方向を、前記移動案内手段に対向する方向に変更可能に構成したことを特徴とする。
【0034】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のシート搬送装置において、前記移動案内手段は、前記挟持部に向けてシートを搬送するベルトを備えたベルト搬送手段であり、第2の搬送手段より搬送されたシートのシート搬送方向を、前記ベルトのシートと接触する搬送面に対向する方向に変更可能に構成したことを特徴とする。
【0035】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のシート搬送装置において、前記ベルト搬送手段は、第2の搬送手段における前記挟持搬送手段の対向対の一方が、前記ベルトを走行可能に保持するとともに軸支された少なくとも一対のベルト保持回転部材を有し、前記対向対の他方は、軸支された回転搬送部材であり、前記回転搬送部材の軸に対して、前記挟持部を形成する側の前記ベルト保持回転部材の軸を、第2の搬送手段のシート搬送方向の下流側へ偏倚させて配置したことを特徴とする。
【0036】
請求項5記載の発明は、請求項3または4記載のシート搬送装置において、前記ベルト搬送手段は、第2の搬送手段における前記挟持搬送手段の対向対の一方が、前記ベルトを走行可能に保持するとともに軸支された少なくとも一対のベルト保持回転部材を有し、前記挟持部を形成する側の前記ベルト保持回転部材を弾性部材で構成したことを特徴とする。
【0037】
請求項6記載の発明は、請求項3ないし5の何れか一つに記載のシート搬送装置において、前記ベルトを、比較的低硬度のゴムで形成したことを特徴とする。
【0038】
請求項7記載の発明は、請求項3ないし6の何れか一つに記載のシート搬送装置において、前記ベルト搬送手段は、第2の搬送手段における前記挟持搬送手段の対向対の一方が、前記ベルトを走行可能に保持するとともに軸支された少なくとも一対のベルト保持回転部材を有し、前記ベルト搬送手段は、前記シート搬送方向と直交するシート幅方向に複数に分割して構成されており、前記シート幅方向の中央側に配置された前記ベルト搬送手段において前記挟持部を形成する側の前記ベルト保持回転部材の軸を、前記シート幅方向の両側に配置された前記ベルト搬送手段において前記挟持部を形成する側の前記ベルト保持回転部材の軸よりも、第2の搬送手段のシート搬送方向の下流側へ偏倚させて配置したことを特徴とする。
【0039】
請求項8記載の発明は、請求項3記載のシート搬送装置において、前記ベルト搬送手段は、第2の搬送手段における前記挟持搬送手段の対向対の一方が、前記ベルトを走行可能に保持するとともに軸支された少なくとも一対のベルト保持回転部材を有し、シート種類に応じて、前記挟持部を形成する側の前記ベルト保持回転部材の軸を、第2の搬送手段のシート搬送方向の下流側へ変位させる駆動手段を備えた変位手段を有することを特徴とする。
【0040】
請求項9記載の発明は、請求項8記載のシート搬送装置において、前記駆動手段は、ソレノイドであることを特徴とする。
【0041】
請求項10記載の発明は、請求項8記載のシート搬送装置において、前記駆動手段は、パルス入力で回転駆動する駆動モータであることを特徴とする。
【0042】
請求項11記載の発明は、請求項1ないし10の何れか一つに記載のシート搬送装置において、シートは、比較的剛性の高いシートであることを特徴とする。
【0043】
請求項12記載の発明は、請求項1ないし11の何れか一つに記載のシート搬送装置を有することを特徴とする画像読取装置である。
【0044】
請求項13記載の発明は、請求項1ないし11の何れか一つに記載のシート搬送装置および/または請求項12記載の画像読取装置を有することを特徴とする画像形成装置である。
【0045】
請求項14記載の発明は、請求項13記載の画像形成装置において、前記画像形成装置は、複写機、ファクシミリ、プリンタ、印刷機およびインクジェット記録装置の何れか一つ、またはそれらの少なくとも二つを組み合わせた複合機であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、上記課題を解決して新規なシート搬送装置、該シート搬送装置を備えた画像読取装置、シート搬送装置および/または画像読取装置を備えた画像形成装置を実現し提供することができる。
すなわち、本発明によれば、上述の問題点・課題を解決することにより、省スペースでありながら、簡単かつ低コストである構成で、厚紙等の比較的剛性の高い(腰の強い)シートでも、第2の搬送手段におけるシート搬送経路の下流側に問題なく搬送可能なシート搬送装置、該シート搬送装置を備えた画像読取装置、該シート搬送装置および/または該画像読取装置を備えた画像形成装置を実現し提供することができる。
【0047】
以下、請求項記載の発明ごとに特有の効果を挙げれば、次のとおりである。
請求項1、2、3および8記載の発明によれば、第2の搬送手段より搬送されたシート、特に厚紙等の比較的剛性の高いシートのシート搬送方向を、装置の第2搬送手段より下流側のレイアウトに応じて、設定することができる。
【0048】
請求項4および8記載の発明によれば、回転搬送部材の軸に対して、挟持部(ニップ部)を形成する側のベルト保持回転部材の軸を、第2の搬送手段のシート搬送方向の下流側へ偏倚させて配置することにより、第2の搬送手段の挟持部への進入をスムーズに行わせつつ、挟持部進入後のシート搬送方向をベルトの搬送面と対向する方向に変更することが可能となり、例えばベルト側の下流部に配置したガイド部材の磨耗を防止するとともに、下流部のレイアウト余裕度の向上を図ることができる。
【0049】
請求項5および8記載の発明によれば、ベルト搬送手段における挟持部(ニップ部)を形成する側のベルト保持回転部材の材質を弾性部材で構成することにより、第2の搬送手段の対向するベルト保持回転部材間で挟持部(ニップ部)を大きく形成することができるため、第2の搬送手段の搬送力を大きくでき、かつ、挟持部からのシートのシート搬送方向(以下、「出口角度」ともいう)をベルトと対向する方向に形成することができるため、シート進入後のシート搬送方向をベルトの搬送面と対向する方向にすることができる。
また、弾性部材からなるベルトの見かけの硬さ(例えばゴム硬度)が低くなるため、シートの先端がベルトに当接するときの音、シートの後端がベルト側にはねる際にシートの後端がベルトに当たる時に生じるハネ音の低減が可能となる。
【0050】
請求項6および8記載の発明によれば、ベルト搬送手段のベルトを比較的低硬度のゴムで形成することにより、第2の搬送手段の対向するベルト保持回転部材間で挟持部(ニップ部)を大きく形成することができるため、第2の搬送手段の搬送力を大きくでき、かつ、挟持部からのシートのシート搬送方向をベルトの搬送面と対向する方向に形成することができるため、シート進入後のシート搬送方向をベルトの搬送面と対向する方向にすることができる。
また、ベルトのゴム硬度自体が比較的低いため、シートの先端がベルトに当接する時の音、シートの後端がベルト側にはねる際にシートの後端がベルトに当たる時に生じるハネ音の低減が可能となる。
【0051】
請求項7および8記載の発明によれば、ベルト搬送手段を、シート搬送方向と直交するシート幅方向に複数に分割して構成することにより、それぞれのベルト幅を小さくでき、かつ、ベルト幅方向の厚み偏差の影響を小さくして、安定したベルト搬送を実現できる。
また、シート幅方向の中央側に配置されたベルト搬送手段において挟持部を形成する側のベルト保持回転部材の軸を、シート幅方向の両側に配置されたベルト搬送手段において挟持部を形成する側のベルト保持回転部材の軸よりも、第2の搬送手段のシート搬送方向の下流側へ偏倚させて配置することにより、シートのシート搬送方向をベルトの搬送面と対向する方向に変えられるとともに、シートの後端がベルト搬送手段を抜け、例えば下流側に設けたガイド部材に当設するときの音(ハネ音)を低減することができる。
【0052】
請求項8および11記載の発明によれば、第2の搬送手段における挟持部を形成する側のベルト保持回転部材の軸を、第2の搬送手段のシート搬送方向の下流側へ変位させる駆動手段を備えた変位手段を有することにより、シート種類、特にシートの厚みに応じて、挟持部を形成する側のベルト保持回転部材の軸を、第2の搬送手段のシート搬送方向の下流側へ上記方向に変更することができ、これによって、シートの先端が挟持部へ進入する際には、挟持部を形成する側のベルト保持回転部材の軸を挟持搬送手段の対向対の他方(回転搬送部材の軸)と対向する位置(初期位置)に位置させ、シートが挟持部を抜ける直前に、挟持部を形成する側のベルト保持回転部材の軸を第2の搬送手段のシート搬送方向の下流側へ変位させることにより、例えばシートが厚紙等の比較的剛性の高いシートの後端がベルト搬送手段および挟持部を抜け、例えば下流側に設けたガイド部材に当設するときの音(ハネ音)を低減することが可能となる。
【0053】
請求項9および11記載の発明によれば、変位手段の駆動手段として、ソレノイドを用いることにより、低コストかつ容易な制御方式で請求項8および11記載の発明の効果を奏することができる。
【0054】
請求項10および11記載の発明によれば、変位手段の駆動手段として、パルス入力で回転駆動する駆動モータ(例えばステッピングモータ等)を用いることにより、シートの様々な厚みに応じて変位する量を変更することができるので、請求項9よりもより効果的に請求項8および11記載の発明の効果を奏することができる。
【0055】
請求項12記載の発明によれば、請求項1ないし11の何れか一つに記載のシート搬送装置を有する画像読取装置として、原稿シートを自動給送する自動原稿送り装置(ADF)等を備えた画像読取装置とすることにより、省スペース、低コストかつシンプルな構成で、自動原稿送り装置等での厚紙原稿等の比較的剛性の高い原稿シート搬送性が向上する。
【0056】
請求項13記載の発明によれば、請求項1ないし11の何れか一つに記載のシート搬送装置および/または請求項12記載の画像読取装置を有する画像読取装置として、原稿シートを自動給送する自動原稿送り装置(ADFやARDF)等を備えた画像読取装置とすることにより、省スペース、低コストかつシンプルな構成で、シート搬送装置における厚紙等の比較的剛性の高いシート搬送性が向上し、あるいは自動原稿送り装置等での厚紙原稿等の比較的剛性の高い原稿シート搬送性が向上する画像形成装置を実現し提供することができる。
【0057】
請求項14記載の発明によれば、画像形成装置は、複写機、ファクシミリ、プリンタ、印刷機およびインクジェット記録装置の何れか一つ、またはそれらの少なくとも二つを組み合わせた複合機において、請求項13記載の発明の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を含む本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という)を説明する。上記先願発明を適用した用紙搬送装置およびそれを搭載した画像形成装置の例、実施形態や変形例、実施例等に亘り、同一の機能および形状等を有する部材や構成部品等の構成要素については、同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。図および説明の簡明化を図るため、図に表されるべき構成要素であっても、その図において特別に説明する必要がないものは適宜断わりなく省略することがある。公開特許公報等の構成要素をそのまま引用して説明する場合は、その符号に括弧を付して示し、各実施形態等のそれと区別するものとする。
【0059】
図1〜図3等を始めとして後述の図4〜図8には、上記先願発明を適用した用紙搬送装置およびそれを搭載した画像形成装置の例が含まれているので、その部分については詳しく説明する。まず、図1を参照して、画像形成装置の一例としての複写機1の全体構成を説明する。
【0060】
複写機1は、原稿の表面から画像を読み取って各種のシート状記録媒体(以下、「シート」という)としての記録紙、転写紙、用紙、OHPフィルムなどに複写画像を形成するモノクロ複写機である。この複写機1は、読み取った原稿画像に基づいて所定の画像形成処理を行う画像形成部を有する画像形成装置本体2と、この画像形成装置本体2を載置して該装置本体2にシートの一例としての用紙Sを1枚ずつ供給する給紙装置3と、画像形成装置本体2上に取り付けられ原稿画像を読み取ってこの原稿画像情報を画像形成装置本体2に送出する原稿読取装置4とを有する。
画像形成装置本体2の上部であって、原稿読取装置4の下方に空間を形成するようにして、上記画像形成装置本体2を通過した用紙を積載する排紙トレイ9が設置され、給紙装置3から排紙トレイ9に至るまで用紙Sを移動させる用紙搬送経路(シート搬送経路)としての用紙搬送路R1(以下、「搬送路R1」ともいう)が形成されている。この搬送路R1の大部分は、給紙装置3から画像形成装置本体2の上部に渡り、略水平線に対して略垂直上方向、すなわち略鉛直上方向に延在されていて、該搬送路R1上には、最小サイズの用紙Sに応じた所定間隔を確保して搬送ローラ対やコロ対などによって構成された幾つかのシート搬送手段としての用紙搬送手段が設けられている。これらの用紙搬送手段のうちの何れかの用紙搬送手段は、搬送路R1上の用紙Sを、挟持などによって必ず搬送し続けるように構成されている。さらに給紙装置3には、該給紙装置3の各段に収容された用紙Sを搬送路R1に給送・搬送するシート搬送装置としての用紙搬送装置5が設置されている。
【0061】
画像形成装置本体2内には、その搬送路R1の上流側から下流側に向けて、画像を形成する画像形成部としての感光体ユニット10と定着装置11とが順に配置されている。この搬送路R1上を上流側から下流側に向けて搬送されてくる用紙Sに対して、感光体ユニット10がその生成したトナー像を転写した後、定着装置11がその転写されたトナー像を用紙Sに定着して、そのトナー像を定着された用紙Sが、搬送路R1の末端に配置された排紙トレイ9に排出されるようになっている。
【0062】
感光体ユニット10は、像担持体としての単一のドラム状の感光体10Aを有し、略水平に配置された回転軸を中心にして、画像形成装置本体2内の図示しない側板に回転可能に支持されている。感光体10Aは、所定の径で円筒形状に形成された周知の構成をなす。感光体10Aは、感光体ユニット10側か画像形成装置本体2側かの何れか一方に設けられたモータなどの駆動源から回転駆動力が伝達されて、図中矢印で示す回転方向に安定した一定速度で回転駆動されるようになっている。
感光体10Aの周囲には、図中矢印で示す回転方向に順に、現像装置12と、転写装置13と、感光体クリーニング装置18と、除電装置と、帯電装置14とが配置され、感光体10Aの反時計回りの回転方向におけるその1回転の範囲内に、これらの各装置12〜14それぞれによって、その上流から下流に渡って順次、現像位置、転写位置、クリーニング位置、除電位置、帯電位置が設定されている。
さらに、帯電位置と現像位置との間には、潜像形成位置が設定され、この潜像形成位置に所定のレーザ光を照射して、画像情報に応じた不可視の潜像を書き込むための露光装置47が、感光体ユニット10からやや離れた斜め下方に配置されている。そして、感光体10Aが所定の反時計回りに回転駆動されるとともに、この感光体10Aの回転に同期して各装置12〜14、および露光装置47が、それぞれ所定に連係した協働動作を行うことにより、一連の画像形成処理が実行される。
【0063】
すなわち、現像装置12は、その表面からトナー粒子を放射状に起立させたトナーブラシを生成する現像ローラなどの適宜の周知の構成を有し、感光体10A表面上の所定箇所に生成され該感光体10Aの回転に伴い周上を移動して現像位置を通過する潜像に対して、トナーブラシ先端のトナー粒子を付着させ、該不可視の潜像をモノクロトナー像で可視像化する。
転写装置13は、略上下方向に所定に離間させて対向配置された2つの支持ローラ15,16と、これらの支持ローラ15,16間に張架された無端ベルトからなる転写ベルト17とで構成され、感光体10A外周表面上のトナー像を用紙Sに転写し、未定着のトナー像が転写された用紙Sを搬送路R1の下流側に搬送する。すなわち、下方の支持ローラ16は、その転写ベルト17を巻回した部分が、感光体10Aの略右斜め下方箇所に圧接されて、感光体10A表面と転写ベルト17とが接した箇所に、転写位置が設定されている。また、上方の支持ローラ15は、定着装置11の導入口の手前に配置されている。
【0064】
感光体クリーニング装置18は、感光体10A上のクリーニング位置に、その先端のブレードエッジが所定圧を確保して当接するように構成された図示しないブレード材か、または同クリーニング位置に接して感光体10Aの回転に従動回転する回転ブラシかの何れか、あるいは両方の構成を有し、転写後の感光体10A表面に残留したトナーや異物などを除去する。
除電装置は、所定強度の発光が可能なランプを主体に構成されており、このランプから除電位置に除電用の光を照射して、該除電位置を通過する感光体10A表面上の帯電状態を解除し、転写位置を通過した後の感光体10Aの表面電位を、初期状態に復帰させるようにしている。
【0065】
定着装置11は、熱源としての電熱ヒータなどを内蔵した加熱ローラ31と、この加熱ローラ31に略水平方向に対向配置され該加熱ローラ31側に押圧付勢された加圧ローラ32とを有する。図示しないモータなどの駆動源により加熱ローラ31が回転駆動されると、これに接した加圧ローラ32が従動回転されるとともに、両ローラ31,32が接した箇所には、所定の加熱温度と加圧力とが確保されて、トナー像を用紙上に定着させるためのニップ部が形成される。
なお、同図中の20は、新品・新規トナーを収容したトナーボトルなどからなるトナー収納容器であり、このトナー収納容器20から現像装置12まで、図示しないトナー搬送経路が形成されている。現像装置12が自身内のトナーを現像用に消費して不足した場合には、新規トナーがトナー収納容器20から現像装置12に補充されるようになっている。
【0066】
画像形成装置本体2の下方には、読み取る原稿のサイズに応じて、自動的にまたはユーザの手動設定によって用紙サイズ(シートサイズ)を択一的に選択可能にした給紙装置3が設けられている。すなわち、給紙装置3は、シート収容手段としての複数の給紙トレイ51,51を給紙装置3内に多段に収納・配置されているとともに、各給紙トレイ51,51を個別に給紙装置3外に引き出し可能に構成されていて、それぞれの給紙トレイ51にそのトレイ用の用紙をセットおよび適宜の枚数、補充可能にされている。各給紙トレイ51,51には、互いに異なる紙種(シート種類)としてそれぞれ各種用紙サイズおよび用紙搬送方向(シート搬送方向)に対して縦横の向きにした用紙Sが、多数枚積載・収納されている。
【0067】
原稿読取装置4は、その骨組みをなす読取装置本体4Aを有し、この読取装置本体4Aの上面には、所定範囲に亘りコンタクトガラス57が配置されている。読取装置本体4A内には、コンタクトガラス57面上の所定範囲を走査対象にして光学的に原稿画像を読み取る読取手段が収納されており、この読取手段は、少なくとも、第1走行体53、第2走行体54、結像レンズ55および例えばCCDなどからなる読取センサ56から主に構成されている。
また、原稿読取装置4には、コンタクトガラス57を覆う閉止位置と開放した開放位置とに開閉可能に構成された原稿押さえ板58が、読取装置本体4Aの上面に設置されている。すなわち、原稿押さえ板58は、コンタクトガラス57よりも大きな縦横寸法で形成され、その一端が図示しないヒンジで読取装置本体4Aの上面に開閉自在に支持されている。
【0068】
上述の構成に基づき、複写機1の動作を説明する。まず、複写機1で原稿をコピーするとき、原稿読取装置4の原稿押さえ板58を閉止位置から開放位置に、ユーザが手動で開いて、コンタクトガラス57上に原稿を載置・セットし、次いで原稿押さえ板58を閉じる方向に手動操作し、この原稿押さえ板58によって、コンタクトガラス57上にセットした原稿を上方から押える。この操作により、原稿面が正確に読み取り可能となるように、原稿がコンタクトガラス57に密着されて平面状に広げられ、かつ同ガラス57上に原稿が固定される。
【0069】
そして、複写機1に予め備えられている図示しない操作画面部に設置されたスタートスイッチを、ユーザが押下・オン操作すると、直ちに原稿読取装置4の読取動作が開始され、図示しない駆動機構によって第1走行体53および第2走行体54が走行される。そして、第1走行体53の光源からの光が原稿に向けて照射され、この原稿面からの反射光が第2走行体54に向かい、この反射光が第2走行体54のミラーで反射されて結像レンズ55を介して読取センサ56に入力され、この結果、読取センサ56によって、原稿の画像などが光電変換されて読み取られる。
【0070】
また、上記したようにスタートスイッチがオン操作されると、感光体ユニット10の感光体10Aが回転を開始して、その感光体10A上に、読み取った原稿画像に基づき、トナー像を形成する動作が開始される。すなわち、感光体10Aの回転に伴って該感光体10A外周表面の所定箇所が、順次、帯電装置14、露光装置47、現像装置12、転写装置13、感光体クリーニング装置18、除電装置との間でそれぞれ設定された各位置を通過して、順次、所定の帯電状態に帯電され、潜像が生成され、トナー像に可視像化され、用紙Sに転写されてから、残留トナーが除去され、帯電状態が解除されて1サイクルが完了し、形成する画像サイズに応じて、感光体10Aの回転方向における外周表面の所定長さの範囲にトナー像を生成するように、そのサイクルが所定に持続される。
【0071】
上記したスタートスイッチの押下により、給紙装置3内の自動または手動選択された用紙Sが収納された給紙段の給紙トレイ51から、該給紙段に付設された用紙搬送装置5の動作によって、1枚の用紙Sが所定の用紙搬送経路(シート搬送経路)を介して搬送路R1に搬送される。この用紙Sは、搬送コロなどによって画像形成装置本体2内の搬送路R1上を略鉛直上方に向けて搬送され、用紙Sの先端がレジストローラ対21に突き当たって一旦停止する。
他方、手差し給紙の場合には、手差しトレイ67上にセットされた用紙Sが、まず手差しトレイ用の給紙ローラ67Aの回転により繰り出され、用紙Sが複数枚積載・セットされた際には、同手差しトレイ用の分離ローラ67B,67Cによって1枚に分離されて、手差し給紙路R2に搬送され、さらに手差し給紙路R2から搬送路R1に搬送され、用紙Sの先端がレジストローラ対21に突き当たって一旦停止する。
そして、レジストローラ対21は、回転駆動された感光体10A上のトナー像の相対移動に合わせた正確なタイミングで回転を開始し、一旦停止した用紙Sを転写位置に送り込む。この結果として、この用紙S上に転写装置13によりトナー像が転写される。
【0072】
こうして未定着なモノクロトナー画像が転写された用紙Sは、搬送路R1の一部を形成した転写装置13の転写ベルト17によって定着装置11へ搬送され、この定着装置11が形成したニップ部を通過されて、該ニップ部によって所定の熱と加圧力とが加えられることにより、画像が用紙S上に定着される。画像が定着された用紙Sは、切換爪34により排紙トレイ9に至る搬送路R1に向けてガイドされ、各排出ローラ35〜38により排紙トレイ9上に排出されて、排紙トレイ9上にスタックされる。そして、ユーザは、排紙トレイ9上にスタックされた用紙を、排紙トレイ9と原稿読取装置4との間であって装置正面側の開放部から取り出すことができる。
【0073】
また、ユーザの設定入力によって、両面コピーモードが選択されているときには、片面に画像を定着された用紙Sは、切換爪34により用紙反転装置42側に搬送され、この用紙反転装置42内に配置された複数のローラ66対や、図示しないガイド部材によって、反転搬送路R3上を往復移動させて、用紙面の上下向きを反転させてから、感光体ユニット10よりも手前に位置した箇所からレジストローラ対21を介して搬送路R1に復帰させ、この搬送路R1上を搬送されて再び転写位置へ導かれ、今度は用紙Sの裏面に画像を転写し定着した後に、排出ローラ35〜38によって排紙トレイ9上に最終的に排出される。
【0074】
(第1の例)
次に、先願発明に係るシート搬送装置を適用した用紙搬送装置5(以下、「第1の例」ともいう)の特徴的な構成を説明する。
用紙搬送装置5は、図2および図3に示すように、図1に示した給紙装置3における所定段(この例では下段)の給紙トレイ51に積載・収容された多数枚の用紙Sから1枚の用紙Sを引き出し、引き出された用紙Sの用紙搬送方向(シート搬送方向)を変更し、略鉛直上方の画像形成装置本体2へ給送するものである。
【0075】
用紙搬送装置5は、用紙Sを搬送する第1の搬送手段(以下、「第1搬送手段」という)6と、第1搬送手段6の用紙搬送方向(シート搬送方向)の下流側に配置され、第1搬送手段6により搬送されてきた用紙Sを第1搬送手段6の用紙搬送方向と異なる用紙搬送方向に搬送する第2の搬送手段(以下、「第2搬送手段」という)7と、第1搬送手段6と第2搬送手段7との間に形成される用紙搬送経路(シート搬送経路)としての第1搬送路Aとから主に構成されている。
用紙搬送装置5は、第1搬送手段6および第2搬送手段7に関して、それらの何れもが用紙Sを1対の搬送回転部材で挟持して搬送する挟持搬送手段としてそれぞれ構成されている。すなわち、第1搬送手段6はフィードローラ61とリバースローラ62との2つの対向配置された搬送回転部材からなる第1搬送回転部材対の構成とされ、第2搬送手段7はグリップローラ81とローラ状のプーリ83およびローラ状のプーリ84の間に張設された搬送ベルト82との2つの対向配置された搬送回転部材からなる第2搬送回転部材対の構成とされ、この第2搬送回転部材対の一方は、用紙Sの先端と接触した状態を保持しつつ第2搬送手段7の後述する挟持部(ニップ部)に向けて用紙Sを移動・案内(搬送)する搬送ベルト82を備えたベルト搬送手段8(移動案内手段)であり、かつ、ベルト搬送手段8における搬送ベルト82上に形成されたベルト走行面である搬送面82aは、第1搬送手段6と第2搬送手段7との間に形成される用紙搬送経路(シート搬送経路)としての第1搬送路Aの外郭方向に外れた位置に配置されていることを特徴としている。
【0076】
上述したように、フィードローラ61とリバースローラ62とからなる第1搬送回転部材対の用紙搬送方向と、グリップローラ81と搬送ベルト82とからなる第2搬送回転部材対の用紙搬送方向とは、互いに異なり、つまり第1搬送回転部材対の用紙搬送方向は、図2および図3における右斜め上方向である略水平方向に設定されているのに対して、第2搬送回転部材対の用紙搬送方向は、略鉛直上方向に設定されている。これにより、第1搬送手段6と第2搬送手段7との間に形成される第1搬送路Aは、この第1搬送路Aで用紙搬送方向を急激に変化させる曲率半径の小さな湾曲した曲率部を形成している。
ここで、第1および第2搬送手段6,7の各用紙搬送方向を厳密に表現すると、次のようである。すなわち、図4において、第1搬送手段6の用紙搬送方向は、フィードローラ61の回転中心と、リバースローラ62の回転中心と、フィードローラ61およびリバースローラ62の挟持部(以下、「ニップ部」ともいう)の中心との3点を結ぶ線分におけるニップ部の中心に対して、直交する略水平方向に設定されている。
同様に、第2搬送手段7の用紙搬送方向は、グリップローラ81の回転中心と、プーリ83の回転中心と、グリップローラ81および搬送ベルト82の挟持部(以下、「ニップ部」ともいう)の中心との3点を結ぶ線分におけるニップ部の中心に対して、直交する略鉛直上方向に設定されている。
【0077】
換言すれば、第1搬送手段6と第2搬送手段7との間に形成されて用紙搬送方向を変更するように構成した用紙搬送経路において、用紙搬送経路を構成し搬送する用紙Sの厚み方向の向きを規定した1対の対向面のうち、第1搬送手段6から送り出された用紙Sの先端が当接する側の面を、少なくとも、該用紙Sの先端が当接する部位を開始端にして、その用紙搬送方向の長手方向に渡って、第2搬送手段7に至るまでの所定範囲を、連続的かつ常時、第2搬送手段7の挟持部に近づく方向に移動する搬送ガイド面に構成しており、この搬送ガイド面は、ベルト搬送手段8における搬送ベルト82上に形成されたベルト走行面(搬送面82a)によって形成している。また、第1搬送手段6の用紙搬送方向に沿った延長線と、第2搬送手段7の用紙搬送方向に沿った延長線とで囲まれた範囲を内郭とし、これ以外を外郭としており、上記の平坦なベルト走行面によって形成された用紙搬送に供される搬送ベルト82の搬送面82aは、内郭から外郭方向に外れた位置に配置され、かつ、概略、用紙進行方向と交差するように延在されている。
【0078】
ベルト搬送手段8は、図3および図4に示すように、搬送ベルト82と、該搬送ベルト82を走行可能に保持する一対のベルト保持回転部材としての上記したローラ状のプーリ83およびローラ状のプーリ84とから主に構成される。以下、搬送ベルト82を挟んでグリップローラ81と対向しニップ部を形成する側の「プーリ83」を第1のベルト保持回転部材と、プーリ83よりも上流側に位置する「プーリ84」を第2のベルト保持回転部材ともいう。
ベルト搬送手段8は、第1搬送手段6により搬送されてきた用紙Sの先端が、プーリ83およびプーリ84に保持されている該搬送ベルト82部分を除く該搬送ベルト82の搬送面82aに当接(接触)するように配置することが肝要である。このように、図4において、プーリ84の軸中心(プーリ軸84aの中心)が、リバースローラ62の下端位置よりも上方であって搬送ガイド部材71の下流端の高さよりも下方に位置するようにしてベルト搬送手段8を配置することにより、用紙Sの先端が搬送ベルト82の腹の部分(いわば「有効搬送面」とも呼ぶべき部分である)に衝突することによって、搬送ベルト82の安定した適度な弾性変位・変形状態が得られ、用紙Sの先端の反発を招くことなく、用紙Sの先端が搬送ベルト82の搬送面82a(以下、「ベルト搬送面82a」ともいう)に確実に当接した状態が保持されて、後述の作用効果を得ることができる。
これに対し、用紙Sの先端が、搬送ベルト82のプーリ83およびプーリ84に保持されている該搬送ベルト82部分に当接(接触)してもよいように配置すると、搬送ベルト82がプーリ83およびプーリ84に保持されている該搬送ベルト82部分は、一般的に搬送ベルト82の腹の部分よりも硬く弾性変位・変形状態も小さくなることから、用紙Sの先端が上記部分に当接した際には反発したり安定した適度な弾性変位・変形状態が得られなくなったりする点から好ましくない。これは、後述する先願発明を適用した各例等や、本願発明を適用した実施形態や変形例、実施例等でも同様である(以下、単に「以下、同様」ともいう)。
【0079】
また、ベルト搬送手段8は、図4に示すように、第1搬送手段6により搬送されてきた用紙Sの先端が、搬送ベルト82の搬送面82aに対して鋭角の突入角度θをもって進入するように配置することも肝要である。このようにベルト搬送手段8を配置することにより、用紙Sの先端が上述した搬送ベルト82の腹の部分に安定して当接することによって、用紙Sの先端がベルト搬送面82aに確実に当接した状態が保持されて、後述の作用効果を得ることができる。
用紙Sの先端が、ベルト搬送面82aに対して略垂直ないし直角の突入角度θをもって進入するように配置した場合には、用紙Sの先端部のベルト搬送面82aへの当接状態が不安定になる、例えば搬送ベルト82の走行方向と反対の方向に折れ曲がったり、反発を招いたりする点から、好ましくない(以下、同様)。
【0080】
給紙装置3における各段の給紙トレイ51は、複写機1に使用可能として取り扱われる最大サイズの用紙Sを格納可能な平面形状を確保して、上方開口の略平箱状に形成され、その底面にはシート積載手段としての底板50が設けられている。底板50は、図2の左側の基端部が、給紙トレイ51に所定の角度範囲で回動自在、すなわち揺動可能に支持された水平な軸50Aに取り付け固定され、図2の右側の自由端部が、軸50Aを中心にして給紙トレイ51内において揺動可能に構成されている。
また、給紙トレイ51の底部には、所定形状の凹部が形成され、この凹部に、上昇アーム52が格納されている。上昇アーム52は、その基端部が前記凹部内に所定の角度範囲で回動自在、すなわち揺動可能に支持された水平軸52Aに固着されるとともに、この水平軸52Aには、図示しない回転駆動源から任意の回転方向の回転駆動力が伝達されて回動されることにより、上昇アーム52が水平軸52Aを中心として所定に傾斜した位置を占めるように揺動駆動される。これにより、上昇アーム52の自由端部が底板50を押し上げて、底板50上に載置された用紙Sの最上面の片側周縁を、所定の高さ位置に保つようになっている。
【0081】
上述したとおり、給紙トレイ51は、底板50上に用紙Sを積載して格納するとともに、底板50における図において右端側の自由端部を上昇・傾斜させて積載した用紙Sをせり上げ、1枚ずつ用紙Sが給送されてその積載枚数が減少しても、その最上面を所定の高さに維持するように構成されている。
給紙トレイ51は、上述したように、給紙装置3の本体に対して着脱・挿脱自在に構成されている。すなわち、給紙トレイ51は、図1に示すように給紙装置3の本体内に挿入・装着されることで給紙可能となる装着位置と、給紙装置3の本体から図1において紙面の手前側に引き出され・離脱されることで、用紙Sの補充や用紙Sのサイズ交換等が可能となる離脱位置とを選択的に占めることが可能に構成されている。また、少なくとも第1搬送手段6、第2搬送手段7、第1搬送手段6と第2搬送手段7との間に配置される用紙搬送経路(搬送路)は、給紙トレイ51を引き出したときに本体に残される。よって、本例では胴内排紙型の画像形成装置であるが、移動案内手段を設けることにより、上記搬送路を従来と同様の曲率またはそれ以下の曲率で用紙を搬送できるので、装置の幅方向を大きくすることなく、胴内排紙型の利点を減殺することを防ぐことができる。
【0082】
このように所定高さに上昇された用紙Sの最上面に接するように、ピックアップローラ60が、給紙装置3の本体側の機体外形をなすハウジング80に回転可能に軸支されている。ピックアップローラ60による用紙Sの引き出し方向に沿った延長線上に、用紙Sを1枚に分離して給送する給紙分離機構が位置しており、この給紙分離機構は、フィードローラ61とリバースローラ62とが所定圧を確保して接したニップ部を形成するように構成されている。
ピックアップローラ60は、図3に詳しく示すように、図示しない芯金と一体的に形成された軸60aの周りに一体的に固着されていて、軸60aとともに回転自在になされた周知のもの、あるいは軸60aと前記芯金との間にワンウェイクラッチ(図示せず)を設けて、非駆動時には軸60aに対してフリーに回転するように支持されているものである。ピックアップローラ60の外周表面を含む外周部には、用紙Sと接触したときに容易にピックできるように用紙Sに対して摩擦係数の高いゴム等の軟質の高摩擦材料が用いられている。また、ピックアップローラ60の外周表面部は、適宜、摩擦抵抗を増大するために略鋸刃状の突起が全周に形成される場合もある。
【0083】
本例では、例えば積載された用紙Sを重送することなく1枚に分離して送り出す給紙方式(シート給送方式)として、戻し分離方式であるFRR(Feed Reverse Roller)給紙方式を採用している。すなわち、2枚以上の用紙Sをピックアップローラ60が引き出した場合には、フィードローラ61に接した1枚の用紙Sと、リバースローラ62に接したこれ以外の他の用紙Sとに分離させ、フィードローラ61は、1枚の用紙Sをそのまま用紙搬送方向に進めて送り出す一方、リバースローラ62は、他の用紙を用紙搬送方向とは逆の方向に進めて積層された元の位置に戻し、かつ、リバースローラ62は、フィードローラ61による用紙搬送を妨げないように構成されている。
【0084】
より具体的には、シート分離機構としてのFRR給紙方式による給紙分離機構は、用紙搬送方向に進む順方向に回転駆動されるフィードローラ61と、このフィードローラ61の下側に当接して、トルクリミッタを介して逆回転方向の回転駆動力が伝達されて逆転駆動されるリバースローラ62とを設けた構成とされ、フィードローラ61は、底板50上の最上面の用紙Sに接する一方、リバースローラ62は、2枚以上かに拘わりなくフィードローラ61に接している用紙Sの下面に接触している。
フィードローラ61は、図示しない芯金と一体的に形成された軸61aの周りに一体的に固着されていて、軸61aとともに回転自在になされているか、あるいはピックアップローラ60と同様の支持方法を取られる場合もある。フィードローラ61の外周表面を含む外周部には、ピックアップローラ60と同様に用紙Sと接触したときにこれを容易に用紙搬送方向に送り出すことができるように用紙Sに対して摩擦係数の高いゴム等の軟質の高摩擦材料が用いられている。また、フィードローラ61の外周表面部は、適宜、摩擦抵抗を増大するために略鋸刃状の突起が全周に形成される場合もある。
リバースローラ62は、図示しない芯金と一体的に形成されていて、前記トルクリミッタを介して、リバースローラ駆動軸62aとともにハウジング80に回動自在に支持されている。
【0085】
FRR給紙方式では、リバースローラ62には、フィードローラ61とは逆回転方向へ向かう弱いトルクがトルクリミッタ(図示せず)を介して付与されている。従って、リバースローラ62は、フィードローラ61と接触している状態、あるいは1枚の用紙Sが両ローラ61,62間に進入した状態では、リバースローラ62がフィードローラ61に連れ回りする。すなわち、前記トルクリミッタの作用によって、例えば該リバースローラ駆動軸に対してリバースローラ62がスリップして、フィードローラ61と同様に、給紙方向に進む順方向にリバースローラ62が回転する。他方、フィードローラ61と離間した状態、あるいは2枚以上の用紙Sが両ローラ61,62間に進入した状態では、リバースローラ62が逆回転する。このため、重送した用紙Sの進入時には、最上面の用紙Sであるフィードローラ61に接した1枚の用紙S以外の、リバースローラ62に接した他の用紙Sが用紙搬送方向の上流側へ戻され、これによって用紙Sの重送が防止される。
従って、リバースローラ62から該リバースローラ62に接した用紙Sに対して供給される搬送力は、用紙Sを元の積載位置に戻せる程度には十分な逆方向の搬送力を確保しながら、用紙Sを順方向に進めるためのフィードローラ61から用紙Sに供給される搬送力よりも、所定に小さく設定され、フィードローラ61による順方向の用紙搬送を妨げないようにしている。このため、謂わば、フィードローラ61から用紙Sに供給される搬送力は、リバースローラ62からの逆搬送力によって、減殺されている。
【0086】
同図中の65は、給紙装置3の本体側に設けた駆動源からの回転駆動力が出力される駆動軸に結合されたアイドラギヤであり、ギヤ同士の噛合またはベルト伝動によって、給紙装置3から供給される回転駆動力をピックアップローラ60およびフィードローラ61に分配して伝達し、ピックアップローラ60およびフィードローラ61を、それぞれ所定速度で回転駆動するようにしている。
【0087】
フィードローラ61の斜め上方には、第2搬送手段7における第2搬送回転部材対の他方の搬送回転部材であるグリップローラ81が、グリップローラ81と一体的に形成された回転駆動軸81aを介して、ハウジング80に回転自在に支持されて配置されている。グリップローラ81の外周表面を含む外周部にも、フィードローラ61と同様に用紙Sと接触したときにこれを容易に用紙搬送方向に送り出すことができるように、用紙Sに対して摩擦係数の高いゴム等の軟質の高摩擦材料が用いられている。
グリップローラ81の近傍には、このローラ81の外周面に搬送ベルト82を介して接するようにハウジング80に回転自在に軸支され、かつ、グリップローラ81の水平方向に対向して前記したプーリ83が配置されている。
プーリ83は、プーリ軸83aと一体的に形成されていて、プーリ軸83aとともにハウジング80に回転自在に支持されている。プーリ83の左斜め下方には、ハウジング80に回転自在に軸支された前記したプーリ84が配置されている。プーリ84は、プーリ軸84aと一体的に形成されていて、プーリ軸84aとともにハウジング80に回転自在に支持されている。プーリ83,84は、搬送ベルト82を走行・回転自在に支持するベルト保持回転部材としての機能を有する。プーリ軸83a,84aは、それぞれ1本の連続した軸であり、例えば鉄等の金属でできている。
【0088】
なお、ベルト搬送手段8の配置は、前記した配置状態に限らず、次のようであってもよい。すなわち、図3において、括弧を付して示す79は、用紙搬送装置5本体の一部としての、ハウジング80に対して開閉自在に構成された開閉ガイドを示す。この開閉ガイド79は、後述する搬送ガイド部材72およびベルト搬送手段8と一体化(ユニット化)されて構成されており、第1搬送路Aや略鉛直上方に延びた縦搬送路等での用紙の詰まり、ジャム等をユーザが処理し易いように、ハウジング80下方のヒンジ支点軸76(後述の図30参照)を中心に、グリップローラ81に対して搬送ベルト82が接離自在となるように開閉自在に構成されたものである。
このような開閉ガイド79を有する場合、プーリ83およびプーリ84は、各プーリ軸83a,84aとともに開閉ガイド79側に回転自在に支持される。
【0089】
搬送ベルト82は、一部上述したが、無端ベルトであり、各プーリ83,84間に張設されている。各プーリ83,84の軸間距離は、予め所定に設定されている。プーリ83,84間に形成された搬送ベルト82の直線状のベルト走行面(搬送面82a)は、第1搬送手段6によって送出される用紙Sの先端が、必ず接する位置に配置されている。このように、グリップローラ81の外周面には、プーリ83の外周面に巻き掛けられた搬送ベルト82の外周面が所定圧をもって直接接しており、この接触部位に挟持部(ニップ部)が形成されている。より詳しくは、図示しない付勢手段・弾性部材(例えば後述の図10や図21等に示すバネ91等参照)がプーリ軸83aを支持する図示しない軸受部材もしくは支持部材(例えば後述の図21に示すベルト支持部材86等参照)に装着されていることにより、搬送ベルト82がグリップローラ81に圧接する向きに付勢されている。
搬送ベルト82は、弾性部材である例えばゴム部材で形成されていて、その表面には、該ベルト自体の材質によって、または適宜の表面処理が施されて、使用される用紙S(シート)に対して所定の摩擦係数が設定されている。すなわち、搬送ベルト82は、用紙Sに対面して該用紙面に接する、その搬送面としてのベルト表面が、用紙面とベルト表面との間のすべり接触を回避して、ベルト表面から用紙面に搬送推進力を確実に伝達できる摩擦係数が設定されている。
【0090】
また、搬送ベルト82は、用紙搬送方向と直交する用紙幅方向のベルト幅が、少なくとも、搬送する最大サイズの用紙幅と略同じ幅が確保されている。すなわち、搬送ベルト82のベルト幅としては、少なくとも、搬送する最大サイズの用紙幅以上のベルト幅が設定され確保されている。同様に、搬送ベルト82を張架したプーリ83,84およびベルトに対向接触したグリップローラ81は、それぞれの用紙幅方向(軸長手方向)のプーリ、ローラ長さが、前記ベルト幅以上の長さに形成されている。従って、第1搬送手段6から送出された用紙Sは、必ずその用紙幅全域に渡って搬送ベルト82に接することになり、両者間の接触面積を可能な限り最大限に確保できる。これに伴い、常時、用紙搬送方向に移動される搬送ベルト82から用紙Sに供給される推進力、つまり用紙Sをその搬送方向に進める搬送推進力も、可能な最大限の力を搬送ベルト82から用紙Sに伝達することができる。
【0091】
グリップローラ81の回転駆動軸81aには、該グリップローラ81の回転駆動用に専用に設けられた電動モータなどの図示しない回転駆動源がギヤやベルト等の駆動力伝達手段を介して連結されている(例えば、図17および図18に示す後述の駆動機構22参照)。グリップローラ81は、前記駆動力伝達手段を介して、前記回転駆動源から所定の回転速度の回転駆動力が伝達されて回転駆動される。これにより、グリップローラ81は、駆動ローラとされる一方、該グリップローラ81に接した搬送ベルト82、および該搬送ベルト82の接触部位をそのベルト内側から支持したプーリ83は、駆動ローラとしてのグリップローラ81の回転に従動して、ベルト送り駆動される従動ベルト、および前記従動ベルトを介して回転駆動される従動ローラとされている。もちろん、プーリ84も、前記従動ベルトを介して回転駆動される従動ローラである。
なお、図17および図18を参照して説明する後述の実施形態ほどの効果をそれ程望まなくても良いのであれば、例えば駆動機構22からグリップローラ81を駆動する駆動系を除去してグリップローラ81を従動側とし、かつ、搬送ベルト82側を図示しない駆動機構で駆動するようにしてもよい。
【0092】
図2および図3において、70は、用紙搬送装置5における内郭側の位置に設けられ、略下方に凸状に膨出して用紙Sに接する湾曲し固定したガイド面70aを有した搬送ガイド部材であり、71は、用紙搬送装置5の外郭側の位置に設けられた搬送ガイド部材である。この搬送ガイド部材71は、搬送ガイド部材70に対応して凹状に湾曲し固定したガイド面71aを有し、かつ、搬送ガイド部材70のガイド面70aに対して所定の間隙をもって対面配置されている。搬送ガイド部材70および71は、ともにハウジング80に固定されている。このように搬送ガイド部材70のガイド面70aと、該搬送ガイド部材70に対面した搬送ガイド部材71のガイド面71aおよび搬送ベルト82の搬送面82aによって、第1搬送手段6および第2搬送手段7との間に、第1搬送路Aが形成されている。
図2および図3において、72は、第2搬送手段7を起点として略鉛直上方への縦搬送路における外郭側の位置に設けられた搬送ガイド部材であり、73は、給紙トレイ51からフィードローラ61とリバースローラ62との挟持部(ニップ部)へ到る用紙搬送経路を形成するとともに、同ニップ部に用紙Sを案内・進入させる導入口を形成した搬送ガイド部材である。また、搬送ガイド部材70は、第1搬送手段6および第2搬送手段7のニップ部同士を結ぶ線上を横切って略下方(外郭に設けられている搬送ガイド部材71側)に膨出した湾曲面(ガイド面70a)を備えており、その膨出の程度は、用紙Sの先端を必ずベルト搬送面82aに到達させるように、用紙Sを緩やかに湾曲させる程度に設定されている。
【0093】
なお、図1において、給紙装置3における上段の装置構成は、従来手段で構成された装置であり、上述した下段の装置構成と比較して、用紙搬送装置5に代えた用紙搬送装置5’を用いる点のみ相違する。用紙搬送装置5’は、用紙搬送装置5と比較して、第2搬送手段7に代えて第2搬送手段7’を用いる点のみ相違する。第2搬送手段7’は、第2搬送手段7と比較して、第2搬送回転部材対としてのグリップローラ81とこれに従動回転するローラ(実質的にプーリ83と同様の大きさ・形状である)とから構成される点のみ相違する。上段の給紙トレイ51および用紙搬送装置5’では、厚紙や封筒等の比較的剛性の高い用紙S(シート)を除き、比較的剛性の低い用紙Sである普通紙等が用いられる。
【0094】
次に、給紙装置3における所定段からの給紙動作および該給紙動作に連係して起動される用紙搬送装置5の搬送動作を説明する。
底板50上に積載された用紙Sは、図2に示すように、上昇アーム52の揺動・上昇動作によりその最上面が所定の高さになるよう持ち上げられ、先ず、ピックアップローラ60の回転によって最上面の用紙Sが引き出され、フィードローラ61とリバースローラ62とからなる給紙分離機構に搬送される。そして、前記給紙分離機構において、フィードローラ61とリバースローラ62とによる協働作用により最上面の1枚のみが分離され、この分離された1枚の用紙Sが用紙搬送経路の下流側へとさらに搬送されて、図2〜図3に示すように用紙Sの先端が搬送ベルト82のベルト搬送面に接触しつつ、搬送ベルト82の矢印方向の走行によって案内移動され、グリップローラ81と搬送ベルト82とのニップ部に到ると、グリップローラ81と搬送ベルト82とによって用紙Sが挟持搬送されつつさらに鉛直上方に搬送され、最終的に用紙Sは垂直姿勢にして送り出される。
【0095】
より詳細には、フィードローラ61とリバースローラ62とのニップ部に挟持され、該ニップ部から送り出された用紙Sの先端は、まず図2に示すように、搬送ベルト82のベルト搬送面に到達して接する。そして、図3に示すように、搬送ベルト82の矢印a方向の走行による搬送面82aの用紙搬送方向への移動に伴い、その用紙Sの先端側から徐々に湾曲され、かつこの湾曲の進展に伴い、ベルト搬送面と用紙面との接触面積が拡大される。従って、たとえ用紙Sが高剛性の用紙であったとしても、ベルト搬送面から用紙面に対して該用紙Sを搬送方向に進めるための十分な搬送推進力が付与できる。このようにして、第1搬送手段6から付与される搬送推進力だけでは、高剛性の用紙Sをより深く湾曲させて搬送する際に生じる搬送抵抗により不足する分を、ベルト搬送手段8から該用紙Sに与えて十分に補える。従って、少なくとも、第1、第2搬送手段6,7間での用紙Sの搬送不良が生じることを回避して、未然に防止でき、その用紙Sの先端を第2搬送手段7のニップ部に到達させることができる。
他方、搬送ベルト81の搬送面82aはそのまま第2搬送手段7のニップ部に連続して延びているので、ベルト搬送面に接した用紙Sの先端部は、確実かつスムーズに安定して挟持部に到達することになる。換言すれば、まず高剛性の用紙Sでもその先端部が必ずベルト搬送面に接する程度に緩やかに湾曲させながら用紙Sを第1搬送手段6によって搬送し、その用紙Sの先端部がベルト搬送面に接して該ベルト搬送面による能動的な搬送ガイド作用によって、該ベルト搬送面から用紙Sにその用紙搬送方向に進めるいわば第2の搬送推進力を得てから、該用紙Sの先端を第2搬送手段7の挟持部に到達させるように、より深く用紙Sを湾曲させるようにしている。
【0096】
このようにして用紙Sの先端が第2搬送手段7に到達して、第1搬送手段6および第2搬送手段7によって、用紙Sが挟持搬送された以降は、両搬送手段6,7から十分な搬送力が用紙Sに作用するので、高剛性の用紙Sのスムーズな搬送を継続できる。さらに、用紙Sの後端が第1搬送手段6から離脱して第1搬送手段6からの搬送力が得られなくなっても、用紙S上における第2搬送手段7の挟持部から後端側へかけてのベルト搬送面の接触状態によっては、再びベルト搬送面から用紙面に搬送推進力が補充され、しかも徐々に用紙Sの湾曲の程度が緩和されることから、用紙搬送を持続することができる。これらの結果、用紙搬送装置5として、第1搬送手段6が受け取った用紙Sを、その用紙Sの剛性に拘わりなく、第2搬送手段7から下流側の用紙搬送経路に、確実かつ安定して送り出すことができる。
【0097】
上述したとおり、ベルト搬送手段8は、第1搬送手段6と第2搬送手段7との間に形成される第1搬送路Aの外郭方向に配置され、用紙Sの先端と接触した状態を保持しつつ第2搬送手段7に向けて用紙Sを移動・案内する移動案内手段としての機能を有する。
そして、本例では、移動案内手段としてのベルト搬送手段8は、搬送ベルト82により、第2搬送手段7の挟持部(ニップ部)に向かう方向に用紙Sの搬送方向を変えて移動・案内する機能も有する。
【実施例1】
【0098】
次に、先願発明に係る参考実施例1(以下、単に「実施例1」という)を説明する。図1〜図3に示した用紙搬送装置5を備えた給紙装置3と基本的な構成・仕様が同じで、株式会社リコー製「imagio Neo453」の給紙装置のみを試験用に改造した複写機(表1に「ベルト方式」として示す)と、従来の用紙搬送装置(図1〜図3において、グリップローラ81に対向接触する搬送回転部材がローラ状のプーリ83であり、搬送ベルト82およびローラ状のプーリ84を除去した装置で、図1の給紙装置3に示されている従来の用紙搬送装置5’に相当するもの)を備えた給紙装置を搭載した株式会社リコー製「imagio Neo453」の複写機(表1に「従来方式」として示す)とを使用して、用紙の給送搬送状態(通紙状態)に関する比較試験を実施した。
【0099】
上記ベルト方式において、上記比較試験に用いたベルト搬送手段8およびその周りの主な部材(従来方式を含む)の詳細は、次のとおりである。
搬送ベルト82の材質:エチレン・プロピレンゴム(EPDM)
搬送ベルト82の硬度:JIS K6253 A型 40度
搬送ベルト82の用紙に対する摩擦係数:2.6
搬送ベルト82の肉厚:1.5mm
プーリ83の直径:13mm
プーリ84の直径:7mm
プーリ83,84の間隔:13mm(プーリ軸83a,84aの軸間距離)
搬送ベルト82の伸張率:7%
各ローラ60,61,62,81の直径:全て20mm
【0100】
基本的な試験条件として、用紙の腰(剛性:コシ)の強さの代用値として用紙の重さ(メートル坪量)を用い、これを6つの紙種に変えて、常温環境(23℃、相対湿度50%)においてそれぞれ上記複写機における同じ段の給紙トレイから通紙した。そして、図4を参照して以下に説明する試験条件を加味し、紙種別の搬送時間のばらつき(バラツキ)具合を調べる試験を実施した。その搬送時間のばらつき具合の試験結果を図5に、図5の試験結果に基づき通紙状態をまとめたものを表1に示す。
【0101】
図4において、88は、ピックアップローラ60によりピックアップされた用紙Sの先端を検知する給紙センサを、89は、第2搬送手段7(ベルト方式)またはグリップローラ81とローラ状のプーリ83との対(従来方式)により搬送されてきた用紙の先端を検知する縦搬送センサを、それぞれ示す。給紙センサ88および縦搬送センサ89は、それぞれ反射型のフォトセンサからなる。
【0102】
また、給紙センサ88と縦搬送センサ89との取り付け・配置間における搬送パス長:用紙搬送距離(シート搬送距離)は、ベルト方式および従来方式ともに次のとおり57mm一定に設定した。すなわち、給紙センサ88の配置部からフィードローラ61とリバースローラ62とのニップ部までの搬送パス長が10mm、フィードローラ61とリバースローラ62とのニップ部から第2搬送手段7のニップ部(ベルト方式)まで、またはフィードローラ61とリバースローラ62とのニップ部からグリップローラ81とローラ状のプーリ83とのニップ部(従来方式)までの搬送パス長が同じ38mm、第2搬送手段7のニップ部(ベルト方式)から縦搬送センサ89の配置部まで、またはグリップローラ81とローラ状のプーリ83とのニップ部(従来方式)から縦搬送センサ89の配置部までの搬送パス長が9mmで、トータルの搬送パス長は57mmである。
用紙搬送装置5の第1搬送手段6と第2搬送手段7との間の湾曲した用紙搬送経路(第1搬送路A)中心での曲率半径は、従来方式およびベルト方式ともに約20mm一定にして実施した。
【0103】
また、従来方式およびベルト方式ともに、ピックアップローラ60によるピックアップ圧(給紙圧)をパラメータとして、1.1Nと2.2Nとの2種類に変えるとともに、駆動側のフィードローラ61および駆動側のグリップローラ81の線速度がともに同じ154mm/s一定で、給紙センサ88から縦搬送センサ89までの搬送パス長57mmを搬送される用紙の先端の到達時間を、5つの紙種に変えて、それぞれオシロスコープで計測した紙種別搬送時間のばらつき結果を図5のグラフに示す。
【0104】
図5の試験結果より、紙種としてメートル坪量が256g/m以上になると、従来方式では搬送時間のばらつきが大きく(搬送時間が長く)、用紙のスリップが大きいのに対し、本発明のベルト方式では、搬送時間のばらつきが小さく(搬送時間がそれほど長くならず)、用紙のスリップが小さいことが分かった。また、ピックアップ圧を小さくすると搬送力が低下するが、本発明のベルト方式の場合、ピックアップ圧を小さくしても、さほど搬送時間に影響を及ぼさないことも分かった。よって、本発明のベルト方式を採用した場合、ピックアップ圧を小さくできるので、駆動モータの電力を小さくすることができる。その結果、装置が小型化できる。
【0105】
次に、図5の試験結果に基づき、通紙状態をまとめた表1について説明する。
ここで、「メートル坪量」とは、紙、板紙(用紙)の重量を表示するとき、1平方メートル当たりの用紙1枚の重さをグラムで表したものに相当する。一般的に、坪量の少ない用紙は「軽い紙」あるいは「薄い紙」であり、坪量の多い用紙は「重い紙」あるいは「厚い紙」であるといえる。
表1の試験結果において、○印で示した「通紙良好」とは、給紙センサ88がオンして用紙(シート)の先端が検出されてから所定時間内に縦搬送センサ89に到達したこと、すなわち搬送良好であることを、×印で示した「通紙不可」とは、給紙センサ88がオンして用紙の先端が検出されてから所定時間内に縦搬送センサ89に到達しなかったこと、すなわち搬送不良であることを、それぞれ表している。
【0106】
【表1】

【0107】
表1の試験結果より、紙種としてメートル坪量が256g/m以上になると、従来方式では通紙不可であったのに対し、図1〜図4に示した本発明に係るベルト方式では全て通紙良好となった。これにより、本発明に係るベルト方式の顕著な効果が認められた。
通紙・搬送状況の対比観察により、従来方式ではメートル坪量が256g/m以上になると、用紙の腰が強くなって、前記湾曲した用紙搬送経路に沿って湾曲するのが難しくなり、図1〜図4を借りて説明すると、その用紙の先端がグリップローラ81に対向接触するローラ状のプーリ83に付き当たってしまうことが分かった。
また、紙種として、メートル坪量が256g/m以上の用紙において、その表面部をコート処理したものと、コート未処理のものとを用いて、通紙・搬送状況の対比観察も行ったが、表1の試験結果以外の特筆する有意差は認められなかった。
【0108】
上述の実施例1における用紙搬送過程の観察結果から、以下のことが分かった。すなわち、メートル坪量が256g/m以上の剛性の高い用紙Sを第1搬送手段6から第1搬送路Aを経由してベルト搬送手段8におけるベルト搬送面82aに搬送する際には、剛性の高い用紙Sの直進搬送性が高いことから、第1搬送路Aを構成している各種ガイド部材を、その搬送負荷抵抗が小さくなるような単純な形状に変更ないしは各種ガイド部材を全く不要とすることも可能であることが分かった。
それ故に、比較的剛性の高い用紙Sだけを用いて搬送する用紙搬送装置の場合、その必須の構成となるのは、上記した第1搬送手段6と、第2搬送手段7と、第1および第2搬送手段6,7の間に形成される第1搬送路A(この場合はガイド部材が不要)の外郭方向に配置され、用紙Sの先端と接触した状態を保持しつつ第2搬送手段7に向けて用紙Sを移動・案内するベルト搬送手段8(移動案内手段)とである。
上述のことから、第1搬送路Aを形成する上記各種ガイド部材は、比較的剛性の低い、例えば普通紙やPPC等の用紙Sを搬送する場合、その剛性の低い用紙Sの直進性の弱さ(厚紙等の比較的剛性の高い用紙Sと比べた場合の直進性である)を補い、搬送ベルト82の搬送面82aに導き・案内するために必要であると言える。別言すれば、用紙Sの剛性が低くなるほどその直進性の低下を補って、用紙Sの先端をベルト搬送面82aの腹の部分に確実に当接させるために、第1搬送路Aを形成する上記各種ガイド部材のガイド面の形状を設定する必要性があると言える。
換言すれば、その剛性が高くなる用紙S(メートル坪量が大きくなる用紙S)を用いる場合ほど、上述した比較的曲率半径の小さい曲率部の用紙搬送経路を構成する際に使用する種々のガイド部材の形状・配置等の設計に、自由度を持たせることが可能となる。
なお、搬送ベルト82の材質は、上記比較試験に用いたものに限らず、例えばクロロプレンゴムや、ウレタンゴム、あるいはシリコンゴムでもよい。また、搬送ベルト82の各ゴム硬度は、JIS K6253 A型 40〜80度でもよい。
【0109】
以上述べたように、図1〜図4に示した用紙搬送装置5およびこれを有する複写機1によれば、コンパクトで省スペースでありながら、簡単かつ低コストな装置構成で、紙種対応性に優れた用紙搬送装置および画像形成装置を提供することができる。すなわち、基本的には、第2搬送手段を構成した既存のローラに搬送ベルトを巻き掛けて、ベルト搬送手段8を新たに設けて追加した構成であり、またベルト搬送手段8の専用の駆動源も不要にしているので、きわめて簡単な構成であり、このため低コストで済む用紙搬送装置および画像形成装置を実現できる。
【0110】
従来の構成では、搬送ガイド部材70に用紙が接触することによる搬送抵抗が大きいこと、または、第1搬送手段6から第2搬送手段7までの第1搬送路Aにおける搬送負荷等により高剛性の紙種に対応できず搬送不良が生じてしまうのに対して、この用紙搬送装置5では、高剛性の紙種にも対応できて、紙種性に優れた用紙搬送装置となる。すなわち、従来の構成では、所詮、用紙のガイド用に固定部材を配置しただけの構成であるため、移動体である搬送される用紙と固定されたガイド部材との間の速度差は根本的に解消されず、必ず搬送抵抗を生じてしまうのに対して、前記用紙搬送装置5および複写機1によれば、搬送抵抗を略皆無にできるだけではなく、用紙を下流に進ませるように積極的に搬送推進力を与えながらガイドすることができる(もしくは、第1搬送手段6による搬送力に、第2搬送手段7による搬送力が加わることにより、第1搬送手段6から第2搬送手段7までの第1搬送路Aにおける搬送負荷に対抗できるので用紙を下流に進ませることができる)。つまり、用紙搬送装置5では、用紙Sと搬送ベルト82との両者間に生じる摩擦抵抗は、用紙Sの搬送を妨げる抵抗ではなく、用紙Sに搬送推進力を付与するためのいわば負の抵抗となる。別言すれば、用紙Sの搬送を妨げるように作用する抵抗としてではなく、用紙Sに搬送推進力を付与するように作用する好ましい負の抵抗に転化される。
【0111】
しかも、用紙Sが搬送されて進む搬送方向において、その用紙Sの先端が搬送ベルト82の走行面(搬送面)に当接してから、該搬送の進展に伴い、紙種による剛性の程度によって差はあるものの、用紙Sの先端部面が搬送ベルト82の走行面に徐々に重なり合うように搬送されることから、ベルト走行面に接する用紙面の面積が漸次増加することになる。このため、このような接触面積の増大に応じて両者間の抵抗力の増加が図れ、用紙Sを搬送方向に進めるより大きな搬送推進力を搬送ベルト82から用紙Sに供給できるとともに、搬送ベルト82によって、グリップローラ81と搬送ベルト82とのニップ部に向かって用紙Sの進行方向が変えられることとなる。つまり、搬送ベルト82の走行面(搬送面)から用紙面に伝達される搬送推進力として作用する力は、着実に増強されることになる。
従って、たとえ用紙Sの剛性が高くても、この剛性に打ち勝って、用紙Sを適宜、その厚み方向に変形つまり湾曲させながら、用紙Sを下流の第2搬送手段の挟持部に向けて確実かつ安定して搬送できる。このように用紙Sが高剛性であることに起因した主要な搬送不良の要因に対処できるので、用紙Sの先端が第2搬送手段の挟持部に到達した以降の用紙搬送も確実かつ安定して持続できる。この結果、用紙搬送装置として、多種多様な紙種に対応することが可能となり、その搬送対応能力を拡充でき、高い用紙搬送性能が得られる。
(第2の例)
【0112】
図6〜図8を参照して、先願発明を適用した第2の例を説明する。なお、図1〜図4に示した用紙搬送装置5と同一の構成要素・部材には、同一の符号を付して、その説明を省略または簡略化することにする。特に記載しないが、本例で説明しない構成、つまり用紙搬送装置や他の構成およびその動作などは、図1〜図4に示した第1の例の用紙搬送装置5と同様である。
【0113】
図6〜図8に示す用紙搬送装置5は、図1〜図4に示した用紙搬送装置5と比較して、第1搬送手段6と第2搬送手段7との間に形成される第1のシート搬送経路としての第1搬送路Aの他に、第2搬送手段7の上流から第2搬送手段7に至って形成され、第1搬送路Aと異なる別の独立した第2のシート搬送経路としての第2搬送路Bを有する点、第1搬送路Aと第2搬送路Bとが、第2搬送手段7の上流で合流する合流搬送経路(以下、「合流搬送路」または「合流部」ともいう)を有する点、および第2搬送回転部材対の一方のベルト搬送手段8が、第1、第2搬送路A,Bの合流搬送路の外郭方向に外れて配置されている点が主に相違する。図6〜図8に示す用紙搬送装置5は、前記相違点以外は図1〜図4に示した第1の例および実施例1の用紙搬送装置5と同様である。
【0114】
すなわち、ベルト搬送手段8は、その搬送ベルト82を張架した1対のローラ状のプーリ83,84のうちの片方のプーリ84が、プーリ83の直下に所定に離間させてハウジング80に回転自在に軸支され、これによって、そのベルト搬送面82aが、第2搬送路Bの外郭方向の面として形成されている。従って、搬送ベルト82の搬送面82aには、第1搬送手段6によって第1搬送路A上を搬送されてくる用紙Sの先端が必ず接するとともに、図示しない搬送手段によって第2搬送路B上を搬送されてくる用紙Sが、第2搬送手段7に到達することを妨げないようにしている。
搬送ガイド部材71は、図1〜図4に示した第1の例のそれと比較して、図において右側面に縦搬送ガイド面71cが形成されている点のみ相違する。搬送ガイド部材72は、図1〜図4に示した第1の例のそれと比較して、上述した縦搬送路より下方に延びた第2搬送路Bの外郭方向に配置され、第2搬送路Bの上流側より搬送されてきた用紙Sをベルト搬送面82aに案内する縦搬送ガイド面72aが形成されている点のみが相違する。
上述したとおり、第2搬送路Bは、搬送ガイド部材71の縦搬送ガイド面71cと、このガイド面71cに対向し所定の開口間隔をもって配置された搬送ガイド部材72の縦搬送ガイド面72aとによって形成されている。
【0115】
次に、図6〜図8に示した用紙搬送装置5の搬送動作を説明する。用紙Sは給紙トレイ51内に水平に積載された状態から繰り出され搬送されるため、第1搬送手段6の給紙分離機構における用紙搬送方向は略水平方向となるが、その後は上方に位置した画像形成装置本体2の作像部へと搬送するために略水平方向に直交する略鉛直上方向に用紙Sを搬送する必要がある。
そこで、図7に示すように、給紙分離機構による用紙Sの1枚ずつの分離後、1枚の用紙Sは、搬送抵抗が少なくて済むよう緩やかな屈曲で搬送され、その先端が搬送ベルト82に当接する。
搬送ベルト82は、図7中の矢印a方向で示される略鉛直上(略真上)方向に向けて進むように走行しているため、搬送ベルト82に当接した用紙Sの先端は、図8に示すように、グリップローラ81と搬送ベルト82との挟持部(ニップ部)へと搬送され、グリップローラ81と搬送ベルト82との対により略鉛直上方向の下流側へと挟持搬送される。この際、上記したように用紙Sに対しては、搬送ベルト82からその搬送方向に進める搬送推進力が伝達され作用するとともに、搬送ベルト82によりグリップローラ81と搬送ベルト82とのニップ部に向かって方向が変えられるので、高剛性の用紙Sでも搬送不良を生じることなく、安定して搬送できる。
【0116】
以上説明したように、図6〜図8に示した用紙搬送装置5によれば、合流搬送路を有する用紙搬送装置においても、図1〜図4を参照して説明した用紙搬送装置5と同様な作用効果、すなわち厚紙などの高剛性の用紙を安定して搬送でき、紙種対応性に優れるとともに、少なくとも第1、第2搬送路A,Bなどの2つ以上の複数の搬送路を有した用紙搬送装置に対応して適用でき、その応用範囲を広げること、つまり機種対応性にも優れた用紙搬送装置とすることができる。
【0117】
(第3の例)
図9〜図13を参照して、先願発明を適用した第3の例を説明する。なお、第2の例と同一の構成要素・部材には、同一の符号を付して、説明を省略または簡略化することにする。特に記載しないが、第3の例で説明しない構成、つまり用紙搬送装置やその他の構成およびその動作などは、図7〜図9に示した第2の例の用紙搬送装置5と同様である。
【0118】
図9〜図13に示すように、第3の例は、図6〜図8に示した第2の例と比較して、給紙装置3を構成する上段の用紙搬送装置5を、同給紙装置3を構成している下段の用紙搬送装置5と実質的に同一の用紙搬送装置5として構成した点が主に相違する。その他の相違点としては、上段の用紙搬送装置5における第2搬送手段7の下流側に配置され、上段の用紙搬送装置5の第2搬送手段7を構成するベルト搬送手段8の搬送ベルト82の搬送面82aと対向する左斜め上方向に沿って形成された用紙搬送経路(シート搬送経路)としての第3搬送路C、および両面再給紙搬送路もしくは手差し給紙搬送路としての搬送路Dがレジストローラ対21の上流側で合流する合流搬送経路を形成するように構成し明定した点が挙げられる。
図10〜図13において、91は、プーリ軸83aに装着された軸受87を介して、プーリ軸83aにその一端が係止され、他端が後述する開閉ガイド79に係止された付勢手段としてのバネを示す。バネ91の付勢力によって、軸受87、プーリ軸83aおよびプーリ83を介して搬送ベルト82がグリップローラ81の外周面に接触・圧接する向きに常に付勢されている。なお、図10において、破線で示したEは、手差し給紙搬送路を示している。手差し給紙搬送路Eの図示は、図面の簡明化を図るため図10のみに示し、他の図では省略することとする。
【0119】
上述したとおり、上段の用紙搬送装置5は、用紙Sを搬送する第1搬送手段6と、第1搬送手段6の用紙搬送方向の下流側に配置され、第1搬送手段6により搬送されてきた用紙Sを第1搬送手段6の用紙搬送方向と異なる用紙搬送方向(第1搬送手段6の用紙搬送方向は、同図中の右斜め上方向に向けた略水平方向に設定されているのに対して、第2搬送手段7の用紙搬送方向は、上下・鉛直方向の上向きに設定されている)に搬送する第2搬送手段7と、第1搬送手段6と第2搬送手段7との間に形成される第1搬送路Aと、第2搬送手段7の上流から第2搬送手段7に至って形成され、第1搬送路Aと異なる独立した第2搬送路Bと、第1搬送路Aと第2搬送路Bとが、第2搬送手段7の上流側で合流する合流搬送経路とを有し、第1搬送手段6および第2搬送手段7の何れもが用紙Sを挟持して搬送する挟持搬送手段としてそれぞれ構成され、すなわち第1搬送手段6は、フィードローラ61とリバースローラ62との2つの対向配置された搬送回転部材からなる第1搬送回転部材対の構成であり、第2搬送手段7は、グリップローラ81と、ローラ状のプーリ83およびローラ状のプーリ84の間に張設された搬送ベルト82との2つの対向配置された搬送回転部材からなる第2搬送回転部材対の構成であり、第2搬送回転部材対の一方は、合流搬送経路の外郭方向に配置され、用紙Sの先端と接触した状態を保持しつつ第2搬送手段7の挟持部としてのニップ部99に向けて用紙Sを移動・案内する搬送ベルト82を備えたベルト搬送手段8(移動案内手段)であることを特徴としている。
【0120】
搬送路Cは、用紙を案内するガイド面100aを備えた外側ガイド部材100と、ガイド面100aに対向し用紙を案内するガイド面101aを備えた内側ガイド部材101との間に形成されている。搬送路Cを形成している外側ガイド部材100は、用紙がスムーズに搬送路Cに進入できるよう搬送ガイド部材72との間に大きな空間を形成するよう配置されている。
搬送ガイド部材72は、一部上述したように、第2搬送路Bに接続し第2搬送手段7から開始される上方への縦方向搬送路における外郭側の位置に設けられている。開閉ガイド79は、用紙ジャム等が発生した際には用紙を容易に除去できるよう、搬送ガイド部材72、第2搬送路Bの外側ガイド面およびベルト搬送手段8と一体で構成されていて、装置本体であるハウジング80のヒンジ支点軸76を揺動中心として図中矢印方向に開放・開閉できるようになっている(後述の図30参照)。このような開閉ガイド79を有する場合、プーリ83およびプーリ84は、各プーリ軸83a,84aとともに開閉ガイド79側に回転自在に支持される。
【0121】
次に、第3の例の用紙搬送装置5の搬送動作を説明する。図10〜図12に示す用紙の搬送動作までは、すなわち用紙Sの先端が第2搬送手段7のニップ部に搬送・挟持される動作までは、図6〜図8に示した第2の例の用紙搬送装置5による動作と同様に行われるため、その説明を省略する。
図13に示すように、従来のベルト搬送手段8によって第2搬送手段7のニップ部99から下流へと搬送される用紙Sには、その剛性が高いほど、第1搬送路Aを搬送される際に受けた変形(座屈)状態から元に戻ろうとする力が大きく働く、すなわちベルト搬送手段8の搬送ベルト82における搬送面82aの配置されている外郭方向に大きく働くこととなる。このため、用紙Sの先端が搬送ガイド部材72に沿って搬送され、さらに第3搬送路Cに向けて下流側へ搬送されると、用紙Sの先端部位をあたかも癖付け・湾曲変形された状態の用紙Sの先端が、外側ガイド部材100に略垂直(略鉛直真上)に近い角度で追突することになり、ガイド面100aに対する追突時のスリップによるジャムや、用紙Sの先端ダメージといった不具合を引き起こす可能性がある。
また、図14に示すように、上記不具合を低減するために、搬送ガイド部材72のガイド面に沿って弾性を有したマイラ102を下流に延在して設け、これにより用紙Sの先端のガイド量を増やして対策した場合、高剛性の用紙Sを強制的にガイドする必要性からマイラ102の剛性をアップさせて対応することとなってしまい、コストアップにつながるという問題点があった。
【0122】
そこで、本発明では、特に厚紙のような比較的剛性の高い用紙(シート)を搬送する場合、第2搬送手段より下流側に配置されたガイド部材に強い接触圧で接触しながら搬送されるためガイド部材の磨耗が懸念されることに鑑みて、また装置の小型化を目的として搬送スペースを小さくするため、マイラ等の弾性部材をガイド部材として用いた場合、腰の強い用紙をガイドをするためには、より弾性力の強い弾性部材を使用する必要があることからコスト面で不利となることに鑑みて、第2搬送手段より搬送されたシート搬送方向を、第2搬送手段より下流側の画像形成装置本体のレイアウトに応じて、簡単かつ低コストで済む構成によりシートの搬送方向を設定することによって、上記不具合を解消すべく以下の実施形態や変形例を創作した。
【0123】
(第1の実施形態)
図15を参照して、第1の実施形態の用紙搬送装置5Aを説明する。この第1の実施形態を始め後述の実施形態や変形例では、図13および図14を参照して述べた上記問題点を解決するために、解決すべき原理的な構成に立脚している。すなわち、第2の搬送手段より搬送されたシートのシート搬送方向を、ベルト搬送手段におけるベルトの搬送面に対向する方向に変更可能に構成したものである。
【0124】
以下、第1の実施形態の用紙搬送装置5Aの具体例を説明する。第1の実施形態の用紙搬送装置5Aは、図10〜図12等に示した第3の例の用紙搬送装置5と比較して、図15に示すように、グリップローラ81に搬送ベルト82を介して対向するベルト搬送手段8のプーリ83の軸中心(プーリ軸83aの中心)を、グリップローラ81の軸中心(回転駆動軸81aの中心)に対して第2搬送手段7の用紙搬送方向の下流側、すなわち略鉛直上方にシフト量δだけシフト・偏倚させて配置した点が主に相違する。用紙搬送装置5Aは、上記相違点以外は、第3の例の用紙搬送装置5と同様である。
換言すれば、用紙搬送装置5Aは、各用紙搬送装置5におけるグリップローラ81の回転駆動軸81a中心とプーリ83のプーリ軸83a中心とを結ぶ略水平面上に形成される上記ニップ部に代えて、グリップローラ81の回転駆動軸81a中心に対して、プーリ83のプーリ軸83a中心を、第2搬送手段7の用紙搬送方向の下流側である略鉛直上方にシフト量δだけシフト・偏倚させて配置したことにより、グリップローラ81と搬送ベルト82との圧接で形成されるニップ部99中心を、略シフト量δだけ略鉛直上方にシフト・偏倚させて構成したことを特徴としている。
【0125】
上述したように、本実施形態では、厚紙のような比較的剛性の高い用紙Sであって、その先端部位が座屈・変形を生じた用紙Sを搬送する場合であっても、搬送ベルト82により搬送されてきた用紙Sの先端を第2搬送手段7のニップ部99にスムーズに進入させることができ、第2搬送手段7より搬送された用紙Sの用紙搬送方向XA(以下、「ニップ部99の出口方向XA」ともいう)を、図中黒太矢印で示すように左斜め上方向に変えることができるため、搬送ガイド部材72の真上に配置されている外側ガイド部材100のガイド面100aの磨耗や、用紙スリップによるジャム、あるいは用紙Sの先端ダメージ等の不具合を生じることがない。
これにより、用紙Sの先端が搬送ガイド部材72に沿って搬送されることはなく、また図14に示したマイラ102等の弾性部材を、搬送ガイド部材72のガイド面の上部に延在して設ける必要性もない。
第3搬送路Cの方向・向きは、画像形成装置毎に多様であるため、画像形成装置毎の用紙搬送経路方向に応じてシフト量δを設定することが好ましい。
なお、上記実施形態では、回転駆動軸81a中心とプーリ軸83a中心とニップ部99中心とを結ぶ線分におけるニップ部99の中心に対して、直交する方向が用紙Sの用紙搬送方向XA(ニップ部99の出口方向XA)と等しい。よって、用紙搬送方向XAに関して、回転駆動軸81a中心とプーリ軸83a中心とを結ぶ線分が直交するようにプーリ83のニップ位置を決めれば容易に用紙搬送方向を変更することができる。また、搬送ベルト82は、グリップローラ81の外周における回転駆動軸81a中心とプーリ軸83a中心とを結ぶ範囲に位置するニップ位置から、グリップローラ81の外周における回転駆動軸81a中心からの水平線方向との交点まで接触している。
【0126】
本実施形態によるニップ部99のシフト方式によれば、例えば、従来のようにグリップローラ81とローラ状のプーリ83との圧接により形成されるニップ部に関して、プーリ83を用紙搬送方向の下流側へずらせて第2搬送手段7から下流側へ搬送される用紙Sの用紙搬送方向を変える場合と比べ、搬送ベルト82を使用しているためニップ部99に対する用紙Sの入り込みし易くし、よりスムーズにニップ部99から送り出すことも一つの特徴となっている。
【0127】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、簡単かつ低コストである構成で、紙種対応性に優れた用紙搬送装置5Aを提供することができる。そして、従来の構成では、高剛性の紙種に対応できず搬送不良が生じてしまうのに対して、本実施形態でも、高剛性の紙種にも対応できて、紙種性に優れた用紙搬送装置5Aを実現することができる。すなわち、用紙搬送装置5Aによっても、第1搬送路Aと第2搬送路Bとの合流搬送経路(合流部)の外郭方向に配置されたベルト搬送手段8を採用していることにより、上述した各用紙搬送装置5と同様の基本的な作用効果を奏する。
【0128】
加えて、ベルト搬送手段8より下流側の用紙搬送方向を、上述したとおり画像形成装置に応じて設定することができるため、搬送ガイド部材72の真上に配置されている外側ガイド部材100のガイド面100aの磨耗や、用紙スリップによるジャム、用紙Sの先端ダメージ等の不具合を解決できるだけでなく、コスト抑制にもつなげ・寄与することができる。
従って、たとえ用紙Sの剛性が高くても、この剛性に打ち勝って、用紙Sを適宜、その厚み方向に変形つまり湾曲させながら、用紙Sを下流の第2搬送手段7に向けて、確実かつ安定して搬送できる。このように用紙Sが高剛性であることに起因した主要な搬送不良の要因に対処できるので、用紙Sの先端が第2搬送手段7に到達した以降の用紙搬送も確実かつ安定して持続できる。この結果、用紙搬送装置5Aとして、多種多様な紙種に対応することが可能となり、その搬送対応能力を拡充でき、高い搬送性能が得られ、なおかつ、画像形成装置全体の省スペース化、低コスト化が図れる。
【0129】
(第2の実施形態)
図16〜図18を参照して、第2の実施形態の用紙搬送装置5Bを説明する。用紙搬送装置5Bは、図10〜図12等に示した第3の例の用紙搬送装置5と比較して、図16に示すように、ニップ99部を形成する側のプーリ83を例えば従来のように比較的高硬度のゴムやポリアセタール樹脂等の樹脂等で形成したものに代えて、弾性部材としての例えばウレタン樹脂やウレタンゴム(U)、低硬度のゴム等で構成・形成した点、ベルト搬送手段8に代えて、ベルト搬送手段8Bを用いる点、およびベルト搬送手段8Bの搬送ベルト82側を、図17および図18に示すように、駆動側としてのグリップローラ81と直接接触することにより従動側として明定し限定した点が主に相違する。
【0130】
用紙搬送装置5Bの第2搬送手段7は、その挟持搬送手段の対向対の一方が、回転することにより駆動力を伝達可能な回転搬送駆動手段・回転搬送駆動部材としてのグリップローラ81からなり、前記対向対の他方が、第1搬送路Aと第2搬送路Bとの合流搬送経路の外郭方向に配置され、グリップローラ81と直接接触して連れ回り、用紙Sの先端と接触した状態を保持しつつ第2搬送手段7のニップ部99に向けて用紙Sを搬送(移動・案内)する搬送ベルト82を備えたベルト搬送手段8B(移動案内手段)からなる。
【0131】
また、第1の実施形態の用紙搬送装置5Bは、図10〜図12等に示した用紙搬送装置5と比較して、搬送ベルト82の幅が搬送する最大サイズの用紙幅以上の長さであって、かつ、プーリ83,84、グリップローラ81の各長さが搬送ベルト82の幅の長さ以上にそれぞれ用紙幅方向Yに連続的に形成されている構成に代えて、ベルト搬送手段8における搬送ベルト82の用紙幅方向Yが、用紙幅方向Yの用紙Sの一部の先端部(先端、先端面、先端の角部・エッジを含む)と接触するように用紙幅方向Yに断続的に構成されている点が相違する。
なお、本実施形態にあっては、図10〜図12等に示した用紙搬送装置5と同様に、搬送ベルト82の幅が搬送する最大サイズの用紙幅以上の長さであって、プーリ83,84、グリップローラ81の各長さが連続的に構成されているものでも構わない。
【0132】
グリップローラ81は、串刺し団子状に用紙幅方向Yの回転駆動軸81a上に断続的に複数個固着・配設されている。一方、ベルト搬送手段8Bの搬送ベルト82およびプーリ83,84は、複数のグリップローラ81の少なくとも1つに対応して少なくとも1つ(すなわち、対向対の少なくとも1つ)配設・配置されている。具体的には、図17および図18に示すように、グリップローラ81が回転駆動軸81a上に3個配置されており、さらに3個のグリップローラ81に対応・対向して3本の搬送ベルト82が各グリップローラ81と略等しい幅で配置されている。本実施形態では、各3個のプーリ83,84は、各プーリ軸83a,84aに固着されている。
なお、図17では、駆動機構22を明確に示すため、グリップローラ81の配置間隔等を回転駆動軸81a方向に故意にずらせて不揃いに図示しているが、実際は搬送ベルト82に対向して等間隔に配置されていることは無論である。
【0133】
駆動機構22は、図17および図18に示すように、単一の駆動源・駆動手段としてのステッピングモータからなる給紙モータ23と、給紙モータ23の出力軸に固設されたモータギヤ24と、このモータギヤ24と噛み合うアイドラギヤ25と、このアイドラギヤ25と噛み合い、フィードローラ61の軸61aの一端部に固定されたフィードローラ駆動ギヤ61Bと、このフィードローラ駆動ギヤ61Bと噛み合うアイドラギヤ26と、このアイドラギヤ26と噛み合い、グリップローラ81の回転駆動軸81aの一端部に固設されたグリップローラ駆動ギヤ81Aと、フィードローラ61寄りの軸61aの他端部に固定されたフィードローラギヤ61Aと、このフィードローラギヤ61Aと噛み合う上記したアイドラギヤ65と、このアイドラギヤ65と噛み合い、ピックアップローラ60寄りの軸60aの他端部に固定されたピックアップローラギヤ60Aとから主に構成されている。
給紙モータ23は、ハウジング80に固定されている。アイドラギヤ25,26,65は、それぞれハウジング80に回転自在に支持されている。
上述したとおり、本実施形態においては、コンパクトで省スペースである用紙搬送装置5Bとして構成、すなわち上記実施例1等に例示したように第1搬送路Aが曲率半径の比較的小さな曲率部で構成されている関係上、給紙モータ23は、単一であり、第1搬送手段6および第2搬送手段7の駆動手段を兼用していて、装置のコンパクト化に寄与している。
【0134】
リバースローラ62の駆動は、例えばフィードローラ61に対する圧解除等を行うソレノイド等を備えていて別系統である。図17において、62bは、図1〜図4に示した例において、図示しないトルクリミッタと説明したものを表している。
図1〜図4に示した例では、ピックアップローラ60およびフィードローラ61の回転駆動関係を簡略的に説明したが、実際には、図18に拡大して示すように、両ローラ60,61はピックアップアーム部材64によって各軸60a,61aが連結されており、ピックアップローラ60がフィードローラ61側の軸61aを中心としてピックアップアーム部材64を介してピックアップ揺動・変位するように、図示しないソレノイドおよびバネの組み合わせによって駆動されるようになっている。
実際の駆動機構22では、給紙モータ23ないしフィードローラ61間にはより多くのギヤおよびタイミングベルト等の駆動力伝達部材が適宜配設されているが、ここではグリップローラ81が回転搬送駆動部材であることを明示するためその一例を両図に簡略的に示した。
なお、駆動機構22は、図1〜図4や図7〜図13、図14〜図15に示した用紙搬送装置5、5Aあるいは後述の実施形態や変形例等にも適用可能なことは無論である。また、上述した実施例1の複写機では駆動機構22と実質的に同様のものが使用されていることを付記しておく。
【0135】
第2の実施形態によれば、ニップ99部を形成する側のプーリ83を弾性部材としての例えばウレタン樹脂やウレタンゴム(U)、低硬度のゴム等で形成し、かつ、搬送ベルト82側を従動側として明定したことにより、第2搬送手段7の対向するグリップローラ81とプーリ83を介しての搬送ベルト82間でニップ部99を大きく形成することができるため、第2搬送手段7の搬送力を大きくでき、かつ、ニップ部99の出口方向XAを図16において左斜め上方向に設定することができる。
従来のローラ対のような第2搬送手段において、単に本実施形態の構成を用いた場合では、用紙の先端のニップ部への進入角度が厳しくなり、用紙の先端がニップ部形成側のローラに腹当たりし、先端折れを発生しやすい。これに対して、本実施形態によれば、第2搬送手段7の一方に搬送ベルト8を用いているため、用紙Sの先端のニップ部99への進入角度は常に一定に保たれるので、安定したニップ部99への進入が可能となる。また、第1搬送手段6より搬送されてきた用紙Sの先端が、最初に搬送ベルト82に当設する際の衝撃を吸収することができる。さらに、用紙Sの後端が搬送ガイド部材71の山状の頂上を抜けて、ベルト搬送面82aに当設する際の衝撃音(いわゆるハネ音)も吸収することができるため、装置の低騒音化も図ることができる。
【0136】
また第2の実施形態によれば、ベルト搬送手段8Bの搬送ベルト82は、図示しないバネの付勢力によってプーリ83が駆動されるグリップローラ81に押し付けられており、駆動機構22により回転駆動されるグリップローラ81と直接接触して連れ回り・従動回転する構成であるので、搬送ベルト82側を駆動する場合よりもグリップローラ81側を駆動した方が、搬送ベルト82の線速度のばらつきを小さくできる。これにより、第1搬送路A(用紙搬送経路)のターンの外側(外郭方向)および合流搬送路の外郭に第2搬送手段7の挟持部に向けて回転する搬送ベルト82を配置することで、第1搬送路Aのターン部での厚紙等の比較的剛性の高い用紙搬送性の向上を可能とし、搬送ベルト82と対向し直接接触するグリップローラ81を駆動し、搬送ベルト82を連れ回りさせることで、安定した線速度で用紙を第2搬送手段7以降に搬送させることが可能となる。
この利点・効果は、次のような技術内容を考察すれば容易に理解できる。すなわち、グリップローラ81を駆動する場合、グリップローラ81の線速度はグリップローラ81自身の外径と回転数とによってのみ決まる。これに対して、搬送ベルト82側を駆動する場合を考えると、搬送ベルト82を駆動する場合、搬送ベルト82の内側に設けたローラ状のプーリ83(ベルト駆動ローラ、主プーリ)によって搬送ベルト82を駆動するのが一般的である。
この場合、搬送ベルト82の線速度は、搬送ベルト82の内側に設けたプーリ83の外径および回転数以外に、構成部品バラツキによる搬送ベルト82の厚みのばらつき、搬送ベルト82の磨耗による厚みの影響、あるいは搬送ベルト82とプーリ83との間のスリップの影響を受ける。このため、搬送ベルト82側を駆動するよりグリップローラ81側を駆動した方が、搬送ベルト82の線速度のばらつきを小さくできるからである。
【0137】
(第3の実施形態)
図19を参照して、第3の実施形態の用紙搬送装置5Cを説明する。用紙搬送装置5Cは、図10〜図12等に示した第3の例の用紙搬送装置5と比較して、図19に示すように、搬送ベルト82を、比較的低硬度のゴムで形成した点、およびベルト搬送手段8の搬送ベルト82側を、駆動側としてのグリップローラ81と直接接触することにより従動側として明定し限定した点が主に相違する。
【0138】
比較的低硬度のゴムで形成されている搬送ベルト82としては、例えばエチレン・プロピレンゴム(EPDM)を用いていて、基材(通常、ベルトは、繊維を編み込んだ布等の基材にゴムを付ける使い方が多い)の無いゴムそのものからできているもので、かつ、そのゴム硬度がJIS K6253 A型(JIS Aスケール)で、30〜60度の比較的低硬度の領域のものを使用している。なお、搬送ベルト82の材質としては、上記の他、例えばウレタンゴム(U)等も使用される。
【0139】
第3の実施形態によれば、上記構成により、第2の実施形態と同様に、ニップ部99の出口方向を左斜め上方向に設定することができ、第2の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
また、上記構成により、機械的強度、経時での磨耗等の影響を受けずに、搬送ベルト82を伸ばして使用する場合のテンションも低く抑えることができので、従動側としての回転負荷を小さく抑えることもできる。従って、搬送ベルト82のテンションが相対的に高い場合と比較して、駆動側のグリップローラ81への追従性を良くすることが可能となり、設定された線速度で安定した用紙搬送を行うことも可能となる。
【0140】
(変形例1)
図20〜図24を参照して、第1の実施形態等を適用可能な変形例1に係る用紙搬送装置5Dを説明する。図17および図18に示した第2および第3の実施形態における用紙搬送装置5B,5Cの駆動機構22を除き、図10〜図12等に示した第3の例、ならびに図15および図16に示した第1の実施形態において、各用紙搬送装置5,5Aの搬送ベルト82は、用紙幅方向Yにおける搬送ベルト82の幅が、少なくとも、搬送する最大サイズの用紙幅とほぼ同じ幅、すなわち、搬送ベルト82のベルト幅としては、少なくとも、搬送する最大サイズの用紙幅以上のベルト幅が連続的に設定・確保されている。同様に、搬送ベルト82を張架しているプーリ83,84および搬送ベルト82に対向接触したグリップローラ81は、それぞれの用紙幅方向Y(軸長手方向)のプーリ、ローラ長さが、ベルト幅の長さと同一以上の長さに連続的に形成されている。これにより、第1搬送手段6から送出された用紙Sは、搬送ベルト82に対して、必ずその用紙幅全域に渡って接することになり、両者間の接触面積を可能な限り最大限に確保できる。これに伴い、常時、搬送方向に移動される搬送ベルト82から用紙Sに供給可能な用紙Sをその搬送方向に進める搬送推進力も、可能な限り最大限の力を伝達することが可能となることを特徴に挙げている。これに対し、変形例1では、以下のように構成している。
【0141】
用紙搬送装置5Dのベルト搬送手段8Dは、図10〜図12等に示した用紙搬送装置5および図15に示した用紙搬送装置5Aのベルト搬送手段8、ならびに図16に示した用紙搬送装置5Bのベルト搬送手段8B等と比較して、プーリ軸83a上に固着され軸方向に長いプーリ83に代えて、3個のプーリ83が鉄等の金属製のプーリ軸83b上に回転自在に支持されている点、各プーリ83,84がポリアセタール樹脂等の樹脂で形成されている点、各プーリ83,84を回転可能に軸支する支持部材としてのベルト支持部材86を用いている点、その軸方向に長く連続したプーリ軸84aに代えて、その軸方向に長さの短い鉄等の金属製の3本のプーリ軸84bを用いている点、用紙幅方向Yの両最外側に位置するグリップローラ81(図21には図示せず、図24参照)、これに対応して配置されたベルト搬送手段8Dの搬送ベルト82、プーリ83,84の両最外側端は、用紙搬送装置5Dを備えた複写機1で使用される最小サイズ(用紙幅方向Yの用紙サイズ)の用紙Sより小さくなるように取り付け・設定されている点が主に相違する。
【0142】
グリップローラ81と搬送ベルト82とは、図4に示したと同様に、図21に示すように、グリップローラ81の回転駆動軸81aの中心とプーリ軸83bの中心とを結ぶ線分上にて接する構成となっており、その接点を含む部分に挟持部(ニップ部)が形成される。プーリ83、84は、例えば潤滑性能および耐摩耗性・耐久性が良好なポリアセタール樹脂等の樹脂で形成されていて、軽量化が図られている。
【0143】
3箇所に配置された搬送ベルト82は、その構成は同様であるため、そのうちの1箇所を代表して説明する。搬送ベルト82の材質としては、弾性部材としての例えばエチレン・プロピレンゴム(EPDM)を用いていて、基材(通常、ベルトは、繊維を編み込んだ布等の基材にゴムを付ける使い方が多い)の無いゴムそのものからできている。搬送ベルト82の材質としては、上記の他、例えばウレタンゴム(U)等も使用される。
搬送ベルト82は、各プーリ軸83b,84bを介してのプーリ83、84のベルト支持部材86への組み付けの関係により、プーリ軸83bに回転自在に支持されたプーリ83と、プーリ軸84bに回転自在に支持されたプーリ84との間に所定のテンションをもって掛け渡されている。
すなわち、各プーリ軸83b,84bは、その軸間距離を一定に保持するように、ベルト支持部材86に固定・支持されている。このとき、各プーリ83,84間に搬送ベルト82を巻き掛けるときの搬送ベルト82の周長が、搬送ベルト82単体の周長よりも大きくなるように各プーリ軸83b,84bをベルト支持部材86に配設・支持したことも特徴点となっている。上記構成により、搬送ベルト82は、ベルト搬送手段8Dとしてベルト支持部材86に組んだ場合、搬送ベルト82単品の周長より組み付けた後の周長の方が大きくなるよう、搬送ベルト82をその弾性により伸ばして使用していることとなる。
【0144】
3個のベルト支持部材86の間のプーリ軸83b上には、2個の軸受87が装着されている。そして、付勢手段(もしくは付勢部材・弾性部材)としてのバネ91(圧縮バネ)が、軸受87を介してプーリ軸83bを加圧し、用紙を搬送する搬送力を生み出す構成となっている。上述したように、プーリ軸83bとプーリ軸84bとはベルト支持部材86によって一定の軸間距離を保持するように固定されており、プーリ軸84bがプーリ軸83bを中心に揺動可能に構成されている。
【0145】
ベルト支持部材86は、ポリアセタール樹脂等の樹脂で一体的に形成されていて、軽量化が図られている。ベルト支持部材86の背面壁には、バネ92の一端を係止するバネ台座86aが一体的に形成されている。ベルト支持部材86から突出したプーリ軸83b,84b近傍には、プーリ軸83b,84b抜け止め用の止め輪が装着されている。
図21に示すように、ベルト支持部材86のバネ台座86aと開閉ガイド79に固設されたバネ受け部材93との間には、ベルト支持部材86の背面を付勢することにより、搬送ベルト82を図21に示すグリップローラ81に常に圧接する向きに付勢する付勢手段(もしくは付勢部材・弾性部材)としてのバネ(圧縮バネ)92が装着されている。
【0146】
図22にハッチングを施して示すように、ベルト支持部材86の下部には、搬送ベルト82を所定の位置に位置決めするための位置決め部86bが一体的に形成されており、この位置決め部86bが搬送ガイド部材72と接することにより、搬送ベルト82自体の位置が位置決めされる。また、図21および図24に示すように、バネ92の付勢力により、位置決め部86bと搬送ガイド部材72とが当接することによって、搬送ベルト82が所定の位置に位置決めされ、搬送ガイド部材72から内側に突出して形成された搬送ガイドリブ72bからのベルト突き出し量hを確保できるよう構成されている。
【0147】
図24に詳しく示すように、軸受87には、U字溝87aが形成されており、プーリ軸83bがU字溝87aと緩く嵌合していることにより、バネ91の付勢力によってプーリ軸83bを介して搬送ベルト82をグリップローラ81に圧接する向きに付勢・加圧している。プーリ軸83bは、搬送ベルト82がグリップローラ81に圧接することによりその位置が固定されるが、プーリ軸84bはプーリ軸83bを中心に図22に示す矢印方向に揺動可能に構成されている。
図21および図24を参照して、バネ92の一端がベルト支持部材86を加圧していることは上述したが、その他端はバネ加圧台94に支持・係止されている。バネ加圧台94は、バネ92の付勢力の向きに沿ってバネ受け部材93に形成されたスリット93aに対し、移動かつ任意の位置にて固定できるよう構成されている。同図では、ネジで締結・固定されている例を示す。この構成により、それぞれ3箇所において、バネ92の圧縮長さを任意に変えられることで、バネ92の付勢力としてのバネ荷重、すなわちその加圧力を変更可能に構成されている。本変形例では、2個のバネ91のバネ荷重、バネ長さ、形状等のバネ仕様は、同一のものを使用している。同様に、3個のバネ92のバネ荷重、バネ長さ、形状等のバネ仕様は、同一のものを使用している。
【0148】
上述したとおり、本変形例におけるベルト搬送手段8Dの搬送ベルト82は、各プーリ軸83b,84bを介してのプーリ83、84のベルト支持部材86への組み付けの関係により、一対のローラ状のプーリ83,84の間に所定のテンションをもって掛け渡されている。そして、搬送ベルト82は、バネ92の付勢力によってフリーに回転可能に設けられたプーリ83が駆動されるグリップローラ81に押し付けられており、グリップローラ81の回転に連れ回ることで従動・回転する。
【0149】
従って、変形例1によれば、以下の利点・効果を奏する。第1に、ベルト搬送手段8Dを断続的に構成したので、長尺のベルト搬送手段8に比べて低コストで済む。
第2に、ベルト搬送手段8Dの搬送ベルト82は、駆動機構22により回転駆動されるグリップローラ81(回転搬送駆動部材)と直接接触して連れ回る構成であるので、搬送ベルト82側を駆動する場合よりもグリップローラ81側を駆動した方が、搬送ベルト82の線速度のばらつきを小さくできる。これにより、第1搬送路A(用紙搬送経路)と第2用紙搬送路Bとの合流搬送経路のターンの外側(外郭方向)に第2搬送手段7の挟持部に向けて回転・走行する搬送ベルト82を配置することで、第1搬送路Aのターン部での厚紙等の比較的剛性の高い用紙搬送性の向上を可能とし、搬送ベルト82と対向し直接接触するグリップローラ81を駆動し、搬送ベルト82を連れ回りさせることで、安定した線速度で用紙を第2搬送手段7以降に搬送させることが可能となる。この利点・効果は、図17および図18の駆動機構22を参照して説明したと同様である。
【0150】
第3に、各プーリ83,84(ベルト保持回転部材)は、その軸間距離を一定に保持するようにベルト支持部材86(支持部材)に軸支されており、各プーリ83,84間に弾性部材からなる搬送ベルト82を巻き掛けるときの搬送ベルト82の周長が、搬送ベルト82単体の周長よりも大きくなるように各プーリ83,84のプーリ軸83b,84bをベルト支持部材86に配設したことにより、本実施形態ではベルトのテンションをかける手段として、通常よく用いられるタイトナーと呼ばれるベルトにテンションをかける機構を設けず、搬送ベルト82を2軸のプーリ間83,84に弾性的に伸ばしてテンションをかける構成としているため、従来のタイトナー等の機構を設ける構成に比べてシンプルで、省スペース、低コスト化を実現できる。
これにより、合流搬送経路における第1搬送路Aのターン部での厚紙等の比較的剛性の高い用紙搬送性の向上を可能とした用紙搬送装置において、機構がシンプルで、省スペース、低コスト化を実現できる。
上述の作用効果を奏する変形例1に対して、第1ないし第3の実施形態の各用紙搬送装置5A、5B,5Cの上記特有の構成を付加し組み合わせることにより、変形例1の作用効果も奏するように構成することができることは無論である。
【0151】
(第4の実施形態)
図25〜図28を参照して、第4の実施形態の用紙搬送装置5Eを説明する。用紙搬送装置5Eは、図20〜図24に示した用紙搬送装置5Dのベルト搬送手段8Dと比較して、用紙幅方向Yに複数(本実施形態例では3つ)に分割され、かつ、独立して走行・回転可能に構成されたベルト搬送手段8Eを用いる点が主に相違する。用紙搬送装置5Eは、上記相違点以外は用紙搬送装置5Dと同様である。
【0152】
用紙搬送装置5Eにおいて、3本の搬送ベルト82をそれぞれ独立して走行するための構成は、3組のベルト搬送手段8Eと、各ベルト搬送手段8Eのプーリ83のプーリ軸83cを緩く支持する軸支持部材90と、各ベルト搬送手段8Eを構成するベルト支持部材96の背面を付勢することにより、各搬送ベルト82を図25および図26に示すグリップローラ81に常に接触する向きに付勢する付勢手段(もしくは付勢部材・弾性部材)としてのバネ(圧縮バネ)97とから主に構成されている。
ベルト搬送手段8Eは、図20〜図24に示したベルト搬送手段8Dと比較して、図25〜図28に示すように、その軸方向に長く連続した共通のプーリ軸83bに代えて、その軸方向に長さの短い独立した鉄等の金属製のプーリ軸83cを用いている点、ベルト支持部材86に代えて、各プーリ軸83c、84bを固定・支持するベルト支持部材96を用いている点、および用紙幅方向Yの中央側に配置されたベルト搬送手段8Eにおいてニップ部99’を形成する側のプーリ83のプーリ軸83cを、用紙幅方向Yの両側に配置されたベルト搬送手段8Eにおいてニップ部99を形成する側のプーリ83のプーリ軸83cよりも、第2搬送手段7の用紙搬送方向の下流側へ偏倚させて、換言すればずらして配置した点が主に相違する。
【0153】
ベルト支持部材96は、例えば潤滑性能および耐摩耗性・耐久性が良好なポリアセタール樹脂等の樹脂で一体的に形成されていて、軽量化が図られている。ベルト支持部材96の背面壁には、バネ97の一端を係止するバネ台座96aが一体的に形成されている。なお、ベルト支持部材96から突出した6箇所のプーリ軸84b近傍には、プーリ軸84b抜け止め用の図示しない止め輪が装着されている。
【0154】
軸支持部材90は、所定の強度を有する適宜の樹脂や金属等で一体的に形成されていて、搬送ガイド部材72の裏面壁に固定されている。軸支持部材90には、各ベルト搬送手段8Eのプーリ軸83cの両端部を摺動可能に支持する長孔状の支持孔90aが計6箇所に形成されている。各支持孔90aは、その高さ方向の内径がプーリ軸83cの外径よりも若干大きく形成されていることにより、プーリ軸83cを緩く嵌入(遊嵌)している。
また、図27および図28に示すように、各支持孔90aは、用紙幅方向Yの中央側に形成されたものが、用紙幅方向Yの両側に形成されたものに比べて、略鉛直上方向に寸法haの分だけ偏倚・ずらせて形成されている。これにより、用紙幅方向Yの中央側に配置されたベルト搬送手段8Eにおいてニップ部99’を形成する側のプーリ83のプーリ軸83cが、用紙幅方向Yの両側に配置されたベルト搬送手段8Eにおいてニップ部99を形成する側のプーリ83のプーリ軸83cよりも、第2搬送手段7の用紙搬送方向の下流側へずらされた状態で、各支持孔90aに緩く支持されることとなる。これにより、図25および図26に示すように、用紙幅方向Yの中央側に配置された搬送ベルト82は、用紙幅方向Yの両側に配置されたそれと比べて、上記寸法haの分だけ略鉛直上方向に偏倚・ずらせて配置されることとなる。
なお、軸支持部材90の支持孔90aから外側へプーリ軸83cを突出するように形成して、その6箇所のプーリ軸83c近傍にプーリ軸83c抜け止め用の図示しない止め輪を装着するようにしてもよい。
【0155】
バネ97は、各ベルト搬送手段8Eを支持する軸支持部材90の内壁面とベルト支持部材96のバネ台座96aの間に装着されていて、ベルト支持部材96を介して搬送ベルト82を、グリップローラ81に常に接触する向きに付勢している。本実施形態の例では、バネ97のバネ荷重、バネ長さ、形状等のバネ仕様は、同一のものを使用している。
3組のベルト搬送手段8Eは、上述した共通の構成部品で構成され組み立てられている。ちなみに、各ベルト搬送手段8Eの軸支持部材90への組み付け後の各バネ97により付勢された状態において、3本のベルト搬送面82aが略同一平面上に属するように各構成部品形状が設定されている。
【0156】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1に、3組のベルト搬送手段8Eの搬送ベルト82は、グリップローラ81の回転に従動して、それぞれ独立して走行・回転することができるので、各ベルト搬送手段8Eの搬送ベルト82のベルト幅を小さくできるとともに、ベルト幅方向の厚み偏差の影響を小さくできるため、安定した用紙の搬送を実現できる。
また、用紙幅方向Yの中央側に配置された搬送ベルト82を、図25〜図28に示したように、用紙幅方向Yの両側に配置されたそれと比べて、上記寸法haの分だけ略鉛直上方向に偏倚・ずらせて配置したことにより、図25および図26に示すように、厚紙のような比較的剛性の高い用紙Sであって、その先端部位が座屈・変形を生じた用紙Sを搬送する場合であっても、搬送ベルト82により搬送されてきた用紙Sの先端を第2搬送手段7のニップ部99,99’にスムーズに進入させることができ、第2搬送手段7より搬送された用紙Sのニップ部の出口方向XAを、図中黒太矢印で示すように左斜め上方向に変えることができるため、搬送ガイド部材72の真上に配置されている外側ガイド部材100のガイド面100aの磨耗や、用紙スリップによるジャム、あるいは用紙Sの先端ダメージ等の不具合を生じることがない。
これにより、用紙Sの先端が搬送ガイド部材72に沿って搬送されることはなく、また図14に示したマイラ102等の弾性部材を、搬送ガイド部材72のガイド面の上部に延在して設ける必要性もない。
また、図26に示すように、用紙Sの後端がニップ部99,99’を抜ける際、先ず用紙幅方向Yの両側に配置された搬送ベルト82によって形成されたニップ部99から抜けた後、用紙幅方向Yの中央側に配置された搬送ベルト82によって形成されたニップ部99’を抜けることにより、搬送ガイド部材72の下流側端部(図において上端部)へ用紙Sの後端が接触するタイミングを用紙幅方向Yでずらすことができるため(ソフトランディング)、用紙Sの後端が搬送ガイド部材72の下流側端部へ衝撃的に当接することによる用紙Sの後端のハネ音の低減化も図れる。
【0157】
一部上述したが、図30(a)、(b)に示すように、一般的な従来の給紙装置と同様に、給紙装置3の本体側の構成は、第2搬送路Bを分割して、図15に示した第1の実施形態のハウジング80等を備えた装置本体78に対して、装置本体78の下部に設けられたヒンジ支点軸76を揺動支点として、開閉ガイド79が図25中矢印C,D方向に開閉自在となる構成を採用している。このような開閉構成により、紙詰まり用紙(ジャム用紙)を容易に除去できるようになっている。開閉ガイド79は、ベルト搬送手段8および搬送ガイド部材72等を一体化して構成された開閉ユニットとして機能する。
【0158】
(第5の実施形態)
図31および図32を参照して、本発明の第5の実施形態を説明する。
図31および図32に示す第5の実施形態は、図20〜図24に示した変形例1の用紙搬送装置5Dと比較して、用紙搬送装置5Dに代えた用紙搬送装置5Fを用いる点のみ相違する。第5の実施形態の前記相違点以外の構成は、変形例1の用紙搬送装置5Dを備えた図9を借りて示す複写機1と同様である。
第5の実施形態の用紙搬送装置5Fは、図20〜図24に示した変形例1の用紙搬送装置5Dと比較して、図31に示すように、ベルト搬送手段8Dのプーリ軸83bに代えて、後述するように移動可能に構成されたプーリ軸83dを備えたベルト搬送手段8Fを用いる点、必要に応じて、具体的には紙種(シート種類)に応じて、プーリ83のプーリ軸83dを、第2搬送手段7の用紙搬送方向の下流側へ変位させる変位手段109を有する点、および変位手段109を制御する図32に示す制御手段43を有する点が主に相違する。
【0159】
変位手段109は、図示しない開閉ガイド側に植設された回転軸111を中心として所定角度の範囲で回動自在、すなわち揺動自在に支持され、その一端部がプーリ軸83dの下端に当接・係合するアーム状のリンク110と、その一端部がリンク110の他端部に支軸112を介して緩く連結された連結バー113と、そのプランジャ115aがピンを介して連結バー113の他端部に緩く連結された駆動手段としてのソレノイド115と、リンク110の他端部と図示しない開閉ガイド側に配設されたピン(図示せず)との間に張設され、リンク110の一端部を図において時計回りに揺動させる向きに常に付勢する付勢手段(もしくは付勢部材・弾性部材)としてのバネ114(引張バネ)とから主に構成されている。
【0160】
ベルト搬送手段8Fは、ベルト搬送手段8Dと比較して、ベルト支持部材86に軸間距離を所定に保持された構成に代えて、図21ないし図24を借りて説明すると、プーリ軸83bに代えたプーリ軸83dのみがベルト支持部材86と略同様の部材に移動可能に支持される構成、詳しくはバネ91の付勢力によってプーリ軸83dが、第2搬送手段7の用紙搬送方向の下流側に変位可能に、グリップローラ81の外周面上を搬送ベルト82を介して転動する略円弧状の軌跡の孔(図示せず)を形成されたベルト支持部材86と略同様の部材に支持されている点が主に相違する。ベルト搬送手段8Fにおいて、プーリ軸83dと対向したプーリ84側のプーリ軸84bは、3つのプーリ84を回転自在に支持すべく1本の連続した軸で構成されていて、図21ないし図24に示したベルト支持部材86と略同様の部材によって移動しないように固定支持されている。上述した相違点以外の構成、すなわちベルト搬送手段8Fは、用紙幅方向に複数(本実施形態例では上記と同じ3つ)配設されている点、プーリ軸83dがプーリ軸83bと同様に1本の連続した軸である点、バネ91,92でプーリ83,84が付勢されている点、ベルト搬送手段8Fを構成している上記各構成部品の材質などはベルト搬送手段8Dと同様である。
なお、紙面の手前側に配置されたベルト搬送手段8Fと奥側に配置されたベルト搬送手段8Fとに1つずつリンク110を配設し、これら両側のリンク110を支軸111で連結・固定することにより、プーリ軸83dをより安定して変位させるようにしてもよい。
【0161】
ベルト搬送手段8Fの搬送ベルト82は、変位手段109の後述する動作によって、初期位置を占めている所定の軸間距離から偏倚位置を占めるとその軸間距離が長くなる方向に変わることから、搬送ベルト82が従動回転する際の回転負荷を可能な限り抑えて、搬送ベルト82の線速度をグリップローラ81のそれと略同一となるように、搬送ベルト82の伸張率(%)を10〜5%の範囲内となるように軸間距離の変化に伴う伸び分を抑えることが、次に述べる理由から好ましい。
搬送ベルト82の厚みを一定にした条件で搬送ベルト82の伸張率およびゴムの硬度に関して必要な閾値を設定する試験を行った。すなわち、必要な閾値・評価基準としては、搬送ベルト82の線速度がグリップローラ81の線速と略同一であること、別言すれば搬送ベルト82の狙い通りの線速度が得られることを意味する。
上記閾値を基準として、搬送ベルト82の伸張率とゴム(EPDM)硬度との各パラメータの組み合わせが、どのような範囲において用紙(シート)の保持・安定搬送に適しているか否かの評価試験を行った。試験条件としては、軸間距離13mmで一定とし、常温環境で、搬送ベルト82の厚みを一定の1.5mmとし、搬送ベルト82のゴムの硬度(JIS K 6253 A型)を40°、60°、80°の3段階に変化させて行った。上記した試験条件以外は、実施例1と同様の条件で行った結果、硬度40°の場合では伸張率(%)が10〜5%の範囲が、硬度60°の場合では伸張率(%)が7〜5%の範囲が、硬度80°の場合では伸張率(%)が5%が、それぞれ好ましい組合せ範囲であることが分かった。従って、プーリ軸83dと84bとの軸間距離の変化量を、上記した好ましい組合せ範囲内に収まるようにすることが肝要である。
【0162】
換言すれば、変位手段109は、紙種、特には用紙の厚みに応じて、ベルト搬送手段8Fにおけるプーリ83のプーリ軸83dを、図31に示す第1の位置でもある初期位置と第2搬送手段7の用紙搬送方向の下流側へ偏倚した第2の位置でもある偏倚位置との間で変位させるものである。ここで、偏倚位置とは、例えば図15を借りて説明すると、プーリ83が搬送ベルト82を介して同図の状態を占めている位置を意味する。
ベルト搬送手段8Fがホームポジションを占めている状態にあっては、図21ないし図24に示したベルト支持部材86と略同様の部材構成によって、プーリ軸83dが図31に示すホームポジションより下方に移動しないように支持されている。
【0163】
ソレノイド115は、例えばプル型のDCソレノイドからなり、図示しない開閉ガイドの不動部材に固定されている。ソレノイド115に電力が供給されソレノイド115がオンすると、図31に示すように、バネ114の付勢力に抗して、プランジャ115aが図中矢印方向に吸引移動されることに伴い、連結バー113も図中矢印方向に移動され、これによりリンク110が回転軸111の周りに図中矢印方向(時計回り)に回転されることで、ホームポジションを占めていたプーリ83のプーリ軸83dが図中矢印方向に上昇・変位され、プーリ83が搬送ベルト82を介して第2搬送手段7の用紙搬送方向の下流側へ偏倚して偏倚位置を占める。
【0164】
図32を併用して、本実施形態の用紙搬送装置5F周りの制御に関連する構成を簡単に説明する。図31に示す内郭ガイド部材70の下部には、用紙の先端を検知するシート検知手段としての用紙検知センサ39が用紙の搬送に支障とならない状態で配設されている。用紙検知センサ39は、反射型のフォトセンサからなる。例えば図15に示すピックアップローラ60外周面の最上位の用紙Sとの当接位置から用紙検知センサ39配置位置までの用紙搬送距離が一定である点と、ピックアップローラ60の回転開始により最上位の用紙Sが繰り出され第1搬送手段6の回転駆動を経由して用紙検知センサ39に至るまでの時間とから、制御手段43内部に配設されたタイマを利用したCPU44の計算によって用紙の線速度(線速)を算出することで、用紙Sの後端が第2搬送手段7のニップ部を抜けきる直前の時間等を知ることができる。なお。このようなCPU44の計算によらずに、用紙Sの後端が第2搬送手段7のニップ部を抜けきる直前の状態を検知する反射型のフォトセンサや透過型のフオトセンサをニップ部近傍に設けても構わない。また、用紙の線速を検出するシート線速検出手段としては、用紙検知センサ39に限らず、用紙検知センサ39と、例えば図4に示した用紙Sの先端・後端を検知するシート検知手段としての給紙センサ88とを併用してもよい。
【0165】
図31に示すように、図示しない開閉ガイドの不動部材には、第1のベルト保持回転部材の軸としてのプーリ軸83dのホームポジションを検知するための、リミットスイッチからなるホームポジションセンサ40が配設されている。ホームポジションセンサ40は、リミットスイッチに限らず、例えばリンク部材に突出形成した遮光板と、この遮光板とベルト搬送手段8Fのホームポジションで選択的に係合する透過型のフオトセンサ等でもよい。
CPU44は、上記入力ポートおよびセンサ入力回路等を介して、給紙センサ88、縦搬送センサ89、厚み検知センサ41、操作部としての操作パネル95の上記スタートスイッチや各種キー(図示せず)と電気的に接続されている。
【0166】
給紙センサ88および縦搬送センサ89は、シート収容手段としての給紙トレイ51からの用紙が給送されてから第2搬送手段7に到達するまでの到達時間を代用して検知する到達時間検知手段としての機能を有する。この到達時間は、用紙の先端が給紙センサ88によりオン検知された時点から縦搬送センサ89によってオン検知されるまでの時間を、制御装置43の内部タイマでもある計時手段としてのタイマ48によって計時されることを介して、CPU44が認識するものである。
厚み検知センサ41は、用紙の厚みを含む紙種である用紙種類(シート種類)を検知するシート種類検知手段としての機能を有し、本実施形態では用紙(シート)の厚みを検出するシート厚み検知手段として機能する。厚み検知センサ41の具体例としては、例えばレーザ光を用紙に投射したときのその用紙を透過する光量を検出することによって用紙の厚みを検出する公知のセンサが用いられる。厚み検知センサ41は、給紙装置3におけるピックアップローラ60と第1搬送手段6との間の用紙搬送経路等に適宜配設される。なお、シート厚み検知手段としては、厚み検知センサ41に限らず、給紙トレイ51上の所定サイズの用紙の所定枚数の重量を検知したりするセンサで用紙の厚みを間接的に検出するものなど、公知の全てのセンサを用いていもよい。
【0167】
図32において、制御手段43は、用紙搬送装置5Fの主として変位手段109のソレノイド115のオン/オフ制御、給紙モータへ供給する駆動用パルス数の制御等を行うためのものである。以下、説明の簡明化を図るため、図9に示した給紙装置3の用紙搬送装置5F等の制御を除く複写機1の全体動作を制御するものとして図示しないメイン制御手段(メイン制御装置)があり、このメイン制御装置と制御手段(制御装置)43とは互いに指令信号やオン/オフ信号あるいはデータ信号等を送受信しているものとして説明する。上記メイン制御手段および制御手段43は、例えば図9に示した画像形成装置本体2側の図示しない制御基板に設けられている。なお、給紙装置3が商品形態としての移動単位となる場合には、制御手段43を給紙装置3の本体側に設けるようにしてもよい。
【0168】
制御手段43は、CPU(中央演算処理装置)44、図示しないI/O(入出力)ポート、ROM(読み出し専用記憶装置)45、RAM(読み書き可能な記憶装置)46および図示しないタイマ等を備え、それらが信号バスによって接続された構成を有するマイクロコンピュータを具備している。
CPU44は、上記入力ポートおよび各センサ入力回路等を介して、タッチパネル方式の上記操作画面部を備えた操作部としての操作パネル48の上記スタートスイッチや各種キー(図示せず)、用紙検知センサ39、ホームポジションセンサ40、厚み検知センサ41と電気的に接続されている。
【0169】
操作パネル48には、各種キーとして、それぞれ図示しない、用紙Sの給送枚数等を設定・置数するためのテンキーや、厚紙等の比較的剛性の高い用紙が収納されている給紙段(給紙トレイ51および用紙搬送装置5F)を選択・設定して該用紙Sを給送・搬送駆動させる信号を生成する高剛性用紙(高剛性シート)選択キーまたはその給紙段選択キー、および厚紙等以外の普通紙や薄紙等の比較的剛性の低い用紙が収納されている給紙段(給紙トレイ51および用紙搬送装置)を選択・設定して該用紙Sを給送・搬送駆動させる信号を生成する普通紙選択キーや薄紙選択キーまたはその給紙段選択キー等が配設されている。
【0170】
CPU44は、用紙検知センサ39からの出力信号(データ信号)に基づいて、用紙線速を計算によって求める演算機能を有する。また、CPU44は、用紙Sの後端が第2搬送手段7のニップ部を抜けきる直前の時間を、用紙の先端がピックアップローラ60の回転開始(給紙モータ23の回転駆動開始)位置から用紙の後端が第2搬送手段7のニップ部に至る予め設定されている用紙Sの一定の搬送距離と、求めた用紙の線速とから計算する演算機能も有する。
また、CPU44は、前記出力ポートおよび図示しないステッピングモータ駆動回路を介して給紙モータ23に、図示しないソレノイド駆動回路を介してソレノイド115に電気的に接続されていて、これらを駆動制御する指令信号を前記モータ駆動回路、前記ソレノイド駆動回路にそれぞれ送信する。
RAM46は、CPU44での計算結果を一時記憶したり、操作パネル48の前記高剛性用紙選択キーや、用紙検知センサ39からの出力信号を随時記憶したりしてこれら信号の入出力を行う。ROM45には、CPU44が後述する制御機能を発揮するための、「動作プログラム」、「図示しないモータ駆動回路を介して給紙モータ23に供給するパルス数の関係データ」等が予め記憶されている。前記タイマは、時間を計時する計時手段としての機能を有する。
【0171】
CPU44は、第2搬送路Bより用紙が搬送されてきた時、例えば図9において最下段の用紙搬送装置5に代えた用紙搬送装置5’から用紙が搬送されたことを検知するための、最下段の用紙搬送装置5’に配設されている図示しない用紙検知センサからの出力信号およびホームポジションセンサ40からの出力信号に基づき、プーリ83およびプーリ軸83dの変位を禁止させ、かつ、プーリ83およびプーリ軸83dがホームポジションを占めるように変位手段109のソレノイド115をオフ駆動制御する第1の機能を有する。
CPU44は、前記図示しないタイマ、用紙検知センサ39、ホームポジションセンサ40、厚み検知センサ41および操作パネル48からの出力信号に基づき、第1搬送手段6より第1搬送路Aを経由して搬送されてきた用紙が、厚紙等の比較的剛性の高い用紙であって、その用紙の先端部が第2搬送手段7(グリップローラ81と搬送ベルト82)のニップ部に進入するときには、プーリ83およびプーリ軸83dがホームポジションを占めるように変位手段109のソレノイド115をオフ駆動制御する第2の機能を有する。
CPU44は、前記図示しないタイマ、用紙検知センサ39、ホームポジションセンサ40、厚み検知センサ41および操作パネル48からの出力信号に基づき、第1搬送手段6より第1搬送路Aを経由して搬送されてきた用紙が厚紙等の比較的剛性の高い用紙であって、その用紙の後端が、第2搬送手段7(グリップローラ81と搬送ベルト82)のニップ部を抜ける直前に、プーリ軸83dを変位させて、偏倚位置を占めるように変位手段109のソレノイド115をオン駆動制御する第3の機能を有する。
また、CPU44は、前記図示しないタイマ、用紙検知センサ39、ホームポジションセンサ40、厚み検知センサ41および操作パネル48からの出力信号に基づき、第1搬送手段6より第1搬送路Aを経由して搬送されてきた用紙が、普通紙や薄紙等の比較的剛性の低い用紙であると判断したときには、プーリ83およびプーリ軸83dがホームポジションを占めるように変位手段109のソレノイド115をオフ駆動制御する第4の機能を有する。
【0172】
上述の構成に基づき、要部の動作を説明する。
始めに、例えば図9に示す給紙装置3を借りて、同給紙装置3における所定の給紙段として上段の給紙トレイ51および用紙搬送装置5に代えた用紙搬送装置5Fが選択された場合の搬送動作を説明する。操作パネル48の図示しない給紙段選択キーまたは図示しない高剛性用紙選択キー操作で上段の給紙トレイ51および用紙搬送装置5Fが選択されるとともに各種キー操作によって複写条件が選択設定された後にスタートスイッチがオン操作されると、給紙動作が開始される。給紙動作開始時ないし第1搬送手段6より第1搬送路Aを経由して搬送されてきた用紙の先端部がベルト搬送面82aに当接し搬送されつつ、第2搬送手段7(グリップローラ81と搬送ベルト82)のニップ部に進入する際までは、プーリ83およびプーリ軸83dがホームポジションを占めるように変位手段109のソレノイド115がオフ駆動されたままである。
このように、用紙の先端がグリップローラ81と搬送ベルト82とで形成されるニップ部に進入する際は、ソレノイド115がオフした状態にあることで、用紙幅方向に複数(本実施形態例では3つ)配置されたベルト搬送手段8Fにおける搬送ベルト82のニップ部を形成する位置が全てグリップローラ81に対し同位置となることで、ニップへの用紙先端の入り込みを安定化できる。
【0173】
次いで、用紙Sがグリップローラ81と搬送ベルト82とのニップ部で挟持・搬送されさらに下流側へ搬送されていくが、用紙Sの後端がグリップローラ81と搬送ベルト82とのニップ部を抜ける直前に、バネ114の付勢力に抗してソレノイド115がオン駆動されることにより、プランジャ115aおよび連結バー113が図31中矢印方向に引き下げられ、これに伴いリンク110がプーリ軸83dを図31中矢印(時計回り)方向に押し上げるように揺動することによって、グリップローラ81の回転駆動軸81aに対しプーリ軸83dがシフトした状態となり、プーリ81およびプーリ軸83dは偏倚位置を占めて停止する。
【0174】
これは、第4の実施形態で説明したと同様に、厚紙等の腰の強い用紙の場合、搬送ガイド部材71のガイド面71aを離脱して用紙Sの後端がベルト搬送面82a、および搬送ガイド部材72のガイド面72aなどの搬送ベルト82以外で構成された案内手段である箇所へ接触する際の後端ハネ音が問題となるが、用紙Sの後端が搬送ガイド部材72のガイド面72aに接触するタイミングを用紙幅方向でずらすことができるため(ソフトランディング)、用紙後端ハネ音の低減化が可能となる。本実施形態では、駆動手段・駆動源として、ソレノイド115を用いているため、ソフト上の制御構成が簡単であるとともに、コストも非常に安価に済むという利点がある。
そして、用紙Sの後端がグリップローラ81と搬送ベルト82とのニップ部を完全抜け切った時、また給紙モータ23の所定ステップ数の回転により次の給紙動作が開始されるのと同時に、ソレノイド115がオフ駆動される。これにより、バネ114の付勢力によって、上述したと逆の動作が行われて、グリップローラ81の回転駆動軸81aに対しプーリ軸83dが略水平に並んだ状態となり、プーリ81およびプーリ軸83dはホームポジションに戻されることとなる。
【0175】
(第5の実施形態の変形例2)
図33および図34を参照して、第5の実施形態の変形例2を説明する。
図33および図34に示す変形例2は、図31および図32に示した第5の実施形態の用紙搬送装置5Fと比較して、用紙搬送装置5Fに代えた用紙搬送装置5Gを用いる点のみ相違する。変形例2の前記相違点以外の構成は、第1の実施形態の図9に示した複写機1と同様である。
変形例2の用紙搬送装置5Gは、図31および図32に示した第5の実施形態の用紙搬送装置5Fと比較して、図33および図34に示すように、変位手段109に代えて、必要に応じて、具体的には紙種(シート種類)に応じて、プーリ83のプーリ軸83dを、第2搬送手段7の用紙搬送方向の下流側へ変位させる変位手段120を用いる点、および制御手段43に代えて、変位手段120を制御する制御手段43Aを用いる点が主に相違する。
【0176】
変位手段120は、その一端部がベルト搬送手段8Fのプーリ軸83dに当接・連結したリンク121と、このリンク121の他端部をギヤ軸122aを介して固着したリンク付きギヤ122と、このギヤ122と噛み合うアイドラギヤ123と、その出力軸にアイドラギヤ123と噛み合うモータギヤ124aを固着された駆動手段としてのステッピングモータ124とから主に構成されている。
リンク付きギヤ122およびアイドラギヤ123は、それぞれのギヤ軸を介して図示しない開閉ガイドの不動部材に回動自在に支持されている。ステッピングモータ124は、図示しない開閉ガイドの不動部材に固定されている。
【0177】
ステッピングモータ124は、パルス入力で回転駆動する駆動モータの中で最も簡単な構成である。ステッピングモータ124に所定のパルス数が供給されステッピングモータ124がオンすると、図33に示すように、モータギヤ124aが図33中矢印方向(時計回り)に所定のパルス数に応じた所定のステップ数だけ回転され、次いでアイドラギヤ123、リンク付きギヤ122が同図中矢印方向(反時計回り、時計回り)にそれぞれ回転され、リンク付きギヤ122と一体化されたリンク121へと回転駆動力が伝達されて、ホームポジションを占めていたプーリ83のプーリ軸83dが図中矢印方向に上昇・変位され、プーリ83が搬送ベルト82を介して第2搬送手段7の用紙搬送方向の下流側へ偏倚して偏倚位置を占める。
【0178】
図34を併用して、本変形例の用紙搬送装置5G周りの制御に関連する構成について、第5の実施形態と相違する点を中心に説明する。図34において、制御手段43Aは、用紙搬送装置5Gの主として変位手段120のステッピングモータ124へ供給する駆動用パルス数の制御、給紙モータへ供給する駆動用パルス数の制御等を行うためのものである。用紙搬送装置5G周りの制御に関連する構成および制御手段43Aは、下記する以外は、第5の実施形態と同様である。
制御手段43AのCPU44Aは、前記出力ポートおよび図示しないステッピングモータ駆動回路を介して給紙モータ23に、図示しないステッピングモータ駆動回路を介してステッピングモータ124に電気的に接続されていて、これらを駆動制御する指令信号を前記各モータ駆動回路にそれぞれ送信する。
ROM45Aには、CPU44Aが後述する制御機能を発揮するための、「動作プログラム」、「図示しないステッピングモータ駆動回路を介して給紙モータ23およびステッピングモータ110に供給するパルス数の関係データ」等が予め記憶されている。
【0179】
CPU44Aは、第2搬送路Bより用紙が搬送されてきた時、例えば図9において図示しない最下段の用紙搬送装置5’から用紙が搬送されたことを検知するための、最下段の用紙搬送装置5’に配設されている図示しない用紙検知センサからの出力信号およびホームポジションセンサ40からの出力信号に基づき、プーリ83およびプーリ軸83dの変位を禁止させ、かつ、プーリ83およびプーリ軸83dがホームポジションを占めるように変位手段120のステッピングモータ124をオフ駆動制御(パルス供給を行わせない制御、以下同様)する第1の機能を有する。
CPU44Aは、前記図示しないタイマ、用紙検知センサ39、ホームポジションセンサ40、厚み検知センサ41および操作パネル48からの出力信号に基づき、第1搬送手段6より第1搬送路Aを経由して搬送されてきた用紙が、厚紙等の比較的剛性の高い用紙であって、その用紙の先端部がベルト搬送面82aに当接し搬送されつつ、第2搬送手段7(グリップローラ81と搬送ベルト82)のニップ部に進入する際には、プーリ83およびプーリ軸83dがホームポジションを占めるように変位手段120のステッピングモータ124をオフ駆動制御する第2の機能を有する。
【0180】
CPU44Aは、前記図示しないタイマ、用紙検知センサ39、ホームポジションセンサ40、厚み検知センサ41および操作パネル48からの出力信号に基づき、第1搬送手段6より第1搬送路Aを経由して搬送されてきた用紙が、厚紙等の比較的剛性の高い用紙であって、その用紙の後端が第2搬送手段7(グリップローラ81と搬送ベルト82)のニップ部を抜ける直前に、プーリ83およびプーリ軸83dを変位させて、偏倚位置を占めるように変位手段120のステッピングモータ124をオン駆動制御(正転となる所定のパルス数を供給させる)する第3の機能を有する。
CPU44Aは、前記図示しないタイマ、用紙検知センサ39、ホームポジションセンサ40、厚み検知センサ41および操作パネル48からの出力信号に基づき、第1搬送手段6より第1搬送路Aを経由して搬送されてきた用紙が、厚紙等の比較的剛性の高い用紙であって、その用紙の後端が第2搬送手段7のニップ部を完全に抜け切った後に、プーリ83およびプーリ軸83dホームポジションに戻るように変位手段120のステッピングモータ124をオン駆動制御(逆転となる所定のパルス数を供給させる)する第4の機能を有する。
また、CPU44Aは、前記図示しないタイマ、用紙検知センサ39、ホームポジションセンサ40、厚み検知センサ41および操作パネル48からの出力信号に基づき、第1搬送手段6より第1搬送路Aを経由して搬送されてきた用紙が、普通紙や薄紙等の比較的剛性の低い用紙であると判断したときには、プーリ83およびプーリ軸83dがホームポジションを占めるように変位手段120のステッピングモータ124をオフ駆動制御する第5の機能を有する。
【0181】
上述の構成に基づき、要部の動作を説明する。
始めに、第5の実施形態の動作と同様の高剛性用紙の給紙動作が開始され、給紙動作開始時ないし第1搬送手段6より第1搬送路Aを経由して搬送されてきた用紙の先端部がベルト搬送面82aに当接し搬送されつつ、第2搬送手段7(グリップローラ81と搬送ベルト82)のニップ部に進入する際までは、プーリ83およびプーリ軸83dがホームポジションを占めるように変位手段120のステッピングモータ124がオフ駆動(パルス供給が行われない)されたままである。
このように、用紙の先端がグリップローラ81と搬送ベルト82とで形成されるニップ部に進入する際は、ステッピングモータ124がオフした状態にあることで、用紙幅方向に複数(本変形例では3つ)配置されたベルト搬送手段8Fにおける搬送ベルト82のニップ部を形成する位置が全てグリップローラ81に対し同位置となることで、ニップへの用紙先端の入り込みを安定化できる。
【0182】
次いで、用紙Sがグリップローラ81と搬送ベルト82とのニップ部で挟持・搬送されさらに下流側へ搬送されていくが、用紙Sの後端がグリップローラ81と搬送ベルト82とのニップ部を抜ける直前に、ステッピングモータ124に正転用の所定のパルス数が供給されてオン駆動されることにより、上記ギヤ列を介してリンク121がプーリ軸83dを図33中矢印(時計回り)方向に押し上げるように揺動することによって、グリップローラ81の回転駆動軸81aに対しプーリ軸83dがシフトした状態となり、プーリ81およびプーリ軸83dは偏倚位置を占めて停止する。
これによって、第5の実施形態で説明したと同様に、用紙Sの後端が搬送ガイド部材72のガイド面72aに接触するタイミングを用紙幅方向でずらすことができるため(ソフトランディング)、用紙後端のハネ音の低減化が可能となる。
また、本変形例では、駆動手段・駆動源として、ステッピングモータ124を用いているため、第5の実施形態で用いたソレノイド115と比べ、制御が複雑でコスト高であるが、搬送される用紙の厚みに応じてモータ駆動量を容易に可変できることから、用紙の厚みが厚くなるに従いグリップローラ81の回転駆動軸81aとプーリ軸83dとのシフト量を大きくすることが可能となる。これにより、用紙後端のハネ音の低減化の効果も増大することとなる。
そして、用紙Sの後端がグリップローラ81と搬送ベルト82とのニップ部を完全抜け切った時、また給紙モータ23の所定ステップ数の回転により次の給紙動作が開始されるのと同時に、ステッピングモータ124への逆転用の所定のパルス数が供給されて再びオン駆動されることにより、上述したと逆の動作が行われて、グリップローラ81の回転駆動軸81aに対しプーリ軸83dが略水平に並んだ状態となり、プーリ81およびプーリ軸83dはホームポジションに戻されることとなる。
【0183】
以上説明したとおり、図1〜図4、図6〜図8、図9〜図12、図15〜図28に示した各用紙搬送装置5,5A,5B,5C,5D,5E,5F,5Gのベルト搬送手段8,8A,8B,8D,8E,8Fは、第2搬送手段7(挟持搬送手段)の対向対の一方が、用紙(シート)の先端ないし先端部(先端、先端面、先端の角部・エッジを含む広い意味合いの用語である)と接触・当接した状態を保持しつつ、用紙の剛性程度によってはその接触面積を徐々に広げながらグリップローラ81とのニップ部(挟持部)に向けて用紙Sを移動・案内する移動案内手段の一例であるといえる。それ故に、移動案内手段としては、ベルト搬送手段8,8A〜8Fに限らず、上記構成・機能を有し、上記作用効果を奏するものならば何でもよい。
【0184】
上記の実施形態や、実施例、変形例等では、図1に示したように、この発明を複写機である画像形成装置におけるシート収容手段(給紙トレイ51)から画像形成手段本体に搬送して給送する用紙給紙装置に適用した例を説明したが、これに限られることなく、上記の画像形成装置においてその装置本体内で、定着装置11の上部からその先端が略上方に向けて排出される用紙Sを、装置本体から排紙トレイ9に略水平方向に向けて用紙Sを排出する構成の用紙搬送装置(例えば、図29(b)参照)や、装置本体外に設けられた略水平な手差しトレイ67上にユーザが載置した用紙を、その水平な姿勢のまま装置本体内に引き込んで、該姿勢を上向きに変更して、装置本体内の画像形成部に至る上下方向の搬送経路に搬入する構成の用紙搬送装置に適用してもよい。
すなわち、上記の実施形態や変形例等では、その互いに異なる用紙(シート)搬送方向として、略水平方向からこれに対する垂直方向の上向き(略鉛直上方向)に変更する例を説明したが、これに限られることなく、略水平方向から垂直方向の下向き(略鉛直下方向)に変更したり、垂直方向の下向きか、上向きの何れかから略水平方向に変更したり(例えば、図29(a)参照)、あるいは両方が斜め方向等であったりしてもよい。
【0185】
上記した各実施形態や実施例、変形例等では、第1搬送手段および第2搬送手段を、ともに挟持搬送手段としたが、それぞれの搬送手段単体の搬送方向に応じて、搬送対象の下面を支持して搬送するだけで済むならば、対向部材による挟持部を形成した挟持搬送手段としなくてよい。
【0186】
第1搬送手段や、第2搬送手段、ピックアップローラを構成した部材としては、上述したものに限らず、それぞれの回転軸の軸長手方向に所定長さを確保した略長円筒状のローラ部材であっても、適宜、短円筒状のコロ部材であっても、何れでもよく、また、適宜、1つの回転軸上に所定の間隔を設けて、間欠的に複数のローラ部材やコロ部材が配置されていてもよい。
また、ローラ部材やコロ部材を配置していない前記のいくつかの間隔に、それぞれ上記した各実施形態における外郭方向および内郭方向のいくつかのガイド部材が形成したガイド面を位置させた構成としてよい。これらのガイド面としては、搬送方向の搬送中心線に対して適宜の規則的な対称に配置されていれば、用紙(シート)搬送方向に帯状のガイド面を形成したり、略線状のガイド面を形成したり、適宜、これらを混在させてもよい。
【0187】
また、上記した各実施形態や実施例、変形例等では、給紙分離機構として、FRR給紙方式を採用したが、これに限られることなく、摩擦により所定に重送された用紙を分離して1枚の用紙だけを搬送方向に進み続けさせる分離機構であれば、適宜の摩擦分離方式を採用してよく、例えば上記したフィードローラに対して、上記のリバースローラの替わりに、分離爪を用いたり、固定部材であるフリクション・パッドを圧接した構成のフリクション・パッド方式を採用したりしてもよい。すなわち、このフリクション・パッド方式では、フィードローラに摩擦部材としてのフリクション・パッドを適宜の分離角度、分離圧で押し当て、これによって形成されるフィードローラとフリクション・パッドとの間のニップに用紙を通過させるようにしている。従って、フリクション・パッド方式を採用した給紙分離機構によれば、用紙が2枚重なった状態で引き出されても、下側の用紙は、フリクション・パッドから受ける抵抗の方が、重なった用紙間摩擦による抵抗よりも大きいので、それ以上の用紙搬送方向への移動が阻止される。他方、上側の用紙は、フィードローラから受ける搬送力の方が、重なった用紙間摩擦による抵抗よりも大きく、かつ、フリクション・パッドから受ける抵抗よりも大きく設定されているので、結局、上側の用紙だけが搬送方向に進み続けることになる。
【0188】
本発明は、例えば、モノクロの複写機1に限らず、カラー複写機や、モノクロのレーザプリンタやインクジェットプリンタ、インク転写リボンを用いるプリンタ等を含むプリンタに係る画像形成装置に関して、本発明に係るシート搬送装置を応用・適用可能である。
カラー複写機では、転写体で用紙(シート)を搬送しながら順次転写して重ね合わせる直接転写方式のタンデム型カラー画像形成装置や、中間転写体としての無端状の中間転写ベルトに転写した後、用紙に一括転写するタンデム型の画像形成装置においても同様に適用し実施することができる。無論、無端ベルト状の感光体が単一の画像形成装置においても同様に適用し実施することができる。
【0189】
本発明は、例えば、画像形成部とスキャナとの間に用紙を排出する胴内排紙型の画像形成装置に限らず、画像形成装置本体の側部に備える排紙トレイに用紙を排出する画像形成装置にも適用してもよい。また、給紙装置3から繰り出された用紙を画像形成装置本体2の上部へ向かって略垂直方向の搬送路を形成しているがこの限りではなく、給紙装置から用紙が排紙トレイへ排出されるまでの搬送路が略垂直方向でない画像形成装置にも適用可能である。
本発明は、孔版印刷機等を含む印刷装置において、シート収容手段(給紙トレイ)やシート積載手段(給紙台)からシート(用紙)を印刷部本体に搬送して供給するシート搬送装置にも適用してもよい。
【0190】
また、上述した画像形成装置としての複写機1では、読み取る原稿を手動操作でセットする構成としているが、複数の原稿(シート)を自動的に読み取り動作するためのADF(自動原稿送り装置)を装備した複写機や印刷装置等において、該ADFに本発明のシート搬送装置を適用してもよい。
さらには、画像形成装置として、複写機に限られることなく、ファクシミリ、プリンタ、インクジェット記録装置、印刷装置、原稿から画像を読み取るスキャナを有し画像読取機能を主体にした画像読取装置等またはそれらのうちの少なくとも二つを組み合わせた複合機等に適用してもよい。何れにしても、多種多様な紙種としてのシート種類を搬送対象にして、このシートの搬送経路上で省スペース化を図りながら、そのシート搬送方向を変更する必要がある機器や装置において、最適なシート搬送装置とすることができる。
【0191】
本発明は、複数の給紙段に配設されたシート搬送装置に限らず、例えば図1に示した給紙装置3において、上段の給紙トレイ51および用紙搬送装置5’を除去して、単一の給紙トレイ51および用紙搬送装置5のみで構成したシート搬送装置にも適用できる(請求項1参照)。
【0192】
以上述べたとおり、本発明を特定の実施形態や変形例等について説明したが、本発明が開示する技術的範囲は、上述した各実施形態や変形例等に例示されているものに限定されるものではなく、それらを適宜組み合わせて構成してもよく、(例えば、本発明の上記各実施形態や変形例等を、先願発明に係る第1〜第3の例等に適用可能であることなど)本発明の範囲内において、その必要性および用途等に応じて種々の実施形態や変形例あるいは実施例を構成し得ることは当業者ならば明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0193】
【図1】本発明を適用する用紙搬送装置を有する画像形成装置の全体構成を示す概略的な正面図である。
【図2】図1の用紙搬送装置およびその周りの給紙トレイ段を示す図であって、用紙の先端がベルト搬送手段に到達した動作状態を示す要部の拡大断面図である。
【図3】図2の用紙搬送装置において、用紙の先端が第2搬送手段のニップ部に到達する直前の動作状態を示す要部の拡大断面図である。
【図4】実施例1を説明するための用紙搬送装置の要部の拡大断面図である。
【図5】実施例1における紙種別搬送時間のばらつきに関する試験結果を説明するためのグラフである。
【図6】本発明を適用する図2とは別の用紙搬送装置およびその周りの給紙トレイ段を示す要部の断面図である。
【図7】図7の用紙搬送装置において、用紙の先端がベルト搬送手段に到達した動作状態を示す要部の拡大断面図である。
【図8】図7の用紙搬送装置において、用紙の先端が第2搬送手段のニップ部に到達する直前の動作状態を示す要部の拡大断面図である。
【図9】本発明を適用するさらに別の用紙搬送装置を有する画像形成装置の全体構成を示す概略的な正面図である。
【図10】図9の用紙搬送装置において、用紙の先端が第1搬送手段から送り出された際の動作状態を示す要部の拡大断面図である。
【図11】図10の要部の拡大断面図である。
【図12】図9の用紙搬送装置において、用紙の先端がベルト搬送手段に到達した後の動作状態を示す要部の拡大断面図である。
【図13】図9の用紙搬送装置において、用紙の先端が第2搬送手段から送り出されガイド部材に当接した際の不具合状態を示す要部の拡大断面図である。
【図14】図9の用紙搬送装置に弾性マイラを配設した場合において、用紙の先端が第2搬送手段から送り出されガイド部材に当接した際の不具合状態を示す要部の拡大断面図である。
【図15】第1の実施形態の用紙搬送装置における第1、第2搬送手段、画像形成装置本体側の外側ガイド部材および第3搬送路周りの要部の断面図である。
【図16】第2の実施形態の用紙搬送装置における第1、第2搬送手段、画像形成装置本体側の外側ガイド部材および第3搬送路周りの要部の断面図である。
【図17】第2、第3の実施形態の用紙搬送装置における駆動機構を示す簡略的な斜視図である。
【図18】図17の要部の概略的な正面図である。
【図19】第3の実施形態の用紙搬送装置における第1、第2搬送手段、画像形成装置本体側の外側ガイド部材および第3搬送路周りの要部の断面図である。
【図20】変形例1の用紙搬送装置におけるベルト搬送手段および搬送ガイド部材周りをグリップローラ側から見た要部の斜視図である。
【図21】変形例1の用紙搬送装置における第1および第2搬送手段周りの要部の断面図である。
【図22】変形例1の用紙搬送装置におけるベルト搬送手段周りをグリップローラ側から見た斜視図である。
【図23】変形例1の用紙搬送装置におけるベルト搬送手段周りを搬送ガイド部材の裏面側から見た斜視図である。
【図24】変形例1の用紙搬送装置における第2搬送手段周りの要部の断面図である。
【図25】第4の実施形態の用紙搬送装置における第1、第2搬送手段、画像形成装置本体側の外側ガイド部材および第3搬送路周りの要部の断面図であって、用紙の先端が第2搬送手段のニップ部を抜け出た直後の搬送動作を示す断面図である。
【図26】図25において、用紙の後端が第2搬送手段のニップ部を抜け出た直後の搬送動作を示す断面図である。
【図27】第4の実施形態の用紙搬送装置におけるベルト搬送手段周りを、グリップローラ側から見た要部の斜視図である。
【図28】図27の用紙搬送装置のベルト搬送手段周りを、搬送ガイド部材の裏側から見た要部の斜視図である。
【図29】(a),(b)は、用紙搬送経路の違いに伴う用紙搬送装置の第1、第2搬送手段の配置例を説明する簡略的な正面図である。
【図30】(a)は、第2の実施形態等における給紙装置本体側の具体的な開閉構成を示す概略的な斜視図、(b)は、紙詰まり用紙(ジャム用紙)を除去する際に開閉ガイドを開放した状態を示す要部の簡略的な断面図である。
【図31】第5の実施形態の用紙搬送装置における第2搬送手段のベルト搬送手段に配設された変位手段周りの要部の断面図である。
【図32】第5の実施形態の用紙搬送装置における要部の制御構成を示すブロック図である。
【図33】変形例2の用紙搬送装置における第2搬送手段のベルト搬送手段に配設された変位手段周りの要部の断面図である。
【図34】変形例2の用紙搬送装置における要部の制御構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0194】
1 複写機(画像形成装置)
2 画像形成装置本体
3 給紙装置
4 原稿読取装置
5A,5B,5C,5D,5E,5F,5G 用紙搬送装置(シート搬送装置)
6 第1搬送手段(第1の搬送手段)
7 第2搬送手段(第2の搬送手段)
8,8A〜8F ベルト搬送手段(移動案内手段)
9 排紙トレイ
10 感光体ユニット
10A 感光体
11 定着装置
12 現像装置
13 転写装置
21 レジストローラ対
22 駆動機構
23 給紙モータ
43,43A 制御手段
50 底板(シート積載手段)
51 給紙トレイ(シート収容手段)
60 ピックアップローラ
61 フィードローラ(第1の搬送手段の対向対の一方)
62 リバースローラ(第1の搬送手段の対向対の他方)
67 手差しトレイ
70 搬送ガイド部材(内郭側、ガイド部材)
71 搬送ガイド部材(外郭側、ガイド部材)
72 搬送ガイド部材(縦方向搬送路の外郭側、ガイド部材)
72a ガイド面
72b 搬送ガイドリブ
73 搬送ガイド部材(給紙トレイから搬送経路への導入口形成用)
79 開閉ガイド(シート搬送装置本体)
80 ハウジング(シート搬送装置本体)
81 グリップローラ(第2の搬送手段の対向対の一方、回転搬送駆動手段、回転搬送駆動部材)
81a グリップローラの回転駆動軸
82,82A,82B,83C,82D,82E 搬送ベルト(第2の搬送手段の対向対の他方としてのベルト)
82a 搬送ベルトの搬送面
83 プーリ(第1の搬送手段の対向対の一方としてのベルト搬送手段の構成部材、第1のベルト保持回転部材)
83a,83b,83c プーリ軸(ベルト保持回転部材の下流側の軸)
84 プーリ(第1の搬送手段の対向対の一方としてのベルト搬送手段の構成部材、第2のベルト保持回転部材)
84a,84b プーリ軸
86,96 ベルト支持部材(支持部材)
91,92,97 バネ(付勢手段)
99,99’ ニップ部(挟持部)
100 外側ガイド部材
109,120 変位手段
A 第1搬送路(シート搬送経路)
B 第2搬送路(シート搬送経路)
C 第3搬送路(シート搬送経路)
D 第4搬送路(シート搬送経路)
R1 搬送路
R2 手差給紙路
R3 反転搬送路
S 用紙(シート・シート状記録媒体、被画像形成媒体)
Y 用紙幅方向(シート幅方向)
θ 突入角度
δ シフト量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送する第1の搬送手段と、
第1の搬送手段のシート搬送方向の下流側に配置され、第1の搬送手段により搬送されてきたシートを前記第1の搬送手段のシート搬送方向と異なるシート搬送方向に搬送する第2の搬送手段とを有し、
第1の搬送手段および第2の搬送手段のうちの少なくとも第2の搬送手段は、シートを挟持して搬送する挟持部を形成する挟持搬送手段であり、
第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向に配置され、第2の搬送手段の前記挟持部に向けてシートを移動・案内する移動案内手段を具備するシート搬送装置であって、
第2の搬送手段より搬送されたシートのシート搬送方向を、前記移動案内手段に対向する方向に変更可能に構成したことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
シートを搬送する第1の搬送手段と、
第1の搬送手段のシート搬送方向の下流側に配置され、第1の搬送手段により搬送されてきたシートを前記第1の搬送手段のシート搬送方向と異なるシート搬送方向に搬送する第2の搬送手段と、
第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成される第1のシート搬送経路と、
第2の搬送手段の上流から第2の搬送手段に至って形成され、第1のシート搬送経路と異なる第2のシート搬送経路と、
第1のシート搬送経路と第2のシート搬送経路とが、第2の搬送手段の上流側で合流する合流搬送経路と、
前記合流搬送経路の外郭方向に配置され、第2の搬送手段に向けてシートを移動・案内する移動案内手段とを有し、
第1の搬送手段および第2の搬送手段のうちの少なくとも第2の搬送手段は、シートを挟持して搬送する挟持部を形成する挟持搬送手段であるシート搬送装置であって、
第2の搬送手段より搬送されたシートのシート搬送方向を、前記移動案内手段に対向する方向に変更可能に構成したことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項3】
前記移動案内手段は、前記挟持部に向けてシートを搬送するベルトを備えたベルト搬送手段であり、
第2の搬送手段より搬送されたシートのシート搬送方向を、前記ベルトのシートと接触する搬送面に対向する方向に変更可能に構成したことを特徴とする請求項1または2記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記ベルト搬送手段は、第2の搬送手段における前記挟持搬送手段の対向対の一方が、前記ベルトを走行可能に保持するとともに軸支された少なくとも一対のベルト保持回転部材を有し、
前記対向対の他方は、軸支された回転搬送部材であり、
前記回転搬送部材の軸に対して、前記挟持部を形成する側の前記ベルト保持回転部材の軸を、第2の搬送手段のシート搬送方向の下流側へ偏倚させて配置したことを特徴とする請求項3記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記ベルト搬送手段は、第2の搬送手段における前記挟持搬送手段の対向対の一方が、前記ベルトを走行可能に保持するとともに軸支された少なくとも一対のベルト保持回転部材を有し、
前記挟持部を形成する側の前記ベルト保持回転部材を弾性部材で構成したことを特徴とする請求項3または4記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記ベルトを、比較的低硬度のゴムで形成したことを特徴とする請求項3ないし5の何れか一つに記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記ベルト搬送手段は、第2の搬送手段における前記挟持搬送手段の対向対の一方が、前記ベルトを走行可能に保持するとともに軸支された少なくとも一対のベルト保持回転部材を有し、
前記ベルト搬送手段は、前記シート搬送方向と直交するシート幅方向に複数に分割して構成されており、
前記シート幅方向の中央側に配置された前記ベルト搬送手段において前記挟持部を形成する側の前記ベルト保持回転部材の軸を、前記シート幅方向の両側に配置された前記ベルト搬送手段において前記挟持部を形成する側の前記ベルト保持回転部材の軸よりも、第2の搬送手段のシート搬送方向の下流側へ偏倚させて配置したことを特徴とする請求項3ないし6の何れか一つに記載のシート搬送装置。
【請求項8】
前記ベルト搬送手段は、第2の搬送手段における前記挟持搬送手段の対向対の一方が、前記ベルトを走行可能に保持するとともに軸支された少なくとも一対のベルト保持回転部材を有し、
シート種類に応じて、前記挟持部を形成する側の前記ベルト保持回転部材の軸を、第2の搬送手段のシート搬送方向の下流側へ変位させる駆動手段を備えた変位手段を有することを特徴とする請求項3記載のシート搬送装置。
【請求項9】
前記駆動手段は、ソレノイドであることを特徴とする請求項8記載のシート搬送装置。
【請求項10】
前記駆動手段は、パルス入力で回転駆動する駆動モータであることを特徴とする請求項8記載のシート搬送装置。
【請求項11】
シートは、比較的剛性の高いシートであることを特徴とする請求項1ないし10の何れか一つに記載のシート搬送装置。
【請求項12】
請求項1ないし11の何れか一つに記載のシート搬送装置を有することを特徴とする画像読取装置。
【請求項13】
請求項1ないし11の何れか一つに記載のシート搬送装置および/または請求項12記載の画像読取装置を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
前記画像形成装置は、複写機、ファクシミリ、プリンタ、印刷機およびインクジェット記録装置の何れか一つ、またはそれらの少なくとも二つを組み合わせた複合機であることを特徴とする請求項13記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2008−56487(P2008−56487A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48967(P2007−48967)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】