説明

シート状物排出装置

【課題】シート状物を一枚ずつ排出するシート状物排出装置に関し、メンテナンスが簡単なシート状物排出装置を提供する。
【解決手段】螺旋状に間隔をあけて所定方向に周回することで一周ごとに設けられた隙間cを複数段有し、一つの隙間cに一枚のシート状物Sを保持して複数枚のシート状物Sを保持する第1螺旋体22と、第1螺旋体22を第1螺旋体22の軸周りに上記所定方向とは反対方向に回転させ、隙間cに保持されたシート状物Sを隙間cから一枚ずつ排出させる第1回転機構261とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状物を一枚ずつ排出するシート状物排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状物には色々なものがあるが、シート状物を一枚ずつ排出するシート状物排出装置が必要になることがある。以下、鋳造現場において必要になるシート状物排出装置を例にあげて説明する。
【0003】
溶解作業中には“スラグ”あるいは“のろ”と称されるカスが溶湯中にどうしても発生してしまう。この“スラグ”が鋳型装置のキャビティ内に入り込んでそのまま凝固してしまうと“のろかみ”と称される鋳造欠陥になってしまう。そのため、鋳型装置の湯口の手前に、溶湯中のカスを漉すシート状のストレーナが配置される。湯口の手前に配置されたストレーナは、一回の鋳造サイクルが終了すると、湯口で凝固する金属に鋳ぐるまれてしまい、再使用することは不可能である。そのため、一回の鋳造サイクルごとにストレーナを湯口の手前に配置する必要が生じ、シート状のストレーナを湯口の手前に自動で一枚ずつ排出するシート状物排出装置が提案されている(例えば、特許文献1等参照。)
【特許文献1】特開平11−179485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この特許文献1に開示された自動のシート状物排出装置は、かなり大がかりなものであり、このためメンテナンスが大変である。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、メンテナンスが簡単なシート状物排出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を解決する本発明のシート状物排出装置は、螺旋状に間隔をあけて所定方向に周回することで一周ごとに設けられた隙間を複数段有し、一つの隙間に一枚のシート状物を保持して複数枚のシート状物を保持する第1螺旋体と、
上記第1螺旋体をその第1螺旋体の軸周りに上記所定方向とは反対方向に回転させ、上記隙間に保持されたシート状物をその隙間から一枚ずつ排出させる回転機構とを備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明のシート状物排出装置では、上記第1螺旋体の螺旋構造を利用してシート状物を一枚ずつ簡単かつ確実に排出することができる。また、上記回転機構は、上記第1螺旋体を軸周りに上前反対方向に回転させる機能さえあればよく、簡単な構造ですむ。本発明のシート状物排出装置によれば、メンテナンスが簡単になる。
【0008】
また、本発明のシート状物排出装置において、螺旋状に間隔をあけて上記反対方向に周回することで一周ごとに設けられた隙間を複数段有し、一つの隙間に一枚のシート状物を保持して複数枚のシート状物を保持する第2螺旋体と、
上記第1螺旋体が回転するのと同時に上記第2螺旋体をその第2螺旋体の軸周りに上記所定方向に回転させ、その第2螺旋体の隙間に保持されたシート状物をその隙間から一枚ずつ排出させる第2回転機構とを備えたことが好ましい。
【0009】
こうすることで、装置の構造を複雑にしなくても、一度に2箇所へシート状物を一枚ずつ排出させることができ、効率がよい。
【0010】
ここで、上記回転機構が、手動操作を受けて上記第1螺旋体をその第1螺旋体の軸周りに上記反対方向に回転させるものであってもよい。
【0011】
上記回転機構を手動式にすることで、メンテナンスがより簡単になる。
【0012】
また、上記第1螺旋体が、上記シート状物として、鋳型装置の湯口近傍に配置されて溶湯中のカスを漉すシート状のストレーナを複数枚保持するものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシート状物排出装置によれば、メンテナンスが簡単になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
本発明の一実施形態であるストレーナ排出装置は、鋳造現場で使用されるものであり、溶湯中のカスを漉すシート状のストレーナを鋳型装置の湯口近傍に配置するために用いられる。
【0016】
まず、その鋳型装置について簡単に説明する。
【0017】
図1は、本実施形態のストレーナ排出装置を用いてストレーナを配置する鋳型装置の内部構造を示す断面図である。
【0018】
図1に示す鋳造装置1は、サイドゲート方式を採用した低圧鋳造装置であり、下型11と上型12と一対の横型13とを備えている。これらの鋳型11〜13はいずれも金型である。この鋳型装置1を用いて、リム部とディスク部を有する車両用ホイールが鋳造される。
【0019】
図1には、型閉めされた鋳造装置1が示されており、この図1では、断面を表す部分にハッチングを施すのではなく、下型11、上型12、および一対の横型13それぞれを明確にするため、下型11には左下がりのハッチングを施し、上型12には右下がりのハッチングを施し、一対の横型13にはクロスハッチングを施してある。
【0020】
図1に示す下型11は下型プラテン140に固定配置されたものである。一方、上型12は昇降自在なものである。この上型12は、シリンダ(不図示)のピストンロッド151に取り付けられ上下動する上型プラテン150に固定され、上型プラテン150が上下動することによって昇降する。
【0021】
一対の横型13は、互いに離れることで型が開き、当接するまで互いに接近することで型が閉まるものである。図1に示す横型13は、下型プラテン140の水平面140a上を、図1の紙面に対して垂直な方向にスライドする。すなわち、一対の横型13は、分割面(パーティング面)13aに直交した下型プラテン140の水平面140aがスライド面になり、その水平面140aに沿って型閉めおよび型開きが行われる。図1には、一対の横型13のうちの一方の横型13のみが示されており、その一方の横型13は、紙面手前へ向かってスライドすることで型が閉まり、紙面奥側へ向かってスライドすることで型が開く。
【0022】
図1に示す鋳造装置1では、固定配置された下型11の上に上型12が下降してくるとともに一対の横型13が当接するまで互いに接近することで型閉めが行われ、鋳造空間Cが形成される。横型13は、リム部の外周面を形成し、下型11はディスク部のおもて面(デザイン面)を形成する。また、上型12は、リム部の内周面を形成するとともにディスク部の裏面も形成する。
【0023】
一方、型閉めされた鋳型装置1は、一対の横型13が互いに離れるとともに上型12が上昇することで型開きが行われる。鋳造空間Cに溶湯を充填して得られた車両用ホールは、上昇する上型12から離れず、リム部の、ディスク部とは反対側のフランジ先端部(インナーリムフランジ)が押し出し板18によって下方へ押されることで、上型12から抜型する。
【0024】
また、図1に示す鋳造装置1には、横型13のスライド面になる下型プラテン140の水平面140aに、凹部状のストレーナ収容室19が設けられた湯口カラー161が配備されている。この湯口カラー161には、ストレーナ収容室19の下面191から下方に向けて開口した供給孔1611が設けられており、この供給孔1611の下端にはストーク170が接続している。ストレーナ収容室19は、一対の横型13が型開きした状態で上方に向けて開口する受入口190を有する。ストレーナ収容室19には、一対の横型13が型開きした状態で、本実施形態のストレーナ排出装置によってストレーナが、その受入口190から配置される。なお、湯口カラー161は、押さえ板162によってストーク170の上端に取り付けられている。ストーク170は、不図示の密閉された保持炉内に差し込まれたものである。保持炉にはアルミニウムの溶湯が保持されており、この溶湯に2MPa以上10MPa以下の圧力をかけることで、保持炉内の溶湯がストーク170を通ってストレーナ収容室19に達する。一対の横型13が型閉めされた状態では、ストレーナ収容室19の受入口190が湯口160になる。また、図1に示す鋳型装置1には、湯口160に到達した溶湯が、横型13と下型プラテン140との間から漏れ出してくることを防止するため、湯口ブラケット163が設けられている。
【0025】
一対の横型13は、型閉めされた状態で鋳造空間Cの、円筒状のリム成形空間CRの周方向に180°対向した位置からそのリム成形空間CRにそれぞれつながる2つの堰形成空間131を有する。これら2つの堰形成空間131は、一対の横型13の分割面13aに形成されている。図1は、鋳造装置1の右側半分を一対の横型13の分割面13aに沿って断面した様子を示し、左側半分をその分割面13aとは異なる面に沿って断面した様子を示すものであるため、図1の右側にしか堰形成空間131が示されていない。また、湯口160やストレーナ収容室19も、180°対向した位置にそれぞれ設けられているが、図1では右側となる湯口160やストレーナ収容室19しか示されていない。
【0026】
また、一対の横型13は、型閉めされた状態で湯口160と堰形成空間131を結ぶ湯道形成空間132も有する。この湯道形成空間132も、一対の横型13の分割面13aに形成されたものである。鋳造空間Cへの溶湯充填時には、不図示の保持炉から湯口160に到達した溶湯が、湯道形成空間132を通って堰形成空間131から鋳造空間C内へ充填される。図1に示す湯道形成空間132は、湯口160につながる部分が立ち上がった後、略90°折れ曲がり堰形成空間131に向けて延びている。
【0027】
続いて、本実施形態のストレーナ排出装置について詳述する。
【0028】
図2は、本実施形態のストレーナ排出装置の斜視図である。
【0029】
図2に示すストレーナ排出装置2は、作業者が持ち運べる軽量な手動式のシート状物排出装置である。このストレーナ排出装置2は、長尺な支持フレーム21、およびその支持フレーム21の両端に設けられた第1螺旋体22と第2螺旋体23を有する。支持フレーム21は、中央部分が略水平に延び両端部分が下方へ向けて曲がったパイプ状のものである。この支持フレーム21の長さは、図1に示す鋳型装置1における、180°対向した位置にそれぞれ設けられたストレーナ収容室19を結ぶ長さに対応している。支持フレーム21の中央部分には、作業者が持ちやすいようにグリップ部20が設けられている。このグリップ部20には、作業者が回転操作する回転ハンドル201が取り付けられている。この回転ハンドル201にはある程度の重量が与えられており、作業者がこの回転ハンドル201を上方まで回転(半周分回転)させると、あとは自重で下方まで回転し、操作性が良い。作業者は、図1に示す鋳型装置1の一対の横型13の開閉方向と直交する方向の位置(図1では鋳型装置1の右側あるいは左側)に立つ。作業者がこの位置に立つと、作業者の手前側と奥側にそれぞれストレーナ収容室19があるようになる。作業者は、第1螺旋体22側が奥側のストレーナ収容室19に位置するとともに、第2螺旋体23側が手前側のストレーナ収容室19に位置するように、図1に示す鋳型装置1の下型プラテン140にストレーナ排出装置2をセットする。図2においては、作業者は、紙面右手前側に立ち、下型プラテン140にストレーナ排出装置2をセットすることになる。以下、図2の奥側に示す第1螺旋体22側をRS側あるいは前側と称し、手前側に示す第2螺旋体22側をOS側あるいは後側と称する。また、一対の横型13の開閉方向を左右方向と称する。
【0030】
図2に示す第1螺旋体22も第2螺旋体23も、螺旋状に間隔をあけて周回することで一周ごとに設けられた隙間cを複数段有するものであり、一つの隙間cに一枚のシート状のストレーナを保持して複数枚のストレーナを保持する。
【0031】
図3は、本実施形態のストレーナ排出装置を図1に示す鋳型装置の下型プラテンにセットしたときの様子を横型側から見たときの図であり、図4は、図3に示すストレーナ排出装置を上型側から見たときの図である。
【0032】
以下、図2とともに図3及び図4も用いて説明する。
【0033】
図3および図4では、左側がRS側になり、右側がOS側になる。これらの図3および図4では、支持フレーム21の、RS側の一部とOS側の一部を省略してストレーナ排出装置を図示している。
【0034】
図3に示すように、第1螺旋体22と第2螺旋体23では、周回方向が反対である。ここでは、第1螺旋体22には、ワイヤ221が上方から見て反時計回り(左巻き)に巻かれたコイルバネが用いられており、第2螺旋体23には、ワイヤ231が上方から見て時計回り(右巻き)に巻かれたコイルバネが用いられている。また、図3および図4に示す第1螺旋体22および第2螺旋体23には、シート状のストレーナSが5枚ずつ保持されている。このシート状のストレーナSは円形の金属網である。各螺旋体22,23にストレーナSを保持させるには、図2に示す複数段の隙間cに一枚ずつストレーナSを差し込んでいく。図4に示すように、各螺旋体22,23それぞれの径は、ストレーナSの径の略半分であるが、下段の隙間cから順にストレーナSを差し込む場合には、各螺旋体22,23におけるワイヤ221,231の下端に対して180°対向した位置からストレーナSを奥まで差し込めば、ストレーナSはその一部が各螺旋体22,23の隙間cにしっかりと保持される。各螺旋体22,23に保持されたストレーナSの中心と、それぞれの螺旋体22,23の中心の位置関係は、偏心した位置関係にある。
【0035】
また、本実施形態のストレーナ排出装置2は、RS側とOS側それぞれに位置決め部材24,25を有する。RS側の位置決め部材24は、支持フレーム21側からRS側に向かって突出した突出棒241と、その突出棒241から下方に向けて延在したストッパー片242を有する。図3および図4に示すように、図1に示す鋳型装置の、RS側になる湯口ブラケット163Rの上面1631には、ストレーナ収容室19の中心側を向いて上方が開口したV溝1632が設けられている。また、OS側の位置決め部材25は、このストレーナ排出装置2が図1に示す鋳型装置1にセットされた場合には左右方向に延びる係合アーム251を有する。この係合アーム251は、支持フレーム21からOS側に斜めに延びた左右のステー252に支持されたものである。図3および図4に示すように、図1に示す鋳型装置1の、OS側になる湯口ブラケット163oは、左右方向に延びた上面1635を有するものであり、その上面1635の左右方向両端は面取りされて傾斜面1636になっている。OS側の位置決め部材25における係合アーム251の左右方向両端部それぞれには、その傾斜面1636の傾斜角度に合わせて折れ曲がった係合部2511が設けられている。
【0036】
本実施形態のストレーナ排出装置2を、図1に示す鋳型装置1の下型プラテン140にセットする際、RS側では、湯口ブラケット163Rに設けられたV溝1632にRS側の突出棒241を上方から入れ込むととももに、OS側では、湯口ブラケット163oの上面1635にOS側の係合アーム251を上方から被せれば、ストレーナ排出装置2の左右方向の位置は定まる。また、RS側の湯口ブラケット163Rの、ストレーナ収容室19側の面1633に、RS側のストッパー片242を突き当てることで、ストレーナ排出装置2の前後方向の位置も定まる。こうして、本実施形態のストレーナ排出装置2は、各螺旋体22,23に保持したストレーナSがストレーナ収容室19の真上にくるように位置決めされる。
【0037】
また、本実施形態のストレーナ排出装置2は、第1螺旋体22の上には、支持フレーム21のRS側端部につながった第1回転機構261を有するとともに、第2螺旋体23の上には、支持フレーム21のOS側端部につながった第2回転機構262を有する。第1回転機構261は、第1螺旋体22を軸周りに回転させるものであり、第2回転機構262は、第2螺旋体23を軸周りに回転させるものである。図3に示すように、第1回転機構261も第2回転機構262もベアリング2611,2621が内臓された簡単な構造のものである。グリップ部20に取り付けられた回転ハンドル201は、作業者(OS側)から見て時計回りの方向へ回転操作される(図4に示す矢印h参照)。図3に示すように、パイプ状の支持フレーム21の内部にはピアノ線263が通っており、このピアノ線263は、回転ハンドル201が回転操作されることで回転ハンドル201の回転方向と同じ方向へ軸回りに回転する。各回転機構261,262に内臓されたベアリング2611,2621は、図3に示すピアノ線263の軸受けであり、各回転機構261,262は、ピアノ線263の回転を、回転方向を変えずにそれぞれの螺旋体22,23に伝えるものである。したがって、図4に示すように、回転ハンドル201が、作業者から見て時計回りの方向へ回転操作されると、上方から見て反時計回り(左巻き)に巻かれたRS側のコイルバネである第1螺旋体22は、上方から見て時計回りに回転する(図4に示す矢印r参照)。一方、上方から見て時計回り(右巻き)に巻かれたOS側のコイルバネである第2螺旋体23は、第1螺旋体22が回転するのと同時に、上方から見て反時計回りに回転する(図4に示す矢印l参照)。すなわち、各螺旋体22,23は、自身のワイヤ221,231の周回方向とは逆方向に回転する。
【0038】
さらに、本実施形態のストレーナ排出装置2は、RS側とOS側それぞれに、前アーム271、後アーム272、左アーム273、および右アーム274を有する。いずれのアーム271〜274も、各螺旋体22,23の上方から下方へ向けて延びたものである。前アーム271は、各螺旋体22,23に保持されたストレーナSの前側になる位置に、間隔を空けて設けられた2本のアームである。図2に示すように、この前アーム271は、取り付け部分2711を回動支点にして上下に回動させることができ(図2中の矢印参照)、前アーム271を上方に回動させてから、各螺旋体22,23の隙間cにストレーナSを差し込めば、前アーム271がじゃまにならず、各螺旋体22,23の隙間cにストレーナSを簡単に差し込むことができる。なお、RS側の前アーム271を上方に回動すると、2本のアームの間に位置決め部材24の突出棒241が入り込み、突出棒241によって前アーム271の回動が阻止されることはない。この前アーム271は、各螺旋体22,23が回転したときにストレーナSが前側に飛び出すことを防止するものである。
【0039】
後アーム272は、各螺旋体22,23の真後に設けられたものであり、RS側の後アーム272は第1回転機構261から下方へ延びるものであり、OS側の後アーム272は係合アーム251から下方へ延びるものである。各螺旋体22,23に保持されたストレーナSは、各螺旋体22,23のワイヤ221,231によって後側に完全に飛び出てしまうことはないが、ストレーナSの、各螺旋体22,23よりも後側にはみ出し部分が、この後アーム272によって前側へ矯正される。
【0040】
左アーム273および右アーム274は、各螺旋体22,23に保持されたストレーナSの左側になる位置および右側になる位置それぞれに設けられたものである。RS側の第1螺旋体22では、ストレーナSを保持した第1螺旋体22が上方から見て時計回り(右回り)に回転すると、この第1螺旋体22に保持されたストレーナSが、回転方向側にある右アーム274にぶつかり、ストレーナSの、第1螺旋体22に保持されている部分が、第1螺旋体22の隙間cをワイヤ221の下端に向かって移動し始める。ストレーナSの、第1螺旋体22に保持されていた部分が、ワイヤ221の下端を通過すると、そのストレーナSは、真下のストレーナ収容室19に向かって落下し、RS側における1枚のストレーナSの排出が完了する。一方、OS側の第2螺旋体23では、ストレーナSを保持した第2螺旋体23が上方から見て反時計回り(左回り)に回転すると、この第2螺旋体23に保持されたストレーナSが、回転方向側にある左アーム273にぶつかり、ストレーナSの、第2螺旋体23に保持されている部分が、第2螺旋体22の隙間cをワイヤ231の下端に向かって移動し始める。ストレーナSの、第2螺旋体23に保持されていた部分が、ワイヤ231の下端を通過すると、そのストレーナSは、真下のストレーナ収容室19に向かって落下し、OS側における1枚のストレーナSの排出が完了する。このように、本実施形態のストレーナ排出装置2によれば、各螺旋体22,23の隙間cに1枚ずつストレーナSを差し込まなければならないが、各螺旋体22,23の螺旋構造を利用してストレーナSを一枚ずつ簡単かつ確実に排出することができる。しかも、装置の構造を複雑にしなくても、一度に2箇所へストレーナSを一枚ずつ排出させることができ、効率がよい。また、第1回転機構261も第2回転機構262も簡単な構造であり、装置全体として見ても簡単な構造であるため、このストレーナ排出装置2のメンテナンスは簡単である。さらに、手動式にしたことで、メンテナンスがより簡単になっているとともに、装置の軽量化が実現されている。
【0041】
以上の説明では、鋳造現場で使用されるストレーナ排出装置を例にあげて説明したが、本発明は、ストレーナSに限らず、様々なシート状物を排出する装置に適用することができる。また、2つの螺旋体22,23を用いて一度に2箇所へストレーナSを排出させる態様であったが、1つの螺旋体のみを用いる態様であってもよい。さらに、手動式に比べてメンテナンスは多少大変になってしまうが、自動式のシート状物排出装置に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施形態のストレーナ排出装置を用いてストレーナを配置する鋳型装置の内部構造を示す断面図である。
【図2】本実施形態のストレーナ排出装置の斜視図である。
【図3】本実施形態のストレーナ排出装置を図1に示す鋳型装置の下型プラテンにセットしたときの様子を横型側から見たときの図である。
【図4】図3に示すストレーナ排出装置を上型側から見たときの図である。
【符号の説明】
【0043】
1 鋳型装置
11 下型
12 上型
13 横型
131 堰形成空間
132 湯道形成空間
140 下型プラテン
160 湯口
163 湯口ブラケット
19 ストレーナ収容室
C 鋳造空間
2 ストレーナ排出装置
20 グリップ部
201 回転ハンドル
21 支持フレーム
22 第1螺旋体
23 第2螺旋体
c 隙間
24,25 位置決め部材
261 第1回転機構
262 第2回転機構
271 前アーム
272 後アーム
273 左アーム
274 右アーム
S ストレーナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状に間隔をあけて所定方向に周回することで一周ごとに設けられた隙間を複数段有し、一つの隙間に一枚のシート状物を保持して複数枚のシート状物を保持する第1螺旋体と、
前記第1螺旋体を該第1螺旋体の軸周りに前記所定方向とは反対方向に回転させ、前記隙間に保持されたシート状物を該隙間から一枚ずつ排出させる第1回転機構とを備えたことを特徴とするシート状物排出装置。
【請求項2】
螺旋状に間隔をあけて前記反対方向に周回することで一周ごとに設けられた隙間を複数段有し、一つの隙間に一枚のシート状物を保持して複数枚のシート状物を保持する第2螺旋体と、
前記第1螺旋体が回転するのと同時に前記第2螺旋体を該第2螺旋体の軸周りに前記所定方向に回転させ、該第2螺旋体の隙間に保持されたシート状物を該隙間から一枚ずつ排出させる第2回転機構とを備えたことを特徴とする請求項1記載のシート状物排出装置。
【請求項3】
前記回転機構が、手動操作を受けて前記第1螺旋体を該第1螺旋体の軸周りに前記反対方向に回転させるものであることを特徴とする請求項1記載のシート状物排出装置。
【請求項4】
前記第1螺旋体が、前記シート状物として、鋳型装置の湯口近傍に配置されて溶湯中のカスを漉すシート状のストレーナを複数枚保持するものであることを特徴とする請求項1記載のシート状物排出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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