説明

シート状または板状の被検査物の検査方法

【課題】
本発明は、簡単な設備で、検査に合格した部材を識別可能にするための目印を付すこと、すなわちマーキングができ、かつ目印が消失しにくい、シート状または板状の被検査物の検査方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
シート状または板状の被検査物の検査方法であって、
(工程1)刺激により気体を発生できる粘着層と基材層とを備えた粘着フィルムが、少なくとも一方の表面に貼り付けられたシート状または板状の被検査物を用意する工程、
(工程2)被検査物を検査し、合格または不合格を判定する工程、
(工程3)検査結果が合格である被検査物の表面に貼り付けられた粘着フィルムまたは検査結果が不合格である被検査物の表面に貼り付けられた粘着フィルムのいずれか一方のみに前記刺激を与えて気体を発生させ、被検査物と粘着フィルムの間に気泡を生じさせることによって、被検査物の合格または不合格をマーキングする工程を含むことを特徴とする検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状または板状の被検査物の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やパソコンや液晶テレビ等の電化製品には数多くのシート状または板状の部材が使用されている。
これらの部材の表面に傷が付いている場合や異物が付着している場合は、最終製品である電化製品の品質を低下させる。
このような傷や異物を防止するために、これらの部材表面には、保護フィルムが貼り付けられることがある。
しかし、保護フィルムを貼り付ける前に、傷が付く場合や異物が付着する場合もあるので、通常、これらの部材は、その使用前に検査されて、傷や異物がある場合には、不合格であると判断されて製造プロセスから取り除かれる。
この場合、合格であると判断された部材を識別するために、例えば保護フィルムの表面にインクでマーキングすることなどが行われている。
しかし、この場合、インクの塗布や乾燥などの設備、インクによる部材や環境の汚染を防止する手段、およびマーキングのための人手が必要であり、このことは、部材の検査を高コストにしている。また、インクによるマークが消失して、不合格であると判断された部材を識別が行えなくなる問題が生じる場合もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、簡単な設備で、検査に合格した部材を識別可能にするための目印を付すこと(すなわちマーキング)ができ、かつ目印が消失しにくい、シート状または板状の被検査物の検査方法を提供することを課題とする。
本発明は、その実施後に、保護フィルムとしての粘着フィルムの剥離に必要な力を著しく軽減できる検査方法を提供することを更なる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題は、
シート状または板状の被検査物の検査方法であって、
光および加熱から選択される刺激により気体を発生できる粘着層を備えた粘着フィルムが少なくとも一方の表面に貼り付けられたシート状または板状の被検査物を用意する工程、
被検査物を検査し、合格または不合格を判定する工程、
検査結果が合格である被検査物の表面に貼り付けられた粘着フィルムまたは検査結果が不合格である被検査物の表面に貼り付けられた粘着フィルムのいずれか一方のみに前記刺激を与えて気体を発生させ、被検査物と粘着フィルムの間に気泡を生じさせることによって、被検査物の合格または不合格をマーキングする工程を含むことを特徴とする検査方法
によって達成される。
【0005】
本発明は、以下の項1〜項11などを提供するものである。
[項1]
シート状または板状の被検査物の検査方法であって、
(工程1)刺激により気体を発生できる粘着層と基材層とを備えた粘着フィルムが、少なくとも一方の表面に貼り付けられたシート状または板状の被検査物を用意する工程、
(工程2)被検査物を検査し、合格または不合格を判定する工程、
(工程3)検査結果が合格である被検査物の表面に貼り付けられた粘着フィルムまたは検査結果が不合格である被検査物の表面に貼り付けられた粘着フィルムのいずれか一方のみに前記刺激を与えて気体を発生させ、被検査物と粘着フィルムの間に気泡を生じさせることによって、被検査物の合格または不合格をマーキングする工程を含むことを特徴とする検査方法。
[項2]
平面視における前記気泡の合計面積が、被検査物の表面に前記フィルムが貼り付けられた面積の10〜95%である前記項1に記載の検査方法。
[項3]
前記刺激が光照射または加熱である前記項1または2に記載の検査方法。
[項4]
前記刺激が紫外線照射である前記項3に記載の検査方法。
[項5]
前記粘着フィルムが保護フィルムである前記項1〜4のいずれか1項に記載の検査方法。
[項6]
前記粘着層が気体発生剤としてアゾ化合物を含有する前記項1〜5のいずれか1項に記載の検査方法。
[項7]
前記粘着層における気体発生剤の含有量が1〜30w/w%である前記項1〜6のいずれか1項に記載の検査方法。
[項8]
前記粘着層が2〜50μmの厚さを有する前記項1〜7のいずれか1項に記載の検査方法。
[項9]
前記粘着層の厚さと前記粘着層における気体発生剤の含有量との積が10〜200μm・w/w%である前記項1〜7のいずれか1項に記載の検査方法。
[項10]
前記基材層がポリエチレンテレフタレートフィルムである前記項1〜9のいずれか1項に記載の検査方法。
[項11]
気体発生剤および粘着剤を含有する粘着層と
ポリエチレンテレフタレートフィルムである基材層と
を備え、
前記粘着層における気体発生剤の含有量が1〜30w/w%であり、
前記粘着層が2〜50μmの厚さを有し、かつ
粘着層の厚さと粘着層における気体発生剤の含有量との積が10〜200μm・w/w%である粘着フィルム。
【発明の効果】
【0006】
本発明の検査方法は、簡単な設備で、検査に合格した部材を識別可能にするための目印を付すことができ、かつ目印が消失しにくい。
本発明の検査方法の一態様は、その実施後に、保護フィルムとしての粘着フィルムの剥離に必要な力を著しく軽減できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の検査方法は、シート状または板状の被検査物の検査方法であって、
(工程1)刺激により気体を発生できる粘着層と基材層とを備えた粘着フィルムが、少なくとも一方の表面に貼り付けられたシート状または板状の被検査物を用意する工程、
(工程2)被検査物を検査し、合格または不合格を判定する工程、
(工程3)検査結果が合格である被検査物の表面に貼り付けられた粘着フィルムまたは検査結果が不合格である被検査物の表面に貼り付けられた粘着フィルムのいずれか一方のみに前記刺激を与えて気体を発生させ、被検査物と粘着フィルムの間に気泡を生じさせることによって、被検査物の合格または不合格をマーキングする工程を含む。
【0008】
本発明の検査方法では、被検査物と粘着フィルムの間に気泡を生じさせることによって被検査物の合格または不合格をマーキングする。
この気泡を視認することによって、被試験物の検査結果を認知することができる。
気泡の大きさは、肉眼によって視認できる程度の大きさが好ましく、具体的には、平面視において平均直径約1cm以上であることが好ましい。
平面視における前記気泡の合計面積は、好ましくは、被検査物の表面に前記フィルムが貼り付けられた面積の10〜95%である。本明細書中、この比率を単に、気泡の面積比と称する場合がある。
当該面積比が小さすぎると、合格と不合格との区別が困難になる。当該面積比は好ましくは10%以上、より好ましくは25%以上である。
一方、当該面積比が大きすぎると、粘着フィルムがほとんど被検査物から剥離した状態になり、気泡が存在していることの視認が困難になる場合がある。
当該面積比は、好ましくは95%以下、より好ましくは80%以下である。
【0009】
本発明の検査方法は、粘着フィルムを貼り付ける表面が平滑な被検査物に好適に適用される。
具体的には、被検査物の粘着フィルムを貼り付ける表面の表面粗さRaは1.0μm以下であることが好ましい。本明細書中、表面粗さRaは、JIS B0601:2001に規定されている「算術平均高さ」を意味する。
被検査物と粘着フィルムの間に気泡を生じさせるため、本発明が適用される被検査物の少なくとも粘着フィルム側の面は、気体発生剤から発生する気体に対してガスバリヤ性を有することが好ましい。
被検査物の材質は特に限定されないが、好ましくは、ガラス、金属、またはプラスチックである。
【0010】
(工程1)
工程1は、刺激により気体を発生できる粘着層と基材層とを備えた粘着フィルムが、少なくとも一方の表面に貼り付けられたシート状または板状の被検査物を用意する工程である。「基材層と刺激により気体を発生できる粘着層とを備えた粘着フィルムが、少なくとも一方の表面に貼り付けられたシート状または板状の被検査物」は、シート状または板状の被検査物の少なくとも一方の表面に、光および加熱から選択される刺激により気体を発生できる粘着層を備えた粘着フィルムを貼り付けることによって用意することができる。好ましくは、粘着フィルムは、シート状または板状の被検査物の一方の表面全域に貼り付けられる。
【0011】
<粘着フィルム>
粘着フィルムは、刺激により気体を発生できる粘着剤層と基材層とを有する。粘着剤層は、基材層の一方の面に配置される。
当該粘着フィルムは、好ましくは保護フィルムとして用いられる。
【0012】
粘着剤層は、刺激により気体を発生できることが必要とされる。刺激としては、例えば、光照射、加熱が挙げられる。なかでも、刺激の制御(例えば、刺激を与える時間の長さの制御)が容易であり、設備を簡略化できることから、紫外線照射が好ましい。
粘着剤層は、気体発生剤および粘着剤を含有する。
粘着剤層は、気体発生剤を含有させることにより、刺激により気体を発生することが可能になる。
【0013】
気体発生剤としては、特に限定されないが、例えば、アジド化合物、アゾ化合物が挙げられる。
【0014】
アゾ化合物としては、例えば、2,2'−アゾビス−(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2'−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2'−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2'−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2'−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2'−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2'−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]ジサルフェイトジハイドロレート、2,2'−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラハイドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2'−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾイリン−2−イル]プロパン}ジハイドロクロライド、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミダイン)ハイドロクロライド、2,2'−アゾビス(2−アミノプロパン)ジハイドロクロライド、2,2'−アゾビス[N−(2−カルボキシアシル)−2−メチル−プロピオンアミダイン]、2,2'−アゾビス{2−[N−(2−カルボキシエチル)アミダイン]プロパン}、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル2,2'−アゾビスイソブチレート、4,4'−アゾビス(4−シアンカルボニックアシッド)、4,4'−アゾビス(4−シアノペンタノイックアシッド)、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)が挙げられる。
これらのなかでも、熱分解温度の高い2,2'−アゾビス−(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2'−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2'−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)が好適である。
これらのアゾ化合物は、光照射または加熱等の刺激により窒素ガスを発生する。
【0015】
アジド化合物としては、例えば、3−アジドメチル−3−メチルオキセタン、テレフタルアジド、p−tert−ブチルベンズアジド、3−アジドメチル−3−メチルオキセタンを開環重合することにより得られるグリシジルアジドポリマー等のアジド基を有するポリマー等が挙げられる。
これらのアジド化合物は、光照射、加熱、または衝撃付与等の刺激により窒素ガスを発生する。
【0016】
これらの気体発生剤のうち、(1)衝撃によって気体を発生することがなく、取り扱いが容易であること、および(2)連鎖反応によって爆発的に気体を発生することがなく、例えば、光の照射時間によって気体発生量のコントロールも可能であることから、アゾ化合物が、より好ましい。
【0017】
前記粘着層における気体発生剤の含有量により気泡の面積比をコントールすることができ、当該含有量を大きくすると、気泡の面積比も大きくなる。当該含有量は、好ましくは1〜30w/w%、より好ましくは、1〜10w/w%である。
【0018】
粘着剤は、好ましくは、光硬化型粘着剤である。
光硬化型粘着剤としては、特に限定されないが、例えば、分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである重合性ポリマーと、ラジカル重合性の多官能オリゴマーまたはモノマーとを主成分として含有し、必要に応じて光重合開始剤を更に含有する光硬化型粘着剤等が挙げられる。
このような光硬化型粘着剤からなる粘着剤層は、光の照射により粘着剤層の全体が均一かつ速やかに重合架橋して一体化するので、重合硬化による弾性率の上昇し、粘着力が大きく低下する。このような弾性率が高い粘着剤層中で発生した気体は、粘着剤層から接着界面に放出されて、より大きな気泡を形成でき、かつ接着面の少なくとも一部を剥離した状態を維持し易いので、肉眼による気泡の視認性が向上するとともに、より容易に粘着フィルムを剥離することができるようになる。
【0019】
上記重合性ポリマーは、例えば、分子内に官能基を持った(メタ)アクリル系ポリマー(以下、官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーという)をあらかじめ合成し、分子内に上記の官能基と反応する官能基とラジカル重合性の不飽和結合とを有する化合物(以下、官能基含有不飽和化合物という)と反応させることにより得ることができる。
【0020】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、常温で粘着性を有するポリマーとして、一般の(メタ)アクリル系ポリマーの場合と同様に、アルキル基の炭素数が通常2〜18の範囲にあるアクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルを主モノマーとし、これと官能基含有モノマーと、更に必要に応じてこれらと共重合可能な他の改質用モノマーとを常法により共重合させることにより得られるものである。上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は通常20万〜200万程度である。
【0021】
上記官能基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー;アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基含有モノマー;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有モノマー;アクリル酸イソシアネートエチル、メタクリル酸イソシアネートエチル等のイソシアネート基含有モノマー;アクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノエチル等のアミノ基含有モノマー等が挙げられる。
上記共重合可能な他の改質用モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の一般の(メタ)アクリル系ポリマーに用いられている各種のモノマーが挙げられる。
【0022】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーに反応させる官能基含有不飽和化合物としては、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基に応じて上述した官能基含有モノマーと同様のものを使用できる。例えば、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基がカルボキシル基の場合はエポキシ基含有モノマーやイソシアネート基含有モノマーが用いられ、同官能基がヒドロキシル基の場合はイソシアネート基含有モノマーが用いられ、同官能基がエポキシ基の場合はカルボキシル基含有モノマーやアクリルアミド等のアミド基含有モノマーが用いられ、同官能基がアミノ基の場合はエポキシ基含有モノマーが用いられる。
【0023】
上記多官能オリゴマーまたはモノマーとしては、分子量が1万以下であるものが好ましく、より好ましくは加熱または光の照射による粘着剤層の三次元網状化が効率よくなされるように、その分子量が5,000以下でかつ分子内のラジカル重合性の不飽和結合の数が2〜20個のものである。このようなより好ましい多官能オリゴマーまたはモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートまたは上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。その他、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレート、上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。これらの多官能オリゴマーまたはモノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0024】
上記光重合開始剤としては、例えば、250〜800nm(好ましくは、300〜400nm)の波長の光を照射することにより活性化されるものが挙げられ、このような光重合開始剤としては、例えば、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等のケタール誘導体化合物;フォスフィンオキシド誘導体化合物;ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0025】
粘着層の厚さにより、気泡の面積比をコントロールすることができ、当該厚さを大きくすると、気泡の面積比も大きくなる。当該厚さは、好ましくは、2〜50μm、より好ましくは、2〜30μm、更に好ましくは、2〜10μmである。
また、前記粘着層の厚さと前記粘着層における気体発生剤の含有量との積を大きくすると、気泡の面積比も大きくなる。当該積は好ましくは10〜200μm・w/w%である。
【0026】
上記粘着剤層は、粘着剤としての凝集力の調節を図る目的でイソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物等の一般の粘着剤に用いられる各種の多官能性化合物を適宜含有してもよい。また、帯電防止剤、可塑剤、樹脂、界面活性剤、ワックス、微粒子充填剤等の公知の添加剤を加えることもできる。更に、粘着剤の安定性を高めるために熱安定剤、酸化防止剤を含有してもよい。
【0027】
本発明で用いられる粘着フィルムとして特に好ましくは、
気体発生剤および粘着剤を含有する粘着層と
ポリエチレンテレフタレートフィルムである基材層と
を備え、
前記粘着層における気体発生剤の含有量が1〜30w/w%であり、
前記粘着層が2〜50μmの厚さを有し、かつ
粘着層の厚さと粘着層における気体発生剤の含有量との積が10〜200μm・w/w%である粘着フィルムである。
【0028】
粘着フィルムは、粘着剤層および基材層以外の層を有していてもよい。このような層としては、例えば、粘着剤層および基材層の間に配置される帯電防止層などの中間層が挙げられる。
【0029】
粘着フィルムを製造する方法としては特に限定されず、例えば、基材上に、上記粘着剤等をドクターナイフやスピンコーター等を用いて塗工する等の従来公知の方法を用いることができる。
【0030】
基材層は、気体発生剤から発生する気体に対してガスバリヤ性を有することが好ましい。
また、上記の刺激が光照射である場合、基材層は、少なくとも気体を発生させる波長の光が透過するものである必要がある。例えば、上記の刺激が紫外線照射である場合、基材層は、少なくとも紫外線透過性である必要がある。このような基材層としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリイミド、アクリル樹脂が挙げられる。なかでも、機械的強度、寸法安定性に優れていることから、二軸延伸されたPETフィルムが好適である。
気泡の視認性の観点からは、基材層の厚さは薄いことが好ましく、具体的には、6〜75μmであることが好ましい。
上記基材層は、上記離型層及び上記粘着剤層との密着性を向上させる目的で、表面処理が施されてもよい。
上記表面処理は、例えば、コロナ処理、プラズマ処理等の放電処理や、アルカリによるケン化処理や、プライマー層の塗布等が挙げられる。
【0031】
(工程2)
工程2は、被検査物を検査し、合格または不合格を判定する工程である。
検査項目は、特に限定されないが、例えば、被検査物の表面の傷や、異物が挙げられる。
検査結果に基づく、合格または不合格の判断基準は、検査の目的に応じて任意に設定することができる。
【0032】
(工程3)
工程3は、検査結果が合格である被検査物の表面に貼り付けられた粘着フィルムまたは検査結果が不合格である被検査物の表面に貼り付けられた粘着フィルムのいずれか一方のみに前記刺激を与えて気体を発生させ、被検査物と粘着フィルムの間に気泡を生じさせることによって、被検査物の検査結果をマーキングする工程である。
マーキングを行う被検査物は、合格の被検査物または不合格の被検査物のいずれであってもよいが、特に、検査後に検査に合格した被検査物に貼り付けられた粘着フィルムを剥がして被検査物を使用する場合は、合格した被検査物にマーキングを行うことが好ましい。これにより、気泡によって既に粘着フィルムがある程度剥がされていることになるので、粘着フィルムを剥がすために必要な力を著しく軽減できる。
刺激は、上記で説明した、粘着剤層が含有する気体発生剤に気体を発生させられる刺激であれば、特に限定されないが、紫外線照射が好ましい。刺激が紫外線照射である場合、気体の発生と上記の光硬化型粘着剤の硬化とを同時に行うことが可能である。
刺激は、粘着剤層の全体に与えてもよく、部分に与えてもよいが、気泡の視認が容易になり、かつ粘着フィルムを被検査物から剥離力し易くなることから、全体に与えることが好ましい。
刺激が光照射や加熱である場合、被検査物が大面積(例えば、1m2以上)であっても、刺激を全体に与えることは容易である。
また、刺激を与えた後、易剥離化して気泡で浮いた状態であるため通常の保護フィルムに比べて剥離が著しく軽い為、剥離の作業性が良い。
刺激の強さまたは量は、気体発生剤の種類等によって異なるが、例えば、気体発生剤としてアゾ化合物を用い、紫外線照射を行う場合、好ましくは、約500〜約1000mJ/cm2である。また、紫外線照射時間は、好ましくは、5〜40秒間である。
また、気体発生剤としてアゾ化合物を用い、加熱を行う場合、その温度は好ましくは、120〜200℃である。
【実施例】
【0033】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
なお、実施例中“表面が平滑な”とは、表面粗さRaが1.0μm以下であることを意味する。
【0034】
(実施例1)
(1)光硬化型粘着剤の調製
下記の化合物を酢酸エチルに溶解させ、紫外線を照射して重合を行い、重量平均分子量70万のアクリル共重合体からなる光硬化性粘着剤の酢酸エチル溶液を得た。
ブチルアクリレート 79重量部
エチルアクリレート 15重量部
アクリル酸 1重量部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 5重量部
光重合開始剤 0.2重量部
(イルガキュア651、50%酢酸エチル溶液)
ラウリルメルカプタン 0.01重量部
【0035】
(2)粘着剤層用組成物溶液の調製
得られた光硬化性粘着剤の酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、2−イソシアナトエチルメタクリレート3.5重量部を加えて反応させ、更に、反応後の酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、アクリル系オリゴマー(新中村化学社製、NKオリゴU−324A:主鎖ウレタン骨格、分子量1300)20重量部、光重合開始剤(イルガキュア651)5重量部、ポリイソシアネート0.5重量部を混合し粘着剤層用組成物溶液を調製した。(粘着剤A)
【0036】
上記粘着剤Aに2,2'−アゾビス−(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)2重量部を混合して、気体発生剤を含有する粘着剤層用組成物溶液を調製した。(粘着剤B)
【0037】
上記粘着剤Aに2,2'−アゾビス−(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)10重量部を混合して、気体発生剤を含有する粘着剤層用組成物溶液を調製した。(粘着剤C)
【0038】
(3)粘着フィルムの製造
得られた粘着剤層用組成物溶液を、片面にコロナ処理を施した厚さ25μmの透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのコロナ処理上に乾燥皮膜の厚さが表1の厚さとなるようにドクターナイフで塗工し110℃、5分間加熱して塗工溶液を乾燥させた。乾燥後の粘着剤層は乾燥状態で粘着性を示した。次いで、粘着剤層の表面に離型処理が施されたPETフィルムを貼り付けた。その後、40℃、3日間静置養生を行い、粘着フィルムを得た。
【0039】
(評価)
上記で製造した粘着フィルムについて、以下の方法により評価を行った。
結果を表1に示した。
【0040】
(気泡があることの判定可能性)
得られた粘着フィルムをローラーで10cm角の、表面が平滑なガラス板に貼り付け、UV照射機(高圧水銀灯)を用いて30mW/cm2の強度で30秒間照射した後、気泡があることを目視により容易に判定できるかどうか試験した。判定が目視で容易に可能なものを×、判定が目視では困難なものを○と評価した。
【0041】
(気泡の面積比)
下から投光可能な検視台の上で、気泡の直径の平均値を算出し、次に上記10cm角のガラス上の気泡の数をカウントした。
直径の平均値と気泡の個数から気泡の面積を算出して面積比を算出した。
【0042】
(ガス発生剤量)
表1に、ガス発生剤量として、前記粘着層の厚さと前記粘着層における気体発生剤の含有量との積を示す。
【0043】
【表1】

【0044】
表1から、気泡の面積比が10〜95%であるときに、気泡があることの判定が目視で容易に可能であり、かつ、この場合、粘着剤層厚さは2〜50μmの範囲内であり、粘着層における気体発生剤の含有量が1〜30w/w%の範囲内であり、ガス発生剤量は10〜200μm・w/w%の範囲内であることが分かる。
【0045】
(UV照射後の剥離性)
粘着剤Cを用いて上記の方法と同様にして製造した粘着フィルムのステンレス(SUS)、およびガラスに対する粘着力を測定した。
上記と同様の条件でUV照射を行った後、気泡の面積比と剥離性を調べた。
気泡の面積比は上記と同様にして求めた。
粘着力および剥離力は、下記の方法で測定した。
気泡の面積比、粘着力、および剥離力を表2に示す。
<粘着力の測定方法>
表面が平滑なステンレス板、およびガラス板に、粘着フィルムを貼り付けた。貼り付け条件は、室温23℃および相対湿度50%の環境下、それぞれ2kgの圧着ゴムローラーを用いて、300mm/分の速度で貼り付け、その状態で20分間放置した後、JIS Z0237に準拠し、25mm幅における180度剥離強度を300mm/分の速度で測定した。
<剥離力の測定方法>
表面が平滑なステンレス板、および表面が平滑なガラス板に、それぞれ、粘着フィルムを貼り付けた。貼り付け条件は、室温23℃および相対湿度50%の環境下、それぞれ2kgの圧着ゴムローラーを用いて、300mm/分の速度で貼り付け、その状態で20分間放置した後、上記と同様の条件でUV照射を行い、JIS Z0237に準拠し、25mm幅における180度剥離強度を300mm/分の速度で測定した。
【0046】
【表2】

【0047】
表2から明らかなように、UV照射後の剥離力は、0であった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の検査方法は、携帯電話やパソコンや液晶テレビ等の電化製品等に用いられるシート状または板状の部材の検査に好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状または板状の被検査物の検査方法であって、
(工程1)刺激により気体を発生できる粘着層と基材層とを備えた粘着フィルムが、少なくとも一方の表面に貼り付けられたシート状または板状の被検査物を用意する工程、
(工程2)被検査物を検査し、合格または不合格を判定する工程、
(工程3)検査結果が合格である被検査物の表面に貼り付けられた粘着フィルムまたは検査結果が不合格である被検査物の表面に貼り付けられた粘着フィルムのいずれか一方のみに前記刺激を与えて気体を発生させ、被検査物と粘着フィルムの間に気泡を生じさせることによって、被検査物の合格または不合格をマーキングする工程を含むことを特徴とする検査方法。
【請求項2】
平面視における前記気泡の合計面積が、被検査物の表面に前記フィルムが貼り付けられた面積の10〜95%である請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
前記刺激が光照射または加熱である請求項1または2に記載の検査方法。
【請求項4】
前記刺激が紫外線照射である請求項3に記載の検査方法。
【請求項5】
前記粘着フィルムが保護フィルムである請求項1〜4のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項6】
前記粘着層が気体発生剤としてアゾ化合物を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項7】
前記粘着層における気体発生剤の含有量が1〜30w/w%である請求項1〜6のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項8】
前記粘着層が2〜50μmの厚さを有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項9】
前記粘着層の厚さと前記粘着層における気体発生剤の含有量との積が10〜200μm・w/w%である請求項1〜7のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項10】
前記基材層がポリエチレンテレフタレートフィルムである請求項1〜9のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項11】
気体発生剤および粘着剤を含有する粘着層と
ポリエチレンテレフタレートフィルムである基材層と
を備え、
前記粘着層における気体発生剤の含有量が1〜30w/w%であり、
前記粘着層が2〜50μmの厚さを有し、かつ
粘着層の厚さと粘着層における気体発生剤の含有量との積が10〜200μm・w/w%である粘着フィルム。