説明

シート給送装置及び画像形成装置

【課題】薄いシートでも確実に分離して給送することのできるシート給送装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】トレイ12の上方の、シートSの位置を規制する後端規制板13と下流側エア吹き付け部152によって吹き付けられるエアにより浮上した最上位シートSaを搬送する吸着搬送部50との間に、エアにより浮上した最上位シートSaの上方への移動を規制する浮上防止部材30を昇降可能に設ける。そして、エアを吹き付けてシートを浮上させる前に、吸着搬送部50を最上位シートSaの高さ位置より高く、吸着搬送部50による給紙搬送面より低い所定の規制位置に移動させることにより、エアによるシートの撓みに伴う後端側へのシートの移動を抑えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート給送装置及び画像形成装置に関し、特にシートにエアを吹き付けることによりシートを分離給送するシート給送装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ、複写機等の画像形成装置においては、複数のシートが収納されたシート収納部からシートを1枚ずつ給送するシート給送装置を備えている。このようなシート給送装置として、トレイ上に積載されたシート束の上部にエアを吹き付けることにより、シートを捌いて給送する、あるいはシートを複数枚浮上させ、上方に配置された吸着搬送ベルトにシートを吸着させて給送するエア給紙方式のものがある。
【0003】
このようなシート給送装置では、トレイ上に積載されたシート束の後端を規制する後端規制部材と、後端規制部材に設けられ、上下方向に移動可能な後端押圧部材と、を備えている。この後端押圧部材は、吹き付けられたエアにより浮上した状態で後端規制部材により後端位置が規制されたシートの後端部を上方から一定の力で押圧するものである。
【0004】
ここで、このような後端押圧部材を設けることにより、シート先端側に位置する先端分離ダクトから吹き付けられるエアによって最上位シートが浮上しても、シートの後端部は後端押圧部材により上方から押え付けられる。この結果、最上位シートの幅方向の中央部のみが2枚目のシートから分離すると共に、例えば分離した最上位シートが吸着搬送ベルトの負圧により吸着される際、最上位シートと2枚目のシートとの間には後端部が塞がれた空隙部が形成される。
【0005】
そして、このような空隙部が形成されることにより、空隙部を流れるエアが最上位シートと2枚目のシートの間の全域にわたって流れる。この結果、最上位シートと2枚目のシートとをシート先端から後端まで効果的に分離することができ、シートの分離性が向上する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−94594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来のシート給送装置において、シートは先端から捌きエアが吹き付けられると、吹き出し方向下流側に押されるが、後端部が後端規制板により規制されると共に後端押圧部材により上方から押圧されている。このため、剛性(剛度)の小さいシート、例えば坪量が50g/m以下の薄紙と呼ばれる薄いシートは、先端から捌きエアが吹き付けられると浮上しながら先端が押されて後方にずれてしまう。
【0008】
これは、シートの剛性が小さいため、後端が規制された状態でシートの先端がエアで押されると、シートの中央部分が膨らんでしまうためである。この状態を図14に示す。トレイ12上に積載されているシートSは、後端規制板13に設けられている後端押圧部材17により規制されている。このトレイ12に積載されているシートSの前端にエア吹き付け部152によりC方向及びD方向から捌きエア及び分離エアが吹き付けられると、シートの剛性が小さい場合には浮上する上位のシートの中央部分が膨らんでしまう。
【0009】
ここで、このように中央部分が膨らんだ場合、上位のシートが後方へのずれてしまう。このとき、最上位シートSaの次のシートSbが最上位シートSaよりも後方へのずれ量が少ない場合には、次のシートSbの先端が吸着搬送ベルト21の吸引部分に露出してしまう。この状態で、吸着搬送ベルト21がシートの吸着搬送を行うと、吸着搬送ベルト21は最上位シートSaと共に次のシートSbも吸引して搬送してしまいシートの重送を起こす。
【0010】
そして、このようなシートの重送が発生すると、シートが斜行したり、シートの角折れといった給送不良が発生すると共に、重送した状態でシートが画像形成部まで送られると画像不良を発生する。つまり、エアを吹き付けてシートを分離して給送する際、特にシートが薄いシートの場合には、確実に分離して給送することができないおそれがある。なお、このような不具合は、シート束の側部からエアを吹き付けることによりシートを捌いた後、給送ローラによりシートを給送するようにしたシート給送装置においても発生する。
【0011】
そこで、本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、薄いシートでも確実に分離して給送することのできるシート給送装置及び画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、シートを支持する昇降可能なトレイと、前記トレイに支持されたシートのシート給送方向の下流端部からシート給送方向の上流側に向けてエアを吹き付けるエア吹き付け部と、エアが吹き付けられたシートのうちの最上位シートを搬送するシート給送部と、を備えたシート給送装置において、シートのシート給送方向の上流端が当接し、シートの位置を規制する後端規制部と、前記トレイの上方の、前記後端規制部と前記シート給送部との間に昇降可能に設けられ、吹き付けられるエアにより前記後端規制部に押し付けられた最上位シートの上方への膨らみを規制する膨らみ規制部と、前記膨らみ規制部を昇降させる昇降部と、前記昇降部を制御し、前記エア吹き付け部によりエアを吹き付ける前に、前記膨らみ規制部を最上位シートの高さ位置より高く、前記シート給送部による給紙搬送面より低い所定の規制位置に移動させる制御部と、を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のように、最上位シートの高さ位置より高く、給送部による給紙搬送面より低い所定の規制位置に移動した膨らみ規制部材によってエアによるシートの撓みに伴う後端側への移動を抑えることにより、薄いシートでも確実に分離して給送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るシート給送装置を備えた画像形成装置の概略構成を示す図。
【図2】上記シート給送装置の構成を示す断面図。
【図3】上記シート給送装置に設けられた浮上防止部材の動作を示す図。
【図4】上記シート給送装置の制御ブロック図。
【図5】上記シート給送装置のシート給送動作を説明するフローチャート。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るシート給送装置の構成を示す断面図。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係るシート給送装置のシート給送動作を説明するフローチャート。
【図8】本発明の第4の実施の形態に係るシート給送装置の構成を示す断面図。
【図9】上記シート給送装置の制御ブロック図。
【図10】上記シート給送装置のシート給送動作を説明するフローチャート。
【図11】本発明の第5の実施の形態に係るシート給送装置の構成を示す断面図。
【図12】上記シート給送装置の制御ブロック図。
【図13】上記シート給送装置のシート給送動作を説明するフローチャート。
【図14】従来のシート給送装置の課題を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係るシート給送装置を備えた画像形成装置の概略構成図である。図1において、300Aは画像形成装置であり、この画像形成装置300Aは、画像形成装置本体(以下、装置本体という)300、シート給送ユニット301、シート処理装置304により構成される。そして、ユーザにより操作部4、あるいは不図示の外部ホストPCにて設定されたシート処理設定と、リーダ部303あるいは外部ホストPCより送られる画像情報に基づき、シートの給紙搬送、画像形成、ステイプル等の処理が実施される。
【0016】
シート給送ユニット301は、上下方向に配されたシート給送装置311を備えている。このシート給送装置311には、シート束を格納するシート収納部であるシート収納庫11と、シート収納庫11に格納されたシートを給送するシート給送部である吸着搬送部50が設けられている。ここで、本実施の形態では、吸着搬送部50は、エア給紙方式のものであり、シート給送動作の際には、シートを無端ベルトに吸着しながらシートを給送する。
【0017】
ここで、シート給送ユニット301は、装置本体300からのシート要求情報に従い、各シート収納庫11のシートを順次給紙搬送し、完了後に装置本体300へ準備完了を通知する。装置本体300は、シート給送ユニット301からの準備完了を受け、受渡し要求を通知する。シート給送ユニット301は、受渡し要求の通知ごとに、順次装置本体300へ1枚ずつシートを分離給送し、要求されたシート数を給送した後に動作を終了し、スタンバイ状態となる。
【0018】
なお、上部のシート給送装置311の吸着搬送部50により搬送されたシートは、上部搬送部317、合流搬送部319を経て装置本体300に給送される。また、下部のシート給送装置311の吸着搬送部50により搬送されたシートは下部搬送部318、合流搬送部319を経て装置本体300に給送される。なお、各搬送部317〜319には不図示の搬送用のステッピングモータが設けられており、それらモータを制御して各部の搬送ローラを回転させることでシートの給送を行っている。
【0019】
シート給送ユニット301の上面には、重送やジャム等による異常シートを強制排出するエスケープトレイ101が備えられている。102はエスケープトレイ101への排出シートの満載を検知するために設けられている満載検知センサである。また、シート給送ユニット301の各搬送経路上には不図示の搬送センサが複数設けられており、この搬送センサにより、各搬送経路をシートが通過するのを検知する。
【0020】
装置本体300は、シート給送ユニット301により給送されたシートに画像を形成するためのものであり、上面にはユーザが動作設定を行うための操作部4が設けられ、上部には原稿画像を読み取るためのリーダ部303が配置されている。また、この装置本体300は、感光体ドラム353、レーザスキャナユニット354、現像部352、中間転写ベルト355等を備えた画像形成部である作像部307と、定着部308と、反転搬送部309等を備えている。
【0021】
そして、装置本体300では、シート給送ユニット301からシートを受けとった後、シートを作像部307に案内する搬送パス391に設けられた各搬送部を制御してシート搬送を行う。そして、画像基準センサ305でのシート検知を起点として、作像部307にて受信した画像データに基づく画像形成動作を行う。なお、ジャムセンサ503が異常シートを検知すると、切換部材310を切り換えてシートを作像部307の手前でエスケープパス390に案内した後、排出部であるエスケープトレイ101へ排出する。
【0022】
ここで、画像形成動作の際は、画像基準センサ305がシートを検知すると、レーザスキャナユニット354を構成する不図示の半導体レーザの点灯、光量制御が実施されると共に、不図示のポリゴンミラーを回転制御するスキャナモータが制御される。これにより、画像データに基づいたレーザ光が感光体ドラム353に照射され、感光体ドラム353上に潜像画像が形成される。
【0023】
次に、現像部352において、トナーボトル351からトナーが給送されることにより感光体ドラム353上の潜像画像が現像され、現像されたトナー画像を中間転写ベルト355へ1次転写する。この後、中間転写ベルト355上に転写されたトナー画像をシートに2次転写することにより、シート上にトナー画像が形成される。なお、2次転写位置の直前にレジ制御部306が設けられている。そして、このレジ制御部306により、転写位置直前のシートに対してシートの持つ斜行の補正や、中間転写ベルト355に形成されたトナー画像とシート先端位置を微調整して合せるシート搬送制御を、シートを停止させることなく行っている。
【0024】
次に、2次転写後のシートは定着部308に搬送され、定着部308において熱と圧力とを加えられることによりトナーが溶融し、シート上に定着される。なお、定着後のシートは、裏面に継続して印字(画像形成)する又はシートの表裏を反転させる場合は反転搬送部309へ、印字終了であれば下流のシート処理装置304へ搬送される。そして、シート処理装置304は、装置本体300から排出された画像形成後のシートに対して、操作部4にてユーザにより設定された所望の処理(折り、ステイプル、穴あけ)を実施した後、成果物としてシートを排紙トレイ360へ順次出力する。
【0025】
図2は、シート給送ユニット301に設けられたシート給送装置311の構成を示す図である。シート収納庫11は複数のシートSが載置支持される昇降可能なトレイ12と、シートのシート給送方向上流端である後端に当接し、後端位置を規制する後端規制部を構成する後端規制板13とを備えている。さらに、シート収納庫11は、シートのシート給送方向の下流側端である先端を規制する先端規制板11aと、シートSのシート給送方向と直交する方向である幅方向の位置を規制する側端規制板14,16と、を備えている。
【0026】
なお、15は、シート収納庫11を引き出すときのガイドとなるスライドレールであり、シート収納庫11は、スライドレール15によりシート給送ユニット301から引き出し可能となっている。そして、シート収納庫11がシート給送ユニット301から引き出されたときにトレイ12が所定の位置まで下降することにより、シートの補充や交換等を行うことができる。
【0027】
さらに、このシート収納庫11の上部に、シートを1枚ずつ分離して給送するためのエア給紙方式のシート給送機構(以下、エア給紙機構という)150が配置されている。このエア給紙機構150は、トレイ12に積載されたシートSを吸着搬送する吸着搬送部50と、トレイ上のシート束の上部部分を浮上させて捌くと共に、シートSを1枚ずつ分離するための下流側エア吹き付け部152とを備えている。
【0028】
ここで、吸着搬送部50は、ベルト駆動ローラ41に掛け渡されると共にシートSを吸着して図中右方向に給送する吸着搬送ベルト21と、シートSを吸着搬送ベルト21に吸着させるための負圧を発生する吸引ファン36を備えている。また、吸着搬送ベルト21の内側に配置され、吸着搬送ベルト21に形成されている不図示の吸引穴を介してエアを吸引するための吸引ダクト34を備えている。さらに、吸引ダクト34内に配置され、吸着搬送ベルト21の吸着動作をON/OFFするための吸引シャッタ37を備えている。
【0029】
また、下流側エア吹き付け部152は、シート束の上部部分に対し先端からエアを吹き付けるための捌きノズル33a及び分離ノズル33bと、捌きファン32と、各ノズル33a,33bに捌きファン32からエアを送る分離ダクト33を備えている。そして、捌きファン32により吸い込まれたエアは分離ダクト33を通過し、捌きノズル33aにより矢印C方向に吹き付けられ、トレイ12上に積載されているシートSの上部の数枚のシートを浮上させる。また、捌きファン32により吸い込まれたエアは分離ノズル33bにより矢印D方向に吹き付けられ、捌きノズル33aにより浮上した最上位シートSaを分離して吸着搬送ベルト21に吸着させる。
【0030】
なお、18は捌きファン32によりシートが浮上した際の紙面高さ位置を検知し、シートがシートの給送が可能な位置に達したことを検知するためのシート検知部である紙面検知センサである。この紙面検知センサ18は3段階の検知段階を有しており、1から3に段階が進むほど紙面高さが高い。ここで、本実施の形態において、紙面検知センサ18は、例えば不図示の2つの検知部を有しており、2つの検知部のON/OFFの組み合わせにより、紙面高さ位置を検知する。
【0031】
そして、第2段階の紙面検知が行なわれる場合が、浮上したシートの紙面高さが吸着搬送ベルト21によるシートの吸着が適切に行われる高さにあることを示している。よって、紙面検知センサ18が第1段階の紙面検知をしている場合は、トレイ12を上昇する制御が必要であり、第3段階の紙面検知をしている場合は、トレイ12を下降する制御が必要となる。そして、紙面検知センサ18の検知段階に応じてトレイ12を昇降させて紙面検知センサ18の検知段階が第2段階となると、適切な高さ位置に最上位シートSaの紙面が達していると判断できる。
【0032】
次に、このように構成されたシート給送装置311(エア給紙機構150)のシート給送動作について説明する。まず、ユーザがシート収納庫11を引き出してシートSをセットし、シート収納庫11を格納すると、後述する図4に示すリフターモータ19によってトレイ12が図2に示す矢印A方向に上昇し始める。そして、最上位シートSaの紙面と吸着搬送ベルト21との距離がBとなる給送可能位置に達すると、後述する図4に示すCPU1は、この位置でトレイ12を停止させ、この後、給送を開始するためのシート給送信号に備える。
【0033】
次に、シート給送信号を検知すると、CPU1は、捌きファン32を作動させてエアを捌きノズル33a、分離ノズル33bにより、それぞれ矢印C及びD方向、すなわちシート束のシート給送方向の下流端部からシート給送方向上流に向けて吹き付ける。これにより、シート束のうちの上位の数枚のシートが浮上する。また、CPU1は吸引ファン36を作動させ、矢印F方向にエアを吹き出す。この際、吸引シャッタ37はまだ閉じられているため、最上位シートSaは吸着搬送ベルト21に吸着されない。
【0034】
次に、シート給送信号を検知してから所定時間が経過し、上位の数枚のシートの浮上が安定したところで、CPU1は、後述する吸引ソレノイド38を駆動し、吸引シャッタ37を矢印G方向に回転させる。これにより、吸着搬送ベルト21に設けられた吸引穴からエアが吸引され、吸着力が発生する。そして、この吸着力と、分離ノズル33bからの分離エアにより最上位シートSaが吸着搬送ベルト21に吸着される。
【0035】
続いて、CPU1は、後述する図4に示す給紙モータ44を駆動し、ベルト駆動ローラ41を矢印J方向に回転させる。これにより、吸着搬送ベルト21に吸着された状態で最上位シートSaが矢印K方向に給送され、この後、矢印P,M方向に回転する引抜ローラ対42により画像形成部に向けて送られる。なお、この引抜ローラ対42の下流にはパスセンサ43が設けられており、このパスセンサ43によりCPU1はシートSaの通過をモニタする。
【0036】
ところで、シート給送方向の長さが長く、坪量が50g/m以下の超薄紙と呼ばれる剛性の小さいシートを給送する場合がある。このようなシートを給送する際、シート自体の剛度が低いので既述した図14に示すように、捌きエアによって最上位シートSaの先端が吹き出し方向下流側に押され、中央部分が膨らんで先端が先端規制板11aから後方にずれる場合がある。
【0037】
そこで、本実施の形態においては、最上位シートの上方への膨らみを規制する膨らみ規制部を構成する浮上防止部材30を吸着搬送部50のシート給送方向上流側端面から後端規制板13の下流側端面にかけてシート面と平行に配置している。なお、この浮上防止部材30のシート主走査方向長は、搬送されるシートの最小長に設定されており、本実施の形態ではA5Rに相当する長さとなっている。
【0038】
また、この浮上防止部材30は、昇降部である正逆転可能な防止モータ31により、図2に示す矢印E方向に昇降可能に設けられており、シート収納庫11の引き出し時には、図2に示すシート収納庫11と干渉しない退避位置に移動する。また、シート収納庫11が格納状態となると、防止モータ31の正転により図3に示すように所定高さ位置Xまで下降する。ここで、この所定の規制位置である所定高さ位置Xは、浮上防止部材30のシート対向面を基準面として制御されるものであり、基準面が図2のBで示す最上位シートSaのエア捌き前の初期紙面位置から吸着搬送ベルト21の吸着面との間となる位置である。
【0039】
図4は、本実施の形態に係るシート給送装置311の制御ブロック図である。図4において、1はシート給送装置311を制御する制御部であるCPUであり、本実施の形態において、このCPU1は装置本体300に設けられている。このCPU1には、モータやファンといったシート給送装置311の各種負荷を駆動する駆動回路へ駆動開始指令を出力して各種負荷を駆動する専用のASIC2が接続されている。
【0040】
また、CPU1には、シートのサイズ、坪量、表面性等のシート情報を入力可能なシート情報設定部である操作部(DISP)4が接続されている。また、CPU1には、操作部4で入力された各種データ、ファン調整に用いる目標値やPWM値等を保管する記憶手段(Memory)3が接続されている。
【0041】
そして、CPU1は記憶手段3内に保管したデータを参照し、ユーザが操作部4から入力したシート情報に応じて、吸着搬送ベルト21とシート収納庫11の最上位シートSaとの距離Bを調整する。なお、操作部4の代わりに、シート情報として少なくともシートのサイズ情報、坪量情報、表面性情報の1つを検知する不図示の検知部を設け、この入力部としての検知部からシート情報をCPU1に入力するようにしても良い。
【0042】
ASIC2には、シート収納庫11の開閉状態を検知するシート収納部開閉センサ48、シート収納庫11内のトレイ12の位置を検知する下位置検知センサ55、上位置検知センサ57が接続されている。また、ASIC2には、トレイ12上に積載されているシート上面を検出する紙面検知センサ18、トレイ12上のシートの有無を検出する紙有無検知センサ56が接続されている。
【0043】
また、ASIC2には、既述したパスセンサ43、吸引ファン36によりシートが吸着された場合の吸引ダクト内の負圧状態をモニタし、シート吸着が完了したことを検出する吸着完了センサ58が接続されている。そして、このASIC2はシート給送装置311の各負荷を駆動する駆動回路へ駆動開始指令を出力するだけでなく、捌きファン32、吸引ファン36の回転数信号(FG)を受け、目標の回転数でファンが回転するようにPWM制御を行う。
【0044】
なお、図4において、22は捌きファン32に、ASIC2より出力されたPWM信号を送ると共に電源供給を行う捌きファン駆動回路(driver)である。40は吸引ファン36にASIC2より出力されたPWM信号を送ると共に電源供給を行う吸引ファン駆動回路(driver)である。29は防止モータ31に、ASIC2より出力されたPWM信号を送ると共に電源供給を行う防止モータ駆動回路(driver)である。
【0045】
39は吸引ダクト34内の吸引シャッタ37を開閉する吸引ソレノイド38の駆動回路(driver)、46はベルト駆動ローラ41を駆動する給紙モータ44を駆動する駆動回路(driver)である。47は引抜ローラ対42を駆動する引抜モータ45を駆動する駆動回路(driver)である。
【0046】
これらの給紙モータ44、引抜モータ45、防止モータ31はパルスモータであり、それぞれの駆動回路20,46,47に対してASIC2より制御パルスが与えられ、そのパルス数によりモータ回転量が制御される。20はトレイ12を昇降させるトレイ昇降部であるリフターモータ19を駆動する駆動回路(driver)である。このリフターモータ19はDCモータであり、ON/OFFにて駆動制御される。
【0047】
なお、本実施の形態において、モータ、ファン、センサといったシート給送装置311の各種負荷をCPU1から専用のASIC2を経由し制御したが、CPU1により直接制御してかまわない。また、本実施の形態では、シートのサイズ、坪量、表面性等のシート情報を入力可能な設定部として操作部4を設け、この操作部4で入力された各種データ、ファン調整に用いる目標値やPWM値等を記憶する記憶手段3をCPU1と直接接続している。しかし、画像形成装置300Aの別の装置、例えば操作部4を記憶手段として用いてシート情報の入力及び保管を行っても構わない。
【0048】
ところで、捌きエアをシート束に吹き付けた際、捌きエアによって上位シートに対しシート後端側に押す力が発生する。この時、剛性が小さいシートの場合、既述した図14に示すように、シートの中央部分が膨らんでしまい、シートの重送が生じる場合がある。
【0049】
そこで、本実施の形態においては、シートを給送する際、制御部であるCPU1はASIC2を介して防止モータ31を駆動し、浮上防止部材30を既述した図3に示す所定高さ位置Xまで下降させるようにしている。これにより、剛度が非常に低いシートを給送する場合においても、トレイ12上方に配置された浮上防止部材30により、シートが捌きエアにより上方に膨らむことにより発生する、上位シートの後端部への移動を抑制することができる。
【0050】
次に、このような構成のシート給送装置311のシート搬送動作について図5に示すフローチャートを用いて説明する。なお、このフローチャートは、リフターモータ19によってトレイ12が図2の矢印A方向に上昇し、吸着搬送ベルト21と最上位シートSaとの距離がBになる位置で停止して給送信号に備えた状態からスタートするものとする。
【0051】
CPU1は、この状態で給送信号を受信すると、吸引ファン駆動回路40に制御信号を入力し、吸引ファン36を駆動(ON)させる(S101)。同様に防止モータ駆動回路29に制御信号を入力し、防止モータ31を所定のパルス数で駆動させることにより、浮上防止部材30を落下させ、既述した図3に示す所定高さ位置Xに設置する(S103)。この後、捌きファン駆動回路22に制御信号を入力し、捌きファン32を駆動(ON)させ、エア捌きを開始する(S104)。ここで、このようなエア捌きを開始した時点で、浮上防止部材30が所定高さ位置に配置されているため、シートがシート後端側へ押された場合でも、シートの膨らみの発生を抑制できる。
【0052】
この後、エア捌きにより最上位シートSaの紙面位置が、吸着搬送ベルト21との距離が図3に示すB’となる位置となり、紙面検知センサ18による紙面検知が安定するのを待つ(S105)。ここで、既述したように紙面検知センサ18は3段階の検知段階を有しており、第2段階の紙面検知が検知されると、紙面検知が安定したと判断する(S105のY)。すなわち、適切な高さ位置に最上位シートSaの紙面が達していると判断する。
【0053】
そして、この判断に基づき、吸引ソレノイド駆動回路39に制御信号を入力して吸引ソレノイド38を駆動し、吸引ダクト34内の吸引シャッタ37を開く(S106)。これにより、吸着搬送ベルト21に設けられた吸引穴からエアが吸引され、吸引力が発生する。そして、この吸着力と、分離ノズル33bからの分離エアにより最上位シートSaが吸着搬送ベルト21に吸着される。
【0054】
次に、吸着完了センサ58からの出力をモニタし、最上位シートSaの吸着が完了したと判断すると(S107のY)、給紙モータ駆動回路46に制御信号を入力して給紙モータ44を駆動し、吸着搬送ベルト21の回転を開始する(S108)。さらに、引抜モータ駆動回路47に制御信号を入力して引抜モータ45を駆動し、引抜ローラ対42の回転を開始する(S109)。これにより、シートはシート搬送路上に排出される。
【0055】
この後、パスセンサ43からの出力をモニタし、シート搬送路上に排出したシートがパスセンサ43を通過したと判断すると(S110のY)、吸着搬送ベルト21の回転を停止する(S111)。さらに、引抜ローラ対42の回転を停止し(S112)、最後に吸引ダクト34内の吸引シャッタ37を閉じる(S113)。これにより、最上位シートSaの給送が終了する。
【0056】
次に、給送するシート数が複数であり、次シートを給送する場合、すなわち次シートが有る場合は(S114のY)、S106に戻り同様の処理を行う。次シートが無い場合(S114のN)、このまま給送動作を終了する場合は、吸引ファン駆動回路40に制御信号を入力し、吸引ファン36を停止(OFF)させる(S115)。同様に捌きファン駆動回路に制御信号を入力し、捌きファン32を停止させてエア捌きを終了する(S116)。さらに、防止モータ駆動回路29に制御信号を入力し、防止モータ31を所定のパルス数で逆転駆動させることにより、浮上防止部材30を退避位置に移動させ(S117)、シート給送動作が終了する。
【0057】
一方、紙面検知が安定しない場合には(S105のN)、すなわち適切な高さ位置に最上位シートSaの紙面が達していない場合には、紙面検知センサ18の検知結果に基づき、トレイ12を昇降させるトレイ12の移動制御(高さ位置制御)を行う(S201)。ここで、リフターモータ19を駆動してトレイ12を昇降させる際、例えばトレイ12のみを上昇させると、トレイ12上のシートが浮上防止部材30に突き当たる。また、トレイ12のみを下降させると、浮上防止部材30とトレイ12上のシートとの間隔が広がり、上位シートの後端部への移動を抑制することができない。
【0058】
そこで、トレイ12を昇降する場合は、リフターモータ19の駆動量と同等の駆動量を防止モータ31に与えて浮上防止部材30とトレイ12とを同時に昇降させることにより、浮上防止部材30とトレイ12上のシートとの間隔を一定に保つようにしている。なお、このように浮上防止部材30とトレイ12とを同時に、言い換えれば浮上防止部材30をトレイ12と連動して上昇させた場合、浮上防止部材30が所定高さ位置Xの最大上限位置である吸着搬送ベルト21の吸着面よりも上昇してしまう場合がある。
【0059】
ここで、このように浮上防止部材30が上昇した場合、上昇したトレイ上のシートが吸着搬送ベルト21に接触してシートがずれる場合がある。このため、本実施の形態においては、トレイ12の移動制御の際、リフターモータ19の駆動量と同等の駆動量を防止モータ31に与えることにより、浮上防止部材30が所定高さ位置Xの範囲外とならないかを判断する。なお、所定高さ位置Xとは、既述したように浮上防止部材30のシート対向面を基準面として、最上位シートSaのエア捌き前の初期紙面位置から吸着搬送ベルト21の吸着面までの間の位置である。そして、トレイ12と共に移動した浮上防止部材30の位置が、この位置範囲内(設置範囲内)であれば(S202のY)、トレイ12と同時に浮上防止部材30を同一方向、同一移動量での同期移動制御を行ない(S203)、S105に戻る。
【0060】
一方、トレイ12と共に移動した浮上防止部材30の位置が設置範囲外となると想定される場合には(S202のN)、浮上防止部材上限付き移動制御を行う(S204)。即ち、浮上防止部材30の位置が設置範囲外となると想定された場合には、トレイ12が上昇して、浮上防止部材30が所定高さ位置Xの最大上限位置である吸着搬送ベルト21の吸着面に達すると、浮上防止部材30を停止させ、この後、この位置で待機させる。これにより、捌きエアによって浮上したシートの高さが、トレイ12の上昇により高くなった場合でも、浮上防止部材30のシート対向面は、吸着搬送ベルト21の吸着面より下方に位置するようになり、シートSが引っ掛かるのを防ぐことができる。
【0061】
また、トレイ12の移動方向が下降方向への移動であれば、リフターモータ19の移動量に追従して浮上防止部材30も同量を下降移動させる。そして、このようにシート高さ位置が低くなった場合には、シート高さ位置に追従して浮上防止部材30が下降制御されるため、常にシート紙面と一定間隔で浮上防止部材30が配置されるようになる。このため、シートの膨らみの発生が防止され、薄いシートでも確実に分離して吸着搬送することができる。
【0062】
以上説明したように、本実施の形態においては、シートを給送する際、浮上防止部材30を最上位シートの高さ位置より高く、吸着搬送ベルト21の吸着面より低い位置に移動させるようにしている。そして、このように浮上防止部材30を移動させることにより、剛度が非常に低いシートを給送する場合においても、浮上防止部材30により、シートが捌きエアにより上方に膨らむことにより発生する、上位シートの後端部への移動を抑制することができる。これにより、超薄紙といった非常に剛度の低いシートであっても上位シートと下位シートとが重送されることがなくなり、シートの斜行、角折れ、吸着失敗といった給紙不良の発生を低減することができる。
【0063】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図6は、本実施の形態に係るシート給送装置の構成を示す図である。なお、図6において、既述した図2と同一符号は、同一又は相当部分を示している。
【0064】
図6において、30Aは浮上防止部材であり、この浮上防止部材30Aの底面は、シート上面と平行な面と、吸着搬送部50に向かって傾斜したシート給送方向下流側の傾斜面とを有する構造となっている。また、この浮上防止部材30Aは、シート収納庫11が格納されると所定高さ位置まで下降して設置される。
【0065】
ここで、この所定高さ位置は、底面の傾斜面のシート給送方向下流端の高さ位置が、エア捌きにより浮上する最上位シートSaの紙面位置と吸着搬送ベルト21の吸着面との距離B’の範囲内となるような所定高さ位置Yとなるように設定されている。また、底面の平行面の位置が、エア捌き前の最上位シートSaの紙面位置と吸着搬送ベルト21の吸着面との距離が既述した図2に示すBの範囲内となるような所定高さ位置Zとなるように設定されている。
【0066】
そして、このように浮上防止部材30Aを構成することにより、捌きエアによって上位シートに対しシート後端側に押す力が発生しても、浮上防止部材30Aによりシート後端部への上位シートの移動を抑制することができる。また、本実施の形態のように、浮上防止部材30Aの底面にシート給送部側に傾斜した傾斜面を形成することにより、シート先端部から吹き付けられるエアをシート後端側へ十分行き渡らせることができる。これにより、超薄紙であっても上位シートと下位シートとが連れ重送することなく、シートの斜行、角折れ、吸着失敗といった給紙不良を低減することができる。
【0067】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態においては、シートの坪量と、シートのサイズに応じて選択的に浮上防止部材を昇降させるようにしている。つまり、非常に薄く、剛度が低い吹き付けられたエアによりシート給送方向と逆方向に移動するシートに対してのみ、浮上防止部材を所定高さ位置に設置するようにしている。
【0068】
次に、本実施の形態に係るシート給送装置のシート給送動作を図7に示すフローチャートを用いて説明する。なお、この制御は、リフターモータ19によってトレイ12が図2の矢印Aに示す方向に上昇し、吸着搬送ベルト21と最上位シートとの距離がBになる位置で停止して給送信号に備えた状態からスタートするものとする。
【0069】
CPU1は、この状態で給送信号を受信すると、吸引ファン駆動回路40に制御信号を入力し、吸引ファン36を駆動(ON)させる(S101)。次に、操作部4にて入力されたシートのサイズ、坪量、表面性等のシート情報が保管されている記憶手段3を参照する(S102a)。そして、シート情報により、給送するシートが坪量<64g/m以下、且つサイズA4より大きいかを判断する(S102b)。そして、給送するシートが坪量<64g/m以下、且つサイズA4より大きい場合は(S102bのY)、浮上防止部材30を所定高さ位置に設置する(S103)。
【0070】
また、給送するシートが坪量<64g/m以下、且つサイズA4以外であるならば(S102bのN)、浮上防止部材30を退避位置にて待機させる。なお、以下の処理は、既述した図5に示すフローチャートと同一制御となるため、説明を省略する。ただし、S117においては、S103にて浮上防止部材30が設置された場合のみ退避動作が行なわれるとする。
【0071】
このように、A4より大きく且つ坪量が64g/m以下と非常に薄く、剛度が低いシートに対してのみ、浮上防止部材30を設置するようにすることにより、不要な浮上防止部材30の設定動作の実施を防ぐことができる。なお、本実施の形態では、浮上防止部材30としては第1の実施の形態の形状のものを用いたが、第2の実施の形態の形状のものを用いても良い。
【0072】
また、操作部4の代わりに、シート情報として少なくともシートのサイズ情報、坪量情報、表面性情報の1つを検知する不図示の検知部を設け、この入力部としての検知部からシート情報をCPU1に入力するようにしても良い。そして、CPU1は、このシート情報からシートサイズ、坪量、表面性を自動で判別する。
【0073】
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。図8は、本実施の形態に係るシート給送装置の構成を示す図である。なお、図8において、既述した図2と同一符号は、同一又は相当部分を示している。
【0074】
図8において、30Bは浮上防止部であり、この浮上防止部30Bは、2つ(複数)の膨らみ規制部材である第1浮上防止部材30a及び第2浮上防止部材30bにより構成されている。なお、シート搬送方向下流側に位置する第1浮上防止部材30aは、第1防止モータ31aにより、シート搬送方向上流側に位置する第2浮上防止部材30bは第2防止モータ52により矢印E方向に夫々選択的に移動可能となっている。
【0075】
また、第1浮上防止部材30aの底面は、吸着搬送部50に向かって傾斜しており、第2浮上防止部材30bの底面はシート上面と平行になっている。さらに、第1浮上防止部材30aは、A4より大きくA3よりも小さいサイズのシートの後端部の上方に配置されており、第2浮上防止部材30bは、シートのサイズがA3よりも大きいシートの後端部の上方に配置されている。そして、この第1及び第2浮上防止部材30a,30bは、シート収納庫11の引き出し時にはシート収納庫11と干渉しない上方の退避位置へ夫々移動し、シート収納庫11が格納状態では、それぞれ所定高さ位置Y,Zまで下降して設置される。
【0076】
なお、所定高さ位置Yは、第1浮上防止部材30aの底面の傾斜面のシート給送方向下流端の高さ位置が、エア捌きにより浮上する最上位シートSaの紙面位置と吸着搬送ベルト21の吸着面との距離B’の範囲内となるような位置に設定されている。また、所定高さ位置Zは、第2浮上防止部材30bの底面の平行面の位置が、エア捌き前の最上位シートSaの紙面位置と吸着搬送ベルト21の吸着面との距離が既述した図2に示すBの範囲内となるような所定高さ位置となるように設定されている。
【0077】
図9は、本実施の形態に係るシート給送装置の制御ブロック図である。なお、図9において、既述した図4と同一符号は、同一又は相当部分を示している。図9において、29は第1浮上防止部材30aを移動駆動するための第1防止モータ31aを駆動する第1駆動回路である。53は第2浮上防止部材30bを移動駆動する第2防止モータ52を駆動する第2駆動回路である。これらの第1及び第2防止モータ31a、52はパルスモータであり、それぞれの駆動回路29,53に対してASIC2より制御パルスが与えられ、そのパルス数によりモータ回転量が制御される。
【0078】
次に、本実施の形態に係るシート給送装置のシート給送動作を図10に示すフローチャートを用いて説明する。なお、この制御は、リフターモータ19によってトレイ12が図2の矢印Aに示す方向に上昇し、吸着搬送ベルト21と最上位シートとの距離がBになる位置で停止して給送信号に備えた状態からスタートするものとする。
【0079】
CPU1は、この状態で給送信号を受信すると、吸引ファン駆動回路40に制御信号を入力し、吸引ファン36を駆動(ON)させる(S101)。次に、操作部4にて入力されたシートのサイズ、坪量、表面性等のシート情報が保管されている記憶手段3を参照する(S1021)。そして、シート情報により、給送するシートが坪量<64g/m以下、且つサイズA4より大きいかを判断する(S1022)。
【0080】
ここで、給送するシートが坪量<64g/m以下、且つサイズA4より大きい場合は(S1022のY)、次にシートのサイズがA4より大きいA3以上のシートかを判断する(S1023)。そして、シートのサイズがA3よりも小さいサイズの場合は(S1023のY)、第1浮上防止部材30aのみを所定高さ位置に設置する(S1024)。なお、既述したように第1浮上防止部材30aは、シートのサイズがA4より大きくA3よりも小さいシートの後端部の上方に配置されている。これにより、第1浮上防止部材30aを所定高さ位置Yに設置するようにすれば、シートのサイズがA4より大きくA3よりも小さいシートの上方への膨らみの発生が防止され、薄いシートでも確実に分離して吸着搬送することができる。
【0081】
また、シートのサイズがA3又はA3より大きい場合(S1023のN)、第1及び第2浮上防止部材30a,30bを所定高さ位置Y,Zに設置する(S1025)。ここで、既述したように第2浮上防止部材30bは、シートのサイズがA3よりも大きいシートの後端部の上方に配置されている。これにより、第1及び第2浮上防止部材30a,30bを所定高さ位置に設置するようにすれば、サイズがA3よりも大きいシートの上方への膨らみの発生が防止され、薄いシートでも確実に分離して吸着搬送することができる。
【0082】
また、給送するシートが坪量<64g/m以下、且つサイズA4以外であるならば(S1022のN)、第1及び第2浮上防止部材30a,30bを退避位置にて待機する。なお以下の処理は、既述した図5に示すフローチャートと同一制御となるため、説明を省略する。ただし、S202、S203において、浮上防止部材とは、S1021〜S1025の処理にて設置された浮上防止部材の全てを対象としている。また、S117においては、S1021〜S1025の処理にて浮上防止部材30a,30bの少なくとも一つ以上が設置された場合のみ退避動作が行なわれるとする。
【0083】
このように、本実施の形態によれば、シートサイズに応じて第1及び第2浮上防止部材30a,30bを選択的に最上位シートの高さ位置より高く、吸着搬送ベルト21の吸着面より低い位置に移動させるようにしている。そして、このように第1及び第2浮上防止部材30a,30bを選択的に移動させることにより、シートが捌きエアにより上方に膨らむことにより発生する、上位シートの後端部への移動を抑制することができる。また、浮上防止部30Bを、第1及び第2浮上防止部材30a,30bによって構成することにより、使用するモータを小型化でき、コストダウンを図ることができる。
【0084】
ところで、これまでの説明においては、シートを吸着して搬送する吸着搬送部50を有するシート給送装置について述べてきたが、本発明は、これに限らない。即ち、シート束の上部にエアを吹き付けることによりシートを捌いた後、給送ローラによりシートを給送するようにしたシート給送装置にも適用することができる。
【0085】
次に、このような本発明の第5の実施の形態について説明する。図11は、本実施の形態に係るシート束の上部にエアを吹き付けることによりシートを捌いた後、給送ローラによりシートを給送するようにしたシート給送装置の構成を示す図である。なお、図11において、既述した図2と同一符号は、同一又は相当部分を示している。
【0086】
図11において、1300は給送ユニットであり、この給送ユニット1300は、給送ローラであるピックアップローラ1301、給紙ローラ1302及び給紙ローラ1302に圧接する分離ローラ1303、引抜ローラ対42から構成される。
【0087】
ここで、ピックアップローラ1301は、図中H方向に回動自在なピックアップアーム1304の先端部に回転自在に支持され、シート給送時にはピックアップアーム1304の下方回動に伴って下降し、シート面に接触する。そして、ピックアップローラ1301によって送り出されたシート収納庫11の最上位シートSaは、給紙ローラ1302及び分離ローラ1303のニップ部へ搬送されて下位シートと分離され、引抜ローラ対42へと送られる。なお、このピックアップアーム1304は、後述する図12に示すピックアップソレノイド1403のON/OFFにより上下方向に回動する。
【0088】
なお、本実施の形態において、下流側エア吹き付け部152は、シート束の上部部分に対し先端からエアを吹き付けるための捌きノズル33aと、捌きファン32と、捌きノズル33aに捌きファン32からエアを送る分離ダクト33を備えている。そして、捌きファン32により吸い込まれたエアは分離ダクト33を通過し、捌きノズル33aにより矢印C方向に吹き付けられ、これによりトレイ12上に積載されているシートSの上部のうち数枚が捌かれる。
【0089】
また、図11において、30Cは浮上防止部材であり、この浮上防止部材30Cは、給送ユニット1300のシート搬送上流側端面から後端規制板13の下流側端面にかけてシート面と平行に配置される。また、浮上防止部材30Cのシート主走査方向長は、搬送されるシートの最小長に設定されており、本実施の形態ではA5Rに相当する長さとなっている。
【0090】
さらに、浮上防止部材30Cは、防止モータ31により図中E方向に移動可能に構成されている。そして、シート収納庫11の引き出し時には浮上防止部材30Cをシート収納庫11と干渉しない上方の退避位置に移動させ、シート収納庫11が格納状態にて最上位シートSaと接触しない所定高さ位置Xまで下降して設置可能となっている。
【0091】
なお、この所定高さ位置Xは、間隔Gで示す、浮上防止部材30Cのシート対向面の位置が、エア捌き前の最上位シートSaの紙面位置と、給紙搬送面である実線で示すピックアップローラ1301が非給紙時の退避位置にあるときのローラ下面との間の位置である。
【0092】
図12は、本実施の形態に係るシート給送装置の制御ブロック図である。なお、図12において、既述した図4と同一符号は、同一又は相当部分を示している。図12において、1404は、ピックアップアーム1304を介してピックアップローラ1301を昇降させるためのピックアップソレノイド1403を駆動するためのソレノイド駆動回路である。1402はピックアップローラ1301、給紙ローラ1302及び分離ローラ1303を駆動する給紙モータ1401を駆動する駆動回路である。なお、CPU1は記憶手段3内に保管したデータを参照し、ユーザが操作部4から入力したシート情報に応じて、ピックアップローラ1301とシート収納庫11の最上位シートSaとの距離Gを調整する。
【0093】
次に、本実施の形態に係るシート給送装置のシート給送動作を図13に示すフローチャートを用いて説明する。なお、この制御は、リフターモータ19によってトレイ12が図11の矢印Aに示す方向に上昇し、ピックアップローラ1301と最上位シートSaとの距離がGになる位置で停止して給送信号に備えた状態からスタートするものとする。
【0094】
CPU1は、この状態で給送信号を受信すると、防止モータ駆動回路29に制御信号を入力し、防止モータ31を所定のパルス数で駆動(ON)させることにより、浮上防止部材30Cを落下させ、既述した図11に示す所定高さ位置Xに設置する(S1501)。この後、捌きファン駆動回路22に制御信号を入力し、捌きファン32を駆動(ON)させ、エア捌きを開始する(S1502)。ここで、このようなエア捌きが開始された時、浮上防止部材30Cは所定高さ位置Xに配置されているため、シートがシート後端側へ押されるために生じるシートの膨らみを抑制できる。なお、このエア捌きは、シート種類により予め決定された所定時間行われる。
【0095】
そして、所定時間が経過すると(S1503のY)、給紙モータ駆動回路1402に制御信号を入力して給紙モータ1401の駆動を開始し(S1504)、ピックアップローラ1301、給紙ローラ1302及び分離ローラ1303を所定速度にて回転させる。次に、引抜モータ駆動回路47へ制御信号を入力して引抜モータ45の駆動を開始し(S1505)、引抜ローラ対42を所定速度にて回転させる。
【0096】
次に、ソレノイド駆動回路1404に制御信号を入力し、ピックアップソレノイド1403を駆動(ON)し(S1506)、ピックアップローラ1301を最上位シートSaに当接させる。これにより、最上位シートSaはピックアップローラ1301により給送され、給紙ローラ1302及び分離ローラ1303によって構成される分離部により下位シートと分離されて引抜ローラ対42へと搬送され、シート搬送路へと排出される。
【0097】
この後、パスセンサ43からの出力をモニタし、シート搬送路上に排出したシートがパスセンサ43を通過したと判断すると(S1507のY)、ピックアップソレノイド1403をOFFする(S1508)。これにより、ピックアップローラ1301が最上位シートSaから離間する。次に、給紙モータ1401の駆動を停止し(S1509)、ピックアップローラ1301、給紙ローラ1302、分離ローラ1303の回転を停止する。さらに、引抜モータ45を停止し(S1510)、引抜ローラ対42の回転を停止する。
【0098】
次に、給送するシート数が複数であり、次シートを給送する場合、すなわち次シートが有る場合は(S1511のY)、S1504に戻り同様の処理を行う。また、次シートが無く、このまま給紙動作を終了する場合は、捌きファン駆動回路に制御信号を入力し、捌きファン32を停止させてエア裁きを終了する(S1512)。また、防止モータ駆動回路29に制御信号を入力し、防止モータ31を所定のパルス数で逆転駆動することにより、浮上防止部材30Cを退避位置に退避させる(S1513)。これにより、シート給送動作が終了する。
【0099】
以上説明したように、シートを捌いた後、ピックアップローラ1301によりシートを給送するようにした場合でも、浮上防止部材30によってシートの撓みに伴う後端側への移動を抑えることにより、薄いシートでも確実に分離して給送することができる。つまり、浮上防止部材30がシート上面に移動配置されることで、給紙構成の形態によらず、薄いシートでも確実に分離して給送することができる。
【0100】
なお、これまで述べた各実施の形態では、シートを画像形成部に給送するためのシート給送装置に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、シート処理部として後処理部に画像形成されたシートを供給したり、画像形成部と後処理部との間に配置されて、画像形成部で画像が形成されて搬送されてくるシートの間に他のシートを供給したりするインサータに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0101】
1…CPU、11…シート収納庫、12…トレイ、13…後端規制板、21…吸着搬送ベルト、30…浮上防止部材、30A,30C…浮上防止部材、30B…浮上防止部、30a…第1浮上防止部材、30b…第2浮上防止部材、50…吸着搬送部、150…シート給送機構、152…下流側エア吹き付け部、300A…画像形成装置、300…画像形成装置本体、301…シート給送ユニット、311…シート給送装置、1300…給送ユニット、1301…ピックアップローラ、S…シート、Sa…最上位シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを支持する昇降可能なトレイと、前記トレイに支持されたシートのシート給送方向の下流端部からシート給送方向の上流側に向けてエアを吹き付けるエア吹き付け部と、エアが吹き付けられたシートのうちの最上位シートを搬送するシート給送部と、を備えたシート給送装置において、
シートのシート給送方向の上流端が当接し、シートの位置を規制する後端規制部と、
前記トレイの上方の、前記後端規制部と前記シート給送部との間に昇降可能に設けられ、吹き付けられるエアにより前記後端規制部に押し付けられた最上位シートの上方への膨らみを規制する膨らみ規制部と、
前記膨らみ規制部を昇降させる昇降部と、
前記昇降部を制御し、前記エア吹き付け部によりエアを吹き付ける前に、前記膨らみ規制部を最上位シートの高さ位置より高く、前記シート給送部による給紙搬送面より低い所定の規制位置に移動させる制御部と、を備えたことを特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
前記トレイを昇降させるトレイ昇降部と、
前記トレイの昇降によりシートが前記シート給送部によるシートの給送が可能な位置に達したことを検知するシート検知部と、を備え、
前記制御部は、前記トレイを昇降させる際、前記トレイの昇降に連動して前記膨らみ規制部を昇降させることを特徴とする請求項1記載のシート給送装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記トレイと連動して前記膨らみ規制部を上昇させる際、前記膨らみ規制部が前記所定の規制位置を超えないように前記所定の規制位置に達したら、前記膨らみ規制部の上昇を停止させることを特徴とする請求項2記載のシート給送装置。
【請求項4】
少なくともシートのサイズ情報及び坪量情報を入力する入力部を備え、
前記制御部は、前記入力部から入力される情報に基づき、トレイ上のシートが前記エア吹き付け部から吹き付けられたエアによりシート給送方向と逆方向に移動するシートと判断した場合には、前記昇降部を駆動して前記膨らみ規制部を前記所定の規制位置に移動させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項5】
前記膨らみ規制部を、シート給送方向に複数設けられ、それぞれ昇降可能な膨らみ規制部材により構成し、
少なくともシートのサイズ情報及び坪量情報を入力する入力部を備え、
前記制御部は、前記入力部から入力されるサイズ情報に基づき、エアを吹き付けてシートを浮上させる前に、前記複数の膨らみ規制部材を選択的に前記所定の規制位置に移動することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項6】
前記入力部は、前記トレイ上に積載されるシートサイズ、坪量、表面性を自動で判別することを特徴とする請求項4又は5に記載のシート給送装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記トレイを備えたシート収納部の引き出し時、前記膨らみ規制部材を上昇させ、前記シート収納部と干渉しない位置へ移動させることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項8】
前記膨らみ規制部の底面にシート給送部側に傾斜した傾斜面を形成することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項9】
前記エア吹き付け部は、シートにエアを吹き付けてシートを浮上させ、前記シート給送部は吹き付けられるエアにより浮上した最上位シートを吸着して給送することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項10】
前記エア吹き付け部は、シートにエアを吹き付けてシートを捌き、前記シート給送部は吹き付けられるエアにより捌かれた最上位シートを給送することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のシート給送装置と、
前記シート給送装置から送り出されるシートに画像を形成する画像形成部と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−43745(P2013−43745A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182340(P2011−182340)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】