説明

シール装置

【課題】 簡単かつ低コストで製造可能であり、しかも簡単な手段を利用してセンサを固定することができるシール装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明のシール装置は、少なくとも1つのシールリップ(3)がその内周側に固定されている支持リング(2)を備え、センサ(5)を収容するためのセンサ保持部(4)が、支持リング(2)と同一の材料から形成されて、かつ支持リング(2)と一体的に形成され、センサ保持部(4)が、センサ(5)を収容するための少なくとも1つの貫通孔(8)を有し、センサ(5)が、センサ保持部(4)内でセンサ(5)を着脱可能に固定できるように、センサ(5)をセンサ保持部(4)内で固定するための少なくとも1つのばね部材(7)を備えていることを特徴とする。ばね部材(7)は、センサ保持部(4)の貫通孔に係止可能に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール装置に関し、より詳細には、少なくとも1つのシールリップがその内周側に固定されている支持リングを備え、センサを収容するためのセンサ保持部が、支持リングと一体的に設けられ、センサ保持部と支持リングが同一材料から形成されているシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような形式のシール装置は公知である(例えば特許文献1参照)。この特許文献1に記載のシール装置は、動的及び静的な密封をもたらすシール部材を有するシールフランジを備える。このシールフランジには、そのシールフランジにかたく連結されているばね部材が設けられ、このばね部材を介して、センサなどの機能部材が固定されている。このようなばね部材は、機能部材上の対応する切欠部と係合し、機能部材を固定する。
【特許文献1】ドイツ実用新案第20000694号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、簡単かつ低コストで製造可能であり、しかも簡単な手段を利用してセンサを固定することができるシール装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題は、請求項1に記載の特徴によって解決される。すなわち上記課題は、少なくとも1つのシールリップがその内周側に固定されている支持リングを備え、センサを収容するためのセンサ保持部を構成する材料が、支持リングと同一の材料からなり、かつ支持リングと一体的に形成されているシール装置であって、センサ保持部が、センサを収容するための少なくとも1つの貫通孔を有し、センサが、センサ保持部内でセンサを着脱可能に固定できるように、センサをセンサ保持部内で無駄なく、緩みなく固定するための少なくとも1つのばね部材を備えていることを特徴とするシール装置によって解決される。好適な実施形態については、請求項1に従属する請求項を参照する。
【0005】
上記課題を解決するために、センサ保持部には、センサを収容するための少なくとも1つの貫通孔が設けられ、かつセンサは、センサ保持部内にセンサ自体を着脱可能に固定するための少なくとも1つのばね部材を備え、それによってばね部材をセンサ保持部の貫通孔に係止することができる。
【0006】
支持リングに貫通孔を簡単かつ低コストに設けることができ、したがってシール装置を簡単かつ低コストで製造することが可能となる。センサが貫通孔内に単に差し込まれ、かつ同様に貫通孔に係止するばね部材によって、センサを無駄なく又は緩みなく、余計な空間を生じることなく固定することができるために、センサの取付けは特に簡単である。さらにばね部材によって、センサと支持リングとの間を遊びなく連結することができるので、エンコーダ、密封すべきシャフト、シール装置及びシール装置に固定されるセンサからなるシステムの測定精度が向上する。センサを着脱可能に固定することによって、センサが早期に摩耗、消耗した場合等に、センサを後に交換することが可能である。センサは貫通孔内に単に差し込まれているだけなので、非常に簡単に取付けることができ、かつその場合に特別な工具の使用は不必要である。この構成により、内部に到達させることが難しいシール装置のその内にも簡単にセンサを取付けることが可能となる。ばね部材が貫通孔の切欠部又は凹部の後方に係止される際、ばね部材はカチリと音を立ててセンサを適所に係止し、センサとセンサ保持部との特に確実な連結が得られる。
【0007】
支持リングを、金属材料から形成することができる。金属材料は、剛性が高く、かつ低コストである。金属材料は、容易に変形可能である。
【0008】
支持リングを、打ち抜き加工により製造することができる。打ち抜き加工により製造された支持リングは、少ない製造工程により、低コストで簡単に、大量に製造することができる。金属材料からなる半製品又は鋼片を打ち抜き加工することが特に適している。
【0009】
センサ保持部には、少なくとも2つの貫通孔が設けられ、第1の貫通孔はセンサ用の収容部を、また第2の貫通孔はセンサのばね部材用の収容部をそれぞれ形成する。センサ用の収容部とばね部材用の収容部とを分離することにより、支持リングとセンサとを特に遊びなく連結することができる。
【0010】
センサ保持部に、3つの貫通孔を互い隣接して設けることができ、この場合、第1の貫通孔はセンサ用の収容部を形成し、また第2及び第3の貫通孔はセンサのばね部材用の収容部を形成し、第1の貫通孔は、第2の貫通孔と第3の貫通孔の間に配置されている。ばね部材用の貫通孔をさらに追加して設けることによって、センサをさらに良好に、改善された仕方で固定することができ、特に傾きに対する安定性を一層改善することができる。
【0011】
ばね部材をばねクリップから形成することができる。ばねクリップは、簡単かつ低コストで製造可能である。ばねクリップによって、安全で、かつ簡単に取付け可能な連結を実施することができる。ばねクリップを、簡単な手段でセンサに固定することができる。
【0012】
ばねクリップを金属材料から形成することができる。ばねクリップを、たとえばばね鋼から製造することが可能である。ばね鋼からなるばねクリップによって、高いばね力を得ることができる。さらに高いばね力を得ることができることによって、それに相応する高い保持力が生じる。高い保持力により、支持リングとセンサとを特に遊びが生じないように連結することが可能となる。
【0013】
ばね部材を、ポリマー材料から形成されているスナップ式のフック又はばねフックから形成することができる。ばねフックは、低コストで簡単に製造可能である。
【0014】
ばねフックを、センサと同一の材料から構成し、しかもセンサと一体的に形成することができる。この構成によって、センサ及びばねフックを、低コストで単一の製造工程において製造することができる。
【0015】
支持リングは、第1の軸方向脚部と、この第1の軸方向脚部の自由前端から半径方向外側に延伸する径方向突出部とを備え、さらにこの径方向突出部は、第1の軸方向脚部とは軸方向において反対の側で第2の軸方向脚部に連続し、この第2の軸方向脚部にはセンサ保持部が設けられている。径方向突出部によって、シール装置の取付けを簡略化することができる。これは、径方向突出部がストッパとして機能することによる。またセンサの収容部を半径方向に大きく延伸させることも可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、少なくとも1つのシールリップ(3)がその内周側に固定されている支持リング(2)を備え、センサ(5)を収容するためのセンサ保持部(4)が、支持リング(2)と同一の材料から形成されて、かつ支持リング(2)と一体的に設けられているシール装置に関し、センサ保持部(4)が、センサ(5)を収容するための少なくとも1つの貫通孔(8)を有し、センサ(5)が、センサ保持部(4)内でセンサ(5)を着脱可能に固定できるように、センサ(5)をセンサ保持部(4)内で無駄なく固定するための少なくとも1つのばね部材(7)を備えていることを特徴とする。ばね部材(7)は、センサ保持部(4)の貫通孔に係止可能に形成されている。本発明によれば、簡単かつ低コストで製造可能であり、しかも簡単な手段を利用してセンサを固定することができるシール装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明によるシール装置のいくつかの実施形態を、添付の図に基づいて以下において詳細に説明する。
【0018】
図1は、動荷重を受けているシールリップ3が内周側に固定されている支持リング2を備えているシール装置1を示す。この実施形態では、シールリップ3はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から形成され、その自由端は、密封すべき空間14とは反対の方向に向かって突出している。支持リング2は、第1の軸方向脚部13を備え、またこの軸方向脚部の自由前端又はシールリップ3が取り付けられている側とは反対側の部分から、半径方向外側に延伸する径方向突出部16を備えている。径方向突出部16の、第1の軸方向脚部13から軸方向反対側に、第2の軸方向脚部15が連続して設けられている。第2の軸方向脚部15にセンサ保持部4が設けられている。センサ保持部4は、支持リング2と同一の材料から形成され、かつ一体的に支持リング2上に設けられ、またセンサ5を収容するための貫通孔8を備えている。センサ5には、貫通孔8内でセンサ保持部4に対してそれ自体着脱可能に固定できるようにするためのばね部材7が設けられている。ばね部材7は、ばねクリップ11として形成され、ばね鋼から製造されている。センサ5を固定する際に、ばね部材7はカチリと音を立てて貫通孔と係止する。支持リング2は、金属材料から、打ち抜き工程を経て製造される。
【0019】
図2は、ばね部材7を備えているセンサ5を示す。この実施形態において、ばね部材7は、ばね鋼からなるばねクリップ11から形成されている。ばねクリップ11は、センサ5の周を少なくとも部分的に環状に取り囲むように延伸する溝17内に設けられている。
【0020】
図3は、ばね部材7を備えているセンサ5の別の実施形態を示す。この実施形態において、ばね部材7は、ばねフック12から形成されるとともにポリマー材料からなる。この実施形態において、スナップ式のフック又はばねフック12は、センサ5を構成する材料と同一の材料から、かつセンサ5と一体的に形成されている。
【0021】
図4は、本発明によるセンサ保持部4を備えている支持リング2を示す。この実施形態において、センサ保持部4には2つの貫通孔8、9が設けられている。この実施形態において、第1の貫通孔8はセンサ5用の収容部を、また第2の貫通孔9はセンサ5のばね部材7用の収容部をそれぞれ形成している。
【0022】
図5は、本発明によるセンサ保持部4を備えている支持リング2の代替的な実施形態を示す。この実施形態において、センサ保持部4には、3つの互いに隣接して設けられている貫通孔8、9、10が設けられている。この実施形態において、第1の貫通孔8はセンサ5用の収容部を形成し、また第2の貫通孔9及び第3の貫通孔10は、センサ5のばね部材7用の収容部を形成している。第1の貫通孔8は、第2の貫通孔9及び第3の貫通孔10の間に設けられている。
【0023】
図6は、本発明によるセンサ保持部4を備えている支持リング2のさらなる実施形態を示す。この実施形態において、支持リング2及びセンサ保持部4は、プラスチック材料からなる同一の材料より形成され、かつ一体的に鋳造又はダイカスト鋳造により製造される。支持リング2は、ハウジング閉止カバーの形態をもって形成され、シールリップ3の他に静止用のシール装置18を備えている。貫通孔8はセンサ5用の収容部として、また貫通孔9はばねクリップ11用の収容部として設けられている。
【0024】
図7は、本発明によるセンサ保持部4を備えている支持リング2のさらなる実施形態を示す。この実施形態において、支持リング2及びセンサ保持部4は、同一の材料から、かつ一体的に形成されている。ばね部材は、圧縮コイルばねから形成されている。この圧縮コイルばねは、一方ではセンサ5の切欠部21内に、他方では隣接する部品20の貫通孔19に係止可能である。これによって、センサ5は、センサ保持部4内に無駄なく、緩みなく、余計な空間を生じることなく押圧されて固定される。同時に、圧縮コイルばねによって、そのコイル内に配線されている電気配線は機械的な損傷を受けることのないように保護される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明によるシール装置を示す。
【図2】ばねクリップを備えているセンサを示す。
【図3】ばねフックを備えているセンサを示す。
【図4】2つの貫通孔が設けられているセンサ保持部の平面図である。
【図5】3つの貫通孔が設けられているセンサ保持部の平面図である。
【図6】プラスチック材料からなる本発明によるシール機構を示す。
【図7】ばね部材が圧縮コイルばねから形成されている本発明によるシール機構を示す。
【符号の説明】
【0026】
1 シール装置
2 支持リング
3 シールリップ
4 センサ保持部
5 センサ
7 ばね部材
8 貫通孔
9 貫通孔
10 貫通孔
11 ばねクリップ
12 ばねフック
13 第1の軸方向脚部
14 密封すべき空間
15 第2の軸方向脚部
16 径方向突出部
17 溝
18 静止用シール装置
19 貫通孔
20 部品
21 切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのシールリップ(3)がその内周側に固定されている支持リング(2)を備え、センサ(5)を収容するためのセンサ保持部(4)が、前記支持リング(2)と同一の材料から、かつ一体的に形成されているシール装置であって
前記センサ保持部(4)が、前記センサ(5)を収容するための少なくとも1つの貫通孔(8)を有し、前記センサ(5)が、前記センサ保持部(4)内で当該センサ(5)を着脱可能に固定できるように、当該センサ(5)を前記センサ保持部(4)内で固定するための少なくとも1つのばね部材(7)を備えていることを特徴とするシール装置。
【請求項2】
前記ばね部材(7)が、前記センサ保持部(4)の前記貫通孔(8)に係止可能であることを特徴とする請求項1に記載のシール装置。
【請求項3】
前記支持リング(2)が金属材料から形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシール装置。
【請求項4】
前記支持リング(2)が、打ち抜き加工により形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシール装置。
【請求項5】
前記センサ保持部(4)が少なくとも2つの貫通孔(8、9)を有し、当該貫通孔の第1の貫通孔(8)が前記センサ(5)用の収容部を形成し、当該貫通孔の第2の貫通孔(9)が前記センサ(5)の前記ばね部材(7)用の収容部を形成していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシール装置。
【請求項6】
前記センサ保持部(4)が、3つの互いに隣接して設けられている貫通孔(8、9、10)を有し、当該貫通孔の第1の貫通孔(8)が前記センサ(5)用の収容部を形成し、当該貫通孔の第2及び第3の貫通孔(9、10)が前記センサ(5)の前記ばね部材(7)用の収容部を形成し、前記第1の貫通孔(8)が、前記第2の貫通孔(9)及び第3の貫通孔(10)の間に設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のシール装置。
【請求項7】
前記ばね部材(7)がばねクリップ(11)からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のシール装置。
【請求項8】
前記ばねクリップ(11)が金属材料からなることを特徴とする請求項7に記載のシール装置。
【請求項9】
前記ばね部材(7)がポリマー材料からなるばねフック(12)より形成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のシール装置。
【請求項10】
前記ばねフック(12)が、前記センサ(5)と同一の材料から、かつ前記センサ(5)と一体的に形成されていることを特徴とする請求項9に記載のシール装置。
【請求項11】
前記支持リング(2)が、第1の軸方向脚部(13)と、該第1の軸方向脚部(13)の自由前端から径方向外側に延伸する径方向突出部(16)とを備え、
前記径方向突出部(16)が、前記第1の軸方向脚部(13)に対して軸方向の反対側に連続する第2の軸方向脚部(15)を備え、
前記第2の軸方向脚部(15)に前記センサ保持部(4)が設けられていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のシール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−132777(P2006−132777A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−322001(P2005−322001)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(501479868)カール・フロイデンベルク・カーゲー (73)
【Fターム(参考)】