説明

シールド掘進方法及びシールド掘進機

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、シールド掘進方法及びシールド掘進機に関し、特にトンネル内周を周方向に複数分割した周方向長さを有する断面円弧状の鋼管分割体セグメントを組付ける際に、土水圧荷重を効果的に支持できるようにしたシールド掘進技術に関する。
【0002】
【従来の技術】 各種のシールド坑(上下水道用トンネル、地下鉄用トンネル、通信ケーブル用トンネル、共同溝用トンネルなど)をシールド工法により構築する為の掘削装置としてシールド掘進機が広く実用に供されている。このシールド掘進機は、一般に、掘進機本体と、この掘進機本体の前端部に回転可能に設けられたカッターヘッドと、カッターヘッドを正逆回転駆動する駆動機構と、掘進機本体の外面部の後胴内に配設されトンネル軸方向に所定長さ掘削する毎に、トンネル内面を複数のセグメントで順次覆工していく為のエレクターと、複数のシールドジャッキと、排土設備等を有する。シールドジャッキは、既設セグメントの前端に反力をとりシールド掘進機を掘進させる。排土設備は、カッターヘッドで掘削した掘削土やその掘削土を含む泥水を地上へ搬出する機能を有する。
【0003】前記セグメントとして、従来はトンネル軸心方向に所定長さでトンネル内周面を周方向に複数分割(一般的に6分割または7分割)した大きさのコンクリート製セグメントまたは鋼製のスキンプレートと桁部材とリブ等からなる鋼製セグメントが適用されている。これらコンクリート製セグメントおよび鋼製セグメントは、外圧である土水圧に耐えるため、所定長さ(例えば、100〜175mm程度)のものが適用されている。
【0004】前記セグメントをトンネル内周面に組付ける際には、トンネルを所定長さ(1リング分)掘削する毎にトンネルの掘削を停止し、この停止状態でセグメント組付け位置のシールドジャッキのロッド部のみを退入させてセグメント組付け位置に間隙を形成する。その他のシールドジャッキは既設セグメントに反力をとって土水圧荷重を支える。複数のシールドジャッキのうちの大部分は、カッターヘッドに作用する土水圧荷重でシールド掘進機が後退しないように支持する。
【0005】次に、セグメントをエレクターで把持し、シールドジャッキのロッド部を収縮させた位置に組付け、次にそのセグメントに対応するシールドジャッキにより後方へ押圧し、既設セグメントの前端に当接させる。このように複数のセグメントをトンネル内周面に順次組付けて、1リング分のセグメントリングが組付けられ、その後トンネル掘進が再開される。尚、周方向および軸方向に隣接するセグメント同士は、ボルト・ナットで連結される。
【0006】一方、特開平10−148098号公報には、セグメントの組付けを著しく簡単化することのできるシールド掘進機が記載されている。即ち、このシールド掘進機では、トンネル軸心方向に所定長さを有し周方向の1箇所で分断されたリング状の鋼管セグメント(以後、単に鋼管セグメントという)が適用され、この鋼管セグメントでトンネル内面を順次覆工する。このシールド掘進機では、この後胴内部を挿通してトンネルの中心部を後方に延びるグリッパー支持管と、このグリッパー支持管に外嵌状に設けられ鋼管セグメントを径拡大方向に拡張させる拡張装置と、グリップ装置とが設けられている。
【0007】前記グリップ装置は、後胴の後端よりも後方へ張り出したグリッパー支持管の後部に外嵌状に設けられた2組のグリッパーと、それらグリッパーをグリッパー支持管に軸方向移動可能に支持する筒体と、この筒体の軸方向の位置を切換える位置切換え機構とを有する。筒体はグリッパー支持管に摺動可能に外嵌され2組のグリッパーがグリップ機能状態になると弾性変形してグリッパー支持管に固定状態となる。2組のグリッパーは、夫々筒体の外周部の周方向4等分位置に放射状に固定された油圧シリンダと、それら油圧シリンダのロッド先端部に連結されたグリップ部材とを有する。
【0008】前記油圧シリンダのピストンロッドを伸長させると、4つのグリップ部材が既設の鋼管セグメントの内面に密着するとともに筒体が弾性変形してグリップ状態となり、既設の鋼管セグメントに対してグリッパー支持管が強固に固定されるので、土水圧荷重はグリッパー支持管から筒体に伝達され、油圧シリンダを介してグリップ部材に伝達され、既設の鋼管セグメントに伝達される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】 上述したようにトンネル周方向に複数分割されたセグメントを適用する場合は、トンネルを所定長さ掘進する毎に、複数のセグメントを1個ずつ、トンネル内面に持ち上げて位置決めし、軸方向および周方向に隣接するセグメントに対して夫々ボルトで接合しなければならない。このように、セグメントの分割数が多いため、セグメント組付け作業とボルト接合作業の負荷が多くなり、セグメント組立作業の作業時間が長くかかり、トンネル掘削の能率が低下し、工期が長くなり不利となる。
【0010】前記セグメントは、所定厚さのものが適用されるので、所望のセグメントリングの内径寸法にするには、掘削するトンネル内径を、この厚さ分を見込んでセグメントリングの内径よりも例えば200mm〜350mm程度大きくしなければならない。それ故、掘削する掘削土の量が多くなり、大型のシールド掘進機が必要となり掘削効率が低下する。しかも、セグメントを所期の組付け位置に組付け、隣接の既設セグメントにボルト連結するのを順々に繰り返していって1リング分のセグメントを組付けるため、既設セグメントから制約を受けてセグメント組立て精度が低下し易く、セグメント同士の継ぎ目のシール性を確保しにくくなり、トンネル内面の仕上がり外観を高めるのが難しい。
【0011】前記特開平10−148098号公報に記載のシールド掘進機では、掘進停止中、土水圧荷重により掘進機本体が後退するのを防止するため、グリップ装置の油圧シリンダのピストンロッドを伸長させ4つのグリップ部材を覆工済み鋼管セグメントの内面に押圧密着させることで強固にグリップし、土水圧荷重を最終的に覆工済み鋼管セグメントに伝達している。しかし、土水圧荷重は、地上からの深さによって異なるが、トンネル直径が例えば2〜3mクラスのシールド坑では、100〜300トンもの大きさになる。
【0012】この場合、グリッパーの押圧力は、グリッパーの摩擦係数を0.2として約500〜1500トンになる。このような大きな押圧力で鋼管セグメントの内面を直交状に押圧すると、鋼管セグメントが変形し鋼管セグメント同士を連結する継手部より漏水が発生するという問題がある。更に、グリップ装置は、そのグリップ装置の前後における作業者のアクセスを悪くしているのでセグメントの組立てに支障を来すという問題がある。
【0013】本発明の目的は、セグメントの組付け作業を簡単化し能率を高めること、掘削土の量を少なくすること、セグメントを変形させることなく土水圧荷重を覆工済みの既設セグメントで支持すること、セグメント組立て精度を高めること、エレクターの付近における作業者のアクセスを良好にすること、等である。
【0014】
【課題を解決するための手段】 請求項1のシールド掘進方法は、シールド掘進機によりトンネルを掘削し、そのトンネルの内面にエレクターによりセグメントを覆工するシールド掘進方法において、トンネル内周を周方向に複数分割した周方向長さを有する断面円弧状の鋼管分割体セグメントを用いてトンネル内周を覆工する際に、前記シールド掘進機に掘進方向前方から作用する土水圧荷重を、掘進機本体の周方向複数箇所にシールドジャッキとは独立に且つシールドジャッキ間に配設し荷重支持ジャッキを夫々有する複数の荷重支持機構を介して覆工済みの既設セグメントに支持させる第1工程と、前記覆工済みセグメントよりも前側において、鋼管分割体セグメントを周方向へ移動させる際に鋼管分割体セグメントと干渉する荷重支持ジャッキにおけるロッド部の退入と伸長を介して干渉を防止しつつ、エレクターにより複数の鋼管分割体セグメントをリング状に組立てる第2工程と、前記リング状に組立てたセグメントリングを、複数のシールドジャッキにより後方へ移動させて覆工済みセグメントの前端に当接させる第3工程とを踏んで覆工することを特徴とするものである。
【0015】トンネル掘進の際には、複数のシールドジャッキで覆工済みの既設セグメントの前端に反力をとりながら掘削していく。軸方向にセグメントリングの1リング分掘進する毎に、掘削したトンネルの内面にエレクターにより断面円弧状の鋼管分割体セグメントで覆工していく。
【0016】鋼管分割体セグメントを用いてトンネル内面を覆工する際には、掘削を停止し、第1工程において、前記シールド掘進機に掘進方向前方から作用する土水圧荷重を、掘進機本体の周方向複数箇所にシールドジャッキとは独立に且つシールドジャッキ間に配設した荷重支持機構を夫々有する複数の荷重支持機構を介して既設セグメントに支持させる。次に第2工程において、複数の鋼管分割体セグメントを、既設セグメントよりも前側で、鋼管分割体セグメントを周方向へ移動させる際に鋼管分割体セグメントと干渉する荷重支持ジャッキにおけるロッド部の退入と伸長を介して干渉を防止しつつ、エレクターによりリング状に組立てる。次に第3工程において、複数のシールドジャッキのロッド部を伸長してリング状に組立てたセグメントリングを、後方へ移動させて覆工済みセグメントの前端に当接させる。
【0017】トンネル内周を周方向に複数分割したセグメントを適用するため、エレクターによるセグメント組付け回数が低減し、セグメント同士を連結するボルト連結作業が低減し、セグメント組立作業の作業時間が短くなる。前記土水圧荷重を、荷重支持機構を介して覆工済みセグメントに支持させるので、確実に且つ安全に支持することができる。鋼管分割体セグメントをエレクターによりリング状のセグメントリングに組立てておいてこのセグメントリングを複数のシールドジャッキにより移動させて覆工するのでセグメント組付け作業が簡単化するうえ、セグメントの組付け精度を容易に高めることができる。
【0018】
【0019】第2工程において、複数本の荷重支持ジャッキのうち、鋼管分割体セグメントを周方向へ移動させる際にこの鋼管分割体セグメント及びエレクターと干渉する荷重支持ジャッキのロッド部のみを退入して、鋼管分割体セグメントを周方向の所望の位置に移動させ、その後退入したロッド部を伸長する。
【0020】このように、エレクターと干渉する荷重支持ジャッキのロッド部の退入、鋼管分割体セグメントの周方向への移動、退入したロッド部の伸長という一連の動作を複数回行って複数の鋼管分割体セグメントをリング状に組立てることができる。鋼管分割体セグメントの把持位置をその移動途中で切換える必要がないので、セグメントリングの組立作業を能率的に行うことができる。
【0021】請求項のシールド掘進方法は、請求項発明において、前記鋼管分割体セグメントの後端部に、既設セグメントの前端部の内面に内嵌可能な内嵌係合片を予め形成しておき、セグメントリングを既設セグメントの前端部の内面に内嵌させることを特徴とするものである。既設セグメントとセグメントリングとのボルト連結作業が不要となりセグメント組付け作業が簡単化する。
【0022】請求項のシールド掘進機は、掘進機本体と、掘進機本体の外面部の胴部材と、カッターヘッドと、カッターヘッドを回転駆動するヘッド駆動手段と、複数のシールドジャッキとを備えたシールド掘進機において、トンネル内周を周方向に複数分割した周方向長さを有する断面円弧状の鋼管分割体セグメントをトンネル内面に覆工するエレクターを設け、前記シールドジャッキ間にシールドジャッキと平行に夫々配設されたシールドジャッキとは独立の複数の荷重支持ジャッキを介して、セグメントの組付け時にシールド掘進機に掘進方向前方から作用する土水圧荷重を既設セグメントに伝達する複数の荷重支持機構を設けたものである。
【0023】トンネル掘進の際には、複数のシールドジャッキで既設セグメントの前端に反力をとりながらヘッド駆動手段によりカッターヘッドを回転駆動して掘削していく。セグメントのトンネル軸心方向長さに等しい1リング分掘削する毎に、鋼管分割体セグメントをトンネル内面に覆工する際には、掘削を停止し、土水圧荷重を、シールドジャッキとは独立の複数の荷重支持ジャッキを介して既設セグメントに安全確実に伝達して支持することができる。こうして、シールド掘進機が後退しないように支持した状態で、鋼管分割体セグメントをエレクターにより組立てることができる。
【0024】請求項のシールド掘進機は、請求項の発明において、前記荷重支持ジャッキそのロッド部を後方向きにして配設され、前記各荷重支持機構は、荷重支持ジャッキと、この荷重支持ジャッキのロッド部の後端部に連結されてトンネル径方向外側へ延びた着脱金具と、この着脱金具の外端部に連結されたスプレッダーと、既設セグメントの内面に固着されてスプレッダーを後方から受け止めるストッパ部材とを備えたことを特徴とするものである。
【0025】鋼管分割体セグメントを用いてトンネル内面を覆工する際には、各荷重支持ジャッキのロッド部に着脱金具及びスプレッダーを取付けておいてそのロッド部を伸長させ、スプレッダーにストッパ部材を後方から当接させる。土水圧荷重は、荷重支持ジャッキから着脱金具を経由してスプレッダーに伝達され、スプレッダーを介してストッパ部材で受け止められる。鋼管分割体セグメントの内面に大きな押圧力を作用させて土水圧荷重を支持する必要がないので、比較的小さな厚さの鋼管分割体セグメントを適用可能となり、掘削土量も少なくできる。トンネル掘進の際には、着脱金具とストッパ部材とが干渉しないように、着脱金具をロッド部から外し、荷重支持ジャッキのロッド部を退入する。
【0026】請求項のシールド掘進機は、請求項3又は4の発明において、前記荷重支持ジャッキは、胴部材の内面との間に、鋼管分割体セグメントを通過可能な間隙を以て配設されたことを特徴とするものである。鋼管分割体セグメントを間隙内に自由に通過させることができ、その間隙を活用して鋼管分割体セグメントをリング状に組み立てることができる。
【0027】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態に係るシールド掘進機について図面を参照して説明する。但し、以下の説明はシールド掘進方法についての説明をも含む。尚、掘進方向に向かって前後左右方向をそれぞれ前後左右として説明する。
【0028】図1、図2、図3に示すように、シールド掘進機1は、掘進機本体2と、この掘進機本体2の外面部の胴部材2aと、掘進機本体2の前端部に回転可能に設けられたカッターヘッド3と、このカッターヘッド3を回転駆動する為のヘッド駆動機構4と、例えば10本のシールドジャッキ5と、エレクター6と、4組の荷重支持機構7と、排土設備8等を有する。カッターヘッド3には、複数のカッタースポーク3aと、カッタースポーク3aの前端部に付設された多数のカッタービット3bと、余掘りの為のコピーカッター3c等が設けられている。ヘッド駆動機構4は複数の油圧駆動モータ4a等からなり、掘進機本体2の前端即ち胴部材2a内部の鉛直の隔壁9に固定されてカッターヘッド3を正逆回転駆動する。
【0029】図1、図3に示すように、胴部材2aの後側内面に沿ってリングフレーム10aが固着され、リングフレーム10aよりも前方には、周方向適当間隔おきに支持ブラケット10bが固着されている。例えば10本のシールドジャッキ5が周方向適当間隔おきに後方向きに配設され、各シールドジャッキ5のジャッキ本体は、リングフレーム10aに貫通状に固定されてジャッキ本体の前端が支持ブラケット10bで受け止められている。
【0030】これらシールドジャッキ5は掘進時に覆工済みセグメントの前端に反力をとりシールド掘進機1を掘進させる。シールドジャッキ5のロッド部の後端部には、偏心金具11を介してスプレッダー13が連結されている。一方、セグメントの断面円弧に沿う略円弧状(本実施形態の場合、1/3円円弧状)に形成されたプレスリング12が設けられ、4本又は3本のシールドジャッキ5の推力が、偏心金具11からスプレッダー13とプレスリング12を介してセグメントに伝達される。
【0031】図1、図3に示すように、エレクター6は、エレクター本体14と、エレクター本体14を支持してトンネル軸心回りに回転させる為のエレクタードラム15と、エレクタードラム15を回転駆動する為のドラム駆動用モータ16とを有する。エレクタードラム15は、複数のブラケットに支持部材を介して取り付けられた複数の鍔付き案内ローラで回転自在に支持され、エレクタードラム15の被案内部15aが複数の鍔付き案内ローラで支承されている。エレクタードラム15の内周面にはチェーン部材15bが固定され、ドラム駆動用モータ16のスプロケット16aはこのチェーン部材15bに噛合してエレクタードラム15を回転駆動する。
【0032】エレクター本体14は、エレクタードラム15に連結部材17を介して連結され、可動フレーム18とセグメント把持部19とを有する。エレクター本体14には、連結部材17に固定された左右1対のガイド筒20が設けられ、可動フレーム18をトンネル内面側へ移動させる為の油圧シリンダ21が各ガイド筒20の後側面に設けられている。
【0033】可動フレーム18は、可動フレーム本体18aと左右1対のガイドロッド18bとを有し、可動フレーム本体18aはトンネル軸心と直交する方向に向き、左右1対のガイドロッド18bが可動フレーム本体18aの左右両端に設けられ、可動フレーム本体18aとトンネル軸心方向の双方に直交する状態に突設されている。これら1対のガイドロッド18bは、夫々ガイド筒20に摺動案内され、可動フレーム本体18aは油圧シリンダ21のロッド部に連結されている。
【0034】従って、可動フレーム18は、油圧シリンダ21により移動駆動され、ガイドロッド18bがガイド筒20に摺動案内され、可動フレーム本体18aがトンネル径方向(図3では上下方向)に移動する。セグメント把持部19は、可動フレーム本体18aに油圧シリンダ22により前後方向に位置調整可能に設けられ、搬送台車等により搬送されたセグメントを把持してトンネル内面に組立てる。
【0035】図1、図3〜図8に示すように、セグメントの組付けの際にシールド掘進機1の前端に切羽から作用する土水圧荷重を支持する際に、トンネル内周を略4等分する位置に、4組の荷重支持機構7が設けられている。各荷重支持機構7は、前後方向向きの荷重支持ジャッキ23と、この荷重支持ジャッキ23のロッド部23aに着脱可能な着脱金具24と、スプレッダー29と、セグメントの内面に溶接接合されたストッパ部材25とを有する。各荷重支持ジャッキ23は、シールドジャッキ5の間に配設され、リングフレーム10aに後方向きに固定されている。
【0036】図6〜図8に示すように、着脱金具24はトンネル径方向向きに配設され、その内端がロッド部23aの先端のボス部26に嵌合され、ボス部26の孔部26aに着脱可能な連結ピン27を嵌合させて連結されている。着脱金具24の外端は、連結ピン28を介してスプレッダー29に連結され、スプレッダー29はストッパ部材25により後方から支持される。尚、スプレッダー29とストッパ部材25とは当接離隔自在になっている。シールド掘進機1の前端に作用する土水圧荷重は、4本の荷重支持ジャッキ23に伝達され、着脱金具24とスプレッダー29とストッパ部材25を介して覆工済みセグメントSaに支持される。
【0037】図1、図3に示すように、排土設備8は、カッターヘッド3で掘削した掘削土を地上へ搬出する為のスクリューコンベヤ30を有する。スクリューコンベヤ30の前端は、隔壁9に前方下がり傾斜状に固定されてチャンバー31に連通され、スクリューコンベヤ30の後端側には、スクリュー30aを回転駆動する油圧モータ32が設けられている。尚、スクリューコンベヤ30の油圧モータ32より後側の最後端部には、排土口30bが形成され、この排土口30bを開閉駆動する油圧シリンダ33が設けられている。カッターヘッド3で掘削した掘削土砂は、チャンバー31内からスクリューコンベヤ30に導入され、油圧シリンダ33により開放された排土口30bから搬送コンベヤ(図示略)へ排出され、この搬送コンベヤ等によりトンネル内を後方へ搬送され、立坑から地上へ搬出される。尚、シールド掘進機が泥水用シールド掘進機の場合には、排土設備8の代わりに排泥設備等が設けられる。
【0038】図4に示すように、リング状のセグメントSは、トンネル内周を周方向に略均等に3分割した周方向長さを有する断面円弧状の鋼管分割体セグメントSA ,SB ,SK (以下、セグメントSA ,SB ,SK という)からなり、これらセグメントSA ,SB ,SK は、例えば19mmの厚さの鋼板を曲げ加工して製作され、夫々のセグメントSA ,SB ,SK の内面には、ストッパ部材25が径方向内方に向けて溶接接合されている。セグメントSA は、図4におけるトンネルの内周の下部に配設され、セグメントSB 及びセグメントSK よりもやや円弧長さが長く、セグメントSB とセグメントSK とはトンネル内周の左右に夫々配設される。セグメントSA ,SB ,SK が反時計回りもしくは時計回りに順次配設されて1つのリング状のセグメントリングSが組立てられる。
【0039】図4に示すように、セグメントSA ,SB ,SK の周方向における両端部にはフランジ継手部34が形成され、隣接するフランジ継手部34が複数のボルト35により接合される。尚、各セグメントSA ,SB ,SK の内面側周方向中央部には、覆工後にセグメントの外側へモルタルを充填する為の充填用金具46が設けられている。エレクター6でセグメントを把持する際には、エレクター6のセグメント把持部19で充填用金具46を把持する。
【0040】図9、図10に示すように、セグメントSA ,SB ,SK の後端部には、覆工済みセグメントSaの前端部の内面に内嵌可能な内嵌係合片36が予め溶接接合され、この内嵌係合片36を覆工済みセグメントSaの前端部の内面に内嵌させることで、セグメントリングSと覆工済みセグメントSaの内面の連続性が確保される。尚、内嵌係合片36の外周面には合成樹脂製のシール部材36aも設けられているため、セグメントの継ぎ目をシールできる。
【0041】次に、前記シールド掘進機1の作用を説明する。トンネル掘進の際には、複数のシールドジャッキ5により、覆工済みセグメントSaの前端にプレスリング13を介して反力をとりながら、それらシールドジャッキ5を伸長させつつ、複数の油圧駆動モータ4aを駆動させてカッターヘッド3を回転させ掘削していく。セグメントリングSの1リング分掘進する毎に、油圧駆動モータ4aの駆動を停止し掘削を停止し、掘削したトンネルの内面にエレクター6によりセグメントSA ,SB ,SK を覆工していく。
【0042】次に、セグメントSA ,SB ,SK を用いてトンネル内面を覆工する際に、セグメントSA ,SB ,SK を組付ける手順について説明する。第1工程において、1リング分の掘削が終了したとき掘削を中断後、各荷重支持機構7において、荷重支持ジャッキ23のロッド部23aに着脱金具24とスプレッダー29を連結した状態でロッド部23aを伸長させ、スプレッダー29を覆工済みセグメントSaのストッパ部材25に前方から当接させる。シールド掘進機1に作用する土水圧荷重は、カッターヘッド3から胴部材2a、荷重支持ジャッキ23、着脱金具24、スプレッダー29の順に伝達され、スプレッダー29からストッパ部材25に伝達されストッパ部材25で受け止められる。
【0043】覆工済みセグメントSaのストッパ部材25によりスプレッダー29を後方から受け止めて土水圧荷重を支持する構造になっているため、覆工済みセグメントSaの内面に大きな押圧力を作用させて土水圧荷重を支持する必要がない。その結果、薄肉のセグメントSA ,SB ,SK を適用可能となり、セグメントSA ,SB ,SK の厚さの減少分だけ掘削土量を低減でき、シールド掘進機1の小型化を図ることができ、シールド掘進機1の設備費と、トンネル掘削のランニングコストとを低減できるため、非常に有利である。
【0044】次に、第2工程において、セグメントSA ,SB ,SK を、覆工済みセグメントSaよりも前側において、エレクター6によりリング状のセグメントリングSに組立てる。具体的には、先ずセグメントSA を搬送台車でエレクター6の下方位置まで供給する。尚、供給されるセグメントSA とエレクター6とが干渉しないように、エレクター6は所定の回転位置に待機している。
【0045】セグメントSA の供給後、セグメント把持部19が下方位置になるようにドラム駆動用モータ16を回転させ、次にエレクター6の油圧シリンダ21を駆動してガイドロッド18bを移動し、可動フレーム本体18aをトンネル径方向に移動する。更に、セグメント把持部19にセグメントSA を把持して周方向の所定の位置まで回転させる。この時、4本の荷重支持ジャッキ23のうち、セグメントSA やエレクター6と干渉する荷重支持ジャッキ23のロッド部23aのみを退入させて、セグメントSA を所定の組付け対象位置に向けて移動し、非干渉となった時点で、退入したロッド部23aを伸長する。尚、ロッド部23aの退入時には、着脱金具24及びスプレッダー29が新設するセグメントSA のストッパ部材25に干渉しないように、着脱金具24をロッド部23aから外しておく等の配慮が必要である。
【0046】以下、同様にセグメントSB をセグメントSA に周方向に隣接する所定位置に移動し、これらセグメントSA ,SB のフランジ継手部34同士をボルト35により仮締結する。次にセグメントSK を所定位置に移動して仮組みした後、セグメントSA ,SK のフランジ継手部34同士およびセグメントSB ,SK のフランジ継手部34同士をボルト35により仮締結する。こうして、セグメントSA,SB ,SK をセグメントリングに組立てからセグメント把持部19をセグメントSK から離脱させる。
【0047】このように、セグメントSA やエレクター6と干渉する荷重支持ジャッキ23のロッド部23aの退入、セグメントSA ,SB ,SK の周方向への移動、退入したロッド部23aの伸長という一連の動作を複数回行ってセグメントSA ,SB ,SK をリング状のセグメントリングSに組立てることができる。セグメントSA ,SB ,SK の把持位置をその周方向への移動途中で切換える必要がないので、セグメントリングSの組立作業を能率的に行うことができる。
【0048】次に、第3工程において、10本のシールドジャッキ5のロッド部を一斉に伸長させ、偏心金具11とスプレッダー13を介してプレスリング12を新設したセグメントリングSの前端に当接させ、さらにロッド部を伸長させてセグメントリングSを後方へ押動させ、セグメントリングSの後端部の内嵌係合片36を、覆工済みセグメントSaの前端部の内面に内嵌させる。その結果、セグメントリングSの組付けが完了するので、覆工済みセグメントSaとセグメントリングSとのボルト接合作業が不要となりセグメント組付け作業が簡単化する。
【0049】以上説明したシールド掘進機1及びシールド掘進方法によれば、次のような効果が得られる。鋼管分割体セグメントSA ,SB ,SK は、3つのセグメントでセグメントリングSを構成できるため、セグメント組付け回数が低減し、セグメント同士の連結の為のボルト連結作業も低減する等セグメント組つけの作業負荷が低減するため、セグメント組付けの作業能率が向上し、トンネル掘削費を低減することができる。
【0050】既設セグメントSaの前側にセグメントリングSを組立てから、このセグメントリングSを複数のシールドジャッキ5で後方へ移動させて既設セグメントSaに連結するため、セグメントの組付け制度を高め易く、トンネル内面を綺麗に覆工することができ、セグメントリング同士の継ぎ目からの漏水も発生しにくくなる。特に、セグメントSA ,SB ,SK の後端部に内嵌係合片36とシール部材36aを設け、それら内嵌係合片36を既設セグメントSaの内面に係合させるため、セグメントリング同士の継ぎ目の連続性を高め、その継ぎ目からの漏水も発生しにくくなる。
【0051】セグメント組付けの際、4組の荷重支持機構7により、シールド掘進機1に作用する土水圧の荷重を、既設セグメントSaの内面に固定したストッパ部材25で支持するように構成したため、セグメントSA ,SB ,SK の肉厚や剛性をさ程大きくする必要がなく、約10〜30mm程度の厚さの鋼板製の鋼管分割体セグメントSA ,SB ,SK を適用可能になった。この種のセグメントSA ,SB,SK は、従来のコンクリート製セグメントや鋼製セグメントに比べて簡単安価に制作することができるから、トンネル覆工に用いるセグメント費用を低減することができる。
【0052】しかも、セグメントSA ,SB ,SK の厚さ低減の分だけトンネルの掘削径を小さくできるから、シールド掘進機1を小型化し、掘削土量を低減でき,トンネル掘削費用を低減することだできる。また、荷重支持ジャッキ23をシールドジャッキ5の間に前後方向向きに配設するため、荷重支持ジャッキ23とエレクター6との干渉を極力避けつつ、荷重支持ジャッキ23により土水圧荷重の支持が可能となった。
【0053】また、荷重支持ジャッキ23のストロークをセグメントSA ,SB ,SK のトンネル軸心方向長さよりも大きくしたため、セグメント組立の際にセグメントSA ,SB ,SK を周方向へ移動させる際に、荷重支持ジャッキ23のロッド部の退入と伸長とを介して、荷重支持ジャッキ23とエレクター6との干渉を回避することができ、セグメントSA ,SB ,SK の組立て作業の作業能率の低下を防止できる。
【0054】次に、前記シールド掘進機1を部分的に変更したシールド掘進機1Aと、そのシールド掘進機によるシールド掘進方法について、図11〜図34に基づいて説明する。このシールド掘進機1Aは、荷重支持機構が前記実施形態のものと異なるだけであるので、前記実施形態のものと同様の構成要素に同一符号を付して説明を省略する。
【0055】図11、図12に示すように、このシールド掘進機1Aにおいては、掘進機本体の外面部に、前胴部材2bと、後胴部材2cと、これら胴部材2b,2cを中折れ可能に連結する中折れ部2dとが設けられ、左右両側部には複数の中折れジャッキ45も設けられている。シールド掘進機1Aの前端に作用する土水圧荷重を覆工済みセグメントSaに伝達する2組の荷重支持機構40は、左側部と右側部とに設けられている。各荷重支持機構40は、荷重支持ジャッキ41と、この荷重支持ジャッキ41のロッド部41aに着脱可能な着脱金具42と、スプレッダー43と、ストッパ部材38とを有する。各荷重支持ジャッキ41は、シールドジャッキ5同士の間に前後方向向き且つ後方向きに配設され、そのジャッキ本体はリングフレーム10aに固定されている。
【0056】各荷重支持ジャッキ41は、胴部材の内面との間にセグメントSC を通過可能な間隙δを以て配設され、各荷重支持ジャッキ41は、セグメントSC のトンネル軸心方向長さより短いストローク(例えば、約50mm)のジャッキ本体41aと、トンネル軸心方向にセグメントSc よりも長いロッド部41bとを有する。尚、着脱金具42とスプレッダー43に関しては前記実施形態と同様である。尚、荷重支持ジャッキ41を介して、荷重の伝達、伝達解除が可能であるし、前記ストッパ部材25と同様のストッパ部材38との当接具合調整を行うことができる。
【0057】図33〜図34に示すように、セグメントリングSは、円を3等分した120度円弧断面状のセグメントSC を3個組合わせてリング状に連結することで形成される。各セグメントSC の内面には、前記充填用金具46と同様の充填用金具を含めて、セグメントSC をエレクター6のセグメント把持部19で把持する為の複数の把持部材37が突設され、セグメントSC の内面には、ストッパ部材38(図11参照)が溶接接合され、セグメントSC の周方向における両端部にはフランジ継手部39が形成され、隣接するセグメントSC のフランジ継手部39同士がボルト連結される。
【0058】セグメントSC の後端部には、前記実施形態と同様に、覆工済みセグメントSaの前端部の内面に内嵌可能な内嵌係合片が予め溶接接合され、これら内嵌係合片を覆工済みセグメントSaの前端部の内面に内嵌させることで、セグメントリングSと覆工済みセグメントSaの内面の連続性が確保される。
【0059】次に、掘削済みのトンネル内面にセグメントSC を覆工する手順について、図11〜図34を参照しつつ説明する。図11に示すように、セグメントSC を組付ける際には、掘削を停止した状態で、第1工程において、各荷重支持機構40において、荷重支持ジャッキ41のロッド部41aに着脱金具42とスプレッダー43を取付けておき、1対の荷重支持機構40の1対のロッド部41bを伸長させ、スプレッダー43を覆工済みセグメントSaのストッパ部材38で後方から支持する。土水圧荷重は、カッターヘッド3から胴部材2b、中折れジャッキ45、荷重支持ジャッキ41、着脱金具42、スプレッダー43の順に伝達され、スプレッダー43からストッパ部材38に伝達されストッパ部材38で支持される。
【0060】次に、第2工程において、図11に示すように、セグメントSC を、覆工済みセグメントSaよりも前側で且つ前記間隙δを活用して、エレクター6によりリング状のセグメントリングSに組立てる。この場合、図13に示すように、先ずセグメントSC を搬送台車でエレクター6の下方位置まで搬入する。次に、図14R>4に示すように、セグメント把持部19が下方位置になるように回転させ、その後、エレクター6の油圧シリンダ21を駆動して可動フレーム本体18aをトンネル径方向に移動させ、セグメント把持部19にセグメントSC を把持する。
【0061】次に、図15に示すように、ドラム駆動用モータを回転させてセグメントSCを周方向の所定の組立位置へ向けて回転させる。セグメントSC の回転途中において、セグメント把持部19と1本の荷重支持ジャッキ41とが干渉するため、図16に示すように、セグメント把持位置の切換え作業を行う。この場合セグメントSC の周方向の別の把持部材37をセグメント把持部19で把持する。
【0062】次に、図17に示すように、ドラム駆動用モータを回転させてセグメントSCを周方向の所定の組立位置まで回転させる。以下、図18〜図34に示すように、セグメントSC の供給、把持、回転、把持位置切換え作業等を前記と同様に繰り返し行って最終的にリング状のセグメントリングSに組立てる。ここで、図32に示すように、セグメント把持部19の左右近傍に夫々拡張ジャッキ44が設けられ、セグメントSC をセグメント把持部19に把持した状態で、これら1対の拡張ジャッキ44のロッド部を等しく伸長させると、セグメント把持部19に対してセグメントSC が左右対象に保持され、また、1対の拡張ジャッキ44の一方のロッド部を退入させることで、セグメント把持部19に対してセグメントSC を一方側へ傾けた状態に保持することができる。セグメントリングを組立てる際に、さいごの3番目のセグメントを組立てる際には、セグメント把持部19に対してセグメントSC を何れか一方向へ傾けてリング状に組立てるものとする。
【0063】以上説明したシールド掘進機1Aとシールド掘進方法によれば、基本的には前記実施形態と同様の効果が得られるが、異なる効果について以下に説明する。セグメントSC を間隙δ内に自由に通過させることができ、その間隙δを活用してセグメントSC をリング状に組み立てる関係上、荷重支持ジャッキ41としてストロークの非常に小さなジャッキを適用することができ、荷重支持ジャッキ41の制作費を低減できる。
【0064】しかも、荷重支持ジャッキ41の数も少ないので、荷重支持ジャッキ41の制作費の面で一層有利である。但し、荷重支持ジャッキ41のストロークは小さくても、荷重支持ジャッキ41により荷重伝達、伝達解除の切換え、ストッパ部材38との当接具合の調整等を行うことができるので、セグメント組立ての作業能率を確保することができる。
【0065】1)前記実施形態ではトンネル内面を周方向に3分割したセグメントを用いる場合を例として説明したが、トンネル内面を周方向に2分割、4分割、5分割等の複数分割した周方向長さを有する断面円弧状の鋼管分割体セグメントを適用することも可能である。尚、3分割又は4分割が経済性等で望ましく、その中でも3分割が最もよい。
2)前記実施形態では複数のシールドジャッキ5によりプレスリング13を介してセグメントを移動させる場合を例として説明したが、プレスリング13を用いることなく複数のスプレッダー29で直接セグメントを押圧してもよい。
【0066】3)前記実施形態において、セグメントSA ,SB ,SK の組立て時にエレクター6と荷重支持ジャッキ23の干渉が生じたとき、荷重支持ジャッキ23のロッド部23aの退入、伸長等を行うことなく、必要に応じてセグメント把持位置の切換え作業を行うこともある。
4)荷重支持ジャッキ23の本数は、シールド径や深度に応じた土水圧荷重の大きさにより決められ、5本以上設けてもよく、2本〜4本設けてもよい。尚、その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施することも可能であることは勿論である。
【0067】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、トンネル内周を周方向に複数分割したセグメントを適用するため、エレクターによるセグメントの組付け回数が低減し、セグメント同士を連結するボルト連結作業が低減し、セグメント組立作業の作業能率が向上する。シールド掘進機に前方から作用する土水圧荷重を、シールドジャッキとは独立に且つシールドジャッキ間に配設した荷重支持ジャッキを夫々有する複数の荷重支持機構を介して覆工済みの既設セグメントに支持させるので、土水圧荷重を確実に且つ安全に支持することができる。
【0068】鋼管分割体セグメントをエレクターによりリング状のセグメントリングに組立てておいて、そのセグメントリングを複数のシールドジャッキにより移動させて覆工するので、セグメント組付け作業が簡単化するうえ、セグメントの組付け精度を容易に高めることができ、トンネル内面の仕上がり外観を高め、セグメントリング同士の接続部のシール性を確保する上で有利である。そして、エレクターと干渉する荷重支持ジャッキのロッド部の退入、エレクターによる鋼管分割体セグメントの周方向への移動、退入したロッド部の伸長という一連の動作を複数回行ってセグメントリングを組立てることができ、鋼管分割体セグメントのエレクターによる把持位置をその移動途中で切換える必要がないので、セグメントリングの組立作業の能率を高め、工期短縮を図ることができる。
【0069】
【0070】請求項の発明によれば、セグメントリングを既設セグメントの前端に当接させる際に、内嵌係合片を既設セグメントの前端部の内面に内嵌させることで、セグメントリングと切換セグメントの内面の連続性を確保でき、既設セグメントとセグメントリングとのボルト連結作業が不要となり、セグメント組付け作業が簡単化する。その他請求項1と同様の効果を奏する。
【0071】請求項の発明によれば、トンネル内周を周方向に複数分割した周方向長さを有する断面円弧状の鋼管分割体セグメントをトンネル内面に覆工するエレクターを設け、シールド掘進機に作用する土水圧荷重をールドジャッキとは独立の複数の荷重支持ジャッキを介して既設セグメントに伝達する複数の荷重支持機構を設けたため、セグメントの組立て中には、複数の荷重支持ジャッキを介して土水圧荷重を安全確実に支持することができる。それ故、セグメントの組付けの際、既設セグメントの前側においてセグメントリングを組立てから、そのセグメントリングを後方へ押動させて既設セグメントに連結することが可能となる。この場合、セグメント組付け作業が簡単化し、セグメントの組付け精度を容易に高め、トンネル内面の仕上がり外観を高め、セグメントリング同士の接続部のシール性を確保する等を達成可能になる。しかも、特開平10−148098号公報に記載のようなグリッパ装置を適用する必要がないため、トンネル内の下部のアクセス通路を確保しやすくなる。
【0072】請求項の発明によれば、前記土水圧荷重は、荷重支持ジャッキから着脱金具を経由してスプレッダーに伝達され、スプレッダーがセグメントの内面に固着のストッパ部材で後方から受け止められる。従って、鋼管分割体セグメントの内面に大きな押圧力を作用させ、摩擦力を介して土水圧荷重を支持する必要がないので、比較的小さな厚さの鋼管分割体セグメントを適用しても、セグメントの変形や漏水等は起こらない。従って、比較的小さな厚さの鋼管分割体セグメントを適用することができ、セグメントの厚さの低減の分だけ掘削土量も少なくでき、シールド掘進機を小型化できる。その他請求項と同様の効果を奏する。
【0073】請求項の発明によれば、荷重支持ジャッキは、胴部材の内面との間に、鋼管分割体セグメントを通過可能な間隙を以て配設されているので、その間隙を活用して、鋼管分割体セグメントをリング状に組立てることができる。その組立時に、荷重支持ジャッキのロッド部を伸縮させる必要がないので、土水圧荷重を安定して支持することができる。その他請求項3又は4と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るシールド掘進機の縦断面図である。
【図2】シールド掘進機の正面図である。
【図3】図1のIII −III 線断面図である。
【図4】図1の要部IV−IV線断面図である。
【図5】図4の要部拡大図である。
【図6】図1の荷重支持機構の拡大図である。
【図7】図6の要部拡大図である。
【図8】図1の荷重支持機構の作動状態を示す説明図である。
【図9】図1のセグメントの平面図である。
【図10】図9の要部拡大図である。
【図11】変更形態に係るシールド掘進機の要部縦断面図である。
【図12】図11のA−A線断面図である。
【図13】セグメント供給状態を示す図12相当図である。
【図14】セグメント把持状態を示す図12相当図である。
【図15】セグメント旋回状態を示す図12相当図である。
【図16】セグメント把持位置の切換え状態を示す図12R>2相当図である。
【図17】セグメント旋回状態を示す図12相当図である。
【図18】次のセグメント供給状態を示す図12相当図である。
【図19】次のセグメント把持状態を示す図12相当図である。
【図20】次のセグメント旋回状態を示す図12相当図である。
【図21】次のセグメント位置決め状態を示す図12相当図である。
【図22】セグメント同士の仮組み状態を示す図12相当図である。
【図23】セグメント把持位置の切換え状態を示す図12R>2相当図である。
【図24】一体セグメント旋回状態を示す図12相当図である。
【図25】最後のセグメント供給状態を示す図12相当図である。
【図26】最後のセグメント把持状態を示す図12相当図である。
【図27】最後のセグメント旋回状態を示す図12相当図である。
【図28】最後のセグメント把持位置の切換え状態を示す図12相当図である。
【図29】最後のセグメント旋回状態を示す図12相当図である。
【図30】最後のセグメント把持位置の切換え状態を示す図12相当図である。
【図31】最後のセグメント旋回状態を示す図12相当図である。
【図32】最後のセグメント把持位置の切換え状態を示す図12相当図である。
【図33】各セグメントの組立て状態を示す図12相当図である。
【図34】セグメントリングの完成状態を示す図12相当図である。
【符号の説明】
1,1A シールド掘進機
2 掘進機本体
3 カッターヘッド
4 ヘッド駆動機構
5 シールドジャッキ
6 エレクター
7 荷重支持機構
8 排土設備
23 荷重支持ジャッキ
23a ロッド部
24 着脱金具
25 ストッパ部材
29 スプレッダー
36 内嵌係合片
38 ストッパ部材
40 荷重支持機構
41 荷重支持ジャッキ
41b ロッド部
42 着脱金具
43 スプレッダー
S セグメントリング
SA ,SB ,SK 鋼管分割体セグメント
Sa 既設セグメント
SC 鋼管分割体セグメント
δ 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】 シールド掘進機によりトンネルを掘削し、そのトンネルの内面にエレクターによりセグメントを覆工するシールド掘進方法において、トンネル内周を周方向に複数分割した周方向長さを有する断面円弧状の鋼管分割体セグメントを用いてトンネル内周を覆工する際に、前記シールド掘進機に掘進方向前方から作用する土水圧荷重を、掘進機本体の周方向複数箇所にシールドジャッキとは独立に且つシールドジャッキ間に配設し荷重支持ジャッキを夫々有する複数の荷重支持機構を介して覆工済みの既設セグメントに支持させる第1工程と、前記覆工済みセグメントよりも前側において、鋼管分割体セグメントを周方向へ移動させる際に鋼管分割体セグメントと干渉する荷重支持ジャッキにおけるロッド部の退入と伸長を介して干渉を防止しつつ、エレクターにより複数の鋼管分割体セグメントをリング状に組立てる第2工程と、前記リング状に組立てたセグメントリングを、複数のシールドジャッキにより後方へ移動させて覆工済みセグメントの前端に当接させる第3工程とを踏んで覆工することを特徴とするシールド掘進方法。
【請求項2】 前記鋼管分割体セグメントの後端部に、既設セグメントの前端部の内面に内嵌可能な内嵌係合片を予め形成しておき、セグメントリングを既設セグメントの前端に当接させる際に、前記内嵌係合片を既設セグメントの前端部の内面に内嵌させることを特徴とする請求項1に記載のシールド掘進方法。
【請求項3】 掘進機本体と、掘進機本体の外面部の胴部材と、カッターヘッドと、カッターヘッドを回転駆動するヘッド駆動手段と、複数のシールドジャッキとを備えたシールド掘進機において、トンネル内周を周方向に複数分割した周方向長さを有する断面円弧状の鋼管分割体セグメントをトンネル内面に覆工するエレクターを設け、前記シールドジャッキ間にシールドジャッキと平行に夫々配設されたシールドジャッキとは独立の複数の荷重支持ジャッキを介して、セグメントの組付け時にシールド掘進機に掘進方向前方から作用する土水圧荷重を既設セグメントに伝達する複数の荷重支持機構を設けたことを特徴とするシールド掘進機。
【請求項4】 前記荷重支持ジャッキはそのロッド部を後方向きにして配設され、前記各荷重支持機構は、荷重支持ジャッキと、この荷重支持ジャッキのロッド部の後端部に連結されてトンネル径方向外側へ延びた着脱金具と、この着脱金具の外端部に連結されたスプレッダーと、既設セグメントの内面に固着されてスプレッダーを後方から受け止めるストッパ部材とを備えたことを特徴とする請求項に記載のシールド掘進機。
【請求項5】 前記荷重支持ジャッキは、胴部材の内面との間に、鋼管分割体セグメントを通過可能な間隙を以て配設されたことを特徴とする請求項又はに記載のシールド掘進機。

【図1】
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【図5】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図8】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図11】
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【図20】
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【図25】
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【図14】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【特許番号】特許第3263041号(P3263041)
【登録日】平成13年12月21日(2001.12.21)
【発行日】平成14年3月4日(2002.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−63223
【出願日】平成11年3月10日(1999.3.10)
【公開番号】特開2000−257399(P2000−257399A)
【公開日】平成12年9月19日(2000.9.19)
【審査請求日】平成11年3月10日(1999.3.10)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【出願人】(000001258)川崎製鉄株式会社 (8,589)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【参考文献】
【文献】特開 平6−117182(JP,A)
【文献】特開 平6−272479(JP,A)
【文献】特開 平3−244792(JP,A)
【文献】実開 昭57−137697(JP,U)
【文献】実公 平7−16798(JP,Y2)