説明

シート搬送装置及び画像読取装置

【課題】メンテナンス時等において使い勝手の良いシート搬送装置及び画像読取装置を提供する。
【解決手段】シートを搬送するシート搬送装置において、第1ユニットを第2ユニットに対して開閉自在に接続してなる装置本体と、閉状態の前記第1ユニット及び第2ユニットの間に形成されて前記装置本体の上方から下方側に向かって延びるシート搬送路と、前記シート搬送路に配置されると共に前記シート搬送路を挟んで対向配置されるローラ対によってシートをニップしながら搬送するシート搬送手段とを備え、前記第2ユニットは、当該第2ユニットの上端部に設けられて前記装置本体の下方側に向かって押下することによって前記ローラ対によるニップ力を解除する解除手段を有し、前記解除手段によって前記ニップ力が解除されると前記第1ユニットが前記第2ユニットから離れる方向に開状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート搬送装置、及び、このようなシート搬送装置を備えた、スキャナなどの画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナ等に組み込まれるシート搬送装置では、例えば、ユーザーがシートのジャム処理や装置メンテナンスを行うため、前面側のフロントカバーユニットが開閉できるようになっている。ところで、ユーザーが片手で1つの開閉ボタンを押し、読取ユニットの押圧力でフロントカバーユニットを開き、搬送路を開放できるようにした画像読取装置が提案されている。(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−88572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に開示された画像読取装置においては、カバーの開閉ボタンが装置の背面または装置片側の面(側面)に配置されている。このため、例えば、装置背面を壁側として設置する場合や装置周囲に備品等を配置する場合など、装置の設置環境によっては、開閉ボタンへのアクセスが実質的に制限されることがあり、ユーザー等の使い勝手が悪いという問題がある。なお、上述した問題は、画像読取装置に限って発生するものではなく、その他、シートを取り扱うシート搬送装置や当該シート搬送装置を搭載した事務機等の装置においても同様に発生するおそれがある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑み、装置の設置環境によらず、メンテナンス時等において使い勝手の良いシート搬送装置及び画像読取装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシート搬送装置は、第1ユニットを第2ユニットに対して開閉自在に接続してなる装置本体と、閉状態の前記第1ユニット及び第2ユニットの間に形成されて前記装置本体の上方から下方側に向かって延びるシート搬送路と、前記シート搬送路に配置されると共に前記シート搬送路を挟んで対向配置されるローラ対によってシートをニップしながら搬送するシート搬送手段とを備え、前記第2ユニットは、当該第2ユニットの上端部に設けられて前記装置本体の下方側に向かって押下することによって前記ローラ対によるニップ力を解除する解除手段を有し、前記解除手段によって前記ニップ力が解除されると前記第1ユニットが前記第2ユニットから離れる方向に開状態となることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の画像読取装置は、上記のシート搬送装置を備えたことを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明の画像読取装置は、第1ユニットを第2ユニットに対して開閉自在に接続してなる装置本体と、閉状態の前記第1ユニット及び第2ユニットの間に形成されて前記装置本体の上方から下方側に向かって延びるシート搬送路と、前記シート搬送路に配置されてシートの画像を読み取る画像読取センサと、前記画像読取センサの前記シート搬送路側とは反対側に配置されて当該画像読取センサを前記シート搬送路側に押圧する押圧部材とを備え、前記第2ユニットは、当該第2ユニットの上端部に設けられて前記装置本体の下方側に向かって押下することによって前記画像読取センサに対する前記押圧部材による押圧力を解除する解除手段を有し、前記解除手段によって前記押圧力が解除されると前記第1ユニットが前記第2ユニットから離れる方向に開状態となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、装置の設置環境によらず、メンテナンス時等において使い勝手の良いシート搬送装置及び画像読取装置を提供することができる。特に、本発明によれば、装置本体の上端部に解除手段を設けるようにしたので、例えば、装置の周囲に物が置いてあっても、即座に装置を開状態とすることができ、ユーザー等の使い勝手を飛躍的に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るシート搬送装置を備えた情報読取装置の概略構成断面図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るシート搬送装置を備えた情報読取装置の搬送ガイド部材の一部を抜き出して示す斜視図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るシート搬送装置を備えた情報読取装置の要部拡大図(トレイ展開図)。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るシート搬送装置を備えた情報読取装置の要部拡大図(トレイ収納図)。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るシート搬送装置を備えた情報読取装置の解除手段の分解図。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るシート搬送装置を備えた情報読取装置の解除手段の側面図。
【図7】本発明の第1の実施形態に係るシート搬送装置を備えた情報読取装置の応力関係を示す概略図。
【図8】本発明の他の実施形態に係るシート搬送装置を備えた情報読取装置の概略構成図(閉状態)。
【図9】本発明の他の実施形態に係るシート搬送装置を備えた情報読取装置の概略構成図(開状態)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について、図1ないし図7を用いて説明する。
【0012】
[情報読取装置]
まず、本発明の対象となる情報読取装置の一例である画像読取装置の全体構成について簡単に説明する。情報読取装置(以下、スキャナ)1は、図1に示すように、シートSを給紙する給紙部2と、シートS上の情報を読み取る情報読取部3と、シートSを排出する排出部4と、を備える。そして、給紙部2から給紙されたシートS上の画像情報を、情報読取部3で読み取り、情報が読み取られたシートSは、排出部4から排出される。なお、本実施形態では、スキャナの装置本体と、この装置本体に設けられるシート搬送路とでシート搬送装置が構成され、このシート搬送装置に情報読取部3を加えてスキャナとした構成例について説明する。
【0013】
[給紙部]
給紙部2は、スキャナ1の装置本体11の上部に配置され、情報読取部3にシートを送るためのフィードローラ(送りローラ)となる搬送ローラ22と、搬送ローラ22と対向して配置され、シートSを載置するトレイ21と、分離部材である分離ローラ23と、を有する。なお、装置本体11は、本実施形態では2つのユニットに分割されている。一方のユニットは、スキャナ1の本体側である本体部11a(第2ユニット)を構成し、他方のユニットは、本体部11aに対して開閉可能に接続されたカバー部11b(第1ユニット)とからなる。
【0014】
シート積載台となるトレイ21は、装置本体11の本体部11aに対して回動自在に支持された中板21bを有する。中板21bは、不図示のばねにより、搬送ローラ22に向けて付勢されている。搬送ローラ22は、装置本体11のカバー部11bに設けられ、不図示の駆動源であるモータにより回転駆動される。そして、中板21b上のシートSと当接してこのシートSを情報読取部3に向けて搬送する。本実施形態の場合、搬送ローラ22は、トレイ21の幅方向中央部に対向する位置に配置している。
【0015】
また、トレイ21の搬送ローラ22によるシート搬送方向下流で、搬送ローラ22と対向する位置には、分離ローラ23を設けている。分離ローラ23は、搬送ローラ22に遠近動する方向に移動自在に支持され、不図示のばねにより搬送ローラ22に向かう方向に付勢されている。また、不図示の駆動手段であるモータにより、搬送ローラ22の回転方向と逆方向に回転するようにしている。そして、分離ローラ23は、搬送ローラ22によるシート搬送時に搬送ローラ22の回転方向と逆方向の力をシートに作用させる。これにより、シートに対してシート搬送方向と逆方向に作用するシート抵抗を生じさせて、搬送するシートSを他のシートから分離し易くしている。なお、分離ローラ23にはトルクリミッタが設けられており、所定以上のトルクがかかった場合に、モータからの動力伝達を遮断できるようにしている。
【0016】
また、搬送ローラ22と分離ローラ23とのシート搬送方向に関する位置関係は、搬送ローラ22が、分離ローラ23よりも、搬送ローラ22によるシート搬送方向上流にずれた位置としている。これにより、トレイ21上のシートSをピックアップし易くしている。
【0017】
また、本実施形態の場合、装置本体11は、装置本体11内でシートSが搬送される搬送路13を境に、本体部11aとカバー部11bとに分離可能としている。このうちの本体部11aは、上述のトレイ21及び分離ローラ23が設けられ、カバー部11bには搬送ローラ22が支持されている。カバー部11bは、本体部11aに対し本体部11aの下端寄り部分(回転ヒンジ部46)を中心として回動自在としている。そして、カバー部11bを回動させれば、搬送路13が露出(開放)し、この搬送路13内でジャムしたシートを取り除くことができる。すなわち、本実施形態のスキャナ1は、シートSを搬送する搬送路13が設けられた装置本体11を有し、この装置本体11は、本体部11aと、この本体部11aに開閉可能に接続されたカバー部11bとを有する。また、装置本体11を構成する本体部11aとカバー部11bとの間で搬送路13が形成される。そして、本実施形態のスキャナ1は、設置状態で装置本体11の上端部側にある給送部(シート取込口)2から装置本体11の下端部側に傾斜して設けられ、装置本体11の下端部側で屈曲して装置本体11の上側に開口する排出部(シート排出口)4までの経路からなる搬送路13を有する。なお、本実施形態の搬送路13は、装置設置状態において、シート搬送方向の下流側が屈曲したUターン形状(略Jの字形状)に設けられている。また、詳細は後述するが、本実施形態のスキャナ1は、Jパス(Uターンパス)とストレートパスの切り替えが可能となっている。
【0018】
また、カバー部11bを閉じた状態では、搬送ローラ22が分離ローラ23に当接し、分離ローラ23が付勢手段としてのばねの付勢方向と反対方向に沈む(搬送ローラ22から離れる方向に移動する)。この結果、搬送ローラ22と分離ローラ23とが弾性的に当接する。すなわち、ばねによる分離ローラ23からの付勢力を搬送ローラ22が受け、これによってローラ対の間でニップ部が形成される。
【0019】
また、中板21bは、不図示の駆動源であるモータから歯車などの動力伝達機構を介して伝達される駆動力により、ばねの弾性力に抗する方向に回動支持部を中心に回動する。そして、搬送ローラ22との間の隙間を設けられるようにしている。
【0020】
即ち、中板21bが搬送ローラ22に向けて付勢されたままの状態であると、シート(或いはシート束)Sをトレイ21に載置する際に、シートSの先端が中板21bと搬送ローラ22との間に入り込みにくい。したがって、本実施形態のように、中板21bをばねの付勢方向と逆方向に回動させて、中板21bと搬送ローラ22との間に隙間を開けるようにしている。これにより、シート(或いはシート束)Sをトレイ21に載置した際に、シートSの先端が中板21bと搬送ローラ22との間に入り易くして、搬送ローラ22によるシートSの搬送を円滑に行える。
【0021】
ここで、上述した本実施形態のスキャナ1は、トレイ21が給紙部2に設けられている。具体的には、装置本体11の本体部11aの上端部に、シートを積載するシート積載台となるトレイ21が接続されている。このようなトレイ21は、トレイ本体部210と、このトレイ本体部210から延長可能なトレイ延長台211とを備えている。
【0022】
トレイ21を構成するトレイ本体部210は、本体部11aに対して回動可能に接続されており、シートSの取り込み口の開口を塞ぐことができるようになっている。すなわち、トレイ本体部210は、シートSの取り込み口を覆うカバーの役割を併せ持っている。これにより、トレイ本体部210の収納時は、全体として高い意匠性を維持しつつコンパクトな外観を実現することができる。
【0023】
また、トレイ本体部210の先端部、すなわち、スキャナ1の設置状態で上方側の端部からは、上述したようにトレイ延長台211が引き出し可能に収納され、このトレイ延長台211の端部には、シートSの積載面を更に延長可能なシート支持部材211aが設けられている。例えば、本実施形態では、シート支持部211aは、シート延長台211の幅方向中央部から相互に接近または退避可能に一対の板状部材によって形成されている。各シート支持部211aの対向する側の端部には、リブ211bが突出して設けられている。このような一対のシート支持部211aによって、シートSを斜行させずにスキャナ1内に供給できるようなシートSの供給姿勢を形成することができる。
【0024】
さらに、トレイ本体部210の下端部、すなわち、シートSの取り込み口側の端部は、上述した中板21bが接続される。詳細には、トレイ本体部210の幅方向両端部側には、ガイド孔212を有するガイド壁部213がそれぞれ立設されている。一方、中板21bの両端部には、ガイド壁部213のガイド孔212に挿入されるガイド突起部214がそれぞれ設けられている。
【0025】
トレイ本体部210のガイド孔212は、部分的にクランクしており、トレイ本体部210を回動(シートSの取り込み口を塞ぐ動作)に伴って、中板21b(ガイド突起部214)がガイド孔212に沿って移動する。このとき、中板21bは、トレイ本体部210と略平行にガイド孔212に沿って移動する。
【0026】
具体的には、中板21bは、トレイ本体部210の移動に伴って、トレイ本体210に吊り上げ移動される。そして、中板21bは、トレイ本体部210の先端部がカバー部11bの上端部に当接する状態において、トレイ本体部210と装置本体11との間に収容される。すなわち、図3及び図4に示すように、トレイ21が本体部11a及びカバー部11bの上部開口(シートの取り込み口)を塞ぎつつ収納できる。これにより、スキャナ1の上部から埃等が装置内に侵入するのを有効に防ぎつつ、コンパクトで意匠性にも優れたスキャナ1を実現できる。なお、このようなトレイ21は、装置本体11から着脱自在に設けてもよい。
【0027】
また、中板21bには、シートSの幅方向両側を規制する一対の規制板215が中板21bの面方向且つ幅方向にスライド可能に設けられている。このような一対の規制板215は、中板21bの収納に併せて、装置本体1の上部開口内に収納される。なお、このような一対の規制板215を給紙部の開口、特に、搬送ローラ(送りローラ)22の近くに配置することにより、シートSの給紙姿勢を保ちながら装置内部に向けて効率よく一枚ずつ分離給送することができる。
【0028】
[情報読取部]
情報読取部3は、図1に示すように、装置本体11のシート搬送方向中間部に配置され、情報読取部3に関連する構成としては、ローラ対31と、レジストセンサ32と、イメージセンサ33a、33bとがそれぞれ配置されている。ローラ対31は、駆動ローラ31aと従動ローラ31bとから構成され、このうちの駆動ローラ31aは本体部11aに、従動ローラ31bはカバー部11bにそれぞれ設けられている。駆動ローラ31aは不図示の駆動源であるモータにより回転駆動し、従動ローラ31bは、駆動ローラ31aに従動して回転する。このようなローラ対31は、給紙部2から搬送されたシートSを搬送ローラ22による搬送方向と同方向に搬送する。なお、ローラ対31、そしてこのローラ対31の下流側にある搬送ローラ対42では、図示しない付勢手段(例えば、ばね等)によって、従動ローラ側から駆動ローラ側に付勢されている。
【0029】
レジストセンサ32は、ローラ対31により搬送されるシートSの先端と後端とを検知する。このようなレジストセンサ32としては、例えば、発光部と受光部とを備えたフォトセンサ、レバーの動作を検知するものなどが挙げられる。フォトセンサはシートSが光を遮ることにより、レバーによる検知はシートSがレバーを倒すことにより、シートSの通過を検知する。本実施形態の場合には、フォトセンサとしている。
【0030】
イメージセンサ33a、33bは、それぞれCIS(密着型イメージセンサ)であり、シートSの表面と裏面との情報を読み取る。即ち、片方のイメージセンサ33aは本体部11a側に設けられ、他方のイメージセンサ33bはカバー部11b側に設けられている。そして、それぞれのイメージセンサ33a、33bの情報を読み取る面を搬送路13側とし、搬送路13を通るシートSの両面の情報をイメージセンサ33a、33bにより読み取るようにしている。本実施形態で読み取る情報は、シートSの表面又は裏面に形成された画像の情報である。
【0031】
[排出部]
排出部4は、装置本体11のシート搬送方向下流に配置され、搬送路13と連続するU字搬送路41と、搬送ローラ対42と、排紙ローラ対43と、排紙トレイ44と、シート抑え部材45と、を有する。このうちのU字搬送路41は、設置状態で上方から搬送されるシートを湾曲した(U字状に形成された)経路を通じて上方に導くシート搬送路である。このようなU字搬送路41は、カバー部11bの下面に形成されたU字状の曲面部41aの外周に位置しており、U字形状の湾曲カバー41bにより覆われている。湾曲カバー41bは、回転ヒンジ部46により装置本体11に回転自在に接続されている。このため、搬送されてきたシートをU字搬送路41内にシートがジャムした場合には、湾曲カバー41bを回動させてU字搬送路41を露出させることにより、ジャム処理が可能である。
【0032】
また、湾曲カバー41bは、回転軸47を中心として回転する搬送ガイド部材であるU字状の湾曲部材41cを有する。このような湾曲部材41cは、図2に示すように、回転軸47の一端部に設けたレバー52を回転させることにより、回転軸47と共に回転する。また、回転軸47の他端部には、ばね部材53が設けられ、回転軸47と共に湾曲部材41cを矢印54方向に付勢している。湾曲部材41cが図1の状態では、レバー52に設けた係合突起52aと湾曲カバー41bに設けた不図示の被係合部とを係合させて、湾曲部材41cの回動を阻止している。また、この係合は、ばね部材53の付勢により不用意に外れないようになっている。すなわち、搬送路13の下流側の排出経路であるU字排出路41は、装置本体11の前面側で且つ下端部に装着される排出路形成部材である湾曲部材41cと、カバー部11bの下面に形成されたU字状の曲面部41aの外周とで形成される。
【0033】
湾曲部材41cは、図1の状態でU字搬送路41を構成し、この状態から回動することにより、このU字搬送路41の一部を開放して、搬送路を切り替えられるようにしている。湾曲部材41cを回動させる場合には、レバー52を矢印54と逆方向に引っ張って、レバー52に設けた係合突起52aと湾曲カバー41bに設けた不図示の被係合部との係合を外す。そして、レバー52を図1の状態から時計方向に所定位置まで回動させる。これにより、U字搬送路41の一部を開放して、搬送路13から搬送ローラ対42により搬送されるシートをストレートに排出する別の搬送路を形成する。
【0034】
このように、本実施形態のスキャナ1は、シートの排出方法を変えることができる。例えば、通常、図1に示したような状態でシートの排出を行えば、コンパクトであり、設置スペースを小さくできる。一方、湾曲部材41cを回動させて別の搬送路を形成し、シートをストレートに排出できるようにすれば、例えば、撓みにくい厚いシートを排出する場合にU字搬送路41を通す必要がなく、このようなシートの排出を良好に行える。
【0035】
また、搬送ローラ対42は、装置本体11の搬送路13からU字搬送路41に入る入口で、回転ヒンジ部46よりもシート搬送方向上流に配置されている。このような搬送ローラ対42も、上述のローラ対31と同様に、駆動ローラと従動ローラとから構成され、一方のローラを本体部11aに、他方のローラをカバー部11bにそれぞれ設けている。そして、情報読取部3から搬送されたシートをU字搬送路41に搬送する。
【0036】
また、排紙ローラ対43は、排出手段であり、U字搬送路41の出口に設けられ、シートをU字搬送路41から設置状態で上方に排出する。このような排紙ローラ対43も、駆動ローラ43aと従動ローラ43bとから構成される。駆動ローラ43aは、湾曲カバー41bの先端部に設けられ、不図示のモータにより回転駆動される。そして、シートと当接して回転することによりシートを搬送する。
【0037】
従動ローラ43bは、カバー部11bの駆動ローラ43aと対向する位置に設けられ、駆動ローラ43aとの間でニップ部Nを形成する。このために、従動ローラ43bは、不図示のばねなどの付勢部材により駆動ローラ43aに向けて付勢されている。そして、駆動ローラ43aに加圧された状態で(シートが有る場合にはシートを介して)当接し、駆動ローラ43aの回転に従動して回転する。
【0038】
[スキャナ開閉動作]
上述したスキャナ1は、例えば、ジャム処理や清掃等のメンテナンス作業において、カバー部11bを本体部11aから離れる方向に開状態とすることができる。すなわち、カバー部11bと本体部11aとの間で形成された搬送路13を開放でき、これによって搬送路13内に詰まったシートの除去、イメージセンサ33a、33bの清掃等を適宜行うことができる。
【0039】
そして、本実施形態では、図3及び図4に示すように、このようなカバー部11bの開閉作業を、本体部11aの上端部に設けた解除ボタン100によって簡略化している。具体的には、本体部11aは、本体部11aの上端部に解除ボタン100が配置され、この解除ボタン100の操作によって閉状態のカバー部11b及び本体部11aの間で発生させているニップ力を解除するようにしている。すなわち、解除ボタン100によってニップ力が解除されると、カバー部11bが本体部11aから離れる方向に開状態となる。これにより、ユーザーは、カバー部11bを手前に引き寄せるだけで、搬送路13を開放することができ、メンテナンス等の作業性を向上することができる。
【0040】
なお、カバー部11bは、本体部11aとの間で回転ヒンジ部46を介して開閉自在に接続されている。そして、解除ボタン100によってニップ力が解除された際において、回転ヒンジ部46に生じる開方向への回転モーメントM1を、カバー部11bの自重によるカバー部11bの回転ヒンジ部46に生じる回転モーメントM2より大きくしている(図7参照)。これにより、カバー部11bの開閉動作をスムースに実行することができる。
【0041】
ここで、本実施形態の解除ボタン100は、図5及び図6に示すように、本体部11aの装着部に挿通される押圧突起101を有する。また、この解除ボタン100の押圧突起部101には、コイルばね102が挿通されている。そして、解除ボタン100は、本体部11aの装着部との間にコイルばね102が配置され、解除ボタン100の押圧方向と逆方向に付勢されている。
【0042】
一方、本体部11aに着脱自在となるカバー部11bの上端部には、本体部11a側に突出する係合突起部103が設けられている。この係合突起部103は、本体部11aに係合する係合爪104と、解除ボタン100の押圧突起部101が当接する当接部105とを有する。この当接部105は、先端部側の上面が先端側に向かって傾斜したテーパー受面106となっており、このテーパー受面106によって押圧突起部101の先端部を受ける。
【0043】
すなわち、解除ボタン100を本体部11a側に押し込むと、コイルばねが圧縮されると共に、押圧突起部101の先端が係合突起部103(テーパー受面106)に当接してテーパー受面106に摺接される。これにより、係合突起部103の係合爪104が本体部11aから外れ、カバー部11bが本体部11aから離れる方向に開く。このとき、解除ボタン100の操作によって閉状態のカバー部11b及び本体部11aの間で発生させているニップ力が開放(解除)される。このように解除ボタン100は、ローラ対の間で生じているニップ力を解除する手段となる。なお、本実施形態では、解除ボタン100と上記押圧突起部101とをあわせて解除手段を構成する。
【0044】
ここで、図7にあるように、従動ローラ31b、42bは、対向する駆動ローラ31a、42a側にばね部材Sによって荷重G1、G2をそれぞれ付与している。また、カバー部11bは、荷重G1、G2の反力により回転ヒンジ部30を中心に回転モーメントM1を発生させる。一方、カバー部11bは回転ヒンジ部30を中心に回動可能であり、重心位置より自重が質量L方向にかかる。カバー部11bは、回転ヒンジ部30を中心に回転モーメントM2を発生させる。この時、回転モーメントM2<回転モーメントM1の関係を持たせることにより、カバー部11bの本体部11aに対する接続(連結)が解除され、カバー部11bをポップアップさせることが可能となる。
【0045】
また、本実施形態では、上述した解除ボタン100は、トレイ21の収納エリアと並設されている。具体的には、解除ボタン100は、本体部11aの上端部であって且つトレイの収納エリアの外側の端部(角部)に設けられている。これにより、トレイ21を展開させることなく、すなわち、トレイ21を収納した状態であっても、カバー部11bを開くことができる。
【0046】
[スキャナの動作]
このような本実施形態の場合、まず、情報を読み取るシート(或いはシート束)をトレイ21に載置する。シートをトレイ21に載置する際には、前述したように、中板21bが沈んでおり、中板21bと搬送ローラ22との間にシートの先端が進入する。そして、この状態で、例えば、ユーザが装置に設けられた読取開始ボタンを押すなどして、動作が開始すると、中板21bがばねに付勢されて、シートの先端が中板21bと搬送ローラ22とにより挟持される。
【0047】
この状態から搬送ローラ22が回転駆動する共に、分離ローラ23が逆方向に回転する。これにより、シート束の場合には、シートが1枚ずつ分離されて搬送路13へ搬送される。一方、シートが1枚の場合には、分離ローラ23に設けられたトルクリミッタが作動し、分離ローラ23への動力伝達が切られ、この分離ローラ23は搬送ローラ22の回転に従動して回転する。この結果、1枚のシートが搬送路13へ搬送される。
【0048】
搬送路13へ搬送されたシートは、ローラ対31により挟持されて、更に搬送される。そして、シートの先端がレジストセンサ32により検知され、シートの両面(或いは何れかの面)の情報がイメージセンサ33a、33bにより読み取られる。即ち、レジストセンサ32がシートの先端を検知してから所定時間後にイメージセンサ33a、33bによる読み取りを開始し、レジストセンサ32がシートの後端を検知してから所定時間経過後にイメージセンサ33a、33bによる読み取りを終了する。イメージセンサ33a、33bに読み取られた情報は、装置に設けられた記憶手段(メモリ)に記憶されたり、不図示の外部端末(パーソナルコンピュータなど)に送られたりする。
【0049】
イメージセンサ33a、33bを通過したシートは、搬送ローラ対42により挟持され、U字搬送路41に搬送される。U字搬送路41に搬送されたシートは、更に排紙ローラ対43により挟持され、排紙トレイ44に排出される。
【0050】
<他の実施形態>
以上、本発明を第1の実施形態に基づいて詳細に説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、2つの搬送ルート(ストレートパスとUターンパス)を有するスキャナ1を例示して説明したが、本発明は勿論これに限定されず、図8及び図9に示すように、ストレートパスだけの搬送路を有するスキャナであってもよい。この場合でも、上述した実施形態と同様に、カバー部11bを開閉するための解除ボタン100及び係合突起部103を有する解除手段を設けることで同様の効果を得ることができる。なお、図8及び図9では、上述した第1の実施形態で説明した同一構成には同一符号を付して重複する説明は省略する。なお、図8及び図9に示すスキャナでは、排紙トレイ60を設けているが、排紙トレイ60は設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 原稿情報読取装置(スキャナ)
3 情報読取部
4 排出部(シート搬送装置)
43 排紙ローラ対
43a 駆動ローラ
43b 従動ローラ
100 解除ボタン
N ニップ部
S シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ユニットを第2ユニットに対して開閉自在に接続してなる装置本体と、
閉状態の前記第1ユニット及び第2ユニットの間に形成されて前記装置本体の上方から下方側に向かって延びるシート搬送路と、
前記シート搬送路に配置されると共に前記シート搬送路を挟んで対向配置されるローラ対によってシートをニップしながら搬送するシート搬送手段とを備え、
前記第2ユニットは、当該第2ユニットの上端部に設けられて前記装置本体の下方側に向かって押下することによって前記ローラ対によるニップ力を解除する解除手段を有し、
前記解除手段によって前記ニップ力が解除されると前記第1ユニットが前記第2ユニットから離れる方向に開状態となることを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記第1ユニットは、前記第2ユニットとの間で回転ヒンジ部を介して開閉自在に接続され、前記解除手段によって前記ニップ力が解除された際において前記ヒンジ部に生じる開方向への回転モーメントは、前記第1ユニットの自重による前記第1ユニットの前記ヒンジ部に生じる回転モーメントより大きいことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記解除手段は、前記第2ユニットの上端部に設けられた解除ボタンを有すると共に前記解除ボタンを押下することで前記ニップ力を解除するものであることを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記解除ボタンは、前記第2ユニットの上端部側に設けられたシート取込口の開口周縁部であって且つ前記第2ユニットの角部に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記第2ユニットの上端部には、前記解除ボタンと、シートを積載するシート積載台とが並設されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記シート積載台は、前記シート取込口に収納可能であることを特徴とする請求項5に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記シート積載台は、シート取込方向と逆方向に延長可能な延長台を有することを特徴とする請求項5又は6に記載のシート搬送装置。
【請求項8】
前記シート積載台は、前記延長台の先端部に収納可能に設けられてシート積載面を更に延長可能なシート支持部材を有することを特徴とする請求項7に記載のシート搬送装置。
【請求項9】
前記シート積載台は、前記第2ユニットに対して着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項10】
前記搬送手段は、前記装置本体の上部に積載されるシート束から1枚ずつシートを分離して前記シート搬送路に給送する分離給送手段を有し、
前記分離給送手段は、前記シートを給送する送りローラと、前記送りローラに対向して配置されると共に前記送りローラの回転方向と逆方向に回転可能な分離ローラとを有し、
前記分離ローラは、付勢部材によって前記送りローラに付勢されており、
前記解除手段は、前記送りローラに対する前記分離ローラの付勢力を解除するものであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項11】
前記搬送手段は、回転駆動する駆動ローラと、付勢部材によって前記駆動ローラに付勢されて当該駆動ローラの回転に従動して回転する従動ローラとからなる搬送ローラ対を有し、
前記解除手段は、前記駆動ローラに対して付勢される前記従動ローラの付勢力を解除するものであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項12】
前記シート搬送路には、シートの画像を読み取る画像読取センサが配置され、
前記画像読取センサの前記シート搬送路側とは反対側に配置されて当該画像読取センサを前記搬送路側に押圧する押圧部材を更に有し、
前記解除手段は、前記画像読取センサに対する前記押圧部材による押圧力を解除するものであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項13】
前記ローラ対の少なくとも一方のローラは、弾性部材で形成されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項14】
前記第1ユニットは、前記装置本体の下端部側で前記第2ユニットに対して回動可能に接続され、
開状態の前記装置本体の重心は、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの接続部分よりも前記第2ユニット側に位置していることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のシート搬送装置を備えたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項16】
第1ユニットを第2ユニットに対して開閉自在に接続してなる装置本体と、
閉状態の前記第1ユニット及び第2ユニットの間に形成されて前記装置本体の上方から下方側に向かって延びるシート搬送路と、
前記シート搬送路に配置されてシートの画像を読み取る画像読取センサと、
前記画像読取センサの前記シート搬送路側とは反対側に配置されて当該画像読取センサを前記シート搬送路側に押圧する押圧部材とを備え、
前記第2ユニットは、当該第2ユニットの上端部に設けられて前記装置本体の下方側に向かって押下することによって前記画像読取センサに対する前記押圧部材による押圧力を解除する解除手段を有し、
前記解除手段によって前記押圧力が解除されると前記第1ユニットが前記第2ユニットから離れる方向に開状態となることを特徴とする画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−246099(P2012−246099A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118935(P2011−118935)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】