説明

シール材受けカバー、及びサッシ開口縦枠の構造

【課題】施工時の作業工程が短縮されて生産性が向上する、サッシ開口縦枠の凹部に取り付けるシール材受けカバーを提供する。
【解決手段】押出成形セメント板1の端部2とサッシ縦枠6との間に縦方向に沿って設けられる二次シール材9を、押出成形セメント板1の端部2に縦方向に沿って形成された凹部4に嵌合されて支持するシール材受けカバー11であって、該シール材受けカバー11は、サッシ縦枠6との間隙に嵌装された二次シール材9が当接する当接部12と、該当接部12の両端に連接され凹部4の両側壁に沿って圧入される両側部13、13とが一体に形成され、当接部12と室外A側の側部13との連接部位には段部14が形成され、該段部14に雨水侵入防止用の成型シール材15が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形セメント板の端部のサッシ開口縦枠の凹部に取り付けて、当該押出成形セメント板とサッシ縦枠との間隙に嵌装されたシール材を受けるシール材受けカバー、及びサッシ開口縦枠の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
まず、従来のサッシ周りの押出成形セメント板の施工手順について、図7から図9を参照しながら説明する。
(1)サッシ両側の押出成形セメント板1aを建て込む。押出成形セメント板は、一方の端部には凸部1dが形成され、他方の端部には凹部4が形成される。この場合、サッシ縦枠6と隣接する部分の、押出成形セメント板1aの凸部1dを建て込み前に切断して除去し、当該部分を平らに形成する(図8参照)。
(2)サッシ開口周りの上下及び左右にアングル材10を取り付ける。
(3)サッシ下部の押出成形セメント板1bを建て込む。
(4)サッシ上部の押出成形セメント板1cを建て込む。
(5)サッシ縦枠6と隣接する範囲の押出成形セメント板1aの凹部4に、樹脂モルタル5を充填して、当該部分を平らに形成する(図8参照)。
(6)サッシ上部の受けアングルの端部、及びサッシ下枠入隅部をシールする(図示せず)。
【0003】
以上のような手順で施工される押出成形セメント板1の端部2とサッシ縦枠6との間には、図10に示すように、隙間部7を有し、この隙間部7には、室外A側に一次シール材8が嵌装され、室内B側に二次シール材9が嵌装される。
【0004】
樹脂モルタル5は、上述のように、押出成形セメント板1の端部2を平らに形成するために、凹部4に充填するのであり、二次シール材9を凹部4の樹脂モルタル5に対して当接させることで、当該部分の止水を図っている。なお、図10中の符号3はアンカー材を示す。
【0005】
また、特開平5−59770号公報には、開口部におけるサッシ周囲の水密構造が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−59770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この従来例の場合においては、凹部4に樹脂モルタル5を充填するための施工手間が掛かるだけでなく、樹脂モルタル5の乾燥養生期間が必要である。従って、押出成形セメント板1を用いた工法のメリットである工程短縮の特徴が生かされないという問題点を有している。
【0008】
従って、従来例における場合においては、施工手間を減らして工程を短縮し、生産性を向上させることに解決しなければならない課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来例の課題を解決するための本発明の要旨は、押出成形セメント板の端部とサッシ縦枠との間に縦方向に沿って設けられるシール材を、前記押出成形セメント板の端部に縦方向に沿って形成された凹部に嵌合されて支持するシール材受けカバーであって、該シール材受けカバーは、前記サッシ縦枠との間隙に嵌装された前記シール材が当接する当接部と、該当接部の両端に連接され前記凹部の両側壁に沿って圧入される両側部とが一体に形成され、前記当接部と室外側の前記側部との連接部位には段部が形成され、該段部に雨水侵入防止用の成型シール材が設けられていることである。
【0010】
また、本発明の要旨は、押出成形セメント板の端部とサッシ縦枠との間に縦方向に沿って設けられるシール材を、前記押出成形セメント板の端部に縦方向に沿って形成された凹部に嵌合されて支持するシール材受けカバーであって、該シール材受けカバーは、前記サッシ縦枠との間隙に嵌装された前記シール材が当接する当接部と、該当接部から延設されると共に、前記押出成形セメント板の端部において前記凹部を形成する室内側の凸片に嵌合する嵌合部とが一体に形成され、前記当接部の室外側の端部には段部が形成され、該段部に雨水侵入防止用の成型シール材が設けられていることである。
【0011】
そして、本発明の要旨は、押出成形セメント板の端部とサッシ縦枠との間に縦方向に沿って設けられるシール材を、前記押出成形セメント板の端部に縦方向に沿って形成された凹部に嵌合されて支持するシール材受けカバーであって、該シール材受けカバーは、前記凹部に圧入する発泡スチロール製の凸部と、該凸部に接続し、前記シール材が当接する当接部とを備え、該当接部の室外側の端部が折曲して前記凹部の一方の側壁に沿って圧入されることである。
【0012】
更に、本発明の要旨は、押出成形セメント板の端部のサッシ開口縦枠の構造であって、前記押出成形セメント板とサッシ縦枠との間には、隙間部を有し、該隙間部には、室外側に一次シール材が設けられ、室内側に二次シール材が設けられ、該二次シール材を受けるためのシール材受けカバーが前記押出成形セメント板の端部に設けられている凹部に嵌合されていることである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るシール材受けカバーによれば、押出成形セメント板の凹部に対して、従来例のような樹脂モルタルを充填する施工手間が必要なくなり、また、樹脂モルタルの乾燥養生期間が必要ないので、作業工程が短縮されて生産性が向上するという優れた効果を奏する。
【0014】
また、本発明に係るサッシ開口縦枠の構造によれば、押出成形セメント板の凹部に嵌合したシール材受けカバーで二次シール材を受けるので、当該部分の止水が完全かつ良好に行える。
更に、施工時においては、従来例のような樹脂モルタルを充填する施工手間が必要なく、樹脂モルタルの乾燥養生期間が必要ないので、作業工程が短縮されて生産性が向上するという種々の優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施例に係るシール材受けカバー11、及び押出成形セメント板1の凹部4の横断面図である。
【図2】シール材受けカバー11を使用したサッシ開口縦枠の横断面図である。
【図3】本発明の第2実施例に係るシール材受けカバー21、及び押出成形セメント板1の凹部4の横断面図である。
【図4】シール材受けカバー21を使用したサッシ開口縦枠の横断面図である。
【図5】本発明の第3実施例に係るシール材受けカバー31、及び押出成形セメント板1の凹部4の横断面図である。
【図6】シール材受けカバー31を使用したサッシ開口縦枠の横断面図である。
【図7】サッシ開口周りの正面図である。
【図8】図7のA−A線断面図である。
【図9】図7のB−B線断面図である。
【図10】従来例に係るサッシ開口縦枠の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、理解を容易にするため、従来例に対応する部分には従来例と同一の符号を付けて説明する。
【実施例1】
【0017】
まず、図1に示した第1実施例において、符号11はシール材受けカバーを示し、このシール材受けカバーは、図2に示すように、押出成形セメント板1の端部2で形成されるサッシ開口縦枠の凹部4に取り付けて、当該押出成形セメント板1とサッシ縦枠6との隙間部7に嵌装された二次シール材9を当接させる。
【0018】
シール材受けカバー11は、二次シール材9が当接する当接部12と、当接部12の両端に連接され凹部4の両側壁に沿って圧入される両側部13、13とが一体に形成され、当該部分が亜鉛メッキ鋼板で形成される。両側部13、13の先端部16、16は、それぞれ内側に湾曲形成される。また、当接部12と室外A側の側部13との連接部位には段部14が形成され、段部14に雨水侵入防止用の成型シール材15が接着固定している。成型シール材15は、ゴム材又は合成樹脂材等の弾性材で形成されるので、側壁への圧入時に変形して密着する(図1参照)。
【0019】
このような構成のシール材受けカバー11は、図2に示すように、押出成形セメント板1の凹部4に圧入されて取り付けられる。押出成形セメント板1の端部2とサッシ縦枠6との間には隙間部7が形成され、この隙間部7には、室外A側に一次シール材8が嵌装され、室内B側に二次シール材9が嵌装される。二次シール材9はシール材受けカバー11に当接させて、当該部分の止水を図っている。
【0020】
次に、シール材受けカバー11を使用したサッシ開口縦枠の施工手順について、図2を参照しながら説明する。まず、(a)押出成形セメント板1を建て込み、(b)シール材受けカバー11をサッシ開口縦枠の凹部4に圧入して取り付ける。シール材受けカバー11は、定尺長さが約2m程度であり、作業現場において、凹部4の縦方向の長さに合わせて切断する。そして、(c)サッシ枠6を取り付け、(d)隙間部7に二次シール材9を嵌装させると共に、シール材受けカバー11に当接させる。(e)更に、隙間部7に一次シール材8を嵌装する。
【実施例2】
【0021】
次に、図3及び図4に第2実施例を示す。この第2実施例において、前記第1実施例と同一部分には同一符号を付してその詳細は省略する。
【0022】
このシール材受けカバー21は、二次シール材9が当接する当接部22と、当接部22から延設されると共に、押出成形セメント板1の端部2において凹部4を形成する室内B側の凸片23に嵌合する嵌合部24とが一体に形成され、当該部分がアルミ型材で形成される。嵌合部24の一対の挟持片24a、24aの内側面は、凹凸部25が形成される。また、当接部22の室外A側の端部には段部26が形成され、段部26に雨水侵入防止用の成型シール材27が接着固定している。成型シール材27は、ゴム材又は合成樹脂材等の弾性材で形成されるので、側壁への圧入時に変形して密着する(図3参照)。
【実施例3】
【0023】
次に、図5及び図6に第3実施例を示す。この第3実施例において、前記第1実施例と同一部分には同一符号を付してその詳細は省略する。
【0024】
このシール材受けカバー31は、凹部4に圧入する発泡材製(発泡スチロール製)の凸部32と、凸部32に接着し、二次シール材9が当接する当接部33とを備える。当接部33は、アルミ貼着テープ材で形成されており、凸部32に貼着固定している。また、当接部33の室外A側の端部34が内側に折曲しており、この端部34が凹部4の一方の側壁に沿って圧入される。
【0025】
以上のように構成されるシール材受けカバー11、21、31は、いずれも二次シール材9を当接させるので、従来例のように押出成形セメント板1の凹部4に樹脂モルタル5を充填する施工手間が必要なく、また、樹脂モルタル5の乾燥養生期間が必要ないので、作業工程が短縮されて生産性が向上する。
【0026】
また、シール材受けカバー11、21、31を使用したサッシ開口縦枠の構造によれば、二次シール材9をシール材受けカバー11、21、31で受けるので、当該部分の止水が完全かつ良好に行える。更に、施工時においては、従来例のような凹部4に樹脂モルタル5を充填する施工手間が必要なく、樹脂モルタル5の乾燥養生期間が必要ないので、作業工程が短縮されて生産性が向上する。
【符号の説明】
【0027】
A 室外
B 室内
1、1a、1b、1c 押出成形セメント板
1d 凸部
2 端部
3 アンカー材
4 凹部
5 樹脂モルタル
6 サッシ縦枠
7 隙間部
8 一次シール材
9 二次シール材
10 アングル材
11 シール材受けカバー
12 当接部
13 側部
14 段部
15 成型シール材
16 先端部
21 シール材受けカバー
22 当接部
23 凸片
24 嵌合部
24a 挟持片
25 凹凸部
26 段部
27 成型シール材
31 シール材受けカバー
32 凸部
33 当接部
34 端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形セメント板の端部とサッシ縦枠との間に縦方向に沿って設けられるシール材を、前記押出成形セメント板の端部に縦方向に沿って形成された凹部に嵌合されて支持するシール材受けカバーであって、
該シール材受けカバーは、
前記サッシ縦枠との間隙に嵌装された前記シール材が当接する当接部と、該当接部の両端に連接され前記凹部の両側壁に沿って圧入される両側部とが一体に形成され、
前記当接部と室外側の前記側部との連接部位には段部が形成され、
該段部に雨水侵入防止用の成型シール材が設けられていること
を特徴とするシール材受けカバー。
【請求項2】
押出成形セメント板の端部とサッシ縦枠との間に縦方向に沿って設けられるシール材を、前記押出成形セメント板の端部に縦方向に沿って形成された凹部に嵌合されて支持するシール材受けカバーであって、
該シール材受けカバーは、
前記サッシ縦枠との間隙に嵌装された前記シール材が当接する当接部と、該当接部から延設されると共に、前記押出成形セメント板の端部において前記凹部を形成する室内側の凸片に嵌合する嵌合部とが一体に形成され、
前記当接部の室外側の端部には段部が形成され、
該段部に雨水侵入防止用の成型シール材が設けられていること
を特徴とするシール材受けカバー。
【請求項3】
押出成形セメント板の端部とサッシ縦枠との間に縦方向に沿って設けられるシール材を、前記押出成形セメント板の端部に縦方向に沿って形成された凹部に嵌合されて支持するシール材受けカバーであって、
該シール材受けカバーは、
前記凹部に圧入する発泡材製の凸部と、該凸部に接続し、前記シール材が当接する当接部とを備え、
該当接部の室外側の端部が折曲して前記凹部の一方の側壁に沿って圧入されること
を特徴とするシール材受けカバー。
【請求項4】
押出成形セメント板の端部のサッシ開口縦枠の構造であって、
前記押出成形セメント板とサッシ縦枠との間には、隙間部を有し、
該隙間部には、室外側に一次シール材が設けられ、室内側に二次シール材が設けられ、
該二次シール材を受けるためのシール材受けカバーが前記押出成形セメント板の端部に設けられている凹部に嵌合されていること
を特徴とするサッシ開口縦枠の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−162846(P2012−162846A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21539(P2011−21539)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【Fターム(参考)】