説明

シート給送装置及び画像形成装置

【課題】高速動作時であっても吸着ベルトの吸着時間の確保、吸着距離が安定するシート給送装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】積載されたシート束2の上面に対向配置された2つの張架ローラ13A,13Bで張架され回転可能な吸着ベルト13及び該吸着ベルト表面を帯電させる帯電ローラ14とを備える吸着分離ユニット12を有し、吸着分離ユニット12は、駆動ギア22に噛合するギア21を介してシート束の上面に接離する方向に回動可能に装着されており、シート束2の上面の吸着分離ユニット12は吸着ベルト13が付勢部材によってシート束2の上面に弾性的に付勢されて接しており、吸着分離ユニット12に対しシート束2の上面から離れる方向への弾性力を付勢する引っ張りスプリング26を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堆積載置された原稿や記録紙等のシートを分離給送するシート給送装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積載された原稿や記録紙等のシートを給送時に分離する方法としては、従来、摩擦力を用いた分離方法やエアー吸引による分離方法等が知られている。前者の摩擦力を用いた方法では、給送ローラにゴム材料等を用いるため、磨耗などの経時変化によって摩擦力が変化し、分離性能が低下する。また、摩擦係数が変化(バラツキ)するシートや、摩擦係数の異なるシートを同時に分離する場合には、複数枚を同時に給送する重送や、積載シートからシートを分離できないといった分離不良が発生することがある。さらに、シートの分離時に圧力を加えて分離する構成のため、シートにシワやスジが発生する場合や、汚れる場合がある。
【0003】
他方、後者のエアー吸引を用いた分離方法は、ローラやシートの摩擦係数に依存しない非摩擦分離方式ではあるが、エアー吸引ブロワやエアーダクトを必要とするため、装置が大型化すると共に、エアー吸引音が騒音となり、オフィスで使用する装置としては不向きのものである。
【0004】
そこで、非摩擦分離方式の一種で、誘電体ベルトに電界を形成し、これをシートに接触させて吸着し、分離する静電吸着分離方式が特許文献1に記載されている。かかる静電吸着分離方式は、複数のローラに巻き掛けられた無端誘電体ベルトに交番電荷を付与した吸着ベルト、該吸着ベルトをシートに対して揺動または、平行移動させて近接または接触させ、最上シートを吸着ベルトに吸着後、この吸着ベルトを積載シート束から離間する方向に移動させることで分離する方式である。
【0005】
この静電吸着分離方式を用いたシート給送装置は、上記した分離方法のものと比べ磨耗、シートの痛め、騒音の発生等が抑えられ、しかも、装置の小型化を達成し得る点で優れている。
【0006】
次に、静電吸着分離方式を用いたシート給送装置の作動について説明する。
A.吸着ベルトが降下して積層シート群の最上面シートが吸着ベルト面へ接触する。
B.所定時間接触状態にて待機することで最上面シートをベルト面へ吸着する。
C.最上面シートを吸着保持した状態にて吸着ベルトが上昇し、吸着ベルトがシート束と離間した給送位置へ移動する。
D.吸着ベルトを保持する張架ローラを回転させてシートを給送する。
E.シート給送後、連続通紙の場合はAへ戻る。
【0007】
提案されている吸着ベルトを用いた分離機構においては一連の動作において上記Cの「ベルトの移動」にて静電ベルトに吸着したシートをシート束から離間することで、分離性を確保している。
【0008】
この静電吸着分離方式において、該無端誘電体ベルトをシート束から離間する方向に移動させる手段としては、特許文献2で用いられているようにソレノイドを用いて吸着ベルトを移動させる方法や、特許文献3で用いられているような吸着ベルトを設置した吸着分離ユニットに設置されたギア部と噛合したギアを、モータによってユニットを回転軸周りに回転動作させる方式が提案されている。
【0009】
吸着ベルトを用いた静電吸着分離方式にて分離給送を行うとき、シートに対するベルト表面の接触面積、接触距離といった接触状態が重要であり、接触面をベルト面全域になるよう、接触距離を0になるよう近づけることで吸着性能は最適となる。また、接触する吸着の時間(吸着時間)が長い程吸着力は増加するため、接触状態にて吸着時間を確保することも安定した吸着分離動作を行う際には重要となる。
【0010】
一方、給送装置の生産性を向上させるため、この分離給送を高速に動作させようとしたとき、特許文献2のソレノイドを用いた方法ではソレノイドの応答速度の制約を受けるために高速な動作を実現するのには不向きであるが、高速な動作を行うことを考えたとき特許文献3に記載のギア部と噛合したギアにてユニットを、モータによって回転軸周りに回転動作させる方式(以下「ギア方式」と呼称する)が有利である。ギア方式では吸着分離ユニットに設置されたギア部とステッピングモータ、DCモータといった駆動手段から連結されたギアとの噛合いにて吸着分離ユニットの位置は保持されるために、モータ回転量を調整することで回転軸上においてのユニット位置が決まり、介してシートに対する吸着ベルト位置も決まる。
【0011】
しかし、シート等のシート材では表面の凹凸や波うちなどにより平面性はばらつきがあり、触れただけではこれら、接触状態を確保することは困難であり、解決のためには、シート束に対してある程度圧力を掛けて吸着ベルトとシート束を接触させる必要がある。接触圧を考えたとき、ギア方式では、ベルト位置がギアの噛合いにより固定されるが故に、吸着性能を発揮するための接触圧に設定することは困難である。そのため、吸着ベルトをシート上面に対して接触した状態で停止させるためには精密なユニットの駆動制御を要する。また、連続的に給送を行う場合、通紙したシート枚数に応じて、吸着する際のユニット停止位置は異なってくる。駆動制御にて具体的に実現する方法としては、DCモータとシート上面位置を検知する検知センサ、モータの回転量を検知するエンコーダ、検知情報を演算しフィードバックを行う制御装置等が必要となる。
【0012】
ステッピングモータを用いると、これら構成は簡易に実現可能ではあるが、ステップ角により停止位置が厳密には離散的であるため、接触状態を一定にすることができない。そこで、本願出願人は公知ではないが、吸着ベルトをシート束の上面に弾性的に付勢する付勢部材を用いる手段を提案している。
【0013】
こうした条件下で、高速動作のためギア式の動作機構が提案されているが、実際に高速動作を行う場合、ユニット自体の部品弾性や前記弾性的な付勢部材等により、吸着位置での停止時に吸着ベルトが振動してしまうことが起こり得る。すると、吸着時間の確保、吸着距離の安定が確保できずシートの吸着性が低下してしまうという問題が起こり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記した従来の問題を解消し、高速動作時であっても吸着ベルトの吸着時間の確保、吸着距離が安定するシート給送装置及び画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するため、本発明は、積載されたシート束の上面に対向配置された2つの張架ローラで張架され回転可能な吸着ベルト及び該吸着ベルト表面を帯電させる帯電手段とを備える吸着分離ユニットを有し、該吸着分離ユニットは、駆動ギアに噛合するギアを介して前記シート束の上面に接離する方向に回動可能に装着されており、前記シート束の上面の吸着分離ユニットは吸着ベルトが付勢部材によって前記シート束の上面に弾性的に付勢されて接しているシート給送装置において、前記吸着分離ユニットに対し前記シート束の上面から離れる方向への弾性力を付勢する弾性付勢手段を設けたことを特徴とするシート給送装置を提案する。
【0016】
なお、本発明は、前記吸着分離ユニットの前記シート束の上面に対する接離動作は、吸着ベルトが積載されたシート束上面と接触する吸着位置と最上面シートを吸着ベルトにより吸着後にシート束から離間し給送を開始する給送位置を含む領域での前記ギアの回転軸の中心とする揺動動作であり、前記弾性付勢手段は給送位置から吸着位置との間にて弾性力の有無が切り替わると有利である。
【0017】
さらに、本発明は、前記弾性付勢手段が前記吸着分離ユニットが前記給送位置のとき、該吸着分離ユニットへ弾性付勢力がなくなると有利である。
さらにまた、本発明は、前記弾性付勢手段が前記吸着分離ユニットを上方へ引っ張る弾性部材を備えると有利である。
【0018】
さらにまた、本発明は、前記弾性付勢手段が前記上方へ引っ張る弾性部材と該弾性部材に接続されるひも状の剛体から構成されると有利である。
さらにまた、本発明は、前記弾性付勢手段が前記吸着分離ユニットを上方へ押す弾性部材を備えると有利である。
【0019】
また、上記の目的を達成するため、本発明は、請求項1ないし6の何れかに記載のシート給送装置を搭載することを特徴とする画像形成装置を提案する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、吸着分離ユニットに対しシート束の上面から離れる方向への弾性力を付勢する弾性付勢手段を設けたことにより吸着分離ユニットへ弾性的な保持力を加わることで、振動が発生した際の減衰を早めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るシート給送装置を備える画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】そのシート給送装置の概略構成を示す側面図である。
【図3】シート給送装置の外観斜視図である。
【図4】(A)、(B)は、本発明の一実施形態を示す説明図である。
【図5】(A)、(B)は、本発明の他の実施形態を示す説明図である。
【図6】帯電手段の一例を示す斜視図である。
【図7】帯電手段の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を適用した画像形成装置として電子写真方式の複写機を用いた一実施形態について説明する。まず、複写機の全体構成及び動作について説明する。
図1は、本実施形態に係る複写機の概略構成図である。
【0023】
複写機の画像形成手段たる画像形成部30として、潜像担持体として感光体31のまわりに、帯電装置32、現像装置34、転写装置35、感光体クリーニング装置36等を備えている。また、画像形成部30は、感光体31にレーザー光33を照射するための光書込ユニット(不図示)、シート上のトナー画像を定着する定着装置37等を備えている。画像形成部30の上方には、スキャナが設けられている、画像形成部30の下方には、画像形成部で形成された画像を転写するためのシートを積載して収容し、順次、画像形成部30に供給するよう給送するシート給送装置1を備えている。
【0024】
上記構成の画像形成部30では、感光体31の回転とともに、まず帯電装置32で感光体31の表面を一様に帯電する。次いで、画像データに基づく光書込ユニット(不図示)からのレーザー光33を照射して感光体31上に静電潜像を形成する。その後、現像装置34によりトナーを付着させ静電潜像を可視像化することで感光体31上にトナー画像を形成する。一方、シート給送装置1は、シートを1枚つつ分離して給送して、シート給送経路44に入れ、シート給送経路44の給送ローラ45で給送してレジストローラ46に突き当てて止める。そして、画像形成部30のトナー画像形成のタイミングに合わせて、レジストローラ46に突き当てて止めたシートを感光体31と転写装置35とが対向する転写部に送り出す。転写部では、感光体31上のトナー画像は供給されたシートに転写される。トナー画像が転写されたシートは、定着装置37によりトナー画像を定着後、機外へ排出される。一方、トナー画像転写後の感光体31の表面は感光体クリーニング装置36で残留トナーを除去して清掃して再度の画像形成に備える。
【0025】
次に、本実施形態の複写機の特徴部であるシート給送装置1について説明する。
図2はシート給送装置1の概略構成を示す側面図、図3はシート給送装置の外観斜視図である。
【0026】
図2及び図3に示すようにシート給送装置1は、シート収容部11と、シート収容部11の上方に吸着分離ユニット12とを備えている。
シート収容部11は、積層された複数枚のシート束2を積載する底板19を有している、シート収容部11の底部には、底板19を支持する支持部材18が回動自在に取り付けられている。
【0027】
底板19の移動は、以下のように行う。シート収容部11には、シート束2の最上シート2aが、所定の位置に来たことを検知する不図示のシート検知手段を有している。支持部材18を不図示の駆動モータにより図中反時計まわりに回動させ、底板19を上昇させると、底板19に積載されたシート束2が上昇し、不図示のシート検出手段が最上シート2aを検出する。不図示のシート検出手段がシート束の最上シート2aが、所定の位置にきたことを検知したら支持部材18の回動を停止する。
【0028】
吸着分離ユニット12は、シート搬送方向下流側にある駆動ローラ13Aとそれより上流側にある従動ローラ13Bの2つの張架ローラに張架される吸着ベルト13を備えている。従動ローラ13Bは、不図示のスプリングにて図中左方向へ付勢されており、吸着ベルト13に張力をかけている。吸着ベルト13は10Ωcm以上の抵抗を有する誘電体で構成されており、例えば、厚さ100μm程度のポリエチレンテレフタレート等のフィルムで構成されている。また、駆動ローラ13Aは抵抗値が10Ωcmの導電性ゴム層が表面に設けられ、従動ローラ13Bは金属ローラである。駆動ローラ13A及び従動ローラ13Bはともに接地されている。駆動ローラ13Aは吸着ベルト13からシートを曲率により分離するのに適した小径にされている。また、駆動ローラ13Aは、不図示の駆動モータにより電磁クラッチを介して給紙信号に応じて間欠的に駆動されるよう構成されている。駆動ローラ13A、従動ローラ13Bは、吸着分離ユニット12の揺動ブラケット15の一端側に回転自在に支持されている。
【0029】
揺動ブラケット15の他端側は、回転軸20に固定されており、駆動が伝達される駆動ローラ13Aは揺動ブラケット15に保持され、軸位置もユニットに対して固定される。駆動ローラ13Aはベルトからシートを曲率により分離するのに適した小径にされている。吸着ベルト13において駆動ローラ13Aを回転中心として、従動ローラ13Bは揺動ブラケッ15に設置される従動ローラ軸の突き当て部の範囲内にて回動自由となっている。ユニットの回転により駆動ローラ13Aがシート束2に接触した際、この従動ローラ13Bの自由回動動作により駆動ローラの停止位置によらず、ベルト13の下面がシート束上面へ面接触する。
【0030】
揺動ブラケット15は回転軸20を中心に回転可能に構成されており、揺動ブラケッ15に固定される構成にて回転軸20と同一の回転中心を持つユニット側のギア21が固定されている。ユニット側ギア21はユニット駆動モータ23に駆動連結された駆動ギア22と噛合い、ユニット駆動モータ23の駆動により、吸着分離ユニット12が後述する吸着位置と給送位置の間を揺動される。なお、ユニット側のギア21は揺動ブラケット15と同一部品として構成することも可能であり、またギア21はユニット回動領域にて駆動ギア22と噛合すればよいので半月ギア形状でもかまわない。また、本発明では上記したギア方式を採用しているため、高速動作に対して有利である。
【0031】
吸着分離ユニット12は、吸着ベルト13の駆動ローラ13Aに巻き付いた部分と当接する帯電手段たる帯電ローラ14を有している。帯電ローラ14は、交流電源16に接続されており、吸着ベルト13のおもて面に交番電荷を付与して、吸着ベルト13を帯電させる。
【0032】
帯電ローラ14は、吸着分離ユニット12に回転自在に支持され、吸着ベルト13に対する位置が一意的に決定されている。また、吸着ベルト13の両側端縁のうら面には寄止め用のリブが設けられており、張架ローラ13A、13Bの両側端面と係合し、吸着ベルト13の寄りを防止している。駆動ローラ13Aは、図示していない駆動モータにより電磁クラッチを介して給紙信号に応じて間欠的に駆動されるように構成されている。
【0033】
次に、この吸着分離ユニット12を用いたシート給送装置動作について説明する。
吸着分離ユニット12は通常、図4(A)の給送位置にて待機しており、給紙信号が入ると、電磁クラッチが入り、駆動ローラ13Aが回転駆動され、吸着ベルト13を無端移動させる。次に、無端移動する吸着ベルト13に帯電ローラ14を介して交流電源16より交番電圧を印加し、吸着ベルト13の表面に交流電源周波数と吸着ベルト13の周動速度に応じたピッチ(ピッチは5mm〜15mm程度とするのがよい)で交番する電荷パターンを形成する。電源16は交流の他直流を高低交互の電位に変化させたものでもよく、矩形波、正弦波などが考えられる。本実施形態では、吸着ベルト13の表面に対して4KVの振幅を持った矩形波を印加している。
【0034】
上記したように、吸着ベルト13に電荷パターンを形成したら、支持部材18を回転させ底板19を上昇させる。また、これと前後して、吸着分離ユニット12をユニット駆動モータ23の駆動により、揺動ブラケット15を時計方向に回動して吸着ベルト13を図4(B)の吸着位置へ移動させ、吸着ベルト13がシート束2の最上シート2aと当接する。このように、吸着ベルト13が最上シート2aと当接すると、誘電体であるシートには吸着ベルト13の表面の電荷パターンにより形成される不平等電界により、Maxwellの応力が働き、シート束2の最上シート2aが吸着ベルト13に吸着して保持される。そして、最上シート2aは吸着ベルト13の走行に伴い曲率分離され給紙方向へ繰り出され、ガイド部材10、給送ローラ9により画像形成部へ給送される。電荷パターンによるシート吸着力は最上シート2aにのみ作用し、2枚目のシート以下の紙には作用しない。本給紙方式ではピックアップ手段とシートとの間の摩擦力を利用しないので、吸着ベルト13とシート束2との接触圧は充分小さくすることができるので、摩擦による重送が発生することはない。
【0035】
給送ローラ対9と吸着ベルト13の線速は同速に設定されており、給送ローラ9がタイミングを取って間欠駆動されているような場合は吸着ベルト13も間欠駆動されるように制御される。吸着ベルト13はシート2aの後端が従動ローラ13Bの対向位置に達する前にシート束1より離間され、2枚目のシートSが吸着ベルト13に吸着されることがないようにしている。また、駆動ローラ13Aの部分でのベルト13からのシートの分離は曲率分離による。
【0036】
なお、本実施形態では、帯電手段として図2及び図6に示すように、帯電ローラ14を用いているが、図7に示すように、ブレード状の帯電部材40を用いてもよい。ブレード状の帯電部材40は、ローラ状の帯電部材(帯電ローラ14)に比べ、ピッチ幅の小さい電荷パターンを形成することが可能となり、積載されたシート材1枚目に対する吸着力増加が早く、また、2枚目以降に作用する吸着力の減少が早くなる為、分離動作に要する時間短縮が図れる点で有利である。
【0037】
吸着ベルト13をシート束2の上面に弾性的に付勢する付勢部材としては、図2及び図3に示すように吸着ベルト13を張架する2つの張架ローラ13A,13Bの軸受けはシート押し付け方向に移動自由度を持つようにユニットのブラケットの固定穴25を長穴形状にした上で、吸着ベルト13をシート束2に押し付ける方向に弾性力を発揮する付勢部材としての圧縮スプリング24をユニットのブラケット15と軸受け間に備えることで実現できる。
【0038】
このように構成されたシート給送装置10では、吸着ベルト13の吸着時の停止位置は吸着ベルト13が圧縮スプリング24にてシート束2に対して弾性的に当接する必要があるため、吸着位置よりも弾性的な付勢部材がたわむ分だけ多分に回動動作を行う。そのため、停止位置の前に吸着ベルト13とシート束2の最上シート2a面が接触するために衝突が起こり振動の主な原因となる。この振動の幅は、吸着分離ユニット12の回転中心である回転軸20から衝突が起こる吸着ベルト13位置までの部品弾性の積上りと、ユニット側ギア21と駆動ギア22の噛合いの隙間により発生する。
【0039】
そこで、本発明では図4(B)に示すように、吸着位置の吸着分離ユニット12に対してシート束2の上面から離れる方向への弾性力を付勢する弾性付勢手段としての引っ張りスプリング26を設けている。この引っ張りスプリング26の長さは図4(A)に示す給送位置においても自由長さよりも伸びた張力の掛かる長さと固定位置の関係としておく。また、最も長さが長くなり張力が大きくなる吸着位置に移動する際、モータの負荷が最も大きくなるため、吸着位置においてもモータが脱調しない範囲になるよう引っ張りスプリング26の強さを設定している。
【0040】
このように構成することによって、弾性付勢手段としての引っ張りスプリング26により吸着分離ユニット12へ弾性的な保持力を加えることにより、上記した隙間による自由度を無くし、また振動が発生した際の減衰を早めることができる。なお、本実施形態では弾性付勢手段として引っ張りスプリング26を設けているが、弾性付勢手段は吸着位置の吸着分離ユニット12に対してシート束2の上面から離れる方向への弾性力を付勢する押圧スプリング26であってもよい。
【0041】
図5(A)、(B)は、本発明の他の実施形態を示す説明図で、本実施形態では図4の構成における引っ張りスプリング26の位置に、引っ張りスプリング26よりも自由長さの短い引っ張りスプリング26Aとワイヤ27の連結されたものが用いられている。このとき、引っ張りスプリング26Aとワイヤ27の長さは、「ワイヤの長さ」+「引張りバネの自由長」>「固定部〜ユニット固定部(給送位置)の距離」
「ワイヤの長さ」+「引張りバネの自由長」<「固定部〜ユニット固定部(吸着位置)の距離」
を満足するように設定されている。
【0042】
したがって、図5(A)に示す給送位置では引っ張りスプリング26Aは自由長さ、ワイヤ27は弛んだ状態となり、張力は掛からない。対して、該位置から下降した図5(B)に示す吸着位置ではワイヤ27が張り、引っ張りスプリング26Aも伸びることで張力が掛かっており、吸着分離ユニット12に対して振動を抑制する付勢力を掛けている。
【符号の説明】
【0043】
1 シート給送装置
2 シート束
12 吸着分離ユニット
13 吸着ベルト
13A 駆動ローラ
13B 従動ローラ
14 帯電ローラ
15 揺動ブラケット
20 回転軸
21 ユニット側ギア
22 駆動ギア
23 ユニット駆動モータ
24 圧縮スプリング
26,26A 引っ張りスプリング
27 ワイヤ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0044】
【特許文献1】特開平05−139548号公報
【特許文献2】特開2003−237962号公報
【特許文献3】特開2010−126317号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積載されたシート束の上面に対向配置された2つの張架ローラで張架され回転可能な吸着ベルト及び該吸着ベルト表面を帯電させる帯電手段とを備える吸着分離ユニットを有し、
該吸着分離ユニットは、駆動ギアに噛合するギアを介して前記シート束の上面に接離する方向に回動可能に装着されており、
前記シート束の上面の吸着分離ユニットは吸着ベルトが付勢部材によって前記シート束の上面に弾性的に付勢されて接しているシート給送装置において、
前記吸着分離ユニットに対し前記シート束の上面から離れる方向への弾性力を付勢する弾性付勢手段を設けたことを特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシート給送装置において、前記吸着分離ユニットの前記シート束の上面に対する接離動作は、吸着ベルトが積載されたシート束上面と接触する吸着位置と最上面シートを吸着ベルトにより吸着後にシート束から離間し給送を開始する給送位置を含む領域での前記ギアの回転軸の中心とする揺動動作であり、前記弾性付勢手段は給送位置から吸着位置との間にて弾性力の有無が切り替わることを特徴とするシート給送装置。
【請求項3】
請求項2に記載のシート給送装置において、前記弾性付勢手段が前記吸着分離ユニットが前記給送位置のとき、該吸着分離ユニットへ弾性付勢力がなくなるることを特徴とするシート給送装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れかに記載のシート給送装置において、前記弾性付勢手段が前記吸着分離ユニットを上方へ引っ張る弾性部材を備えることを特徴とするシート給送装置。
【請求項5】
請求項4に記載のシート給送装置において、前記弾性付勢手段が前記上方へ引っ張る弾性部材と該弾性部材に接続されるひも状の剛体から構成されることを特徴とするシート給送装置。
【請求項6】
請求項1ないし3の何れかに記載のシート給送装置において、前記弾性付勢手段が前記吸着分離ユニットを上方へ押す弾性部材を備えることを特徴とするシート給送装置。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れかに記載のシート給送装置を搭載することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−218909(P2012−218909A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88102(P2011−88102)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】