説明

シート搬送装置およびプリント装置

【課題】シートの側端部を案内手段によって案内しながら搬送するシート搬送装置において、シワやジャムの発生を抑制する。
【解決手段】搬送されるシートの側端部に当接してシートの側端部を案内する案内手段と、前記案内手段の下流側に配置され、シート幅方向の全体に接触する従動ローラを有し、シートを挟持して搬送する第1ローラ対と、前記ローラの下流側に配置されシートを搬送する搬送ローラと、前記搬送ローラと協働してシートを狭持する複数のピンチローラ102を有する第2ローラ対とを有し、前記複数のピンチローラの各々は、該ピンチローラから近い側の搬送路側端側に傾いた搬送力をシートに付与し、搬送路側端までの距離が小さい前記ピンチローラほどその搬送力の傾きは大きくなるように構成したことを特徴とするシート搬送装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの蛇行を抑制しながら搬送ローラを用いてシートを搬送するシート搬送装置、およびシートにプリントを行うプリント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロール紙の紙パス経路に蛇行を防止する左右一対の規制ガイドを設けたプリント装置が開示されている。ロール紙の左右の側端の位置を規制するガイドの間隔がロール紙の幅より短くなるように左右のガイドを移動させてロール紙の姿勢を正し、その後にロール紙の幅に対応した位置にガイドを移動することで、ロール紙の蛇行防止を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−225947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置では、紙幅ガイドの上流及び下流に搬送ローラを設け、ロール紙の挟持搬送を行っている。そして、蛇行矯正を行う際には搬送ローラの圧接解除を行い、ガイド手段によりロール紙端部を紙幅より更に押し込む動作を行っている。また、予め装置に入力されたロール紙の幅寸法に応じてガイド手段の位置を移動している。
【0005】
ロールから引き出した連続紙の側端部を紙幅ガイドで位置規制しながら搬送すると、紙幅ガイドと上流側の搬送ローラの間、または紙幅ガイドの下流側の搬送ローラとの間に連続紙のねじれが生じ、部分的な紙浮きやシワが発生する。また紙幅ガイドの位置によっては。紙幅ガイドが連続紙を幅方向に押圧することになり、シートが膨らんだ状態となる。この状態で下流側の搬送ローラによって連続紙を挟持するとシワの原因となる。
【0006】
また、ロール紙の搬送精度の改善や、搬送ローラの押圧によるロール紙へのダメージを抑えるために、搬送ローラが紙に対して均等に圧をかける必要がある。均等に圧をかける上で、コスト及びサイズ上有利な構成として、搬送ローラに対向して配置され従動回転する従動ローラを、紙幅方向で分割したものがある。
【0007】
しかしながら、分割した複数の従動ローラそれぞれの回転軸を搬送ローラの回転軸に対して高精度で平行になるように配置することは難しい。隣り合う従動ローラの回転軸が傾いていて、連続紙を寄せ合うように搬送するとシワやジャムの原因となる。
【0008】
本発明は上記課題の認識に基づいてなされたものである。本発明はシートの側端部を案内手段によって案内しながら搬送するシート搬送装置において、シワやジャムの発生を抑制できるシート搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の構成は、搬送されるシートの側端部に当接してシートの側端部を案内する案内手段と、前記案内手段の下流側に配置され、シート幅方向の全体に接触する従動ローラを有し、シートを挟持して搬送する第1ローラ対と、前記ローラの下流側に配置されシートを搬送する搬送ローラと、前記搬送ローラと協働してシートを狭持する複数のピンチローラを有する第2ローラ対とを有し、前記複数のピンチローラの各々は、該ピンチローラから近い側の搬送路側端側に傾いた搬送力をシートに付与し、搬送路側端までの距離が小さい前記ピンチローラほどその搬送力の傾きは大きくなるように構成したことを特徴とするシート搬送装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シートの側端部を案内手段によって案内しながら搬送するシート搬送装置において、シワやジャムの発生を抑制できるシート搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】プリント装置の内部構成を示す概略図。
【図2】制御部のブロック図
【図3】片面プリントモードでの動作を説明するための図。
【図4】両面プリントモードでの動作を説明するための図。
【図5】プリント部の詳細な構成断面図。
【図6】プリント部の詳細な構成上面図。
【図7】搬送ローラ101とピンチローラ102を示す図。
【図8】蛇行補正ガイド部の詳細な説明図。
【図9】蛇行補正ガイド部の詳細な説明図。
【図10】搬送部及び蛇行補正部の制御部説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、インクジェット方式を用いたプリント装置の実施形態を説明する。本例のプリント装置は、ロール状に巻かれた連続シートを使用し、片面プリントおよび両面プリントの両方に対応した高速ラインプリンタである。例えば、プリントラボ等における大量の枚数のプリントの分野に適している。本発明はプリンタ、プリンタ複合機、複写機、ファクシミリ装置などのプリント装置に適用可能である。また、本発明はプリント装置に限らず、ユーザーが装置稼働時刻を指定し且つ起動時の初期化動作に大きな時間を要する工場等で使用される産業機器(各種デバイスの製造装置、検査装置など)等の各種装置にも広く適用可能である。
【0013】
図1はプリント装置の内部構成を示す断面の概略図である。本実施形態のプリント装置は、ロール状に巻かれたシートを用いて、シートの第1面と第1面の裏面側の第2面に両面プリントすることが可能となっている。プリント装置内部には、大きくは、シート供給部1、デカール部2、斜行矯正部3、プリント部4、検査部5、カッタ部6、情報記録部7、乾燥部8、反転部9、排出搬送部10、ソータ部11、排出部12、加湿部20、制御部13の各ユニットを備える。シートは、図中の実線で示したシート搬送経路に沿ってローラ対やベルトからなる搬送機構で搬送され、各ユニットで処理がなされる。
【0014】
シート供給部1は、ロール状に巻かれた連続シートを保持して供給するためのユニットである。シート供給部1は、2つのロールR1、R2を収納することが可能であり、択一的にシートを引き出して供給する構成となっている。なお、収納可能なロールは2つであることに限定はされず、1つ、あるいは3つ以上を収納するものであってもよい。
【0015】
デカール部2は、シート供給部1から供給されたシートのカール(反り)を軽減させるユニットである。デカール部2では、1つの駆動ローラに対して2つのピンチローラを用いて、カールの逆向きの反りを与えるようにシートを湾曲させて通過させることでデカール力を作用させてカールを軽減させる。
【0016】
斜行矯正部3は、デカール部2を通過したシートの斜行(本来の進行方向に対する傾き)を矯正するユニットである。基準となる側のシート端部をガイド部材に押し付けることにより、シートの斜行が矯正される。
【0017】
プリント部4は、搬送されるシートに対して上方からプリントヘッド14によりシート上にプリント処理を行なって画像を形成するユニットである。つまり、プリント部4はシートに所定の処理を行なう処理部である。プリント部4は、シートを搬送する複数の搬送ローラも備えている。プリントヘッド14は、使用が想定されるシートの最大幅をカバーする範囲でインクジェット方式のノズル列が形成されたライン型プリントヘッドを有する。プリントヘッド14は、複数のプリントヘッドが搬送方向に沿って平行に並べられている。本例ではC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、LC(ライトシアン)、LM(ライトマゼンタ)、G(グレー)、K(ブラック)の7色に対応した7つのプリントヘッドを有する。なお、色数およびプリントヘッドの数は7つには限定はされない。インクジェット方式は、発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式等を採用することができる。各色のインクは、インクタンクからそれぞれインクチューブを介してプリントヘッド14に供給される。
【0018】
検査部5は、プリント部4でシートにプリントされた検査パターンや画像をスキャナによって光学的に読み取って、プリントヘッドのノズルの状態、シート搬送状態、画像位置等を検査して画像が正しくプリントされたかを判定するためのユニットである。スキャナはCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサを有する。
【0019】
カッタ部6は、プリント後のシートを所定長さに切断する機械的なカッタを備えたユニットである。カッタ部6は、シートを次工程に送り出すための複数の搬送ローラも備えている。
【0020】
情報記録部7は、切断されたシートの非プリント領域にプリントのシリアル番号や日付などのプリント情報(固有の情報)を記録するユニットである。記録はインクジェット方式、熱転写方式などで文字やコードをプリントすることで行なわれる。情報記録部7の上流側且つカッタ部6の下流側には、切断されたシートの先端エッジを検知するセンサ23が設けられている。つまり、センサ23はカッタ部6と情報記録部7による記録位置との間でシートの端部を検知する、センサ23の検知タイミングに基づいて情報記録部7で情報記録するタイミングが制御される。
【0021】
乾燥部8は、プリント部4でプリントされたシートを加熱して、付与されたインクを短時間に乾燥させるためのユニットである。乾燥部8の内部では通過するシートに対して少なくとも下面側から熱風を付与してインク付与面を乾燥させる。なお、乾燥方式は熱風を付与する方式に限らず、電磁波(紫外線や赤外線など)をシート表面に照射する方式であってもよい。
【0022】
以上のシート供給部1から乾燥部8までのシート搬送経路を第1経路と称する。第1経路はプリント部4から乾燥部8までの間にUターンする形状を有し、カッタ部6はUターンの形状の途中に位置している。
【0023】
反転部9は両面プリントを行う際に表(おもて)面プリントが終了した連続シートを一時的に巻き取って表裏反転させるためのユニットである。反転部9は、乾燥部8を通過したシートを再びプリント部4に供給するための、乾燥部8からデカール部2を経てプリント部4に到る経路(ループパス)(第2経路と称する)の途中に設けられている。反転部9はシートを巻き取るための回転する巻取回転体(ドラム)を備えている。表面のプリントが済んで切断されていない連続シートは巻取回転体に一時的に巻き取られる。巻き取りが終わったら、巻取回転体が逆回転して巻き取り済みシートはデカール部2に供給され、プリント部4に送られる。このシートは表裏反転しているのでプリント部4で裏面にプリントを行うことができる。両面プリントのより具体的な動作については後述する。
【0024】
排出搬送部10は、カッタ部6で切断され乾燥部8で乾燥させられたシートを搬送して、ソータ部11までシートを受け渡すためのユニットである。排出搬送部10は、反転部9が設けられた第2経路とは異なる経路(第3経路と称する)に設けられている。第1経路を搬送されてきたシートを第2経路と第3経路のいずれか一方に選択的に導くために、経路の分岐位置には可動フラッパを有する経路切替機構が設けられている。
【0025】
ソータ部11と排出部12は、シート供給部1の側部で且つ第3経路の末端に設けられている。ソータ部11は必要に応じてプリント済みシートをグループ毎に仕分けるためのユニットである。仕分けられたシートは、複数のトレイからなる排出部12に排出される。このように、第3経路はシート供給部1の下方を通過して、シート供給部1を挟んでプリント部4や乾燥部8とは逆側にシートを排出するレイアウトとなっている。
【0026】
加湿部20は加湿気体(空気)を生成して、プリント部4のプリントヘッド14とシートの間に供給するためのユニットである。これにより、プリントヘッド14のノズルのインク乾燥が抑制される。加湿部20の加湿方式は、気化式、水噴霧式、蒸気式などの方式が採用される。気化式には、本実施形態の回転式の他に、透湿膜式、滴下浸透式、毛細管式などがある。水噴霧式には、超音波式、遠心式、高圧スプレー式、2流体噴霧式などがある。蒸気式には、蒸気配管式、電熱式、電極式などがある。加湿部20とプリント部4は第1ダクト21で接続され、更に加湿部20と乾燥部8は第2ダクト22で接続されている。乾燥部8ではシートを乾燥させる際に多湿且つ高温の気体が生成される。この気体は第2ダクト22を通して加湿部20に導入されて、加湿部20での加湿気体生成の補助エネルギとして利用される。そして、加湿部20で生成された加湿気体は第1ダクト21を通してプリント部に導入される。
【0027】
制御部13は、プリント装置全体の各部の制御を司るユニットである。制御部13は、CPU、記憶装置、各種制御部を備えたコントローラ(制御部)、外部インターフェース、およびユーザーが入出力を行なう操作部15を有する。プリント装置の動作は、コントローラまたはコントローラに外部インターフェースを介して接続されるホストコンピュータ等のホスト装置16からの指令に基づいて制御される。
【0028】
図2は制御部13の概念を示すブロック図である。制御部13に含まれるコントローラ(破線で囲まれる範囲)は、CPU201、ROM202、RAM203、HDD204、画像処理部207、エンジン制御部208、個別ユニット制御部209から構成される。CPU201(中央演算処理部)はプリント装置の各ユニットの動作を統合的に制御する。ROM202はCPU201が実行するためのプログラムやプリント装置の各種動作に必要な固定データを格納する。RAM203はCPU201のワークエリアとして用いられたり、種々の受信データの一時格納領域として用いられたり、各種設定データを記憶させたりする。HDD204(ハードディスク)はCPU201が実行するためのプログラム、プリントデータ、プリント装置の各種動作に必要な設定情報を記憶読出することが可能である。操作部15はユーザーとの入出力インターフェースであり、ハードキーやタッチパネルの入力部、および情報を提示するディスプレイや音声発生器などの出力部を含む。例えば、タッチパネル付きのディスプレイが用いられ、装置の動作ステータス、プリント状況、メンテナンス情報(インク残量、シート残量、メンテナンスステータスなど)等がユーザに対して表示される。ユーザはタッチパネルから各種の情報入力を行なうことができる。
【0029】
高速なデータ処理が要求されるユニットについては専用の処理部が設けられている。画像処理部207は、プリント装置で扱うプリントデータの画像処理を行う。入力された画像データの色空間(たとえばYCbCr)を、標準的なRGB色空間(たとえばsRGB)に変換する。また、画像データに対し解像度変換、画像解析、画像補正等、様々な画像処理が必要に応じて施される。これらの画像処理によって得られたプリントデータは、RAM203またはHDD204に格納される。エンジン制御部208は、CPU201等から受信した制御コマンドに基づいてプリントデータに応じてプリント部4のプリントヘッド14の駆動制御を行なう。エンジン制御部208は更にプリント装置内の各部の搬送機構の制御も行なう。個別ユニット制御部209は、シート供給部1、デカール部2、斜行矯正部3、検査部5、カッタ部6、情報記録部7、乾燥部8、反転部9、排出搬送部10、ソータ部11、排出部12、加湿部20の各ユニットを個別に制御するためのサブコントローラである。CPU201による指令に基づいて個別ユニット制御部209によりそれぞれのユニットの動作が制御される。外部インターフェース205は、コントローラをホスト装置16に接続するためのインターフェース(I/F)であり、ローカルI/FまたはネットワークI/Fである。以上の構成要素はシステムバス210によって接続されている。
【0030】
ホスト装置16は、プリント装置にプリントを行わせるための画像データの供給源となる装置である。ホスト装置16は、汎用または専用のコンピュータであってもよいし、画像リーダ部を有する画像キャプチャ、デジタルカメラ、フォトストレージ等の専用の画像機器であってもよい。ホスト装置16がコンピュータの場合は、コンピュータに含まれる記憶装置にOS、画像データを生成するアプリケーションソフトウェア、プリント装置用のプリンタドライバがインストールされる。なお、以上の処理の全てをソフトウェアで実現することは必須ではなく、一部または全部をハードウェアによって実現するようにしてもよい。
【0031】
次に、プリント時の基本動作について説明する。プリントは、片面プリントモードと両面プリントモードとでは動作が異なるので、それぞれについて説明する。
【0032】
図3は片面プリントモードでの動作を説明するための図である。シート供給部1から供給されたシートがプリントされて排出部12に排出されるまでの搬送経路を太線で示している。シート供給部1から供給され、デカール部2、斜行矯正部3でそれぞれ処理されたシートは、プリント部4において表面(第1面)のプリントがなされる。長尺の連続シートに対して、搬送方向における所定の単位長さの画像(単位画像という)を順次プリントして複数の画像を並べて形成していく。プリントされたシートは検査部5を経て、カッタ部6において単位画像ごとに切断される。切断されたカットシートは、必要に応じて情報記録部7でシートの裏面にプリント情報が記録される。そして、カットシートは1枚ずつ乾燥部8に搬送され乾燥が行なわれる。その後、排出搬送部10を経由して、ソータ部11の排出部12に順次排出され積載されていく。一方、最後の単位画像の切断でプリント部4の側に残されたシートはシート供給部1に送り戻されて、シートがロールR1またはR2に巻き取られる。このように、片面プリントにおいては、シートは第1経路と第3経路を通過して処理され、第2経路は通過しない。
【0033】
図4は両面プリントモードでの動作を説明するための図である。両面プリントでは、表(おもて)面(第1面)プリントシーケンスに次いで裏面(第2面)プリントシーケンスを実行する。最初の表面プリントシーケンスでは、シート供給部1から検査部5までの各ユニットでの動作は上述の片面プリントの動作と同じである。カッタ部6では切断動作は行わずに、連続シートのまま乾燥部8に搬送される。乾燥部8での表面のインク乾燥の後、排出搬送部10の側の経路(第3経路)ではなく、反転部9の側の経路(第2経路)にシートが導びかれる。第2経路においてシートは、順方向(図面では反時計回り方向)に回転する反転部9の巻取回転体に巻き取られていく。プリント部4において、予定された表面のプリントが全て終了すると、カッタ部6にて連続シートのプリント領域の後端が切断される。切断位置を基準に、搬送方向下流側(プリントされた側)の連続シートは乾燥部8を経て反転部9でシート後端(切断位置)まで全て巻き取られる。一方、この巻取りと同時に、切断位置よりも搬送方向上流側(プリント部4の側)に残された連続シートは、シート先端(切断位置)がデカール部2に残らないように、シート供給部1に巻き戻されて、シートがロールR1またはR2に巻き取られる。この巻き戻しによって、以下の裏面プリントシーケンスで再び供給されるシートとの衝突が避けられる。
【0034】
上述の表面プリントシーケンスの後に、裏面プリントシーケンスに切り替わる。反転部9の巻取回転体が巻き取り時とは逆方向(図面では時計回り方向)に回転する。巻き取られたシートの端部(巻き取り時のシート後端は、送り出し時にはシート先端になる)は、図の破線の経路に沿ってデカール部2に送り込まれる。デカール部2では巻取回転体で付与されたカールの矯正がなされる。つまり、デカール部2は第1経路においてシート供給部1とプリント部4の間、ならびに第2経路において反転部9とプリント部4の間に設けられて、いずれの経路においてもデカールの働きをする共通のユニットとなっている。シートの表裏が反転したシートは、斜行矯正部3を経て、プリント部4に送られて、シートの裏面にプリントが行なわれる。プリントされたシートは検査部5を経て、カッタ部6において予め設定されている所定の単位長さ毎に切断される。カットシートは両面にプリントされているので、情報記録部7での記録はなされない。カットシートは1枚ずつ乾燥部8に搬送され、排出搬送部10を経由して、ソータ部11の排出部12に順次排出され積載されていく。このように、両面プリントにおいてはシートは第1経路、第2経路、第1経路、第3経路の順に通過して処理される。
【0035】
次に、上述の構成のプリンタにおけるプリント部4についてさらに詳しく説明する。図5、図6はプリント部4の構成図である。図7は第2ローラ対の構成図である。プリント部4において、シートSは第2ローラ対、第3ローラ対、第1ローラ対の3種類のローラ対で図中の矢印A方向に搬送される。第2ローラ対は、駆動力を持つ搬送ローラ101と従動回転するピンチローラ102からなるローラ対である。ピンチローラ102は搬送ローラ101と協働してシートを挟持して搬送する。
【0036】
ピンチローラ102は図7に示すようにシート送り方向に対して垂直に四分割され、4個のピンチローラ102a、102b、102c、102dから成っている。
【0037】
各ピンチローラ102a、102b、102c、102dは搬送路の中央101aに近い側の端部が搬送路側端側の端部よりも搬送方向下流側に位置するように回転軸が傾いている。この傾きにより各ピンチローラは斜送力102a2、102b2、102c2、102d2をシートに作用させる。
【0038】
シートの搬送時、ピンチローラ102bは搬送ローラ101の搬送方向101a2に対して右側に傾いた斜送力102b2をシートに作用させ、ピンチローラ102cは左方向に傾いた斜送力102c2をシートに作用させる。その結果、シートを広げる力がシートに作用する。
【0039】
また隣り合うピンチローラのうち搬送路の中央101aに近いピンチローラ102bの回転軸102b1よりも中央101aから遠い(搬送路側端に近い)ピンチローラ102aの回転軸102a1のほうが傾きが大きい。斜送力102b2よりも斜送力102a2のほうが端部側に大きく傾いている。斜送力の傾きの関係によってピンチローラ102aとピンチローラ102bの間でシートを広げる力がシートに作用する。よって隣接するピンチローラのどの組合せにおいてもピンチローラ間でシートを広げる力が作用する。
【0040】
各ピンチローラは不図示バネで搬送ローラ方向に押圧力を発生する構成であり、各ピンチローラに対し適切な押圧力を設定することで、プリント部における良好な搬送精度が確保できている。さらに、各ピンチローラは、搬送するシートの種類、シート幅に対応して圧を変更できる。第3ローラ対は、駆動力を持つ複数の下流側サブ搬送ローラ103a〜103gと、従動回転する複数の下流側サブピンチローラ104a〜104gからなる各ローラ対(7組)を指す。第1ローラ対は、駆動力を持つ上流側サブ搬送ローラ105と従動回転する上流側サブピンチローラ106(従動ローラ)からなるローラ対である。上流側サブピンチローラ106は、幅方向の長さがシート幅以上であり、シートの全幅にわたって接触する。第2ローラ対のピンチローラ押圧力は、合計で78.45〜137.28N程度に可変できるように設定してある。第3ローラ対のピンチローラ押圧力は、各2.94N程度に設定している。第1ローラ対のピンチローラ押圧力は、9.81N程度に設定している。搬送ローラ101には、ローラ回転状態を検出するためのロータリエンコーダ109が設けられている。
【0041】
第1搬送ローラ対の下流のプリント領域110には、各色に対応した7つのライン型プリントヘッド14a〜14gがシート搬送方向に沿って並べられている。ライン型プリントヘッド14a〜14gと下流側サブピンチローラ104a〜104gは1つずつ交互に配置されている。プリントヘッド14a〜14gのそれぞれに対向した位置には、プラテン112a〜112gが設けられ、シートSの先端がプリントヘッド14a〜14gを通過する際、第3ローラ対に誘導するようになっている。プリントヘッド14a〜14gの対向位置それぞれにおいて、シートSは両側がローラ対でニップされるのでシート搬送の挙動が安定する。特に最初にシートが導入される際には、シート先端が短い周期で複数のニップ位置を通過していくので、シート先端の浮きが抑制され安定したシート導入がなされる。
【0042】
156は上流ループ部であり、157はループ形状をコントロールするためのループガイドである。ループ部156の近傍下流側には第1のガイド及び第2のガイドである一対の蛇行抑制ガイド153,154を配置している。更にその近傍下流側にはシートの端部位置を検出するための検知手段であるシートエッジセンサ151、152を設けた。
【0043】
図8においてガイド及びシートエッジセンサの構成について更に詳細に説明する。案内手段である蛇行抑制ガイド153,154はシートの第1の側端部とその反対側の第2の側端部に当接して蛇行を抑制するための当接面153a、154aを備えている。また、シートの下面を案内するためのガイド面153b,154bも備えている。シートエッジセンサ151,152は赤外線による透過型位置検出センサである。発光部151b、152bから赤外線を発光し、受光部151a、152aにおける受光量によってシート端部位置を検出している。155はシートエッジセンサ151,152及び蛇行抑制ガイド153,154をシート幅方向に移動するための移動ガイドである。移動ガイドは不図示リードスクリューと駆動モータで構成されている。蛇行抑制ガイド153とシートエッジセンサ151は一体的に固定され、移動ガイド155により任意位置に一体的に移動可能な構成である。蛇行抑制ガイド153のシート端部当接面153aとシートエッジセンサ151のセンサ部151a,151bは位置を測定しながら組み立てる調整組をすることにより、その距離はほぼ誤差無しで組立を行っている。シートの逆側端部に配置したガイド154とシートエッジセンサ152も同様な構成である。また、ガイドは第1搬送ローラ対に対して直角になるように調整組を行っている。第1搬送ローラ対はシート搬送力が最も高く、搬送精度に対して支配的な影響力を持っているので、ガイドの直角度調整により搬送方向に対して極端に大きな蛇行補正を行うことがなく、無理なく精度の良い搬送が可能となる。
【0044】
170はスキャナ、172,174はスキャナ前後のシート搬送を行うスキャナローラ、171,173はシートを押圧するためのピンチローラである。175はスキャナ170とカッター182の間に配置した下流ループ部である。176はループ形状をコントロールするための第二ループガイドである。177,178は第二ガイドであり、179は第二ガイドをシート幅方向の任意位置に移動するための第三移動ガイドである。181は第二ガイド下流に配置したカッター前搬送ローラで、180はシートを押圧するためのピンチローラである。図10は制御手段の構成模式図である。コントローラ300はROM,RAM,CPUを有するものである。センサ部310は装置の状態を検出するためのセンサ郡である。301はシートを搬送する各搬送ローラを駆動するための搬送ローラモータ、302は搬送ローラのニップ圧を変更・解除するためにピンチローラリリース動作を行うピンチローラリリースモータである。303はガイドを移動させるためのモータ、304はカッターを動作させるためのモータであり、各モータは各モータドライバにより制御を行う。
【0045】
以上の構成におけるシート搬送動作を説明する。シート供給部1から供給されたシートSは、ループ部156でループを作成後、ガイド対153,154を通過し、第1ローラ対、第2ローラ対、第3ローラ対の順にそれぞれ所定のニップ位置でニップされて搬送される。第2ローラ対から第1ローラ対、ガイド対153,154までの搬送経路は直線である。なお、ここでいう直線とは厳密な直線に限定されずほぼ直線である形態も含まれる。
【0046】
ここで、蛇行抑制ガイド153,154は図9に示すようなシート端部から離間した位置に当初は待機している。シート先端が蛇行抑制ガイドを通過後、シート端部をシートエッジセンサ151、152により検出する。次にシート端部の検知結果に基づき蛇行抑制ガイドをシート端部に丁度当接する位置に移動する(図8)。前述したように蛇行抑制ガイド153,154とシートエッジセンサは位置調整したもの一体的に移動するので、シート端部と蛇行補正ガイドの位置は精度良く合わせることが可能である。よって蛇行抑制ガイドによりシート端部を押し込みすぎることによるシートの座屈や変形を最小限に抑えることができる。また、シート端部と蛇行抑制ガイドの隙間が開きすぎることにより、蛇行抑制効果が低下することも無い。
【0047】
蛇行抑制ガイド153、154の下流側には第1ローラ対である上流側サブ搬送ローラ105と従動回転する上流側サブピンチローラ106が配置されている。上流側サブピンチローラ106は連続シートの幅全体に接する外周面を有し、幅方向の長さがシート幅以上である。蛇行抑制ガイド153、154が連続シートの端部に当接することによって連続シートにねじれや浮きが発生しても、上流側サブ搬送ローラ105と上流側サブピンチローラ106で連続シートを狭持することによって、浮きやねじれの下流側への波及を抑制する。
【0048】
第2ローラ対は、搬送ローラ101と複数のピンチローラ102で構成されているため、シートに均等な圧分布の圧をかけることができ、紙へのダメージなく、かつ高い搬送精度でシートを搬送することが出来る。ここで、シートの座屈が第2ローラ対近傍で僅かでも起こった場合、複数のピンチローラ102間でシートの座屈が成長し、紙シワを誘発する。しかし、本構成では蛇行抑制ガイドによりシートの座屈が起こっても、第1ローラ対によりシートの座屈や変形が第1ローラ対の上流側で完結するため、第2ローラ対近傍でシートの座屈が起こることはなく、従って紙シワを起こさない。また、隣接するピンチローラ102のどの組合せにおいても、ピンチローラがシートを幅方向に広げるように斜送力を作用させる。これにより、シートの座屈が第2ローラ対近傍で起こったとしても、シートの座屈を伸ばす方向にシート搬送を行い、紙シワを起こさない。更に、剛度が低いシート種類や、ピンチローラに対して半がかりになる幅のシートの場合、シートの座屈を起こしやすいが、シート種類やシート幅に応じてピンチローラ102の押圧力を変更することで、紙シワを防ぐことが出来る。
【0049】
その後にシート先端部は印字部の搬送ローラ対により搬送される。ここで、シートを蛇行させようとする力に対向してシート端部を蛇行抑制ガイドに沿わせてシート搬送を行うためには、シートが蛇行抑制ガイドを支点として回転しやすくする構成が最適である。本構成においては蛇行抑制ガイド153,154の上流側にループ部156を設けている。そのため各搬送ローラ対によって搬送される際に蛇行させようとする力が働いた場合でも、蛇行補正ガイドの上流側近傍にあるループ部でシートがある程度自由にシート幅方向に移動できる。ループ部でシートが移動可能であることによって蛇行補正ガイドを支点としてそれより下流側のシートが回転可能となり、蛇行補正ガイドにシートが容易に沿って搬送することができる。シート搬送方向の送り精度を高めるためには搬送ローラの押圧力をシート種・シートサイズに応じ、一定の圧よりも高くすることが効果的である。また、蛇行補正を行うためには、シート種、シートサイズに応じ、一定の圧よりも低くすることが効果的である。本構成においては、搬送精度と蛇行補正が両立する圧としている。尚、搬送ローラ対による蛇行を発生させる力とは、例えばピンチローラの押圧力のシート幅方向における不均一性や、各ローラのシート幅方向の円筒度(外径誤差)によるものがある。本構成とは異なり、蛇行補正ガイドの上流側にもシート搬送力を有する搬送ローラ対を設置した場合、シートは蛇行補正ガイドの上流側、下流側の両方でローラ対によって拘束される。この拘束によって、蛇行補正ガイドにシートを沿わそうとしても、シートが容易に姿勢を変更することができずに、使用するシートの種類によってはシートが座屈したり、端部が折れたりする不具合が発生する場合がある。特にシート剛性が低い場合には発生しやすい。
【0050】
シート先端はスキャナ170を通過した後に下流ループ部175でループを作成し、シート幅に合った第二蛇行補正ガイド177の間に搬送される。その後カッター前ローラ対180,181により搬送し、必要に応じてカッター182でシートを所望のサイズにカットする。
【0051】
以上の実施形態においては、プリント部4では、各色のライン型プリントヘッドを設けているが、この構成以外の例えばシリアル型の単一のプリントヘッドでも同様な構成は可能である。また、蛇行補正ガイドはシート端部に当接する片側をバネ等の弾性部材でシート端部に向けて押圧する構成としてもよい。この場合はシート端部に対する蛇行補正ガイドの僅かな位置決め誤差はシート種類によっては吸収可能なため、シート座屈に対するマージンが更にアップする。蛇行補正ガイドはシート端部に対して片側のみでも効果を出すことができる。斜走ローラ等で常にシートを片側に押し付ける構成を取ればよい。
【0052】
以上説明した実施形態のプリント装置は、プリント部4の上流側にシートをニップ搬送する搬送ローラと、前記搬送ローラに対向し紙送りと垂直な方向に分割して配置された複数のピンチローラを有している。前記搬送ローラの上流側にはシートをニップして搬送する上流側サブ搬送ローラと、前記搬送ローラ対の上流側でシートの少なくとも片側端部に当接してシート端部をガイドする端部ガイド部材を備えている。前記端部ガイド部材をシート搬送方向に直行する方向に移動するためのガイド移動手段が設けられている。この構成により、紙のシワを起こすことなく、搬送精度と蛇行精度を高レベルで両立させることが出来る。結果、プリント品質の高い次元プリント装置が提供される。
【符号の説明】
【0053】
4 プリント部
13 制御部
101 搬送ローラ
102 ピンチローラ
156 ループ部
153,154 蛇行抑制ガイド
151,152 シートエッジセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されるシートの側端部に当接してシートの側端部を案内する案内手段と、
前記案内手段の下流側に配置され、シート幅方向の全体に接触する従動ローラを有し、シートを挟持して搬送する第1ローラ対と、
前記ローラの下流側に配置されシートを搬送する搬送ローラと、前記搬送ローラと協働してシートを狭持する複数のピンチローラを有する第2ローラ対とを有し、
前記複数のピンチローラの各々は、該ピンチローラから近い側の搬送路側端側に傾いた搬送力をシートに付与し、搬送路側端までの距離が小さい前記ピンチローラほどその搬送力の傾きは大きくなるように構成したことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記各ピンチローラは、該ピンチローラから近い側の搬送路側端側の該ピンチローラの端部が搬送路の中央に近い側の端部よりも上流に位置するように傾いており、搬送路側端までの距離が小さい前記ピンチローラほど傾きが大きくなる請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記案内手段はシートの第1の側端部に当接する第1のガイドと、前記第1の側端部とは反対側の第2の側端部に当接する第2のガイドを有し、前記第1の側端部の位置を検知する検知手段を有し、前記検知手段の検知結果に応じて前記第1のガイドを前記第1の側端部に当接する位置に移動させる移動手段を有する請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記検知手段は前記第2の側端部の位置を検知し、前記移動手段は前記検知手段の検知結果に応じて前記第2のガイドを前記第2の側端部に当接する位置に移動させる請求項3に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記第2ローラ対は前記第1ローラ対よりも搬送力が大きい請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
請求項1に記載のシート搬送装置と、前記第2ローラ対の下流側に配置され、シートに画像を形成するプリント手段と、前記第2ローラ対の下流側であって前記プリント手段の近傍に配置され、シートを搬送する第3ローラ対を有するプリント装置。
【請求項7】
前記プリント手段は、ライン型プリントヘッドがシート搬送方向に沿って複数並べられたものであることを特徴とする請求項6に記載のプリント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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