シールドフラットケーブル及びその製造方法
【課題】グランド線とシールド層との接触が良好で十分なシールド効果が得られるシールドフラットケーブル及びその製造方法を提供する。
【解決手段】シールドフラットケーブル1の製造方法は、複数本の平角導体2を平面上に配列し、平角導体2に第一絶縁フィルム3を貼着するとともに平角導体2を露出させた導体露出部15及び窓部6を形成し、第二絶縁フィルム11で窓部6を覆うとともに第二絶縁フィルム11を平角導体2に接着させず窓部6周縁で第一絶縁フィルム3に接着し、第二絶縁フィルム11におけるグランド線2aを覆う箇所をレーザで焼き切って除去しグランド線2aを露出させ、長尺フラットケーブル1Aを切断して短尺のフラットケーブル1Bとし、フラットケーブル1Bの外側にシールド層9を貼着して、グランド線2aとシールド層9を電気的に接続する。
【解決手段】シールドフラットケーブル1の製造方法は、複数本の平角導体2を平面上に配列し、平角導体2に第一絶縁フィルム3を貼着するとともに平角導体2を露出させた導体露出部15及び窓部6を形成し、第二絶縁フィルム11で窓部6を覆うとともに第二絶縁フィルム11を平角導体2に接着させず窓部6周縁で第一絶縁フィルム3に接着し、第二絶縁フィルム11におけるグランド線2aを覆う箇所をレーザで焼き切って除去しグランド線2aを露出させ、長尺フラットケーブル1Aを切断して短尺のフラットケーブル1Bとし、フラットケーブル1Bの外側にシールド層9を貼着して、グランド線2aとシールド層9を電気的に接続する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器などに用いられるシールドフラットケーブル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小形化、軽量化に伴い、これらに搭載される電子部品、配線用部品等の小形化が進んでいる。特に、電気配線のための配線部材は、限られたスペースで高密度の配線が可能なものが要望されている。オーディオ,ビデオ等の民生機器、プリンター,スキャナ,複写機等のOA機器、DVD,CD−ROM,MO,PC、その他の電子機器用配線等、ノイズ対策を必要とする製品の機内配線には、シールド機能を備えたシールドフラットケーブルが使用されている。
【0003】
フラットケーブルは、複数本の平角導体を一平面上に配列し、その配列面の両側からそれぞれ絶縁フィルムをラミネートしたものである。シールドフラットケーブルの場合、ラミネートした絶縁フィルムの外側に金属箔等のシールド層が設けられる。複数本の平角導体のうち一部はグランド線であり、グランド線とシールド層が電気的に接続された構造を有している。
【0004】
例えば、特許文献1に記載のシールドフラットケーブルは、図12に示すように、複数本の平角導体112が横一列に、互いに平行に、等ピッチで配置され、それらの上下両側が絶縁性接着層116と絶縁層114を有するプラスチックフィルム(絶縁フィルム)で被覆されてフラットケーブル110とされ、該フラットケーブル110に、最外層をPETなどの絶縁層122、中層をCuやAlなどの金属層(シールド層)124、最内層を絶縁性接着層126としたシールド被覆テープ120が被覆されて構成されている。平角導体112のうち、左右両端のものが、接地導体(グランド線)112aとされている。このシールドフラットケーブルは、図13に示すように、接地導体112aの上部位置の場所に長手方向で複数箇所、接合部121が設けられている。この接合部121では、シールド被覆テープ120の金属層124が絶縁性接着層126を介さずに直接接地導体112aと接続されている。
【0005】
このシールドフラットケーブルを製造する際には、プラスチックフィルムのラミネート前に、予め接地導体112aの直上にあたる部分の絶縁性接着層116及び絶縁層114を予め金型などで穴を開けておくか、または、プラスチックフィルムのラミネート後であってシールド被覆テープ120のラミネート前に、接地導体112aの直上にあたる絶縁性接着層116及び絶縁層114の部分にレーザ等で予め穴を開けておく。そして、その穴の部分でシールド被覆テープ120の金属層124と接地導体112aとを電気的に接続させる。
【0006】
また、例えば、特許文献2に記載のシールドフラットケーブルは、平角導体に貼着する第1絶縁フィルムに、平角導体の並列ピッチ以上の幅の窓部を形成しておき、第1絶縁フィルムを貼着した後、窓部におけるグランド線以外の平角導体に第2絶縁フィルムを貼着して、グランド線のみをシールド層に接続させるものである。
【0007】
【特許文献1】特開2005−93178号公報
【特許文献2】特開2008−41451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
平角導体に絶縁フィルムをラミネートする際には、長尺の複数本の平角導体を平面上に整列させた状態で走行させ、それに合わせて長尺の絶縁フィルムを走行させつつ平角導体を挟むようにして配列面の両側から貼り合わせる。そのため、上記のようにラミネート前に絶縁フィルムに穴を開けた場合、走行する平角導体の位置ずれ、走行する絶縁フィルムの位置ずれ、絶縁フィルム内の穴の位置ずれ、などの要因により、ラミネータ(貼り合わせ部)の箇所で穴の位置をグランド線上に正確に位置合わせすることが難しく、幅方向にずれてしまうことがある。例えば、平角導体の並列ピッチが0.5mmである場合に、幅方向の位置ずれ量が0.2mm以上となると、グランド線以外の平角導体(信号線や給電線)がシールド層に接続され接地されてしまう。
【0009】
また、絶縁フィルムのラミネート後にレーザで穴を開けても、その穴の内側で樹脂の滓が出て、完全に穴が開かないことがある。特に、絶縁フィルムの接着層がポリエステル系である場合にこの間題が顕著となる。穴の形成が不完全であると、グランド線とシールド層との接触不良が生じてシールド層の接地が不十分になる。シールド層の接地が不十分であると、ノイズが乗り易いなど、十分なシールド特性が得られなくなる。特に、平角導体の並列ピッチが狭ピッチ(0.5mm以下)であると穴の開口部が狭く、滓が邪魔となって接触不良となるおそれが大きい。
【0010】
そこで、本発明の目的は、グランド線とシールド層との接触が良好でシールド層の接地が確実なシールドフラットケーブル及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決することのできる本発明に係るシールドフラットケーブルは、グランド線である導体を含む複数本の平角導体が所定の並列ピッチで平面上に配列され、前記平角導体の配列面の両面から前記平角導体に第一絶縁体及び接着剤層を含む第一絶縁フィルムが貼着され、前記第一絶縁フィルムの外側にシールド層が貼着されたシールドフラットケーブルであって、
当該シールドフラットケーブルの長手方向端部以外の一部に、少なくとも前記グランド線に前記第一絶縁フィルムが貼着されていない前記並列ピッチ以上の幅の窓部を有し、
前記窓部では、前記平角導体が第二絶縁体を含みかつ接着剤層がない第二絶縁フィルムに覆われ、前記第二絶縁フィルムの前記グランド線を覆う部分が除去されて前記グランド線が前記シールド層と電気的に接続されており、
前記第二絶縁フィルムは、前記平角導体には接着されず、前記窓部周縁の前記第一絶縁フィルムに接着されていることを特徴とする。
【0012】
本発明のシールドフラットケーブルにおいて、前記窓部は、前記第一絶縁フィルムの幅方向に亘って全ての前記平角導体が前記第一絶縁フィルムに貼着されないように形成されていることが好ましい。
【0013】
本発明のシールドフラットケーブルにおいて、前記第二絶縁フィルムは、前記窓部に面する側にアンカーコート剤層を有し、前記窓部周縁で前記アンカーコート剤層が接着剤を介して前記第一絶縁フィルムに接着されていることが好ましい。
【0014】
上記課題を解決することのできる本発明に係るシールドフラットケーブルの製造方法は、グランド線である導体を含む複数本の平角導体を所定の並列ピッチで平面上に配列する配列工程と、前記平角導体の配列面の両面から前記平角導体に第一絶縁体を含む第一絶縁フィルムを貼着して長尺フラットケーブルを形成する第一絶縁フィルム貼着工程と、前記長尺フラットケーブルを切断して所定の長さのフラットケーブルとする切断工程と、前記切断工程後に前記フラットケーブルの外側にシールド層を貼着するシールド層貼着工程と、前記グランド線と前記シールド層を電気的に接続する接続工程と、を有するシールドフラットケーブルの製造方法であって、
前記第一絶縁フィルム貼着工程において、前記切断工程で切断して前記フラットケーブルの長手方向端部となる箇所に全ての前記平角導体を露出させた導体露出部を設けるとともに、前記導体露出部以外の長手方向の一部に、少なくとも前記グランド線の一方の面に前記第一絶縁フィルムを貼着しない前記並列ピッチ以上の幅の窓部を形成し、
前記第一絶縁フィルム貼着工程と前記シールド層貼着工程との間に、第二絶縁体を含む第二絶縁フィルムで前記窓部を覆うとともに、前記第二絶縁フィルムを前記平角導体に接着させず前記窓部周縁で前記第一絶縁フィルムに接着する第二絶縁フィルム貼着工程と、前記第二絶縁フィルムにおける前記グランド線を覆う箇所をレーザで焼き切って除去し前記窓部内の前記グランド線を露出させるグランド線露出工程と、を行うことを特徴とする。
【0015】
本発明のシールドフラットケーブルの製造方法において、前記第二絶縁フィルム貼着工程と前記グランド線露出工程との間に、前記導体露出部をメッキ液に浸すことにより前記導体露出部の平角導体に電気メッキを施すメッキ工程を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、グランド線とシールド層を電気的に接続する箇所には、グランド線に対して第一絶縁フィルムを貼着しないように、平角導体の並列ピッチ以上の幅の窓部を形成して平角導体の配列面の両面に第一絶縁フィルムを貼着させている。窓部が並列ピッチ以上の幅を有しているため、走行している平角導体の配列面に第一絶縁フィルムを貼着するときに多少の幅方向の位置ずれがあったとしても、グランド線上に窓部を確実に配置することができ、シールド層を貼着した後のグランド線に対するシールド層の接続を妨げず、確実にシールド層を接地することができる。
また、窓部におけるグランド線以外の平角導体は、第二絶縁フィルムにより覆われ、シールド層とグランド線以外の平角導体との接触を防止している。第二絶縁フィルムは接着剤層がなく平角導体に接着しないため、窓部全体を覆うように第二絶縁フィルムを貼着した後にレーザによってグランド線上の第二絶縁フィルムを除去しても、露出させたグランド線上に接着剤の滓が残らず、グランド線とシールド層との接触不良を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係るシールドフラットケーブル及びその製造方法の実施形態の例について図面を参照して説明する。
図1は本発明に係るシールドフラットケーブルの一方の面を示す平面図であり、図2は図1のシールドフラットケーブルの他方の面を示す平面図であり、図3は図1および図2の矢視A−A断面図であり、図4は図1および図2の矢視B−B断面図である。なお、図3及び図4は、図1に示す一方の面を上側にして図示している。
【0018】
図1から図4に示すように、シールドフラットケーブル1は、複数本(図1に示す例では10本)の平角導体2を備え、これら平角導体2が所定の並列ピッチで平面上に配列され、平角導体2の配列面の両面にそれぞれ第一絶縁体を含む第一絶縁フィルム3が貼着(ラミネート)されている。第一絶縁フィルム3の外側には、シールド層9を有するシールドフィルム7が貼着されている。シールドフラットケーブル1の長手方向の両端部は、一方の面(図1に示す面)で複数本の全ての平角導体2が露出した導体露出部15とされ、他方の面(図2に示す面)にのみ第一絶縁フィルム3が貼着されており、導体露出部15は電気コネクタの弾性コンタクト片等に接続可能な接続端末として機能する。また、導体露出部15の平角導体2が露出していない側の面(他方の面)には、図2に示すようにポリエステル等の絶縁樹脂からなる端末補強テープ14が貼着されており、露出した平角導体2を支持して変形を防止している。
【0019】
また、導体露出部15を除くシールドフラットケーブル1の長手方向の一部で、一方の面側の第一絶縁フィルム3に窓部6が設けられている。導体露出部15と窓部6を除く部分では、平角導体2の両面に第一絶縁フィルム3が貼着されているが、窓部6では平角導体2の一方の面に第一絶縁フィルム3が貼着されていない。10本の平角導体2のうち、並列幅方向の両端から2番目にそれぞれグランド線2aが配置されている。グランド線2a以外の平角導体2は信号線または給電線であり、窓部6において、平角導体2には第二絶縁体を含む第二絶縁フィルム11が貼着されている。なお、グランド線2aの配置は任意に設定される。
【0020】
平角導体2は、断面長方形に形成された銅基材上に錫メッキ層が積層された構造とされている。本実施形態では、銅基材の外周全域に錫メッキ層が形成されている。銅基材としては、銅または銅合金が用いられる。また、接続端末となる導体露出部15では、電気接触のための圧縮応力を受けることに起因して平角導体2の表面に針状結晶体(ウィスカ)が発生することがあるため、ウィスカの発生を抑制するために少なくとも導体露出部15では平角導体2に金メッキが施されている。金メッキを施すことにより、ウィスカが発生せず、狭いピッチで並べられた各平角導体2が短絡することなく、平角導体2と電気コネクタとの電気接続の信頼性が向上する。
本実施形態において、平角導体2の厚さは0.035mmであり、平角導体2の幅W1は0.3mmであり、10本の平角導体2の並列ピッチPは0.5mmである。
【0021】
第一絶縁フィルム3は、第一絶縁体である絶縁樹脂層5と絶縁性接着層(接着剤層)4からなり、例えば、絶縁樹脂層5はポリエステルまたはポリイミドあるいはPPSやPET等の樹脂であり、絶縁性接着層4はポリエステル系接着剤もしくは難燃PVCである。平角導体2に対して、絶縁性接着層4の面を対向させて2枚の第一絶縁フィルム3が貼り合わされている。これにより、平角導体2同士の電気的絶縁を図っている。
【0022】
シールドフィルム7は、導電性接着層8とシールド層9と樹脂層10からなり、例えば、導電性接着層8は導電フィラー含有接着剤であり、シールド層9はアルミまたは銅であり、樹脂層10はPET等のポリエステルである。導電性接着層8はシールド層9とグランド線2aの良好な導電性接続を図り、シールド層9によりシールドフラットケーブル1のシールド効果を発生させている。樹脂層10はシールド層9の剥離や腐食を防止して、シールドフラットケーブル1の信頼性維持を図っている。
【0023】
シールドフィルム7は、図3及び図4に示すようにシールドフラットケーブル1の全周を覆うように1枚を巻きつけて貼着する他、第一絶縁フィルム3と同様に2枚を対向させて貼り合わせても良い。
【0024】
図3に示すように、シールドフラットケーブル1の長手方向の大部分では全ての平角導体2に対して第一絶縁フィルム3が貼着されているが、図1及び図4に示すようにシールドフラットケーブル1の長手方向の一部では、一方の面に第一絶縁フィルム3が貼着されていない窓部6が設けられている。窓部6は、シールドフラットケーブル1の幅方向(平角導体の配列方向)の長さが、少なくとも平角導体2の並列ピッチP以上とされており、本実施形態では並列した全ての平角導体2が露出するように、並列した平角導体2に対して第一絶縁フィルム3が貼着された全幅にわたっている。
【0025】
この窓部6において、グランド線2aはシールドフィルム7の導電性接着層8が接着されてシールド層9と電気的に接続され、グランド線2a以外の平角導体2はマスキングフィルムである第二絶縁フィルム11により覆われている。第二絶縁フィルム11は、窓部6の周縁部分で接着剤16(図9参照)を介して第一絶縁フィルム3に対して接着されている。
【0026】
第二絶縁フィルム11は、第二絶縁体である絶縁樹脂層13とアンカーコート剤層12からなり、絶縁樹脂層13はポリエステルまたはポリイミドあるいはPPSやPET等の樹脂であり、アンカーコート剤層12は第一絶縁フィルム3の絶縁樹脂層5との接着に使用される接着剤16(図9参照)との接着性向上に寄与し、かつ絶縁性を有する材質である。アンカーコート剤層12の厚さは、1μm程度あればよい。アンカーコート剤層12は、平角導体2に対して接触しているが接着せず、平角導体2同士の間で第二絶縁フィルム11に面した絶縁性接着層4(図4参照)に対して接着されている。このように、第二絶縁フィルム11は、接着剤層を持たず、窓部6内の平角導体2を覆って絶縁を図っている。
【0027】
なお、第一絶縁フィルム3及び第二絶縁フィルム11の絶縁樹脂層5,13がポリイミドであると、フィルムの形状精度が良好であり、窓部6等を精度良く形成できる。
【0028】
次に、上記構造のシールドフラットケーブル1を製造する製造方法について、その手順に沿って説明する。
【0029】
まず、銅基材の表面に錫メッキ層が形成された断面長方形の平角導体2(グランド線2aを含む)を複数本(本実施形態では10本)用意する。
【0030】
次いで、図5に示すように、それぞれ長尺の平角導体2が巻き取られている複数のリール30から平角導体2を送り出して所定の並列ピッチPで同一平面上に配列する(配列工程)。そして、これら平角導体2の上下に、リール31から長尺の第一絶縁フィルム3を送り出してヒータローラ32間に通し、巻き取りローラ33に巻き取る(第一絶縁フィルム貼着工程)。
【0031】
第一絶縁フィルム貼着工程の際、第一絶縁フィルム3の互いの対向面は絶縁性接着層4側とする。つまり、ヒータローラ32の間を通過することにより、第一絶縁フィルム3の絶縁性接着層4が溶融し、平面上に配列された複数本の平角導体2には、表裏から第一絶縁フィルム3が絶縁性接着層4によって貼り合わされ、これら平角導体2が平面上に配列されて絶縁樹脂(絶縁樹脂層5と絶縁性接着層4)で被覆された一連長の長尺フラットケーブルが形成される。
【0032】
ここで、長尺フラットケーブル1Aの一部を図6に示す。長尺フラットケーブル1Aは、図1に示した導体露出部15と窓部6とを設けるために、一方の第一絶縁フィルム3の長手方向の一部に開口した導体露出窓部15aと窓部6が形成されている。導体露出窓部15aはシールドフラットケーブル1の長手方向の端部となる箇所に設けられ、窓部6は導体露出窓部15a以外の箇所、例えばシールドフラットケーブル1の長手方向の略中央部となる箇所に設けられている。導体露出窓部15aの幅W2は、全ての平角導体2が露出するように平角導体2の並列幅より大きくされており、窓部6の幅W3は、少なくともグランド線2aに第一絶縁フィルム3を貼着しないよう、グランド線2a上の位置で並列ピッチP以上の幅を有するように設定される。本実施形態では、W2とW3を同等の幅に設定している。すなわち、本実施形態では窓部6においても全ての平角導体2に第一絶縁フィルム3を貼着しない形状に開口されている。
【0033】
平角導体2に第一絶縁フィルム3を貼着する際には、第一絶縁フィルム3と平角導体2の位置が幅方向にずれることがある。そのずれ量より窓部6の幅W3が小さいと、グランド線2aが第一絶縁フィルム3により覆われて露出しなくなってしまうため、窓部6の幅W3をそのずれ量より大きくなるように設定する。図5に示したようなラミネータは、通常、第一絶縁フィルム3が貼着される間の位置ずれを最大でも平角導体2の並列ピッチP未満にするように精度設計されている。そのため、本実施形態では窓部6の幅W3を少なくとも並列ピッチP以上の幅としており、第一絶縁フィルム3を貼着する際に第一絶縁フィルム3と平角導体2の位置が幅方向に多少ずれたとしても、長手方向における窓部6の位置でグランド線2aに第一絶縁フィルム3が貼着されることは防がれる。したがって、後の工程でグランド線2aとシールド層9との電気的接続を確実に行うことができる。
また、窓部6の長さL1は、第一絶縁フィルム3による絶縁効果を十分に得るためにシールドフラットケーブル1の長さの半分以下とするのが良い。また、窓部6はシールドフラットケーブル1の長手方向に複数設けられていても良い。
【0034】
このように、上記第一絶縁フィルム貼着工程では、予め開口した窓部6及び導体露出窓部15aを有する第一絶縁フィルム3を平角導体2の長手方向に沿って連続的に貼着することで、導体露出窓部15a及び窓部6を形成しているが、図7に示すように、短尺の第一絶縁フィルム3を平角導体2の長手方向に沿って間欠的に貼着することで、導体露出窓部15a及び窓部6を形成しても良い。
【0035】
次いで、図8に示すように、各窓部6に対して、窓部6の全体を覆うように、第二絶縁フィルム11を貼着する(第二絶縁フィルム粘着工程)。第二絶縁フィルム11の貼着は、長尺フラットケーブルのままで、熱貼着により行う。図9に示すように、第二絶縁フィルム11のアンカーコート剤層12を形成した側の面の縁部には、第一絶縁フィルム3と接着するための接着剤16が付与されており、第二絶縁フィルム11を長尺フラットケーブル1Aの窓部6に対して押圧しながら加熱して接着剤16を溶融させ、この接着剤16を介して第二絶縁フィルム11の縁部が窓部6の周縁部に接着される。このとき、窓部6内に面した部分のアンカーコート剤層12は、平角導体2に対して押圧されて接触するが接着せず、窓部6内の平角導体2間に露出した第一絶縁フィルム3の絶縁接着層4に対してのみ接着する(図4参照)。
なお、第二絶縁フィルム11を貼着する時の位置ずれが想定される場合は、第二絶縁フィルム11の大きさを、窓部6の大きさに位置ずれ量を加えた以上の大きさに設定するとよい。
【0036】
第二絶縁フィルム貼着工程の後、長尺フラットケーブルのままでメッキ工程を行う。
このメッキ工程では、図10に示すように、メッキ液槽20に、長尺フラットケーブル1Aを間欠的に送り込んで浸漬させ、長尺フラットケーブル1Aの導体露出部15の部分に露出する平角導体2に電気メッキを施している。露出する平角導体2にメッキ金属を付着させるために、少なくとも1箇所の導体露出部15で、露出する全ての平角導体2と交差する導電部材23で接続一体化して電気的に接続するとよい。長尺フラットケーブル1Aをメッキ液に漬けたときに導電部材23をメッキ液の外で電気クリップ等でメッキ電源21の負電位側に接続し、メッキ液に浸したメッキ金属材22をメッキ電源21の正電位側に接続する。
【0037】
長尺フラットケーブル1Aは、メッキ液槽20内に連続的に送り込んで浸漬させる(連続メッキと呼ばれる)方法の他に、メッキ液槽20に収まる程度の長さに分断して浸漬させるようにしても良い。
【0038】
導体露出部15に施すメッキは、この端末部分でのウィスカの発生を抑制することと、あるいは端末部分と電気コネクタとの電気接続の信頼性を高めるためのもので、好ましくは金メッキが施される。但し、錫メッキ上に直接金メッキを施すと、異種金属接触による電食が生じ、長期の使用に耐えられないおそれがある。このため、下地金属としてニッケルメッキを施してから金メッキを施すようにするのが良い。
【0039】
また、窓部6に第二絶縁フィルム11を貼着した状態でメッキ工程を行うと、メッキが施される部分は必要最小限の導体露出部15のみとなり、無駄に金を消費することがなく、製造コストを抑えることができる。
【0040】
メッキ工程の後、第二絶縁フィルム11におけるグランド線2aを覆う箇所をレーザで焼き切って除去し、第二絶縁フィルム11に穴を開けて、図11に示すように窓部6内のグランド線2aを露出させる(グランド線露出工程)。これにより、窓部6におけるグランド線2a以外の平角導体2は、第二絶縁フィルム11により覆われ、グランド線2aのみが露出した状態となる。第二絶縁フィルム11は窓部6内に面する部分に接着剤を持たないため、レーザによってグランド線2a上の第二絶縁フィルム11を焼き切っても、露出させたグランド線2a上に接着剤の滓が残るようなことがない。例えば、グランド線2aの幅が0.3mmの場合、焼き切る幅は0.4mmである。また、窓部6内のグランド線2aの位置は、第二絶縁フィルム11に覆われた状態であっても長尺フラットケーブル1Aにおける前後の導体露出部15のグランド線2aの位置から正確に推定でき、レーザを正確にグランド線2a上に当てることができる。
【0041】
また、グランド線露出工程の後にメッキ工程を行うことも可能である。その場合、導体露出部15だけでなく窓部6内のグランド線2aにもメッキが施される。
【0042】
グランド線露出工程の後、第一絶縁フィルム3の幅方向の余剰部分(耳と呼ばれる部分)を除去するために、図11に示した破線C1で示す位置で切断される。これにより、窓部6及び導体露出窓部15aの幅方向両端部で第一絶縁フィルム3が長手方向に繋がった箇所が除去される。なお、レーザ照射を行う前にこの余剰部分の切断を行っても良い。
【0043】
このように形成された長尺フラットケーブル1Aは、図11に示した導体露出部15の破線C2で示す位置で切断され、所定の長さのフラットケーブル1Bとされる(切断工程)。
【0044】
長尺フラットケーブル1Aを切断したフラットケーブル1Bには、図2に示すように導体露出部15の導体が露出していない側の面に平角導体2を支持するように第一絶縁フィルム3の上に端末補強テープ14を貼着する。端末補強テープ14の貼着は、切断工程より前に行ってもよい。
【0045】
切断工程の後、図1から図4に示したように、導体露出部15及びその近傍を除く部分にシールドフィルム7を貼着する(シールド層貼着工程)。シールドフィルム7の貼着は、1枚を巻きつけても良いし、2枚を貼り合わせても良い。シールドフィルム7を貼着すると、第二絶縁フィルム11に穴が開けられてグランド線2aが露出した箇所でシールドフィルム7のシールド層9がグランド線2aと電気的に接続する(接続工程)。
【0046】
本実施形態ではシールドフィルム7に導電性接着層8が設けられているため、シールド層貼着工程の際に導電性接着層8が窓部6内に入り込んでグランド線2aに接触し、シールド層貼着工程と同時に接続工程が行われる。導電性接着層8がない場合には、シールド層貼着工程の後に、溶接等によりシールド層9をグランド線2aに接続することが必要となる。シールドフィルム7が導電性接着層8を有する場合には、シールド層9とグランド線2aとの隙間が導電性接着層8によって埋められるため、良好な接続状態が得られやすい。
【0047】
なお、上記実施形態では、窓部6をシールドフラットケーブル1の片面に設けたが、両面でも良い。また、一方の面に複数の窓部6を設けても良い。また、シールド層をシールドフラットケーブル1の一方の側のみに設けても良い。また、導体露出部15を設ける面も適宜変更でき、窓部6と同じ側の面でも反対側の面でも良い。また、シールドフラットケーブル1の両端で導体露出部15を設ける面を逆にすることもできる。また、導体露出部15の裏側の端末補強テープ14は、設けなくても良い。
【0048】
また、上記実施形態では、窓部6の幅W3を、全ての平角導体2に第一絶縁フィルム3を貼着しない幅としているが、並列ピッチP以上であってグランド線2aのみを露出させる幅とすることもできる。
【0049】
このように、上記実施形態のシールドフラットケーブル1及びその製造方法は、並列した平角導体2に対して幅方向に第一絶縁フィルム3の貼着位置がずれても、第一絶縁フィルム3に形成した窓部6の幅W3を、そのずれ量より大きくなるよう並列ピッチP以上としている。そのため、窓部6をグランド線2a上に確実に配置することができ、グランド線に対してシールド層を接続する箇所を塞ぐことがない。また、窓部6を覆う第二絶縁フィルム11にレーザで穴を開けてグランド線2aを露出させても、第二絶縁フィルム11の窓部6に面する箇所には接着剤が無いため、グランド線2a上に樹脂の滓が残るようなことがなく、グランド線2aとシールド層9とを良好な接続状態で導電接続することができ、確実にシールド層9を接地できるシールドフラットケーブル1を得ることができる。
【0050】
なお、グランド線を積層させて配置し、導体露出部で外側のグランド線を折り返してシールド層に接続するシールドフラットケーブルもあるが、その場合は上記実施形態のように連続メッキを施しても積層させた内側のグランド線部分にメッキを施すことができないため、短尺に切断してグランド線を折り返した後にメッキを行う必要がある。それに対して、上記実施形態のシールドフラットケーブル1は、連続メッキによって効率的にメッキを施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本実施形態のシー ルドフラットケーブルの一方の面を示す平面図である。
【図2】本実施形態のシールドフラットケーブルの他方の面を示す平面図である。
【図3】図1および図2の矢視A−A断面図である。
【図4】図1および図2の矢視B−B断面図である。
【図5】本実施形態の製造方法において第一絶縁フィルム貼着工程を示す模式的な斜視図である。
【図6】本実施形態の製造方法における第一絶縁フィルム貼着工程後の長尺フラットケーブルを示す平面図である。
【図7】本実施形態の製造方法における第一絶縁フィルム貼着工程後の長尺フラットケーブルの他の例を示す平面図である。
【図8】本実施形態の製造方法における第二絶縁フィルム貼着工程後のフラットケーブルを示す平面図である。
【図9】本実施形態の製造方法における第二絶縁フィルム貼着工程時のフラットケーブルを示す断面図である。
【図10】本実施形態の製造方法におけるメッキ工程を示す模式図である。
【図11】本実施形態の製造方法におけるグランド線露出工程後のフラットケーブルを示す平面図である。
【図12】従来のシールドフラットケーブルの一例を示す断面図である。
【図13】図12に示したシールドフラットケーブルの他の部分の断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 シールドフラットケーブル
1A 長尺フラットケーブル
1B フラットケーブル
2 平角導体
2a グランド線
3 第一絶縁フィルム
6 窓部
7 シールドフィルム
9 シールド層
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器などに用いられるシールドフラットケーブル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小形化、軽量化に伴い、これらに搭載される電子部品、配線用部品等の小形化が進んでいる。特に、電気配線のための配線部材は、限られたスペースで高密度の配線が可能なものが要望されている。オーディオ,ビデオ等の民生機器、プリンター,スキャナ,複写機等のOA機器、DVD,CD−ROM,MO,PC、その他の電子機器用配線等、ノイズ対策を必要とする製品の機内配線には、シールド機能を備えたシールドフラットケーブルが使用されている。
【0003】
フラットケーブルは、複数本の平角導体を一平面上に配列し、その配列面の両側からそれぞれ絶縁フィルムをラミネートしたものである。シールドフラットケーブルの場合、ラミネートした絶縁フィルムの外側に金属箔等のシールド層が設けられる。複数本の平角導体のうち一部はグランド線であり、グランド線とシールド層が電気的に接続された構造を有している。
【0004】
例えば、特許文献1に記載のシールドフラットケーブルは、図12に示すように、複数本の平角導体112が横一列に、互いに平行に、等ピッチで配置され、それらの上下両側が絶縁性接着層116と絶縁層114を有するプラスチックフィルム(絶縁フィルム)で被覆されてフラットケーブル110とされ、該フラットケーブル110に、最外層をPETなどの絶縁層122、中層をCuやAlなどの金属層(シールド層)124、最内層を絶縁性接着層126としたシールド被覆テープ120が被覆されて構成されている。平角導体112のうち、左右両端のものが、接地導体(グランド線)112aとされている。このシールドフラットケーブルは、図13に示すように、接地導体112aの上部位置の場所に長手方向で複数箇所、接合部121が設けられている。この接合部121では、シールド被覆テープ120の金属層124が絶縁性接着層126を介さずに直接接地導体112aと接続されている。
【0005】
このシールドフラットケーブルを製造する際には、プラスチックフィルムのラミネート前に、予め接地導体112aの直上にあたる部分の絶縁性接着層116及び絶縁層114を予め金型などで穴を開けておくか、または、プラスチックフィルムのラミネート後であってシールド被覆テープ120のラミネート前に、接地導体112aの直上にあたる絶縁性接着層116及び絶縁層114の部分にレーザ等で予め穴を開けておく。そして、その穴の部分でシールド被覆テープ120の金属層124と接地導体112aとを電気的に接続させる。
【0006】
また、例えば、特許文献2に記載のシールドフラットケーブルは、平角導体に貼着する第1絶縁フィルムに、平角導体の並列ピッチ以上の幅の窓部を形成しておき、第1絶縁フィルムを貼着した後、窓部におけるグランド線以外の平角導体に第2絶縁フィルムを貼着して、グランド線のみをシールド層に接続させるものである。
【0007】
【特許文献1】特開2005−93178号公報
【特許文献2】特開2008−41451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
平角導体に絶縁フィルムをラミネートする際には、長尺の複数本の平角導体を平面上に整列させた状態で走行させ、それに合わせて長尺の絶縁フィルムを走行させつつ平角導体を挟むようにして配列面の両側から貼り合わせる。そのため、上記のようにラミネート前に絶縁フィルムに穴を開けた場合、走行する平角導体の位置ずれ、走行する絶縁フィルムの位置ずれ、絶縁フィルム内の穴の位置ずれ、などの要因により、ラミネータ(貼り合わせ部)の箇所で穴の位置をグランド線上に正確に位置合わせすることが難しく、幅方向にずれてしまうことがある。例えば、平角導体の並列ピッチが0.5mmである場合に、幅方向の位置ずれ量が0.2mm以上となると、グランド線以外の平角導体(信号線や給電線)がシールド層に接続され接地されてしまう。
【0009】
また、絶縁フィルムのラミネート後にレーザで穴を開けても、その穴の内側で樹脂の滓が出て、完全に穴が開かないことがある。特に、絶縁フィルムの接着層がポリエステル系である場合にこの間題が顕著となる。穴の形成が不完全であると、グランド線とシールド層との接触不良が生じてシールド層の接地が不十分になる。シールド層の接地が不十分であると、ノイズが乗り易いなど、十分なシールド特性が得られなくなる。特に、平角導体の並列ピッチが狭ピッチ(0.5mm以下)であると穴の開口部が狭く、滓が邪魔となって接触不良となるおそれが大きい。
【0010】
そこで、本発明の目的は、グランド線とシールド層との接触が良好でシールド層の接地が確実なシールドフラットケーブル及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決することのできる本発明に係るシールドフラットケーブルは、グランド線である導体を含む複数本の平角導体が所定の並列ピッチで平面上に配列され、前記平角導体の配列面の両面から前記平角導体に第一絶縁体及び接着剤層を含む第一絶縁フィルムが貼着され、前記第一絶縁フィルムの外側にシールド層が貼着されたシールドフラットケーブルであって、
当該シールドフラットケーブルの長手方向端部以外の一部に、少なくとも前記グランド線に前記第一絶縁フィルムが貼着されていない前記並列ピッチ以上の幅の窓部を有し、
前記窓部では、前記平角導体が第二絶縁体を含みかつ接着剤層がない第二絶縁フィルムに覆われ、前記第二絶縁フィルムの前記グランド線を覆う部分が除去されて前記グランド線が前記シールド層と電気的に接続されており、
前記第二絶縁フィルムは、前記平角導体には接着されず、前記窓部周縁の前記第一絶縁フィルムに接着されていることを特徴とする。
【0012】
本発明のシールドフラットケーブルにおいて、前記窓部は、前記第一絶縁フィルムの幅方向に亘って全ての前記平角導体が前記第一絶縁フィルムに貼着されないように形成されていることが好ましい。
【0013】
本発明のシールドフラットケーブルにおいて、前記第二絶縁フィルムは、前記窓部に面する側にアンカーコート剤層を有し、前記窓部周縁で前記アンカーコート剤層が接着剤を介して前記第一絶縁フィルムに接着されていることが好ましい。
【0014】
上記課題を解決することのできる本発明に係るシールドフラットケーブルの製造方法は、グランド線である導体を含む複数本の平角導体を所定の並列ピッチで平面上に配列する配列工程と、前記平角導体の配列面の両面から前記平角導体に第一絶縁体を含む第一絶縁フィルムを貼着して長尺フラットケーブルを形成する第一絶縁フィルム貼着工程と、前記長尺フラットケーブルを切断して所定の長さのフラットケーブルとする切断工程と、前記切断工程後に前記フラットケーブルの外側にシールド層を貼着するシールド層貼着工程と、前記グランド線と前記シールド層を電気的に接続する接続工程と、を有するシールドフラットケーブルの製造方法であって、
前記第一絶縁フィルム貼着工程において、前記切断工程で切断して前記フラットケーブルの長手方向端部となる箇所に全ての前記平角導体を露出させた導体露出部を設けるとともに、前記導体露出部以外の長手方向の一部に、少なくとも前記グランド線の一方の面に前記第一絶縁フィルムを貼着しない前記並列ピッチ以上の幅の窓部を形成し、
前記第一絶縁フィルム貼着工程と前記シールド層貼着工程との間に、第二絶縁体を含む第二絶縁フィルムで前記窓部を覆うとともに、前記第二絶縁フィルムを前記平角導体に接着させず前記窓部周縁で前記第一絶縁フィルムに接着する第二絶縁フィルム貼着工程と、前記第二絶縁フィルムにおける前記グランド線を覆う箇所をレーザで焼き切って除去し前記窓部内の前記グランド線を露出させるグランド線露出工程と、を行うことを特徴とする。
【0015】
本発明のシールドフラットケーブルの製造方法において、前記第二絶縁フィルム貼着工程と前記グランド線露出工程との間に、前記導体露出部をメッキ液に浸すことにより前記導体露出部の平角導体に電気メッキを施すメッキ工程を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、グランド線とシールド層を電気的に接続する箇所には、グランド線に対して第一絶縁フィルムを貼着しないように、平角導体の並列ピッチ以上の幅の窓部を形成して平角導体の配列面の両面に第一絶縁フィルムを貼着させている。窓部が並列ピッチ以上の幅を有しているため、走行している平角導体の配列面に第一絶縁フィルムを貼着するときに多少の幅方向の位置ずれがあったとしても、グランド線上に窓部を確実に配置することができ、シールド層を貼着した後のグランド線に対するシールド層の接続を妨げず、確実にシールド層を接地することができる。
また、窓部におけるグランド線以外の平角導体は、第二絶縁フィルムにより覆われ、シールド層とグランド線以外の平角導体との接触を防止している。第二絶縁フィルムは接着剤層がなく平角導体に接着しないため、窓部全体を覆うように第二絶縁フィルムを貼着した後にレーザによってグランド線上の第二絶縁フィルムを除去しても、露出させたグランド線上に接着剤の滓が残らず、グランド線とシールド層との接触不良を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係るシールドフラットケーブル及びその製造方法の実施形態の例について図面を参照して説明する。
図1は本発明に係るシールドフラットケーブルの一方の面を示す平面図であり、図2は図1のシールドフラットケーブルの他方の面を示す平面図であり、図3は図1および図2の矢視A−A断面図であり、図4は図1および図2の矢視B−B断面図である。なお、図3及び図4は、図1に示す一方の面を上側にして図示している。
【0018】
図1から図4に示すように、シールドフラットケーブル1は、複数本(図1に示す例では10本)の平角導体2を備え、これら平角導体2が所定の並列ピッチで平面上に配列され、平角導体2の配列面の両面にそれぞれ第一絶縁体を含む第一絶縁フィルム3が貼着(ラミネート)されている。第一絶縁フィルム3の外側には、シールド層9を有するシールドフィルム7が貼着されている。シールドフラットケーブル1の長手方向の両端部は、一方の面(図1に示す面)で複数本の全ての平角導体2が露出した導体露出部15とされ、他方の面(図2に示す面)にのみ第一絶縁フィルム3が貼着されており、導体露出部15は電気コネクタの弾性コンタクト片等に接続可能な接続端末として機能する。また、導体露出部15の平角導体2が露出していない側の面(他方の面)には、図2に示すようにポリエステル等の絶縁樹脂からなる端末補強テープ14が貼着されており、露出した平角導体2を支持して変形を防止している。
【0019】
また、導体露出部15を除くシールドフラットケーブル1の長手方向の一部で、一方の面側の第一絶縁フィルム3に窓部6が設けられている。導体露出部15と窓部6を除く部分では、平角導体2の両面に第一絶縁フィルム3が貼着されているが、窓部6では平角導体2の一方の面に第一絶縁フィルム3が貼着されていない。10本の平角導体2のうち、並列幅方向の両端から2番目にそれぞれグランド線2aが配置されている。グランド線2a以外の平角導体2は信号線または給電線であり、窓部6において、平角導体2には第二絶縁体を含む第二絶縁フィルム11が貼着されている。なお、グランド線2aの配置は任意に設定される。
【0020】
平角導体2は、断面長方形に形成された銅基材上に錫メッキ層が積層された構造とされている。本実施形態では、銅基材の外周全域に錫メッキ層が形成されている。銅基材としては、銅または銅合金が用いられる。また、接続端末となる導体露出部15では、電気接触のための圧縮応力を受けることに起因して平角導体2の表面に針状結晶体(ウィスカ)が発生することがあるため、ウィスカの発生を抑制するために少なくとも導体露出部15では平角導体2に金メッキが施されている。金メッキを施すことにより、ウィスカが発生せず、狭いピッチで並べられた各平角導体2が短絡することなく、平角導体2と電気コネクタとの電気接続の信頼性が向上する。
本実施形態において、平角導体2の厚さは0.035mmであり、平角導体2の幅W1は0.3mmであり、10本の平角導体2の並列ピッチPは0.5mmである。
【0021】
第一絶縁フィルム3は、第一絶縁体である絶縁樹脂層5と絶縁性接着層(接着剤層)4からなり、例えば、絶縁樹脂層5はポリエステルまたはポリイミドあるいはPPSやPET等の樹脂であり、絶縁性接着層4はポリエステル系接着剤もしくは難燃PVCである。平角導体2に対して、絶縁性接着層4の面を対向させて2枚の第一絶縁フィルム3が貼り合わされている。これにより、平角導体2同士の電気的絶縁を図っている。
【0022】
シールドフィルム7は、導電性接着層8とシールド層9と樹脂層10からなり、例えば、導電性接着層8は導電フィラー含有接着剤であり、シールド層9はアルミまたは銅であり、樹脂層10はPET等のポリエステルである。導電性接着層8はシールド層9とグランド線2aの良好な導電性接続を図り、シールド層9によりシールドフラットケーブル1のシールド効果を発生させている。樹脂層10はシールド層9の剥離や腐食を防止して、シールドフラットケーブル1の信頼性維持を図っている。
【0023】
シールドフィルム7は、図3及び図4に示すようにシールドフラットケーブル1の全周を覆うように1枚を巻きつけて貼着する他、第一絶縁フィルム3と同様に2枚を対向させて貼り合わせても良い。
【0024】
図3に示すように、シールドフラットケーブル1の長手方向の大部分では全ての平角導体2に対して第一絶縁フィルム3が貼着されているが、図1及び図4に示すようにシールドフラットケーブル1の長手方向の一部では、一方の面に第一絶縁フィルム3が貼着されていない窓部6が設けられている。窓部6は、シールドフラットケーブル1の幅方向(平角導体の配列方向)の長さが、少なくとも平角導体2の並列ピッチP以上とされており、本実施形態では並列した全ての平角導体2が露出するように、並列した平角導体2に対して第一絶縁フィルム3が貼着された全幅にわたっている。
【0025】
この窓部6において、グランド線2aはシールドフィルム7の導電性接着層8が接着されてシールド層9と電気的に接続され、グランド線2a以外の平角導体2はマスキングフィルムである第二絶縁フィルム11により覆われている。第二絶縁フィルム11は、窓部6の周縁部分で接着剤16(図9参照)を介して第一絶縁フィルム3に対して接着されている。
【0026】
第二絶縁フィルム11は、第二絶縁体である絶縁樹脂層13とアンカーコート剤層12からなり、絶縁樹脂層13はポリエステルまたはポリイミドあるいはPPSやPET等の樹脂であり、アンカーコート剤層12は第一絶縁フィルム3の絶縁樹脂層5との接着に使用される接着剤16(図9参照)との接着性向上に寄与し、かつ絶縁性を有する材質である。アンカーコート剤層12の厚さは、1μm程度あればよい。アンカーコート剤層12は、平角導体2に対して接触しているが接着せず、平角導体2同士の間で第二絶縁フィルム11に面した絶縁性接着層4(図4参照)に対して接着されている。このように、第二絶縁フィルム11は、接着剤層を持たず、窓部6内の平角導体2を覆って絶縁を図っている。
【0027】
なお、第一絶縁フィルム3及び第二絶縁フィルム11の絶縁樹脂層5,13がポリイミドであると、フィルムの形状精度が良好であり、窓部6等を精度良く形成できる。
【0028】
次に、上記構造のシールドフラットケーブル1を製造する製造方法について、その手順に沿って説明する。
【0029】
まず、銅基材の表面に錫メッキ層が形成された断面長方形の平角導体2(グランド線2aを含む)を複数本(本実施形態では10本)用意する。
【0030】
次いで、図5に示すように、それぞれ長尺の平角導体2が巻き取られている複数のリール30から平角導体2を送り出して所定の並列ピッチPで同一平面上に配列する(配列工程)。そして、これら平角導体2の上下に、リール31から長尺の第一絶縁フィルム3を送り出してヒータローラ32間に通し、巻き取りローラ33に巻き取る(第一絶縁フィルム貼着工程)。
【0031】
第一絶縁フィルム貼着工程の際、第一絶縁フィルム3の互いの対向面は絶縁性接着層4側とする。つまり、ヒータローラ32の間を通過することにより、第一絶縁フィルム3の絶縁性接着層4が溶融し、平面上に配列された複数本の平角導体2には、表裏から第一絶縁フィルム3が絶縁性接着層4によって貼り合わされ、これら平角導体2が平面上に配列されて絶縁樹脂(絶縁樹脂層5と絶縁性接着層4)で被覆された一連長の長尺フラットケーブルが形成される。
【0032】
ここで、長尺フラットケーブル1Aの一部を図6に示す。長尺フラットケーブル1Aは、図1に示した導体露出部15と窓部6とを設けるために、一方の第一絶縁フィルム3の長手方向の一部に開口した導体露出窓部15aと窓部6が形成されている。導体露出窓部15aはシールドフラットケーブル1の長手方向の端部となる箇所に設けられ、窓部6は導体露出窓部15a以外の箇所、例えばシールドフラットケーブル1の長手方向の略中央部となる箇所に設けられている。導体露出窓部15aの幅W2は、全ての平角導体2が露出するように平角導体2の並列幅より大きくされており、窓部6の幅W3は、少なくともグランド線2aに第一絶縁フィルム3を貼着しないよう、グランド線2a上の位置で並列ピッチP以上の幅を有するように設定される。本実施形態では、W2とW3を同等の幅に設定している。すなわち、本実施形態では窓部6においても全ての平角導体2に第一絶縁フィルム3を貼着しない形状に開口されている。
【0033】
平角導体2に第一絶縁フィルム3を貼着する際には、第一絶縁フィルム3と平角導体2の位置が幅方向にずれることがある。そのずれ量より窓部6の幅W3が小さいと、グランド線2aが第一絶縁フィルム3により覆われて露出しなくなってしまうため、窓部6の幅W3をそのずれ量より大きくなるように設定する。図5に示したようなラミネータは、通常、第一絶縁フィルム3が貼着される間の位置ずれを最大でも平角導体2の並列ピッチP未満にするように精度設計されている。そのため、本実施形態では窓部6の幅W3を少なくとも並列ピッチP以上の幅としており、第一絶縁フィルム3を貼着する際に第一絶縁フィルム3と平角導体2の位置が幅方向に多少ずれたとしても、長手方向における窓部6の位置でグランド線2aに第一絶縁フィルム3が貼着されることは防がれる。したがって、後の工程でグランド線2aとシールド層9との電気的接続を確実に行うことができる。
また、窓部6の長さL1は、第一絶縁フィルム3による絶縁効果を十分に得るためにシールドフラットケーブル1の長さの半分以下とするのが良い。また、窓部6はシールドフラットケーブル1の長手方向に複数設けられていても良い。
【0034】
このように、上記第一絶縁フィルム貼着工程では、予め開口した窓部6及び導体露出窓部15aを有する第一絶縁フィルム3を平角導体2の長手方向に沿って連続的に貼着することで、導体露出窓部15a及び窓部6を形成しているが、図7に示すように、短尺の第一絶縁フィルム3を平角導体2の長手方向に沿って間欠的に貼着することで、導体露出窓部15a及び窓部6を形成しても良い。
【0035】
次いで、図8に示すように、各窓部6に対して、窓部6の全体を覆うように、第二絶縁フィルム11を貼着する(第二絶縁フィルム粘着工程)。第二絶縁フィルム11の貼着は、長尺フラットケーブルのままで、熱貼着により行う。図9に示すように、第二絶縁フィルム11のアンカーコート剤層12を形成した側の面の縁部には、第一絶縁フィルム3と接着するための接着剤16が付与されており、第二絶縁フィルム11を長尺フラットケーブル1Aの窓部6に対して押圧しながら加熱して接着剤16を溶融させ、この接着剤16を介して第二絶縁フィルム11の縁部が窓部6の周縁部に接着される。このとき、窓部6内に面した部分のアンカーコート剤層12は、平角導体2に対して押圧されて接触するが接着せず、窓部6内の平角導体2間に露出した第一絶縁フィルム3の絶縁接着層4に対してのみ接着する(図4参照)。
なお、第二絶縁フィルム11を貼着する時の位置ずれが想定される場合は、第二絶縁フィルム11の大きさを、窓部6の大きさに位置ずれ量を加えた以上の大きさに設定するとよい。
【0036】
第二絶縁フィルム貼着工程の後、長尺フラットケーブルのままでメッキ工程を行う。
このメッキ工程では、図10に示すように、メッキ液槽20に、長尺フラットケーブル1Aを間欠的に送り込んで浸漬させ、長尺フラットケーブル1Aの導体露出部15の部分に露出する平角導体2に電気メッキを施している。露出する平角導体2にメッキ金属を付着させるために、少なくとも1箇所の導体露出部15で、露出する全ての平角導体2と交差する導電部材23で接続一体化して電気的に接続するとよい。長尺フラットケーブル1Aをメッキ液に漬けたときに導電部材23をメッキ液の外で電気クリップ等でメッキ電源21の負電位側に接続し、メッキ液に浸したメッキ金属材22をメッキ電源21の正電位側に接続する。
【0037】
長尺フラットケーブル1Aは、メッキ液槽20内に連続的に送り込んで浸漬させる(連続メッキと呼ばれる)方法の他に、メッキ液槽20に収まる程度の長さに分断して浸漬させるようにしても良い。
【0038】
導体露出部15に施すメッキは、この端末部分でのウィスカの発生を抑制することと、あるいは端末部分と電気コネクタとの電気接続の信頼性を高めるためのもので、好ましくは金メッキが施される。但し、錫メッキ上に直接金メッキを施すと、異種金属接触による電食が生じ、長期の使用に耐えられないおそれがある。このため、下地金属としてニッケルメッキを施してから金メッキを施すようにするのが良い。
【0039】
また、窓部6に第二絶縁フィルム11を貼着した状態でメッキ工程を行うと、メッキが施される部分は必要最小限の導体露出部15のみとなり、無駄に金を消費することがなく、製造コストを抑えることができる。
【0040】
メッキ工程の後、第二絶縁フィルム11におけるグランド線2aを覆う箇所をレーザで焼き切って除去し、第二絶縁フィルム11に穴を開けて、図11に示すように窓部6内のグランド線2aを露出させる(グランド線露出工程)。これにより、窓部6におけるグランド線2a以外の平角導体2は、第二絶縁フィルム11により覆われ、グランド線2aのみが露出した状態となる。第二絶縁フィルム11は窓部6内に面する部分に接着剤を持たないため、レーザによってグランド線2a上の第二絶縁フィルム11を焼き切っても、露出させたグランド線2a上に接着剤の滓が残るようなことがない。例えば、グランド線2aの幅が0.3mmの場合、焼き切る幅は0.4mmである。また、窓部6内のグランド線2aの位置は、第二絶縁フィルム11に覆われた状態であっても長尺フラットケーブル1Aにおける前後の導体露出部15のグランド線2aの位置から正確に推定でき、レーザを正確にグランド線2a上に当てることができる。
【0041】
また、グランド線露出工程の後にメッキ工程を行うことも可能である。その場合、導体露出部15だけでなく窓部6内のグランド線2aにもメッキが施される。
【0042】
グランド線露出工程の後、第一絶縁フィルム3の幅方向の余剰部分(耳と呼ばれる部分)を除去するために、図11に示した破線C1で示す位置で切断される。これにより、窓部6及び導体露出窓部15aの幅方向両端部で第一絶縁フィルム3が長手方向に繋がった箇所が除去される。なお、レーザ照射を行う前にこの余剰部分の切断を行っても良い。
【0043】
このように形成された長尺フラットケーブル1Aは、図11に示した導体露出部15の破線C2で示す位置で切断され、所定の長さのフラットケーブル1Bとされる(切断工程)。
【0044】
長尺フラットケーブル1Aを切断したフラットケーブル1Bには、図2に示すように導体露出部15の導体が露出していない側の面に平角導体2を支持するように第一絶縁フィルム3の上に端末補強テープ14を貼着する。端末補強テープ14の貼着は、切断工程より前に行ってもよい。
【0045】
切断工程の後、図1から図4に示したように、導体露出部15及びその近傍を除く部分にシールドフィルム7を貼着する(シールド層貼着工程)。シールドフィルム7の貼着は、1枚を巻きつけても良いし、2枚を貼り合わせても良い。シールドフィルム7を貼着すると、第二絶縁フィルム11に穴が開けられてグランド線2aが露出した箇所でシールドフィルム7のシールド層9がグランド線2aと電気的に接続する(接続工程)。
【0046】
本実施形態ではシールドフィルム7に導電性接着層8が設けられているため、シールド層貼着工程の際に導電性接着層8が窓部6内に入り込んでグランド線2aに接触し、シールド層貼着工程と同時に接続工程が行われる。導電性接着層8がない場合には、シールド層貼着工程の後に、溶接等によりシールド層9をグランド線2aに接続することが必要となる。シールドフィルム7が導電性接着層8を有する場合には、シールド層9とグランド線2aとの隙間が導電性接着層8によって埋められるため、良好な接続状態が得られやすい。
【0047】
なお、上記実施形態では、窓部6をシールドフラットケーブル1の片面に設けたが、両面でも良い。また、一方の面に複数の窓部6を設けても良い。また、シールド層をシールドフラットケーブル1の一方の側のみに設けても良い。また、導体露出部15を設ける面も適宜変更でき、窓部6と同じ側の面でも反対側の面でも良い。また、シールドフラットケーブル1の両端で導体露出部15を設ける面を逆にすることもできる。また、導体露出部15の裏側の端末補強テープ14は、設けなくても良い。
【0048】
また、上記実施形態では、窓部6の幅W3を、全ての平角導体2に第一絶縁フィルム3を貼着しない幅としているが、並列ピッチP以上であってグランド線2aのみを露出させる幅とすることもできる。
【0049】
このように、上記実施形態のシールドフラットケーブル1及びその製造方法は、並列した平角導体2に対して幅方向に第一絶縁フィルム3の貼着位置がずれても、第一絶縁フィルム3に形成した窓部6の幅W3を、そのずれ量より大きくなるよう並列ピッチP以上としている。そのため、窓部6をグランド線2a上に確実に配置することができ、グランド線に対してシールド層を接続する箇所を塞ぐことがない。また、窓部6を覆う第二絶縁フィルム11にレーザで穴を開けてグランド線2aを露出させても、第二絶縁フィルム11の窓部6に面する箇所には接着剤が無いため、グランド線2a上に樹脂の滓が残るようなことがなく、グランド線2aとシールド層9とを良好な接続状態で導電接続することができ、確実にシールド層9を接地できるシールドフラットケーブル1を得ることができる。
【0050】
なお、グランド線を積層させて配置し、導体露出部で外側のグランド線を折り返してシールド層に接続するシールドフラットケーブルもあるが、その場合は上記実施形態のように連続メッキを施しても積層させた内側のグランド線部分にメッキを施すことができないため、短尺に切断してグランド線を折り返した後にメッキを行う必要がある。それに対して、上記実施形態のシールドフラットケーブル1は、連続メッキによって効率的にメッキを施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本実施形態のシー ルドフラットケーブルの一方の面を示す平面図である。
【図2】本実施形態のシールドフラットケーブルの他方の面を示す平面図である。
【図3】図1および図2の矢視A−A断面図である。
【図4】図1および図2の矢視B−B断面図である。
【図5】本実施形態の製造方法において第一絶縁フィルム貼着工程を示す模式的な斜視図である。
【図6】本実施形態の製造方法における第一絶縁フィルム貼着工程後の長尺フラットケーブルを示す平面図である。
【図7】本実施形態の製造方法における第一絶縁フィルム貼着工程後の長尺フラットケーブルの他の例を示す平面図である。
【図8】本実施形態の製造方法における第二絶縁フィルム貼着工程後のフラットケーブルを示す平面図である。
【図9】本実施形態の製造方法における第二絶縁フィルム貼着工程時のフラットケーブルを示す断面図である。
【図10】本実施形態の製造方法におけるメッキ工程を示す模式図である。
【図11】本実施形態の製造方法におけるグランド線露出工程後のフラットケーブルを示す平面図である。
【図12】従来のシールドフラットケーブルの一例を示す断面図である。
【図13】図12に示したシールドフラットケーブルの他の部分の断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 シールドフラットケーブル
1A 長尺フラットケーブル
1B フラットケーブル
2 平角導体
2a グランド線
3 第一絶縁フィルム
6 窓部
7 シールドフィルム
9 シールド層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グランド線である導体を含む複数本の平角導体が所定の並列ピッチで平面上に配列され、前記平角導体の配列面の両面から前記平角導体に第一絶縁体及び接着剤層を含む第一絶縁フィルムが貼着され、前記第一絶縁フィルムの外側にシールド層が貼着されたシールドフラットケーブルであって、
当該シールドフラットケーブルの長手方向端部以外の一部に、少なくとも前記グランド線に前記第一絶縁フィルムが貼着されていない前記並列ピッチ以上の幅の窓部を有し、
前記窓部では、前記平角導体が第二絶縁体を含みかつ接着剤層がない第二絶縁フィルムに覆われ、前記第二絶縁フィルムの前記グランド線を覆う部分が除去されて前記グランド線が前記シールド層と電気的に接続されており、
前記第二絶縁フィルムは、前記平角導体には接着されず、前記窓部周縁の前記第一絶縁フィルムに接着されていることを特徴とするシールドフラットケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載のシールドフラットケーブルであって、
前記窓部は、前記第一絶縁フィルムの幅方向に亘って全ての前記平角導体が前記第一絶縁フィルムに貼着されないように形成されていることを特徴とするシールドフラットケーブル。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシールドフラットケーブルであって、
前記第二絶縁フィルムは、前記窓部に面する側にアンカーコート剤層を有し、前記窓部周縁で前記アンカーコート剤層が接着剤を介して前記第一絶縁フィルムに接着されていることを特徴とするシールドフラットケーブル。
【請求項4】
グランド線である導体を含む複数本の平角導体を所定の並列ピッチで平面上に配列する配列工程と、前記平角導体の配列面の両面から前記平角導体に第一絶縁体を含む第一絶縁フィルムを貼着して長尺フラットケーブルを形成する第一絶縁フィルム貼着工程と、前記長尺フラットケーブルを切断して所定の長さのフラットケーブルとする切断工程と、前記切断工程後に前記フラットケーブルの外側にシールド層を貼着するシールド層貼着工程と、前記グランド線と前記シールド層を電気的に接続する接続工程と、を有するシールドフラットケーブルの製造方法であって、
前記第一絶縁フィルム貼着工程において、前記切断工程で切断して前記フラットケーブルの長手方向端部となる箇所に全ての前記平角導体を露出させた導体露出部を設けるとともに、前記導体露出部以外の長手方向の一部に、少なくとも前記グランド線の一方の面に前記第一絶縁フィルムを貼着しない前記並列ピッチ以上の幅の窓部を形成し、
前記第一絶縁フィルム貼着工程と前記シールド層貼着工程との間に、第二絶縁体を含む第二絶縁フィルムで前記窓部を覆うとともに、前記第二絶縁フィルムを前記平角導体に接着させず前記窓部周縁で前記第一絶縁フィルムに接着する第二絶縁フィルム貼着工程と、前記第二絶縁フィルムにおける前記グランド線を覆う箇所をレーザで焼き切って除去し前記窓部内の前記グランド線を露出させるグランド線露出工程と、を行うことを特徴とするシールドフラットケーブルの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のシールドフラットケーブルの製造方法であって、
前記第二絶縁フィルム貼着工程と前記グランド線露出工程との間に、前記導体露出部をメッキ液に浸すことにより前記導体露出部の平角導体に電気メッキを施すメッキ工程を行うことを特徴とするシールドフラットケーブルの製造方法。
【請求項1】
グランド線である導体を含む複数本の平角導体が所定の並列ピッチで平面上に配列され、前記平角導体の配列面の両面から前記平角導体に第一絶縁体及び接着剤層を含む第一絶縁フィルムが貼着され、前記第一絶縁フィルムの外側にシールド層が貼着されたシールドフラットケーブルであって、
当該シールドフラットケーブルの長手方向端部以外の一部に、少なくとも前記グランド線に前記第一絶縁フィルムが貼着されていない前記並列ピッチ以上の幅の窓部を有し、
前記窓部では、前記平角導体が第二絶縁体を含みかつ接着剤層がない第二絶縁フィルムに覆われ、前記第二絶縁フィルムの前記グランド線を覆う部分が除去されて前記グランド線が前記シールド層と電気的に接続されており、
前記第二絶縁フィルムは、前記平角導体には接着されず、前記窓部周縁の前記第一絶縁フィルムに接着されていることを特徴とするシールドフラットケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載のシールドフラットケーブルであって、
前記窓部は、前記第一絶縁フィルムの幅方向に亘って全ての前記平角導体が前記第一絶縁フィルムに貼着されないように形成されていることを特徴とするシールドフラットケーブル。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシールドフラットケーブルであって、
前記第二絶縁フィルムは、前記窓部に面する側にアンカーコート剤層を有し、前記窓部周縁で前記アンカーコート剤層が接着剤を介して前記第一絶縁フィルムに接着されていることを特徴とするシールドフラットケーブル。
【請求項4】
グランド線である導体を含む複数本の平角導体を所定の並列ピッチで平面上に配列する配列工程と、前記平角導体の配列面の両面から前記平角導体に第一絶縁体を含む第一絶縁フィルムを貼着して長尺フラットケーブルを形成する第一絶縁フィルム貼着工程と、前記長尺フラットケーブルを切断して所定の長さのフラットケーブルとする切断工程と、前記切断工程後に前記フラットケーブルの外側にシールド層を貼着するシールド層貼着工程と、前記グランド線と前記シールド層を電気的に接続する接続工程と、を有するシールドフラットケーブルの製造方法であって、
前記第一絶縁フィルム貼着工程において、前記切断工程で切断して前記フラットケーブルの長手方向端部となる箇所に全ての前記平角導体を露出させた導体露出部を設けるとともに、前記導体露出部以外の長手方向の一部に、少なくとも前記グランド線の一方の面に前記第一絶縁フィルムを貼着しない前記並列ピッチ以上の幅の窓部を形成し、
前記第一絶縁フィルム貼着工程と前記シールド層貼着工程との間に、第二絶縁体を含む第二絶縁フィルムで前記窓部を覆うとともに、前記第二絶縁フィルムを前記平角導体に接着させず前記窓部周縁で前記第一絶縁フィルムに接着する第二絶縁フィルム貼着工程と、前記第二絶縁フィルムにおける前記グランド線を覆う箇所をレーザで焼き切って除去し前記窓部内の前記グランド線を露出させるグランド線露出工程と、を行うことを特徴とするシールドフラットケーブルの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のシールドフラットケーブルの製造方法であって、
前記第二絶縁フィルム貼着工程と前記グランド線露出工程との間に、前記導体露出部をメッキ液に浸すことにより前記導体露出部の平角導体に電気メッキを施すメッキ工程を行うことを特徴とするシールドフラットケーブルの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−10107(P2010−10107A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171540(P2008−171540)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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