説明

シート搬送装置及び画像形成装置

【課題】 搬送不良及び重送の発生を抑制する。
【解決手段】 摩擦部材27の上面が、支持部材31の上面31Aより給紙ローラ23側に位置し、圧接面S2を用紙の搬送方向上流側に延長させた第1仮想接面S1が支持部材31と交わることなく搬送方向上流側に拡がるようにするとともに、摩擦部材27のうち圧接面S2より搬送方向上流側に、上流側に向かうほど第1仮想接面S1より下方側に離間するように第1仮想接面S1に対して傾いた案内傾斜面27Aが設ける。これにより、用紙に摩擦力を確実に付与することができるので、摩擦力の低下に起因する重送の発生を確実に抑制することができる。また、案内傾斜面27Aが用紙を圧接面S2に導く案内面として機能するので、搬送不良も防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート搬送装置、及びこのシート搬送装置を備える画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の発明では、複数枚の用紙が重なったまま搬送されてしまうこと(以下、この現象を重送という。)を抑制するため、積層方向下端に位置する用紙に接触する摩擦部材を配設している。
【0003】
つまり、用紙に搬送力を付与する給紙ローラは、積層方向上端に位置する用紙の上面に接触して回転することから、摩擦部材を積層方向下端に位置する用紙の下面に接触させることにより、搬送力に対抗する摩擦力を用紙に付与して重送の発生を抑制している。
【0004】
ところで、特許文献1に記載の発明では、摩擦部材が配設される部位(以下、この部位を支持部材という。)に摩擦部材が嵌り込む凹部を形成するとともに、凹部の深さ寸法を摩擦部材の厚み寸法と同一寸法として摩擦部材の上面と支持部材の上面とを面一とすることにより、摩擦部材と用紙とを確実に接触させている。
【0005】
因みに、凹部を設けることなく、単純に、摩擦部材を支持部材の上面に配置すると、必然的に摩擦部材の上面が支持部材の上面より上側に位置する。つまり、摩擦部材を支持部材の上面に配置すると、2つの上面のうち用紙搬送方向下流側の上面が上流側の上面より上側に位置し、2つの上面の境目が断付き状となってしまう。
【0006】
そして、摩擦部材は、通常、搬送される用紙や原稿等のシートに比べて厚み寸法が大きいので、2つの上面の境目が断付き状となってしまうことと相まって、後述するように用紙の空送や皺の発生を誘発してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−208857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、摩擦部材の厚み寸法及び凹部の深さ寸法は、公差内の寸法バラツキを有しているので、現実には、摩擦部材の上面が支持部材の上面に対して突出又は凹んだ状態が発生してしまう。
【0009】
そして、摩擦部材の上面が支持部材の上面に対して突出してしまった場合には、シートの搬送方向先端側が摩擦部材の搬送方向上流側端面に衝突するので、シートがそれ以上搬送方向下流に搬送されないといった空送や衝突時にシートに皺が発生してしまう等の搬送不良が発生してしまう。
【0010】
一方、摩擦部材の上面が支持部材の上面に対して凹んでしまった場合には、シートと摩擦部材との接触面圧が低下してしまうので、十分な摩擦力をシートに付与することができず、重送が発生してしまう。
【0011】
なお、このような問題は、画像形成装置の給紙装置のみならず、画像読取装置のオートドキュメントフィーダ等のシート搬送装置においても生じる問題である。
本発明は、上記点に鑑み、上記の搬送不良の発生を抑制しつつ、重送の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するために、シートを搬送するシート搬送装置であって、シートの下面に接触して当該シートに摩擦抵抗を付与する摩擦部材(27)と、摩擦部材(27)と対向配置され、シートの上面に接触してシートを摩擦部材(27)に向けて押圧しながら回転することによりシートに搬送力を付与する給紙ローラ(23)と、装置本体に対して固定され、摩擦部材(27)を支持するとともに、給紙ローラ(23)が摩擦部材(27)に作用させる押圧力を受ける支持部材(31)と、給紙ローラ(23)から搬送された複数枚のシートを1枚ずつに分離する分離ローラ(25)とを備え、摩擦部材(27)のうち、シートの不在時に給紙ローラ(23)と接触する部位を圧接面(S2)と呼び、圧接面(S2)をシートの搬送方向上流側に延長させた仮想平面を第1仮想接面(S1)と呼ぶとき、第1仮想接面(S1)は支持部材(31)と交わることなく、圧接面(S2)は支持部材(31)の上面(31A)より給紙ローラ(23)側に位置しており、さらに、摩擦部材(27)のうち圧接面(S2)より搬送方向上流側には、上流側に向かうほど第1仮想接面(S1)より下方側に離間するように第1仮想接面(S1)に対して傾いた第1傾斜面(27A)が設けられていることを特徴とする。
【0013】
これにより、本発明では、圧接面(S2)は支持部材(31)の上面(31A)より給紙ローラ(23)側に位置しているので、摩擦部材(27)とシートとを確実に接触させることができる。このため、シートに摩擦力を確実に付与することができるので、摩擦力の低下に起因する重送の発生を確実に抑制することができる。
【0014】
また、摩擦部材(27)のうち圧接面(S2)より搬送方向上流側に第1傾斜面(27A)が設けられているので、この第1傾斜面(27A)がシートを圧接面(S2)に導く案内面として機能する。
【0015】
つまり、ユーザが摩擦部材(27)と給紙ローラ(23)との間にシートを挿入するときに、第1傾斜面(27A)がシートを圧接面(S2)に導く案内面として機能するので、シートを容易に挿入することができるとともに、シートの搬送方向先端側が摩擦部材(27)の搬送方向上流側端面に衝突することに起因する搬送不良も防ぐことができる。
【0016】
以上により本発明では、シートの挿入性を改善することができるとともに、搬送不良の発生を抑制しつつ、重送の発生を抑制することができる。
因みに、上記各手段等の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記各手段等の括弧内の符号に示された具体的手段等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置1の前方側中央断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置1の前方側斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る給送装置21の拡大図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る摩擦部材27及びその周囲の拡大断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る摩擦部材27及びその周囲の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に説明する「発明の実施形態」は実施形態の一例を示すものであり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的手段や構造等に限定されるものではない。
【0019】
そして、本実施形態は、画像形成装置に本発明を適用したものであり、以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
(第1実施形態)
1.画像形成装置の概略構造
画像形成装置1の筐体3内には、図1に示すように、記録用紙やOHPシート等の記録シート(以下、用紙という。)に現像剤像を転写することにより、用紙に画像を形成するモノクロ方式の画像形成部5が収納されている。
【0020】
なお、本実施形態に係る画像形成部5は、現像ユニットをなすプロセスカートリッジ7、感光ドラム7Aを露光する露光器9、感光ドラム7Aに形成された現像剤像を用紙に転写させる転写ローラ11、及び用紙に転写された現像剤像を定着させる定着器(図示せず。)等から構成された電子写真方式の画像形成部である。
【0021】
また、給紙カセット15は、画像形成部5に搬送される用紙が積層された状態で収納される給紙トレイであり、この給紙カセット15は、装置本体(筐体3)に対して着脱可能に装着されている。
【0022】
なお、給紙カセット15に収納されている用紙は、ピックアップローラ15Aにより画像形成部5に向けて搬出された後、分離ローラ15B及び分離パッド15Cにより1枚ずつ分離されて画像形成部5に搬送される。
【0023】
ところで、筐体3の前面側には、給紙カセット15に載置されている用紙以外の用紙を直接的に画像形成部5に供給するための用紙供給口3Aが設けられている。この用紙供給口3Aは、通常使用時には、二点鎖線で示すように、筐体3に対して揺動可能に組み付けられたマルチパーパス給紙トレイ17により閉塞されている。なお、通常使用時とは、給紙カセット15から用紙を供給する場合等をいう。
【0024】
そして、ユーザによりマルチパーパス給紙トレイ(以下、MPトレイと記す。)17が前面側に開かれると、図2に示すように、用紙供給口3Aが開放されて、用紙供給口3Aから用紙を供給することが可能な状態になるとともに、MPトレイ17が用紙供給口3Aに供給される用紙の案内部材として機能する。
【0025】
なお、MPトレイ17のトレイ本体17Aには、図1に示すように、用紙が載置される部位を拡大するための拡張トレイ17B、及び用紙の幅方向端部に接触して用紙の搬送を案内する一対のガイド部17Cが移動可能に組み付けられている。
【0026】
因みに、用紙の幅方向とは、用紙の搬送方向及び用紙の厚み方向と直交する方向いい、具体的には、画像形成装置1の左右方向(図2参照)と一致する。
2.用紙供給口から画像形成部に用紙を給紙するための構造
筐体3内には、図3に示すように、MPトレイ17に載置された用紙を給送するための給送装置21が設けられており、この給送装置21は、給紙ローラ23、分離ローラ25、摩擦部材27及び分離パッド29、並びに給紙ローラ23及び分離ローラ25を回転駆動する駆動機構(図示せず。)等から構成されている。
【0027】
摩擦部材27は、MPトレイ17に載置された用紙の下面に接触して当該用紙に摩擦抵抗を付与するコルク製のパッドであり、この摩擦部材27と対向する位置には、用紙に搬送力を付与する給紙ローラ23が配設されている。そして、給紙ローラ23は、MPトレイ17に載置された用紙の上面に接触して用紙を摩擦部材27に向けて押圧しながら回転することより、用紙に搬送力を付与する。
【0028】
また、本実施形態に係る給紙ローラ23は、分離ローラ25の回転軸線を揺動中心として摩擦部材27から離間した位置(図3に示す位置)と摩擦部材27に近接した位置(図4の二点鎖線で示す位置)との間で揺動変位可能である。
【0029】
そして、給紙ローラ23は、用紙に搬送力を付与する場合には摩擦部材27に近接した位置となって用紙を摩擦部材27側に押圧する。一方、用紙に搬送力を付与しない場合には、給紙ローラ23は、図示しない揺動機構により上方側に変位させられて摩擦部材27から離間した位置となる。
【0030】
なお、給紙ローラ23が用紙を摩擦部材27側に押圧する力として、本実施形態では、給紙ローラ23及び給紙ローラ23を支持するホルダ23A等に作用するバネ(図示せず。)の弾性力を利用している。そして、前記弾性力はリンク機構等を介してホルダ23A等に伝達される。
【0031】
分離ローラ25は、給紙ローラ23より用紙搬送方向下流側に配設されたローラであり、この分離ローラ25は、給紙ローラ23から送り出された複数枚の用紙を1枚ずつに分離して画像形成部5側に送り出す。分離パッド29は、分離ローラ25と対向配置され用紙に搬送抵抗を付与するゴム製のパッドである。
【0032】
なお、分離ローラ25は装置本体に対して変位することなく回転し、分離パッド29は、パッドホルダ29Aを介して装置本体に対して揺動変位可能に組み付けられている。そして、分離パッド29は、パッドホルダ29Aを介して捻りコイルバネ等のバネ29Bにより分離ローラ25側に押圧されている。
【0033】
因みに、装置本体とは、筐体3や画像形成部5を支持するフレーム(図示せず。)等の画像形成装置1の骨格となる部材をいう。
また、摩擦部材27は、装置本体に対して固定された支持部材31により支持されており、この支持部材31は、図2に示すように、幅方向に延びてフレーム等の装置本体に組み付け固定された梁状の部材である。このため、給紙ローラ23が摩擦部材27に作用させる押圧力は、摩擦部材27を介して支持部材31にて受けることとなる。
【0034】
そして、支持部材31の上面31Aは、図2に示すように、用紙の載置面17Dと平行に連なるような面に設定されており、この上面31Aの搬送方向上流側端部には、図4に示すように、支持部傾斜面31Bが設けられている。なお、載置面17Dとは、用紙供給口3Aから画像形成部5に供給される用紙を載置する部位であり、この載置面17Dには、ガイド部17Cが設けられている。
【0035】
支持部傾斜面31Bは、上流側に向かうほど第1仮想接面S1より下方側に離間するように第1仮想接面S1に対して傾いた傾斜面である。因みに、本実施形態では、第1仮想接面S1と支持部傾斜面31Bとのなす角は、約45度である。
【0036】
ここで、第1仮想接面S1とは、摩擦部材27のうち、用紙の不在時に給紙ローラ23と接触する部位(以下、この部位を圧接面S2という。)を用紙の搬送方向上流側に延長させた仮想の平面をいう。
【0037】
また、摩擦部材27は、摩擦面である圧接面S2が支持部材31の上面31Aと平行となり、かつ、圧接面S2が上面31Aより給紙ローラ23側に位置するように支持部材31に配設されている。このため、本実施形態では、圧接面S2を用紙の搬送方向上流側に延長させた第1仮想接面S1は、支持部材31と交わることなく、搬送方向上流側に拡がる仮想の平面となる。
【0038】
そして、摩擦部材27のうち圧接面S2より搬送方向上流側には、第1仮想接面S1に対して傾いた案内傾斜面27Aが設けられており、この案内傾斜面27Aは、搬送方向上流側に向かうほど第1仮想接面S1より下方側に離間するように第1仮想接面S1に対して傾いている。
【0039】
なお、本実施形態では、板状の摩擦部材27のうち圧接面S2から案内傾斜面27Aに連なる部位を滑らかに連続した円弧状に屈曲させることにより、矩形板のコルク板から案内傾斜面27Aを有する摩擦部材27を構成している。因みに、本実施形態では、第1仮想接面S1と案内傾斜面27Aとのなす角は、約10度である。
【0040】
また、支持部材31のうち摩擦部材27が配設される部位には、上面31Aより下方側に窪んだ凹部31Cが設けられており、摩擦部材27の下面は、両面テープや接着剤等の接着手段により凹部31Cの底面に組み付け固定されている。
【0041】
なお、凹部31Cの底面は、案内傾斜面27Aを含む摩擦部材27の上面形状と平行となっている。そして、特に、凹部31Cの底面のうち搬送方向上流側の凹み寸法は、案内傾斜面27Aの搬送方向上流側端部が上面31Aより低い部位に位置するように設定されている。このため、案内傾斜面27Aの上流側端部の角部は、凹部31C内に位置することとなる。
【0042】
また、分離ローラ25と給紙ローラ23との間には、図3に示すように、第2仮想接面S3に対して傾いた誘導傾斜部29Cが設けられている。そして、誘導傾斜部29Cは、搬送方向下流側に向かうほど第2仮想接面S3より上方側に離間するように第2仮想接面S3に対して傾いた状態で、分離ローラ25と対向する対向面29Eに連なっている。
【0043】
なお、第2仮想接面S3とは、圧接面S2を用紙の搬送方向下流側に延長させた仮想の平面をいう。また、本実施形態では、第2仮想接面S3と誘導傾斜部29Cとのなす角は、約40度である。
【0044】
なお、本実施形態係る誘導傾斜部29Cは、給紙ローラ23から送り出された用紙を分離ローラ25側に案内する案内部をなすものである。そして、本実施形態では、誘導傾斜部29Cは、支持部材31のうちパッドホルダ29Aの両側にリブ状に形成された突条の先端部、つまり突条の尾根部に設定されている。また、対向面29Eは分離パッド29の摩擦面に相当する。
【0045】
ところで、誘導傾斜部29Cと対向面29Eとは、給紙ローラ23から送り出された用紙を分離ローラ25側に案内可能に連なっていれば十分である。このため、本実施形態では、誘導傾斜部29Cと対向面29Eとは、両者29C、29Aの境に傾斜部29Dを有する段差が生じた状態で連なっている。
【0046】
3.本実施形態に係る画像形成装置の特徴
本実施形態では、図4に示すように、圧接面S2は支持部材31の上面31Aより給紙ローラ23側に位置しているので、摩擦部材27と用紙とを確実に接触させることができる。このため、用紙に摩擦力を確実に付与することができるので、摩擦力の低下に起因する重送の発生を確実に抑制することができる。
【0047】
また、摩擦部材27のうち圧接面S2より搬送方向上流側に案内傾斜面27Aが設けられているので、この案内傾斜面27Aが用紙を圧接面S2に導く案内面として機能する。
つまり、ユーザが摩擦部材27と給紙ローラ23との間に用紙を挿入するときに、案内傾斜面27Aが用紙を圧接面S2に導く案内面として機能するので、用紙を容易に挿入することができるとともに、用紙の搬送方向先端側が摩擦部材27の搬送方向上流側端面に衝突することに起因する搬送不良も防ぐことができる。
【0048】
以上により本実施形態では、用紙の挿入性を改善することができるとともに、搬送不良の発生を抑制しつつ、重送の発生を抑制することができる。
また、本実施形態では、支持部材31のうち搬送方向上流側端部には、上流側に向かうほど第1仮想接面S1より下方側に離間するように第1仮想接面S1に対して傾いた支持部傾斜面31Bが設けられている。
【0049】
したがって、支持部傾斜面31Bが用紙を案内傾斜面27Aに案内する案内面として機能するので、用紙をスムーズにMPトレイ17側から挿入することができる。
また、本実施形態では、摩擦部材27のうち圧接面S2より搬送方向上流側の部位が屈曲していることにより案内傾斜面27Aが形成されている。
【0050】
これにより、例えば、摩擦部材27のうち搬送方向上流側の部位を切削する等して案内傾斜面27Aを形成する場合に比べて、容易に、案内傾斜面27Aを形成することができる。
【0051】
ところで、給紙ローラ23により用紙が摩擦部材27に押圧されると、用紙は圧接面S2に沿うような状態となって第1仮想接面S1と一致した状態となる。このため、仮に、第1仮想接面S1が支持部材31の上面31Aに対して平行でなく、第1仮想接面S1が支持部材31の上面31Aと交わる場合には、用紙が支持部材31に接触してしまう。
【0052】
そして、用紙が支持部材31に接触してしまうと、給紙ローラ23の押圧力を圧接面S2以外の部位、つまり支持部材31のうち用紙と接触する部位でも受けることとなる。このため、押圧力が分散してしまい、圧接面S2で発生する摩擦力が低下するので、重送が発生する可能性が高まる。
【0053】
これに対して、本実施形態のごとく、圧接面S2が支持部材31の上面31Aと平行な面である場合には、第1仮想接面S1が支持部材31の上面31Aと交わることがない。
したがって、本実施形態では、押圧力が分散することなく圧接面S2のみ作用するので、圧接面S2で発生する摩擦力が低下することを防止でき、重送の発生を確実に抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態では、分離ローラ25と給紙ローラ23との間には、搬送方向下流側に向かうほど第2仮想接面S3より上方側に離間するように第2仮想接面S3に対して傾いた誘導傾斜部29Cが設けられており、さらに、誘導傾斜部29Cは、分離ローラ25と対向する対向面29Eに連なっていることを特徴としている。
【0055】
これにより、本実施形態では、給紙ローラ23から搬送された複数枚の用紙の搬送方向先端側を、誘導傾斜部29Cに沿うように楔状(三角状)に搬送方向前進側にずらすことができる。
【0056】
したがって、複数枚の用紙全てが束となって分離ローラ25側に搬送されてしまうことを抑制できるので、給紙ローラ23から搬送された複数枚の用紙を確実に1枚ずつに分離することができる。
【0057】
なお、本実施形態では、誘導傾斜部29Cと対向面29Eとの境に段差が生じているが、この段差は、誘導傾斜部29Cに対して用紙搬送方向下流側に位置する対向面29Eが、誘導傾斜部29Cの延長仮想面より下側に位置することにより生じた段差であるので、用紙の搬送を阻害することはない。
【0058】
因みに、誘導傾斜部29Cの延長仮想面とは、誘導傾斜部29Cを誘導傾斜部29Cに沿って用紙搬送方向下流側に延長させた仮想平面をいう。
4.発明特定事項と実施形態との対応関係
本実施形態では、案内傾斜面27Aが特許請求の範囲に記載された第1傾斜面に相当し、支持部傾斜面31Bが特許請求の範囲に記載された第2傾斜面に相当し、誘導傾斜部29Cが特許請求の範囲に記載された第3傾斜部に相当する。
【0059】
(第2実施形態)
本実施形態は、図5に示すように、摩擦部材27のうち圧接面S2から案内傾斜面27Aに連なる部位に、厚み方向に切り込まれたスリット27Bを設けたものである。
【0060】
これにより、本実施形態では、例えば、板状の摩擦部材27を曲げて案内傾斜面27Aを形成する場合に、曲げ箇所を特定することができるので、容易に案内傾斜面27Aを形成することができる。
【0061】
さらに、摩擦部材27にはスリット27Bが設けられているので、曲げられた摩擦部材27が元の形状に復元しようとする力を緩和することができる。このため、例えば両面テープや接着剤等により摩擦部材27を装置本体等に固定したときに、折り曲げられた摩擦部材27が装置本体等から剥がれ難くなるので、長期に亘って用紙を安定的に搬送することが可能となる。
【0062】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、給紙装置に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、画像読取装置のオートドキュメントフィーダ等のシート搬送装置にも適用できる。
【0063】
また、上述の実施形態では、MPトレイ17に載置された用紙の給紙装置に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、給紙カセット15に載置された用紙の給紙装置に本発明を適用してもよい。
【0064】
また、上述の実施形態では、給紙ローラ23が給紙時と非給紙時とで位置が変化したが、本発明はこれに限定されるものではなく、給紙時及び非給紙時を問わず、例えば、給紙ローラ23がMPトレイ17に載置された用紙と接触可能な位置に固定されたものであってもよい。
【0065】
また、上述の実施形態では、支持部材31のうち摩擦部材27が配設される部位に凹部31Cを設けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、案内傾斜面27Aが支持部材31の搬送方向上流側端部に位置するように摩擦部材27を配置することにより、凹部31Cを廃止してもよい。
【0066】
また、上述の実施形態では、誘導傾斜部29Cと対向面29Eとは傾斜部29Dを有して連なっていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、誘導傾斜部29Cと対向面29Eとが段差無く滑らかに連なるようにする、又は傾斜部29Dを廃止した状態で誘導傾斜部29Cと対向面29Eとが連なるようにしてもよい。
【0067】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0068】
1… 画像形成装置、3… 筐体、3A… 用紙供給口、5… 画像形成部、
7… プロセスカートリッジ、7A… 感光ドラム、9… 露光器、
11… 転写ローラ、15… 給紙カセット、15A… ピックアップローラ、
15B… 分離ローラ、15C… 分離パッド、
17… マルチパーパス給紙トレイ(MPトレイ)、17A… トレイ本体、
17B… 拡張トレイ、17C… ガイド部、17D… 載置面、
21… 給送装置、23… 給紙ローラ、25… 分離ローラ、27… 摩擦部材、
27A… 案内傾斜面、27B… スリット、29… 分離パッド、
29A… パッドホルダ、29B… バネ、29C… 誘導傾斜部、29E… 対向面、
29D… 傾斜部、31… 支持部材、31A… 上面、31B… 支持部傾斜面、
31C… 凹部、S1… 第1仮想接面、S2… 圧接面、S3… 第2仮想接面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送するシート搬送装置であって、
シートの下面に接触して当該シートに摩擦抵抗を付与する摩擦部材と、
前記摩擦部材と対向配置され、シートの上面に接触してシートを前記摩擦部材に向けて押圧しながら回転することによりシートに搬送力を付与する給紙ローラと、
装置本体に対して固定され、前記摩擦部材を支持するとともに、前記給紙ローラが前記摩擦部材に作用させる押圧力を受ける支持部材と、
前記給紙ローラから搬送された複数枚のシートを1枚ずつに分離する分離ローラとを備え、
前記摩擦部材のうち、シートの不在時に前記給紙ローラと接触する部位を圧接面と呼び、前記圧接面をシートの搬送方向上流側に延長させた仮想平面を第1仮想接面と呼ぶとき、
前記第1仮想接面は前記支持部材と交わることなく、前記圧接面は前記支持部材の上面より前記給紙ローラ側に位置しており、
さらに、前記摩擦部材のうち前記圧接面より搬送方向上流側には、上流側に向かうほど前記第1仮想接面より下方側に離間するように前記第1仮想接面に対して傾いた第1傾斜面が設けられていることを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記支持部材のうち搬送方向上流側端部には、上流側に向かうほど前記第1仮想接面より下方側に離間するように前記第1仮想接面に対して傾いた第2傾斜面が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記摩擦部材のうち前記圧接面より搬送方向上流側の部位が屈曲していることにより前記第1傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記圧接面は、前記支持部材の上面と平行な面であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記摩擦部材のうち前記圧接面から前記第1傾斜面に連なる部位には、厚み方向に切り込まれたスリットが設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記圧接面をシートの搬送方向下流側に延長させた仮想平面を第2仮想接面と呼ぶとき、
前記分離ローラと前記給紙ローラとの間には、搬送方向下流側に向かうほど前記第2仮想接面より上方側に離間するように前記第2仮想接面に対して傾いた第3傾斜部が設けられており、
さらに、前記第3傾斜部は、前記分離ローラと対向する対向面に連なっていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
シートに画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部にシートを搬送する請求項1ないし6のいずれか1項に記載のシート搬送装置と
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−49531(P2013−49531A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189009(P2011−189009)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】