説明

シート貼付装置及びシート貼付方法

【課題】接着シートASを被着体AHに貼付するシート貼付装置であって、接着シートASをその落下や折れ曲がりを生ずることなく位置決めし、貼付位置のずれや、皺、気泡等の貼付不良を防止できるようにしたものを提供する。
【解決手段】接着シートASを繰り出す繰出手段と、繰出手段により繰り出された接着シートASを位置決めする位置決め手段2と、位置決め手段2で位置決めされた接着シートASを保持する保持手段3と、保持手段3により保持された接着シートASを被着体AHに押圧して貼付する押圧手段4とを備える。位置決め手段2は、接着シートASを下面の接着剤層AD側から接着シートASの面方向に移動可能に支持する支持手段2Aと、接着シートASを所定位置に位置決めするガイド手段2Bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤層を有する接着シートを被着体に貼付するシート貼付装置及び貼付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のシート貼付装置として、接着シートを上面の基材シート側から吸着する真空チャック装置と、接着シートを真空チャック装置に吸着させた状態で位置決めする位置決め装置とを備え、接着シートを位置決めした後に、真空チャック装置を被着体の上方に対向する位置に移動させて下動させることにより、接着シートを被着体に押圧して貼付するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このものでは、接着シートを位置決めする際に真空チャック装置の吸着力(チャック吸着力)を弱めている。然し、チャック吸着力を弱めると、接着シートが落下してしまうことがある。また、落下しない程度にチャック吸着力を弱めたとしても、剛性の低い接着シートの場合、位置決め時に接着シートが折れ曲がってしまい正確な位置決めができず、被着体への接着シートの貼付位置にずれを生じてしまう。更に、接着シートを折れ曲がった状態のまま被着体に貼付してしまうと、弛みによる皺や気泡等の貼付不良を生ずるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−296638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、接着シートをその落下や折れ曲がりを生ずることなく位置決めし、貼付位置のずれや、皺、気泡等の貼付不良を防止できるようにしたシート貼付装置及びシート貼付方法を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、接着剤層を有する接着シートを被着体に貼付する本発明のシート貼付装置は、接着シートを繰り出す繰出手段と、繰出手段により繰り出された接着シートを位置決めする位置決め手段と、位置決め手段で位置決めされた接着シートを保持する保持手段と、保持手段により保持された接着シートを被着体に押圧して貼付する押圧手段とを備え、前記位置決め手段は、接着シートを下面の接着剤層側から接着シートの面方向に移動可能に支持する支持手段と、当該支持手段に支持される接着シートを所定位置に位置決めするガイド手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明において、前記支持手段は、接着シートの接着剤層に気体を吹き付けることにより当該接着シートを浮上させて支持可能に構成されることが望ましい。更に、前記保持手段及び前記押圧手段は、前記繰出手段から繰り出された接着シートを前記位置決め手段に移送する移送手段に兼用されることが望ましい。
【0008】
また、上記課題を解決するために、接着剤層を有する接着シートを被着体に貼付する本発明のシート貼付方法は、接着シートを繰り出す工程と、繰り出された接着シートを位置決めする位置決め工程と、位置決めされた接着シートを保持する工程と、接着シートを被着体に押圧して貼付する工程とを備え、前記位置決め工程では、接着シートを下面の接着剤層側から接着シートの面方向に移動可能に支持した状態で所定位置に位置決めすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、接着シートを下面の接着剤層側、即ち、下方から接着シートの面方向に移動可能に支持した状態で位置決めするため、上記従来例のようなチャック吸着力に起因する接着シートの落下や折れ曲がりを生ずることなく、接着シートを位置決めできる。従って、接着シートの貼付位置のずれや、皺、気泡等の貼付不良を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態のシート貼付装置の側面図。
【図2】実施形態のシート貼付装置の斜視図。
【図3】実施形態のシート貼付装置の作動を説明する説明図。
【図4】位置決め手段の変形例の側面図。
【図5】位置決め手段の他の変形例の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、基材シートBSの一方の面に接着剤層ADを有する接着シートASを被着体AHに貼付するシート貼付装置に本発明を適用した実施形態について説明する。尚、本明細書の方向若しくは位置を示す用語は、特に明示しない限り、図1を基準とし、「前」とは同図中手前側を示す一方、「後」とは、同奥行き側について用いられ、「左」、「右」、「上」、「下」も同様に図1を基準とする。
【0012】
図1、図2を参照して、本実施形態のシート貼付装置は、被着体AHを搬送する搬送手段としてのコンベアCVと、コンベアCVよりも上方に配置され、接着シートASを繰り出す繰出手段1と、コンベアCVよりも上方で且つ繰出手段1よりも下方に配置され、繰出手段1により繰り出された接着シートASを位置決めする位置決め手段2と、繰出手段1よりも左方に配置され、位置決め手段2で位置決めされた接着シートASを基材シートBS側から保持する保持手段3と、保持手段3に保持された接着シートASを被着体AHに押圧して貼付する押圧手段4とを備える。
【0013】
繰出手段1は、剥離シートRLに間隔を存して多数の接着シートASが仮着された原反RSを巻回した状態で保持する繰出軸11と、上下2個のガイドローラ12,13と、剥離シートRLを折り返すことで当該剥離シートRLから接着シートASを剥離する剥離板14と、剥離板14を通過した剥離シートRLを挟み込む駆動ローラ15及びニップローラ16と、剥離シートRLを巻き取る巻取軸17とを備えている。駆動ローラ15と巻取軸17は、夫々駆動機器としての回動モータDM1、DM2により回転駆動される。
【0014】
位置決め手段2は、接着シートASを下面の接着剤層AD側から接着シートASの面方向に移動可能に支持する支持手段2Aと、支持手段2A上に支持される接着シートASを所定位置に位置決めするガイド手段2Bとで構成され、駆動機器としての直動モータLM1により保持手段3の真下の進出位置(図1に実線で示す位置)とそれより右方の退避位置(図1に仮想線で示す位置)とに進退可能に設けられている。
【0015】
支持手段2Aは、上面を多孔質の気体噴出面21aとした中空盤状の支持ヘッド21と、支持ヘッド21の内部空間にチューブ22を介して接続される図示省略した加圧ポンプや加圧タンク等の気体供給手段とで構成されている。尚、気体供給手段で供給する気体は、空気に限らず、窒素ガスやネオンガス等のガスでもよい。
【0016】
ガイド手段は、支持ヘッド21に形成したスリット21bを通して支持ヘッド21の上方に突出する左右方向両側のピン23と、支持ヘッド21に形成したスリット21cを通して支持ヘッド21の上方に突出する前後方向両側のピン24とで構成されている。
左右方向両側のピン23は、駆動機器としての直動モータLM2により接近離間可能に設けられ、最接近したときの両ピン23間の距離が接着シートASの左右方向長さに等しくなるように設定されている。同様に、前後方向両側のピン24も、駆動機器としての直動モータLM3により接近離間可能に設けられ、最接近したときの両ピン24間の距離が接着シートASの前後方向長さに等しくなるように設定されている。
【0017】
保持手段3は、剥離板14の前方に隣接する位置に配置され、下面に多数の吸着孔31aを形成した中空盤状の保持ヘッド31と、保持ヘッド31の内部空間にチューブ32を介して接続される図示省略した真空ポンプやエジェクタ等の減圧手段とで構成され、接着シートASをその上面の基材シートBS側から吸着保持する。また、押圧手段4は、保持ヘッド31を上下動させる駆動機器としての直動モータLM4で構成される。
【0018】
次に、本実施形態のシート貼付装置の作動について説明する。図1は、接着シートASを繰り出す前の状態を示しており、位置決め手段2を進出位置に前進させると共に、保持ヘッド31をその下面が剥離板14より上方になる位置に上動させている。この状態から気体供給手段を駆動させて支持ヘッド21に気体を供給すると共に、繰出手段1を作動させて、剥離板14の左方に接着シートASを接着剤層ADが下向きの状態で繰り出し、図3(a)に示す如く接着シートASを上面の基材シートBS側から保持ヘッド31により吸着保持する。尚、この状態では、接着シートASが保持ヘッド31に正規位置からずれた状態で保持される可能性がある。
【0019】
次に、保持ヘッド31を下動させ、図3(b)に示す如く支持ヘッド21に接着シートASを移送する。ここで、保持ヘッド31から成る保持手段3及び直動モータLM4から成る押圧手段4は、繰出手段1から繰り出された接着シートASを支持ヘッド21から成る位置決め手段2に移送する移送手段に兼用されることになる。
【0020】
接着シートASの移送完了後は、保持ヘッド31による接着シートASの吸着を解除した状態で保持ヘッド31を上動させると共に、図3(c)に示す如く支持ヘッド21上の左右方向両側のピン23と前後方向両側のピン24を夫々接近動作させる。これにより、支持ヘッド21に支持される接着シートASが所定位置に位置決めされる。次に、保持ヘッド31を再度下動させ、図3(d)に示す如く支持ヘッド21上の接着シートASを上面の基材シートBS側から保持ヘッド31に吸着保持する。この状態では、接着シートASが保持ヘッド31に正規位置からずれることなく保持される。尚、保持ヘッド31は、位置決め状態にある各ピン23,24の内側に入れる寸法であるが、保持ヘッド31の寸法をこれより大きくし、その下面にスリット21b、21cと同様の各ピン23、24に対する干渉を避けるためのスリットを設けてもよい。
【0021】
その後、図3(e)に示す如く保持ヘッド31を上動させると共に、ピン23とピン24を夫々離間動作させ、気体供給手段の駆動を停止させた後、位置決め手段2を退避位置に後退させる。そして、図示省略したセンサにより被着体AHが保持ヘッド31の直下位置に到達したことが検知されると、コンベアCVを一時停止させると共に、図3(f)に示す如く保持ヘッド31を直動モータLM4により下動させ、接着シートASを被着体AHに押圧して貼付する。その後、保持ヘッド31による接着シートASの吸着を解除した状態で保持ヘッド31を上動させると共に、位置決め手段2を進出位置に前進させる。以上により1回のシート貼付作業が終了し、以降上記同様の動作が繰り返される。
【0022】
本実施形態によると、接着シートASの位置決めに際し、接着シートASの下面の接着剤層ADに気体を吹き付けることにより、接着シートASを支持ヘッド21上に浮上させた状態で支持するから、接着シートASは、支持ヘッド21からの摩擦抵抗を受けることなく接着シートASの面方向に移動可能に支持される。そのため、接着シートASの落下や折れ曲がりを生ずることなく、接着シートASを位置決めできる。従って、被着体AHに対する接着シートASの貼付位置のずれや、折れ曲がりに起因する皺、気泡等の貼付不良を防止できる。
【0023】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、支持ヘッド21の上面に、接着シートASの下面の接着剤層ADに点接触する図4に示す針25や、図5に示す上端が尖った突起26を突設してもよい。このものでも、接着シートASを下面の接着剤層AD側から大きな摩擦抵抗を生ずることなく接着シートの面方向に移動可能に支持することができる。尚、針25や突起26の上端には、フッ素樹脂コーティングや粗面処理等の非接着処理を施こすことが望ましい。
【0024】
また、上記実施形態では、支持ヘッド21に、左右方向両側のピン23と、前後方向両側のピン24とを設けているが、接着シートASは、剥離板14からの繰出方向と直交する前後方向には殆ど位置ずれしないため、前後方向両側のピン24は省略可能である。更に、左右方向両側のピン23の一方を支持ヘッド21に固定し、この一方のピンに対する他方のピンの接近動作で接着シートASを位置決めするようにしてもよい。
また、上記実施形態において、各ピン23,24の断面形状は円形であるが、三角形、四角形やそれ以上の多角形等の非円形であってもよく、更には、ピン23,24を板状体に代えてもよく、要は、接着シートASを位置決め可能なものであればよい。
【0025】
また、支持ヘッド21の上面周縁部に、上記ピン23,24に代えて、上端に内下がりの傾斜面を有するガイドブロックを立設し、このガイドブロックでガイド手段2Bを構成することも可能である。この場合、接着シートASはガイドブロックの傾斜面に案内されて位置決めされる。更に、接着シートASに孔が形成されている場合、支持ヘッド21に接着シートASに設けられた孔に嵌合するテーパーピンを立設し、このテーパーピンでガイド手段2Bを構成してもよい。当該孔及びテーパーピンは単数でも複数でもよい。
【0026】
また、上記実施形態では、繰出手段1から繰り出される接着シートASを一旦保持ヘッド31に保持させ、保持ヘッド31を下動させて支持ヘッド21に接着シートASを移送するようにしたが、繰出手段1から繰り出される接着シートASを支持ヘッド21に直接落とし込むようにしてもよい。
【0027】
更に、保持手段3は、静電チャックで構成してもよく、また、押圧手段4は、気体を吹き出すことにより、接着シートASを被着体AHに押圧して貼付するものであってもよい。
【0028】
更に、上記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダ及びロータリシリンダ等のアクチュエタ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる。
【0029】
また、保持手段3及び押圧手段4を移送手段として兼用する場合は、保持手段3及び押圧手段4を駆動機器によって左右方向への移動を可能としておき、剥離板14の上方に位置する接着シートASを保持した状態から接着シートASの繰り出し速度と同速度で左方向に移動しつつ、接着シートASを剥離して位置決め手段2に移送するようにしてもよい。
【0030】
更に、上記実施形態では基材シートBSの一方の面に接着剤層ADを有する2層構造の接着シートASを例示したが、上面に剥離シートが仮着された両面接着シートのような1層構造であってもよいし、他の層を有する3層以上の接着シートであってもよい。
また、接着シートASの形状は、矩形形状に限らず、丸型や楕円形や三角形であってもよい。この場合、当該接着シートASの形状に合わせてガイド手段2Bの配置を変更する。
【0031】
更に、被着体AHは、段ボールケース、樹脂容器、半導体ウエハ、光ディスク、ガラス板、鋼板、樹脂板その他の板状部材のみならず、任意の形態の部材や物品なども対象とすることができ、何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0032】
AH…被着体、AS…接着シート、BS…基材シート、AD…接着剤層、1…繰出手段、2…位置決め手段、2A…支持手段、2B…ガイド手段、21…支持ヘッド(支持手段の構成要素)、23,24…ピン(ガイド手段の構成要素)、3…保持手段、4…押圧手段。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤層を有する接着シートを被着体に貼付するシート貼付装置において、
接着シートを繰り出す繰出手段と、
繰出手段により繰り出された接着シートを位置決めする位置決め手段と、
位置決め手段で位置決めされた接着シートを保持する保持手段と、
保持手段により保持された接着シートを被着体に押圧して貼付する押圧手段とを備え、
前記位置決め手段は、接着シートを下面の接着剤層側から接着シートの面方向に移動可能に支持する支持手段と、当該支持手段に支持される接着シートを所定位置に位置決めするガイド手段とを備えることを特徴とするシート貼付装置。
【請求項2】
前記支持手段は、接着シートの接着剤層に気体を吹き付けることにより当該接着シートを浮上させて支持可能に構成されることを特徴とする請求項1記載のシート貼付装置。
【請求項3】
前記保持手段及び前記押圧手段は、前記繰出手段から繰り出された接着シートを前記位置決め手段に移送する移送手段に兼用されることを特徴とする請求項1又は2記載のシート貼付装置。
【請求項4】
接着剤層を有する接着シートを被着体に貼付するシート貼付方法において、
接着シートを繰り出す工程と、
繰り出された接着シートを位置決めする位置決め工程と、
位置決めされた接着シートを保持する工程と、
接着シートを被着体に押圧して貼付する工程とを備え、
前記位置決め工程では、接着シートを下面の接着剤層側から接着シートの面方向に移動可能に支持した状態で所定位置に位置決めすることを特徴とするシート貼付方法。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−67411(P2013−67411A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207790(P2011−207790)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】