説明

シート搬送装置

【課題】 画像読取装置の大型化を抑制しつつ、外観意匠面が阻害されてしまうことを抑制できる技術を提供する。
【解決手段】ジャム処理カバー17の第1ヒンジ部17A及びサブトレイカバー15の第2ヒンジ部15Aを枠体3により囲まれた空間部3A内に位置させる。これにより、枠体3の外周面に凹凸を設ける必要がなく、外観意匠面を阻害することはない。さらに、ジャム処理カバー17のうち第1ヒンジ部17A側に、両カバー15、17が閉じたときに、サブトレイカバー15の裏面15Gに接触する位置決め部17Fを設ける。これにより、ジャム処理カバー17の表面17Eとサブトレイカバー15の表面15Fとの間に生じる段差を小さくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを搬送するためのシート搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シート搬送装置に設けられた搬送経路は、例えば、特許文献1に開示されているように、通常、カバー等により覆われている。カバーを開くことで搬送経路を開放することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−45695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、カバーは、ヒンジを介して枠体等の装置本体に組み付けられているが、特許文献1に記載の発明のごとく、ヒンジ部を、例えば、装置本体の外壁を構成する側壁等の枠体に組み付ける構成とすると、装置本体の外観意匠面を阻害するおそれがある。
【0005】
すなわち、ヒンジ部を枠体に組み付けた場合には、枠体に以下の機能等を確保する必要があるので、枠体の外周面に凹凸を設けざるを得なくなり、外観意匠面を阻害するおそれがある。ここで、上記機能等とは、(a)ヒンジ部を収納する機能、及び(b)カバーの揺動領域を確保するためスペースを枠体に確保すること等である。
【0006】
また、外観意匠面から上記凹凸を排除するためには、枠体又は装置本体を大きくして上記凹凸が目立たなくする必要があるが、この解決手段では、好ましい解決手段とは言い難い。
【0007】
本発明は、上記点に鑑み、シート搬送装置の大型化を抑制しつつ、外観意匠面が阻害されてしまうことを抑制できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、シートの搬送経路(Lo)が設けられた空間部(3A)を囲む枠体(3)と、空間部(3A)を開放する位置と閉じる位置との間で揺動変位する第1カバー(17)と、枠体(3)より空間部(3A)の中央側にずれた位置に設けられ、第1カバー(17)を枠体(3)に対して揺動可能とする第1ヒンジ部(17A)と、空間部(3A)を開放する位置と閉じる位置との間で揺動変位するとともに、第1カバー(17)と隣接して第1ヒンジ部(17A)側に設けられた第2カバー(15)と、第2カバー(15)に対して第1ヒンジ部(17A)と反対側に設けられ、第2カバー(15)を枠体(3)に対して揺動可能とするとともに、第1ヒンジ部(17A)の揺動中心線と平行な揺動中心線を有する第2ヒンジ部(15A)と、第1カバー(17)のうち第1ヒンジ部(17A)側に設けられ、第1カバー及び第2カバー(15)が閉じているときに、第2カバー(15)の裏面に接触することにより、第1カバー(17)の表面(17E)に対する第2カバー(15)の表面(15F)の位置を決める位置決め部(17F)とを備えることを特徴とする。
【0009】
これにより、請求項1に記載の発明では、第1ヒンジ部(17A)及び第2ヒンジ部(15A)が枠体(3)により囲まれた空間部(3A)内に位置することとなるので、枠体(3)の外周面に凹凸を設ける必要がなく、外観意匠面を阻害することはない。
【0010】
さらに、請求項1に記載の発明では、第1カバー(17)の表面(17E)に対する第2カバー(15)の表面(15F)の位置は、主に第1カバー(17)及び第2カバー(15)の製造公差により決定されるので、組み付け精度の影響を小さくすることができる。
【0011】
このため、第1カバー及び第2カバー(15)が閉じているときに、第1カバー(17)の表面(17E)と第2カバー(15)の表面(15F)との間に生じる段差を小さくすることができる。
【0012】
したがって、組立工数の増大を招くことなく、第1カバー及び第2カバー(15)が閉じているときの外観意匠面を良好なものとすることができる。なお、従来技術では、外観意匠面を良好なものとすべく、組み付け精度の影響を小さくするためには、組み付け精度を向上させる必要があるので、組立工数の増大を招くおそれが高い。
【0013】
因みに、第1カバー(17)の表面(17E)及び第2カバー(15)の表面(15F)とは、両カバー(15、17)が閉じているときに外観意匠面を構成する面をいい、第2カバー(15)の裏面とは、第2カバー(15)の表面(15F)と反対側の面をいう。
【0014】
因みに、上記各手段等の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記各手段等の括弧内の符号に示された具体的手段等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る画像読取装置1の外観斜視図である。
【図2】画像読取装置1が、本発明の実施形態に係る揺動規制部19に相当する構成を備えない場合において、枠体3を開いた際に、サブトレイカバー15が開いてしまうという問題を説明するための説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係る画像読取装置1において、ジャム処理カバー17及びサブトレイカバー15を開いた状態を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る画像読取装置1の中央断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る画像読取装置1の中央断面図である。
【図6】ジャム処理カバー17及びサブトレイカバー15を開いた状態を示す図である。
【図7】(a)〜(c)はジャム処理カバー17及びサブトレイカバー15を開いた状態を示す図である。
【図8】(a)はサブトレイカバー17の斜視図であり、(b)は揺動規制部19の断面図である。
【図9】(a)〜(d)はジャム処理カバー17及びサブトレイカバー15を開いた状態を示す図である。
【図10】揺動規制部19の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に説明する発明の実施形態は、本発明の実施形態の一例を示すものである。つまり、本発明係る発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的手段や構造等に限定されるものではない。
【0017】
そして、本実施形態は、画像読取装置に用いられるオートドキュメントフィーダ等の原稿搬送装置に本発明を適用したものである。以下、発明の実施形態を図面と共に説明する。
【0018】
(第1実施形態)
1.画像読取装置の構成
本実形態に係る画像読取装置は、原稿搬送装置を用いた自動読取機能、及び静止載置された原稿に記載された画像を読み取る静止原稿読取機能を兼ね備えた画像読取装置である。
【0019】
画像読取装置1は、図1に示すように、矩形枠状の枠体3及び枠体3の下方側に配設された本体部5等を有して構成されている。そして、枠体3は、図2に示すように、本体部5に揺動可能に組み付けられている。なお、図2では、枠体3を本体部5に揺動可能に連結するヒンジ部は省略されている。
【0020】
また、図2において画像読取装置1は、後述する揺動規制部19を備えてない。このため、図2に示す画像読取装置1では、枠体3が本体部5に対する揺動すると、これに伴って、図2に示すように、サブトレイカバー15が開いてしまう。
【0021】
しかし、本実施形態に係る画像読取装置1は、揺動規制部19を備えているため、後述するように、枠体3が本体部5に対する揺動した場合であっても、サブトレイカバー15が開いてしまうことを防ぐことができる。
【0022】
また、枠体3は、図3に示すように、原稿の搬送経路が設けられた空間部3Aを囲むとともに、画像読取装置1の外周枠の一部を構成するフレームの一種である。そして、空間部3A内には、図4に示すように、搬送経路Loに沿って原稿を搬送する原稿搬送装置7が設けられている。
【0023】
原稿搬送装置7は、原稿トレイ9に載置されている原稿を読取部11に搬送する。そして、本実施形態に係る原稿搬送装置7は、原稿トレイ9に載置されている1枚又は複数枚の原稿を1枚ずつ読取部11に搬送する分離機能を有している。
【0024】
なお、読取部11は、原稿を支持する透明なプラテン11A、及びプラテン11Aを挟んで搬送されてくる原稿と反対側に位置する撮像素子11B等を有して構成されている。 そして、読取部11は、原稿搬送装置7により原稿トレイ19から搬送されてきた原稿を読み取ることができる。
【0025】
さらに、読取部11は、プラテン11Aに載置された原稿を読み取ることもできる。因みに、プラテン11Aは、枠体3を本体部5から離隔させるように本体部5に対して揺動させるとことにより、原稿を載置することができる程度に露出される。
【0026】
また、分離機能は、吸引ローラ7A、分離ローラ7B、及び分離パッド7C等を有して構成されている。吸引ローラ7Aは、原稿トレイ9に載置されている1枚又は複数枚の原稿を読取部11側に送り込む吸引部である。
【0027】
分離ローラ7Bは、吸引ローラ7Aから送り込まれた1枚又は複数枚の原稿のうち、吸引ローラ7Aと同一側から原稿に接触して原稿に搬送力を付与する。なお、本実施形態において、1枚又は複数枚の原稿のうち吸引ローラ7Aと同一側とは、1枚の原稿にあっては当該原稿の下面をいう。また、本実施形態において、1枚又は複数枚の原稿のうち吸引ローラ7Aと同一側とは、複数枚の原稿にあっては、上下方向に積層した複数枚の原稿のうち下端に位置する原稿の下面をいう。
【0028】
分離パッド7Cは、分離ローラ7Bに対して対向する位置に配設されて分離ローラ7Bと反対側から原稿に接触して搬送抵抗を付与する。そして、分離パッド7C及び分離ローラ7Bにより分離部が構成されている。
【0029】
因みに、第1搬送ローラ7Dは分離部から排出された原稿を読取部11に搬送する。加圧ローラ7Eは原稿を第1搬送ローラ7Dに押圧する。第2搬送ローラ7Fは、読取部11を通過した原稿の搬送方向を上方側に約180度転向させながら、原稿を排出部13に向けて搬送する。
【0030】
但し、本実施形態に係る画像読取装置1において、自動読取にて原稿の読み取りを実行する際には、図5に示すように、サブトレイカバー15が開かれた状態として原稿トレイ9の上方側を解放する必要がある。
【0031】
すなわち、サブトレイカバー15は、空間部3Aを開放する位置と閉じる位置との間で揺動変位するカバーである。そして、サブトレイカバー15は、空間部3Aのうち、特に、排出部13より下流側の搬送経路Lo及び原稿トレイ9の上方側の空間を開閉する。
【0032】
なお、以下、図4に示す状態をサブトレイカバー15が閉じた状態といい、図5に示す状態をサブトレイカバー15が開いた状態という。
そして、サブトレイカバー15が開いた状態においては、サブトレイカバー15は原稿トレイ9と協働して原稿トレイ9上に載置された原稿を保持するトレイとして機能する。一方、サブトレイカバー15が閉じた状態においては、排出部13より下流側の搬送経路Lo及び原稿トレイ9の上方側の空間は、サブトレイカバー15により覆われる。
【0033】
また、ジャム処理カバー17は、図3に示すように、空間部3Aを開放する位置と閉じる位置との間で揺動変位するカバーである。そして、ジャム処理カバー17は、空間部3Aのうち、特に、原稿搬送方向において排出部13を挟んで原稿トレイ9と反対側の空間を開閉する。因みに、本実施形態における原稿搬送方向は、水平方向のうち図4の左右方向と一致する。
【0034】
このため、図3に示すようにジャム処理カバー17が開いた状態では、搬送経路Loの少なくとも一部が開放された状態となる。具体的には、ジャム処理カバー17が開いた状態では、搬送経路Loのうち第2搬送ローラ7Fから排出部13に至る経路が解放された状態となる。一方、ジャム処理カバー17が閉じた状態となると、図4に示すように、搬送経路Loのうち第2搬送ローラ7Fから排出部13に至る経路がジャム処理カバー17により覆われた状態となる。
【0035】
なお、本実施形態では、ジャム処理カバー17の開閉及びサブトレイカバー15の開閉は、必要に応じてユーザが手動操作にて行う必要がある。つまり、ユーザは、原稿の読み取りを行う場合には、図5に示すように、サブトレイカバー15を開いた状態とする必要がある。
【0036】
また、例えば搬送経路Loのうち第2搬送ローラ7Fから排出部13に至る経路にて原稿が詰まった場合には、ユーザはジャム処理カバー17を開いた状態として原稿を除去する必要がある。
【0037】
2.ジャム処理カバー及びサブトレイカバーの詳細構造
ジャム処理カバー17は、図5に示すように、第1ヒンジ部17Aを介して枠体3に対して揺動可能に組み付けられている。そして、第1ヒンジ部17Aは、枠体3より空間部3Aの中央側にずれた位置に設けられている。具体的には、第1ヒンジ部17Aは、空間部3A内のうち、図5の左端側から原稿搬送方向において原稿トレイ9側ずれた位置に設けられている。
【0038】
そして、第1ヒンジ部17Aは、揺動中心軸線が原稿搬送方向及び原稿の厚み方向に直交する方向と平行となるように設定されている。このため、本実施形態では、第1ヒンジ部17Aの揺動中心軸線は、画像読取装置1の前後方向、つまり図5の紙面垂直方向と一致する。
【0039】
また、ジャム処理カバー17は、図6に示すように、矩形板状のカバー本体17B、及び一対のフレーム体17C等を有して構成されている。一対のフレーム体17Cは、図7に示すように、カバー本体17Bのうち空間部3A側に面する部位から空間部3A側に突出するとともに、カバー本体17Bと平行、かつ、揺動中心軸線と直交する方向に連続的に連なる壁面を有する帯板状の突条である。
【0040】
また、一対のフレーム体17Cは、カバー本体17Bのうち揺動中心軸線と平行な方向両端側に設けられている。以下、揺動中心軸線と平行な方向を幅方向ともいう。そして、一対のフレーム体17Cのうちサブトレイカバー15側には嵌合穴17Dが設けられている。一方、枠体3の内壁面には、当該内壁面からフレーム体17C側に突出した円柱状のボス部が回転可能に嵌め込まれている。因みに、図7等においては、枠体3及び前記ボス部は図示されていない。
【0041】
つまり、本実施形態では、嵌合穴17D及び前記ボス部により第1ヒンジ部17Aが構成されている。また、揺動中心軸線は、前記ボス部の中心線又は嵌合穴17Dの中心線と一致する。
【0042】
また、サブトレイカバー15は、図5に示すように、第2ヒンジ部15Aを介して枠体3に対して揺動可能に組み付けられている。そして、第2ヒンジ部15Aは、サブトレイカバー15に対して第1ヒンジ部17Aと反対側に設けられている。
【0043】
つまり、サブトレイカバー15は、図4に示すように、閉じた状態においては、原稿搬送方向に沿って直列に並ぶようにジャム処理カバー17に隣接している。そして、第2ヒンジ部15Aは、その揺動中心軸線が第1ヒンジ部17Aの揺動中心軸線と平行となるように、サブトレイカバー15のうち第1ヒンジ部17Aと反対側の端部側に設けられている。
【0044】
また、サブトレイカバー15は、図8(a)に示すように、矩形板状のカバー本体15B、及びカバー本体15Bのうち原稿トレイ9側に面する部位から原稿トレイ9側に突出した複数のリブ状の突条15Cや枠部15D等を有して構成されている。
【0045】
そして、枠部15Dのうち第1ヒンジ部17Aと反対側であって、枠体3の内壁に面する部位、つまり幅方向両端部に位置する枠部15Dそれぞれには、枠部15Dから枠体3側に突出する円柱状のボス部15Eが設けられている。一方、枠体3には、各ボス部15Eが回転可能に嵌り込む嵌合穴が設けられている。因みに、図8(a)等においては、枠体3及び前記嵌合穴は図示されていない。
【0046】
つまり、本実施形態では、前記嵌合穴及びボス部15Eにより第2ヒンジ部15Aが構成されている。また、揺動中心軸線は、ボス部15Eの中心線又は前記嵌合穴の中心線と一致する。
【0047】
また、サブトレイカバー15のうちジャム処理カバー17側の端部には、図8(b)に示すように、サブトレイカバー15が枠体3に対して揺動すること、つまり図2に示すようにサブトレイカバー15が開くことを規制する揺動規制部19が設けられている。
【0048】
揺動規制部19は、コロ19A、コイルバネ19B、ホルダケース19C及びホルダ19D等を有して構成されている。コロ19Aは、第1ヒンジ部17Aの揺動中心線と平行な回転中心線に対して回転可能な転動体である。
【0049】
コイルバネ19Bは、コロ19Aをジャム処理カバー17に押圧する弾性力を発揮する押圧部材である。ホルダケース19Cはコイルバネ19Bを収納する。ホルダ19Dは、コロ19Aを回転可能に支持するとともに、ホルダケース19Cに出没可能に収納されている。
【0050】
このため、コロ19Aは、図7(a)〜(c)又は図9(a)〜(c)に示すように、コイルバネ19Bの伸縮に応じてホルダケース19Cから出没する。具体的には、以下に示すようにコロ19Aは、ホルダケース19Cから出没する。
【0051】
すなわち、図7(a)又は図9(a)に示すように、両カバー15、17が閉じられている場合には、次のような状態となる。そして、この状態では、コロ19Aがカバー本体17Bより図3において示した空間部3A内に位置する。つまり、コロ19Aがカバー本体17Bの裏面側に位置する。この位置において、コロ19Aは、ジャム処理カバー17の裏面側に接触してジャム処理カバー17と係合する。
【0052】
因みに、ジャム処理カバー17又はカバー本体17Bの裏面側とは、ジャム処理カバー17が閉じた状態において、空間部3Aや搬送経路Lo側に面する面をいう。一方、ジャム処理カバー17又はカバー本体17Bの表面側とは、ジャム処理カバー17が閉じた状態において、画像読取装置1の外観意匠面を構成する面をいう。
【0053】
同様に、サブトレイカバー15又はカバー本体15Bの裏面側とは、サブトレイカバー15が閉じた状態において、空間部3Aや原稿トレイ9側に面する面をいう。一方、サブトレイカバー15又はカバー本体15Bの表面側とは、サブトレイカバー15が閉じた状態において、画像読取装置1の外観意匠面を構成する面をいう。
【0054】
そして、図7(a)に示すサブトレイカバー15が閉じている状態でジャム処理カバー17が開かれると、図7(b)→図7(c)の順に示されるように、コロ19Aは、ジャム処理カバー17の表面17Eと接触しながら回転して表面17E上を移動していく。
【0055】
つまり、サブトレイカバー15が閉じた状態においては、図7(a)に示すように、ジャム処理カバー17のうち嵌合穴17Dが設けられた部位の上方側をサブトレイカバー15にて覆うような状態となる。
【0056】
そして、サブトレイカバー15が閉じている状態でジャム処理カバー17が開かれると、これに連動してジャム処理カバー17のうちサブトレイカバー15より下方側にある部分が上方側に変位する。
【0057】
このため、サブトレイカバー15は、ジャム処理カバー17によって裏面側から押圧されることとなるので、図7(b)に示すように、コロ19Aがジャム処理カバー17の表面に乗り上げるようにサブトレイカバー15も開く。そして、ジャム処理カバー17が更に大きく開かれていくと、図7(c)に示すように、コロ19Aが表面17Eを転がりながらサブトレイカバー15も大きく開いていく。
【0058】
ところで、上述したように、サブトレイカバー15が閉じた状態においては、図9(a)に示すように、ジャム処理カバー17のうち嵌合穴17Dが設けられた部位の上方側をサブトレイカバー15にて覆うような状態となる。
【0059】
そこで、本実施形態では、ジャム処理カバー17のうち第1ヒンジ部17A側に、両カバー15、17が閉じたときに、サブトレイカバー15の裏面15Gに接触する位置決め部17Fが設けられている。この位置決め部17Fは、図9(d)に示すように、サブトレイカバー15の裏面15Gに接触することにより、ジャム処理カバー17の表面17Eに対するサブトレイカバー15の表面15Fの位置を決める。
【0060】
なお、本実施形態では、一対のフレーム体17Cのうちカバー本体17Bからサブトレイカバー15側に突出した段差部分により位置決め部17Fが構成されている。つまり、本実施形態では、第1ヒンジ部17Aを構成する嵌合穴17Dの直上部に位置決め部17Fが設定されている。
【0061】
3.2.ジャムカバー及びサブトレイカバーの開閉について
原稿の読み取りを行うべく、サブトレイカバー15のみを開く場合には、図3に示す把持部15Hを把持してサブトレイカバー15を上方側に開く。これにより、図9(b)に示すように、コロ19Aがホルダケース19C内に陥没するように移動してコロ19Aとジャム処理カバー17との係合が解除される。
【0062】
また、例えば搬送経路Loのうち第2搬送ローラ7Fから排出部13に至る経路にて原稿が詰まった場合には、ジャム処理カバー17を開いて原稿を除去する必要がある。しかし、上述したように、ジャム処理カバー17の位置決め部17Fがサブトレイカバー15により上から覆われた状態となっているので、ジャム処理カバー17を開くと、図7(a)〜図7(c)に示すように、強制的にサブトレイカバー15も開いてしまう。
【0063】
したがって、好ましくは、図3に示すように、サブトレイカバー15を開いた後に、ジャム処理カバー17の把持部17Hを把持してジャム処理カバー17を開くことが望ましい。
【0064】
4.本実施形態に係る画像読取装置の特徴
本実施形態では、第1ヒンジ部17A及び第2ヒンジ部15Aが枠体3により囲まれた空間部3A内に位置することとなる。このため、枠体3の外周面に凹凸を設ける必要がなく、外観意匠面を阻害することはない。
【0065】
さらに、本実施形態では、ジャム処理カバー17の表面17Eに対するサブトレイカバー15の表面15Fの位置は、主にジャム処理カバー17及びサブトレイカバー15の部品公差により決定される。
【0066】
このため、ジャム処理カバー17の表面17Eに対するサブトレイカバー15の表面15Fの位置ずれの原因の1つである、組み付け精度の影響を小さくすることができる。したがって、ジャム処理カバー17及びサブトレイカバー15が閉じているときに、ジャム処理カバー17の表面17Eとサブトレイカバー15の表面15Fとの間に生じる段差を小さくすることができる。
【0067】
延いては、組立工数の増大を招くことなく、ジャム処理カバー17及びサブトレイカバー15が閉じているときの外観意匠面を良好なものとすることができる。
また、本実施形態では、サブトレイカバー15が枠体3に対して揺動することを規制する揺動規制部19を備えることを特徴としている。これにより、本実施形態では、図2において示したように、枠体3が揺動した際に、サブトレイカバー15が開いてしまうことを防止できる。
【0068】
ところで、サブトレイカバー15がジャム処理カバー17に隣接して設けられているので、サブトレイカバー15が閉じている状態でジャム処理カバー17が開くと、サブトレイカバー15の先端側がジャム処理カバー17の表面17Eに接触してしまう。
【0069】
そして、両カバー15、17が接触すると、外観意匠面を構成するジャム処理カバー17の表面17Eが損傷してしまうおそれがある。因みに、サブトレイカバー15の先端側とは、サブトレイカバー15のうち第1ヒンジ部17A側の端部をいう。
【0070】
これに対して、本実施形態では、サブトレイカバー15が閉じている状態でジャム処理カバー17が開いたときには、上述したように、コロ19Aがジャム処理カバー17の表面17Eと接触しながら回転する。
【0071】
したがって、サブトレイカバー15の先端側がジャム処理カバー17の表面17Eに接触した場合であっても、ジャム処理カバー17の表面17Eが損傷してしまうことを抑制できる。
【0072】
(第2実施形態)
第1実施形態に係る揺動規制部19は、コロ19A、コイルバネ19B、ホルダケース19C及びホルダ19D等を有して構成されていたが、本実施形態に係る揺動規制部19では、図10に示すように、コロ19Aに代えて、ジャム処理カバー17の表面17Eと摺接可能なシュー19Eをホルダ19Dに一体形成したものである。なお、その他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0073】
これにより、本実施形態では、サブトレイカバー15が閉じている状態でジャム処理カバー17が開いたときに、シュー19Eがジャム処理カバー17の表面17Eを滑りながら接触する。
【0074】
したがって、本実施形態においても、サブトレイカバー15の先端側がジャム処理カバー17の表面17Eに接触した場合であっても、ジャム処理カバー17の表面17Eが損傷してしまうことを抑制できる。
【0075】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、揺動規制部19にコロ19A又はシュー19Eを設けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、コロ19A又はシュー19Eを揺動規制部19とは別に設けてもよい。
【0076】
すなわち、揺動規制部19は、サブトレイカバー15が開くことを抑制することを主たる機能とする機構である。一方、コロ19A又はシュー19Eは、サブトレイカバー15の先端側がジャム処理カバー17の表面17Eに接触した場合にジャム処理カバー17の表面17Eが損傷することを抑制することを主たる機能とする機構である。したがって、本発明では、上記2つの機能をそれぞれ別々の機構にて実現してもよい。
【0077】
また、上述の実施形態では、画像読取装置1の原稿搬送装置に本発明に係るシート搬送装置を適用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば画像読取装置、又は画像形成装置に適用することができる。
【0078】
また、上述の実施形態では、ボス部と嵌合穴により第1ヒンジ部17A及び第2ヒンジ部15Aを構成したが、本発明はこれに限定されるものではない。
また、上述の実施形態では、一対のフレーム体17Cのうちカバー本体17Bからサブトレイカバー15側に突出した段差部分により位置決め部17Fが構成されていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、別途、位置決め部17Fのための段差部を設けてもよい。
【0079】
また、第2実施形態では、ジャム処理カバー17の表面17Eと摺接可能なシュー19Eをホルダ19Dに一体形成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、シュー19Eをホルダ19Dと別部品としてもよい。
また、上述の実施形態では、一対のフレーム体17Cのうちサブトレイカバー15側には嵌合穴17Dが設けられている。しかし、これに限らず、例えば、嵌合穴は、一対のフレーム体のうちジャム処理カバー側に設けられていてもよい。
【0080】
すなわち、ジャム処理カバー17の揺動中心軸線は、上述の実施形態のように、サブトレイカバー15側に設けられる必要はなく、例えば、ジャム処理カバー17側に設けられてもよい。
【0081】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0082】
1… 画像読取装置、3… 枠体、3A… 空間部、5… 本体部、7… 原稿搬送装置、
7A… 吸引ローラ、7B… 分離ローラ、7C… 分離パッド、7D… 第1搬送ローラ、
7E… 加圧ローラ、7F… 第2搬送ローラ、8B… 分離ローラ、9… 原稿トレイ、
11… 読取部、11A… プラテン、13… 排出部、15… サブトレイカバー、
15A… 第2ヒンジ部、15B… カバー本体、15C… 突条、15D… 枠部、
15E… ボス部、15H… 把持部、17… ジャム処理カバー、
17A… 第1ヒンジ部、17B… カバー本体、17C… フレーム体、
17D… 嵌合穴、17F… 位置決め部、17H… 把持部、19… 揺動規制部、
19A… コロ、19B… コイルバネ、19C… ホルダケース、
19D… ホルダ、19E… シュー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの搬送経路が設けられた空間部を囲む枠体と、
前記空間部を開放する位置と閉じる位置との間で揺動変位する第1カバーと、
前記枠体より前記空間部の中央側にずれた位置に設けられ、前記第1カバーを前記枠体に対して揺動可能とする第1ヒンジ部と、
前記空間部を開放する位置と閉じる位置との間で揺動変位するとともに、前記第1カバーと隣接して前記第1ヒンジ部側に設けられた第2カバーと、
前記第2カバーに対して前記第1ヒンジ部と反対側に設けられ、前記第2カバーを前記枠体に対して揺動可能とするとともに、前記第1ヒンジ部の揺動中心線と平行な揺動中心線を有する第2ヒンジ部と、
前記第1カバーのうち前記第1ヒンジ部側に設けられ、前記第1カバー及び前記第2カバーが閉じているときに、前記第2カバーの裏面に接触することにより、前記第1カバーの表面に対する前記第2カバーの表面の位置を決める位置決め部と
を備えることを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記枠体が揺動可能に組み付けられたベース部材と、
前記第2カバーが前記枠体に対して揺動することを規制する揺動規制部と
を備えることを特徴とする請求項1にシート搬送装置。
【請求項3】
前記揺動規制部は、
前記第2カバーに設けられ、前記第2カバーが閉じているときに前記第1カバーと接触して係合するとともに、前記揺動中心線と平行な回転中心線に対して回転可能なコロ、及び
前記コロを前記第1カバーに押圧する押圧部材を有して構成されており、
さらに、前記コロは、前記第2カバーが閉じている状態で前記第1カバーが開いたときに、前記第1カバーの表面と接触しながら回転することを特徴とする請求項2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記揺動規制部は、
前記第2カバーに設けられ、前記第2カバーが閉じているときに前記第1カバーと接触して係合する係合部、及び
前記係合部を前記第1カバーに押圧する押圧部材を有して構成されており、
さらに、前記係合部には、前記第2カバーが閉じている状態で前記第1カバーが開いたときに、前記第1カバーの表面と摺接させるための滑り部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記第2カバーに設けられ、前記揺動中心線と平行な回転中心線に対して回転可能なコロとを備え、
前記コロは、前記第2カバーが閉じている状態で前記第1カバーが開いたときに、前記第1カバーの表面と接触しながら回転することを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記第2カバーに設けられ、前記第2カバーが閉じている状態で前記第1カバーが開いたときに、前記第1カバーの表面と摺接させるための滑り部を備えることを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記第2カバーは、開いた状態においては、前記搬送経路に搬送されるシートが載置されるトレイを開放し、
前記第1カバーは、開いた状態においては、前記搬送経路を開放することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項8】
前記第2カバーは、開いた状態において、前記トレイ上に載置されたシートを前記トレイと共に保持可能であることを特徴とする請求項7に記載のシート搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−51578(P2013−51578A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189008(P2011−189008)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】