説明

シート搬送装置及び原稿情報読取装置

【課題】ニップ部からシートを押し出すパドル48を有する構成で、騒音を低減できる構造を実現する。
【解決手段】パドル48は、従動ローラ43bの回転軸43b−1の周囲に複数固定されている。また、シートと当接するパドル48の先端に、回転軸43b−1の軸方向一方に向かうほど径方向内方に傾斜する傾斜部48bを有する。パドル48がシートと当接する際には、パドル48の先端がシートに徐々に当接する。これにより、パドル48がシートに当接する際のエネルギを分散化して、叩き音を低減でき、シート搬送時の騒音を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ローラ対のニップ部で挟持されたシートをこのニップ部から押し出す突出部材を有するシート搬送装置、及び、このようなシート搬送装置を備えた、スキャナなどの原稿情報読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スキャナなどの原稿情報読取装置は、情報読取部で情報を読み取られたシートを搬送するシート搬送装置を備えている。情報読取部は、例えば、イメージセンサなどのシート上の画像情報或いは磁気情報を読み取るセンサを備えた部分である。また、シート搬送装置は、シートを挟持して搬送する駆動ローラと従動ローラとからなる搬送ローラ対を有する。
【0003】
このようなシート搬送装置として、搬送ローラ対を構成する従動ローラに蹴出ローラを設け、搬送ローラ対で挟持したシートを蹴出ローラの腕部(突出部材)により、搬送ローラ対のニップ部から蹴り出す(押し出す)構成がある(特許文献1参照)。このような構成の場合、従動ローラと共に回転する腕部をシートに当接させて、シートをニップ部から確実に蹴り出すようにしている。そして、搬送されるシートの後端がニップ部に残って、シートがジャムしたり、シート搬送の順番が狂ったりすることを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−348134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような構造の場合、従動ローラとともに回転する腕部をシートに当接させるため、この腕部がシートと当接する際に叩き音が生じ、騒音を発生させてしまう。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、ニップ部からシートを押し出す突出部材を有する構成で、騒音を低減できる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シートを搬送する駆動ローラと、前記駆動ローラとの間でシートを挟持するニップ部を形成し、前記駆動ローラの回転に従動して回転する従動ローラと、前記駆動ローラと前記従動ローラとのうちの少なくとも何れか一方の回転軸に固定され、前記駆動ローラと前記従動ローラとの間で挟持されるシートに当接してこのシートを前記ニップ部からシート搬送方向に押し出す押出部と、を備え、前記押出部は、前記回転軸の径方向に突出して設けられると共に前記回転軸の周方向に複数設けられた突出部材を有し、前記複数の突出部材の少なくとも1つは、シートに当接する先端に前記回転軸の軸方向一方に向うほど径方向内方に傾斜する傾斜部を有する、ことを特徴とするシート搬送装置にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、シートに当接する突出部材の先端に傾斜部を有するため、突出部材がシートと徐々に当接し、叩き音による騒音を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るシート搬送装置を備えた原稿情報読取装置の概略構成断面図。
【図2】搬送ガイド部材の一部を抜き出して示す斜視図。
【図3】排紙ローラ対を抜き出して示す斜視図。
【図4】従動ローラのパドルを設けた部分を拡大して示す平面図。
【図5】本発明の第2の実施形態を示す、図4と同様の図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について、図1ないし図4を用いて説明する。
【0011】
[原稿情報読取装置]
まず、本発明の対象となる原稿情報読取装置の全体構成について簡単に説明する。原稿情報読取装置(以下、スキャナ)1は、図1に示すように、シートSを給紙する給紙部2と、シートS上の情報を読み取る情報読取部3と、シートSを排出する排出部4と、を備える。そして、給紙部2から給紙されたシートS上の画像情報を、情報読取部3で読み取り、情報が読み取られたシートSは、シート搬送装置である排出部4から排出される。
【0012】
[給紙部]
給紙部2は、スキャナ1の装置本体11の上部に配置され、搬送部材である搬送ローラ22と、搬送ローラ22と対向して配置され、シートSを載置するトレイ21と、分離部材である分離ローラ23と、を有する。
【0013】
トレイ21は、装置本体11の本体部11aに対して回動自在に支持された中板21bを有する。中板21bは、不図示のばねにより、搬送ローラ22に向けて付勢されている。搬送ローラ22は、装置本体11のカバー部11bに設けられ、不図示の駆動源であるモータにより回転駆動される。そして、中板21b上のシートSと当接してこのシートSを情報読取部3に向けて搬送する。本実施形態の場合、搬送ローラ22は、トレイ21の幅方向中央部に対向する位置に配置している。
【0014】
また、トレイ21の搬送ローラ22によるシート搬送方向下流で、搬送ローラ22と対向する位置には、分離ローラ23を設けている。分離ローラ23は、搬送ローラ22に遠近動する方向に移動自在に支持され、不図示のばねにより搬送ローラ22に向かう方向に付勢されている。また、不図示の駆動手段であるモータにより、搬送ローラ22の回転方向と逆方向に回転するようにしている。そして、搬送ローラ22によるシート搬送時に搬送ローラ22の回転方向と逆方向に回転することにより、シート搬送方向と逆方向に作用するシート抵抗を生じさせて、搬送するシートSを他のシートから分離し易くしている。なお、分離ローラ23にはトルクリミッタが設けられており、所定以上のトルクがかかった場合に、モータからの動力伝達を遮断できるようにしている。
【0015】
また、搬送ローラ22と分離ローラ23とのシート搬送方向に関する位置関係は、搬送ローラ22が、分離ローラ23よりも、搬送ローラ22によるシート搬送方向上流にずれた位置としている。これにより、トレイ21上のシートSをピックアップし易くしている。
【0016】
また、本実施形態の場合、装置本体11は、装置本体11内でシートSが搬送される搬送路13を境に、本体部11aとカバー部11bとに分離可能としている。このうちの本体部11aは、上述のトレイ21及び分離ローラ23が設けられ、カバー部11bには搬送ローラ22が支持されている。カバー部11bは、本体部11aに対し本体部11aの下端寄り部分を中心として回動自在としている。そして、カバー部11bを回動させれば、搬送路13が露出(開放)し、この搬送路13内でジャムしたシートを取り除くことができる。
【0017】
また、カバー部11bを閉じた状態では、搬送ローラ22が分離ローラ23に当接し、分離ローラ23がばねの付勢方向と反対方向に沈む(搬送ローラ22から離れる方向に移動する)。この結果、搬送ローラ22と分離ローラ23とが弾性的に当接する。
【0018】
また、中板21bは、不図示の駆動源であるモータから歯車などの動力伝達機構を介して伝達される駆動力により、ばねの弾性力に抗する方向に回動支持部を中心に回動する。そして、搬送ローラ22との間の隙間を設けられるようにしている。
【0019】
即ち、中板21bが搬送ローラ22に向けて付勢されたままの状態であると、シート(或いはシート束)Sをトレイ21に載置する際に、シートSの先端が中板21bと搬送ローラ22との間に入り込みにくい。したがって、本実施形態のように、中板21bをばねの付勢方向と逆方向に回動させて、中板21bと搬送ローラ22との間に隙間を開けるようにしている。これにより、シート(或いはシート束)Sをトレイ21に載置した際に、シートSの先端が中板21bと搬送ローラ22との間に入り易くして、搬送ローラ22によるシートSの搬送を円滑に行える。
【0020】
[情報読取部]
情報読取部3は、図1に示すように、装置本体11のシート搬送方向中間部に配置され、ローラ対31と、レジストセンサ32と、イメージセンサ33a、33bと、を有する。ローラ対31は、駆動ローラ31aと従動ローラ31bとから構成され、このうちの駆動ローラ31aは本体部11aに、従動ローラ31bはカバー部11bにそれぞれ設けられている。駆動ローラ31aは不図示の駆動源であるモータにより回転駆動し、従動ローラ31bは、駆動ローラ31aに従動して回転する。このようなローラ対31は、給紙部2から搬送されたシートSを搬送ローラ22による搬送方向と同方向に搬送する。
【0021】
レジストセンサ32は、ローラ対31により搬送されるシートSの先端と後端とを検知する。このようなレジストセンサ32としては、例えば、発光部と受光部とを備えたフォトセンサ、レバーの動作を検知するものなどが挙げられる。フォトセンサはシートSが光を遮ることにより、レバーによる検知はシートSがレバーを倒すことにより、シートSの通過を検知する。本実施形態の場合には、フォトセンサとしている。
【0022】
イメージセンサ33a、33bは、それぞれCIS(密着型イメージセンサ)であり、シートSの表面と裏面との情報を読み取る。即ち、片方のイメージセンサ33aは本体部11a側に設けられ、他方のイメージセンサ33bはカバー部11b側に設けられている。そして、それぞれのイメージセンサ33a、33bの情報を読み取る面を搬送路13側とし、搬送路13を通るシートSの両面の情報をイメージセンサ33a、33bにより読み取るようにしている。本実施形態で読み取る情報は、シートSの表面又は裏面に形成された画像の情報である。
【0023】
[排出部(シート搬送装置)]
排出部4は、装置本体11のシート搬送方向下流に配置され、搬送路13と連続するU字搬送路41と、搬送ローラ対42と、排紙ローラ対43と、排紙トレイ44と、シート抑え部材45と、を有する。このうちのU字搬送路41は、設置状態で上方から搬送されるシートを湾曲した(U字状に形成された)経路を通じて上方に導くシート搬送路である。このようなU字搬送路41は、カバー部11bの下面に形成されたU字状の曲面部41aの外周に位置しており、U字形状の湾曲カバー41bにより覆われている。湾曲カバー41bは、ヒンジ46により装置本体11に回転自在に接続されている。このため、搬送されてきたシートをU字搬送路41内にシートがジャムした場合には、湾曲カバー41bを回動させてU字搬送路41を露出させることにより、ジャム処理が可能である。
【0024】
また、湾曲カバー41bは、回転軸47を中心として回転する搬送ガイド部材であるU字状の湾曲部材41cを有する。このような湾曲部材41cは、図2に示すように、回転軸47の一端部に設けたレバー52を回転させることにより、回転軸47と共に回転する。また、回転軸47の他端部には、ばね部材53が設けられ、回転軸47と共に湾曲部材41cを矢印54方向に付勢している。湾曲部材41cが図1の状態では、レバー52に設けた係合突起52aと湾曲カバー41bに設けた不図示の被係合部とを係合させて、湾曲部材41cの回動を阻止している。また、この係合は、ばね部材53の付勢により不用意に外れないようになっている。
【0025】
湾曲部材41cは、図1の状態でU字搬送路41を構成し、この状態から回動することにより、このU字搬送路41の一部を開放して、搬送路を切り替えられるようにしている。湾曲部材41cを回動させる場合には、レバー52を矢印54と逆方向に引っ張って、レバー52に設けた係合突起52aと湾曲カバー41bに設けた不図示の被係合部との係合を外す。そして、レバー52を図1の状態から時計方向に所定位置まで回動させる。これにより、U字搬送路41の一部を開放して、搬送路13から搬送ローラ対42により搬送されるシートをストレートに排出する別の搬送路を形成する。
【0026】
このように、本実施形態のスキャナ1は、シートの排出方法を変えることができる。例えば、通常、図1に示したような状態でシートの排出を行えば、コンパクトであり、設置スペースを小さくできる。一方、湾曲部材41cを回動させて別の搬送路を形成し、シートをストレートに排出できるようにすれば、例えば、撓みにくい厚いシートを排出する場合にU字搬送路41を通す必要がなく、このようなシートの排出を良好に行える。
【0027】
また、搬送ローラ対42は、装置本体11の搬送路13からU字搬送路41に入る入口で、ヒンジ46よりもシート搬送方向上流に配置されている。このような搬送ローラ対42も、上述のローラ対31と同様に、駆動ローラと従動ローラとから構成され、一方のローラを本体部11aに、他方のローラをカバー部11bにそれぞれ設けている。そして、情報読取部3から搬送されたシートをU字搬送路41に搬送する。
【0028】
また、排紙ローラ対43は、排出手段であり、U字搬送路41の出口に設けられ、シートをU字搬送路41から設置状態で上方に排出する。このような排紙ローラ対43も、駆動ローラ43aと従動ローラ43bとから構成される。駆動ローラ43aは、湾曲カバー41bの先端部に設けられ、不図示のモータにより回転駆動される。そして、シートと当接して回転することによりシートを搬送する。
【0029】
従動ローラ43bは、カバー部11bの駆動ローラ43aと対向する位置に設けられ、駆動ローラ43aとの間でニップ部Nを形成する。このために、従動ローラ43bは、不図示のばねなどの付勢部材により駆動ローラ43aに向けて付勢されている。そして、駆動ローラ43aに加圧された状態で(シートが有る場合にはシートを介して)当接し、駆動ローラ43aの回転に従動して回転する。
【0030】
このような駆動ローラ43a及び従動ローラ43bは、図3に示すように、それぞれ回転軸43a−1又は43b−1の軸方向に所定間隔をあけて複数並設された(図示の例では2個所に設けられた)、円筒状の部材である。即ち、駆動ローラ43a及び従動ローラ43bは、一対ずつ存在し、互いに対向するように配置している。なお、駆動ローラ43a及び従動ローラ43bの形状及び個数は、駆動ローラ43aと従動ローラ43bとが互いに対向するように配置されていれば、図示の例に限らない。例えば、それぞれ1個の長いローラとしても良いし、3個以上の複数としても良いし、1個の長いローラに複数の短いローラを対向させるようにしても良い。
【0031】
また、図3及び図4に示すように、従動ローラ43bの回転軸43b−1には、駆動ローラ43aと従動ローラ43bとの間で挟持されるシートに当接してこのシートをニップ部Nからシート搬送方向に押し出す押出部49が固定されている。この押出部49は、回転軸43b−1に固定される固定部480と、この固定部480から回転軸43b−1の径方向外方に突出するように複数設けられた突出部材であるパドル48とを有している。したがって、押出部49は、従動ローラ43bと共に一体的に回転する。すなわち、複数のパドル48は、従動ローラ43bと同方向に同じ量回転する。本実施形態の場合、パドル48は、一対の従動ローラ43bのそれぞれ軸方向内側に(軸方向に隣接する複数の従動ローラ43bの間に)、回転軸43b−1に周方向にほぼ等間隔に複数個(4個)ずつ固定されている。図示の例では、パドル48は、回転軸43b−1の周方向に放射状に所定間隔で複数並設されている。
【0032】
なお、このようなパドル48の配置は、本実施形態に限定されない。例えば、隣接するパドル48の先端部間の周方向の距離(間隔)を、複数のシートを1枚ずつ順次搬送する際の先行シートと後続シートとのシート間隔と同じかそれよりやや狭い間隔となるようにしてもよい。これにより、前後のシート間に一度以上の回数でパドル部が挟まり、シート材を搬送方向に押し出す。また、パドル部とシート材の接触を必要最低限にしてシート材の搬送を行えると同時に搬送音を著しく削減出来る。
【0033】
また、パドル48の軸方向位置は、搬送するシートの最小サイズに対応させる。図示の例の場合、最小サイズのシートの幅方向両端に、従動ローラ43bが位置するようにし、この従動ローラ43bよりも内側にパドル48が配置されるため、パドル48は最小サイズのシートに必ず当接する。
【0034】
パドル48の径方向の長さは、パドル48の先端がシートに当接(摺接)する程度の長さであれば特に限定されない。例えば、回転軸43b−1の軸方向からみて少なくともニップ部Nに達するまで、又はニップ部Nをある程度超えて延設されていることが好ましい。これにより、ニップ部Nに挟まれたシートに対して擦れながら摺接させることができるため、シートの押出効果を有効に向上することができる。本実施形態では、パドル48の径方向の先端が従動ローラ43bよりも径方向外側に突出するようにする。言い換えれば、4個のパドル48の外接円を、従動ローラ43bの外径よりも大きくする。
【0035】
このようなパドル48は、それぞれ板状の弾性部材で、側面が回転軸43b−1の軸方向とほぼ平行に配置されている。即ち、回転軸43b−1の軸方向に幅が広くなるように配置されている。また、駆動ローラ43aから外れた位置に設けられ、この駆動ローラ43aと接触することを防止している。そして、駆動ローラ43aと従動ローラ43bとに挟持されたシートに当接してこのシートをニップ部Nから押し出す。
【0036】
即ち、従動ローラ43bが駆動ローラ43aの回転に従動して回転することにより、パドル48も回転駆動する。上述のようにパドル48の先端は、従動ローラ43bよりも径方向外側に突出するため、ニップ部Nに存在するシートと当接することになる。したがって、パドル48が従動ローラ43bと共に回転駆動することにより、先端がシートに当接して、シートをニップ部Nから押し出す(蹴り出す)。
【0037】
また、本実施形態の場合、パドル48は、図4に示すように、シートに当接する先端に、回転軸43b−1の軸方向一方に向うほど径方向内方に傾斜する傾斜部48aを有している。図示の例の場合、傾斜部48aは、パドル48の先端が回転軸43b−1の軸方向外側に向かうほど径方向内方に傾斜している。即ち、傾斜部48aは、回転軸43b−1の軸方向中央側の基端51から軸方向端部側の先端50に向かって径方向内方に傾斜している。なお、この傾斜方向は逆であっても良い。また、本明細書で言う傾斜とは、直線状のものも湾曲状のものも含むものとする。したがって、シートに当接する先端が回転軸43b−1の軸方向一方に向うほど径方向内方に湾曲した構成であっても、本発明の傾斜部に含む。
【0038】
また、パドル48は、最も径方向の長さが短い先端50部分であっても、従動ローラ43bよりも径方向外方に突出する。言い換えれば、パドル48の従動ローラ43bからの突出量は、先端50から基端51に向かうほど多くなる。したがって、パドル48の先端は、何れの部分であっても従動ローラ43bよりも径方向外方に突出し、ニップ部Nに存在するシートに当接する。
【0039】
このようにシートに当接するパドル48は、駆動ローラ43aと従動ローラ43bとに挟持されたシートと当接した場合に撓むような弾性係数を有する弾性材料により形成されている。例えば、シートと当接した場合に撓んで、このシートがニップ部Nを通過することを妨げない程度の柔軟性を有するようにする。但し、パドル48によるシートの蹴り出しが十分に行える程度の剛性は確保するようにする。
【0040】
また、排紙トレイ44は、カバー部11bの本体部11aと反対側の面に形成され、排紙ローラ対43から排出されたシートを積載する。この排紙トレイ44は、水平方向に傾斜した傾斜面44aと、この傾斜面44aの下端縁から斜め上方に折り曲げるように形成された支え面44bとから構成される。この支え面44bの先端は排紙ローラ対43の出口近傍に存在する。排紙ローラ対43から排出されるシートは、傾斜面44aに向かって飛び出て、下端縁が支え面44bに支えられつつ、傾斜面44aに重なるように載置される。
【0041】
また、シート抑え部材45は、排紙トレイ44に積載されたシートを抑え付けて、シートが、外乱などの影響により排紙トレイ44から落下しないようにするものである。このようなシート抑え部材45は、湾曲カバー41bの先端からほぼ接線方向に延長するように設けられ、湾曲カバー41bを図1のように閉じた状態で、排紙トレイ44の傾斜面44aと対向する。この結果、排紙トレイ44に排出されたシートは、傾斜面44aとシート抑え部材45との間に挟まれ、不用意に落下することを防止される。
【0042】
[スキャナの動作]
このような本実施形態の場合、まず、情報を読み取るシート(或いはシート束)をトレイ21に載置する。シートをトレイ21に載置する際には、前述したように、中板21bが沈んでおり、中板21bと搬送ローラ22との間にシートの先端が進入する。そして、この状態で、例えば、ユーザが装置に設けられた読取開始ボタンを押すなどして、動作が開始すると、中板21bがばねに付勢されて、シートの先端が中板21bと搬送ローラ22とにより挟持される。
【0043】
この状態から搬送ローラ22が回転駆動する共に、分離ローラ23が逆方向に回転する。これにより、シート束の場合には、シートが1枚ずつ分離されて搬送路13へ搬送される。一方、シートが1枚の場合には、分離ローラ23に設けられたトルクリミッタが作動し、分離ローラ23への動力伝達が切られ、この分離ローラ23は搬送ローラ22の回転に従動して回転する。この結果、1枚のシートが搬送路13へ搬送される。
【0044】
搬送路13へ搬送されたシートは、ローラ対31により挟持されて、更に搬送される。そして、シートの先端がレジストセンサ32により検知され、シートの両面(或いは何れかの面)の情報がイメージセンサ33a、33bにより読み取られる。即ち、レジストセンサ32がシートの先端を検知してから所定時間後にイメージセンサ33a、33bによる読み取りを開始し、レジストセンサ32がシートの後端を検知してから所定時間経過後にイメージセンサ33a、33bによる読み取りを終了する。イメージセンサ33a、33bに読み取られた情報は、装置に設けられた記憶手段(メモリ)に記憶されたり、不図示の外部端末(パーソナルコンピュータなど)に送られたりする。
【0045】
イメージセンサ33a、33bを通過したシートは、搬送ローラ対42により挟持され、U字搬送路41に搬送される。U字搬送路41に搬送されたシートは、更に排紙ローラ対43により挟持され、排紙トレイ44に排出される。この際、排紙ローラ対43を構成する従動ローラ43bと共にパドル48が回転することにより、排紙ローラ対43のニップ部Nに存在するシートを排紙トレイ44側に押し出す。このようにパドル48によりシートを押し出すことで、シートの後端がニップ部に残らないようにしている。そして、シートの排紙整列性を向上させられる。
【0046】
このように構成され作用する本実施形態の場合、シートに当接するパドル48の先端に傾斜部48aを有するため、パドル48がシートと徐々に当接し、叩き音による騒音を低減できる。即ち、パドル48の先端が回転軸43b−1と平行であると、パドル48がシートに当接する瞬間の面積が大きいため、その際に発生するエネルギが大きくなり、生じる叩き音も大きくなる。また、パドル48自体がシートの当接の瞬間に撓みにくく、当接の際のエネルギが大きくなって、叩き音が大きくなる。
【0047】
これに対して本実施形態のように、シートに当接するパドル48の先端を傾斜させることにより、パドル48がシートに当接する瞬間の面積を小さくし、徐々に当接面積を大きくできる。この結果、当接の際に生じるエネルギを分散化でき、生じる叩き音を小さくできる。また、パドル48の先端が傾斜しているため、パドル48は先端に向かうほど幅が狭くなる。したがって、当接した際に撓み易く、当接の際のエネルギをより分散化して、叩き音を小さくできる。
【0048】
また、最終的には、パドル48の先端を全てシートに当接させるため、シートを押し出す能力は十分に確保できる。即ち、パドルの幅を狭くしてシートとの当接面積を小さくすれば、叩き音は小さくできるかもしれないが、シートを押し出すための力が十分に伝えづらくなる。パドルの剛性を高めればこの力を伝えられるかもしれないが、パドルの剛性が高すぎるとこのパドルがシートの搬送を妨げてしまったり、シートを損傷させたりする可能性がある。
【0049】
これに対して本実施形態の場合、パドル48とシートとの最終的な当接面積は確保してシートの押し出しを確実に行えると共に、パドル48をシートに徐々に当接させて、叩き音を小さくできる。言い換えれば、シートの押し出し能力の確保と叩き音の低減との両立を図れる。シートの叩き音を低減できれば、シート搬送時(排出時)の騒音を低減できる。
【0050】
なお、本実施形態のスキャナ1は、図1等に示したように、給紙部2をスキャナ1の装置本体11の上部に配置し、排出部4を装置本体11のシート搬送方向下流に配置している。そして、排出部4には、搬送路13と連続するU字搬送路41を設けて、設置状態で上方にもシートを排出できるようになっている。このような本実施形態では、U字搬送路41の排出側の排紙ローラ対43に対応してパドル48を設けているので、当該パドル48がシートを上方に蹴り上げる蹴り上げ部材あるいは排出補助部材となる。シートをU字搬送路41から良好に排出するためには、排紙ローラ対43と共に各パドル48がシートに擦れながら押し出すことが有効である。この際、特に、本実施形態では排紙ローラ対43と共に回転する各パドル48の先端を傾斜させているので、シート排出を良好に行いつつシート排出時の騒音低減を図ることができる。
【0051】
なお、本実施形態では、全てのパドル48の先端に傾斜を設けているが、これに限定されず、複数のパドル48のうち少なくとも1つに設けても、上述したシート搬送時(排出時)の騒音を低減することができる。
【0052】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について、図5を用いて説明する。本実施形態の場合、押出部49Aを構成するパドル48Aは、シートに当接する先端を、回転軸43b−1の軸方向中間部から両端側に向かうほど径方向内方に傾斜させている。即ち、本実施形態の場合、パドル48Aの先端に互いに逆方向に傾斜した一対の傾斜部48a、48bを有する。図示の例の場合、パドル48Aの軸方向中央部を最も突出させ、軸方向両端側に向かうほど突出量を小さくしている。
【0053】
本実施形態の場合、パドル48の先端の軸方向中央から両側への傾斜(傾斜部48a、48bのそれぞれの傾斜)は、それぞれ同じ角度としているが、互いに異なるようにしても良い。また、最も突出する位置は、軸方向中央から外れていても良い。また、パドル48の先端の軸方向中央から両側に湾曲している構成でも良く、例えば、パドル48の先端を、単一の円弧による凸曲面としても良い。
【0054】
このように構成される本実施形態の場合、パドル48は、軸方向中間部からシートと徐々に当接し、最終的に両端側も当接してシートをニップ部Nから押し出す。このため、シートの押し出しを確実に行えると共に、叩き音を低減できる。その他の構成及び作用は、上述の第1の実施形態と同様である。
【0055】
<他の実施形態>
上述の各実施形態では、排出部の排紙ローラ対の従動ローラ側にパドルを設けた構成について説明したが、パドルは駆動ローラ側に設けても良い。即ち、パドルは、駆動ローラと従動ローラとのうちの少なくとも一方の回転軸に設けられていれば良い。また、本発明の構成は、排出部に限らず、パドルを設ける必要がある搬送部に適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 原稿情報読取装置(スキャナ)
3 情報読取部
4 排出部(シート搬送装置)
43 排紙ローラ対
43a 駆動ローラ
43a―1 回転軸
43b 従動ローラ
43b−1 回転軸
48 パドル(突出部材)
N ニップ部
S シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送する駆動ローラと、
前記駆動ローラとの間でシートを挟持するニップ部を形成し、前記駆動ローラの回転に従動して回転する従動ローラと、
前記駆動ローラと前記従動ローラとのうちの少なくとも何れか一方の回転軸に固定され、前記駆動ローラと前記従動ローラとの間で挟持されるシートに当接してこのシートを前記ニップ部からシート搬送方向に押し出す押出部と、を備え、
前記押出部は、前記回転軸の径方向に突出して設けられると共に前記回転軸の周方向に複数設けられた突出部材を有し、
前記複数の突出部材の少なくとも1つは、シートに当接する先端に前記回転軸の軸方向一方に向うほど径方向内方に傾斜する傾斜部を有する、
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記押出部は、前記突出部材が前記回転軸の周方向に放射状に所定間隔で複数並設されたものであることを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記従動ローラは、前記回転軸の軸方向に所定間隔をあけて複数並設され、
前記押出部は、前記回転軸の軸方向に隣接する前記複数の従動ローラの間に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記突出部材は、前記駆動ローラと前記従動ローラとに挟持されたシートと当接した場合に撓むような弾性を有する弾性材料により形成されている、
ことを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
隣接する前記複数の突出部材の周方向の間隔は、複数のシートを1枚ずつ順次搬送する際の先行シートと後続シートとのシート間隔と同じかそれより狭い間隔であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
設置状態で上方から搬送されるシートを湾曲した経路を通じて上方に導くシート搬送路と、
前記シート搬送路から設置状態で上方にシートを排出する排出手段と、を備え、
前記排出手段は、前記駆動ローラ及び前記従動ローラを有し、
前記押出部は、前記排出手段に設けられ、
前記複数の突出部材は、シートを上方に向かって蹴り上げる蹴り上げ部材である、
ことを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
搬送路を搬送されるシートの情報を読み取る情報読取部と、
前記情報読取部で情報を読み取られたシートを搬送するシート搬送装置と、を備え、
前記シート搬送装置が、請求項1〜6のうちの何れか1項に記載のシート搬送装置である、
ことを特徴とする原稿情報読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−218937(P2012−218937A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90280(P2011−90280)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】