説明

シート搬送装置、画像読取装置および画像形成装置

【課題】簡単かつ低コストな構成で、紙種対応性に優れたシート搬送装置、画像読取装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】用紙Sを搬送する第1搬送手段6と、第1搬送手段6の用紙搬送方向の下流側に配置され、第1搬送手段6により搬送されてきた用紙Sを第1搬送手段6の用紙搬送方向と異なる用紙搬送方向に搬送する第2搬送手段7と、第1搬送手段6と第2搬送手段7との間に形成される用紙搬送経路の外郭方向に配置され、用紙Sの先端と接触した状態を保持しつつ第2搬送手段7に向けて用紙Sを移動・案内する搬送ベルト82を備えたベルト搬送手段8(移動案内手段)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート搬送装置、そのシート搬送装置を備えた複写機、ファクシミリ、プリンタ、印刷機、インクジェット記録装置、スキャナ等の画像読取装置等またはそれらのうちの少なくとも二つを組み合わせた複合機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PPC(プレイン・ペーパ・コピア:普通紙複写機)等を含む複写機、ファクシミリ、プリンタ、印刷機、インクジェット記録装置等の画像形成装置は、その装置全体の小型化を図るため、その画像が形成される媒体である被画像形成媒体あるいはシート状記録媒体(以下、「シート」という)を、シート収容手段あるいはシートを積載するシート積載手段から画像形成手段本体に搬送して供給するための搬送手段も小型化される傾向がある。以下、シートを収容するシート収容手段を代表して説明する。
【0003】
また、前記画像形成装置では、多様なシートサイズ(以下、例示的に「用紙サイズ」という)やシート種類(以下、例示的に「紙種」という)に対応した機種が一般的である。このような画像形成装置の機種では、例えば、いくつかの用紙サイズおよび紙種からなるシート(以下、例示的に「用紙」という)を、シート収容手段に予め収容しておき、ユーザが、適宜選択したシート収容手段から用紙を、または画像形成装置が自動選択した用紙を給送できるようにしている。従って、このような構成の場合には、シート収容手段が画像形成装置内のスペースをより多く占めて消費するので、搬送手段を小型化する要求がより強まる。
【0004】
これらのことから、画像形成装置内におけるシート収容手段と画像形成手段本体との間に形成される搬送路は、両者の位置関係にもよるが、その搬送方向を大きく変更して、搬送路自体の占有スペースを削減するようにしている。その結果、搬送路上には、その搬送方向を連続的かつスムーズに変更するために、湾曲した形状からなる曲率部を設けて、この曲率部の曲率半径を、画像形成装置に通常使用されるシートとしての定型記録紙が搬送できる程度の比較的小さな半径に設定している。
【0005】
このような画像形成装置におけるシート搬送装置としては、例えば図16に示すような従来技術例が挙げられる。すなわち、同図に示すように、図示しない画像形成手段本体の下側の各段に、それぞれ所定の用紙サイズや紙種の用紙Sを所定枚数積載して収容したシート収容手段101として給紙トレイ109を配置し、給紙トレイ109と前記画像形成手段本体との間には、選択された段である給紙トレイ109から略水平方向に1枚の用紙S0を引き出して上方の前記画像形成手段本体に向けて給送する用紙搬送装置(シート搬送装置)102を設けた構成としている。用紙搬送装置102には、用紙S0の進行方向を略水平方向から略上下方向(略鉛直方向でもある)の上向きに連続的に変更して案内するための湾曲ガイド部材103,104が固設されている。これら固定された湾曲ガイド部材103,104により、上記した曲率部が構成され、また用紙搬送経路(シート搬送経路)A0が形成されている。同図中のBは、下段の給紙トレイ等に収容された他の用紙サイズや紙種の用紙Sを上方に給送するための用紙搬送経路である。
なお、図16に示す用紙搬送装置102は、例えば特開2004−338923号公報(特許文献1参照)の図6および図7に示されている従来技術例を、後述する本発明の実施形態等における用紙搬送装置(シート搬送装置)と対比するために、より具体的に表したものに相当する。
【0006】
湾曲ガイド部材103には、用紙Sを案内するために略凸状に湾曲された固定ガイド面103Aが形成されている。湾曲ガイド部材104は、前記曲率部の用紙搬送経路A0を基準にしてその内側の湾曲ガイド部材103に対向して、外側に設けられており、この外側の湾曲ガイド部材104には、固定ガイド面103Aに対面して略凹状に湾曲された固定ガイド面104Aが形成されている。固定ガイド面104Aにおける用紙搬送方向の下流端には、弾性変形可能なマイラ等からなる可撓性シート状フィラー104aが後述のローラ対106のニップ部近傍に至るまで延在して設けられている。
105は、用紙搬送経路A0の上流側に設けたローラ対であり、この上流側のローラ対105(第1の搬送手段、挟持搬送手段)は、フィードローラ105Aとリバースローラ105Bとから構成されている。106は、上流側のローラ対105の下流側に設けたローラ対(第2の搬送手段、挟持搬送手段)であり、107は、シート収容手段101側に設けたピックアップローラであり、これらのうちの適宜のローラは、それぞれの位置で用紙搬送するように矢印方向に回転駆動される。給紙トレイ109と外側の湾曲ガイド部材104との間には、両者109,104間の用紙搬送経路を形成した外側のガイドとして、中間ガイド部材108が設けられている。
【0007】
しかしながら、上記のように構成した用紙搬送装置102では、厚紙等の用紙S0や封筒のような該搬送対象物自身の厚さ方向の剛性・強度が比較的高い特殊紙(以下、これらを総称して「剛性の高い用紙S0」、「高剛性の用紙S0」もしくは「腰の強い用紙S0」ともいう)を搬送させようとすると、用紙搬送経路A0の曲率部の曲率半径が小さいことにより、剛性の高い用紙S0がその曲率に従って撓みながら搬送されるときの抵抗が複写用の普通紙のような用紙と比べて格別に大きくなるため、剛性の高い用紙S0を進行させることができず、ジャムや搬送不良を生じて安定した給送動作ができないという問題があった。
【0008】
上記動作をさらに詳しく述べると、次のとおりである。すなわち、図16に示す用紙搬送装置102では、用紙S0は、用紙搬送経路A0に設けた上流側のローラ対105から送り出されて、その搬送方向の用紙S0先端側が、湾曲ガイド部材103に至ると、この湾曲ガイド部材103の固定ガイド面103Aによって、用紙S0の先端側となる前半部分はその厚さ方向に湾曲される。このため、剛性の高い用紙S0を湾曲ガイド部材103,104間に搬送するときには、この高剛性の用紙S0に対して作用する湾曲に抗する力が増大して、その搬送を妨げる抵抗力も増大することになる。従って、剛性の高い用紙S0の先端側が下流側のローラ対106に到達せずに、上流側のローラ対105だけで剛性の高い用紙S0を搬送して、高剛性の用紙S0が湾曲ガイド部材103で湾曲されると、この上流側のローラ対105による搬送力だけでは、湾曲された高剛性の用紙S0から生じる抵抗力に対して、搬送方向に進める力として不足をきたすことになる。このため、高剛性の用紙S0の中心線が搬送経路の中心線に一致しなくなる斜行などの搬送不良や、高剛性の用紙S0が湾曲ガイド部材103に引っ掛かって停止してしまう用紙ジャムが発生しやすくなる。
【0009】
他方、上記のように用紙搬送方向を所定に変更して搬送する構成の用紙搬送装置において、ガイド部材の形状によっては、その用紙搬送装置における搬送過程で、搬送される用紙の後端が所定のガイド部材に衝撃的に当接して、いわゆるハネ音等の異音が発生する問題がある。特に、搬送負荷よりも十分に大きな搬送力を用紙に付与させて、厚紙などのその厚み方向の剛性・強度が高い用紙、すなわち剛性の高い用紙を搬送する場合には、その用紙搬送過程で前記の異音がより顕著に現れる傾向がある。
すなわち、まず、図17に示すように、ピックアップローラ107からフィードローラ105Aまでの用紙搬送過程において、用紙積載面101Aにおける用紙搬送方向の下流端と、この用紙積載面101Aの下流端に隣る用紙搬送方向の下流側に位置するガイド部材との間に段差がある場合には、この段差を用紙後端が越えるときに、ハネ音が発生する。より詳細には、シート収容手段101に収容された状態での最上位の用紙S0により規定される用紙積載面101Aに隣る用紙搬送方向の下流側に位置し、給紙トレイ109に形成されているガイド面109Aが、用紙搬送経路を基準にしてこの用紙搬送経路から相対的に僅かに離れた下方の位置を占め、かつ、両者101A,109A間に所定間隙が生じている場合には、これが前記のハネ音を生じさせる段差となる。
【0010】
つまり、前記用紙搬送過程において、給紙トレイ109に残存した最上位の用紙S0の後端が用紙積載面101Aから給紙トレイ109のガイド面109Aに乗り移る際に、同図中に破線で示したように用紙S0の後端がガイド面109Aに衝撃的に当接してしまう。特に、剛性が高い用紙S0は、その平坦な形状の維持能力が高く、たとえ変形されてもその平坦な形状への弾性的な復帰能力が高いので、この高い弾性復帰能力によって、前記乗り移る際の用紙S0後端が衝撃的に当接する傾向が促進されて、前記ハネ音がより顕著になる。すなわち、高剛性の用紙搬送時における前記用紙搬送過程の際に生じるハネ音は、用紙搬送に伴い発生するその他の発生音に比べて、その音量が大きく、突発的な異音(突発音)として顕著に現れてしまう。
【0011】
また、図18に示すように、ピックアップローラ107からフィードローラ105Aまでの用紙搬送過程において、給紙トレイ109のガイド面109Aと外側のガイドとの間に段差がある場合には、この段差を用紙S0の後端S0eが越えるときにも、ハネ音が発生する。すなわち、給紙トレイ109のガイド面109Aに隣る用紙搬送方向(シート搬送方向)下流側の外側のガイド部材としての中間ガイド部材108に形成されたガイド面108Aにおける用紙搬送方向での上流端が、用紙搬送経路を基準にしてこの用紙搬送経路から相対的に僅かに離れた下方の位置を占め、かつ、両者109A,108A間に所定間隙が生じている場合には、上記と同様に、ハネ音を生じさせる段差となり、剛性が高い用紙S0の搬送時には、図17を参照して説明したと同様に、ハネ音がより顕著になる。
【0012】
さらに、図19に示すように、ターン前ローラとしてのフィードローラ105A〜ローラ対106の間で、外側のガイドを構成したガイド部材間に段差があると、この段差を、搬送される用紙S0の後端S0eが、越えるときにもハネ音が発生する。すなわち、用紙搬送経路A0を形成したガイド部材のうち、中間ガイド部材108に形成されたガイド面108Aにおける用紙搬送方向での下流端よりも、湾曲ガイド部材104における用紙搬送方向での上流端が、用紙搬送経路を基準にしてこの用紙搬送経路から相対的に僅かに離れた下方の位置を占め、かつ、両者108A,104間に所定間隙が生じている場合には、図17および図18を参照して説明したと同様に、これがハネ音を生じさせる段差となり、剛性が高い用紙S0の搬送時には、同様に、より顕著なハネ音が生じる。
【0013】
結局、用紙搬送経路を形成したガイド部材のうち、外郭側に配置されたいくつかのガイド部材において、互いに用紙搬送方向に隣接した一方のガイド部材が形成したガイド面における用紙搬送方向での下流端よりも、これに後続した他方のガイド部材が形成したガイド面における用紙搬送方向での上流端が、用紙搬送経路から離れる方向に所定距離変位して位置していると、その用紙搬送の進展に伴い、用紙後端が一方のガイド面を通過して該ガイド面の下流端から外れた際には、用紙後端が前記の離れる方向に急速に移動して、ガイド部材の上流端に衝突し、これによって衝撃的なハネ音が生じてしまい、用紙搬送過程での用紙の厚さ方向の変形状況や用紙自体の剛性強度によっては、用紙後端の衝撃は高くなることで、ハネ音の音量が大きくなる。
【0014】
他方、図20に示すように、フィードローラ105Aとローラ対106との間で、外側のガイド部材である湾曲ガイド部材104が、符号Xb〜Xdを付した状態のように、用紙Sを湾曲等させながら、用紙Sをターンさせる、つまり用紙Sの先端よりも後端側の部分を湾曲させながら、用紙Sの先端が進む向きを所定に転回させるガイド形状の場合、搬送された用紙が符号Xaを付した状態になったとき、つまり用紙Sの先端が湾曲したガイド面A0に当たったときに、用紙搬送負荷が他の符号Xb〜Xdを付した状態に比べて、大きくなる。特に、剛性が高い用紙搬送時には、符号Xa〜Xdを付した用紙搬送状態の何れでも、剛性が普通の用紙に比べて、用紙搬送負荷が大きくなるが、高剛性の用紙Sの先端が湾曲したガイド面A0に当接したとき(Xa)に、同様に最も大きくなる。
【0015】
そこで、上記特開2004−338923号公報(特許文献1)では、第1の搬送手段から送り出されたシートを、その搬送方向下流側であって略垂直上方に位置する第2の搬送手段まで搬送する給紙装置において、第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に一対の直線状ガイド部材を設け、この直線状ガイド部材の案内によってシートを搬送する給紙装置が提案されている。この給紙装置によれば、ガイド部材を湾曲形状ではなく直線形状の直線状ガイド部材としたので、搬送負荷を低く抑えること、つまり負荷の急激な上昇を抑制でき、紙詰まり、斜行等の搬送不良を防止できるとしている。
換言すれば、上記給紙装置によれば、搬送されるシート上の変形箇所を、湾曲ガイド部材による1箇所の湾曲に集中させずに、その搬送方向における直線状ガイド部材の前後端付近である2箇所での湾曲に分散でき、しかも、直線状ガイド部材を略中間角度の斜め姿勢に設置して、これらの2箇所における湾曲の程度を略均等な同程度にしているので、その搬送時には搬送負荷の急激な上昇を抑制できるとしている。すなわち、シートがその進行方向を変えるため、湾曲される箇所は、上流側のローラ対から直線状ガイド部材に受け渡す箇所と、直線状ガイド部材から下流側のローラ対に受け渡す箇所との2箇所になり、少なくとも、それぞれの湾曲の程度が小さくなり、これに伴い各箇所で湾曲させたことによって生じる抵抗力を低く保てるので、搬送負荷が急激に上昇することを回避できるというものである。
【0016】
上述した図16に示した従来の用紙搬送装置および上記特開2004−338923号公報(特許文献1)と概略同様に構成された第1,2の搬送手段を有して、第1の搬送手段と第2の搬送手段の間に、第2の搬送手段に至る傾斜面を形成した反転ガイド部材を設け、この反転ガイド部材は、第2の搬送手段に向けて可動するように構成された給紙装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
この給紙装置によれば、反転ガイド部材に用紙後端が接触するときには、用紙後端が接する方向と概略同様な方向に反転ガイド部材が変位して、この変位によって、用紙後端が接触した際のショックを吸収できるので、弾き音を低減できるとしている。
【0017】
また、シートを収容した複数のシート収容手段と、各シート収容手段にそれぞれ個別に設けた搬送路およびシート給送手段とを有し、これらの搬送路の末端を1つの共通搬送路に合流させた構成にするとともに、少なくとも、高剛性のシートを収容したシート収容手段に設けた搬送路は、その末端に設けた前記共通搬送路に合流する際の第1の曲率部の曲率半径を、他の搬送路が合流する際の他の曲率部の曲率半径よりも大きく設定したシート給送装置が知られている(例えば、特許文献3参照)。
このシート給送装置によれば、高剛性のシートは、その搬送時に、搬送路上を進んで曲率半径が大きい第1の曲率部を通過する際には、普通のシートと同程度に湾曲されることなく、普通シートに比べて、十分に緩やかに湾曲されて進み続けるので、その搬送時の抵抗が少なくでき、シートの停滞や遅延を生じることなく共通搬送路に到達させ搬送できるとしている。
【0018】
また、反転ローラ対と、この反転ローラ対により送り込まれたシートを搬送・ガイドするための反転搬送路とを有し、反転搬送路は、シートの搬送方向を変更するための方向変更部位を有し、この方向変更部位における内側に回転可能なローラをシート搬送方向に見て直角方向に配設することにより、反転搬送路に送り込まれたシートを前記ローラに当接させながら送り出すようにした画像形成装置に備えたシート反転手段が知られている(例えば、特許文献4参照)。
このシート反転手段によれば、送り込まれたシートは前記の方向変更部位でその内側の接触部位が、ローラに必ず接することになり、しかもこのローラがシートの搬送方向の進行に伴い従動回転するので、従来のガイド板に比べて、搬送抵抗を軽減でき、つまり固定されたガイド部材と移動するシートとの間に生じる摩擦抵抗を解消して、前記の方向変更部位での搬送方向を変更するガイドができるとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、図16〜図20に示した従来の用紙搬送装置および特許文献1記載のシート搬送装置では、所詮、搬送するシートのガイド用に固定部材を配置した構成であるため、移動体である搬送されるシートと、固定されたガイド部材との間の速度差は解消されず、ガイド部材の形状や設置姿勢に拘わりなく、両者の間には必ずシートの搬送を妨げる方向に作用する抵抗が生じてしまい、搬送負荷となるという問題点がある。
つまり、前記従来の構成では、上記の搬送不良やジャムを回避する効果が不十分であり、直線状のガイド部材では、たとえ搬送負荷の急激な上昇を抑制できても、搬送負荷を生じることには変わりがないといえる。特に、厚紙や封筒等の剛性の高い用紙(シート)を搬送する際には、上記の搬送不良やジャムおよび用紙後端のハネ音が顕著となってしまう。
【0020】
特許文献2記載の反転ガイド部材を設けた構成では、たとえ用紙後端が接する方向に変位可能であるという意味で可動部材であるとしても、該用紙の向きを変更するガイドとしては固定ガイド部材であり、同様に、その向きを変更してガイドする際には、用紙と反転ガイド部材との間での相対速度差が解消されておらず、搬送負荷が生じている。特に、厚紙や封筒等の剛性の高い用紙(シート)を搬送する際には、上記の搬送不良やジャムおよび用紙後端のハネ音が顕著となってしまう。
【0021】
また、特許文献3記載のように、曲率半径を所定に大きく設定した専用の搬送路を設けた構成でも、この専用の搬送路上を進むシートが緩やかに湾曲されて、シートが搬送路から受ける搬送抵抗が少なくなるとしても、同様に搬送負荷が生じることには変わりない。特に、厚紙や封筒等の剛性の高い用紙(シート)を搬送する際には、上記の搬送不良やジャムが顕著となってしまう。
【0022】
また、特許文献4記載のように、ローラなどの可動部材を、搬送路の方向変更部位における内側の搬送路部分の所定箇所に設けた構成では、その搬送過程において、内側のローラによって、シートの前後端の間の中間部分が支持された状態での両者間の摩擦抵抗を特に有効的に低減できても、このような状態になる前後の状態について、つまりその方向変更部位における外側の搬送路部分とシートとが接した場合の、搬送負荷についての配慮が欠けており、またその搬送過程でのシート先端やシート後端の挙動についても、特に言及されていない。特に、厚紙や封筒等の剛性の高い用紙(シート)を搬送する際には、上記の搬送不良やジャムおよび用紙後端のハネ音が顕著となってしまう。
【0023】
そこで、本発明は、省スペースでありながら、簡単かつ低コストな構成で、シート、特には比較的剛性の高いシートを搬送する際の搬送不良やジャム発生等の問題点を解決したシート搬送装置、画像読取装置およびそれを有する画像形成装置を提供することを第1の目的とする。
第1の目的に加えて、または独立して、シート、特には比較的剛性の高いシートを搬送する際のシート後端のハネ音等の発生の問題点を解決したシート搬送装置、画像読取装置およびそれを有する画像形成装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明者らは、上述の課題を解決するとともに上述の目的を達成するために、後述の実施形態や実施例等に記載の試験等を行い鋭意研究を重ねる中で、シート種類を問わず、特には厚紙や封筒等の比較的剛性の高いシートを搬送不良やジャムを発生することなく搬送できる簡単な構成として、移動案内手段(ムービングガイド)という簡単な構成を着想するに至り、その具体的手段として最も構成が簡単なベルト搬送手段を種々に工夫し、実用化するに至った。本発明は、このような試験で裏付けられた結果を基本にしてなされたものである。
【0025】
上述した課題を解決するとともに上述した目的を達成するために、請求項ごとの発明では、以下のような特徴ある手段・発明特定事項(以下、「構成」という)を採っている。
請求項1記載の発明は、シートを搬送する第1の搬送手段と、第1の搬送手段のシート搬送方向の下流側に配置され、第1の搬送手段により搬送されてきたシートを前記第1の搬送手段のシート搬送方向と異なるシート搬送方向に搬送する第2の搬送手段と、第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向に配置され、シートの先端と接触した状態を保持しつつ第2の搬送手段に向けてシートを移動・案内する移動案内手段とを有することを特徴とするシート搬送装置である。
【0026】
請求項2記載の発明は、シートを搬送する第1の搬送手段と、第1の搬送手段のシート搬送方向の下流側に配置され、第1の搬送手段により搬送されてきたシートを前記第1の搬送手段のシート搬送方向と異なるシート搬送方向に搬送する第2の搬送手段と、第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成される第1のシート搬送経路と、第2の搬送手段の上流から第2の搬送手段に至って形成され、第1のシート搬送経路と異なる第2のシート搬送経路と、第1のシート搬送経路と第2のシート搬送経路とが、第2の搬送手段の上流側で合流する合流搬送経路と、前記合流搬送経路の外郭方向に配置され、シートの先端と接触した状態を保持しつつ第2の搬送手段に向けてシートを移動・案内する移動案内手段とを有することを特徴とするシート搬送装置である。
【0027】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のシート搬送装置において、第1の搬送手段および第2の搬送手段のうちの少なくとも第2の搬送手段は、シートを挟持して搬送する挟持部を形成する挟持搬送手段であり、前記移動案内手段は、第2の搬送手段の前記挟持部にシートの先端を移動・案内することを特徴とする。
【0028】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の何れか一つに記載のシート搬送装置において、前記移動案内手段は、シートの先端と接触した状態を保持しつつ第2の搬送手段またはその挟持部に向けてシートを搬送するベルトを備えたベルト搬送手段であることを特徴とする。
【0029】
請求項5記載の発明は、請求項4記載のシート搬送装置において、前記ベルト搬送手段は、前記ベルトと、該ベルトを走行可能に保持する少なくとも一対のベルト保持回転部材とを有し、前記ベルト搬送手段は、シートの先端が、前記ベルト保持回転部材に保持されている該ベルト部分を除く該ベルトの搬送面に接触するように配置されていることを特徴とする。
【0030】
請求項6記載の発明は、請求項4記載のシート搬送装置において、前記ベルト搬送手段は、シートの先端部が、前記ベルトの搬送面に対して鋭角の突入角度をもって進入するように配置されていることを特徴とする。
【0031】
請求項7記載の発明は、請求項4ないし6の何れか一つに記載のシート搬送装置において、前記第1の搬送手段のシート搬送方向と直交するシート幅方向における前記ベルトの幅が、搬送されるシート幅と略同じであることを特徴とする。
【0032】
請求項8記載の発明は、請求項4ないし7の何れか一つに記載のシート搬送装置において、前記ベルトに接触する当接部材を有し、前記当接部材は、搬送したシートの後端が前記ベルトの搬送面に接する箇所と別の箇所に配置されていることを特徴とする。
【0033】
請求項9記載の発明は、請求項4ないし8の何れか一つに記載のシート搬送装置において、第1の搬送手段から前記ベルト搬送手段に至るまでの間に、前記シート搬送経路または第1のシート搬送経路を形成し、かつ、シートの先端を前記ベルトの搬送面に案内する少なくとも一つのガイド部材を有することを特徴とする。
【0034】
請求項10記載の発明は、請求項9記載のシート搬送装置において、前記シート搬送経路または第1のシート搬送経路の外郭方向に配置される前記ガイド部材のガイド面は、前記シート搬送経路または第1のシート搬送経路上を搬送されるシートを略ストレートに進ませる形状に形成されていることを特徴とする。
【0035】
請求項11記載の発明は、請求項1ないし10の何れか一つに記載のシート搬送装置において、第1の搬送手段の上流側に配置され、シートを第1の搬送手段に給送する給送回転部材と、該給送回転部材から第1の搬送手段に至るまでのシート搬送経路を形成する第1のガイド部材とを有し、前記シート搬送経路の外郭方向の第1のガイド部材のガイド面は、該シート搬送経路上を搬送されるシートを略ストレートに進ませる形状に形成されていることを特徴とする。
【0036】
請求項12記載の発明は、請求項11記載のシート搬送装置において、シートを積載して上下に移動可能であり、かつ、積載したシートのうちの最上のシートを前記給送回転部材に接するように移動可能なシート積載部材を有し、前記シート積載部材の移動により、前記給送回転部材に接した最上のシート面と、少なくとも第1の搬送手段に至るまでの搬送中のシート面とが、略同一平面に属するように設定されていることを特徴とする。
【0037】
請求項13記載の発明は、請求項4ないし12の何れか一つに記載のシート搬送装置において、第1の搬送手段は、シートを1枚に分離して第2の搬送手段に向けて搬送するための、シート給送回転部材および該シート給送回転部材に対向して接した分離部材を備えたシート分離機構を有し、前記シート分離機構から前記ベルト搬送手段に至るまでのシート搬送経路を形成する少なくとも一つの第2のガイド部材を備え、前記シート給送回転部材および前記分離部材の接点によって規定される平面と、前記ガイド部材のうちの前記シート搬送経路の外郭方向に配置された第2のガイド部材のガイド面とは、略平行な関係に設定されていることを特徴とする。
【0038】
請求項14記載の発明は、請求項4ないし13の何れか一つに記載のシート搬送装置において、シートを第1の搬送手段に送る給送回転部材を有し、第1の搬送手段は、シートを1枚に分離して第2の搬送手段に向けて搬送するための、シート給送回転部材および該シート給送回転部材に対向して接した分離部材を備えたシート分離機構を有し、前記給送回転部材から前記シート分離機構に至るまでのシート搬送経路を形成する第3のガイド部材を備え、前記給送回転部材および前記シート給送回転部材によって規定される平面と、第3のガイド部材のうちの前記シート搬送経路の外郭方向に配置された該ガイド部材のガイド面とは、略平行な関係に設定されていることを特徴とする。
【0039】
請求項15記載の発明は、請求項1ないし14の何れか一つに記載のシート搬送装置において、第1の搬送手段から第2の搬送手段に至るまでのシート搬送経路を形成する第4のガイド部材を有し、前記シート搬送経路の内郭方向に配置された第4のガイド部材は、第1の搬送手段と第2の搬送手段とのそれぞれにおける内郭方向に配置された対向対同士の接線よりも、内郭方向側に設けられていることを特徴とする。
【0040】
請求項16記載の発明は、請求項1ないし15の何れか一つに記載のシート搬送装置において、シートは、比較的剛性の高いシートであることを特徴とする。
【0041】
請求項17記載の発明は、請求項4ないし16の何れか一つに記載のシート搬送装置を複数具備するシート搬送装置であって、前記複数のシート搬送装置の少なくとも一つが、前記ベルト搬送手段を有することを特徴とする。
【0042】
請求項18記載の発明は、請求項1ないし17の何れか一つに記載のシート搬送装置を有することを特徴とする画像読取装置である。
【0043】
請求項19記載の発明は、請求項1ないし17の何れか一つに記載のシート搬送装置および/または請求項18記載の画像読取装置を有することを特徴とする画像形成装置である。
【0044】
請求項20記載の発明は、請求項19記載の画像形成装置において、前記画像形成装置は、複写機、ファクシミリ、プリンタ、印刷機およびインクジェット記録装置の何れか一つ、またはそれらの少なくとも二つを組み合わせた複合機であることを特徴とする。
【0045】
請求項21記載の発明は、シートを挟持搬送する第1の搬送手段と、第1の搬送手段のシート搬送方向の下流側に配置され、第1の搬送手段により搬送されてきたシートを前記第1の搬送手段のシート搬送方向と異なるシート搬送方向に挟持搬送する第2の搬送手段と、第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向に配置され、第2の搬送手段に向けてシートを移動・案内する移動案内手段と、第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向に配置され、第1の搬送手段から前記移動案内手段に至るまでのシート搬送経路を形成する第2のガイド部材と、第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の内郭方向に配置され、第1の搬送手段から第2の搬送手段に至るまでのシート搬送経路を形成する第4のガイド部材とを有し、第4のガイド部材の少なくとも一部は、第1の搬送手段の挟持部中心と第2の搬送手段の挟持部中心とを結んだ線分より外側に設けられていることを特徴とするシート搬送装置である。
【0046】
請求項22記載の発明は、シートを搬送する第1の搬送手段と、第1の搬送手段のシート搬送方向の下流側に配置され、第1の搬送手段により搬送されてきたシートを前記第1の搬送手段のシート搬送方向と異なるシート搬送方向に搬送する第2の搬送手段と、第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向に配置され、第2の搬送手段に向けてシートを移動・案内する移動案内手段と、第1の搬送手段から第2の搬送手段に至るまでのシート搬送経路の内郭を形成する第4のガイド部材とを有し、第4のガイド部材は、第1の搬送手段と第2の搬送手段とのそれぞれにおける内郭方向に配置された対向対同士の接線よりも、内郭方向側に設けられていることを特徴とするシート搬送装置である。
【0047】
請求項23記載の発明は、少なくとも1枚が256〜300g/mのシートを搬送するシート搬送装置において、シートを搬送する第1の搬送手段と、第1の搬送手段のシート搬送方向の下流側に配置され、第1の搬送手段により搬送されてきたシートを前記第1の搬送手段のシート搬送方向と異なるシート搬送方向に搬送する第2の搬送手段と、第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向に配置され、第2の搬送手段に向けてシートを移動・案内するベルトを備えたベルト搬送手段とを有し、前記ベルト搬送手段は、シートの先端部が、前記ベルトの搬送面に対して鋭角の突入角度をもって進入するように配置されていることを特徴とするシート搬送装置である。
【0048】
請求項24記載の発明は、少なくとも1枚が256〜300g/mのシートを搬送する画像形成装置において、シートを収容する給紙部と、原稿の画像を読み取る原稿読取部と、前記給紙部の上に配置されるとともに、前記原稿読取部で読み取られた画像を前記給紙部から搬送されたシートに形成する画像形成部と、前記画像形成部と前記原稿読取部との間であって、前記画像形成部から搬送されたシートを排出するシート排出部と、前記給紙部から前記画像形成部へシートを搬送するシート搬送手段とを有し、前記シート搬送手段は、前記給紙部から1枚に分離されたシートを装置本体一側に向けて搬送する第1の搬送手段と、第1の搬送手段のシート搬送方向下流側に配置され、第1の搬送手段により搬送されてきたシートを前記第1の搬送手段のシート搬送方向と異なるシート搬送方向に搬送する第2の搬送手段と、第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向に配置され、第2の搬送手段に向けてシートを移動・案内するベルトを備えたベルト搬送手段とで構成され、前記ベルト搬送手段は、シートの先端部が、前記ベルトの搬送面に対して鋭角の突入角度をもって進入するように配置されていることを特徴とする画像形成装置である。
【0049】
請求項25記載の発明は、シートを搬送する第1の搬送手段と、第1の搬送手段のシート搬送方向の下流側に配置され、第1の搬送手段により搬送されてきたシートを前記第1の搬送手段のシート搬送方向と異なるシート搬送方向に挟持搬送する第2の搬送手段と、第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向に配置され、第2の搬送手段に向けてシートを移動・案内する移動案内手段と、第1の搬送手段と移動案内手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向に配置され前記移動案内手段へシートを案内する第2のガイド部材とを有し、前記移動案内手段は、第2の搬送手段に向けてシートを搬送するベルトを備えたベルト搬送手段であって、前記ベルト搬送手段は、前記ベルトと、該ベルトを走行可能に保持するベルト保持回転部材と、第2の搬送手段における外郭の回転部材とを有し、前記ベルトを前記ベルト保持回転部材と前記回転部材とに掛け回して構成し、前記ベルト保持回転部材は、第1の搬送手段の外郭に設けられる回転部材の軸中心より上方であって、第2のガイド部材の下流端より下方(第2の搬送手段のシート搬送方向の上流側)に位置することを特徴とするシート搬送装置である。
【0050】
請求項26記載の発明は、シートを搬送する第1の搬送手段と、第1の搬送手段のシート搬送方向の下流側に配置され、第1の搬送手段により搬送されてきたシートを前記第1の搬送手段のシート搬送方向と異なるシート搬送方向に搬送する第2の搬送手段と、第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向に配置され、第2の搬送手段に向けてシートを移動・案内する移動案内手段とを有し、前記移動案内手段は、第2の搬送手段に向けてシートを搬送するベルトを備えたベルト搬送手段であって、前記ベルト搬送手段は、前記ベルトと、該ベルトを走行可能に保持するベルト保持回転部材と、第2の搬送手段における外郭の回転部材とを有し、前記ベルトを前記ベルト保持回転部材と前記回転部材とに掛け回して構成し、前記ベルト搬送手段は、シートの先端が、前記ベルト保持回転部材に保持されている該ベルト部分を除く該ベルトの搬送面に接触するように配置されていることを特徴とするシート搬送装置である。
【0051】
請求項27記載の発明は、シートを搬送する第1の搬送手段と、第1の搬送手段のシート搬送方向の下流側に配置され、第1の搬送手段により搬送されてきたシートを前記第1の搬送手段のシート搬送方向と異なるシート搬送方向に搬送する第2の搬送手段と、第1の搬送手段と移動案内手段との間に形成されるシート搬送経路に配置され第2の搬送手段へシートを案内する少なくとも一つのガイド部材と、第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向に配置され、第2の搬送手段に向けてシートを移動・案内する移動案内手段とを有し、第1の搬送手段によるシート搬送力と前記移動案内手段によるシート搬送力との和が、前記少なくとも一つのガイド部材におけるシート搬送負荷の総和より大きいことを特徴とするシート搬送装置である。
【0052】
本発明には、以下の技術的構成に係る発明が含まれている。
すなわち、第1の技術的構成に記載の発明は、用紙を搬送するため、第1搬送手段とこの第1搬送手段の下流に第2搬送手段とを有し、前記第1搬送手段の搬送方向と第2搬送手段の搬送方向とが異なる用紙搬送装置において、少なくとも第1搬送手段と第2搬送手段のいずれかは、用紙を挟持搬送する搬送手段とされ、この挟持搬送手段である対向対の一方は、ベルト搬送手段であり、かつ、このベルト搬送手段は、第1搬送手段と第2搬送手段との間に形成される搬送経路の外郭方向に配置されている。
【0053】
第2の技術的構成に記載の発明は、用紙を搬送するため、第1搬送手段とこの第1搬送手段の下流に第2搬送手段とを有し、前記第1搬送手段の搬送方向と第2搬送手段の搬送方向とが異なる用紙搬送装置において、第1搬送手段と第2搬送手段の間に形成される第1搬送路と、少なくとも、この第1搬送路と異なる、第2搬送手段の上流から第2搬送手段に至る第2搬送路とを有し、第1搬送路と第2搬送路とが、第2搬送手段の上流で合流するよう構成されており、前記第2搬送手段は、用紙を挟持搬送する搬送手段とされ、この挟持搬送手段である対向対の一方は、ベルト搬送手段であり、かつ、このベルト搬送手段は、前記第1、第2搬送路の合流部の外郭方向に配置されている。
【0054】
第3の技術的構成に記載の発明は、第1または第2の技術的構成に記載の用紙搬送装置において、第1搬送手段からベルト搬送手段に至るまでの用紙搬送経路を形成した用紙ガイド部材を有し、搬送路外郭方向の用紙ガイドはその形状が、該搬送経路上を搬送される用紙を直進させてほぼストレートに進ませる形状に形成した。
【0055】
第4の技術的構成に記載の発明は、第1ないし第3の技術的構成の何れか一つに記載の用紙搬送装置において、第1搬送手段は、少なくとも、1枚の用紙を分離して該用紙を第2搬送手段に向けて搬送するようにした給紙分離機構である。
【0056】
第5の技術的構成に記載の発明は、第1ないし第4の技術的構成の何れか一つに記載の用紙搬送装置において、第1搬送手段の上流には、所定に収納した用紙を、該第1搬送手段に送るためのピックアップローラと、このピックアップローラから第1搬送手段に至るまでの用紙搬送経路を形成した用紙ガイド部材とを有し、搬送路外郭方向の用紙ガイド部材はその形状が、該搬送経路上を搬送される用紙をほぼストレートに進ませる形状に形成した。
【0057】
第6の技術的構成に記載の発明は、第5の技術的構成に記載の用紙搬送装置において、用紙を積載して上下に移動可能なトレイ底板が設けられ、このトレイ底板は、積載した用紙のうち最上位の用紙を前記ピックアップローラに接するように移動され、該ローラに接した積載中の最上位の用紙面と、少なくとも、第1搬送手段に至るまでの搬送中の用紙面とが、ほぼ同一平面に属するようにしている。
【0058】
第7の技術的構成に記載の発明は、第4ないし第6の技術的構成の何れか一つに記載の用紙搬送装置において、給紙分離機構は、フィードローラと、このフィードローラに対向して接した分離部材とを有し、これらのフィードローラおよび分離部材の接点によって規定される平面と、該給紙分離機構から用紙がベルト搬送手段に達するまでの用紙搬送経路を形成した用紙ガイド部材のうち、搬送路外郭方向の用紙ガイドが形成したガイド面とは、略平行な関係に設定されている。
【0059】
第8の技術的構成に記載の発明は、第5ないし第7の技術的構成の何れか一つに記載の用紙搬送装置において、ピックアップローラとフィードローラとによって規定される平面と、前記ピックアップローラから用紙が給紙分離機構に達するまでの用紙搬送経路を形成した用紙ガイド部材のうち、搬送路外郭方向の用紙ガイドが形成したガイド面とは、略平行な関係に設定されている。
【0060】
第9の技術的構成に記載の発明は、第1ないし第8の技術的構成の何れか一つに記載の用紙搬送装置において、第1搬送手段から第2搬送手段に至るまでの用紙搬送経路を形成した用紙ガイド部材を有し、搬送路内郭方向の用紙ガイド部材は、第1搬送手段と第2搬送手段とのそれぞれにおける内郭方向に配置された対向対同士の接線よりも、内郭方向側に設けられている。
【0061】
第10の技術的構成に記載の発明は、第1ないし第9の技術的構成の何れか一つに記載の用紙搬送装置において、ベルト搬送手段は、その用紙搬送直交方向におけるベルト幅が、搬送する用紙幅とほぼ同じ幅を有する。
【0062】
第11の技術的構成に記載の発明は、第1ないし第10の技術的構成の何れか一つに記載の用紙搬送装置において、ベルト搬送手段は、搬送した用紙の後端がベルト搬送面に接しても、この後端が接したベルト箇所の変形を許容できる他の箇所に、当接部材を配置している。
【0063】
第12の技術的構成に記載の発明は、第11の技術的構成に記載の用紙搬送装置において、ベルト搬送手段は、その搬送面側に、前記当接部材を配置しない。
【0064】
第13の技術的構成に記載の発明は、自動原稿送り装置が、第1ないし第12の何れか一つに記載の用紙搬送装置を有し、この用紙搬送装置が搬送する用紙は、原稿である。
【0065】
第14の技術的構成に記載の発明は、画像形成装置が、第1ないし第12の何れか一つに記載の用紙搬送装置か、第13の技術的構成に記載の自動原稿送り装置か、の何れか一方、または、両方を有した。
【0066】
第15の技術的構成に記載の発明は、第14の技術的構成に記載の画像形成装置において、画像形成装置は、複写機か、ファクシミリか、プリンタか、スキャナか、これらのいくつかを組み合わせた複合機か、の何れかである。
【発明の効果】
【0067】
本発明によれば、上記課題を解決して新規なシート搬送装置、画像読取装置および画像形成装置を提供することができる。
すなわち、本発明によれば、第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向に配置され、シートの先端と接触した状態を保持しつつ第2の搬送手段に向けてシートを移動・案内する移動案内手段とを有する前記構成により、省スペースでありながら、簡単かつ低コストな構成で、シート種類(紙種)対応性に優れたシート搬送装置、該シート搬送装置を備えた画像読取装置、シート搬送装置および/または画像読取装置を備えた画像形成装置を提供することができる。
【0068】
以下、請求項記載の発明ごとに特有の効果を挙げれば、次のとおりである。
請求項1、16記載の発明によれば、第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向に配置され、シートの先端と接触した状態を保持しつつ第2の搬送手段に向けてシートを移動・案内する移動案内手段を有することにより、例えば厚紙などのような比較的剛性の高いシートを安定して搬送でき、シート種類(紙種)対応性に優れるシート搬送装置を実現し提供できる。
【0069】
請求項2,16記載の発明によれば、前記構成により、第1のシート搬送経路と第2のシート搬送経路とが第2の搬送手段の上流側で合流する合流搬送経路を有するシート搬送装置においても、例えば厚紙などのような比較的剛性の高いシートを安定して搬送でき、シート種類(紙種)対応性に優れるとともに、少なくとも2つ以上の複数のシート搬送経路(搬送路)を有したシート搬送装置に対応でき、機種対応性にも優れたシート搬送装置を実現し提供できる。
【0070】
請求項3,16記載の発明によれば、第1の搬送手段および第2の搬送手段のうちの少なくとも第2の搬送手段は、シートを挟持して搬送する挟持部を形成する挟持搬送手段であり、移動案内手段は、第2の搬送手段の挟持部にシートの先端を移動・案内するので、請求項1または2記載の発明の効果を安定して得られる。
【0071】
請求項4,16記載の発明によれば、移動案内手段は、シートの先端と接触した状態を保持しつつ第2の搬送手段またはその挟持部に向けてシートを搬送するベルトを備えたベルト搬送手段であるので、移動案内手段として最も構成が簡単で安価に済むシート搬送装置を実現し提供できる。
【0072】
請求項5,16記載の発明によれば、ベルト搬送手段は、シートの先端が、ベルト保持回転部材に保持されているベルト部分を除くベルトの搬送面に接触するように配置されているので、ベルトの適度な弾性変位・変形により、シートの先端と接触した状態を保持しつつシートを安定して搬送できる。
【0073】
請求項6,16記載の発明によれば、ベルト搬送手段は、シートの先端部が、ベルトの搬送面に対して鋭角の突入角度をもって進入するように配置されているので、シートの先端部の挙動に拘わらず、シートの先端部をベルトの搬送面に安定して確実に接触させることができる。
【0074】
請求項7,16記載の発明によれば、第1の搬送手段のシート搬送方向と直交するシート幅方向におけるベルトの幅が、搬送されるシート幅と略同じであることにより、ベルト搬送手段に対してシートは、必ずそのシート幅全域に渡って接することが可能となり、両者間の接触面積を可能な限り最大限に確保できる。これに伴い、ベルト搬送手段からシートに供給可能なシート搬送方向に進める推進力も、可能な限りの最大限の力を伝達することが可能となるので、シート搬送装置として搬送不良やジャム等を回避して、適切なシート搬送動作をより確実にかつ安定して行うことができる。
【0075】
請求項8,16記載の発明によれば、当接部材は、搬送したシートの後端がベルトの搬送面に接する箇所と別の箇所に配置されているので、搬送中のシートの後端がベルトの搬送面に接しても、そのシートの後端が接したベルト箇所の弾性変形を許容できるようになるので、シートの後端がベルトに衝突するように接しても、シートの後端が接したベルト箇所の変形を当接部材が妨げることなく、該衝突による衝撃をベルトに十分に変形させて吸収・緩和でき、発生する衝撃的な発生音(突発的なハネ音)を抑制できる。
【0076】
請求項9,16記載の発明によれば、第1の搬送手段から前記ベルト搬送手段に至るまでの間に、シート搬送経路または第1のシート搬送経路を形成し、かつ、シートの先端をベルトの搬送面に案内する少なくとも一つのガイド部材を有することにより、シート種類(紙種)に関わらず、シートの先端をベルトの搬送面に確実に誘導し案内することができる。
【0077】
請求項10,16記載の発明によれば、シート搬送経路または第1のシート搬送経路の外郭方向に配置されるガイド部材のガイド面は、シート搬送経路または第1のシート搬送経路上を搬送されるシートを略ストレートに進ませる形状に形成されているので、シートの先端が、第1搬送手段からベルト搬送手段までの間でのシート搬送中におけるガイド部材から受ける搬送負荷を低減することが可能となり、厚紙等の比較的剛性の高いシート搬送時におけるハネ音などの異音発生を抑制してシート搬送音を低減することが可能となる。すなわち、前記構成により、シート搬送経路上では、このシート搬送経路の外郭方向のガイド部材によってシートがそのシート厚さ方向にシートの進行方向を変更されたり変形されたりせずに済み、ガイド部材から進行中のシートが受ける抵抗は、そのシートを略ストレートに直進させる進路を保持するために必要な最小限のものに留めることができる。他方、前記の両手段間のシート搬送経路または第1のシート搬送経路の外郭方向のガイド部材は、シートを略ストレートに進ませる形状に形成されているので、異音発生の要因となる段差を生起させずに済む。
【0078】
請求項11,16記載の発明によれば、例えばシート分離機構でのシート搬送による負荷をより一層低減でき、厚紙等の比較的剛性の高いシート搬送時におけるハネ音などの異音発生を抑制して、シート搬送音をより一層効果的に低減することが可能となる。すなわち、給送回転部材から第1の搬送手段に至るまでのシート搬送経路を形成した第1のガイド部材のうち、シート搬送経路の外郭方向の第1のガイド部材のガイド面は、該シート搬送経路上を搬送されるシートを直進させて略ストレートに進ませる形状に形成した場合に、該シート搬送経路上ではそのシート搬送経路の外郭方向の第1のガイド部材によって、シートがそのシート厚さ方向にシートの進行方向を変更されたり変形されたりせずに済み、該ガイド部材のガイド面から進行中のシートが受ける抵抗は、該シートを略ストレートに直進させる進路を保持するために必要な最小限のものに留めることができる。他方、給送回転部材および第1の搬送手段間のシート搬送経路を形成したシート搬送経路の外郭方向の第1のガイド部材のガイド面は、シートを略ストレートに進ませる形状に形成しているので、異音発生の要因となる段差を生起させずに済む。
【0079】
請求項12,16記載の発明によれば、例えばシート分離機構でのシート搬送による負荷を、請求項11の構成に比べて、より一層効果的に低減でき、厚紙等の比較的剛性の高いシート搬送時におけるハネ音などの異音発生を抑制して、シート搬送音をより一層効果的に低減することが可能となる。すなわち、請求項11の構成に加えて、シート積載部材の移動により、給送回転部材に接した最上のシート面と、少なくとも第1の搬送手段に至るまでの搬送中のシート面とが、略同一平面に属するように設定されているので、給送回転部材に接した箇所から発して第1の搬送手段に至るまでのシート搬送経路を進行中のシートは、シート搬送経路の外郭方向のガイド部材によって、そのシート厚さ方向にシートの進行方向を変更されたり変形されたりせずに済み、該ガイド部材から前記のシート搬送経路を進行中のシートが受ける抵抗は、必要な最小限のものに留まるだけでなく、この移動進行中のシートの後半が、シート積載部材上に積載されて残存したシートから受ける抵抗も、最小限なものに留めることができ、これらによって、第1の搬送手段に至るまでのシート搬送過程でシートが受ける抵抗を最小化できる。他方、前記給送回転部材からベルト搬送手段までの間に形成されたシート搬送経路の外郭方向のガイド部材に、異音発生の要因となる段差を生起させずに済む。
【0080】
請求項13,16記載の発明によれば、シート分離機構でのシート搬送による負荷を、より一層低減でき、厚紙等の比較的剛性の高いシート搬送時におけるハネ音などの異音発生を抑制して、シート搬送音をより一層効果的に低減することが可能となる。すなわち、シート分離機構からベルト搬送手段に至るまでのシート搬送経路を形成する少なくとも一つの第2のガイド部材を備え、シート給送回転部材および分離部材の接点によって規定される平面と、ガイド部材のうちのシート搬送経路の外郭方向に配置された第2のガイド部材のガイド面とは、略平行な関係に設定されているので、シート分離機構の接点で規定される平面上を、該シート分離機構から発して進むシートは、シート搬送経路の外郭方向の第2のガイド部材によってそのシート厚さ方向にシートの進行方向を変更されたり変形されたりせずに済む。このため、第2のガイド部材からシート搬送経路を進行中のシートが受ける抵抗は、該シートの進路を保持するために必要な最小限のものに留めることができる。他方、シート分離機構からシートがベルト搬送手段に達するまでのシート搬送経路のうちのシート搬送経路の外郭方向に配置された第2のガイド部材のガイド面には、異音発生の要因となる段差を生起させずに済む。
【0081】
請求項14,16記載の発明によれば、シート分離機構でのシート搬送による負荷を、より一層低減でき、厚紙等の比較的剛性の高いシート搬送時におけるハネ音などの異音発生を抑制して、シート搬送音をより一層効果的に低減することが可能となる。すなわち、給送回転部材およびシート給送回転部材によって規定される平面と、第3のガイド部材のうちのシート搬送経路の外郭方向に配置されたガイド部材のガイド面とは、略平行な関係に設定されているので、給送回転部材に接した箇所から発して第1の搬送手段に至るまでのシート搬送経路を進行中のシートは、シート搬送経路の外郭方向の第3のガイド部材によって、そのシート厚さ方向にシートの進行方向を変更されたり変形されたりせずに済み、第3のガイド部材から前記シート搬送経路を進行中のシートが受ける抵抗は、必要な最小限のものに留まるだけでなく、例えば移動進行中のシートが、給送回転部材付近に残存したシートから受ける抵抗も、最小限なものに留めることができ、これらによって、第1の搬送手段に至るまでのシート搬送過程でシートが受ける抵抗を最小化できる。他方、給送回転部材および第1の搬送手段間のシート搬送経路の外郭方向の第3のガイド部材には、異音発生の要因となる段差を生起させずに済む。
【0082】
請求項15,16記載の発明によれば、請求項10記載のシート搬送装置よりも、さらにシート搬送時の負荷を低減でき、厚紙等の剛性が高いシートを安定して搬送することが可能となる。すなわち、請求項10の構成に加えて、シート搬送経路の内郭方向に配置された第4のガイド部材は、第1の搬送手段と第2の搬送手段とのそれぞれにおける内郭方向に配置された対向対同士の接線よりも、内郭方向側に設けられているので、シート搬送過程において、第4のガイド部材が、前記の接線上を進むシートの先端の進行を妨げたり、シートの先端と後端との間のシート上での略中間部分を変形させたり、このように変形させた上で摺接させたりせずに済むので、これらに起因した第4のガイド部材によるシート搬送抵抗が生じることを未然に回避できる。
【0083】
請求項17記載の発明によれば、複数のシート搬送装置の少なくとも一つが、ベルト搬送手段を有するシート搬送装置において、請求項4ないし16の何れか一つに記載の発明の効果を奏する。
【0084】
請求項18記載の発明によれば、請求項1ないし17の何れか一つに記載のシート搬送装置を有する画像読取装置であることにより、請求項1ないし17の何れか一つに記載のシート搬送装置が搬送するシートは、原稿であるため、少なくともそのシート(原稿)搬送性能を向上させた請求項1ないし17の作用効果を得ることができ、原稿のシート種類(紙種)対応性に優れた画像読取装置を実現して提供することができる。すなわち、様々な種類のシートからなる原稿を、コンパクトなスペースでそのシート(原稿)搬送方向を所定に変更させながら、確実かつ良好に搬送できる。
【0085】
請求項19記載の発明によれば、請求項1ないし17の何れか一つに記載のシート搬送装置および/または請求項18記載の画像読取装置を有することを特徴とする画像形成装置であることにより、搬送対象として、シートか原稿かの何れか一方、または両方に関して、少なくともそのシートおよび/または原稿シートの搬送性能を向上させた請求項1ないし4等の効果を得ることができ、シート種類(紙種)対応性に優れた画像形成装置を実現して提供することができる。
【0086】
請求項20記載の発明によれば、画像形成装置は、複写機、ファクシミリ、プリンタ、印刷機およびインクジェット記録装置の何れか一つ、またはそれらの少なくとも二つを組み合わせた複合機であることにより、それらの複写機、ファクシミリ、プリンタ、印刷機およびインクジェット記録装置の何れか一つ、または複合機であっても、少なくともそのシート搬送性能を向上させた請求項1ないし4等の効果を奏することができ、優れたシート種類(紙種)対応性を得ることができる。
【0087】
請求項21記載の発明によれば、第4のガイド部材の少なくとも一部を搬送方向変更点、第1の搬送手段の挟持部中心と第2の搬送手段の挟持部中心とを結んだ線分より外側に設けたことにより、厚紙のコシによってシート搬送経路の内郭方向へばたついても確実にガイドすることが可能となる。この際、第4のガイド部材によるシート搬送時の負荷に対し、移動案内手段によりシート搬送力を補うことで、厚紙等の剛性が高いシートを安定して搬送することが可能となる。
【0088】
請求項22記載の発明によれば、シート搬送時の負荷を低減でき、厚紙等の剛性が高いシートを安定して搬送することが可能となる。すなわち、シート搬送経路の内郭方向に配置された第4のガイド部材は、第1の搬送手段と第2の搬送手段とのそれぞれにおける内郭方向に配置された対向対同士の接線よりも、内郭方向側に設けられているので、シート搬送過程において、第4のガイド部材が、前記の接線上を進むシートの先端の進行を妨げたり、シートの先端と後端との間のシート上での略中間部分を変形させたり、このように変形させた上で摺接させたりせずに済むので、これらに起因した第4のガイド部材によるシート搬送抵抗が生じることを未然に回避できる。
【0089】
請求項23記載の発明によれば、ベルト搬送手段は、シートの先端部が、ベルトの搬送面に対して鋭角の突入角度をもって進入するように配置されているので、シートの先端部の挙動に拘わらず、シートの先端部をベルトの搬送面に安定して確実に接触させることができる。よって厚紙等の剛性が高いシートを安定して搬送できる。
【0090】
請求項24記載の発明によれば、ベルト搬送手段は、シートの先端部が、ベルトの搬送面に対して鋭角の突入角度をもって進入するように配置されているので、シートの先端部の挙動に拘わらず、シートの先端部をベルトの搬送面に安定して確実に接触させることができる。さらに、この構成であれば、胴内排紙型の画像形成装置であっても装置の幅を大きくすることなく従来と同じかそれより幅を狭くしても厚紙等の剛性が高いシートを安定して搬送できる。
【0091】
請求項25,26記載の発明によれば、ベルト搬送手段は、シートの先端が、ベルト保持回転部材に保持されているベルト部分を除くベルトの搬送面に接触するように配置されているので、ベルトの適度な弾性変位・変形により、シートを保持しつつシートを安定して搬送できる。
【0092】
請求項27記載の発明によれば、第1の搬送手段によるシート搬送力だけでなく、移動案内手段によるシート搬送力を付加することにより、少なくとも一つのガイド部材にシートの表面が接触することによるシート搬送負荷に抗して搬送することが可能となる。これにより、シート搬送負荷を低減できるので厚紙等の剛性が高いシートでも安定して搬送できる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明のシート搬送装置および画像形成装置を適用した第1の実施形態の用紙搬送装置および画像形成装置の全体構成を示す概略的な正面図である。
【図2】第1の実施形態の用紙搬送装置およびその周りの給紙トレイ段を示す図であって、用紙の先端がベルト搬送手段に到達した動作状態を示す要部の拡大断面図である。
【図3】第1の実施形態の用紙搬送装置において、用紙の先端が第2搬送手段のニップ部に到達する直前の動作状態を示す要部の拡大断面図である。
【図4】第1の実施形態および実施例1を説明するための用紙搬送装置の要部の拡大断面図である。
【図5】第1の実施形態における実施例1の、紙種別搬送時間のばらつきに関する試験結果を説明するためのグラフである。
【図6】第1の実施形態の用紙搬送装置の変形例を示す図であって、(a)は、第1搬送手段にベルト搬送手段を設けた例であり、(b)は、第1、第2搬送手段の両手段にそれぞれベルト搬送手段を設けた例であり、(c)は、第1、第2搬送手段とは別体にベルト搬送手段を設けた例である。
【図7】本発明のシート搬送装置を適用した第2の実施形態を示し、用紙を積層して格納した給紙トレイ段と該トレイ段用に設けられた用紙搬送装置とを示す概略的な断面図である。
【図8】第2の実施形態の用紙搬送装置において、用紙の先端がベルト搬送手段に到達した状態の用紙搬送装置を主体に示す概略的な拡大断面図である。
【図9】第2の実施形態の用紙搬送装置において、用紙の先端が第2搬送手段のニップ部(挟持部)に到達する直前の状態の用紙搬送装置を主体に示す概略的な拡大断面図である。
【図10】本発明のシート搬送装置を適用した第3の実施形態を示し、用紙搬送装置を主体に示す概略的な拡大断面図である。
【図11】本発明のシート搬送装置を適用した第4の実施形態を示し、用紙搬送装置を主体に示す概略的な拡大断面図である。
【図12】第4の実施形態の用紙搬送装置を示し、用紙搬送装置における搬送路外郭方向に設けられたガイド部材の概要を主体に示す一部拡大断面図である。
【図13】第4の実施形態の用紙搬送装置を示し、用紙搬送装置における第1搬送手段と第2搬送手段との間で搬送路内郭方向のガイド部材を主体に示す一部拡大断面図である。
【図14】本発明のシート搬送装置を適用した第5の実施形態を示し、用紙搬送装置を主体に示す概略的な拡大断面図である。
【図15】本発明のシート搬送装置を適用した第6の実施形態を示し、用紙搬送装置を主体に示す概略的な拡大断面図である。
【図16】従来構成の用紙搬送装置を主体に示す概略的な拡大断面図である。
【図17】従来構成の用紙搬送装置を示し、用紙搬送過程における用紙積載面と給紙トレイとの間の段差による異音発生を説明するための概略図である。
【図18】従来構成の用紙搬送装置を示し、用紙搬送過程における給紙トレイとこれに隣接した外側ガイド部材との間の段差による異音発生を説明するための概略図である。
【図19】従来構成の用紙搬送装置を示し、用紙搬送過程における外側ガイド部材とこれに隣接した外側ガイド部材との間の段差による異音発生を説明するための概略図である。
【図20】従来構成の用紙搬送装置を示し、用紙搬送過程における内側ガイド部材による搬送負荷の増大を説明するための概略図である。
【図21】第1の実施形態の用紙搬送装置における駆動機構を示す簡略的な斜視図である。
【図22】図21の要部の概略的な正面図である。
【図23】用紙搬送装置の湾曲ガイド部材に低摩擦処理や、低摩擦部材を貼付、あるいは低摩擦部材とした例を示す概略的な拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0094】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を含む本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という)を説明する。実施形態や変形例、実施例等に亘り、同一の機能および形状等を有する部材や構成部品等の構成要素については、同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。図および説明の簡明化を図るため、図に表されるべき構成要素であっても、その図において特別に説明する必要がないものは適宜断わりなく省略することがある。公開特許公報等の構成要素をそのまま引用して説明する場合は、その符号に括弧を付して示し、各実施形態等のそれと区別するものとする。
【0095】
(第1の実施形態)
図1〜図3を参照して、本発明の第1の実施形態を説明する。図1は、本発明のシート搬送装置およびこれを有する画像形成装置に係る第1の実施形態の用紙搬送装置を搭載した画像形成装置の全体構成を示す概略正面図であり、図2は、この画像形成装置内の所定箇所に設置された給紙装置および該給紙装置のある用紙格納段に付随した用紙搬送装置を示す拡大図であり、図3は、用紙搬送装置付近を主体に示す拡大図である。
【0096】
まず、図1を参照して、画像形成装置の一例としての複写機1の全体構成を説明する。複写機1は、原稿の表面から画像を読み取って各種のシート状記録媒体(以下、「シート」という)としての記録紙、転写紙、用紙、OHPフィルムなどに複写画像を形成するモノクロ複写機である。この複写機1は、読み取った原稿画像に基づいて所定の画像形成処理を行う画像形成部を有する画像形成装置本体2と、この画像形成装置本体2を載置して該装置本体2にシートの一例としての用紙Sを1枚ずつ供給する給紙装置3と、画像形成装置本体2上に取り付けられ原稿画像を読み取ってこの原稿画像情報を画像形成装置本体2に送出する原稿読取装置4とを有する。
画像形成装置本体2の上部であって原稿読取装置4の下方に空間を形成するようにして、上記画像形成装置本体2を通過した用紙を排出・積載する排紙トレイ9が設置され、給紙装置3から排紙トレイ9に至るまで用紙Sを移動させる用紙搬送経路(シート搬送経路)としての用紙搬送路R1(以下、「搬送路R1」ともいう)が形成されている。この搬送路R1の大部分は、給紙装置3から画像形成装置本体2の上部に渡り、略水平線に対して略垂直上方向、すなわち略鉛直上方向に延在されていて、該搬送路R1上には、最小サイズの用紙Sに応じた所定間隔を確保して搬送ローラ対やコロ対などによって構成された幾つかのシート搬送手段としての用紙搬送手段が設けられている。これらの用紙搬送手段のうちの何れかの用紙搬送手段は、搬送路R1上の用紙Sを、挟持などによって必ず搬送し続けるように構成されている。さらに給紙装置3には、該給紙装置3の各段に収容された用紙Sを搬送路R1に給送・搬送するシート搬送装置としての用紙搬送装置5が設置されている。
【0097】
画像形成装置本体2内には、その搬送路R1の上流側から下流側に向けて、画像を形成する画像形成部としての感光体ユニット10と定着装置11とが順に配置されている。この搬送路R1上を上流側から下流側に向けて搬送されてくる用紙Sに対して、感光体ユニット10がその生成したトナー像を転写した後、定着装置11がその転写されたトナー像を用紙Sに定着して、そのトナー像を定着された用紙Sが、搬送路R1の末端に配置された排紙トレイ9に排出されるようになっている。
【0098】
感光体ユニット10は、像担持体としての単一のドラム状の感光体10Aを有し、略水平に配置された回転軸を中心にして、画像形成装置本体2内の図示しない側板に回転可能に支持されている。感光体10Aは、所定の径で円筒形状に形成された周知の構成をなす。感光体10Aは、感光体ユニット10側か画像形成装置本体2側かの何れか一方に設けられたモータなどの駆動源から回転駆動力が伝達されて、図中矢印で示す回転方向に安定した一定速度で回転駆動されるようになっている。
感光体10Aの周囲には、図中矢印で示す回転方向に順に、現像装置12と、転写装置13と、感光体クリーニング装置18と、除電装置と、帯電装置14とが配置され、感光体10Aの反時計回りの回転方向におけるその1回転の範囲内に、これらの各装置12〜14それぞれによって、その上流から下流に渡って順次、現像位置、転写位置、クリーニング位置、除電位置、帯電位置が設定されている。
さらに、帯電位置と現像位置との間には、潜像形成位置が設定され、この潜像形成位置に所定のレーザ光を照射して、画像情報に応じた不可視の潜像を書き込むための露光装置47が、感光体ユニット10からやや離れた斜め下方に配置されている。そして、感光体10Aが所定の反時計回りに回転駆動されるとともに、この感光体10Aの回転に同期して各装置12〜14、および露光装置47が、それぞれ所定に連係した協働動作を行うことにより、一連の画像形成処理が実行される。
【0099】
すなわち、現像装置12は、その表面からトナー粒子を放射状に起立させたトナーブラシを生成する現像ローラなどの適宜の周知の構成を有し、感光体10A表面上の所定箇所に生成され該感光体10Aの回転に伴い周上を移動して現像位置を通過する潜像に対して、トナーブラシ先端のトナー粒子を付着させ、該不可視の潜像をモノクロトナー像で可視像化する。
転写装置13は、略上下方向に所定に離間させて対向配置された2つの支持ローラ15,16と、これらの支持ローラ15,16間に張架された無端ベルトからなる転写ベルト17とで構成され、感光体10A外周表面上のトナー像を用紙Sに転写し、未定着のトナー像が転写された用紙Sを搬送路R1の下流側に搬送する。すなわち、下方の支持ローラ16は、その転写ベルト17を巻回した部分が、感光体10Aの略右斜め下方箇所に圧接されて、感光体10A表面と転写ベルト17とが接した箇所に、転写位置が設定されている。また、上方の支持ローラ15は、定着装置11の導入口の手前に配置されている。
【0100】
感光体クリーニング装置18は、感光体10A上のクリーニング位置に、その先端のブレードエッジが所定圧を確保して当接するように構成された図示しないブレード材か、または同クリーニング位置に接して感光体10Aの回転に従動回転する回転ブラシかの何れか、あるいは両方の構成を有し、転写後の感光体10A表面に残留したトナーや異物などを除去する。
除電装置は、所定強度の発光が可能なランプを主体に構成されており、このランプから除電位置に除電用の光を照射して、該除電位置を通過する感光体10A表面上の帯電状態を解除し、転写位置を通過した後の感光体10Aの表面電位を、初期状態に復帰させるようにしている。
【0101】
定着装置11は、熱源としての電熱ヒータなどを内蔵した加熱ローラ31と、この加熱ローラ31に略水平方向に対向配置され該加熱ローラ31側に押圧付勢された加圧ローラ32とを有する。図示しないモータなどの駆動源により加熱ローラ31が回転駆動されると、これに接した加圧ローラ32が従動回転されるとともに、両ローラ31,32が接した箇所には、所定の加熱温度と加圧力とが確保されて、トナー像を用紙上に定着させるためのニップ部が形成される。
なお、同図中の20は、新品・新規トナーを収容したトナーボトルなどからなるトナー収納容器であり、このトナー収納容器20から現像装置12まで、図示しないトナー搬送経路が形成されている。現像装置12が自身内のトナーを現像用に消費して不足した場合には、新規トナーがトナー収納容器20から現像装置12に補充されるようになっている。
【0102】
画像形成装置本体2の下方には、読み取る原稿のサイズに応じて、自動的にまたはユーザの手動設定によって用紙サイズ(シートサイズ)を択一的に選択可能にした給紙装置3が設けられている。すなわち、給紙装置3は、シート収容手段としての複数の給紙トレイ51,51を給紙装置3内に多段に収納・配置されているとともに、各給紙トレイ51,51を個別に給紙装置3外に引き出し可能に構成されていて、それぞれの給紙トレイ51にそのトレイ用の用紙をセットおよび適宜の枚数、補充可能にされている。各給紙トレイ51,51には、互いに異なる紙種(シート種類)としてそれぞれ各種用紙サイズおよび用紙搬送方向(シート搬送方向)に対して縦横の向きにした用紙Sが、多数枚積載・収納されている。
【0103】
原稿読取装置4は、その骨組みをなす読取装置本体4Aを有し、この読取装置本体4Aの上面には、所定範囲に亘りコンタクトガラス57が配置されている。読取装置本体4A内には、コンタクトガラス57面上の所定範囲を走査対象にして光学的に原稿画像を読み取る読取手段が収納されており、この読取手段は、少なくとも、第1走行体53、第2走行体54、結像レンズ55および例えばCCDなどからなる読取センサ56から主に構成されている。
また、原稿読取装置4には、コンタクトガラス57を覆う閉止位置と開放した開放位置とに開閉可能に構成された原稿押さえ板58が、読取装置本体4Aの上面に設置されている。すなわち、原稿押さえ板58は、コンタクトガラス57よりも大きな縦横寸法で形成され、その一端が図示しないヒンジで読取装置本体4Aの上面に開閉自在に支持されている。
【0104】
上述の構成に基づき、複写機1の動作を説明する。まず、複写機1で原稿をコピーするとき、原稿読取装置4の原稿押さえ板58を閉止位置から開放位置に、ユーザが手動で開いて、コンタクトガラス57上に原稿を載置・セットし、次いで原稿押さえ板58を閉じる方向に手動操作し、この原稿押さえ板58によって、コンタクトガラス57上にセットした原稿を上方から押える。この操作により、原稿面が正確に読み取り可能となるように、原稿がコンタクトガラス57に密着されて平面状に広げられ、かつ同ガラス57上に原稿が固定される。
【0105】
そして、複写機1に予め備えられている図示しない操作画面部に設置されたスタートスイッチを、ユーザが押下・オン操作すると、直ちに原稿読取装置4の読取動作が開始され、図示しない駆動機構によって第1走行体53および第2走行体54が走行される。そして、第1走行体53の光源からの光が原稿に向けて照射され、この原稿面からの反射光が第2走行体54に向かい、この反射光が第2走行体54のミラーで反射されて結像レンズ55を介して読取センサ56に入力され、この結果、読取センサ56によって、原稿の画像などが光電変換されて読み取られる。
【0106】
また、上記したようにスタートスイッチがオン操作されると、感光体ユニット10の感光体10Aが回転を開始して、その感光体10A上に、読み取った原稿画像に基づき、トナー像を形成する動作が開始される。すなわち、感光体10Aの回転に伴って該感光体10A外周表面の所定箇所が、順次、帯電装置14、露光装置47、現像装置12、転写装置13、感光体クリーニング装置18、除電装置との間でそれぞれ設定された各位置を通過して、順次、所定の帯電状態に帯電され、潜像が生成され、トナー像に可視像化され、用紙Sに転写されてから、残留トナーが除去され、帯電状態が解除されて1サイクルが完了し、形成する画像サイズに応じて、感光体10Aの回転方向における外周表面の所定長さの範囲にトナー像を生成するように、そのサイクルが所定に持続される。
【0107】
上記したスタートスイッチの押下により、給紙装置3内の自動または手動選択された用紙Sが収納された給紙段の給紙トレイ51から、該給紙段に付設された用紙搬送装置5の動作によって、1枚の用紙Sが所定の用紙搬送経路(シート搬送経路)を介して搬送路R1に搬送される。この用紙Sは、搬送コロなどによって画像形成装置本体2内の搬送路R1上を略鉛直上方に向けて搬送され、用紙Sの先端がレジストローラ対21に突き当たって一旦停止する。
他方、手差し給紙の場合には、手差しトレイ67上にセットされた用紙Sが、まず手差しトレイ用の給紙ローラ67Aの回転により繰り出され、用紙Sが複数枚積載・セットされた際には、同手差しトレイ用の分離ローラ67B,67Cによって1枚に分離されて、手差し給紙路R2に搬送され、さらに手差し給紙路R2から搬送路R1に搬送され、用紙Sの先端がレジストローラ対21に突き当たって一旦停止する。
そして、レジストローラ対21は、回転駆動された感光体10A上のトナー像の相対移動に合わせた正確なタイミングで回転を開始し、一旦停止した用紙Sを転写位置に送り込む。この結果として、この用紙S上に転写装置13によりトナー像が転写される。
【0108】
こうして未定着なモノクロトナー画像が転写された用紙Sは、搬送路R1の一部を形成した転写装置13の転写ベルト17によって定着装置11へ搬送され、この定着装置11が形成したニップ部を通過されて、該ニップ部によって所定の熱と加圧力とが加えられることにより、画像が用紙S上に定着される。画像が定着された用紙Sは、切換爪34により排紙トレイ9に至る搬送路R1に向けてガイドされ、各排出ローラ35〜38により排紙トレイ9上に排出されて、排紙トレイ9上にスタックされる。そして、ユーザは、排紙トレイ9上にスタックされた用紙を、排紙トレイ9と原稿読取装置4との間であって装置正面側の開放部から取り出すことができる。
【0109】
また、ユーザの設定入力によって、両面コピーモードが選択されているときには、片面に画像を定着された用紙Sは、切換爪34により用紙反転装置42側に搬送され、この用紙反転装置42内に配置された複数のローラ66対や、図示しないガイド部材によって、反転搬送路R3上を往復移動させて、用紙面の上下向きを反転させてから、感光体ユニット10よりも手前に位置した箇所からレジストローラ対21を介して搬送路R1に復帰させ、この搬送路R1上を搬送されて再び転写位置へ導かれ、今度は用紙Sの裏面に画像を転写し定着した後に、排出ローラ35〜38によって排紙トレイ9上に最終的に排出される。
【0110】
次に、第1の実施形態の用紙搬送装置5の特徴的な構成を説明する。
用紙搬送装置5は、図2および図3に示すように、図1に示した給紙装置3における所定段(この例では下段)の給紙トレイ51に積載・収容された多数枚の用紙Sから1枚の用紙Sを引き出し、引き出された用紙Sの用紙搬送方向(シート搬送方向)を変更し、略鉛直上方の画像形成装置本体2へ給送するものである。
【0111】
用紙搬送装置5は、用紙Sを搬送する第1の搬送手段(以下、「第1搬送手段」という)6と、第1搬送手段6の用紙搬送方向(シート搬送方向)の下流側に配置され、第1搬送手段6により搬送されてきた用紙Sを第1搬送手段6の用紙搬送方向と異なる用紙搬送方向に搬送する第2の搬送手段(以下、「第2搬送手段」という)7と、これら第1搬送手段6および第2搬送手段7の何れもが用紙Sを1対の搬送回転部材で挟持して搬送する挟持搬送手段としてそれぞれ構成され、すなわち、第1搬送手段6はフィードローラ61とリバースローラ62との2つの対向配置された搬送回転部材からなる第1搬送回転部材対の構成とされ、第2搬送手段7はグリップローラ81とローラ状のプーリ83およびローラ状のプーリ84の間に張設された搬送ベルト82との2つの対向配置された搬送回転部材からなる第2搬送回転部材対の構成とされ、この第2搬送回転部材対の一方は、用紙Sと接触する搬送ベルト82を備えたベルト搬送手段8(移動案内手段)であり、かつ、ベルト搬送手段8における搬送ベルト82上に形成されたベルト走行面である搬送面82aは、第1搬送手段6と第2搬送手段7との間に形成される用紙搬送経路(シート搬送経路)としての第1搬送路Aの外郭方向に外れた位置に配置されていることを特徴としている。
【0112】
上述したように、フィードローラ61とリバースローラ62とからなる第1搬送回転部材対の用紙搬送方向と、グリップローラ81と搬送ベルト82とからなる第2搬送回転部材対の用紙搬送方向とは、互いに異なり、つまり第1搬送回転部材対の用紙搬送方向は、図2および図3における右斜め上方向である略水平方向に設定されているのに対して、第2搬送回転部材対の用紙搬送方向は、略鉛直上方向に設定されている。これにより、第1搬送手段6と第2搬送手段7との間に形成される第1搬送路Aは、この第1搬送路Aで用紙搬送方向を急激に変化させる曲率半径の小さな湾曲した曲率部を形成している。
ここで、第1および第2搬送手段6,7の各用紙搬送方向を厳密に表現すると、次のようである。すなわち、図4において、第1搬送手段6の用紙搬送方向は、フィードローラ61の回転中心と、リバースローラ62の回転中心と、フィードローラ61およびリバースローラ62の挟持部(ニップ部)の中心との3点を結ぶ線分におけるニップ部の中心に対して、直交する略水平方向に設定されている。
同様に、第2搬送手段7の用紙搬送方向は、グリップローラ81の回転中心と、プーリ83の回転中心と、グリップローラ81および搬送ベルト82の挟持部(ニップ部)の中心との3点を結ぶ線分におけるニップ部の中心に対して、直交する略鉛直上方向に設定されている。
【0113】
換言すれば、第1搬送手段6と第2搬送手段7との間に形成されて用紙搬送方向を変更するように構成した用紙搬送経路において、用紙搬送経路を構成し搬送する用紙Sの厚さ方向の向きを規定した1対の対向面のうち、第1搬送手段6から送り出された用紙Sの先端が当接する側の面を、少なくとも、該用紙Sの先端が当接する部位を開始端にして、その用紙搬送方向の長手方向に渡って、第2搬送手段7に至るまでの所定範囲を、連続的かつ常時、第2搬送手段7の挟持部に近づく方向に移動する搬送ガイド面に構成しており、この搬送ガイド面は、ベルト搬送手段8における搬送ベルト82上に形成されたベルト走行面(搬送面)によって形成している。また、第1搬送手段6の用紙搬送方向に沿った延長線と、第2搬送手段7の用紙搬送方向に沿った延長線とで囲まれた範囲を内郭とし、これ以外を外郭としており、上記の平坦なベルト走行面によって形成された用紙搬送に供される搬送ベルト82の搬送面82aは、内郭から外郭方向に外れた位置に配置され、かつ、概略、用紙進行方向と交差するように延在されている。
【0114】
ベルト搬送手段8は、図3および図4に示すように、搬送ベルト82と、該搬送ベルト82を走行可能に保持する一対のベルト保持回転部材としての上記したローラ状のプーリ83およびローラ状のプーリ84とから主に構成される。
ベルト搬送手段8は、第1搬送手段6により搬送されてきた用紙Sの先端が、プーリ83およびプーリ84に保持されている該搬送ベルト82部分を除く該搬送ベルト82の搬送面82aに当接(接触)するように配置することが肝要である。このように、プーリ84の軸中心(プーリ軸84aの中心)が、リバースローラ62の下端位置よりも上方であって搬送ガイド部材71の下流端の高さよりも下方に位置するようにしてベルト搬送手段8を配置することにより、用紙Sの先端が搬送ベルト82の腹の部分(いわば「有効搬送面」とも呼ぶべき部分である)に衝突することによって、搬送ベルト82の安定した適度な弾性変位・変形状態が得られ、用紙Sの先端の反発を招くことなく、用紙Sの先端が搬送ベルト82の搬送面82aに確実に当接した状態が保持されて、後述の作用効果を得ることができる。
これに対し、用紙Sの先端が、搬送ベルト82のプーリ83およびプーリ84に保持されている該搬送ベルト82部分に当接(接触)してもよいように配置すると、搬送ベルト82がプーリ83およびプーリ84に保持されている該搬送ベルト82部分は、一般的に搬送ベルト82の腹の部分よりも硬く弾性変位・変形状態も小さくなることから、用紙Sの先端が上記部分に当接した際には反発したり安定した適度な弾性変位・変形状態が得られなくなったりする点から好ましくない。これは、後述する実施例や実施形態でも同様である。
【0115】
また、ベルト搬送手段8は、図4に示すように、第1搬送手段6により搬送されてきた用紙Sの先端が、搬送ベルト82の搬送面82aに対して鋭角の突入角度θをもって進入するように配置することも肝要である。このようにベルト搬送手段8を配置することにより、用紙Sの先端が上述した搬送ベルト82の腹の部分に安定して当接することによって、用紙Sの先端が搬送ベルト82の搬送面82aに確実に当接した状態が保持されて、後述の作用効果を得ることができる。
用紙Sの先端が、搬送ベルト82の搬送面82aに対して略垂直ないし直角の突入角度θをもって進入するように配置した場合には、用紙Sの先端部の搬送ベルト82の搬送面82aへの当接状態が不安定になる、例えば搬送ベルト82の走行方向と反対の方向に折れ曲がったり、反発を招いたりする点から、好ましくない。これは、後述する実施例や実施形態でも同様である。
【0116】
給紙装置3における各段の給紙トレイ51は、複写機1に使用可能として取り扱われる最大サイズの用紙Sを格納可能な平面形状を確保して、上方開口の略平箱状に形成され、その底面にはシート積載手段としての底板50が設けられている。底板50は、図2の左側の基端部が、給紙トレイ51に所定の角度範囲で回動自在、すなわち揺動可能に支持された水平な軸50Aに取り付け固定され、図2の右側の自由端部が、軸50Aを中心にして給紙トレイ51内において揺動可能に構成されている。
また、給紙トレイ51の底部には、所定形状の凹部が形成され、この凹部に、上昇アーム52が格納されている。上昇アーム52は、その基端部が前記凹部内に所定の角度範囲で回動自在、すなわち揺動可能に支持された水平軸52Aに固着されるとともに、この水平軸52Aには、図示しない回転駆動源から任意の回転方向の回転駆動力が伝達されて回動されることにより、上昇アーム52が水平軸52Aを中心として所定に傾斜した位置を占めるように揺動駆動される。これにより、上昇アーム52の自由端部が底板50を押し上げて、底板50上に載置された用紙Sの最上面の片側周縁を、所定の高さ位置に保つようになっている。
上述したとおり、給紙トレイ51は、底板50上に用紙Sを積載して格納するとともに、底板50における図において右端側の自由端部を上昇・傾斜させて積載した用紙Sをせり上げ、1枚ずつ用紙Sが給送されてその積載枚数が減少しても、その最上面を所定の高さに維持するように構成されている。
給紙トレイ51は、上述したように、給紙装置3の本体に対して着脱・挿脱自在に構成されている。すなわち、給紙トレイ51は、図1に示すように給紙装置3の本体内に挿入・装着されることで給紙可能となる装着位置と、給紙装置3の本体から図1において紙面の手前側に引き出され・離脱されることで、用紙Sの補充や用紙Sのサイズ交換等が可能となる離脱位置とを選択的に占めることが可能に構成されている。
【0117】
また、少なくとも第1搬送手段6、第2搬送手段7、第1搬送手段6と第2搬送手段7との間に配置される用紙搬送経路(搬送路)は、給紙トレイ51を引き出したときに本体に残される。よって、本実施形態では胴内排紙型の画像形成装置であるが、移動案内手段を設けることにより、上記搬送路を従来と同様の曲率またはそれ以下の曲率で搬送できるので、装置の幅方向を大きくすることなく、胴内排紙型の利点を減殺することを防ぐことができる。
【0118】
このように所定高さに上昇された用紙Sの最上面に接するように、ピックアップローラ60が、給紙装置3の本体側の機体外形をなすハウジング80に回転可能に軸支されている。ピックアップローラ60による用紙Sの引き出し方向に沿った延長線上に、用紙Sを1枚に分離して給送する給紙分離機構が位置しており、この給紙分離機構は、フィードローラ61とリバースローラ62とが所定圧を確保して接したニップ部を形成するように構成されている。
ピックアップローラ60は、図3に詳しく示すように、図示しない芯金と一体的に形成された軸60aの周りに一体的に固着されていて、軸60aとともに回転自在になされた周知のもの、あるいは軸60aと前記芯金との間にワンウェイクラッチ(図示せず)を設けて、非駆動時には軸60aに対してフリーに回転するように支持されているものである。ピックアップローラ60の外周表面を含む外周部には、用紙Sと接触したときに容易にピックできるように用紙Sに対して摩擦係数の高いゴム等の軟質の高摩擦材料が用いられている。また、ピックアップローラ60の外周表面部は、適宜、摩擦抵抗を増大するために略鋸刃状の突起が全周に形成される場合もある。
【0119】
本実施形態例では、例えば積載された用紙Sを重送することなく1枚に分離して送り出す給紙方式(シート給送方式)として、戻し分離方式であるFRR(Feed Reverse Roller)給紙方式を採用している。すなわち、2枚以上の用紙Sをピックアップローラ60が引き出した場合には、フィードローラ61に接した1枚の用紙Sと、リバースローラ62に接したこれ以外の他の用紙Sとに分離させ、フィードローラ61は、1枚の用紙Sをそのまま用紙搬送方向に進めて送り出す一方、リバースローラ62は、他の用紙を用紙搬送方向とは逆の方向に進めて積層された元の位置に戻し、かつ、リバースローラ62は、フィードローラ61による用紙搬送を妨げないように構成されている。
【0120】
より具体的には、シート分離機構としてのFRR給紙方式による給紙分離機構は、用紙搬送方向に進む順方向に回転駆動されるフィードローラ61と、このフィードローラ61の下側に当接して、トルクリミッタを介して逆回転方向の回転駆動力が伝達されて逆転駆動されるリバースローラ62とを設けた構成とされ、フィードローラ61は、底板50上の最上面の用紙Sに接する一方、リバースローラ62は、2枚以上かに拘わりなくフィードローラ61に接している用紙Sの下面に接触している。
フィードローラ61は、図示しない芯金と一体的に形成された軸61aの周りに一体的に固着されていて、軸61aとともに回転自在になされているか、あるいはピックアップローラ60と同様の支持方法を取られる場合もある。フィードローラ61の外周表面を含む外周部には、ピックアップローラ60と同様に用紙Sと接触したときにこれを容易に用紙搬送方向に送り出すことができるように用紙Sに対して摩擦係数の高いゴム等の軟質の高摩擦材料が用いられている。また、フィードローラ61の外周表面部は、適宜、摩擦抵抗を増大するために略鋸刃状の突起が全周に形成される場合もある。
リバースローラ62は、図示しない芯金と一体的に形成されていて、前記トルクリミッタを介して、リバースローラ駆動軸62aとともにハウジング80に回動自在に支持されている。
【0121】
FRR給紙方式では、リバースローラ62には、フィードローラ61とは逆回転方向へ向かう弱いトルクがトルクリミッタ(図示せず)を介して付与されている。従って、リバースローラ62は、フィードローラ61と接触している状態、あるいは1枚の用紙Sが両ローラ61,62間に進入した状態では、リバースローラ62がフィードローラ61に連れ回りする。すなわち、前記トルクリミッタの作用によって、例えば該リバースローラ駆動軸に対してリバースローラ62がスリップして、フィードローラ61と同様に、給紙方向に進む順方向にリバースローラ62が回転する。他方、フィードローラ61と離間した状態、あるいは2枚以上の用紙Sが両ローラ61,62間に進入した状態では、リバースローラ62が逆回転する。このため、重送した用紙Sの進入時には、最上面の用紙Sであるフィードローラ61に接した1枚の用紙S以外の、リバースローラ62に接した他の用紙Sが用紙搬送方向の上流側へ戻され、これによって用紙Sの重送が防止される。
従って、リバースローラ62から該リバースローラ62に接した用紙Sに対して供給される搬送力は、用紙Sを元の積載位置に戻せる程度には十分な逆方向の搬送力を確保しながら、用紙Sを順方向に進めるためのフィードローラ61から用紙Sに供給される搬送力よりも、所定に小さく設定され、フィードローラ61による順方向の用紙搬送を妨げないようにしている。このため、謂わば、フィードローラ61から用紙Sに供給される搬送力は、リバースローラ62からの逆搬送力によって、減殺されている。
【0122】
同図中の65は、給紙装置3の本体側に設けた駆動源からの回転駆動力が出力される駆動軸に結合されたアイドラギヤであり、ギヤ同士の噛合またはベルト伝動によって、給紙装置3から供給される回転駆動力をピックアップローラ60およびフィードローラ61に分配して伝達し、ピックアップローラ60およびフィードローラ61を、それぞれ所定速度で回転駆動するようにしている。
【0123】
フィードローラ61の斜め上方には、第2搬送手段7における第2搬送回転部材対の他方の搬送回転部材であるグリップローラ81が、グリップローラ81と一体的に形成された回転駆動軸81aを介して、ハウジング80に回転自在に支持されて配置されている。
グリップローラ81の近傍には、このローラ81の外周面に搬送ベルト82を介して接するようにハウジング80に回転自在に軸支され、かつ、グリップローラ81の水平方向に対向して前記したプーリ83が配置されている。
プーリ83は、プーリ軸83aと一体的に形成されていて、プーリ軸83aとともにハウジング80に回転自在に支持されている。プーリ83の左斜め下方には、ハウジング80に回転自在に軸支された前記したプーリ84が配置されている。プーリ84は、プーリ軸84aと一体的に形成されていて、プーリ軸84aとともにハウジング80に回転自在に支持されている。プーリ83,84は、搬送ベルト82を走行・回転自在に支持するベルト保持回転部材としての機能を有する。
【0124】
なお、ベルト搬送手段8の配置は、前記した配置状態に限らず、次のようであってもよい。すなわち、図3において、括弧を付して示す79は、用紙搬送装置5本体の一部としての、ハウジング80に対して開閉自在に構成された開閉ガイドを示す。この開閉ガイド79は、第1搬送路Aや略鉛直上方に延びた縦搬送路等での用紙の詰まり、ジャム等をユーザが処理し易いように、ハウジング80下方のヒンジ支点軸(図示せず)を中心に、グリップローラ81に対して搬送ベルト82が接離自在となるように開閉自在に構成されたものである。
このような開閉ガイド79を有する場合、プーリ83およびプーリ84は、各プーリ軸83a,84aとともに開閉ガイド79側に回転自在に支持される。
【0125】
搬送ベルト82は、一部上述したが、無端ベルトであり、各プーリ83,84間に張設されている。各プーリ83,84の軸間距離は、予め所定に設定されている。すなわち、これらのプーリ83,84によって張架されて、該プーリ83,84間に形成された搬送ベルト82の直線状のベルト走行面(搬送面82a)は、第1搬送手段6によって送出される用紙Sの先端が、必ず接する位置に配置されている。このように、グリップローラ81の外周面には、プーリ83の外周面に巻き掛けられた搬送ベルト82の外周面が所定圧をもって直接接しており、この接触部位に挟持部(ニップ部)が形成されている。
搬送ベルト82は、弾性部材である例えばゴム部材で形成されていて、その表面には、該ベルト自体の材質によって、または適宜の表面処理が施されて、使用される用紙S(シート)に対して所定の摩擦係数が設定されている。すなわち、搬送ベルト82は、用紙Sに対面して該用紙面に接する、その搬送面としてのベルト表面が、用紙面とベルト表面との間のすべり接触を回避して、ベルト表面から用紙面に搬送推進力を確実に伝達できる摩擦係数が設定されている。
【0126】
また、搬送ベルト82は、用紙搬送方向と直交する用紙幅方向のベルト幅が、少なくとも、搬送する最大サイズの用紙幅と略同じ幅が確保されている。すなわち、搬送ベルト82のベルト幅としては、少なくとも、搬送する最大サイズの用紙幅以上のベルト幅が設定され確保されている。同様に、搬送ベルト82を張架したプーリ83,84およびベルトに対向接触したグリップローラ81は、それぞれの用紙幅方向(軸長手方向)のプーリ、ローラ長さが、前記ベルト幅以上の長さに形成されている。従って、第1搬送手段6から送出された用紙Sは、必ずその用紙幅全域に渡って搬送ベルト82に接することになり、両者間の接触面積を可能な限り最大限に確保できる。これに伴い、常時、用紙搬送方向に移動される搬送ベルト82から用紙Sに供給される推進力、つまり用紙Sをその搬送方向に進める搬送推進力も、可能な最大限の力を搬送ベルト82から用紙Sに伝達することができる。
【0127】
グリップローラ81の回転駆動軸81aには、図21および図22を参照して後述するように、該グリップローラ81の回転駆動用に専用に設けられた電動モータなどの回転駆動源がギヤやベルト等の駆動力伝達手段を介して連結されている。グリップローラ81は、前記駆動力伝達手段を介して、前記回転駆動源から所定の回転速度の回転駆動力が伝達されて回転駆動される。これにより、グリップローラ81は、駆動ローラとされる一方、該グリップローラ81に接した搬送ベルト82、および該搬送ベルト82の接触部位をそのベルト内側から支持したプーリ83は、駆動ローラとしてのグリップローラ81の回転に従動して、ベルト送り駆動される従動ベルト、および前記従動ベルトを介して回転駆動される従動ローラとされている。もちろん、プーリ84も、前記従動ベルトを介して回転駆動される従動ローラである。
【0128】
駆動機構22は、図21および図22に示すように、単一の駆動源・駆動手段としてのステッピングモータからなる給紙モータ23と、給紙モータ23の出力軸に固設されたモータギヤ24と、このモータギヤ24と噛み合うアイドラギヤ25と、このアイドラギヤ25と噛み合い、フィードローラ61の軸61aの一端部に固定されたフィードローラ駆動ギヤ61Bと、このフィードローラ駆動ギヤ61Bと噛み合うアイドラギヤ26と、このアイドラギヤ26と噛み合い、グリップローラ81の回転駆動軸81aの一端部に固設されたグリップローラ駆動ギヤ81Aと、フィードローラ61寄りの軸61aの他端部に固定されたフィードローラギヤ61Aと、このフィードローラギヤ61Aと噛み合う上記したアイドラギヤ65と、このアイドラギヤ65と噛み合い、ピックアップローラ60寄りの軸60aの他端部に固定されたピックアップローラギヤ60Aとから主に構成されている。
給紙モータ23は、ハウジング80に固定されている。アイドラギヤ25,26,65は、それぞれハウジング80に回転自在に支持されている。
上述したとおり、本実施形態においては、コンパクトで省スペースである用紙搬送装置5として構成、すなわち後述する実施例1等に例示するように第1搬送路Aが曲率半径の比較的小さな曲率部で構成されている関係上、給紙モータ23は、単一であり、第1搬送手段6および第2搬送手段7の駆動手段を兼用していて、装置のコンパクト化に寄与している。
なお、リバースローラ62の駆動は、例えばフィードローラ61に対する圧解除等を行うソレノイド等を備えていて別系統である。図21において、62bは、図1〜図4に示した例において、図示しないトルクリミッタと説明したものを表している。
【0129】
図1〜図4に示した実施形態例では、ピックアップローラ60およびフィードローラ61の回転駆動関係を簡略的に説明したが、実際には、図22に拡大して示すように、両ローラ60,61はピックアップアーム部材64によって各軸60a,61aが連結されており、ピックアップローラ60がフィードローラ61側の軸61aを中心としてピックアップアーム部材64を介してピックアップ揺動・変位するように、図示しないソレノイドおよびバネの組み合わせによって駆動されるようになっている。
実際の駆動機構22では、給紙モータ23ないしフィードローラ61間にはより多くのギヤおよびタイミングベルト等の駆動力伝達部材が適宜配設されているが、ここではグリップローラ81が回転搬送駆動部材であることを明示するためその一例を両図に簡略的に示した。
【0130】
ここで、ベルト搬送手段8の搬送ベルト82は、駆動機構22により回転駆動されるグリップローラ81(回転搬送駆動手段・回転搬送駆動部材)と直接接触して連れ回る構成であるので、搬送ベルト82側を駆動する場合よりもグリップローラ81側を駆動した方が、搬送ベルト82の線速度のばらつきを小さくできる。これにより、第1搬送路A(用紙搬送経路)のターンの外側(外郭方向)に第2搬送手段7の挟持部に向けて回転する搬送ベルト82を配置することで、第1搬送路Aのターン部での厚紙等の比較的剛性の高い用紙搬送性の向上を可能とし、搬送ベルト82と対向し直接接触するグリップローラ81を駆動し、搬送ベルト82を連れ回りさせることで、安定した線速度で用紙を第2搬送手段7以降に搬送させることが可能となる。
この利点・効果は、次のような技術内容を考察すれば容易に理解できる。すなわち、グリップローラ81を駆動する場合、グリップローラ81の線速度はグリップローラ81自身の外径と回転数とによってのみ決まる。これに対して、搬送ベルト82側を駆動する場合を考えると、搬送ベルト82を駆動する場合、搬送ベルト82の内側に設けたローラ状のプーリ83(ベルト駆動ローラ、主プーリ)によって搬送ベルト82を駆動するのが一般的である。
この場合、搬送ベルト82の線速度は、搬送ベルト82の内側に設けたプーリ83の外径および回転数以外に、構成部品バラツキによる搬送ベルト82の厚さのばらつき、搬送ベルト82の磨耗による厚さの影響、あるいは搬送ベルト82とプーリ83との間のスリップの影響を受ける。このため、搬送ベルト82側を駆動するよりグリップローラ81側を駆動した方が、搬送ベルト82の線速度のばらつきを小さくできる。
なお、上述したほどの効果をそれ程望まなくても良いのであれば、例えば駆動機構22からグリップローラ81の駆動系を除去してグリップローラ81側を従動側とし、かつ、搬送ベルト82側を図示しない駆動機構で駆動するようにしてもよい。
【0131】
図2および図3において、70は、用紙搬送装置5における内郭側の位置に設けられ、略下方に凸状に膨出して用紙Sに接する湾曲し固定したガイド面70aを有した搬送ガイド部材であり、71は、用紙搬送装置5の外郭側の位置に設けられた搬送ガイド部材である。この搬送ガイド部材71は、搬送ガイド部材70に対応して凹状に湾曲し固定したガイド面71aを有し、かつ、搬送ガイド部材70のガイド面70aに対して所定の間隙をもって対面配置されている。このように搬送ガイド部材70と、該搬送ガイド部材70に対面した搬送ガイド部材71および搬送ベルト82によって、第1搬送手段6および第2搬送手段7との間に、第1搬送路Aが形成されている。
図2および図3において、72は、第2搬送手段7を起点として略鉛直上方への縦搬送路における外郭側の位置に設けられた搬送ガイド部材であり、73は、給紙トレイ51からフィードローラ61とリバースローラ62との挟持部(ニップ部)へ到る用紙搬送経路を形成するとともに、同ニップ部に用紙Sを案内・進入させる導入口を形成した搬送ガイド部材である。また、搬送ガイド部材70は、第1搬送手段6および第2搬送手段7のニップ部同士を結ぶ線上を横切って略下方(外郭に設けられている搬送ガイド部材71側)に膨出した湾曲面(ガイド面70a)を備えており、その膨出の程度は、用紙Sの先端を必ずベルト搬送面に到達させるように、用紙Sを緩やかに湾曲させる程度に設定されている。
【0132】
なお、図1において、給紙装置3における上段の装置構成は、従来手段で構成された装置であり、上述した下段の装置構成と比較して、用紙搬送装置5に代えた用紙搬送装置5’を用いる点のみ相違する。用紙搬送装置5’は、用紙搬送装置5と比較して、第2搬送手段7に代えて第2搬送手段7’を用いる点のみ相違する。第2搬送手段7’は、第2搬送手段7と比較して、第2搬送回転部材対としてのグリップローラ81とこれに従動回転するローラ(実質的にプーリ83と同様の大きさ・形状である)とから構成される点のみ相違する。上段の給紙トレイ51および用紙搬送装置5’では、厚紙や封筒等の比較的剛性の高い用紙S(シート)を除き、比較的剛性の低い用紙(シート)Sである普通紙等が用いられる。
【0133】
次に、給紙装置3における所定段からの給紙動作および該給紙動作に連係して起動される用紙搬送装置5の搬送動作を説明する。
底板50上に積載された用紙Sは、図2に示すように、上昇アーム52の揺動・上昇動作によりその最上面が所定の高さになるよう持ち上げられ、先ず、ピックアップローラ60の回転によって最上面の用紙Sが引き出され、フィードローラ61とリバースローラ62とからなる給紙分離機構に搬送される。そして、前記給紙分離機構において、フィードローラ61とリバースローラ62とによる協働作用により最上面の1枚のみが分離され、この分離された1枚の用紙Sが用紙搬送経路の下流側へとさらに搬送されて、図2に示すように用紙Sの先端が搬送ベルト82のベルト搬送面に接触しつつ、搬送ベルト82の矢印方向の走行によって案内移動され、グリップローラ81と搬送ベルト82とのニップ部に到ると、グリップローラ81と搬送ベルト82とによって用紙Sが挟持搬送されつつさらに鉛直上方に搬送され、最終的に用紙Sは垂直姿勢にして送り出される。
【0134】
より詳細には、フィードローラ61とリバースローラ62とのニップ部に挟持され、該ニップ部から送り出された用紙Sの先端は、まず図2に示すように、搬送ベルト82のベルト搬送面に到達して接する。そして、図3に示すように、搬送ベルト82の矢印a方向の走行によるベルト搬送面の用紙搬送方向への移動に伴い、その用紙Sの先端側から徐々に湾曲され、かつこの湾曲の進展に伴い、ベルト搬送面と用紙面との接触面積が拡大される。従って、たとえ用紙Sが高剛性の用紙であったとしても、ベルト搬送面から用紙面に対して該用紙Sを搬送方向に進めるための十分な搬送推進力が付与できる。このようにして、第1搬送手段6から付与される搬送推進力だけでは、高剛性の用紙Sをより深く湾曲させて搬送する際に生じる搬送抵抗により不足する分を、ベルト搬送手段8から該用紙Sに与えて十分に補える。従って、少なくとも、第1、第2搬送手段6,7間での用紙Sの搬送不良が生じることを回避して、未然に防止でき、その用紙Sの先端を第2搬送手段7の挟持部(ニップ部)に到達させることができる。
他方、搬送ベルト82の搬送面82aはそのまま第2搬送手段7の挟持部(ニップ部)に連続して延びているので、ベルト搬送面に接した用紙Sの先端部は、確実かつスムーズに安定して挟持部に到達することになる。換言すれば、まず高剛性の用紙Sでもその先端部が必ずベルト搬送面に接する程度に緩やかに湾曲させながら用紙Sを第1搬送手段6によって搬送し、その用紙Sの先端部がベルト搬送面に接して該ベルト搬送面による能動的な搬送ガイド作用によって、該ベルト搬送面から用紙Sにその用紙搬送方向に進めるいわば第2の搬送推進力を得てから、該用紙Sの先端を第2搬送手段7の挟持部に到達させるように、より深く用紙Sを湾曲させるようにしている。
【0135】
このようにして用紙Sの先端が第2搬送手段7に到達して、第1搬送手段6および第2搬送手段7によって、用紙Sが挟持搬送された以降は、両搬送手段6,7から十分な搬送力が用紙Sに作用するので、高剛性の用紙Sのスムーズな搬送を継続できる。さらに、用紙Sの後端が第1搬送手段6から離脱して第1搬送手段6からの搬送力が得られなくなっても、用紙S上における第2搬送手段7の挟持部から後端側へかけてのベルト搬送面の接触状態によっては、再びベルト搬送面から用紙面に搬送推進力が補充され、しかも徐々に用紙Sの湾曲の程度が緩和されることから、用紙搬送を持続することができる。これらの結果、用紙搬送装置5として、第1搬送手段6が受け取った用紙Sを、その用紙Sの剛性に拘わりなく、第2搬送手段7から下流側の用紙搬送経路に、確実かつ安定して送り出すことができる。
【0136】
上述したとおり、ベルト搬送手段8は、第1搬送手段6と第2搬送手段7との間に形成される第1搬送路Aの外郭方向に配置され、用紙Sの先端と接触した状態を保持しつつ第2搬送手段7に向けて用紙Sを移動・案内する移動案内手段としての機能を有する。
そして、本実施形態では、移動案内手段としてのベルト搬送手段8は、搬送ベルト82により、第2搬送手段7の挟持部(ニップ部)に向かう方向に用紙Sの搬送方向を変えて移動・案内する機能も有する。
【実施例1】
【0137】
図1〜図3に示した用紙搬送装置5を備えた給紙装置3と基本的な構成・仕様が同じで、株式会社リコー製「imagio Neo453」の給紙装置のみを試験用に改造した複写機(表1に「ベルト方式」として示す)と、従来の用紙搬送装置(図1〜図3において、グリップローラ81に対向接触する搬送回転部材がローラ状のプーリ83であり、搬送ベルト82およびローラ状のプーリ84を除去した装置で、図1の給紙装置3に示されている従来の用紙搬送装置5’に相当するもの)を備えた給紙装置を搭載した株式会社リコー製「imagio Neo453」の複写機(表1に「従来方式」として示す)とを使用して、用紙の給送搬送状態(通紙状態)に関する比較試験を実施した。
【0138】
上記ベルト方式において、上記比較試験に用いたベルト搬送手段8およびその周りの主な部材(従来方式を含む)の詳細は、次のとおりである。
搬送ベルト82の材質:エチレン・プロピレンゴム(EPDM)
搬送ベルト82の硬度:JIS A 40度
搬送ベルト82の摩擦係数:2.6(用紙に対する)
搬送ベルト82の肉厚:1.5mm
プーリ83の直径:13mm
プーリ84の直径:7mm
プーリ83,84の間隔:13mm(プーリ軸83a,84aの軸間距離)
搬送ベルト82の伸張率:7%
各ローラ60,61,62,81の直径:全て20mm
【0139】
基本的な試験条件として、用紙の腰(剛性:コシ)の強さの代用値として用紙の重さ(メートル秤量)を用い、これを6つの紙種に変えて、常温環境(23℃、相対湿度50%)においてそれぞれ上記複写機における同じ段の給紙トレイから通紙した。そして、図4を参照して以下に説明する試験条件を加味し、紙種別の搬送時間のばらつき(バラツキ)具合を調べる試験を実施した。その搬送時間のばらつき具合の試験結果を図5に、図5の試験結果に基づき通紙状態をまとめたものを表1に示す。
【0140】
図4において、88は、ピックアップローラ60によりピックアップされた用紙Sの先端を検知する給紙センサを、89は、第2搬送手段7(ベルト方式)またはグリップローラ81とローラ状のプーリ83との対(従来方式)により搬送されてきた用紙の先端を検知する縦搬送センサを、それぞれ示す。給紙センサ88および縦搬送センサ89は、それぞれ反射型のフォトセンサからなる。
【0141】
また、給紙センサ88と縦搬送センサ89との取り付け・配置間における搬送パス長:用紙搬送距離(シート搬送距離)は、ベルト方式および従来方式ともに次のとおり57mm一定に設定した。すなわち、給紙センサ88の配置部からフィードローラ61とリバースローラ62とのニップ部までの搬送パス長が10mm、フィードローラ61とリバースローラ62とのニップ部から第2搬送手段7のニップ部(ベルト方式)まで、またはフィードローラ61とリバースローラ62とのニップ部からグリップローラ81とローラ状のプーリ83とのニップ部(従来方式)までの搬送パス長が同じ38mm、第2搬送手段7のニップ部(ベルト方式)から縦搬送センサ89の配置部まで、またはグリップローラ81とローラ状のプーリ83とのニップ部(従来方式)から縦搬送センサ89の配置部までの搬送パス長が9mmで、トータルの搬送パス長は57mmである。
用紙搬送装置5の第1搬送手段6と第2搬送手段7との間の湾曲した用紙搬送経路(第1搬送路A)中心での曲率半径は、従来方式およびベルト方式ともに約20mm一定にして実施した。
【0142】
また、従来方式およびベルト方式ともに、ピックアップローラ60によるピックアップ圧(給紙圧)をパラメータとして、1.1Nと2.2Nとの2種類に変えるとともに、駆動側のフィードローラ61および駆動側のグリップローラ81の線速度がともに同じ154mm/s一定で、給紙センサ88から縦搬送センサ89までの搬送パス長57mmを搬送される用紙の先端の到達時間を、5つの紙種に変えて、それぞれオシロスコープで計測した紙種別搬送時間のばらつき結果を図5のグラフに示す。
【0143】
図5の試験結果より、紙種としてメートル秤量が256g/m以上になると、従来方式では搬送時間が長く、用紙のスリップが大きいのに対し、本発明のベルト方式では、搬送時間がそれほど長くならず、用紙のスリップが小さいことが分かった。また、ピックアップ圧を小さくすると搬送力が低下するが、本発明のベルト方式の場合、ピックアップ圧を小さくしても、さほど搬送時間に影響を及ぼさないことも分かった。よって、本発明のベルト方式を採用した場合、ピックアップ圧を小さくできるので、駆動モータの電力を小さくすることができる。その結果、装置が小型化できる。
【0144】
次に、図5の試験結果に基づき、通紙状態をまとめた表1について説明する。
ここで、「メートル秤量」とは、紙、板紙(用紙)の重量を表示するとき、1平方メートル当たりの用紙1枚の重さをグラムで表したものに相当する。一般的に、秤量の少ない用紙は「軽い紙」あるいは「薄い紙」であり、秤量の多い用紙は「重い紙」あるいは「厚い紙」であるといえる。
表1の試験結果において、○印で示した「通紙良好」とは、給紙センサ88がオンして用紙(シート)の先端が検出されてから所定時間内に縦搬送センサ89に到達したこと、すなわち搬送良好であることを、×印で示した「通紙不可」とは、給紙センサ88がオンして用紙の先端が検出されてから所定時間内に縦搬送センサ89に到達しなかったこと、すなわち搬送不良であることを、それぞれ表している。
【0145】
【表1】

【0146】
表1の試験結果より、紙種としてメートル秤量が256g/m以上になると、従来方式では通紙不可であったのに対し、図1〜図3に示した本発明に係るベルト方式では全て通紙良好となった。これにより、本発明に係るベルト方式の顕著な効果が認められた。
通紙・搬送状況の対比観察により、従来方式ではメートル秤量が256g/m以上になると、用紙の腰が強くなって、前記湾曲した用紙搬送経路に沿って湾曲するのが難しくなり、図1〜図3を借りて説明すると、その用紙の先端がグリップローラ81に対向接触するローラ状のプーリ83に付き当たってしまうことが分かった。
また、紙種として、メートル秤量が256g/m以上の用紙において、その表面部をコート処理したものと、コート未処理のものとを用いて、通紙・搬送状況の対比観察も行ったが、表1の試験結果以外の特筆する有意差は認められなかった。
【0147】
上述の実施例1における用紙搬送過程の観察結果から、以下のことが分かった。すなわち、メートル秤量が256g/m以上の剛性の高い用紙Sを第1搬送手段6から第1搬送路Aを経由してベルト搬送手段8における搬送ベルト82の搬送面82aに搬送する際には、剛性の高い用紙Sの直進搬送性が高いことから、第1搬送路Aを構成している各種ガイド部材を、その搬送負荷抵抗が小さくなるような単純な形状に変更ないしは各種ガイド部材を全く不要とすることも可能であることが分かった。
それ故に、比較的剛性の高い用紙Sだけを用いて搬送する用紙搬送装置の場合、その必須の構成となるのは、上記した第1搬送手段6と、第2搬送手段7と、第1および第2搬送手段6,7の間に形成される第1搬送路A(この場合はガイド部材が不要)の外郭方向に配置され、用紙Sの先端と接触した状態を保持しつつ第2搬送手段7に向けて用紙Sを移動・案内するベルト搬送手段8(移動案内手段)とである。
上述のことから、第1搬送路Aを形成する上記各種ガイド部材は、比較的剛性の低い、例えば普通紙やPPC等の用紙Sを搬送する場合、その剛性の低い用紙Sの直進性の弱さ(厚紙等の比較的剛性の高い用紙Sと比べた場合の直進性である)を補い、搬送ベルト82の搬送面82aに導き・案内するために必要であると言える。別言すれば、用紙Sの剛性が低くなるほどその直進性の低下を補って、用紙Sの先端を搬送ベルト82の搬送面82aの腹の部分に確実に当接させるために、第1搬送路Aを形成する上記各種ガイド部材のガイド面の形状を設定する必要性があると言える。
換言すれば、その剛性が高くなる用紙S(メートル秤量が大きくなる用紙S)を用いる場合ほど、上述した比較的曲率半径の小さい曲率部の用紙搬送経路を構成する際に使用する種々のガイド部材の形状・配置等の設計に、自由度を持たせることが可能となる。
なお、搬送ベルト82の材質は、上記比較試験に用いたものに限らず、例えばクロロプレンゴムや、ウレタンゴム、あるいはシリコンゴムでもよい。また、搬送ベルト82の各ゴム硬度は、JIS A 40〜60度でもよい。
【0148】
以上述べたように、図1〜図4に示した用紙搬送装置5およびこれを有する複写機1によれば、コンパクトで省スペースでありながら、簡単かつ低コストな装置構成で、紙種対応性に優れた用紙搬送装置および画像形成装置を提供することができる。すなわち、基本的には、第2搬送手段を構成した既存のローラに搬送ベルトを巻き掛けて、ベルト搬送手段8を新たに設けて追加した構成であり、またベルト搬送手段8の専用の駆動源も不要にしているので、きわめて簡単な構成であり、このため低コストで済む用紙搬送装置および画像形成装置を実現できる。
【0149】
従来の構成では、搬送ガイド部材70に用紙が接触することによる搬送抵抗が大きいこと、または、第1搬送手段6から第2搬送手段7までの用紙搬送経路(搬送路)における搬送負荷等により高剛性の紙種に対応できず搬送不良が生じてしまうのに対して、この用紙搬送装置5では、高剛性の紙種にも対応できて、紙種性に優れた用紙搬送装置となる。すなわち、従来の構成では、所詮、用紙のガイド用に固定部材を配置しただけの構成であるため、移動体である搬送される用紙と固定されたガイド部材との間の速度差は根本的に解消されず、必ず搬送抵抗を生じてしまうのに対して、前記用紙搬送装置5および複写機1によれば、搬送抵抗を略皆無にできるだけではなく、用紙を下流に進ませるように積極的に搬送推進力を与えながらガイドすることができる(もしくは、第1搬送手段6による用紙搬送力(シート搬送力)に、第2搬送手段7による用紙搬送力が加わることで第1搬送手段6から第2搬送手段7までの搬送路における搬送負荷に対抗できるので用紙を下流に進ませることができる)。つまり、用紙搬送装置5では、用紙Sと搬送ベルト82との両者間に生じる摩擦抵抗は、用紙Sの搬送を妨げる抵抗ではなく、用紙Sに搬送推進力を付与するためのいわば負の抵抗となる。別言すれば、用紙Sの搬送を妨げるように作用する抵抗としてではなく、用紙Sに搬送推進力を付与するように作用する好ましい負の抵抗に転化される。
【0150】
しかも、用紙Sが搬送されて進む搬送方向において、その用紙Sの先端が搬送ベルト82の走行面(搬送面)に当接してから、該搬送の進展に伴い、紙種による剛性の程度によって差はあるものの、用紙Sの先端部面が搬送ベルト82の走行面に徐々に重なり合うように搬送されることから、ベルト走行面に接する用紙面の面積が漸次増加することになる。このため、このような接触面積の増大に応じて両者間の抵抗力の増加が図れ、用紙Sを搬送方向に進めるより大きな搬送推進力を搬送ベルト82から用紙Sに供給できるとともに、搬送ベルト82によって、グリップローラ81と搬送ベルト82とのニップ部に向かって用紙Sの進行方向が変えられることとなる。つまり、搬送ベルト82の走行面(搬送面)から用紙面に伝達される搬送推進力として作用する力は、着実に増強されることになる。
従って、たとえ用紙Sの剛性が高くても、この剛性に打ち勝って、用紙Sを適宜、その厚さ方向に変形つまり湾曲させながら、用紙Sを下流の第2搬送手段の挟持部に向けて確実かつ安定して搬送できる。このように用紙Sが高剛性であることに起因した主要な搬送不良の要因に対処できるので、用紙Sの先端が第2搬送手段の挟持部に到達した以降の用紙搬送も確実かつ安定して持続できる。この結果、用紙搬送装置として、多種多様な紙種に対応することが可能となり、その搬送対応能力を拡充でき、高い用紙搬送性能が得られる。
【0151】
(第1の実施形態の変形例)
図6に、第1の実施形態の変形例を示す。
図6(a)に示すように、上流側に配置された第1搬送手段6の対向接触したローラ対の一方をベルト搬送手段8としてもよく、また図6(b)に示すように、第1搬送手段6および第2搬送手段7での対向接触したそれぞれのローラ対のうち、片側の双方をベルト搬送手段8,8’としてもよく、さらに図6(c)に示すように、上流側に配置された第1搬送手段6のローラ対の一方か、下流側に配置された第2搬送手段7のローラ対の一方か、の何れにも代替した移動案内手段(ムービングガイド)として、これらの2つのローラ対の間に、別体の独立したベルト搬送手段8を設けてもよい。
【0152】
図6(a)および図6(b)の下側に示した変形例におけるベルト搬送手段8では、例えば、リバースローラ62の分離作用(用紙戻しのために反時計回りの回転)に影響を与えないように、リバースローラ62をその軸方向に串刺し状に分割して設けるとともに、分割されたリバースローラ62の間(リバースローラ62が無い部分)の軸の外周側に図示しない転がり軸受等を介して、リバースローラ62の外径よりもやや小さい外径の串刺しローラ状のプーリ(図示せず)を設けることにより、搬送ベルト82を時計回りに走行・回転するように駆動して用紙を搬送経路の下流側の第2搬送手段7やベルト搬送手段8’に搬送すればよい。フィードローラ61とリバースローラ62とのニップ部においては、搬送ベルト82がそのニップ部を形成しないようにリバースローラ62の外周面よりも一段低く設けられることとなる。これにより、フィードローラ61とリバースローラ62とのニップ部の部位において用紙を1枚に分離しつつ送り出した後、搬送ベルト82の上述した作用を発揮するようにすればよい。
従って、上記変形例の何れによっても、少なくとも、上記した第1の実施形態と同等の作用効果が得られる。
(第2の実施形態)
【0153】
図7〜図9を参照して、本発明の第2の実施形態を説明する。なお、図1〜図4に示した用紙搬送装置5と同一の構成要素・部材には、同一の符号を付して、その説明を省略または簡略化することにする。特に記載しないが、本実施形態で説明しない構成、つまり用紙搬送装置や他の構成およびその動作などは、図1〜図4に示した第1の実施形態の用紙搬送装置5と同様である。
【0154】
図7〜図9に示す用紙搬送装置5は、図1〜図4に示した用紙搬送装置5と比較して、第1搬送手段6と第2搬送手段7との間に形成される第1のシート搬送経路としての第1搬送路Aの他に、第2搬送手段7の上流から第2搬送手段7に至って形成され、第1搬送路Aと異なる別の独立した第2のシート搬送経路としての第2搬送路Bを有する点、第1搬送路Aと第2搬送路Bとが、第2搬送手段7の上流で合流する合流搬送経路(以下、「合流搬送路」ともいう)を有する点、および第2搬送回転部材対の一方のベルト搬送手段8が、第1、第2搬送路A,Bの合流搬送路の外郭方向に外れて配置されている点が主に相違する。図7〜図9に示す用紙搬送装置5は、前記相違点以外は図1〜図3に示した用紙搬送装置5と同様である。
【0155】
すなわち、ベルト搬送手段8は、その搬送ベルト82を張架した1対のローラ状のプーリ83,84のうちの片方のプーリ84が、プーリ83の直下に所定に離間させてハウジング80に回転自在に軸支され、これによって、そのベルト搬送面が、第2搬送路Bの外郭方向の面として形成されている。従って、ベルト搬送面には、第1搬送手段6によって第1搬送路A上を搬送されてくる用紙Sの先端が必ず接するとともに、図示しない搬送手段によって第2搬送路B上を搬送されてくる用紙Sが、第2搬送手段7に到達することを妨げないようにしている。
【0156】
次に、図7〜図9に示した用紙搬送装置5の搬送動作を説明する。用紙Sは給紙トレイ51内に水平に積載された状態から繰り出され搬送されるため、第1搬送手段6の給紙分離機構における用紙搬送方向は略水平方向となるが、その後は上方に位置した画像形成装置本体2の作像部へと搬送するために略水平方向に直交する略鉛直上方向に用紙Sを搬送する必要がある。
そこで、図8に示すように、給紙分離機構による用紙Sの1枚ずつの分離後、1枚の用紙Sは、搬送抵抗が少なくて済むよう緩やかな屈曲で搬送され、その先端が搬送ベルト82に当接する。
搬送ベルト82は、図8中の矢印a方向で示される略鉛直上(略真上)方向に向けて進むように走行しているため、搬送ベルト82に当接した用紙Sの先端は、図9に示すように、グリップローラ81と搬送ベルト82との挟持部(ニップ部)へと搬送され、グリップローラ81と搬送ベルト82との対により略鉛直上方向の下流側へと挟持搬送される。この際、上記したように用紙Sに対しては、搬送ベルト82からその搬送方向に進める搬送推進力が伝達され作用するとともに、搬送ベルト82によりグリップローラ81と搬送ベルト82とのニップ部に向かって方向が変えられるので、高剛性の用紙Sでも搬送不良を生じることなく、安定して搬送できる。
【0157】
以上説明したように、図7〜図9に示した用紙搬送装置5によれば、合流搬送路を有する用紙搬送装置においても、図1〜図4を参照して説明した用紙搬送装置5と同様な作用効果、すなわち厚紙などの高剛性の用紙を安定して搬送でき、紙種対応性に優れるとともに、少なくとも第1、第2搬送路A,Bなどの2つ以上の複数の搬送路を有した用紙搬送装置に対応して適用でき、その応用範囲を広げること、つまり機種対応性にも優れた用紙搬送装置とすることができる。
【0158】
なお、第2の実施形態は、図7〜図9に示したように既存の第2搬送ローラ対81,83を用いてベルト搬送手段8を構成した例に限らず、図6(c)に示した第1の実施形態の変形例と同様に、第2搬送ローラ対81,83とは別体の独立したベルト搬送手段8を設けて構成してもよい。
【0159】
(第3の実施形態)
図10を参照して、本発明の第3の実施形態を説明する。なお、第2の実施形態と同一の構成要素・部材には、同一の符号を付して、説明を省略または簡略化することにする。特に記載しないが、第3の実施形態で説明しない構成、つまり用紙搬送装置やその他の構成およびその動作などは、図7〜図9に示した第2の実施形態の用紙搬送装置5と同様である。
【0160】
図10に示すように、その搬送時に湾曲された用紙Sの後端Seが、ガイド部材71などによる支持から外れる際には、湾曲した用紙Sの反力により、同図中に示した矢印b方向に用紙Sの後端Seが移動するハネ現象が発生する。特に厚紙のような腰の強い、つまり高剛性の用紙Sにおいてはその反力も大きくなるので、このハネによる突発音が問題となる。
すなわち、その搬送過程においては、少なくとも2つの支持点によって支持され強制的に用紙Sが湾曲され、その用紙Sの後端Se側が、一方の支持点としての第1搬送手段6の挟持部やガイド部材71などから外れると、先端側だけで支持され、その湾曲した用紙Sの弾性的な復帰力によって、用紙Sの後端Seが搬送ベルト82の搬送面82aに瞬時に衝突する。その際の衝撃は、用紙Sの剛性強度が高いほど大きくなる。このため、上記ハネ現象によって用紙Sの後端Seが搬送ベルト82に衝突して生じる突発音は、ユーザに不快感を生起させるだけでなく、故障が生じたとの誤認を招くおそれがある。すなわち、通常の用紙Sであるか高剛性の用紙Sであるかに拘わりなく用紙搬送が正常に行われていても、上記の突発音が生じることから、ユーザに、装置が不調であるかのような余計な疑念を与えるおそれがある。
【0161】
そこで、同図に示すように、この第3の実施形態の用紙搬送装置5において、そのベルト搬送手段8が、該搬送ベルト82を張架した1対のローラ型のプーリ83,84およびグリップローラ81以外の搬送ベルト82に接触する部材としてのテンション・ローラ85などの当接部材を、搬送ベルト82の搬送面82a側に配置しないようにした。これにより、搬送ベルト82の搬送面82a側の部位・箇所に適度の弾性を持たせ、上記した用紙Sの後端Seハネによる衝撃を、搬送ベルト82の弾性作用により吸収して、厚紙などの高剛性の用紙Sの搬送時にも、静音性を確保できる用紙搬送装置5を実現して提供するようにしている。
【0162】
テンション・ローラ85は、プーリ対83,84に張架されて搬送ベルト82上に形成される2本の直線状部位において、その一方の搬送面82a側ではない、他方の反対面側部位の内周面に接する位置で、かつ、該位置から搬送ベルト82を横切って外方に変位可能に軸支され、該ローラ85が図示しない付勢部材によって図において右方の外方向に押圧され付勢されている。これにより、テンション・ローラ85は、搬送ベルト82の走行に伴い従動回転する一方、常時、所定の付勢力を受けて外方向に変位するように搬送ベルト82の内周面に接して、搬送ベルト82をその周長さ方向で緩むことなく一定の張力を維持できるようにしている。
【0163】
従って、第3の実施形態の用紙搬送装置5によれば、用紙搬送方向における該用紙Sの先端側が第2搬送手段7によって挟持・搬送されて、用紙Sの後端Seが、ガイド部材71による支持から外れ、搬送ベルト82の搬送面82aに衝突した場合にも、図中二点鎖線で示すようにその衝突方向に搬送ベルト82の搬送面82aが変位するように十分に弾性変形でき、これにより用紙Sの後端Seハネによる衝撃を吸収できるので、その衝突による発生音の大きさを低減させて、用紙搬送装置の動作音として異音が発生することを抑制し緩和できる。
【0164】
以上述べたように、本実施形態の用紙搬送装置5によれば、搬送した用紙Sの後端Seが搬送ベルト82の搬送面82aに接する箇所と別の箇所に、該ベルト82に接触してこれを支持する当接部材としてのテンション・ローラ85を配置しているので、用紙Sが所定に湾曲されて搬送されたときに、該用紙Sの後端Seが、第1搬送手段6のニップ部か、ガイド部材71かの何れかから外れて、搬送面82aに衝突した場合には、この衝突された部分の搬送ベルト82を十分に弾性的に撓ませて、衝撃を吸収させることができ、該衝突で生じる突発音(ハネ音)を抑制することができる。すなわち、用紙Sの後端Seが搬送ベルト82の搬送面82aに接する場合には、用紙Sの後端Seが接した搬送ベルト82箇所の変形を当接部材が妨げることなく、用紙Sの後端Seの接触方向に搬送ベルト82を十分に撓ませることができる。
特に、厚紙などのように高剛性の用紙Sを搬送した場合に、その用紙搬送方向における用紙Sの後端Seが搬送ベルト82に強く衝突するように接しても、該衝突による衝撃を搬送ベルト82の弾性的な変形によって吸収し緩和でき、その発生する衝撃音を十分に抑制できる。
従って、上記したように用紙搬送時の突発的な発生音を抑制できるので、ユーザの不快感を解消し、また故障が生じたとの誤認も回避した静粛性が得られ、装置の使用感を向上させることができる。
【0165】
他方、上記した用紙搬送過程のように、用紙Sの先端が始めて搬送ベルト82の搬送面82a側に接した際には、この用紙Sの先端の接触によって、たとえ突発音が生じないとしても、ある程度の搬送ベルト82の弾性的な変形が期待できるので、用紙Sの先端が搬送面82aからハネ返ることなく、つまり反発させることなく、ソフトに当接させて、そのまま接した状態に移行させることが可能となる。すなわち、用紙搬送方向に進むように走行する搬送ベルト82の搬送面82aに対して、第1搬送手段6によって搬送された用紙Sの先端が、始めて搬送面82aに対して斜めに突入角度θ(図8参照)をもって突き当たっても、用紙Sの先端を搬送面82aから反発させずに、用紙Sの先端が進む向きを搬送面82aに追従させて搬送ベルト82が進む向きに移行させることができる。
【0166】
第3の実施形態は、図10に示したものに限らず、例えば十分な静音性が得られる程度の搬送ベルトの変形が可能であれば、図10に示した構成のように、所定に対向配置された1対のプーリ83,84に張架されて搬送ベルト82上に形成された略直線状の2つのベルト走行面のうち、第1搬送手段6に対面しない非搬送面側だけにテンション・ローラ85を配置することに限定されることなく、対面した搬送面側を含めて2つのベルト走行面のうちの一方を選択し、この選択したベルト走行面上での何れかの箇所に該ローラを配置してもよい。すなわち、用紙の厚さ方向の剛性強度に拘わりなく、上記したハネ現象によって用紙の後端がベルトの搬送面上に接する箇所はほぼ一定なので、この接する箇所から上記のベルト変形を許容する程度の距離を確保して離れた搬送面上の適宜箇所に、テンション・ローラを当接させるように該ローラを配置してよい。
【0167】
また、第3の実施形態では、上記の所定位置を確保したうえで、張架されたベルトの内側から外方に押圧付勢して張力を確保するためのテンション・ローラを設けた構成としたが、これとは逆に、ベルトの外側から内方に押圧付勢して張力を確保するためのテンション・ローラを設けた構成としてもよい。
この構成の場合には、張力付与の機能に加えて、さらに、ベルト外周面をクリーニングする機能を兼用させた構成としてもよい。このようなベルトに対する張力付与機能とベルトの搬送面に対するクリーニング機能とを兼用させたテンション・ローラの構成によれば、そのベルトの搬送面を清浄に保つことができるので、ひいては画像品質の向上に寄与することが期待できる。すなわち、ベルト搬送面を清浄に保って、ベルトの搬送面に接する用紙の面を、同様に清浄に保つことができる。また、上記の所定位置を確保したうえで、テンション・ローラと、クリーニング・ローラとを別々に設けてもよく、さらに張力付与機能を主要な機能としないクリーニング機能を主体にしたクリーニング・ローラだけを設けてもよい。
【0168】
(第4の実施形態)
図11〜図13を参照して、本発明の第4の実施形態を説明する。なお、図7〜図9に示した第2実施形態および図10に示した第3実施形態と同一の構成要素・部材には、同一の符号を付して、説明を省略または簡略化することにする。特に記載しないが、第4の実施形態で説明しない構成、つまり用紙搬送装置や他の構成およびその動作などは、上記の第3の実施形態と同様である。
【0169】
第4の実施形態では、第1搬送手段からベルト搬送手段までの用紙搬送経路で、これらの2つの手段間の搬送経路を形成した固定ガイド部材からの負荷を低減することが可能であり、かつ、上記した用紙の後端が固定ガイド部材に衝撃的に接したことにより発生するハネ音を抑制して用紙搬送音を低減するようにしている。また、これに加えて、用紙収納手段から第1搬送手段までの用紙搬送経路で、固定ガイド部材からの負荷を低減することが可能であり、かつ、用紙の後端が固定ガイド部材に衝撃的に接しないようにして、ハネ音を抑制し用紙搬送音を低減するようにしている。
【0170】
第4の実施形態の用紙搬送装置5は、図11〜図13に示すように、底板50上に積載された用紙Sの最上位の用紙Sが、搬送を開始されるとき、該搬送方向での用紙の先端の位置を起点にして、この起点から、用紙の先端が第1搬送手段6に達する到達点までの間の区間では、用紙が略ストレートに進行するようにしている。そして、用紙を搬送している最中の用紙の先端の位置を基準にして、第1搬送手段6から用紙の先端が離れる位置を起点にして、この起点から用紙の先端がベルト搬送手段8に達する到達点までの間の区間では、用紙が略ストレートに進行するようにしている。さらに、同区間では、用紙の先端が、第1搬送手段6と第2搬送手段7との間の用紙搬送経路でその内郭方向に配置された固定ガイド部材90によって、第1搬送手段6のニップ部に直接向うように進むことが妨げられないようにするとともに、少なくとも、用紙先端がベルト搬送手段8に達した以降、用紙の搬送が進展して、第1搬送手段6および第2搬送手段7によって用紙が挟持搬送されている場合には、用紙上における両手段の挟持箇所の中間部分が、前記の固定ガイド部材90によって、不要に湾曲されないようにしている。
【0171】
図11に示すように、用紙搬送装置5において、用紙の進行方向を変更するという意味での用紙ターン部における下流側には、ターンの内側にターン後ローラとしてグリップローラ81が設けられ、このグリップローラ81に対向してベルト搬送手段8としての搬送ベルト82がターンの外側に設けられ、かつ、搬送ベルト82はそのベルト走行面(搬送面)が、上流のターン前ローラ対としての第1搬送手段6単体で搬送した場合の用紙の進行方向に対して、概略交差するように、正確には用紙の先端が突入角度θの鋭角を持って接触するように延在されている。
そして、ターン部における上流のターン前ローラとしてフィードローラ61から、下流のベルトである搬送ベルト82までの用紙搬送経路においては、その用紙搬送経路を形成するとともに、用紙をベルト搬送手段8に案内する第2のガイド部材としての用紙ガイド部材93,91が配置されている。これら用紙ガイド部材(以下、単に「ガイド部材」ともいう)93,91の形状により、該用紙搬送経路上の第1搬送手段6から搬送ベルト82までの間で搬送される用紙Sが、ほぼストレートに送られるようになっている。第1搬送手段6から発した用紙の先端は、その搬送される進行方向を変更することなく、そのままの進行方向で、搬送ベルト82のベルト走行面に到達するようにしている。
【0172】
図12にさらに具体的に示すように、用紙搬送経路の外郭方向に設けられたガイド部材93,91は、その途中でターン、湾曲等がない形状・配置で、ほぼ同一平面となるよう構成されている。
ガイド部材93,91には、それぞれ用紙を案内するガイド面93A,91Aが形成されている。第1搬送手段6からベルト搬送手段8に用紙が達するまでの用紙搬送経路を形成した用紙ガイド部材のうち、用紙搬送経路の外郭方向のいくつかのガイド部材93,91のガイド面93A,91Aを規定した各形状は、各ガイド部材93,91のガイド面93A,91Aが、ほぼ同一の平面に属し、かつ、隣接したガイド面端部93A,91A同士の間隙距離が所定に小さく形成されている。つまり、各ガイド面93A,91Aは、用紙搬送方向に進む用紙の先端および用紙の後端が引っ掛ったり落ち込んだりしない程度の図において左右方向の間隙を確保して、用紙搬送に関してはほぼ連続的とみなせる平面(同図において破線で示されている)を構成した形状に形成されており、かつ、その連続的な平面は、フィードローラ61および分離部材としてのリバースローラ62が互いに接した接点を含むとともに、この接点以外の平面では搬送される用紙の厚さ程度の寸法を加味されて規定される平面と、略平行な関係が設定されている。これにより、用紙の先端が第1搬送手段6を発してベルト搬送手段8に到達するまでは、その搬送過程で搬送される用紙を直進させ、略ストレートに進ませるようにしている。
【0173】
従って、たとえ用紙が第1搬送手段6から搬送ベルト82までの間の区間で、ガイド部材93,91の各ガイド面93A,91Aに接した状態で、搬送された場合にも、これらの間には段差が解消されているので、用紙の後端がガイド面93Aからガイド面91Aに乗り移る際には、上記のハネ音を生じさせずに済み、かつ、ガイド部材93,91からの用紙に対する搬送抵抗も必要最小限にでき、用紙に対する固定ガイドからの負荷低減が可能となる。
【0174】
上述したように、フィードローラ61およびリバースローラ62からなる第1搬送手段6は、シート分離機構としてのFRR給紙方式等の給紙分離機構であり、この給紙分離機構においては、摩擦により用紙を分離していることからフィードローラ61の搬送力が比較的小さく、給紙分離機構が搬送している用紙に対して搬送負荷が大きい場合には、用紙のスリップを生じて、設計とおりの搬送速度(線速度)で用紙を送れないことが多いため、例えばコピー生産性の低下や、用紙のジャムなどが生じやすくなる。より詳細には、用紙の搬送負荷が大きい場合は、分離する1枚の用紙に接したフィードローラ61と該用紙との間にスリップが生じて、たとえ用紙を1枚に分離できても、この1枚の用紙を、設計とおりの正確な搬送速度で送り出せないことになるため、単位時間当たりの搬送枚数が減少して画像形成上での生産性の低下を招いたり、用紙が停止してしまう用紙ジャムなどが生じやすくなったりする。
【0175】
これに対して、この第4の実施形態では、ガイド部材93,91のガイド面93A,91Aを、用紙自体に対する外力や重力による変形作用が皆無と仮定したうえでの、第1搬送手段6単体で搬送した用紙が進行する仮想的な用紙搬送面に対して、所定の間隙距離を確保して略平行な関係となるように、かつ、略同一平面に属するように形成しているので、上記した各種の問題を一挙に解消できる。
すなわち、ガイド部材93,91は、第1搬送手段6から発して搬送される用紙を、その直進状の進路を保持するようにガイドしているだけであり、用紙を何ら変形させたり、該用紙の進行方向を変更したりしていないので、搬送抵抗は必要最小限となる。このため、上記した生産性の低下や、用紙ジャムなどを未然に防止できる。
そして、搬送ベルト82に用紙先端が達した以降の用紙搬送過程で、前記の区間における上流側のガイド部材であるガイド部材93のガイド面93Aから、下流側のガイド部材であるガイド部材91のガイド面91Aに、用紙の後端が、乗り移る際には、これらのガイド面93Aとガイド面91Aと間の段差を解消するように、両ガイド面93A,91Aを同一平面に属するように形成しているので、両ガイド面93A,91Aに対する用紙の後端の接触が略継続的に維持可能となり、少なくともハネ音を生じさせない程度に、用紙の後端がガイド面93Aから一旦離れて、ガイド面91Aに衝撃的に当接させずに済む。
【0176】
他方、図13に示すように、第1搬送手段6から第2搬送手段7に至るまでの用紙搬送経路を形成した用紙ガイド部材のうち、用紙搬送経路の内郭方向に配置された第4のガイド部材90は、第1搬送手段6および第2搬送手段7がともに用紙を挟持して、たとえ両手段6,7間に位置した該用紙の中間の部分が略直線状に伸展した状態となった場合にも、ガイド部材90自身が用紙の中間の部分に当接したり摺接したりして用紙の前進を妨げる搬送抵抗を生じさせないように、所定に内郭方向側に退避した位置に設けられている。
ガイド部材90は、第1搬送手段6におけるターン内側配置のローラであるフィードローラ61と第2搬送手段7におけるターン内側配置のローラであるグリップローラ81との接線を結ぶ図13に破線で示す接線αよりも、内側に設けられている。これにより、用紙搬送過程で、用紙は内側ガイドとしてのガイド部材90に当たらずに送られることから、第1搬送手段6から用紙の先端が発して、第2搬送手段7から用紙の後端が通過するまでの用紙搬送過程で、さらに用紙搬送時の負荷を低減でき、厚紙等の高い剛性・強度の用紙を安定して搬送することができる。
【0177】
ガイド部材90は、より詳細には、自身に形成されたガイド面90Aの全域に渡って、前記の接線αから所定の間隙距離だけ図において左斜め上方に平行移動したような平面に形成されている。換言すれば、ガイド面90Aは、その全域に渡って、用紙搬送方向に対して直交する図において左斜め上方の方向に接線αから所定の間隙距離だけ離れた位置を占めるように、かつ、接線αに対して概略平行な連続した平面に形成されている。
ここで、図20に示した従来構成の用紙搬送装置と第4の実施形態のそれと対比して説明する。図20に示した従来の用紙搬送装置では、用紙Sの先端が垂直なガイド72a面を形成したガイド部材72に当接した以降は、その用紙Sの先端はガイド面72aに沿って同図中に上方として示された用紙搬送方向の下流に送られる。この際、同図20中に符号Xa〜Xdを付して示したように、用紙の先端が上流側のローラ対105に到達した以降は、用紙Sが上記の接線を越えて突出した形状の内側のガイド部材103に当たることとなり、この部分で用紙は曲げられながら送られることになるが、このように用紙が内側に曲げられるときに用紙搬送の負荷が大きくなる。つまり、第1搬送手段としての上流側のローラ対105や第1搬送手段としての下流側のローラ対106から用紙に伝達された用紙搬送力はその一部が、このように用紙を曲げるために費やされ、その全部が用紙を進めるために供されないことになる。内側ガイド部材103によって用紙が曲げられている限りは、用紙搬送力の一部消費が解除されずに継続することになる。また、用紙の中間部分が内側ガイド部材103と摺動しながら送られることで、用紙搬送の負荷も増すことになる。すなわち、内側ガイドに接した用紙の中間部分が、内側ガイド部材103よって押圧変形されながら、搬送方向に進み続けるので、両者間の接触圧が高くなり、このため両者間に生じる摺動抵抗が増大する。
【0178】
これに対して、本実施形態では、図13に示したように、ガイド部材90のガイド面90Aを、上記の接線αを越えずに、つまり該接線αに非接触な用紙搬送経路から離れる方向に退避した位置に、該接線αと略平行になるように形成しているので、上記のような用紙搬送の負荷増大を未然に防止できる。本実施形態のガイド部材90は、用紙搬送経路から用紙を逸脱させないという最小限のガイド機能を果たしながら、概略、第2搬送手段7のニップ部に向うように進む用紙の先端に対してその進路上の妨害物となったり、第1搬送手段6に挟持された用紙の箇所および第2搬送手段7に挟持された用紙の箇所との間に位置した該用紙上の中間部位を曲げたり摺動抵抗を生じさせたりすることがなくなり、上記した搬送上の負荷を一切生じさせずに済む。
【0179】
図11および図12において、本実施形態では、ピックアップローラ60は用紙Sを第1搬送手段6に給送する給送回転部材として、フィードローラ61はシート給送回転部材として、リバースローラ62は分離部材として、それぞれ機能する。
用紙搬送経路上のピックアップローラ60からフィードローラ61までの間には、ターン外側の用紙ガイド形状により、搬送される用紙が略ストレートに送られるようにしている。すなわち、フィードローラ61による用紙送り出し方向と、ピックアップローラ60からフィードローラ61まで搬送される用紙の方向とが、略同一面に属するように設定されている。
具体的には、ピックアップローラ60の位置、第1のガイド部材としての給紙トレイ51前面の用紙ガイド面51A、第2のガイド部材としてのガイド部材93の形状は、途中でターン、湾曲等がない形状、配置にて、略同一平面となるよう構成され、かつ、謂わばその平面は、ピックアップローラ60およびフィードローラ61によって規定される用紙搬送面と略平行な関係となるように設定している。すなわち、図12に示すように、フィードローラ61とリバースローラ62との回転中心を結んだ線に対して直交し、両ローラ61,62の接点を通る線βは、ピックアップローラ60が積載された最上位の用紙に接する接点と同一線上にあり、この線βに対して、略同一面に設けられたピックアップローラ60からフィードローラ61までの各ガイド部材によるガイド面51A,93Aが、略平行な関係となるように設けられている。
【0180】
換言すれば、ピックアップローラ60から第1搬送手段6に至るまでの用紙搬送経路を形成したガイド部材のうち、用紙搬送経路の外郭方向の各ガイド部材としての給紙トレイ51およびガイド部材93が形成したすべてのガイド面51A,93Aは、略同一の平面に属し、かつ、これらのガイド面51A,93Aは、用紙搬送に供されるピックアップローラ60およびフィードローラ61が、ともに接する仮想的な単一の平面に対して、所定の間隙距離を確保した略平行な関係となるように設定されている。
【0181】
従って、外郭方向に配置された固定ガイド部材としての給紙トレイ51およびガイド部材93が形成したすべてのガイド面51A,93Aは、ピックアップローラ60が接した最上位の用紙の用紙面として規定される用紙積載面を延在させた仮想平面に属した略連続した同一平面を形成して、上記したハネ音を生じさせる段差を解消しているので、用紙搬送音に異音が混在することを未然に防止できるとともに、ガイド面51A,93Aから搬送された用紙が受ける搬送抵抗を、必要最小限に留めることができる。
他方、用紙の先端が、給紙分離機構としての第1搬送手段6に到達した以降にも、この第1搬送手段6に未到達な用紙の下流側部分が、外郭方向に配置された固定ガイド部材から受ける搬送抵抗は、必要最小限に留まり軽減されることになる。このため、上記した生産性の低下や用紙ジャムを防止できるとともに、第1搬送手段6単体による用紙分離性能や搬送性能を低下させずに済む。
【0182】
なお、フィードローラ61およびリバースローラ62からなる第1搬送手段6において、フィードローラ61およびリバースローラ62が互いに接して形成したニップ部は、上記の仮想的な単一の平面上に設定されている。従って、ピックアップローラ60およびフィードローラ61によって規定される用紙の搬送方向と、第1搬送手段6によって規定される用紙の搬送方向とは略一致し、これらがそれぞれ規定した2つの仮想的な用紙搬送面は、略同一な平面に揃うことになる。従って、ガイド部材93は、ピックアップローラ60から第1搬送手段6であるフィードローラ61に至るまでの間の区間の用紙搬送経路を形成してその外郭方向に位置したガイド部材として、および、第1搬送手段6であるフィードローラ61からベルト搬送手段8に至るまでの区間の用紙搬送経路を形成してその外郭方向に位置したガイド部材として、兼用した共通部材であり、かつ、同一な平面に揃えられた2つの用紙搬送面に対して、略平行となるように設定されていることになる。これにより、ガイド面93Aが1つの平面として形成しているので、結果的に、用紙収納手段から発進して、搬送を開始された用紙は概略用紙の向きを維持したまま、その用紙の先端がストレートに前進されて、ベルト搬送手段8のベルト走行面に到達することになる。
【0183】
以上述べたように、第4の実施形態の用紙搬送装置によれば、第1搬送手段からベルト搬送手段に至るまでの区間の用紙搬送経路を形成したガイド部材のうち、用紙搬送経路の外郭方向に位置するいくつかのガイド部材が形成したすべてのガイド面は、用紙搬送方向における段差を解消した、略連続した1つの平面を形成しているので、前記の区間を搬送される用紙はストレートに進んで、ガイド部材から受ける搬送抵抗を最小限にできるとともに、第1搬送手段からベルト搬送手段までの間に、少なくとも用紙の後端が、前記の何れかのガイド部材に衝撃的に当接させる段差を皆無とでき、ハネ音としての衝突音を生じさせず済む。このため、前記の区間での段差に起因した用紙ジャムなどの搬送不良を防止できるとともに、同区間での段差に起因した用紙搬送装置の搬送動作音として異音が発生することを回避できる。特に、厚紙などの高剛性の用紙を搬送する場合にも、前記の区間での搬送不良や、用紙の後端による異音の発生を十分に防止できて、用紙搬送装置として、その紙種対応性能を向上できる。
【0184】
また、第1搬送手段および第2搬送手段の間に配置された用紙搬送経路の内郭方向のガイド部材は、第1搬送手段および第2搬送手段におけるそれぞれの用紙搬送に関連した最外形状同士を所定に結んだ接線を越えないように配置しているので、このガイド部材に起因した搬送抵抗が生じることを防止でき、少なくとも、第1搬送手段の負荷を低減して、安定した用紙搬送ができる。用紙搬送経路の内郭方向のガイド部材が形成したガイド面は、用紙搬送に供される第1搬送手段および第2搬送手段がともに接する仮想的な単一の平面に対して、用紙搬送路から離れる方向に位置されて非接触に、かつ、この単一の平面と略平行に設けられている。従って、用紙の先端が第1搬送手段を通過した時点から、用紙の後端が第2搬送手段を通過する時点までの用紙搬送過程において、用紙の先端が搬送路内郭方向のガイド部材に突き当たってこの突き当たった先端部分と第1搬送手段に挟持された部分との中間部分を変形せずに済むことになり、また特に両搬送手段が用紙を挟持している場合には、用紙上における、第1搬送手段が挟持した箇所と第2搬送手段が挟持した箇所との中間の部分が、両搬送手段の間で用紙搬送経路の内郭方向のガイド部材に接触せずに用紙を搬送できるので、前記の中間の部分がガイド部材に接触したことに基づいた摩擦抵抗が生じて搬送抵抗となることを、皆無にできるとともに、該中間の部分の変形をガイド部材が妨げて搬送抵抗に転化されることも、皆無にできる。
【0185】
特に、変形に対する自らの抵抗能力が高い、厚紙などの高剛性の用紙を搬送する場合にも、少なくとも、この高剛性の用紙を両搬送手段が挟持した搬送過程では、高剛性の用紙を前記のガイド部材に非接触に維持でき、前記の各種の搬送抵抗の発生を未然に防止できる。このため、高剛性の用紙を、両搬送手段が挟持している場合の用紙搬送をスムーズにできて、用紙搬送装置として、その紙種対応性能を向上できる。
【0186】
さらに、ピックアップローラから第1搬送手段に至るまでの区間の用紙搬送経路を形成したガイド部材のうち、用紙搬送経路の外郭方向に位置した、いくつかのガイド部材が形成したすべてのガイド面は、搬送方向における段差を解消した、略連続した1つの平面を形成しているので、前記の区間を搬送される用紙はストレートに進んで、ガイド部材から受ける搬送抵抗を最小限にできるとともに、ピックアップローラから第1搬送手段までの間に、少なくとも用紙の後端が、前記の何れかのガイド部材に衝撃的に当接させる段差を皆無とでき、ハネ音としての衝突音を生じさせずに済む。このため、前記の区間での段差に起因した搬送不良や、異音の発生を防止できる。特に、厚紙などの高剛性の用紙を搬送する場合にも、前記の区間での搬送不良や異音の発生を十分に防止できて、用紙搬送装置として、その紙種対応性能を向上できる。
【0187】
特に、本実施形態の用紙搬送装置では、給紙位置から、その厚さ方向に用紙をなんら変形させることなく、該用紙の先端をベルト搬送手段の平坦なベルト走行面に到達させるように用紙を一貫して直進させて搬送しているので、ベルト搬送手段の能力を最大限に発揮させることが可能となり、その用紙搬送性能を向上できる。
すなわち、この用紙搬送装置の用紙搬送過程で、一旦、その厚さ方向に用紙を変形してその進行方向を所定の向きに変更させることについては、用紙搬送経路を形成した固定された外郭方向および内郭方向のガイド部材は、ほとんど一切関与せずに、ベルト搬送手段が主体になる。少なくとも外郭方向のガイド部材は、用紙の先端がベルト走行面に達するまでの直進的な方向性だけを確保して、ベルト搬送手段による前記の用紙の向き変更や変形を妨げない位置に配置されているだけではなく、むしろ用紙の進行方向を変更するため用紙が湾曲するように変形される際には、必ず外郭方向のガイド部材から向き変更された用紙先端が離れかつ用紙先端よりも後端側の用紙の部分はこれに追従して離れ続けることになるので、外郭方向のガイド部材と用紙との間に生じる搬送抵抗は、最小限に留まりかつ順次減少することになるとともに、上述した謂わば能動的なガイド部材としてのベルト搬送手段による前記の向きを変更させるガイド機能が十分に発揮され、その作用効果が得られることになる。これとともに、用紙が一旦変形を開始した以降は、変形方向の内側に位置した内郭方向のガイド部材は、この変形を妨げない退避させた位置に設けているので、このような変形時における内郭方向のガイド部材に起因した搬送抵抗を生じさせずに済む。これらによって、変形に対する自らの抵抗能力が高い、厚紙などの高剛性の用紙を搬送する場合に、搬送不良を防止するのに特に有利となり、用紙搬送装置として、その紙種対応範囲の拡充が図れ、搬送性能を高性能化できる。
【0188】
なお、第4の実施形態の用紙搬送装置の説明では、図10に示した第3の実施形態で説明したベルト搬送手段に付随させた当接部材についての記述や図示を省略したが、適宜、第3の実施形態と同様に、当接部材を設けてよく、これは以降の各実施形態でも同様である。また、第4の実施形態では、第2搬送路を有した用紙搬送装置の例を説明したが、第2搬送路を有さない用紙搬送装置構成に適用してもよく、これは以降の各実施形態でも同様である。
【0189】
(第5の実施形態)
次に、図14を参照して、本発明の第5の実施形態を説明する。なお、上記の第4実施形態と同一の構成要素・部材には、同一の符号を付して、説明を省略または簡略化することにする。特に記載しないが、第5の実施形態で説明しない構成、つまり用紙搬送装置やその他の構成およびその動作などは、上記の第4実施形態と同様である。
【0190】
第5の実施形態の用紙搬送装置5は、図14に示すように、ピックアップローラ60からフィードローラ61までの間のターン外側の用紙ガイド形状に対して、フィードローラ61からベルトまでの間のターン外側の用紙ガイド形状が、同一面ではなく、つまり非同一面に設けられている。
【0191】
より詳細には、同図に示すように、用紙搬送経路の外郭方向に配置された搬送ガイド部材95において、そのピックアップローラ60からフィードローラ61までの間の区間に対応して形成したガイド面95Aは、上記した第4の実施形態と同様に、用紙搬送に供される両ローラ60,61がともに接した仮想的な平面と略平行な面に形成したのに対して、フィードローラ61からベルト搬送手段8までの間の区間に対応して形成したガイド面95Bは、前記のガイド面95Aを延在した仮想的な平面に属することなく、第2搬送手段7のニップ部近傍に向うように、所定角度で上向きに傾斜した略平面状の傾斜面となるように形成している。なお、ガイド面95Aからガイド面95Bとの接続部位は、フィードローラ61の半径や、搬送する多様な用紙の剛性強度を勘案して、所定量、用紙搬送経路の下流側に偏倚させた位置に設けられている。
【0192】
従って、フィードローラ61のニップ部に到達した用紙の先端は、略該フィードローラ61周囲で、その固定ガイド部材に対する接触が、ガイド面95Aからガイド面95Bに移行して、その進行方向が所定傾斜角度の図において右斜め上向き方向に変更される、つまり比較的に緩やかな右斜め上向きの方向に変更される。このため、フィードローラ61に接して直進状に用紙を通過させた構成に比べて、フィードローラ61に対する用紙上の接触面積が拡充できるので、このように用紙の進行方向を変更しても、十分な搬送力をフィードローラ61から用紙に供給できる。すなわち、直進状に用紙を通過させた構成では、両者の接触部分が、略線状の接触となるのに対して、このようにフィードローラ61付近で該ローラ61を関与させるようにして向きを変更させた構成では、フィードローラ61の外周に、用紙をある程度巻きつかせることができ、両者の接触部分を略周面状に広げることができる。このように両者間の接触部分を拡大しているので、フィードローラ61から用紙に、摩擦接触で伝達される搬送力は、接触部分としての摩擦接触面積の拡大に伴い増大される。
そして、このように用紙の進行方向を変更、つまり針路変更した以降の用紙搬送過程でベルト搬送手段8に達するまでには、用紙は、右斜め上向き方向に直進して進行するように、上向き傾斜面のガイド面95Bによってガイドされる。
ガイド面95Aからガイド面95Bに移行することによって、用紙進行方向の変更に費やされる搬送力分を差し引いても、フィードローラ61から十分な搬送力を用紙に供給できるとともに、一旦針路が変更されて、ガイド面95Bによってガイドされた区間を進む用紙は、再度、針路変更せずに変更された方向にそのまま直進するので、上記と同様に前記の区間を進行中の用紙部分に対するガイド面95Bからの搬送抵抗を減少できる。
【0193】
他方、このように搬送される用紙の後端も、搬送ガイド部材95と衝撃的に接したことによる上記したハネ音を生じさせずに済む。すなわち、搬送ガイド部材95が形成したガイド面として、ガイド面95Aおよびガイド面95Bは、連続しており、しかも両者間に、用紙の後端の支持を瞬間的にでも解除するような、高位置から低位置に変化する段差が形成されていないので、用紙の後端が一旦ガイド面95Bに接すれば、ハネ音を生じさせない程度にガイド面95Aおよびガイド面95Bから離れずに済む。
【0194】
以上述べたように、本実施形態の用紙搬送装置によれば、上記した第4の実施形態と略同様な作用効果が得られるのに加えて、用紙の先端の進行方向を、第1搬送手段のフィードローラ付近で、第2搬送手段に向うように所定角度変更し、かつ、フィードローラを境界にした該フィードローラからベルト搬送手段までの区間で、変更した方向に用紙を直進させているので、フィードローラから用紙に十分な搬送力を供給したうえで、フィードローラからベルト搬送手段までに進む用紙に対する固定ガイドからの搬送抵抗を最小限に留めることができる。この結果、厚紙等の高剛性強度の用紙搬送時にも、異音発生や搬送不良を防止して、確実に用紙搬送でき、用紙搬送性能の向上が図れる。
【0195】
他方、第4の実施形態に比べて、この第5の実施形態によれば、少なくとも、用紙の先端が、第2搬送手段のベルト搬送手段に到達して接する箇所を、該第2搬送手段の挟持部に近接させることができる。すなわち、上記の第4の実施形態では、用紙収納手段から発した用紙の進行方向を変更せずにベルト搬送手段に到達させるように構成しているのに対して、この第5の実施形態では、第2搬送手段周辺で、該第2搬送手段の挟持部に向うように1回だけその進行方向を変更した構成なので、ベルト搬送手段上での用紙の先端の接触箇所を、前者よりも第2搬送手段の挟持部に近接できる。このため、例えばベルト搬送手段における直線状のベルト走行面でのその略中央箇所に、用紙先端や用紙の後端を接触させるように容易に構成できる。従って、このように構成した場合には、ベルト走行面の略中央箇所に、用紙の先端や用紙の後端を接触させて、ベルト搬送手段を十分に撓ませることができ、これらの接触時の衝撃を緩和できる。
他方、これによって、ベルト搬送手段の全長を短縮することも可能となる。すなわち、第2搬送ローラ対の一方のプーリから該ベルト上での前記の略中央箇所までの長さと、概略同程度の長さを、この略中央箇所から他方のプーリまでの該ベルト上での長さとして確保すればよいので、この第5の実施形態で前記したように、該ベルト上での接触箇所を第2搬送手段の挟持部に近接させた分だけ両方の長さが短くて済み、これによりベルト長を短縮できる。さらに、このようにベルト長を短縮した構成では、適宜、ベルトの弛みを防止するための、ベルトに対して適度な張力付与用の当接部材を不要とすることも可能となり、ベルト搬送手段の構成を簡素化できる。
【0196】
次に、図15を参照して、本発明の第6の実施形態を説明する。なお、上記の第5実施形態と同一の構成要素・部材には、同一の符号を付して、説明を省略または簡略化することにする。特に記載しないが、本実施形態で説明しない構成、つまり用紙搬送装置やその他の構成およびその動作などは、上記の第5実施形態と同様である。
【0197】
第6の実施形態の用紙搬送装置5は、図15に示すように、積載した用紙の積載枚数に拘わらず、該用紙の姿勢を一定に維持して、その最上位の用紙を、常時、一定位置に固定して設定された給紙位置に供給するように構成された給紙部としての用紙収納手段から、最上位の用紙を引き出して搬送するように構成された搬送装置であり、ピックアップローラ60からフィードローラ61までの間では、少なくとも、積載した状態での用紙の姿勢をそのまま維持して、該用紙を略ストレートに搬送するように構成され、さらにフィードローラ61からベルトまでの間の、用紙の先端がベルトの搬送面に達するまでは、同様に該用紙の姿勢をそのまま維持して、該用紙を略ストレートに搬送するように構成されている。
【0198】
用紙を積載するトレイ底板は、いわゆる給紙台として構成され、用紙を略水平に積載した角度を保って、上下動するように設けられている。すなわち、このように給紙台としての底板を上下動する方式は、大量給紙トレイ(LCT:Large Capacity Tray)、手差しトレイなどで使用される場合が多く、用紙を積層し載置した底板の上昇方法であり、同図では大量給紙トレイの構成を示している。
【0199】
より詳細には、同図に示すように、トレイ底板97は、概略、複写機1が対応可能として取り扱う最大サイズの用紙Sを載置可能な程度の平面形状を確保した平板状に形成されており、適宜構成の規制部材によって、その用紙に接する面を、常時、水平面に保持しながら、その水平方向の位置変更を不可に規制されるとともに、上下方向に移動可能に構成されている。例えば、そのトレイ底板97上の適宜箇所が、上下方向に延在された突条または溝条からなる図示しないレール状固定ガイド部材に、該部材延在方向にスライド移動可能に凹凸嵌合されている。また、トレイ底板97は、適宜構成の図示しない昇降機構によって、前記の規制部材が規定した上下方向に移動可能な範囲内で、任意位置にトレイ底板97を昇降駆動するようにしており、この昇降機構は、図示しないステッピング・モータなどを駆動源にしている。さらに、積載された最上位紙が給紙位置にあるか否かを検出するための位置検出センサとして、図示しない位置検出センサなどが、給紙位置またはピックアップローラ60に付随して設けられており、この検出結果に基づき、適宜の制御回路などによって、昇降機構の上昇駆動動作が所定に制御されている。
従って、このようにトレイ底板97を主体にした構成では、位置検出センサの検出結果に基づき、その積載面を水平面に保持しながら、昇降機構によって所定に上昇駆動され、トレイ底板97上に積載した用紙を、同様に水平面にその用紙面を保持したまま上方に移送して、所定の固定位置で回転駆動されるピックアップローラ60に用紙が接する箇所として規定された給紙位置に、その最上位の用紙を位置させている。
【0200】
そして、本実施形態の用紙搬送装置5では、用紙の先端が第1搬送手段6に達するまでの間の区間では、用紙が、略ストレートに進行し、かつ、第1搬送手段6に達した用紙の先端が、さらにベルト搬送手段8に達するまでの間の区間では、用紙が、略ストレートに進行するようにしている。
換言すれば、前記の給紙位置および該給紙位置での用紙面を基準にして、この用紙面を延在した仮想的な平面に、用紙搬送面を略一致させるように第1搬送手段6が所定に配置され、第1搬送手段6による用紙搬送面を延在した仮想的な平面に、第2搬送手段7における内郭方向の搬送部材としてのグリップローラ81がそのローラ外周を接するか、所定の間隙距離を確保するか、の何れかを選択して配置され、グリップローラ81に対向して斜め下方に延在されたベルト搬送手段8が配置されている。
すなわち、第1搬送手段6は、上記の実施形態と同様に、FRR給紙方式を採用した給紙分離機構として、上方のフィードローラ61と下方のリバースローラ62とを互いに接するように概略上下方向に対向配置した構成とされ、両ローラ61,62の接点としてのニップ部は、図において破線で示す仮想的な平面上に位置するとともに、このニップ部を通過して仮想的な平面とは直交した線上に、それぞれローラ61,62の回転中心が位置するように、両ローラ61,62が、配置されている。
また、第2搬送手段7は、内郭方向に配置された一方の対向対としてのグリップローラ81と、外郭方向に配置された他方の対向対としてのベルト搬送手段8とを有し、このベルト搬送手段8は、グリップローラ81の回転中心に対して水平方向の線上の所定位置を回転中心にしたプーリ83が配置され、前記の用紙搬送面よりも所定に下方で、プーリ83よりも第1の搬送手段に近づいた位置を回転中心にしてプーリ84が配置され、これらの両プーリ83,84に搬送ベルト82が巻き掛けられて張架した構成とされ、プーリ83によってベルト内周を支持された搬送ベルト82の外周が、グリップローラ81の外周に所定圧を確保して接するようにしており、この接触部位が、挟持部(ニップ部)とされている。
そして、前記の2つの区間において、用紙搬送経路の外郭方向に設けられたガイド部材として、搬送ガイド部材99が単独で設けられており、この搬送ガイド部材99が形成したガイド面99Aは、該2つの区間で共通で連続的に設けられた平面状に形成され、かつ、第1搬送手段6単体による用紙搬送面でもある仮想的な平面と概略平行に設けられている。
【0201】
本実施形態では、積層した用紙を載置して任意位置に昇降可能なトレイ底板を主体に構成した用紙収納手段を用いて、その給紙位置に位置させた最上位の用紙の用紙積載面を基準にし、この用紙面を延在した仮想的な平面上に、第1搬送手段のニップ部を位置させ、かつ、該第1搬送手段単体での用紙搬送方向を、仮想的な平面を延在した方向に揃えるように、上記したように第1搬送手段を構成するとともに、この延在した方向と交差するように、第1搬送手段のベルト搬送手段のベルト搬送面を配置している。そして、仮想的な平面と所定の間隙距離を確保して略平行となるように、ピックアップローラから第1搬送手段であるフィードローラに至るまでの間の区間の用紙搬送経路を形成してその搬送路外郭方向に位置したガイド部材のガイド面、および、第1搬送手段であるフィードローラからベルト搬送手段に至るまでの区間の用紙搬送経路を形成して搬送路外郭方向に位置したガイド部材のガイド面を形成している。さらに、これらの2つのガイド面を単一の搬送ガイド部材99が担当して、この搬送ガイド部材99は、前記の略平行な関係が設定された1つの連続した平面状のガイド面99Aを形成している。
【0202】
搬送ガイド部材99のガイド面99Aは、その搬送方向における下流端である周縁が、搬送ベルト82のベルト走行面に接することなく近接して設けられている。すなわち、ガイド面99Aの下流端である周縁は、ベルト走行面とは、上記のハネ音を生じさせない程度の所定に小さな間隙距離を確保して、搬送方向に対して直交する方向に略直線状に形成されている。また、搬送ガイド部材99は、トレイ底板97に積載された用紙Sにおける用紙搬送方向の先端面に対面した垂直面を有しており、この垂直面に、積載されたすべての用紙Sの先端面を当接させて、これらの用紙Sが正確かつ整然と重複してトレイ底板97上に積層して載置するようにしている。また、用紙Sの先端以外の他の端部が、特に図示しない適宜構成の他の部材に当接されて、同様に、トレイ底板97上の水平方向における用紙S位置を所定に規制されている。
また、本実施形態では、少なくとも、昇降駆動されるトレイ底板97を主体にした用紙収納手段の下段には、他の用紙収納手段が設けられてなく、少なくとも、トレイ底板97を有した用紙収納手段の下方から、該用紙収納手段を通過した構成の上記した第2搬送路は、設けられていない。
【0203】
以上のように、第6の実施形態の用紙搬送装置によれば、少なくとも、上記した第4の実施形態の用紙搬送装置と同様な作用効果が得られる。また、これに加えて、上記した第1ないし第5の実施形態に用いられた用紙収納手段では、用紙の積載枚数により底板の角度が変化する、つまり用紙積載面の傾斜角度が、搬送可能な許容範囲内で変化するのに対して、本実施形態では、枚数に関わらず底板の角度を一定にでき、換言すれば搬送開始する時点での用紙積載面としての最上位の用紙の用紙面を、常時、例えば水平などの一定角度、かつ、一定位置に保つことができる。しかも、最上位の用紙が積載された位置から、用紙の先端が第1搬送手段に達するまでの間の区間、および、用紙の先端が第1搬送手段からベルト搬送手段に達するまでの間の区間との両区間では、用紙面の姿勢を一切変更せずに、搬送方向に直進状に進ませて、ベルト搬送手段に到達させるように構成しているので、より一層、搬送抵抗を減少でき、より安定して搬送することができるとともに、上記のハネ音を生じさせずに済む。
すなわち、第1ないし第5の実施形態では、底板上に載置した枚数が多い場合には、底板の傾斜角度が小さく、底板は緩やかに傾斜し、用紙が搬送されて給紙が進展するのに伴い、底板上に残存した枚数が少なくなると、底板の傾斜角度が大きく、底板がより急傾斜し、これらに伴い、最上位の用紙の用紙面の傾斜姿勢は変化する。
これに対して、第6の実施形態によれば、該ピックアップローラに接した箇所から発して第1搬送手段に至るまでの搬送経路を進行中の用紙は、搬送路外郭方向のガイド部材によって、その用紙厚さ方向に用紙の進行方向を一切変更されたり変形されたりせずに済み、該ガイド部材から前記の搬送経路を進行中の用紙が受ける抵抗は、必要な最小限のものに留まるだけでなく、この移動進行中の用紙の後半が、トレイ底板上に積載されて残存した用紙から受ける抵抗も、最小限なものに留めることができる。すなわち、トレイ底板上に載置した枚数の減少に拘わることなく、常時、最上位の用紙の用紙面の姿勢は、同一な姿勢に保たれ、この最上位の用紙が、用紙面を延在した方向を進行方向にして、その姿勢のままで、少なくとも、用紙先端が、ベルト搬送面に到達するまで搬送されている。このため、ピックアップローラに用紙上の何れかの箇所が接している搬送状態では、その搬送方向におけるピックアップローラを境界にした用紙の前半部分と、後半部分とは、その用紙厚さ方向に一切変形されずに、積載した状態での最上位用紙の用紙面を延在した仮想的な平面内に保持できる。これらによって、第1搬送手段に至るまでの用紙搬送過程で用紙が受ける抵抗を最小化できる。他方、前記のピックアップローラからベルト搬送手段までの間の用紙搬送経路の外郭方向のガイド部材に、異音発生の要因となる段差を生起させずに済む。
【0204】
また、第1ないし第5の実施形態では、用紙の厚さ方向に対応した用紙トレイの高さ寸法によって該用紙トレイ内に積層して収納可能な用紙枚数が制約されるのに対して、本実施形態の用紙搬送装置では、上下方向に移動可能な底板の可動範囲によって、用紙枚数が規定されるので、用紙トレイの高さ寸法よりも底板の可動範囲を十分に大きく確保した構成にできて、該底板上に大量枚数の用紙を積載し、給紙に供することが可能となる。このため、この大量給紙トレイおよびこの第6の実施形態の用紙搬送装置を採用した画像形成装置によれば、用紙補充の回数を削減して、1度に大量枚数の用紙を、安定して連続通紙した画像形成が可能となり、画像形成装置としての利便性や、画像形成性能を向上できる。
【0205】
以上説明したとおり、各実施形態等に示した用紙搬送装置5のベルト搬送手段8は、第2搬送手段7(挟持搬送手段)の対向対の一方が、用紙(シート)の先端と接触(当接)した状態を保持しつつグリップローラ81とのニップ部(挟持部)に向けて用紙Sを移動・案内する移動案内手段の一例であるといえる。それ故に、移動案内手段としては、ベルト搬送手段8に限らず、上記構成・機能を有し、上記作用効果を奏するものならば何でもよい。
【0206】
上記の各実施形態では、第1搬送手段および第2搬送手段を、ともに挟持搬送手段としたが、それぞれの搬送手段単体の搬送方向に応じて、搬送対象の下面を支持して搬送するだけで済むならば、対向部材による挟持部を形成した挟持搬送手段としなくてよい。
また、上記の各実施形態では、その互いに異なる用紙(シート)搬送方向として、略水平方向からこれに対する垂直方向(略鉛直方向)の上向きに変更する例を説明したが、これに限られることなく、略水平方向から垂直方向(略鉛直方向)の下向きに変更したり、垂直方向の下向きか、上向きの何れかから略水平方向に変更したり、あるいは両方が斜め方向であったりしてもよい。
【0207】
第1搬送手段や、第2搬送手段、ピックアップローラを構成した部材としては、上述したものに限らず、それぞれの回転軸の軸長手方向に所定長さを確保した略長円筒状のローラ部材であっても、適宜、短円筒状のコロ部材であっても、何れでもよく、また、適宜、1つの回転軸上に所定の間隔を設けて、間欠的に複数のローラ部材やコロ部材が配置されていてもよい。
さらに、ローラ部材やコロ部材を配置していない前記のいくつかの間隔に、それぞれ上記した各実施形態における外郭方向および内郭方向のいくつかのガイド部材が形成したガイド面を位置させた構成としてよい。これらのガイド面としては、搬送方向の搬送中心線に対して適宜の規則的な対称に配置されていれば、用紙(シート)搬送方向に帯状のガイド面を形成したり、略線状のガイド面を形成したり、適宜、これらを混在させてもよい。
【0208】
また、移動案内手段は、用紙の推進力を付加する作用を有する説明をしたが、装置全体としてみたときに、搬送負荷を低減することに起因しているともいえる。その場合、例えばガイド面の内郭に用紙が接触することによる搬送負荷を低減するための手段として、移動案内手段によって用紙へ推進力を付加しなくても、ガイド面の内郭または外郭の用紙接触部に用紙が滞留ジャムを起こさない程度の低摩擦処理を施すか、低摩擦部材を貼付、低摩擦部材とすることとしてもよい(図23に示す湾曲ガイド部材103および湾曲ガイド部材104の固定ガイド面103Aに施した斜線部参照)。さらには、移動案内手段と上記低摩擦部を有するガイドとを組み合わせてもよい。
【0209】
また、上記した各実施形態では、給紙分離機構として、FRR給紙方式を採用したが、これに限られることなく、摩擦により所定に重送された用紙を分離して1枚の用紙だけを搬送方向に進み続けさせる分離機構であれば、適宜の摩擦分離方式を採用してよく、例えば上記したフィードローラに対して、上記のリバースローラの替わりに、分離爪を用いたり、固定部材であるフリクション・パッドを圧接した構成のフリクション・パッド方式を採用したりしてもよい。すなわち、このフリクション・パッド方式では、フィードローラに摩擦部材としてのフリクション・パッドを適宜の分離角度、分離圧で押し当て、これによって形成されるフィードローラとフリクション・パッドとの間のニップに用紙を通過させるようにしている。従って、フリクション・パッド方式を採用した給紙分離機構によれば、用紙が2枚重なった状態で引き出されても、下側の用紙は、フリクション・パッドから受ける抵抗の方が、重なった用紙間摩擦による抵抗よりも大きいので、それ以上の搬送方向への移動が阻止される。他方、上側の用紙は、フィードローラから受ける搬送力の方が、重なった用紙間摩擦による抵抗よりも大きく、かつ、フリクション・パッドから受ける抵抗よりも大きく、設定されているので、結局、上側の用紙だけが搬送方向に進み続けることになる。
【0210】
本発明は、例えば、モノクロの複写機1に限らず、カラー複写機や、モノクロのレーザプリンタやインクジェットプリンタ、インク転写リボンを用いるプリンタ等を含むプリンタに係る画像形成装置に関して、本発明に係るシート搬送装置を応用・適用可能である。
カラー複写機では、転写体で用紙(シート)を搬送しながら順次転写して重ね合わせる直接転写方式のタンデム型カラー画像形成装置や、中間転写体としての無端状の中間転写ベルトに転写した後、用紙に一括転写するタンデム型の画像形成装置においても同様に適用し実施することができる。無論、無端ベルト状の感光体が単一の画像形成装置においても同様に適用し実施することができる。
本発明は、例えば、画像形成部とスキャナとの間に用紙を排出する胴内排紙型の画像形成装置に限らず、画像形成装置本体の側部に備える排紙トレイに用紙を排出する画像形成装置にも適用してもよい。また、給紙装置3から繰り出された用紙を画像形成装置本体2の上部へ向かって略垂直方向(略鉛直上方向)の搬送路を形成しているがこの限りではなく、給紙装置から用紙が排紙トレイへ排出されるまでの搬送路が略垂直方向(略鉛直方向)でない画像形成装置にも適用可能である。
本発明は、孔版印刷機等を含む印刷機において、シート収容手段(給紙トレイ)やシート積載手段(底板や給紙台)からシート(用紙)を印刷部本体に搬送して供給するシート搬送装置にも適用してもよい。
【0211】
また、上述した画像形成装置としての複写機では、読み取る原稿を手動操作でセットする構成としているが、複数の原稿(シート)を自動的に読み取り動作するためのADF(自動原稿送り装置)を装備した複写機や印刷装置等において、該ADFに本発明のシート搬送装置を適用してもよい。すなわち、単一枚数の原稿を読み取り位置にまで自動搬送するだけではなく、適宜の複数枚、積層された原稿のうち、最上位または最下位の原稿を1枚ずつ読み取り位置に自動搬送して、原稿から読取画像を得たうえで、所定の搬送箇所に積層し収容した構成のADFに適用してもよい。
【0212】
さらには、画像形成装置として、複写機に限られることなく、ファクシミリ、プリンタ、インクジェット記録装置、孔版印刷装置等を含む印刷機、原稿から画像を読み取るスキャナを有し画像読取機能を主体にした画像読取装置等またはそれらのうちの少なくとも二つを組み合わせた複合機等に適用してもよい。
また、画像形成装置に適用したシート搬送装置としては、上記したように用紙(シート)を搬送するためだけに用いたり、用紙の替わりに原稿を搬送するためだけに用いたり、用紙搬送用と原稿搬送用とにそれぞれ別途に2つの用紙搬送装置を設けて用いたりしてもよい。また、原稿用紙から画像を読み取るスキャナを有し画像読み取り機能を主体にした画像読取装置に適用して、同様に用紙の替わりに原稿を、搬送するために用いてもよい。
何れにしても、搬送する対象が、画像形成対象の用紙か、画像読取対象の原稿であるか、の何れかに限られることなく、多種多様な構成のシート状物を搬送対象にして、このシートの搬送経路上で省スペース化を図りながら、そのシート搬送方向を変更する必要がある機器や装置において、最適なシート搬送装置とすることができる。
【0213】
以上述べたとおり、本発明を特定の実施形態や変形例、実施例等について説明したが、本発明が開示する技術的範囲は、上述した各実施形態や変形例、実施例等に例示されているものに限定されるものではなく、それらを適宜組み合わせて構成してもよく、本発明の範囲内において、その必要性および用途等に応じて種々の実施形態や変形例あるいは実施例を構成し得ることは当業者ならば明らかである。
【符号の説明】
【0214】
1 複写機(画像形成装置)
2 画像形成装置本体
3 給紙装置(給紙部)
4 原稿読取装置(原稿読取部)
5 用紙搬送装置(シート搬送装置)
6 第1搬送手段(第1の搬送手段)
7 第2搬送手段(第2の搬送手段)
8 ベルト搬送手段(移動案内手段)
9 排紙トレイ(シート排出部を構成)
10 感光体ユニット(画像形成部)
10A 感光体(像担持体)
11 定着装置
12 現像装置
13 転写装置
20 トナー収納容器
21 レジストローラ対
50,97 底板(シート積載手段)
51A 給紙トレイのガイド面(第1のガイド部材)
51 給紙トレイ(シート収容手段)
60 ピックアップローラ(給送回転部材)
61 フィードローラ(第1の搬送手段の対向対の一方、シート給送回転部材、シート分離機構を構成)
62 リバースローラ(第1の搬送手段の対向対の他方、分離部材、シート分離機構を構成、外郭に設けられる回転部材)
65 アイドラギヤ(第1搬送手段のフィードローラへの駆動力伝達用)
67 手差しトレイ
70 搬送ガイド部材(シート搬送経路の内郭方向側、第4のガイド部材)
71 搬送ガイド部材(外郭側、第2のガイド部材)
72,92 搬送ガイド部材(縦方向搬送路の外郭方向側)
73 搬送ガイド部材(給紙トレイから搬送経路への導入口形成用)
95,99 搬送ガイド部材(給紙位置からベルト搬送手段への到達位置までの区間のシート搬送路を形成した外郭側に配置されたガイド部材)
80 ハウジング(シート搬送装置本体)
81 グリップローラ(第2の搬送手段の対向対の他方)
82 搬送ベルト(第1の搬送手段の対向対の一方としてのベルト)
83 プーリ(第1の搬送手段の対向対の一方としてのベルト搬送手段の構成部材、ベルト保持回転部材、第2の搬送手段における外郭の回転部材)
84 プーリ(第1の搬送手段の対向対の一方としてのベルト搬送手段の構成部材、ベルト保持回転部材)
85 テンション・ローラ(当接部材)
90 搬送ガイド部材(第4のガイド部材、シート搬送経路の内郭方向側)
91 用紙ガイド部材(第2のガイド部材、外郭側)
93 用紙ガイド部材(第2のガイド部材、外郭側)
A 第1搬送路(第1のシート搬送経路)
B 第2搬送路(第2のシート搬送経路)
R1 搬送路
R2 手差給紙路
R3 反転搬送路
S 用紙(シート・シート状記録媒体、被画像形成媒体)
α 第1搬送手段と第2搬送手段とのそれぞれにおける内郭方向に配置された対向対としてのフィードローラおよびグリップローラ同士の接線
β フィードローラとリバースローラの回転中心を結んだ線に対して直交し両者の接点を通る線(フィードローラおよび分離部材としてのリバースローラの接点によって規定される平面に含まれた線)
θ 突入角度
【先行技術文献】
【特許文献】
【0215】
【特許文献1】特開2004−338923号公報(第1〜3頁、図1〜図7)
【特許文献2】特開2005−89008号公報(第2〜3頁、図4,5)
【特許文献3】特開平10−129883号公報(第1〜2頁、図1)
【特許文献4】特開2005−1771号公報(第1〜2頁、図1)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送する第1の搬送手段と、
第1の搬送手段のシート搬送方向の下流側に配置され、第1の搬送手段により搬送されてきたシートを前記第1の搬送手段のシート搬送方向と異なるシート搬送方向に搬送する第2の搬送手段と、
第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向に配置され、シートの先端と接触した状態を保持しつつ第2の搬送手段に向けてシートを移動・案内する移動案内手段と、
を有することを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
シートを搬送する第1の搬送手段と、
第1の搬送手段のシート搬送方向の下流側に配置され、第1の搬送手段により搬送されてきたシートを前記第1の搬送手段のシート搬送方向と異なるシート搬送方向に搬送する第2の搬送手段と、
第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成される第1のシート搬送経路と、
第2の搬送手段の上流から第2の搬送手段に至って形成され、第1のシート搬送経路と異なる第2のシート搬送経路と、
第1のシート搬送経路と第2のシート搬送経路とが、第2の搬送手段の上流側で合流する合流搬送経路と、
前記合流搬送経路の外郭方向に配置され、シートの先端と接触した状態を保持しつつ第2の搬送手段に向けてシートを移動・案内する移動案内手段と、
を有することを特徴とするシート搬送装置。
【請求項3】
第1の搬送手段および第2の搬送手段のうちの少なくとも第2の搬送手段は、シートを挟持して搬送する挟持部を形成する挟持搬送手段であり、
前記移動案内手段は、第2の搬送手段の前記挟持部にシートの先端を移動・案内することを特徴とする請求項1または2記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記移動案内手段は、シートの先端と接触した状態を保持しつつ第2の搬送手段またはその挟持部に向けてシートを搬送するベルトを備えたベルト搬送手段であることを特徴とする請求項1ないし3の何れか一つに記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記ベルト搬送手段は、前記ベルトと、該ベルトを走行可能に保持する少なくとも一対のベルト保持回転部材とを有し、
前記ベルト搬送手段は、シートの先端が、前記ベルト保持回転部材に保持されている該ベルト部分を除く該ベルトの搬送面に接触するように配置されていることを特徴とする請求項4記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記ベルト搬送手段は、シートの先端部が、前記ベルトの搬送面に対して鋭角の突入角度をもって進入するように配置されていることを特徴とする請求項4記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記第1の搬送手段のシート搬送方向と直交するシート幅方向における前記ベルトの幅が、搬送されるシート幅と略同じであることを特徴とする請求項4ないし6の何れか一つに記載のシート搬送装置。
【請求項8】
前記ベルトに接触する当接部材を有し、
前記当接部材は、搬送したシートの後端が前記ベルトの搬送面に接する箇所と別の箇所に配置されていることを特徴とする請求項4ないし7の何れか一つに記載のシート搬送装置。
【請求項9】
第1の搬送手段から前記ベルト搬送手段に至るまでの間に、前記シート搬送経路または第1のシート搬送経路を形成し、かつ、シートの先端を前記ベルトの搬送面に案内する少なくとも一つのガイド部材を有することを特徴とする請求項4ないし8の何れか一つに記載のシート搬送装置。
【請求項10】
前記シート搬送経路または第1のシート搬送経路の外郭方向に配置される前記ガイド部材のガイド面は、前記シート搬送経路または第1のシート搬送経路上を搬送されるシートを略ストレートに進ませる形状に形成されていることを特徴とする請求項9記載のシート搬送装置。
【請求項11】
第1の搬送手段の上流側に配置され、シートを第1の搬送手段に給送する給送回転部材と、該給送回転部材から第1の搬送手段に至るまでのシート搬送経路を形成する第1のガイド部材とを有し、
前記シート搬送経路の外郭方向の第1のガイド部材のガイド面は、該シート搬送経路上を搬送されるシートを略ストレートに進ませる形状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし10の何れか一つに記載のシート搬送装置。
【請求項12】
シートを積載して上下に移動可能であり、かつ、積載したシートのうちの最上のシートを前記給送回転部材に接するように移動可能なシート積載部材を有し、
前記シート積載部材の移動により、前記給送回転部材に接した最上のシート面と、少なくとも第1の搬送手段に至るまでの搬送中のシート面とが、略同一平面に属するように設定されていることを特徴とする請求項11記載のシート搬送装置。
【請求項13】
第1の搬送手段は、シートを1枚に分離して第2の搬送手段に向けて搬送するための、シート給送回転部材および該シート給送回転部材に対向して接した分離部材を備えたシート分離機構を有し、
前記シート分離機構から前記ベルト搬送手段に至るまでのシート搬送経路を形成する少なくとも一つの第2のガイド部材を備え、
前記シート給送回転部材および前記分離部材の接点によって規定される平面と、前記ガイド部材のうちの前記シート搬送経路の外郭方向に配置された第2のガイド部材のガイド面とは、略平行な関係に設定されていることを特徴とする請求項4ないし12の何れか一つに記載のシート搬送装置。
【請求項14】
シートを第1の搬送手段に送る給送回転部材を有し、
第1の搬送手段は、シートを1枚に分離して第2の搬送手段に向けて搬送するための、シート給送回転部材および該シート給送回転部材に対向して接した分離部材を備えたシート分離機構を有し、
前記給送回転部材から前記シート分離機構に至るまでのシート搬送経路を形成する第3のガイド部材を備え、
前記給送回転部材および前記シート給送回転部材によって規定される平面と、第3のガイド部材のうちの前記シート搬送経路の外郭方向に配置された該ガイド部材のガイド面とは、略平行な関係に設定されていることを特徴とする請求項4ないし13の何れか一つに記載のシート搬送装置。
【請求項15】
第1の搬送手段から第2の搬送手段に至るまでのシート搬送経路を形成する第4のガイド部材を有し、
前記シート搬送経路の内郭方向に配置された第4のガイド部材は、第1の搬送手段と第2の搬送手段とのそれぞれにおける内郭方向に配置された対向対同士の接線よりも、内郭方向側に設けられていることを特徴とする請求項1ないし14の何れか一つに記載のシート搬送装置。
【請求項16】
シートは、比較的剛性の高いシートであることを特徴とする請求項1ないし15の何れか一つに記載のシート搬送装置。
【請求項17】
請求項4ないし16の何れか一つに記載のシート搬送装置を複数具備するシート搬送装置であって、前記複数のシート搬送装置の少なくとも一つが、前記ベルト搬送手段を有することを特徴とするシート搬送装置。
【請求項18】
請求項1ないし17の何れか一つに記載のシート搬送装置を有することを特徴とする画像読取装置。
【請求項19】
請求項1ないし17の何れか一つに記載のシート搬送装置および/または請求項18記載の画像読取装置を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項20】
前記画像形成装置は、複写機、ファクシミリ、プリンタ、印刷機およびインクジェット記録装置の何れか一つ、またはそれらの少なくとも二つを組み合わせた複合機であることを特徴とする請求項19記載の画像形成装置。
【請求項21】
シートを挟持搬送する第1の搬送手段と、
第1の搬送手段のシート搬送方向の下流側に配置され、第1の搬送手段により搬送されてきたシートを前記第1の搬送手段のシート搬送方向と異なるシート搬送方向に挟持搬送する第2の搬送手段と、
第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向に配置され、第2の搬送手段に向けてシートを移動・案内する移動案内手段と、
第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向に配置され、第1の搬送手段から前記移動案内手段に至るまでのシート搬送経路を形成する第2のガイド部材と、
第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の内郭方向に配置され、第1の搬送手段から第2の搬送手段に至るまでのシート搬送経路を形成する第4のガイド部材とを有し、
第4のガイド部材の少なくとも一部は、第1の搬送手段の挟持部中心と第2の搬送手段の挟持部中心とを結んだ線分より外側に設けられていることを特徴とするシート搬送装置。
【請求項22】
シートを搬送する第1の搬送手段と、
第1の搬送手段のシート搬送方向の下流側に配置され、第1の搬送手段により搬送されてきたシートを前記第1の搬送手段のシート搬送方向と異なるシート搬送方向に搬送する第2の搬送手段と、
第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向に配置され、第2の搬送手段に向けてシートを移動・案内する移動案内手段と、
第1の搬送手段から第2の搬送手段に至るまでのシート搬送経路の内郭を形成する第4のガイド部材とを有し、
第4のガイド部材は、第1の搬送手段と第2の搬送手段とのそれぞれにおける内郭方向に配置された対向対同士の接線よりも、内郭方向側に設けられていることを特徴とするシート搬送装置。
【請求項23】
少なくとも1枚が256〜300g/mのシートを搬送するシート搬送装置において、
シートを搬送する第1の搬送手段と、
第1の搬送手段のシート搬送方向の下流側に配置され、第1の搬送手段により搬送されてきたシートを前記第1の搬送手段のシート搬送方向と異なるシート搬送方向に搬送する第2の搬送手段と、
第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向に配置され、第2の搬送手段に向けてシートを移動・案内するベルトを備えたベルト搬送手段とを有し、
前記ベルト搬送手段は、シートの先端部が、前記ベルトの搬送面に対して鋭角の突入角度をもって進入するように配置されていることを特徴とするシート搬送装置。
【請求項24】
少なくとも1枚が256〜300g/mのシートを搬送する画像形成装置において、
シートを収容する給紙部と、
原稿の画像を読み取る原稿読取部と、
前記給紙部の上に配置されるとともに、前記原稿読取部で読み取られた画像を前記給紙部から搬送されたシートに形成する画像形成部と、
前記画像形成部と前記原稿読取部との間であって、前記画像形成部から搬送されたシートを排出するシート排出部と、
前記給紙部から前記画像形成部へシートを搬送するシート搬送手段と、
を有し、
前記シート搬送手段は、
前記給紙部から1枚に分離されたシートを装置本体一側に向けて搬送する第1の搬送手段と、
第1の搬送手段のシート搬送方向下流側に配置され、第1の搬送手段により搬送されてきたシートを前記第1の搬送手段のシート搬送方向と異なるシート搬送方向に搬送する第2の搬送手段と、
第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向に配置され、第2の搬送手段に向けてシートを移動・案内するベルトを備えたベルト搬送手段とで構成され、
前記ベルト搬送手段は、シートの先端部が、前記ベルトの搬送面に対して鋭角の突入角度をもって進入するように配置されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項25】
シートを搬送する第1の搬送手段と、
第1の搬送手段のシート搬送方向の下流側に配置され、第1の搬送手段により搬送されてきたシートを前記第1の搬送手段のシート搬送方向と異なるシート搬送方向に挟持搬送する第2の搬送手段と、
第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向に配置され、第2の搬送手段に向けてシートを移動・案内する移動案内手段と、
第1の搬送手段と移動案内手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向に配置され前記移動案内手段へシートを案内する第2のガイド部材とを有し、
前記移動案内手段は、第2の搬送手段に向けてシートを搬送するベルトを備えたベルト搬送手段であって、
前記ベルト搬送手段は、前記ベルトと、該ベルトを走行可能に保持するベルト保持回転部材と、第2の搬送手段における外郭の回転部材とを有し、前記ベルトを前記ベルト保持回転部材と前記回転部材とに掛け回して構成し、
前記ベルト保持回転部材は、第1の搬送手段の外郭に設けられる回転部材の軸中心より上方であって、第2のガイド部材の下流端より下方に位置することを特徴とするシート搬送装置。
【請求項26】
シートを搬送する第1の搬送手段と、
第1の搬送手段のシート搬送方向の下流側に配置され、第1の搬送手段により搬送されてきたシートを前記第1の搬送手段のシート搬送方向と異なるシート搬送方向に搬送する第2の搬送手段と、
第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向に配置され、第2の搬送手段に向けてシートを移動・案内する移動案内手段とを有し、
前記移動案内手段は、第2の搬送手段に向けてシートを搬送するベルトを備えたベルト搬送手段であって、
前記ベルト搬送手段は、前記ベルトと、該ベルトを走行可能に保持するベルト保持回転部材と、第2の搬送手段における外郭の回転部材とを有し、前記ベルトを前記ベルト保持回転部材と前記回転部材とに掛け回して構成し、
前記ベルト搬送手段は、シートの先端が、前記ベルト保持回転部材に保持されている該ベルト部分を除く該ベルトの搬送面に接触するように配置されていることを特徴とするシート搬送装置。
【請求項27】
シートを搬送する第1の搬送手段と、
第1の搬送手段のシート搬送方向の下流側に配置され、第1の搬送手段により搬送されてきたシートを前記第1の搬送手段のシート搬送方向と異なるシート搬送方向に搬送する第2の搬送手段と、
第1の搬送手段と移動案内手段との間に形成されるシート搬送経路に配置され第2の搬送手段へシートを案内する少なくとも一つのガイド部材と、
第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向に配置され、第2の搬送手段に向けてシートを移動・案内する移動案内手段とを有し、
第1の搬送手段によるシート搬送力と前記移動案内手段によるシート搬送力との和が、前記少なくとも一つのガイド部材におけるシート搬送負荷の総和より大きいことを特徴とするシート搬送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2010−260728(P2010−260728A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188643(P2010−188643)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【分割の表示】特願2006−214779(P2006−214779)の分割
【原出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】