説明

シート材搬送装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】反転ローラー対とシート材との間のスリップに起因する反転搬送時のシート材の搬送量のバラツキを抑え、搬送精度を向上させるシート材搬送装置及びそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】シート材搬送装置は、反転ローラー対57から搬送される用紙の有無を検知する下流側用紙検知部材96と、従動ローラー57bが反転ローラー57aを押圧する押圧機構85と、従動ローラー57bの押圧力を切り替えるために押圧機構85を駆動させるステッピングモーター91と、用紙が反転ローラー対57を通るまでの所定の位置から下流側用紙検知部材96に到達するまでの時間を算出し、該算出時間に基づいて反転ローラー57aと従動ローラー57bとの間で所定の押圧量となるようにステッピングモーター91を制御する制御部100と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ、それらの複合機等のシート材搬送装置及びそれを備えた画像形成装置に関し、特に、シート材を反転搬送可能なシート材搬送装置及びそれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置においては、用紙の片面に画像を形成した後、その用紙を排出せずに再度画像形成部に搬送し、他方の面にも画像を形成する両面印刷方式のものが広く用いられている。このような両面印刷方式の画像形成装置においては、片面に画像が形成された用紙の搬送方向を反転させる反転搬送路と、反転した用紙を画像形成部へ搬送する再搬送路を備えている。反転搬送路には、用紙の搬送方向を反転させる反転ローラー対が設けられる。反転ローラー対は、回転駆動する反転ローラーと従動回転する従動ローラーとを有し、反転ローラーが所定方向に回転することで、用紙を搬送し、反転ローラーが逆方向に回転することで用紙の搬送方向を反転している。
【0003】
通常、画像形成装置は普通紙や厚紙等、種々の用紙を印刷することになる。例えば、厚紙等の腰の強い用紙を反転ローラー対によって搬送する場合、普通紙を搬送する場合に比べて用紙搬送時における反転ローラー対の負荷が増加して、反転ローラー対の回転速度が低下する。また、表面コート紙などの特殊な表面性を有する用紙を反転ローラー対によって搬送する場合、搬送ローラー対と用紙との間の摩擦が普通紙に比べて低下して、反転ローラー対と用紙との間でスリップが発生することがある。このように回転速度の低下やスリップ等によって用紙の搬送量にバラツキが発生すると、用紙搬送が不安定となり高速印刷等において生産性が低下する。
【0004】
そこで、特許文献1の画像形成装置は、用紙の搬送量のバラツキを抑えるために、反転ローラーと従動ローラーとを互いに当接させるバネ部材と、反転ローラーを回転可能に支持するとともに搬送された用紙を一時的に収容する中間トレイと、中間トレイに設けたラックに噛合するギアを回転させるステッピングモーターと、を備える。そして、厚紙や表面コート紙を搬送する場合、普通紙を搬送する場合よりもステッピングモーターの回転量を大きくしている。これによって、中間トレイに設けた反転ローラーが従動ローラー側に移動することで、厚紙等の反転ローラー対の搬送力を増加させ、反転搬送時の用紙の種類による用紙搬送量のバラツキを低減させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−45542号公報(段落[0025]〜[0036]、第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1では、厚紙等の用紙の種類に応じて反転ローラー対の搬送力を切り替えているが、用紙の種類以外においても反転搬送時における用紙搬送量のバラツキが発生する。例えば、累積印刷回数が増えると反転ローラー対のローラーが磨耗し反転ローラーと従動ローラーと間で十分な押圧力が得られなくなり、用紙がローラー間で滑りやすくなるために、反転搬送時の用紙搬送量のバラツキが発生するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、反転ローラー対とシート材との間のスリップに起因する反転搬送時のシート材の搬送量のバラツキを抑え、搬送精度を向上させるシート材搬送装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために第1の発明は、搬送されるシート材を反転して再送するシート材搬送装置であって、反転ローラーと該反転ローラーに圧接する従動ローラーとを有し、前記反転ローラーが一方向に回転することでシート材を搬送し、前記反転ローラーが逆回転することでシート材の搬送方向を反転させる反転ローラー対と、該反転ローラー対に向けてシート材を搬送する上流側搬送路と、該上流側搬送路から分岐して形成され、前記反転ローラー対により搬送方向を反転されたシート材を搬送する下流側搬送路と、前記反転ローラーと前記従動ローラーの一方を他方に押圧する押圧機構と、前記押圧機構の押圧力を切り替える駆動機構と、前記下流側搬送路に設けられ、前記反転ローラー対から搬送されるシート材の通過を検知する下流側用紙検知部材と、シート材が前記反転ローラー対を通るまでの所定の位置から前記下流側用紙検知部材に到達するまでの時間を算出し、該算出時間に基づいて前記反転ローラーと前記従動ローラーとの間で所定の押圧量となるように前記駆動機構を制御する制御部と、を備えることを特徴としている。
【0009】
また、第2の発明では、上記のシート材搬送装置において、前記上流側搬送路に設けられ、前記反転ローラー対に向けて搬送されるシート材の通過を検知する上流側用紙検知部材を更に備え、前記制御部は、前記上流側用紙検知部材がシート材を検知したときから前記下流側用紙検知部材がシート材を検知するまでの時間を算出し、該算出時間に基づいて前記駆動機構を制御することを特徴としている。
【0010】
また、第3の発明では、上記のシート材搬送装置において、前記制御部は、シート材が前記反転ローラー対に挟持された状態で前記反転ローラーが逆回転を開始したときから前記下流側用紙検知部材がシート材を検知するまでの時間を算出し、該算出時間に基づいて前記駆動機構を制御することを特徴としている。
【0011】
また、第4の発明では、上記のシート材搬送装置において、前記制御部は、シート材の種類に基づいて前記駆動機構を制御することを特徴としている。
【0012】
また、第5の発明では、上記のシート材搬送装置において、前記制御部は、シート材の搬送速度に基づいて前記駆動機構を制御することを特徴としている。
【0013】
また、第6の発明では、上記のシート材搬送装置において、前記制御部は、シート材に形成される画像の印字率に基づいて前記駆動機構を制御することを特徴としている。
【0014】
また、第7の発明では、上記のシート材搬送装置において、前記押圧機構は、前記反転ローラーと前記従動ローラーの一方を他方に付勢する付勢部材と、前記他方のローラーを回転可能に支持するとともに支軸を中心に揺動可能である揺動支持部材と、を有して構成され、前記駆動機構は、前記支軸を回動させる駆動手段と、該駆動手段を駆動可能に接続したモーターと、を有して構成されることを特徴としている。
【0015】
また、第8の発明では、上記のシート材搬送装置において、前記モーターは、ステッピングモーターからなり、前記一方のローラーが前記他方のローラーを押圧したとき、所定の励磁状態を保持することを特徴としている。
【0016】
また、第9の発明では、上記の構成のシート材搬送装置を備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0017】
通常、シート材は反転ローラー対によって搬送され、反転ローラーが逆回転することで搬送方向が反転するが、反転ローラーと従動ローラーとの押圧力と反転ローラーの回転速度とによって、反転ローラー対に挟持されたシート材の搬送量が変動する。累積印刷回数が増加すると、反転ローラー対のローラーが磨耗し反転ローラーと従動ローラーとの押圧力が低下するために、反転ローラー対の搬送力が低下し、反転ローラー対によるシート材の搬送量が小さくなる。第1の発明によれば、制御部は、シート材が反転ローラー対を通るまでの所定の位置から下流側用紙検知部材に到達するまでの時間を算出することで、シート材の搬送の遅れ等の搬送量を把握する。すなわち、シート材の搬送量が小さくなると到達時間が長くなり、制御部は、この到達時間に基づいて駆動ローラーと従動ローラーとの間の押圧量を切り替えるように、押圧機構を駆動させる駆動機構を制御する。制御部がこのように駆動機構を制御することで、累積印刷回数にかかわらず反転搬送時の用紙搬送量のバラツキが抑えられ、搬送精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る反転搬送部を備えた画像形成装置を示す概略図
【図2】実施形態に係る反転搬送部を示す概略断面図
【図3】実施形態に係る押圧機構及び駆動機構を示す概略斜視図
【図4】実施形態に係る駆動機構を制御するブロック図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、この実施形態に限定されない。また発明の用途やここで示す用語等はこれに限定されるものではない。
【0020】
図1は本発明の実施形態に係る画像形成装置を示す概略図である。画像形成装置1は、直方体状の装置本体1aを具備し、装置本体1a内の略中央部には画像形成部10が配設されている。画像形成部10は、像担持体である感光体11を備え、さらに感光体11の周辺にその回転方向(図中の矢印方向)に沿って順に、帯電部13と、露光ユニット12と、現像部2と、転写ローラー55と、クリーニング部14と、除電部15とを備える。現像部2へのトナーの供給は図示しないトナーコンテナから行われる。クリーニング部14は感光体11の表面に残留するトナーを剥ぎ取り回収し、除電部15は感光体11の表面の残留電荷を除去する。
【0021】
感光体11の表面が帯電部13によって所定の極性および電位で一様に帯電されると、 露光ユニット12は、図示しない原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像データに基づいて、感光体11上に原稿画像の静電潜像を形成する。
【0022】
現像部2は、帯電したトナーを感光体11の表面に供給し、感光体11上の静電潜像を現像してトナー像を形成する。トナー像は転写ローラー55によってシート材である用紙上に転写される。用紙にトナー像が転写された後、感光体11の表面に残留するトナーがクリーニング部14によってクリーニングされて回収され、さらに除電部15によって感光体11の表面の残留電荷が除去される。
【0023】
給紙部46は給紙カセット47〜50等から構成される。給紙カセット47〜50が装置本体1aの底部に上下方向に並べて配設され、給紙カセット47〜50には用紙が積載して収容される。用紙が給紙カセット47の載置板47a上に載置され、載置板47a上の用紙がピックアップローラー47bによって1枚ずつ用紙搬送部70に送り出される。
【0024】
用紙搬送部70は、装置本体1a内で用紙を搬送するためのものであり、給紙搬送路71と、画像形成搬送路72と、定着後搬送路73と、分岐搬送路74と、反転排出搬送路77と、反転搬送路75と、再搬送路76と、を備える。
【0025】
給紙搬送路71は、給紙部46からレジストローラー対53に至る搬送路であり、装置本体1aの右方で給紙部46から上方に延び途中から左方に湾曲して形成される。レジストローラー対53は、転写ローラー55の右方に配置され、用紙にトナー像を転写するタイミングと同期をとって転写ローラー55に向けて用紙を送り出す。
【0026】
画像形成搬送路72は、レジストローラー対53から定着部18に至る搬送路であり、装置本体1aの略水平方向に延び途中から上方に湾曲して形成される。画像形成搬送路72には、画像形成部10と定着部18が配置され、画像形成部10にて用紙上にトナー像が転写され、用紙に転写されたトナー像が定着部18にて用紙上に定着される。
【0027】
定着後搬送路73は、定着部18から分岐搬送路74に至る上方に延びる搬送路であり、定着後搬送路73では、トナー像が定着された用紙が分岐搬送路74に搬送される。
【0028】
分岐搬送路74は、トナー像が定着された用紙を反転排出搬送路77、或いは第2排出トレイ67に搬送するための搬送路であり、搬送ローラー対61から右方向に湾曲し搬送ローラー対62を経由して反転排出搬送路77に至る搬送路と、搬送ローラー対61から左方向に湾曲し第2排出ローラー対63によって第2排出トレイ67に用紙を排出する搬送路と、搬送ローラー対62から第2排出ローラー対63に水平方向に延びて反転排出搬送路77の用紙を第2排出トレイ67に排出する搬送路とからなる。
【0029】
反転排出搬送路77は、第1排出トレイ66に用紙を排出させるか、或いは用紙の裏面にもトナー像を形成するために反転した用紙を搬送する搬送路である。
【0030】
反転搬送路75は、用紙の搬送方向を反転させ、搬送方向を反転させた用紙を反転排出搬送路77に搬送するものであり、定着後搬送路73から分岐して右方へ反転ローラー対57に向かって延び、更に反転ローラー対57からU字状に上方に延び反転排出搬送路77に合流して形成される。
【0031】
再搬送路76は、反転搬送路75によって反転された用紙を、反転排出搬送路77から画像形成搬送路72に搬送するものであり、反転排出搬送路77から下方に分岐して形成され給紙搬送路71に合流している。
【0032】
給紙部46から供給される用紙は、給紙搬送路71を上方に向けて搬送され、さらにレジストローラー対53によって搬送のタイミングを取って転写ローラー55に搬送されると、転写ローラー55によりトナー像が用紙に転写される。トナー像が転写された用紙は、画像形成搬送路72上で定着部18に搬送され、定着部18により加熱および加圧されると、トナー像が用紙に溶融定着される。トナー像が定着された用紙は、定着後搬送路73及び分岐搬送路74を通って搬送ローラー対62、第1排出ローラー対64によって第1排出トレイ66に排出される。或いは、トナー像が定着された用紙は、定着後搬送路73及び分岐搬送路74を通って第2排出ローラー対63によって第2排出トレイ67に排出される。
【0033】
両面印刷する場合には、定着部18で定着された用紙は、定着後搬送路73から反転搬送路75に搬送される。反転搬送路75にて用紙の先端が反転ローラー対57を通過した後、所定のタイミングで反転ローラー対57を逆回転させることで、用紙がスイッチバックされ、用紙の印刷面が表裏逆向きにされた状態で反転排出搬送路77に送られる。反転された用紙は、反転排出搬送路77から再搬送路76を介して再び給紙搬送路71に搬送される。給紙搬送路71を経由して画像形成搬送路72に搬送された用紙は、画像形成部10でその裏面にトナー像を転写され、定着部18によりトナー像を溶融定着されると、分岐搬送路74にて選択された搬送路を通って第1排出トレイ66または第2排出トレイ67に排出される。
【0034】
反転搬送部は図2、図3に示すように構成される。図2は反転搬送部を示す概略断面図であり、図3は反転搬送部の押圧機構と駆動機構を示す概略斜視図である。
【0035】
図2に示すように、反転搬送部は、進入搬送路81と退出搬送路82からなる反転搬送路75と、反転される用紙が一時収容される中間トレイ83と、反転ローラー対57と、押圧機構85と、上流側用紙検知部材95と、下流側用紙検知部材96と、を備える。
【0036】
進入搬送路81は、定着後搬送路73(図1参照)から分岐して反転ローラー対57に向かって形成される。進入搬送路81には、ガイド81a、81b及び搬送ローラー対58が設けられる。定着後搬送路73から搬送された用紙は、ガイド81a、81bの間の用紙搬送空間を通り、搬送ローラー対58によって反転ローラー対57へと搬送される。
【0037】
退出搬送路82は、進入搬送路81から分岐して左上方に延び、反転排出搬送路77(図1参照)に合流するように形成される。退出搬送路82には、ガイド82a、82b及び搬送ローラー対65が設けられる。反転ローラー対57によって反転された用紙は、ガイド82a、82bの間の用紙搬送空間を通り、搬送ローラー対65によって反転排出搬送路77へと搬送される。
【0038】
反転ローラー対57は、中間トレイ83に一旦収容するために用紙を搬送した後、用紙の搬送方向を反転(スイッチバック)させるものであり、進入搬送路81と退出搬送路82との分岐箇所に対して進入搬送路81の搬送方向下流側に設けられている。反転ローラー対57は、反転ローラー57aと従動ローラー57bとを有する。
【0039】
従動ローラー57bは、圧縮コイルバネ等からなる付勢部材86によって反転ローラー57a側へと付勢され、反転ローラー57aと従動ローラー57bとの当接部には、用紙が挿通されるニップ部が形成される。反転ローラー57aは図示しないモーターにより回転させられ、反転ローラー57aが回転すると、従動ローラー57bが従動回転する。また、反転ローラー57aは、図示しないモーターにより回転方向を切り替えられ、図2の反時計回り方向に回転すると、反転ローラー対57のさらに下流側に設けた中間トレイ83側に用紙を搬送する一方、図2の時計回り方向に回転すると、用紙を中間トレイ83から退出搬送路82側に搬送する。尚、進入搬送路81と退出搬送路82との分岐箇所には、進入搬送路81と退出搬送路82の搬送方向を切り替える分岐爪を揺動可能に設けて、用紙が進入搬送路81を搬送されるとき、分岐爪が進入搬送路81を開放する一方、用紙が退出搬送路82を搬送されるとき、分岐爪が退出搬送路82を開放するようにしてもよい。
【0040】
押圧機構85は、一方のローラーである従動ローラー57bを他方のローラーである反転ローラー57aにより押圧するものであり、前述の付勢部材86と、反転ローラー57aを回転可能に支持するとともに支軸87を中心に揺動可能とする揺動支持部材88とを有する。
【0041】
図3に示すように、押圧機構85は、ステッピングモーター91と、モーターギア93及び駆動手段である減速ギア92を有する駆動機構90によって揺動させられ、これによって反転ローラー57aと従動ローラー57bとの押圧量が切り替えられる。尚、駆動手段としては、ギアに替えて、駆動力を伝達するベルトであってもよい。
【0042】
揺動支持部材88はコ字状に形成され、その両壁部には反転ローラー57aの回転軸59が回転可能に支持されている。また、揺動支持部材88の両壁部には支軸87が固設され、支軸87は反転ローラー57aの回転軸59から離間した位置で回転軸59と平行に配置されている。また、支軸87は揺動支持部材88の外側に向けて延び、その先端部には減速ギア92が固設される。減速ギア92は、ステッピングモーター91のモーター軸に設けたモーターギア93に噛合している。
【0043】
この構成によって、ステッピングモーター91が回転駆動すると、支軸87がモーターギア93と減速ギア92によって減速されて回動する。支軸87の回動によって、揺動支持部材88が支軸87を中心に矢印方向に揺動する。従って、反転ローラー57aは従動ローラー57bに対して略上下方向に移動するために、付勢部材86に付勢された従動ローラー57bの反転ローラー57aに対する押圧量が変動し、押圧量を制御しやすくなる。尚、減速ギア92の減速比は、ステッピングモーター91が1回転したときに揺動支持部材88が所定の範囲で揺動し上記の押圧量が変動するように設定してもよいし、また、複数のギアを組み合わせて更に減速比をさらに大きくして、上記押圧量の変動を得るためステッピングモーター91が2回転以上回転するようにしてもよく、上記押圧量の変動範囲、反転ローラー57aの上下方向の移動量等に応じて、減速ギアの減速比は適宜設定される。
【0044】
ここで、ステッピングモーター91は、複数のステーターのコイルに順次電流を流して磁力を発生させ、ステーターがローターを引き付けて回転させるが、ステッピングモーター91のステップ数と、反転ローラー57aと従動ローラー57bとの間の押圧量とが所定の関係にて設定される。そして、ステッピングモーター91を所定のステップ数だけ回転駆動させ適切な押圧量になると、このステップ数にてステーターへの励磁を保持する。このようにステッピングモーター91の励磁状態を保持することで、反転ローラー57aは、従動ローラー57bを介して付勢部材86によって付勢されていても、図3の上方向に移動しないので、反転ローラー57aと従動ローラー57bとの間の押圧量のバラツキを抑えられる。
【0045】
また、押圧機構85は、反転ローラー57aが従動ローラー57bから離間する位置まで揺動可能であるように構成される。反転ローラー57aが従動ローラー57bから離間することで、中間トレイ83(図2参照)への用紙の搬入と、搬送方向を反転した用紙の中間トレイ83からの搬出とを同時に行うことが可能となる。この場合には、ステッピングモーター91が上記の押圧量に相当する回転角を超えて一方向に所定のステップ数だけ回転駆動すると、反転ローラー57aは、図3の上側に移動し従動ローラー57bから離間する。この場合、従動ローラー57bは、図示しない規制部材にて、所定の移動量を超えて上側に移動しないように規制されている。
【0046】
図2に戻り、上流側用紙検知部材95は、中間トレイ83へと搬入される用紙が搬送される進入搬送路81の反転ローラー対57より上流側に設けられ、進入搬送路81を反転ローラー対57に向けて搬送される用紙の有無を検知するものである。詳しくは、上流側用紙検知部材95は、進入搬送路81と退出搬送路82との分岐箇所と、搬送ローラー対58との間に配設され、反射型の光センサーで構成される。この反射型光センサーは、搬送路に光を照射し、照射した光を遮るように通過する用紙からの反射光を受光することにより用紙の有無を検知する。尚、用紙検知部材は、搬送路を挟んで互いに対向して配置される投光部と受光部とを備える光センサーで構成してもよい。
【0047】
下流側用紙検知部材96は、中間トレイ83から搬出された用紙が搬送される退出搬送路82の反転ローラー対57より下流側に設けられ、反転ローラー対57から退出搬送路82に搬送される用紙の有無を検知するものである。詳しくは、下流側用紙検知部材96は、進入搬送路81と退出搬送路82との分岐箇所と、搬送ローラー対65との間に配設され、上流側用紙検知部材95と同様の反射型の光センサーで構成される。
【0048】
上記構成において両面印刷を行う場合、一方の面に画像が形成された用紙が搬送ローラー対58によって進入搬送路81へと搬送され、更に反転ローラー対57によって中間トレイ83へと搬入される。進入搬送路81での用紙の搬送中、上流側用紙検知部材95によって用紙が検知されると、用紙の検知から第1の所定時間経過後、すなわち反転ローラー対57によって用紙を中間トレイ83へと搬送した後、ステッピングモーター91(図3参照)が一方向に所定のステップ数だけ回転駆動する。ステッピングモーター91が所定のステップ数だけ回転駆動することで、押圧機構85の揺動支持部材88は図2の上側に揺動し、反転ローラー57aは従動ローラー57bから離間する。尚、中間トレイ83に用紙の幅方向の位置ずれを補正する用紙シフト機構を設け、反転ローラー57aと従動ローラー57bが離間している間に、用紙シフト機構によって用紙がその幅方向に位置ずれ補正するようにしてもよい。
【0049】
次いで、ステッピングモーター91が上記の回転方向に対して逆方向に所定のステップ数だけ回転駆動し、揺動支持部材88が下側に揺動し、これによって反転ローラー57aは従動ローラー57bに圧接する。そして、上流側用紙検知部材95による用紙の検知から第2の所定時間経過後、反転ローラー対57が逆方向に回転し、用紙の搬送方向を反転された用紙が中間トレイ83から退出搬送路82に搬送される。反転された用紙の退出搬送路82への搬送中、下流側用紙検知部材96によって用紙が検知される。
【0050】
反転搬送路75を連続して用紙を搬送する場合、反転された用紙が搬送ローラー対65によって退出搬送路82を搬送されている途中、上流側用紙検知部材95によって次なる用紙が検知されると、この用紙の検知から第1の所定時間経過後、ステッピングモーター91(図3参照)が一方向に所定のステップ数だけ回転駆動し、押圧機構85の揺動支持部材88が図2の上側に揺動する。揺動支持部材88が上側に揺動することで、反転ローラー57aは従動ローラー57bから離間する。このように、中間トレイ83への用紙の搬入と搬送方向を反転した用紙の中間トレイ83からの搬出が同時に行われる。そして反転された用紙が反転ローラー対57から離間すると、再度ステッピングモーター91が上記の回転方向に対して逆方向に所定のステップ数だけ駆動回転し、反転ローラー57aと従動ローラー57bが圧接する。次に、上述と同様に反転ローラー対57によって次なる用紙が中間トレイ83へと搬入される。
【0051】
上記構成において、駆動ローラー対57の押圧量が所定量となるように、下流側用紙検知部材96による用紙の検知に基づいてステッピングモーター91が駆動制御される。図4はステッピングモーター91を制御するブロック図である。
【0052】
制御部100は、マイクロコンピューターと、RAM、ROM等の記憶部と、制御上各種時間を計時するための計時部等で構成され、RAM及びROMに記憶されたプログラム及びデータと、上流側用紙検知部材95と下流側用紙検知部材96及び操作パネル99等から入力されるデータとに基づき各種演算を行い、また操作パネル99、駆動部94等を制御する。
【0053】
上流側用紙検知部材95は、進入搬送路81を反転ローラー対57に向けて搬送される用紙を検知すると、第1検知信号を制御部100に入力する。下流側用紙検知部材96は、反転ローラー対57から退出搬送路82に搬送される用紙を検知すると、第2検知信号を制御部100に入力する。制御部100は、第1及び第2検知信号を夫々入力した時間の差分を算出する。
【0054】
制御部100は、上記の差分に関する信号とROMに記憶された対照データ表とを比較する。対照データ表は、第1及び第2検知信号に関する差分時間データと、ステッピングモーター91を回転駆動させるステップ数とを対応させたものである。すなわち、反転ローラー対57のローラーに磨耗等が発生し、反転ローラー57aと従動ローラー57bとの間(反転ローラー対57)の押圧力が低下すると、上記の差分時間が長くなる。このことに基づいて対照データ表は、差分時間が長くなると、反転ローラー対57の押圧力を強めるために、ステッピングモーター91のステップ数が大きくなるように設定されている。制御部100は、この対照データ表に基づいて上記差分信号に対応するステッピングモーター91のステップ数を割り出し、このステップ数を駆動制御部102に出力する。
【0055】
駆動制御部102は、制御部100の指示に基づきステッピングモーター91を上記のステップ数になるまで回転駆動させる。ステッピングモーター91の回転駆動により押圧機構85が揺動し、押圧機構85が揺動することで反転ローラー57aが従動ローラー57b側に移動し、反転ローラー対57が所定の押圧量に補正される。
【0056】
制御部100が上記のようにステッピングモーター91を制御することで、印刷枚数が増えローラーに磨耗等が発生しても、印刷回数にかかわらず反転搬送時の用紙搬送量のバラツキが抑えられ、搬送精度を向上させることができる。また、連続搬送等において生産性が低下することがない。
【0057】
上記のように上流側用紙検知部材95を通過する用紙を検知する替わりに、反転ローラー対57が用紙の搬送方向を反転されるために逆回転する第2の所定時間と、下流側用紙検知部材96を検知する時間(第2検知信号の入力時間)とから差分信号を算出するようにしてもよい。
【0058】
すなわち、制御部100は、上記の差分信号とROMに記憶された対照データ表とを比較する。対照データ表は、第2の所定時間と第2検知信号の入力時間の差分時間データと、ステッピングモーター91を回転駆動させるステップ数とを対応させたものである。対照データ表は、差分時間が長くなると、反転ローラー対57の押圧力を強めるために、ステッピングモーター91のステップ数が大きくなるように設定されている。制御部100は、この対照データ表に基づいて上記差分信号に対応するステッピングモーター91のステップ数を割り出し、このステップ数を駆動制御部102に出力する。
【0059】
駆動制御部102は、制御部100の指示に基づきステッピングモーター91を上記のステップ数になるまで回転駆動させる。ステッピングモーター91の回転駆動により押圧機構85が揺動し、押圧機構85が揺動することで反転ローラー57aが従動ローラー57b側に移動し、反転ローラー対57が所定の押圧量に補正される。
【0060】
制御部100が上記のようにステッピングモーター91を制御することで、印刷枚数が増えローラーに磨耗等が発生しても、印刷回数にかかわらず反転搬送時の用紙搬送量のバラツキが抑えられ、搬送精度を向上させることができる。また、連続搬送等において生産性が低下することがない。
【0061】
操作パネル99は、使用者が画像形成の開始を指示し、また、種々のモード、印刷枚数、用紙の種類等を選択し、さらに使用者の指示に応じて選択したモード、印刷枚数、警告等を表示することが可能である。
【0062】
操作パネル99から用紙の種類が入力された場合、上記の用紙検知部材による時間の差分信号に基づいてステッピングモーター91が制御され、さらに用紙の種類に応じてステッピングモーター91が制御される。制御部100は、ROMに記憶された用紙の種類に対するステッピングモーター91のステップ数の補正表に基づいて、ステッピングモーター91のステップ数を補正する。普通紙が選択された場合、用紙に基づくステッピングモーター91のステップ数の補正は行われない。印刷する用紙が厚紙である場合には、ステッピングモーター91のステップ数が普通紙に対して多くなるように補正し、反転ローラー対57の押圧力を普通紙より大きくする。また、印刷する用紙が表面コート紙である場合には、ステッピングモーター91のステップ数を普通紙に対して多くするように補正し、反転ローラー対57の押圧力を普通紙より大きくする。このように、用紙の種類に応じて、ステッピングモーター91のステップ数を制御することで、用紙の種類に係らず、安定して用紙搬送を行うことができる。
【0063】
また、操作パネル99から印刷モードとして高画質モードが選択された場合、画像形成部や定着部における用紙の搬送速度を小さくする必要があり、これにともなって、反転ローラー57aを回転駆動する搬送モーター101の回転速度が小さくなる。制御部100は、ROMに記憶された搬送モーター101の回転速度に対するステッピングモーター91のステップ数の補正表に基づいて、ステッピングモーター91のステップ数を補正する。高画質モードである場合には、ステッピングモーター91のステップ数が通常モードに対して多くなるように補正し、反転ローラー対57の押圧力を通常モードより大きくする。反転ローラー対57の回転速度が小さくなると、反転ローラー対57の搬送力が低下するが、このように、搬送モーター101の回転速度に応じて、ステッピングモーター91のステップ数を制御することで、安定して用紙搬送を行うことができる。
【0064】
また、制御部100は、用紙に形成される画像の印字率に応じてステッピングモーター91のステップ数を制御する。制御部100は、図示しない原稿読取装置から入力された原稿の画像データに基づいて、画像データの印字率を算出するとともに、ROMに記憶された印字率に対するステッピングモーター91のステップ数の補正表に基づいて、ステッピングモーター91のステップ数を補正する。印字率が大きい場合には、ステッピングモーター91のステップ数が通常の印字率に対して多くなるように補正し、反転ローラー対57の押圧力を通常の印字率より大きくする。印字率が大きくなると、反転ローラー対57の搬送力が低下するが、このように、印字率に応じて、ステッピングモーター91のステップ数を制御することで、安定して用紙搬送を行うことができる。
【0065】
尚、上記実施形態では、押圧機構85が揺動することで反転ローラー57aが従動ローラー57bに対して移動するように構成したが、本発明はこれに限らず、押圧機構85が揺動することで従動ローラー57bが反転ローラー57aに対して移動するように構成しても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0066】
また、上記実施形態では、ステッピングモーター91によって押圧機構85を揺動する構成を示したが、本発明はこれに限らず、駆動機構90はDCモーターを有し、DCモーターが減速ギアであるウオームギアを介して押圧機構85を揺動させ、DCモーターの回転数を制御することによって反転ローラー対57の押圧力を切り替え、ウオームギアによって押圧機構85を所定の回動位置で保持するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ、それらの複合機等のシート材搬送装置及びそれを備えた画像形成装置に利用することができ、特に、シート材を反転搬送可能なシート材搬送装置及びそれを備えた画像形成装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 画像形成装置
10 画像形成部
57 反転ローラー対
57a 反転ローラー(他方のローラー)
57b 従動ローラー(一方のローラー)
58 搬送ローラー対
59 回転軸
65 搬送ローラー対
70 用紙搬送部
71 給紙搬送路
72 画像形成搬送路
73 定着後搬送路
74 分岐搬送路
75 反転搬送路
76 再搬送路
77 反転排出搬送路
81 進入搬送路(上流側搬送路)
82 退出搬送路(下流側搬送路)
83 中間トレイ
85 押圧機構
86 付勢部材
87 支軸
88 揺動支持部材
90 駆動機構
91 ステッピングモーター(駆動機構)
92 減速ギア(駆動機構)
93 モーターギア(駆動機構)
95 上流側用紙検知部材
96 下流側用紙検知部材
99 操作パネル
100 制御部
101 搬送モーター
102 駆動制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されるシート材を反転して再送するシート材搬送装置であって、
反転ローラーと該反転ローラーに圧接する従動ローラーとを有し、前記反転ローラーが一方向に回転することでシート材を搬送し、前記反転ローラーが逆回転することでシート材の搬送方向を反転させる反転ローラー対と、
該反転ローラー対に向けてシート材を搬送する上流側搬送路と、
該上流側搬送路から分岐して形成され、前記反転ローラー対により搬送方向を反転されたシート材を搬送する下流側搬送路と、
前記反転ローラーと前記従動ローラーの一方を他方に押圧する押圧機構と、
前記押圧機構の押圧力を切り替える駆動機構と、
前記下流側搬送路に設けられ、前記反転ローラー対から搬送されるシート材の通過を検知する下流側用紙検知部材と、
シート材が前記反転ローラー対を通るまでの所定の位置から前記下流側用紙検知部材に到達するまでの時間を算出し、該算出時間に基づいて前記反転ローラーと前記従動ローラーとの間で所定の押圧量となるように前記駆動機構を制御する制御部と、を備えることを特徴とするシート材搬送装置。
【請求項2】
前記上流側搬送路に設けられ、前記反転ローラー対に向けて搬送されるシート材の通過を検知する上流側用紙検知部材を更に備え、
前記制御部は、前記上流側用紙検知部材がシート材を検知したときから前記下流側用紙検知部材がシート材を検知するまでの時間を算出し、該算出時間に基づいて前記駆動機構を制御することを特徴とする請求項1に記載のシート材搬送装置。
【請求項3】
前記制御部は、シート材が前記反転ローラー対に挟持された状態で前記反転ローラーが逆回転を開始したときから前記下流側用紙検知部材がシート材を検知するまでの時間を算出し、該算出時間に基づいて前記駆動機構を制御することを特徴とする請求項1に記載のシート材搬送装置。
【請求項4】
前記制御部は、シート材の種類に基づいて前記駆動機構を制御することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のシート材搬送装置。
【請求項5】
前記制御部は、シート材の搬送速度に基づいて前記駆動機構を制御することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のシート材搬送装置。
【請求項6】
前記制御部は、シート材に形成される画像の印字率に基づいて前記駆動機構を制御することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のシート材搬送装置。
【請求項7】
前記押圧機構は、前記反転ローラーと前記従動ローラーの一方を他方に付勢する付勢部材と、前記他方のローラーを回転可能に支持するとともに支軸を中心に揺動可能である揺動支持部材と、を有して構成され、
前記駆動機構は、前記支軸を回動させる駆動手段と、該駆動手段を駆動可能に接続したモーターと、を有して構成されることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載のシート材搬送装置。
【請求項8】
前記モーターは、ステッピングモーターからなり、前記一方のローラーが前記他方のローラーを押圧したとき、所定の励磁状態を保持することを特徴とする請求項7に記載のシート材搬送装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれかに記載のシート材搬送装置を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−1532(P2013−1532A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135855(P2011−135855)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】