説明

シート装着器具

【課題】器具本体をシートに確実にかつ容易に固定できるシート装着器具を提供する。
【解決手段】器具本体12と、器具本体12をシート1に固定する固定部材14とを有する。器具本体12は、第1の突起20および第2の突起30を備える。第1の突起20は、第1の軸部21と、この先端から延長された第1の係止鍔部22とを有し、第2の突起30は、第2の軸部31と、この先端に形成され第2の係止鍔部32とを有する。固定部材14は、第1の突起20に対して係合可能な第1の係合部40と、第2の突起30に対して係合可能な第2の係合部50とを備える。第1の突起20に対して第1の係合部40をスライド係合させたのち、この第1の突起20を支点として固定部材14を器具本体12に接近する方向へ回動させて、第2の係合部50を第2の突起30に係合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート装着器具に関する。たとえば、衣服、バッグ、カバー類などのシート製品に対して、バックル、マグネットキャッチ、ベルトアジャスタ、ナスカン、テープストッパ、コードストッパ等を介して、あるいは、直接にベルトやテープ等を装着するための器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣服、バッグ、カバー類などは、織布や合成樹脂シート等を主材料として製造される。これらのシート製品においては、蓋部などの開閉用にバックル、マグネットキャッチ等が装着され、あるいは、搬送時の把持部分としてベルトやテープ等が装着される。
【0003】
たとえば、バッグの開口部を塞ぐフラップを閉じるために、フラップの先端にバックルのプラグを装着し、バッグの表面にプラグが挿入、係止されるソケットを装着する場合がある。
このような装着を行うために、シートの表側にソケット本体あるいはプラグ本体を配置し、シートの裏側に固定部材を配置し、この固定部材によってソケット本体あるいはプラグ本体をシートに固定する構成が採用されている(特許文献1の図1および図3参照)。
【0004】
特許文献1の図1に示された構造は、固定部材に4つの突起を一体的に突設するとともに、ソケットに突起が係合する4つの係合孔を形成した構造である。
ソケットをシートに固定するには、シートの裏面に固定部材を配置し、各突起をシートを貫通させてシートの表面に突出させ、シートの表面側に突出した4つの突起にソケットの4つの係合孔を嵌め込む。
【0005】
特許文献1の図3に示された構造は、ソケットに3つの突起を一体的に突設するとともに、固定部材に突起が係合する4つの係合孔を形成した構造である。各突起は、ソケットから突出した軸部と、この軸部から所定方向へ延長された係止部とを備える。各係合孔は、各突起が挿入可能な挿入溝と、この挿入溝から所定方向に沿って形成され各突起と係合する係合溝とを備える。
ソケットをシートに固定するには、シートの表面にソケットを配置し、各突起をシートを貫通させてシートの裏面に突出させ、シートの裏面側に突出した各突起に固定部材の3つの挿入溝を挿入したのち、固定部材をスライドさせる。すると、3つの突起が3つの係合溝によって係止される。
【0006】
【特許文献1】米国特許6622355号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した例は、いずれも複数の突起と複数の係合孔とを同時に嵌め込む構造であるため、ソケットと固定部材とが平行でなく、傾いた姿勢で嵌め込み操作が行われると、複数の突起と複数の係合孔とが嵌りずらい。
とくに、後者の構造(突起に固定部材の3つの係合溝を挿入したのち、固定部材をスライドさせる構造)の場合、シートの表面(裏面)が粗く、かつ、シートの材質が硬いものでは、固定部材をスライドさせる際に大きな抵抗となって、スライドが容易に行えないという問題も挙げられる。
【0008】
本発明の目的は、このような従来の課題を解決し、器具本体をシートに確実にかつ容易に固定できるシート装着器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のシート装着器具は、シートの表面に装着される器具本体と、前記シートの裏面に配置され前記器具本体をシート1に固定する固定部材とを有するシート装着器具であって、前記器具本体は、前記シートと接する面に互いに離間して突設され、前記シートを貫通する第1の突起および第2の突起を備え、前記固定部材は、前記第1の突起が係合可能で、かつ、前記第1の突起を支点として前記器具本体と前記固定部材とが互いに接近する方向へ回動可能とする第1の係合部と、前記器具本体と前記固定部材とが互いに接近したときに前記第2の突起に対して係合可能な第2の係合部とを備え、前記第2の係合部は、前記第2の突起が挿通して係合可能な挿通孔を有する、ことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、シートの表面に器具本体を配置し、器具本体の第1の突起および第2の突起をシートの裏面側に突出させる。この状態において、シートの裏面側に突出した第1の突起に固定部材の第1の係合部を係合させる。
続いて、器具本体の第1の突起を支点として、器具本体と固定部材とを互いに接近する方向へ回動させる。たとえば、固定部材を器具本体に接近する方向へ回動させ、固定部材の第2の係合部をシートの裏面側に突出した第2の突起に係合させる。つまり、固定部材を回動させていくと、固定部材は第2の突起に当接する。さらに、固定部材を回動させると、第2の突起が挿通孔に挿通、係合される。これにより、第2の突起が挿通孔から抜け止めされる。
【0011】
従って、本発明では、シートの裏面側に突出した器具本体の第1の突起に固定部材の第1の係合部を係合させ、この状態において、第1の突起を支点として固定部材を器具本体に接近する方向へ回動させ、固定部材の第2の係合部をシートの裏面側に突出した第2の突起に係合させるだけで、器具本体をシートに固定できる。つまり、従来のように、器具本体と固定部材とを平行な姿勢に保ったまま嵌め込む必要がないから、器具本体をシートに確実にかつ容易に固定できる。
【0012】
また、本発明において、前記第1の突起は、第1の軸部と、この第1の軸部の先端から所定方向へ向かって延長して形成された第1の係止鍔部とを有し、前記第2の突起は、前記第1の突起から前記第1の係止鍔部の延長方向と反対側に離間して設けられた第2の軸部と、この第2の軸部の先端に形成され前記所定方向と略直交する方向に突出する第2の係止鍔部とを有し、前記第2の係合部は、前記挿通孔の少なくとも一部を拡張する方向へ弾性変形させる弾性変形部を有する、ことが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、シートの裏面側に突出した第1の突起と固定部材の第1の係合部とは、第1の軸部の先端から所定方向へ向かって延長して形成された第1の係止鍔部によって係合され、シートの裏面側に突出した第2の突起と固定部材の第2の係合部とは、第2の軸部の先端に前記所定方向と略直交する方向に突出して形成された第2の係止鍔部によって係合されているから、固定部材や器具本体に傾く力が作用しても、両者が傾くことが少ない。
たとえば、固定部材や器具本体に、所定方向に対して略直交する方向を軸線として傾く力が作用した場合、第1の軸部の先端から所定方向へ向かって延長して形成された第1の係止鍔部と第1の係合部との係合によって、固定部材や器具本体の傾きが規制される。また、固定部材が器具本体に、所定方向を軸線として、傾く力が作用した場合、第2の軸部の先端から所定方向と略直交する方向に突出して形成された第2の係止鍔部と第2の係合部との係合によって、固定部材や器具本体の傾きが規制される。従って、器具本体をシートにガタなく確実に固定できる。
また、第2の係合部は、挿通孔の少なくとも一部を拡張する方向へ弾性変形させる弾性変形部を有しているから、第2の係止鍔部が挿通孔に挿通しやすく、かつ、係合を確実に行うことができる。
【0014】
また、本発明において、前記挿通孔は、2つの弾性変形部の間であって、前記弾性変形部が互いに離間する方向に変形することで拡張可能で、少なくとも一方の弾性変形部から他方の弾性変形部に向かって突出する突片を有し、前記突片は、前記第2の突起の前記第2の軸部に対して、前記第1の係止鍔部の延長方向とは反対側面に対向する位置に設けられていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、器具本体が固定部材に対して所定方向の一方向へスライドする力を受けた際には、第1の突起と第1の係合部との係合で器具本体のスライドが規制される。また、器具本体が固定部材に対して所定方向の他方向へスライドする力を受けた際には、第2の突起の第2の軸部が突片に当接して器具本体のスライドが規制される。従って、所定方向の両方向に対して器具本体のスライドが規制できるから、たとえば、器具本体をバックルのソケットとすれば、ソケットに対してプラグの差込方向および引抜方向の力が作用しても、ソケットがシートからずれるのを防止できる。
【0016】
また、本発明において、前記第2の係合部は、前記挿通孔の周囲に、前記第2の係止鍔部が係止可能な係止部を有し、前記弾性変形部は、前記所定方向と略直交する方向へ弾性変形して、前記挿通孔を拡張する、ことが好ましい。
この構成によれば、第2の係止鍔部が挿通孔に挿通しやすく、かつ、係合を確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
<全体構成>
図1は、本実施形態のシート装着器具10を示す分解斜視図、図2は、本実施形態のシート装着器具10を裏面から見た分解斜視図である。
これらの図に示すように、本実施形態のシート装着器具10は、バックル11のソケットである器具本体12と、これをシート1に固定するための固定部材14とを備えている。バックル11は、ソケット(器具本体)12と、プラグ13とから構成されている。なお、これらの部材は、樹脂の射出成形によって形成されている。
【0018】
シート1は、例えば、バッグの表面クロス等であり、表面2に器具本体12が配置され、裏面3に固定部材14が配置される。
シート1には、シート装着器具10を装着する部位に、器具本体12と固定部材14とを連結するための孔4が形成される。この孔4は、後述する器具本体12の第1の突起20および第2の突起30および固定部材14の第1の係合部40および第2の係合部50に対応した位置および数の配置パターンで形成される。
【0019】
器具本体12は、バックル11のソケットとして構成され、バックル11のプラグ13と連結および解除が可能である。プラグ13は、ベルトを取り付け可能なベルト取付部13Aと、ベルト取付部13Aから突出し、ソケット(器具本体12)に係合可能な2本の係合腕部13Bとを有する。ソケット(器具本体12)は、筒状を呈しており、係合腕部13Bがソケット(器具本体12)内に挿入するためのプラグ差込口12Aを備える。プラグ13をソケット(器具本体12)に挿入する方向を差込方向とし、反対の方向を引抜方向とする。また、シート1と平行な面上で、差込および引抜方向と直交する方向を幅方向とする。
【0020】
器具本体12には、その背面(シート1の表面2に接する面)側に2つの第1の突起20が幅方向に間隔を隔てて設けられているとともに、これらの第1の突起20から所定方向(プラグ13の差込、引抜方向)に沿って離間した位置に1つの第2の突起30が設けられている。これら第1の突起20および第2の突起30は、シート1の表面2から孔4を通して裏面3に突出され、固定部材14の第1の係合部40および第2の係合部50に係合される。
【0021】
第1の突起20は、器具本体12のプラグ13を挿入するプラグ差込口12A側(図1,図2の右上側)に2本配置される。
第1の突起20は、器具本体12の背面から起立しシート1を貫通する断面矩形状の第1の軸部21と、この第1の軸部21の先端から、第1の軸部21の幅寸法と同じで前側(プラグ差込口12A側)に突き出すように延長された第1の係止鍔部22とを備えている。つまり、第1の突起20は、器具本体12の背面からL字状を呈して突出している。
【0022】
第2の突起30は、器具本体12のプラグ差込口12Aとは反対側(図1,図2の左下側)中央位置に1本配置される。つまり、2つの第1の突起20と第2の突起30とを結ぶ形状が略三角形になるように配置される。このため、前記所定方向とは、2つの第1の突起20を結ぶ線分に直角で第2の突起30を通る線上の方向でもある。さらには、前記第1の係止鍔部22が第1の軸部21から突出する方向とは反対側に第2の突起30を備える。 第2の突起30は、器具本体12の背面から起立しシート1を貫通する断面矩形状の第2の軸部31と、この第2の軸部31の先端に形成され第2の軸部31の外側面より外方へ突出した部分を有する第2の係止鍔部32とを備えている。つまり、第2の突起30において、第2の係止鍔部32は、第2の軸部31の外側面よりプラグ差込口方向、および、この方向に対して略直交する両側方向へ突出した部分を備えている。
【0023】
固定部材14は、器具本体12の裏面側からシート1を挟みつけることで、器具本体12をシート1に固定するもので、器具本体12の平面形状と略同形状の平面形状を備え、かつ、シート1に必要以上のかさばりが生じないようにするために、基本的に薄板状に形成されている。
固定部材14には、第1の突起20が挿通可能で、第1の突起20が挿通された状態において所定方向(プラグ差込・引抜方向)へスライド可能かつ第1の突起20を支点として器具本体12と固定部材14とを互いに接近する方向へ回動可能とする第1の係合部40と、第2の突起30に対して係合可能な第2の係合部50とが設けられている。
【0024】
第1の係合部40は、固定部材14の前側(図1,図2の右上側)に2個配置され、第1の係止鍔部22が挿通可能かつ第1の軸部21に対してプラグ差込・引抜方向へスライド可能な第1の挿通孔41と、この第1の挿通孔41から前側(プラグ引抜方向で、プラグ差込口側)に連続して形成され第1の係止鍔部22に係止可能な第1の係止部42とを有している。
【0025】
第1の挿通孔41は、幅方向寸法が第1の突起20の第1の係止鍔部22の幅方向寸法より僅か大きく、かつ、長さ寸法(プラグ差込・引抜方向寸法)が第1の突起20の第1の係止鍔部22の長さ寸法より十分大きく形成されている。このため、器具本体12と固定部材14とを近接させれば、第1の突起20を第1の挿通孔41内に第1の軸部21まで挿入できる。また、この状態において、器具本体12と固定部材14とを離隔させれば、第1の突起20は第1の挿通孔41から自由に抜き出しできる。
【0026】
第1の係止部42には、固定部材14の表面から一段低くなった段差部43が形成されている。このため、第1の突起20に第1の挿通孔41が挿入された固定部材14を後側方向(図1、図2中左下方向)へ移動させると、段差部43が第1の係止鍔部22の下に入り込む。このため、この状態で器具本体12と固定部材14とを離隔させようとしても、第1の突起20が第1の係合部40から抜き出すことができない。これにより、シート1を挟んで、第1の突起20と第1の係合部40との係止が行われる。段差部43によって、係止鍔部22の先端が固定部材14から大きく突出しない利点がある。突出してもよい場合は、段差部43を形成しなくてもよい。
【0027】
第2の係合部50は、固定部材14の後側(図1、図2の左下側)に1個配置され、第2の軸部31が挿通可能な第2の挿通孔51と、この第2の挿通孔51の周囲に形成され第2の係止鍔部32が係止可能な第2の係止部52と、第2の挿通孔51の少なくとも一部を拡張する方向へ弾性変形させ第2の係止鍔部32を第2の挿通孔51に挿通可能とする弾性変形部53と、第1の突起20に対して第1の係合部40が係合された状態において第2の突起30と対向する位置に設けられ第2の係止鍔部32の押し込み方向の力を受けて弾性変形部53を弾性変形させて第2の挿通孔51を拡張させる変形動作部58とを有する。
【0028】
弾性変形部53は、2本のブリッジ状の部材が間隔を隔てて配置され、これらの間隔が第2の挿通孔51として形成される。第2の挿通孔51と反対側で、かつ、第2の挿通孔51と固定部材14の外郭との間に、プラグの差込、引抜方向に長く、固定部材14の表裏を貫通するスリット54が形成されている。換言すると、弾性変形部53は、第2の挿通孔51とスリット54とによって形成される。弾性変形部53が弾性変形して第2の挿通孔51の一部が拡張すると、スリット54の幅方向の間隔が狭くなる。また、スリット54は差込方向と平行に形成されるので、弾性変形部53は、スリット54を狭める方向には変形可能であるが、差込方向には変形しない。また、弾性変形部53の肉厚、つまり、各スリット54と第2の挿通孔51との間に形成されたブリッジ部の肉厚は、固定部材14の他の部分より薄肉に形成されている。
【0029】
第2の挿通孔51は、各弾性変形部53の途中2箇所から、対向する弾性変形部53に向かって突片55が形成され、2本の弾性変形部53に形成される4つの突片55と、弾性変形部53とで囲まれる部分を第2の挿通孔51としている。
第2の挿通孔51は、幅方向寸法が第2の突起30の第2の軸部31の幅方向寸法より僅か大きく、かつ、第2の係止鍔部32の幅寸法より狭く形成され、また、長さ寸法が第2の突起20の第2の係止鍔部32の長さ寸法より長く形成されている。なお、第2の挿通孔51の前後には2つの空間56,57が形成され、それらの大きさは、第1の突起20や第2の突起30が嵌り込まない大きさに形成されることが好ましい。これによって、組立時に、第2の突起30が第2の挿通孔51と誤って、2つの空間56,57に嵌り込むことがなくなる。スリット54は第2の挿通孔51の長さ寸法より大きく、第2の挿通孔51がスリット54の略中間になるように形成されている。
【0030】
また、4つの突片55のうち、前側の2つの突片55については、省略してもよい。後側の2つの突片55は、第1の突起20に対して第1の係合部40が係合された状態において、第2の突起30の第2の軸部31に対して、第1の係止鍔部22の延長方向とは反対側面(つまり、後面)に僅かな隙間、すなわち、第1の係止鍔部22と第1の係止部42との係合領域より小さい隙間を隔てて対向する位置に設けられている。これによって、器具本体12と固定部材14とが係合された状態で、固定部材14の第1の係合部40が外れる方向にスライドしようとしても、後側の突片55が第2の軸部31と当接するので、外れることがない。また、突片55は、一方の弾性変形部53のみに形成してもよい。
【0031】
第2の係止部52は、第2の挿通孔51を挟む両側の弾性変形部53の中間部分が第2の係止部52とされており、弾性変形部53の幅寸法は、第2の突起30の第2の係止鍔部32の両側突出部よりも広い幅寸法を有する形状に形成されている。
【0032】
変形動作部58は、図1、図7に示すように、各弾性変形部53において、シート1側で第2の係止鍔部32が当接する位置から第2の挿通孔51へ向かって、弾性変形部53の肉厚が漸次薄くなるように、傾斜したテーパ状に形成されている。
【0033】
<組立手順>
シート1の表面2に器具本体12を配置し、器具本体12の第1の突起20および第2の突起30をシート1の孔4を通して裏面側に突出させる。この状態において、図3(シート1については図示省略)に示すように、シート1の裏面側に突出した第1の突起20に固定部材14の第1の係合部40を係合させる。
これには、第1の係合部40の第1の挿通孔41を第1の突起20の第1の軸部21に挿通させるとともに、固定部材14をプラグ差込方向へスライドさせる。すると、段差部43が第1の係止鍔部22の下に入り込む。これにより、第1の突起20と第1の係合部40とが係止される。
【0034】
続いて、図4(シート1については図示省略)に示すように、第1の突起20を支点として固定部材14を器具本体12に接近する方向(平行となる方向)へ回動させ、固定部材14の第2の係合部50をシート1の裏面3側に突出した第2の突起30に係合させる。もちろん、器具本体12を回動させてもよい。
つまり、固定部材14を回動させていくと、第2の係合部50の変形動作部58であるテーパが第2の突起30の第2の係止鍔部32に当接する。さらに、固定部材14を回動させると、変形動作部58のテーパ面と第2の係止鍔部32との作用により、弾性変形部53が外側へ弾性変形され、第2の挿通孔51が拡張される。
【0035】
すると、第2の係止鍔部32が第2の係合部50における第2の挿通孔51に挿入される。第2の係止鍔部32が第2の係合部50における第2の挿通孔51を通過すると、第2の挿通孔51が元の大きさに復帰される。これにより、第2の係止鍔部32は、第2の軸部31の外側面より外方へ突出した部分を有するため、この部分が第2の係止部52に係止され、第2の挿通孔51から抜け止めされる。つまり、図5〜図7に示すように、器具本体12が固定部材14によってシート1の表面2に固定される。
【0036】
<実施形態の効果>
(1)シート1の裏面3側に突出した器具本体12の第1の突起20に固定部材14の第1の係合部40を係合させ、この状態において、第1の突起20を支点として固定部材14を器具本体12に平行となる方向へ回動させ、固定部材14の第2の係合部50をシート1の裏面3側に突出した第2の突起30に係合させるだけで、器具本体12をシート1に固定できる。つまり、従来のように、器具本体12と固定部材14とを平行な姿勢に保ったまま嵌め込む必要がなく、固定部材14と器具本体12との組立が、それらを平行にするように回動することで行われるので、器具本体12をシート1に確実にかつ容易に固定できる。
【0037】
(2)第2の突起30において、第2の係止鍔部32は、第2の軸部31の外側面より前側および幅方向に対して略直交する方向へ突出した部分を備え、固定部材14において、第2の挿通孔51の外周縁と、固定部材14の外郭との間に、スリット54がプラグ差込、引抜方向と略平行に形成され、この各スリット54と第2の挿通孔51との間に弾性変形部53が形成された構成であるため、第2の挿通孔51の外周縁に第2の挿通孔51を挟んで2本のスリット54を所定方向と略平行に形成するだけで、各スリット54と第2の挿通孔51との間に弾性変形部53を容易に作ることができる。
【0038】
(3)各弾性変形部53からこれと対向する弾性変形部53へ向かって突片55が形成され、この突片55と弾性変形部53で囲まれた空間が第2の挿通孔51とされているから、第2の挿通孔51を容易に拡張可能に構成できる。
【0039】
(4)第1の突起20に対して第1の係合部40が係合された状態において、突片55は、第2の突起30の第2の軸部31に対して、第1の係止鍔部22の延長方向とは反対側面に僅かな隙間を隔てて対向する位置に設けられているから、器具本体12がプラグ引抜方向(固定部材14の後側方向)へ力を受けた際には、第1の突起20と第1の係合部40との係合で器具本体12のスライドが規制され、また、器具本体12がプラグ差込方向(固定部材14の前側方向)へ力を受けた際には、第2の突起30の第2の軸部31が突片55に当接して器具本体12のスライドが規制されるから、両方向に対してスライド規制できる。つまり、器具本体12がシート1からずれるのを防止できる。また、器具本体12と固定部材14とが離間する方向に力を受けた際には、第1,第2の係止部42,52で外れるのを防止できる。
【0040】
(5)シート1の裏面側に突出した第1の突起20と固定部材14の第1の係合部40とは、第1の軸部21の先端から所定方向へ向かって延長して形成された第1の係止鍔部22によって係合され、シート1の裏面側に突出した第2の突起30と固定部材14の第2の係合部50とは、第2の軸部31の先端に前記所定方向と略直交する方向に突出して形成された第2の係止鍔部32によって係合されているから、固定部材14や器具本体12に傾く力が作用しても、これらが傾くことが少ない。
たとえば、固定部材14や器具本体12に、所定方向に対して略直交する方向を軸線として傾く力が作用した場合、第1の軸部21の先端から所定方向へ向かって延長して形成された第1の係止鍔部22と第1の係合部40との係合によって、固定部材14や器具本体12の傾きが規制される。また、固定部材14や器具本体12に、所定方向を軸線として傾く力が作用した場合、第2の軸部31の先端から所定方向と略直交する方向に突出して形成された第2の係止鍔部32と第2の係合部50との係合によって、固定部材14やの第2の係合部50の傾きが規制されるから、固定部材14や器具本体12の傾きが規制される。従って、器具本体12をシート1に対してガタなく確実に固定できる。
【0041】
<変形例>
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、以下に示すような変形を含めて本発明は多様な形態で実施できる。
前記実施形態では、第2の挿通孔51を挟んで両側にスリット54を形成し、このスリット54と第2の挿通孔51との間に弾性変形部53を形成したが、弾性変形部53の構成としては、これに限られない。
たとえば、図8に示すように、第2の係合部50において、固定部材14の幅方向の両側縁を中間部から後端部へ向かうに従って互いに接近するように内側に円弧状に切り欠き、第2の挿通孔51を挟む両側のブリッジ部分を狭く形成するようにしても、同様な効果が期待できる。とくに、このような構成とすれば、スリット54を形成しなくともよいから、成形型を簡易化できる。
また、弾性変形部53によって第2の挿通孔51を拡張する以外に、第2の突起30が弾性変形することで、第2の挿通孔51に挿通し、係合するようにしてもよい。
【0042】
前記実施形態では、第2の挿通孔51の両側に弾性変形部53を形成したが、いずれか片側のみでもよい。つまり、第2の挿通孔51の一部が拡張できる構造であれば、両側か片側かは問わない。そのため、第2の突起30の第2の係止鍔部32についても、第2の軸部31の側面から幅方向の両側に突出する構造に限らず、片側にのみ突出する構造であってもよい。
【0043】
前記実施形態では、固定部材14の弾性変形部53において、第2の係止鍔部32が当接する位置から第2の挿通孔51へ向かって傾斜したテーパ状に形成することにより、変形動作部58を構成したが、第2の突起30の先端部、つまり、第2の係止鍔部32の先端面に第2の挿通孔51内に挿入可能なテーパ部を形成して、変形動作部58として構成してもよい。
【0044】
前記実施形態では、器具本体12および固定部材14に、前側に2つ、後側に1つの突起20,30および係合部40,50を配置したが、例えば前側に2つ、後側に2つなど、その数や配置などは実施にあたって適宜選択すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、たとえば、衣服、バッグ、カバー類などのシート製品に対して、バックル、マグネットキャッチ、ベルトアジャスタ、ナスカン、テープストッパ、コードストッパ等を介して、あるいは、直接にベルトやテープ等を装着するための器具に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態を示す分解斜視図。
【図2】前記実施形態のシート装着器具を裏面から見た分解斜視図。
【図3】前記実施形態の組み立て途中を示す斜視図。
【図4】前記実施形態の組立状態を示す斜視図。
【図5】前記実施形態の組立状態を示す背面図。
【図6】図5のVI−VI線断面図。
【図7】図5のVII−VII線断面図。
【図8】固定部材の変形例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0047】
1…シート、2…表面、3…裏面、4…孔、10…シート装着器具、12…器具本体、14…固定部材、20…第1の突起、21…第1の軸部、22…第1の係止鍔部、30…第2の突起、31…第2の軸部、32…第2の係止鍔部、40…第1の係合部、41…第1の挿通孔、42…第1の係止部、43…段差形状、50…第2の係合部、51…第2の挿通孔、52…第2の係止部、53…弾性変形部、54…スリット、55…突片、58…変形動作部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート1の表面に装着される器具本体12と、前記シート1の裏面に配置され前記器具本体12をシート1に固定する固定部材14とを有するシート装着器具10であって、
前記器具本体12は、前記シート1と接する面に互いに離間して突設され、前記シート1を貫通する第1の突起20および第2の突起30を備え、
前記固定部材14は、前記第1の突起20が係合可能で、かつ、前記第1の突起20を支点として前記器具本体12と前記固定部材14とが互いに接近する方向へ回動可能とする第1の係合部40と、前記器具本体12と前記固定部材14とが互いに接近したときに前記第2の突起30に対して係合可能な第2の係合部50とを備え、
前記第2の係合部50は、前記第2の突起30が挿通して係合可能な挿通孔51を有する、ことを特徴とするシート装着器具。
【請求項2】
前記第1の突起20は、第1の軸部21と、この第1の軸部21の先端から所定方向へ向かって延長して形成された第1の係止鍔部22とを有し、
前記第2の突起30は、前記第1の突起20から前記第1の係止鍔部22の延長方向と反対側に離間して設けられた第2の軸部31と、この第2の軸部31の先端に形成され前記所定方向と略直交する方向に突出する第2の係止鍔部32とを有し、
前記第2の係合部50は、前記挿通孔51の少なくとも一部を拡張する方向へ弾性変形させる弾性変形部53を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のシート装着器具。
【請求項3】
前記挿通孔51は、2つの弾性変形部53の間であって、前記弾性変形部53が互いに離間する方向に変形することで拡張可能で、少なくとも一方の弾性変形部53から他方の弾性変形部53に向かって突出する突片55を有し、
前記突片55は、前記第2の突起30の前記第2の軸部31に対して、前記第1の係止鍔部22の延長方向とは反対側面に対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシート装着器具。
【請求項4】
前記第2の係合部50は、前記挿通孔51の周囲に、前記第2の係止鍔部32が係止可能な係止部52を有し、前記弾性変形部53は、前記所定方向と略直交する方向へ弾性変形して、前記挿通孔51を拡張する、ことを特徴とする請求項2に記載のシート装着器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−125593(P2008−125593A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311346(P2006−311346)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】