説明

シート状粘着材包装体及びその製造方法、ならびに、この包装体の使用方法

【課題】 角栓除去等に必要な量の親水性媒体を付与することができ、かつ、保存に適したシート状粘着材包装体を提供すること。
【解決手段】 シート状粘着材包装体は、支持体の一方の面に含親水性媒体粘着層を有し、この支持体の他方の面が熱溶着可能な外層で覆われており、含親水性媒体粘着層を内側面として屈曲させて、外層の端縁が熱溶着によって封緘されて袋体が形成されている。この袋体の内部には、含親水性媒体粘着層が収納されている。ここで支持体は、熱溶着可能な不織布からなることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシート状粘着材包装体とその製造方法並びにその使用方法に関し、特に、角栓除去等に使用される顔面用のシート状粘着材の包装体とその製造方法並びにその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、皮膚の角栓除去に適した化粧用材料として種々のタイプのもの、例えば、ピールオフタイプの化粧用パック、シート状化粧用パック等が知られている。ピールオフタイプの化粧用パックとしては、皮膜形成剤を皮膚表面に塗布し、一定時間かけて十分に乾燥させて皮膜を形成した後、この皮膜を皮膚から剥がすタイプのものが主流である。ピールオフタイプの化粧用パックの製品形態としては、ゼリー状、ペースト状及び粉末状の形態が知られているが、これらのピールオフタイプの化粧用パックは、皮膚表面に均一に塗布することが困難であり、皮膚から剥がす際に皮膜が破れて剥離除去に手間取ったり、十分に乾燥した皮膜の形成には長時間を必要とする等の問題があった。
【0003】
一方、シート状化粧用パックとしては、皮膜形成剤を予めシート形状に形成したものが知られている。シート状化粧用パックは、ピールオフタイプの化粧用パックと比べて形成された皮膜が均一であるため、乾燥後の剥離を容易に行うことができるが、使用前に皮膚の適用部位に水、メチルアルコール等の親水性媒体を塗布することが必要である。角栓除去を十分に実行させるためには、予め与えられた親水性媒体によってシート状の皮膜形成剤を所定量溶解もしくは湿潤させた状態で貼着し、約10〜30分間放置されて水分等が蒸発した後剥離することが必要である。水等の親水性媒体で溶解若しくは湿潤した貼付層が、毛穴内に存在する角栓と接触した後、乾燥することによって、角栓と一体化するので、貼付層を剥がすことによって角栓も除去できるのである。ところが、使用者によって親水性媒体の塗布量が異なり、必要な適当量の親水性媒体を皮膚に塗布することは困難である。親水性媒体の塗布量が少なすぎる場合にはシート状の皮膜形成剤が十分に溶解せず、結果として角栓除去が十分に行われないことになる。また、親水性媒体の塗布量が多すぎる場合には、シート状の皮膜形成剤が必要以上に濡れてしまい、剥離が可能になるまで、すなわち、シート状の皮膜形成剤が乾燥して剥離可能な状態になるまでに要する時間が長くなりすぎるという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開平8−109119号公報
【特許文献2】特開平10−59820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、角栓除去等に必要な量の親水性媒体を付与することができ、かつ、保存に適したシート状粘着材包装体及びその製造方法、ならびに、この包装体の使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシート状粘着材包装体は、支持体の一方の面に含親水性媒体粘着層を有し、該支持体の他方の面が熱溶着可能な外層で覆われており、該含親水性媒体粘着層を内側面として屈曲させ、該外層の端縁部分が熱溶着によって封緘されて袋体を形成し、該袋体の内部に、該含親水性媒体粘着層が収納されていることを特徴とする。
【0007】
ここで、前記支持体は、熱溶着可能な不織布からなることができる。
【0008】
本発明において、前記含親水性媒体粘着層は、水溶性高分子、及び、該水溶性高分子と相溶可能な可塑剤とを含有することができる。
また、前記水溶性高分子は、ポリビニルピロリドン及びビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種類であることができる。
【0009】
本発明において、前記含親水性媒体粘着層は、さらに充填材を含有することができる。
また、前記外層は、熱溶着可能なプラスチックからなることができる。
【0010】
本発明において、前記含親水性媒体粘着層は、線対象の中央位置にマークが付されていることができる。
また、前記マークは、前記含親水性媒体粘着層の上端縁の一部を山型に形成したものであることができる。
【0011】
本発明のシート状粘着材包装体は、前記外層面に中央線が印刷されていてもよい。
【0012】
本発明のシート状粘着材包装体の製造方法は、熱溶着可能なプラスチック材料からなる外層と、支持体とを積層し、該支持体の面上に含親水性媒体粘着層を形成した後、含親水性媒体粘着層が内側で対面するように2つ折りにし、該含親水性媒体粘着層の周囲に沿って熱溶着させることにより封緘して袋体を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、皮膚から角栓を除去するのに適した量の親水性媒体を与えることができるシート状粘着材包装体及びこの製造方法、並びに、このシート状粘着材包装体を使用する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のシート状粘着材包装体は、支持体の一方の面に含親水性媒体粘着層を有し、該支持体の他方の面が熱溶着可能な外層で覆われており、該含親水性媒体粘着層を内側面として屈曲させ、該外層の端縁部分が熱溶着によって封緘されて袋体を形成し、該袋体の内部に、該含親水性媒体粘着層が収納されている。
【0015】
以下に、本発明のシート状粘着材包装体の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面において、同一の機能を有する構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
【0016】
図1は本発明の第1の実施形態に係るシート状粘着材包装体を示す図であり、図1の(a)はその平面図であり、図1の(b)は、図1の(a)において線AA’の位置で切断したときの断面図であり、図1の(c)は図1の(a)のシート状粘着材包装体を開いた状態の平面図であり、含親水性媒体粘着層側から見た図である。
【0017】
図1の(a)において、熱溶着可能な外層1は上端縁及び下端縁がほぼ平行になっていて下端縁は上端縁よりも長く設計されている。また、右側端縁は下端縁からほぼ垂直に上方に伸び、その上部において曲線を描くように形成されている。熱溶着可能な外層1は端縁部分、すなわち、端縁からわずか内側に入った位置(熱溶着部2)で熱溶着されて封緘され、袋体が形成されている。熱溶着された内部は密閉されており、後述するように内部には含親水性媒体粘着層が封入されている。
【0018】
図1の(b)において、熱溶着可能な外層1の片面には熱溶着可能な不織布等の支持体3が積層されており、この支持体3の面上には含親水性媒体粘着層4が設けられている。図1の(b)は、これら三層の積層体を、2つ折りにした含親水性媒体粘着層4が互いに接触するように、含親水性媒体粘着層4が内側で、外層1が外側になるように、屈曲させた状態である。含親水性媒体粘着層4は支持体3の表面全面を覆うように設けられていてもよいし、あるいは部分的に設けられていてもよい。ただし、表面全面に設けられている場合でも、熱溶着部で支持体同士又は外層同士が接触できるように余白を有することが必要である。なお、図1の(b)に示すように屈曲した状態では空間5が形成されていることもある。
【0019】
本発明において、外層1は熱溶着によるシールが可能な材料からなることが必要であるが、この機能を有するものであれば特に限定されるものではない。例えば、熱溶着可能なプラスチック等を好ましく使用することができ、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等から成るフィルム等が挙げられる。また、シート状粘着材包装体の内部に封入されている含親水性媒体粘着層に含有されている水分等の親水性媒体の量を使用時まで保持するためには、外層は水分透過性の低い材料からなることが好ましく、透湿度が0であるものが最も好ましい。外層の厚みは、シート状粘着材を内包する包装体としての機能を発揮できるような厚みであれば特に限定されることはないが、例えばプラスチックシートの場合には、50μm〜200μmであることが好ましい。
【0020】
本発明において、支持体3は例えば不織布基材であることが好ましく、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、ポリウレタン等のポリウレタン繊維のような熱溶着可能な疎水性繊維の単独基材、あるいは、この疎水性繊維と、綿、レーヨン、パルプ等の親水性繊維とを混合したものや積層体などが好ましく使用される。図1に示すようなシート状粘着材包装体では、支持体3は、熱溶着によってシールされた後、熱溶着部2が再剥離可能であることが好ましく、例えば、熱溶着によるシール手段及び条件とを考慮して、適当な材料を自由に組み合わせたり、設計することが好ましい。支持体3は、含親水性媒体粘着層を保持できるような厚みであることが好ましく、更には、シート状粘着材包装体をピールオープンして皮膚等に貼着した際に、皮膚への追従性等を示すことができるような厚みであることが好ましい。例えば、不織布基材から成る場合には、目付量が20〜80g/mであることが好ましい。
【0021】
本発明において、含親水性媒体粘着層4は、例えば、湿潤粘着性組成物を用いてなる。ここで湿潤粘着性組成物は、水溶性高分子と、この水溶性高分子と相溶化能な可塑剤(例えば液状可塑剤)とを含有し、必要に応じて、顔料や充填剤等を更に含有する。
【0022】
本発明に用いられる水溶性高分子は、水または親水性媒体の存在により粘着性を発揮するものである。角栓除去に適した水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルピロリドン及びビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましいものとして挙げられる。また、水溶性高分子の分子量が大き過ぎると、湿潤粘着性組成物を用いて形成された粘着層は、水又は親水性媒体の存在によって粘着力が充分とならないことがあり、分子量が小さ過ぎると、粘着層の機械的強度が低下することがあって、貼付後、乾燥したシート状粘着材包装体を貼付部位から剥離除去する際に粘着層の一部が残渣として残ることがあるので、これらの水溶性高分子は、平均分子量が5,000〜500万であることが好ましく、特に、2万〜120万であることが好ましい。
【0023】
粘着性を発揮させるために用いた水等を蒸発させるための乾燥時間を短縮させ、かつ、剥離時の痛みを更に和らげることを可能にするという観点からは、低分子量の水溶性高分子、すなわち重量平均分子量が70万未満、好ましくは5,000〜30万の水溶性高分子と、高分子量の水溶性高分子、すなわち重量平均分子量が70万以上、好ましくは100万〜500万の水溶性高分子とを混合して使用することが更に好ましい。高分子量の水溶性高分子と低分子量の水溶性高分子とを混合して用いる場合、その配合割合は、用いる水溶性高分子の分子量や使用目的等に応じて適宜決定されることが好ましいが、例えば、高分子量の水溶性高分子と低分子量の水溶性高分子との割合は、重量比で、おおよそ、5:95〜95:5であることが好ましく、さらに好ましくは20:80〜70:30である。角栓の除去効率、剥がす際の皮膚に与える痛みの軽減等の観点からは、低分子量の水溶性高分子の配合割合を多くすることが好ましい。
【0024】
液状可塑剤としては、水溶性高分子に対して相溶性を有し、溶解して可塑化効果を示す材料が使用される。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、その他のポリエチレングリコール類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、その他のポリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、その他のポリグリセリン類、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール等のブチレングリコール類、ソルビトール、マンニトール等の糖アルコール類、ラノリン、レシチン、オリーブ油等のグリセライド類、などが例示される。これらは1種類のみを使用してもよいし、あるいは、2種類以上を併用してもよい。
【0025】
液状可塑剤の使用量が過大であると、形成された粘着層の湿潤して乾燥させた後の機械的強度が乏しくなり易く、過小であると、柔軟性が乏しくなって貼付部位に良好にフィットさせることが難しくなる傾向にある。したがって、液状可塑剤は、水溶性高分子100重量部に対して、1〜75重量部の範囲で使用することが好ましく、5〜50重量部の範囲で使用することが更に好ましい。
【0026】
本発明の湿潤粘着性組成物は、さらに充填剤を含むことが好ましい。充填剤としては、水溶性高分子と液状可塑剤との混合物に対して、難溶性または不溶性の各種の無機充填剤又は有機充填剤が用いられるが、無機充填剤を用いることが好ましい。無機充填剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、タルク、クレー、カオリン、ガラス等の無機酸化物又は複合酸化物類、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、セラミックス、カーボン、その他の無機化合物類、金属、合金等の金属類、などが例示される。有機充填剤としては、例えば、セルロース、シルク、ポリエステル、ポリオレフィン等の繊維形成性有機高分子類、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、スチレン、その他の有機高分子類、などが例示される。これらの充填剤は、1種類のみを使用してもよいし、あるいは2種類以上を併用してもよい。本発明に使用される充填剤は、通常、粉体状態が好ましく、その形状は特に限定されないが、均一な分散性が得られることを考慮すると球形であることが好ましい。また、その平均粒径は0.01〜50μmであることが好ましく、特に、0.1〜10μmであることが好ましい。
【0027】
湿潤粘着性組成物に充填剤を含有させることによって、形成された粘着層の湿潤して乾燥させた後の機械的強度を向上させることができる。また、充填剤を含有させることによって、貼付後、乾燥するのに要する乾燥所要時間を短縮させることができる。したがって、充填剤を含有させれば粘着層の厚みが厚くても、従来品のような長時間を要することはない。なお、乾燥所要時間が短くなる理由は、充填剤と、水溶性高分子及び液状可塑剤との界面が、水分逸散の通路として機能するものと推察される。
【0028】
充填剤は、水溶性高分子100重量部に対して10〜200重量部の範囲内で使用することが好ましく、25〜100重量部の範囲内で使用することが更に好ましい。充填剤の使用量が10〜200重量部の範囲内であれば、形成された粘着層の柔軟性が乏しくなって貼付部位に良好にフィットし難くなるようなことはなく、また、乾燥所要時間が長くなることもなく、かつ、粘着層を貼り付けて乾燥した後の機械的強度の改善効果が得られる。
【0029】
湿潤粘着性組成物には、さらに顔料等を含有することができ、例えば、黒色顔料を含有させれば、除去された角栓が一目で識別することができるようになる。本発明に用いられる黒色顔料としては、カーボンブラック、黒酸化鉄、黒酸化チタン、薬用炭等が挙げられる。
【0030】
本発明の湿潤粘着性組成物は、必要に応じて、化粧料、香料、防黴剤、着色剤、アルコール、薬剤、紫外線吸収剤、あるいは、その他の貼付材に通常使用される薬剤や添加剤を本発明の効果を阻害しない範囲内で含んでもよい。
【0031】
水溶性高分子及び液状可塑剤と、必要に応じて顔料や充填剤等とを含有する湿潤粘着性組成物は、エチルアルコール、メチルアルコール等の親水性媒体や水等と共に塗布液とした後、剥離処理が施された剥離シート、あるいは、支持体上に塗布乾燥されて、シート状の含親水性媒体粘着層が形成される。
【0032】
本発明においては、含親水性媒体粘着層の厚みは、50〜500μmであることが好ましい。
また、含親水性媒体粘着層は適度な量の親水性媒体を含有していることが必要であるが、例えば、50%〜70%の含水率であることが好ましく、60〜65%の含水率であることが更に好ましい。
【0033】
図1の(a)〜(c)に示す実施形態においては、外層1、支持体3及び含親水性媒体粘着層4をこの順に有する積層体を2つ折りにしたものが、外層1の外から熱溶着によって熱溶着部2が形成される。熱溶着の方法としては、ヒートシール、高周波ウェルダー等による方法を用いることができるがこれらに限定されるものではない。図1の(a)〜(c)に示す実施形態では、熱溶着部2は外層1と支持体3との積層部分が支持体3同士を溶融接着させた状態でシールされている。したがって、熱溶着部2は、熱溶着した後、引き剥がす等の物理的作業によって容易に剥離できることが好ましく、このような機能を発揮できるように、支持体3の材料を選択したり、熱溶着の方法を選択したり、熱溶着の温度や圧力等の条件を設定することが好ましい。
【0034】
本実施形態では熱溶着部2によって密閉された袋体が形成されており、含親水性媒体粘着層4はこの袋体の内部に封じ込められている。この袋体の外層として水分透過性が低い材料を用いれば、この袋体は密閉されているので、含親水性媒体粘着層4に水等の親水性媒体が含浸させられていても、袋体の外部に漏れることがないし、かつ、水等の親水性媒体を適量、使用時まで保持することができる。
【0035】
使用に際しては、この袋体の熱溶着部2の外側のつまみ状の部分6を、溶融接着させた支持体同士を引き剥がすように上下に押し広げて熱溶着部2を破断させる。すなわちシート状粘着材包装体をピールオープンして広げることができ、この状態を図1の(c)に示す。ピールオープンしたシート状粘着材包装体の含親水性媒体粘着層を貼付部位に当てて貼付する。図1の(c)において、含親水性媒体粘着層4は、上端縁のほぼ中央に山型マーク7が形成されており、例えば鼻等に貼付する際には、鼻の付け根、眉間の下に位置するように山型マーク7を合わせれば、容易にシート状粘着材包装体の中心を鼻筋に合わせて貼着することができる。また、上端縁の山型マーク7の両脇には谷型マーク8が中央線に対して左右対称な位置に設けられており、鼻の高さ等の顔の凹凸を考慮した設計となっている。一般的に、鼻部の貼付に適した形状に予め裁断されていたとしても、粘着材の中心を鼻筋に合わせて貼付することは困難で、左右どちらかに偏って貼付されてしまうことがあるが、このようにシート状粘着材包装体に貼付位置を決めるための目安となるマークが付されていると、貼付部位への位置決めを容易に行うことができる。なお、位置決めマークの形状、大きさ等は、ここに示したものに限定されるものではなく、例えば、スリット、クサビ状の切れ込み等であってもよく、また、マークが付される場所も上端縁に限定されるものではなく、下端縁でもよい。
【0036】
本発明においては、支持体3が外層1の全面を覆うようには積層されていなくてもよい。すなわち、外層1の熱溶着部2の領域よりも内側部分に支持体を積層することによって、2つ折りにした際に端縁で接触する外層同士を熱溶着させることができる。このように熱溶着部に支持体が介在してこないならば、支持体3を構成する材料として熱溶着不可能な材料でも使用することができる。このような構成のシート状粘着材包装体の断面図を図2に示す。図2において、熱溶着部2は二つ折りにして重ねられた外層1が溶着された部分であり、支持体3は熱溶着部2で密閉された袋体の内部に納められている。支持体3と熱溶着部2との間には空間5'を有していてもよい。また、含親水性媒体粘着層4は支持体3の面上に形成されており、含親水性媒体粘着層4と支持体3との間には空間5が形成されていてもよい。図2に示すシート状粘着材包装体では、外層1は熱溶着した後、剥離可能であることが好ましく、例えば、接触する外層同士の間に、溶着可能で再剥離可能な材料を挟み込んだり、剥離性を付与するような物質を塗布したり、剥離を可能にする表面形状を外層の接触部位に付してもよいし、あるいは、熱溶着の手段や条件等を適当に設定することによって再剥離機能を付与してもよい。
【0037】
図2に示すシート状粘着材包装体では、外層の支持体との接着面に剥離処理を施しておけば、使用に際しピールオープンした後、含親水性媒体粘着層を有する支持体を外層から剥がして、これを皮膚等に貼着することができる。シート状粘着材包装体をこの形態で使用する場合には、支持体の形状を、例えば目と鼻部分を貫通孔にする等、適宜設計することにより、顔面全体を覆うような形状にすることも可能である。また、シート状粘着材包装体の支持体として透湿性のある材料を使用すれば、皮膚呼吸を妨げることがない。さらにまた、含親水性媒体粘着層に栄養成分を含ませれば、顔に潤い等を与える化粧シートとして使用することもできる。
【0038】
本発明のシート状粘着材包装体は、上述の形状等に限定されるものではなく、貼付部位等を考慮して、種々の形状に設計することができる。すなわち、鼻、額、顎、顔全体等に使用することができるだけでなく、肘、膝等の他の身体の部位等にも使用可能であり、形状等は適宜設計されることが好ましい。
【0039】
本発明のシート状粘着材包装体は、例えば、支持体と外層との積層体の支持体面上に、適当な含水率に調整された湿潤粘着性組成物を適当なパターンに塗布し、そののち、これを二つ折りにし、端縁に沿って熱溶着させることにより形成することができる。
【0040】
本発明のシート状粘着材包装体は、必要量の親水性媒体が含まれた状態で保存されているので、予め貼付部位を水等で濡らす必要がなく、使用時にピールオフした後そのままシート状粘着材包装体を貼付部位に貼ることができる。また、本発明のシート状粘着材包装体は必要量の親水性媒体が含まれているので、使用者による個人差を生じることなく、用途に最適な効果が有効に発揮される。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。
【0042】
(実施例1)
水溶性高分子として、重量平均分子量が120万のポリビニルピロリドンと重量平均分子量が45万のポリビニルピロリドンとを重量比で40:60となるように混合したものを使用した。このポリビニルピロリドン100重量部に対し、無水珪酸60重量部及びグリセリン15重量部を精製水143重量部に入れ、攪拌し、溶解、分散させて湿潤粘着性組成物を分散した水溶液を作製した。
【0043】
得られた湿潤粘着性組成物を分散した水溶液を、ポリエステルフィルムとスパンレースポリエステル不織布(坪量40g/m)との積層シートのスパンレースポリエステル不織布上に、110g/mになるように所定形状にパターン状に塗布し、シート状粘着材を作製した。ただし、シート状粘着材の端縁部には湿潤粘着性組成物を用いてなる含親水性媒体粘着層は設けられていなかった。このシート状粘着材を半分に折り曲げ、その周囲を外層側からヒートシールを行って袋体を形成し、図1に示すようなシート状粘着材包装体を作製した。なお、含親水性媒体粘着層は袋体の内部に密閉保存されている。得られたシート状粘着材包装体における含親水性媒体粘着層の含水率は約55重量%であった。
【0044】
得られたシート状粘着材包装体は、含親水性媒体粘着層が内部に密閉保存されているので、保存中に水等の親水性媒体が袋体の外部に漏れたり、滲出することはなかった。
また、使用時にシート状粘着材包装体の縁のつまみ部分を手でもって、容易にピールオープンすることができた。このピールオープンした状態のシート状粘着材包装体の外層を剥離除去し、含親水性媒体粘着層の山型マークを貼付位置の目安として鼻の付け根の近くにのせ、貼着した。貼付後10〜20分間放置し、シート状粘着材包装体が乾燥した後、剥離して、含親水性媒体粘着層を肉眼で観察したところ、角栓が除去されていることが確認できた。本発明によれば、角栓除去に適した量の親水性媒体がシート状粘着材包装体に予め含まれており、この量が使用時まで保存されているので、ピールオープンした時には適度な親水性媒体を含む含親水性媒体粘着層を皮膚に貼着することができ、効果的に角栓を除去することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のシート状粘着材包装体は、角栓除去等に用いられる顔面用のシート状粘着材の分野において使用することができるが、これら以外の用途、例えば、栄養成分補給、保湿成分補給等に用いられるシート状粘着材として使用することができる。また、顔面以外の膝、肘、かかと等の人体の皮膚に貼付する粘着材分野においても使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るシート状粘着材包装体を示す図であり、(a)はその平面図、(b)は図1の(a)における線AA'の位置で切断したと仮定したときの断面図、(c)はピールオープン後の開いた状態の平面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るシート状粘着材包装体を示す断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 外層
2 熱溶着部
3 支持体
4 含親水性媒体粘着層
5、5' 空間
6 つまみ状の部分
7 山型マーク
8 谷型マーク



【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の一方の面に含親水性媒体粘着層を有し、該支持体の他方の面が熱溶着可能な外層で覆われており、該含親水性媒体粘着層を内側面として屈曲させ、該外層の端縁部分が熱溶着によって封緘されて袋体を形成し、該袋体の内部に、該含親水性媒体粘着層が収納されていることを特徴とするシート状粘着材包装体。
【請求項2】
前記支持体が、熱溶着可能な不織布からなることを特徴とする請求項1記載のシート状粘着材包装体。
【請求項3】
前記含親水性媒体粘着層が、水溶性高分子、及び、該水溶性高分子と相溶可能な可塑剤とを含有することを特徴とする請求項1又は2記載のシート状粘着材包装体。
【請求項4】
前記水溶性高分子が、ポリビニルピロリドン及びビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種類であることを特徴とする請求項3記載の湿潤粘着性組成物。
【請求項5】
前記含親水性媒体粘着層がさらに充填材を含有することを特徴とする請求項3又は4記載のシート状粘着材包装体。
【請求項6】
前記外層が、熱溶着可能なプラスチックからなることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載のシート状粘着材包装体。
【請求項7】
前記含親水性媒体粘着層は、線対象の中央位置にマークが付されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載のシート状粘着材包装体。
【請求項8】
前記マークは、前記含親水性媒体粘着層の上端縁の一部を山型に形成したものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載のシート状粘着材包装体。
【請求項9】
前記外層面に、中央線が印刷されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載のシート状粘着材包装体。
【請求項10】
熱溶着可能なプラスチック材料からなる外層と、支持体とを積層し、該支持体の面上に含親水性媒体粘着層を形成した後、含親水性媒体粘着層が内側で対面するように2つ折りにし、該含親水性媒体粘着層の周囲に沿って熱溶着させることにより封緘して袋体を形成することを特徴とするシート状粘着材包装体の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−89382(P2006−89382A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−273187(P2004−273187)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】