説明

ジアセチレン材料で構築された比色センサー

分析物の検出のための比色センサーが開示されている。比色センサーを用いる方法及び分析物の比色検出のためのキットも同様に開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が本明細書に参照により援用されている2004年12月17日付けの米国仮特許出願第60/636,993号明細書に対する優先権を請求するものである。
【背景技術】
【0002】
病原菌、特に抗生物質耐性菌の検出のための現行の技術には一般に時間がかかり、標準的に純粋な形での細菌の培養が関与している。きわめて関心の高いかかる病原菌の1つが、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(「S.aureus」)であり、これは、小さい皮ふ膿瘍及び創傷感染といったような表面病巣、心内膜炎、肺炎及び敗血症といったような全身性の及び生命にかかわる身体条件、ならびに食中毒及び毒素性ショック症候群といったような中毒症を含めた広範な感染をひき起こす病原体である。黄色ブドウ球菌(S.aureus)は、わずかな精選された抗生物質以外の全ての抗生物質に対する耐性をもつ。
【0003】
様々な従来の技術を用いて病原菌の分析が試みられてきた。例えば、それらの方法には、蛍光分析免疫クロマトグラフィ(例えば米国特許第5,753,517号明細書中で記されているもののような急速分析物測定手順)、ELISA(例えば比色ELISA)及びその他の比色技術が含まれる。ポリジアセチレン(PDA)材料を内含する比色センサーが米国特許第5,622,872号明細書及び国際公開第02/00920号パンフレット、米国特許第6,395,561B1号明細書、同第6,306,598B1号明細書、同第6,277,652号明細書、同第6,183,722号明細書、及び同第6,080,423号明細書の中で記述されている。
【0004】
ジアセチレンは、溶解状態の単量体として標準的に無色であり、熱又は化学線のいずれかにより付加重合する。重合が進むにつれて、これらの化合物は、青又は紫色に対比色変化する。熱、物理的応力、又は溶媒又は対イオンの変化といったような外部刺激に曝露された時点で、ポリジアセチレンは、平面主鎖立体構造の歪曲によって生み出されるさらなる色変化を示す。例えば、ポリジアセチレン集合は、ミノ(Mino)ら、「Langmuir」、第8巻、594頁、1992年、チャンス(Chance)ら、「Journal of Chemistry and Physics」、第71巻、206頁、1979年、シブタグ(Shibutag)、「Thin Solid Films」、第179巻、433頁、1989年、金子ら、「Thin Solid Films」、第210巻、548頁、1992年、並びに米国特許第5,672,465号明細書に記述されているように、接合された主鎖内の立体構造変化に起因するpH変化又は温度上昇に伴って、青色から赤色まで色変化するものとして知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
当該技術分野では黄色ブドウ球菌(S.aureus)ならびにその他の病原菌を検出する方法が記述されてきているが、検出方法を改善すると有利であると思われる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリジアセチレン集合に対し立体構造の変化をひき起こすような形で分析物の相互作用の結果として発生するスペクトル変化(裸眼で見えるか又は比色計で見える色変化)により分析物の存在を検出するための比色センサーを提供している。ポリジアセチレン集合は、単純なただしきわめて感応性が高い要領で分析物の存在を標示する。分析物を検出するための比色系において、レセプタ、少なくとも1つのジアセチレン化合物を含む重合組成物(これは、重合組成物はジアセチレン化合物の重合から生成されることを意味する)、を含み、レセプタが重合組成物内に取込まれてトランスデューサを形成している比色センサー、及び分析物とトランスデューサの間の相互作用を媒介する緩衝液組成物であって、緩衝液系が2つ以上の異なる緩衝液を内含する緩衝液組成物、を含み、トランスデューサが、分析物と接触した時点で色変化を示す比色系が提供されている。
【0007】
1つの実施形態においては、緩衝液組成物は、より高いイオン強度の緩衝液とより低いイオン強度の緩衝液の組合せである。好ましい実施形態では、緩衝液組成物は、HEPES緩衝液、イミダゾール緩衝液、PBS緩衝液及びそれらの組合せから成る群から選択されている。1つの実施形態においては、緩衝液は、トランスデューサとのイオン相互作用により分析物の相互作用を媒介する。もう1つの実施形態においては、緩衝液組成物は、トランスデューサとの疎水性相互作用を増強することによって分析物の相互作用を媒介する。トランスデューサは、水溶液中に分散させられるか又は基板上にコーティングされ得る。
【0008】
もう1つの実施形態においては、比色系はさらにプローブを含む。好ましい実施形態においては、プローブは、フィブリノーゲン、ストレプトアビジン、IgG及びその組合せから成る群から選択される。
【0009】
もう1つの実施形態においては、比色系はさらに界面活性剤を含む。好ましい実施形態においては、該界面活性剤は、非イオン界面活性剤を含む。
【0010】
例示的な1つの実施形態では、比色系のトランスデューサはリポソームでありかつ/又は緩衝液組成物と接触した時点で色変化を示す。
【0011】
例示的な1つの実施形態では、ジアセチレン化合物(すなわちポリジアセチレン材料のための出発材料)は、
【化1】

という構造式のものであり、式中、R1
【化2】

を含み、そうでなければ、R2
【化3】

を含み、ここでR3、R8、R13、R21、R24、R31及びR33は独立してC1-20アルキルであり、R4、R5、R7、R14、R16、R19、R20、R22、R25及びR32は独立してC1−C14アルキレンであり、R6、R15、R18及びR26は独立してC1−C14アルキレン、C2−C8アルケニレン又はC6−C13アリーレンであり、R9はC1-14アルキレン又は−NR34−であり、R10、R12、R27及びR29は独立してC1−C14アルキレン又は(C1−C14アルキレン)−(C2−C8アリーレン)であり、R11及びR28は独立してC2−C30アルキニルであり、R17はエステル活性化基であり、R23は、C6−C13アリーレンであり、R30はC1−C14アルキレン又は−NR36−であり、R34及びR36はC1−C4アルキルであり、pは1〜5であり(ここで、「ジアセチレン」は2〜10個のC−C3重結合を伴う化合物を包含するものとして使用されている)、nは1〜20であり、ここでR1及びR2は同じではない。
【0012】
1つの実施形態においては、比色系内レセプタは、ホスホコリン、ホスホエタノールアミン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、及びそれらの組合せから成る群から選択されるリン脂質を含む。
【0013】
分析物の検出方法が提供されている。該方法は、レセプタ及びジアセチレンを含む重合組成物(すなわち該重合組成物はジアセチレンの重合から誘導されている)を含む比色センサーを形成するステップであって、レセプタが重合組成物の中に取込まれて、色変化を示す能力をもつトランスデューサを形成するステップ、センサーとプローブを接触させるステップ、2つ以上の異なる緩衝液を含む緩衝液組成物の存在下で標的分析物を含有している疑いのある試料とセンサーを接触させるステップ、及び前記分析物が存在する場合に色変化を観察するステップ、を含む。
【0014】
もう1つの実施形態においては、レセプタ及びジアセチレンを含む重合組成物を含む比色センサーを形成するステップであって、レセプタが重合組成物の中に取込まれて、プローブの存在下で色変化を示す能力をもつトランスデューサを形成するステップ、2つ以上の異なる緩衝液を含有する緩衝液組成物の存在下で、標的分析物を含有する疑いのある試料及び前記標的分析物と前記レセプタの両方に対する親和性をもつプローブと、トランスデューサとを接触させるステップ、及び分析物が存在する場合に基本的にいかなる色変化も観察しないステップを含む、分析物の検出方法が提供されている。好ましくは、標的分析物を含有している疑いのある試料とプローブを組合わせて、トランスデューサと接触させる前に混合物を形成されることができる。
【0015】
例示的な1つの実施形態では、分析物は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、プロテインA、PBP2’、大腸菌(E.coli)及び緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)から成る群から選択されている。大部分の実施形態において、比色系は、分析物とトランスデューサを接触させた時点から60分以内に観察可能な色変化を示す。
【0016】
定義
以下の定義済み用語について、クレーム中又は本明細書の他の場所で異なる定義が示されているのでないかぎり、これらの定義が適用されることになる。
【0017】
本書で使用される通り、「アルキル」という用語は、規定の数の炭素原子をもつ直鎖又は有枝鎖又は環状の一価の炭化水素基を意味する。アルキル基には1個〜20個の炭素原子を伴うものが含まれる。本書で使用される「アルキル」の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、イソブチル及びイソプロピルなどが含まれるが、これらに制限されるわけではない。環状部分が意図されている場合には、前記アルキル内に少なくとも3個の炭素が存在しなければならないということを理解すべきである。かかる環状部分には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルが含まれる。
【0018】
本書で使用されている「アルキレン」という用語は、規定の数の炭素原子を有する直鎖又は有枝鎖又は環状2価炭化水素基を意味する。アルキレン基には1〜14個の炭素原子をもつものが含まれる。本書で使用される「アルキレン」の例としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレンなどが含まれるが、これらに制限されるわけではない。環状部分が意図されている場合、前記アルキレンの中に少なくとも3個の炭素が存在しなければならないということを理解すべきである。かかる環状部分には、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン及びシクロヘプチレンが含まれる。
【0019】
本書で使用される「アルケニレン」という用語は、規定の数の炭素原子及び1つ以上の炭素−炭素2重結合をもつ直鎖又は有枝鎖又は環状2価炭化水素基を意味する。アルケニレン基には、2〜8個の炭素原子を伴うものが含まれる。本書で使用される「アルケニレン」の例としては、エテン−1,2−ジイル、プロペン−1,3−ジイルなどが含まれるがこれらに制限されるわけではない。
【0020】
本書で使用されている「アリーレン」という用語は、フェニレンといったような単環又はナフチレン又はアントリレンといったような多重縮合環をもつ2価の不飽和芳香族カルボキシル基を意味する。アリーレン基には、6〜13個の炭素原子を伴うものが含まれる。本書で使用される「アリーレン」の例としては、ベンゼン−1,2-ジイル、ベンゼン−1,3−ジイル、ベンゼン−1,4−ジイル、ナフタレン−1,8−ジイルなどが含まれるがこれらに制限されるわけではない。
【0021】
本書で使用される「アルキレン−アリーレン」という用語は、以上で定義づけした通りのアリーレン部分に結合された以上で定義づけした通りのアルキレン部分を意味する。本書で使用される「アルキレン−アリーレン」の例としては、−CH2−フェニレン、−CH2CH2−フェニレン及び−CH2CH2CH2−フェニレンが含まれるがこれらに制限されるわけではない。
【0022】
本書で使用される「アルキニル」という用語は、2〜30個の炭素及び少なくとも1つの炭素−炭素3重結合を有する直鎖又は有枝鎖又は環状の一価の炭化水素基を意味する。本書で使用される「アルキニル」の例としては、エチニル、プロピニル及びブチニルが含まれるがこれらに制限されるわけではない。
【0023】
本書で使用される「分析物」という用語は、本発明のセンサー系により検出され得るあらゆる材料を意味する。かかる材料には、小分子、病原性及び非病原性生体、毒素、膜レセプタ及びフラグメント、揮発性有機化合物、酵素及び酵素基質、抗体、抗原、タンパク質、ペプチド、核酸、及びペプチド核酸が含まれるが、これらに制限されるわけではない。「標的分析物」というのは、センサー系内で検出するためにターゲティングされた材料を意味する。
【0024】
本書で使用されている「細菌」という用語は、球菌、桿菌、スピロヘータ、スフェロプラスト、原形質体を含めた細菌であると考えられるあらゆる形態の微生物を意味する。
【0025】
本書で使用されている「レセプタ」という用語は、標的分析物及び/又はプローブに対する親和性をもつあらゆる分子又は分子集合を意味する。レセプタには、脂質、表面膜タンパク質、酵素、レクチン、抗体、組換え型タンパク質、合成タンパク質、核酸、C−グリコシド、炭水化物、ガングリオシド及びキレート化剤といったような、天然に発生する又は合成のレセプタが含まれるがこれらに制限されるわけではない。
【0026】
本書に使用されている「集合」又は「自己集合」という用語は、重合に先立つジアセチレン分子及びリン脂質のあらゆる自己秩序化を意味する。J.イスラエラックヴィリ(Israelachvili)、「Intermolecular and Surface Forces」(第2版)、Academic Press、New York(1992年)、321〜427頁を参照のこと。
【0027】
本書で使用される「自己集合単層」(SAM)という用語は、自然発生的自己秩序化により一定の与えられた基板上に形成されるあらゆる秩序化極薄有機フィルムを意味する。ウルマン(Ulman)、「An Introduction to Ultrathin Organic Films」、Academic Press、New York(1991年)、237−301頁。
【0028】
本書で使用する「トランスデューサ」という用語は、分子レベルで共有結合又は非共有結合的相互作用(例えば静電相互作用、極性相互作用、ファンデルワールス力)といったような認識事象を観察可能なシグナルへと転換する能力をもつ材料を描写する。
【0029】
「プローブ」というのは、標的分析物及び/又はレセプタと相互作用する能力をもつ構成成分を意味する。従って、プローブは「検出可能な結合試薬」すなわち、分析物(すなわち標的分析物)及び/又はレセプタを特異的に認識し相互作用するか又はそれと結合する作用物質の1つのタイプであり、ここで該プローブは結合させられた時点で検出を可能にする特性を有する。「特異的に相互作用する」というのは、検出可能な結合剤が物理的に標的分析物又はレセプタと相互作用して、試料中に同じく存在するその他の分析物を実質的に排除するに至ることを意味する。該発明に従って有用である検出可能な結合試薬の結合は、結合の測定を可能にする安定性を有する。
【0030】
「含む」という用語及びその変形形態は、これらの用語が明細書及びクレーム中で使われる場合、制限的意味をもたない。
【0031】
「好ましい」及び「好ましくは」という用語は、或る種の状況下で或る利点を提供できる該発明の実施形態を意味する。しかしながら、同一の又はその他の状況においてその他の実施形態も同様に好まれるかもしれない。さらに、1つ以上の好ましい実施形態の詳説は、その他の実施形態が有用でないことを暗に意味するものではなく、又、その他の実施形態を該発明の範囲から除外するものではない。
【0032】
本書で使用される「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つ」及び「1つ以上」という用語は、互換的に使用される。
【0033】
本書では、全ての数字は、「約(about)」という語により変更されるものと仮定されている。終点による数値範囲の詳説は、その範囲内に包含される全ての数字を含む(例えば1〜5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4及び5が含まれる)。
【0034】
本発明の以上の要約は、本発明の各々の開示された実施形態又は全ての実現を記述するように意図されたものではない。以下の記述は、例示的実施形態をより特定的に例証している。該出願全体にわたるいくつかの場所において、さまざまな組合せの中で使用可能な実施例のリストを通して指針が提供されている。各々のケースにおいて、詳説されたリストは、代表的な群として役立つにすぎず、排他的リストとして解釈されるべきではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明は、分析物の検出のための比色センサー系を提供する。該比色系は、レセプタと重合ジアセチレン材料((必ずしもではないが)その他の構成要素を含み得る組織されたポリジアセチレン構造を意味するポリジアセチレン集合)を含む比色センサーを内含し、ここで該レセプタはポリジアセチレン内部に取込まれて、プローブ及び/又は分析物との結合時点で色変化を提供する能力をもつトランスデューサを形成する。該比色センサーは、溶解状態で又は基板上にコーティングされた状態で機能し得る。
【0036】
ポリジアセチレン集合
本発明のジアセチレン化合物は、溶解状態で自己集合でき、例えば電磁スペクトルのUV又は可視域内の電磁放射線といったようなあらゆる化学線を用いて重合され得る秩序化された集合を形成する。ジアセチレン化合物の重合は、その立体構造及び外部因子に対する曝露に応じて570ナノメートル(nm)未満、570nmと600nm(終点を含む)の間又は600nm超の可視スペクトル内の色を有する重合反応生成物を結果としてもたらす。標準的には本書で開示されているジアセチレン化合物の重合は、結果として、ポリジアセチレン主鎖を内含する準安定青相重合体網状構造をもたらす。これらの準安定青相重合体網状構造は、例えば熱、溶媒又は対イオン(利用可能である場合)の変化、又は物理的応力といったような外部因子に対して曝露された時点で青味がかったオレンジ色から赤味がかったオレンジ色までの色変化を行う。
【0037】
本書で開示されているジアセチレン化合物及びその重合生成物は、物理的応力に対する曝露時点で可視的色変化をするその能力により、分析物の検出用のセンシングデバイスの調製のための候補となっている。開示されているジアセチレン化合物から形成されたポリジアセチレン集合は、バイオセンシング応用においてトランスデューサとして機能し得る。
【0038】
一定の与えられたセンシング応用のためのジアセチレン分子の構造的必要条件は、標準的に応用に特異的なものである。全体的鎖長、溶解度、極性、結晶化度及びさらなる分子修飾のための官能基の存在といった特長の全てが、有用なセンシング材料として役立つジアセチレン分子の能力を、協同して決定する。例えば、水性媒質中の分析物の生物検出の場合、ジアセチレン化合物の構造は、水中で安定した分散を形成し、着色された材料へと効率良く重合し、分析物に対する結合のため適切なレセプタ化学を取込み、かつ色変化を用いてあの結合相互作用を変換する能力を有していなくてはならない。これらの能力は、ジアセチレン化合物の構造的特長によって左右される。
【0039】
本発明のジアセチレン化合物は、上述の能力を有し、所望の色変化を行うポリジアセチレン集合へと容易にかつ効率良く重合され得る。さらに、該ジアセチレン化合物は、なおも安定した重合可能な溶液を形成しながら、以下で記述するレセプタといったような重合不能な材料を大幅に余剰に取込むことができるようにする。
【0040】
開示されたジアセチレン化合物(出発材料)は、ハイスループット合成方法を含め、高速高収量で合成可能である。例えばヘテロ原子といったようなジアセチレン化合物(出発材料)の主鎖中の官能基の存在は、一定の与えられたセンシング応用の必要条件を満たすための容易な構造的精緻化の可能性を提供する。ジアセチレン化合物は、例えば水といったような適切な溶媒に対してジアセチレンを添加し、混合物を音波処理し、次に標準的には254nmの波長の紫外光で溶液を照射することにより、所望のポリジアセチレン主鎖含有網状構造の形に重合され得る。重合時点で、溶液は青味がかった紫色へと色変化する。
【0041】
本発明において有用なジアセチレン(出発材料)は、標準的にカルボキシル基、第1級又は第3級アミン基、カルボキシルメチルエステルといったような少なくとも1つの官能基を伴って少なくとも8という平均炭素鎖長を含む。適切なジアセチレンとしては、米国特許第5,491,097号明細書(リビ(Ribi)ら)、国際公開第02/00920号パンフレット、米国特許第6,306,598号明細書及び国際公開第01/71317号パンフレット内で記述されているものが含まれる。
【0042】
好ましい実施形態においては、ポリジアセチレン集合には、
【化4】

という構造式のジアセチレンから結果として得られる重合化合物が含まれ、ここで式中、R1
【化5】

であり、R2は、
【化6】

であり、
3、R8、R13、R21、R24、R31及びR33は独立してアルキルであり、R4、R5、R7、R14、R16、R19、R20、R22、R25及びR32は独立してアルキレンであり、R6、R15、R18及びR26は独立してアルキレン、アルケニレン又はアリーレンであり、R9はアルキレン又は−NR34−であり、R10、R12、R27及びR29は独立してアルキレン又はアルキレン−アリーレンであり、R11及びR28は独立してアルキニルであり、R17はエステル活性化基であり、R23は、アリーレンであり、R30はアルキレン又は−NR36−であり、R34及びR36は独立してH又はC1−C4アルキルであり、pは1〜5であり、nは1〜20であり、ここでR1及びR2は同じではない。
【0043】
化合物の例はさらに、米国特許出願公開第2005/0101794−A1号明細書及び米国特許出願公開第2004/0126897−A1号明細書及び同第2004/0132217−A1号明細書の中で記述されている。
【0044】
好ましい実施形態において、R1
【化7】

であり、式中R7はエチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン又はノナメチレンであり、R6は、エチレン、トリメチレン、エテニレン又はフェニレンであり、R2は、
【化8】

であり、ここでR20はエチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン又はノナメチレンであり、R21はウンデシル、トリデシル、ペンタデシル、ヘプタデシルであり、pは1である。
【0045】
該発明は、構造異性体及び幾何異性体といった異性体、塩、溶媒和物、多形体などを含めた本書に記述された化合物を包含するものである。
【0046】
構造式XXIIIのジアセチレンは、nが標準的に1〜4であり、mが標準的に10〜14であるものとしてスキーム1に概念的に示されている通りに調製可能である。
【化9】

【0047】
構造式XXIIIの化合物は、例えばDMFといったような適切な溶媒中での適切な酸化剤との反応により構造式XXIIの化合物から酸化を介して調製可能である。適切な酸化剤には、ジョーンズ試薬及び重クロム酸ピリジニウムなどが含まれる。上述の反応は標準的に、0〜40℃、一般に0℃〜25℃の温度で1時間から48時間、一般的には8時間行なわれる。
【0048】
構造式XXIIの化合物は、適切な酸塩化物との反応により、XXIの化合物から調製可能である。適切な酸塩化物としては、ラウロイルクロリド、1−ドデカノイルクロリド、1−テトラデカノイルクロリド、1−ヘキサデカノイルクロリド及び1−オクタデカノイルクロリドなどといった所望の生成物を提供するあらゆる酸塩化物が含まれる。適切な溶媒としては、エーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン及びクロロホルムなどが含まれる。前述の反応は、標準的には、トリアルキルアミン又はピリジン塩基といったような塩基の存在下で0℃〜40℃、一般的には0℃〜25℃の温度で1〜24時間、一般的には3時間行なわれる。
【0049】
構造式XXIの化合物は、市販されている(例えばnは1〜4である)か又は、スキーム1に概略的に記され、例えばアブラムス(Abrams)、スザンヌ(Suzanne)R.、ショウ(Shaw)、アンジェラ(Angela)C.「Triple−bond isomerizations:2−to9−decyn−1−ol」、Org.Synth.(1988年)、第66号、127〜31頁、及びブランズマ(Brandsma)L.「Preparative Acetylenic Chemistry」、(Elsevier Pub.Co.、New York、1971年)などの中で開示されているように、化合物XIV及びXXを介して構造式XVIIIの化合物から調製可能である。
【0050】
本書で開示されている通りのジアセチレン化合物は、トルエンといったような適切な溶媒の存在下で無水コハク酸、無水グルタル酸又は無水フタル酸といった無水物と構造式XXIIの化合物を反応させることにより調製することもできる。上述の反応は標準的には、50℃〜125℃、一般的に100℃〜125℃の温度で、1時間〜24時間、一般的には15時間行なわれる。
【0051】
重合されたジアセチレンを含む比色センサーは、分子認識事象の比色検出のための基礎として役立つことができる。該センサーは、重合の前か又は後にジアセチレン単量体に対してレセプタを添加することにより、調製可能である。レセプタは物理的混合、共有結合、及び非共有結合的相互作用(例えば静電反応、極性相互作用など)を含めた、さまざまな手段を通してポリジアセチレン集合を官能化する能力をもつ。
【0052】
重合時点又はそれ以降に、レセプタは、分析物とレセプタの相互作用が接合されたene−yne重合体主鎖の擾乱に起因する可視的な色変化を結果としてもたらすような重合体網状構造を伴って効果的に取込まれる。
【0053】
ポリジアセチレン集合と共にレセプタが取込まれることにより、プローブ及び/又は分析物との相互作用又は結合に応えて変形し得る構造的形状が得られる。特に有用なレセプタは、v/(aoc)(イスラエラックヴィリ、J.N.ら、Q.Rev.Biophys.、第13号、121頁、1980年)として定義されるパッキングパラメータによって特徴づけできる標準的に棒状の分子アーキテクチャをもつ両親媒性分子の集合である[なお、式中、vは分子の炭化水素構成要素(例えばリン脂質又は脂肪酸の炭化水素鎖)により占有される体積であり、a0は極性頭部基(例えばリン脂質のリン酸頭部基又は脂肪酸のカルボン酸頭部基)により占有される有効面積であり、lcはいわゆる臨界長であり一般的にその環境の温度における分子の長さを記述する]。レセプタのための好ましい両親媒性分子は、1/3〜1の間のパッキングパラメータv/(a0c)値をもつ分子である。
【0054】
有用なレセプタの例としては、脂質、表面膜タンパク質、酵素、レクチン、抗体、組換え型タンパク質、合成タンパク質、核酸、c−グリコシド、炭水化物、ガングリオシド及びキレート化剤が含まれるがこれらに制限されるわけではない。大部分の実施形態において、レセプタはリン脂質である。適切なリン脂質にはシルバー(Silver)、ブライアン(Brian)L.「The Physical Chemistry of Membranes」、第1章、1〜24頁、(1985年)に記述されているもののようなホスホコリン(例えば、1,2−ジメリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン)、ホスホエタノールアミン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、及びホスファチジルグリセロールが含まれる。
【0055】
1つの実施形態においては、レセプタは、問題の分析物及び/又はプローブに対する結合親和性をそれ自体が有している1つの構造を形成するべくポリジアセチレンの中で物理的に混合され分散させられる。構造には、リポソーム、ミセル、及びラメラが含まれるがこれらに制限されるわけではない。好ましい実施形態においては、該構造はリポソームである。理論により束縛する意図はないが、リン脂質が細胞膜を模倣する一方で、ポリジアセチレン集合はリポソームに発生する物理−化学的変化を可視的な色変化へと翻訳できるようにすると考えられている。調製された状態のリポソームは、明確な形態、サイズ分布及びその他の物理的特性例えば明確な表面電位を有する。
【0056】
リポソーム中のジアセチレン化合物(出発材料)に対するレセプタの比率は、材料の選択及び所望の比色応答の選択に基づいて変動させることができる。大部分の実施形態において、リン脂質対ジアセチレン化合物(出発材料)の比率は、少なくとも25:75、より好ましくは少なくとも40:60となる。好ましい実施形態においては、リポソームは、6:4の比で混合されたジアセチレン化合物:HO(O)C(CH22C(O)O(CH24C≡C−C≡C(CH24O(O)C(CH212CH3[コハク酸モノ−(12−テトラデカノイルオキシ−ドデカ−5,7−ジイニル)エステル]、及び両性イオンリン脂質1,2−ジメリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン[DMPC]から成る。
【0057】
本書では、PDA系についての論述は、レセプタ集合内でのリポソームの使用に向けられている。しかしながらこの論述は同様に、例えばその他の平面構成を含めたその他のレセプタ集合にもあてはまる。
【0058】
リポソームは、調製緩衝液と呼ばれる緩衝溶液中に懸濁された材料混合物のプローブ音波処理により調製される。例えば、調製緩衝液は、低イオン強度(5mM)のN−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸[HEPES]緩衝液(pH=7.2)であり得る。もう1つの有用な調製緩衝液は、低イオン強度(2mM)のトリスヒドロキシメチルアミノエタン[TRIS]緩衝液(pH=8.5)である。
【0059】
本発明の比色系は、リン脂質といったレセプタ及び重合されたジアセチレンの両方を含むリポソームとプローブが相互作用できる方法を開発するために設計されている。リポソームは、エルリッチ(Oellerich)、S.ら、J.Phys.Chem B、2004年、第108号、3871〜3878頁、及びズカーマン(Zuckermann)、M.J.、ハイムブルグ(Heimburg)T.、Biophysi.J.、2001年、第81号、2458〜2472頁の中で記述されているように、タンパク質といったようなプローブと相互作用する生体膜のためのモデルとして使用可能である。一般に、高い脂質対タンパク質濃度比では、タンパク質が、主として静電相互作用を通してリポソームの表面に吸着することになる。
【0060】
タンパク質濃度が増大し、タンパク質に対する脂質の濃度が低下するにつれて、タンパク質は、完全に飽和するか又はリポソームを包み隠すまで、リポソームの表面に対して静電的に吸着し続ける。このプロセスが進展するにつれて、リポソーム及びタンパク質は両方共、リポソーム表面を被覆するタンパク質の疎水性セグメントがリポソーム構造の疎水性内部と相互作用し始め得るまで、形態的及び立体構造的に変化する可能性がある。この時点で、タンパク質は疎水結合した状態となり、リポソーム構造に浸透し、リポソーム構造の実質的な形態的変化を結果としてもたらし、リポソームのサイズ及び浸透性が大幅に変わる可能性がある。最終的に、タンパク質層は、懸濁安定性の喪失、綿状沈殿そして最終的に沈降をもたらし得る。
【0061】
これらの静電相互作用の存在は、存在するタンパク質及び脂質のタイプのみならずその環境にも大きく左右される。理論により束縛されることを望むわけではないが、一定の与えられた緩衝液系のイオン強度が、リポソーム及び荷電タンパク質の両方の表面電位ひいては有意に静電相互作用するそれらの能力を立証する上で役に立つであろうと考えられている。
【0062】
例えば、中性pHで低イオン強度(2〜5mM)の緩衝液系(例えばHEPES、TRIS)においては、荷電プローブが、ポリジアセチレンリポソームに対し静電吸着し得る。初期吸着はそれ自体、リポソームのサイズ及び形態の実質的変化を誘発せず、当初比色変化は小さい又は無視できる程度であるかもしれないが、脂質に比べて余剰にプローブが存在する場合、プローブが最終的にリポソームに対し疎水結合した状態となりその内部膜構造に進入する確率が高い。この時点で、リポソーム構造内部へのプローブの取込みにより付与される大きな機械的応力は、ポリジアセチレン立体構造を有意な形で変化させることになりその結果同時比色応答が容易に観察できるということが予想されると思われる。
【0063】
代替的には、プローブが中性pHで負に荷電されている場合、ポリジアセチレンリポソームと静電相互作用する能力は大幅に損なわれ、及びプローブとレセプタ含有ポリジアセチレンリポソームの間の疎水性相互作用に起因する比色応答を生成する能力は脅かされる可能性がある。このような場合には、中性pHの高イオン強度緩衝液(>100mM)(例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、イミダゾール緩衝液)の使用が、(リポソームの表面電荷をスクリーニングすることにより)リポソームの表面電荷を減少させ、非荷電プローブとリポソームの直接的な疎水性相互作用を容易にし、かつリポソームの構造内部へのそのタンパク質の取込みを結果としてもたらす手段を提供することになると思われる。かくして、この場合、緩衝液系は、それでなければ起こることのない実質的な比色応答を可能にさせる一助となる。緩衝液のイオン強度がさらに高いと、リポソームの表面電位に対するその効果のためにプローブの不在下で多大な比色応答が導入され得るが、プローブが存在する場合、比色応答は、タンパク質−リポソーム疎水性相互作用に起因して著しく増強される、ということが見極められてきている。この結果は、非常に有用な実践的影響を有する。すなわち、一定の与えられた検出限界における検出時間を著しく短縮でき、喚言すると、固定された検定時間について検出限界を著しく低下させることができる。
【0064】
この現象に基づき、比色応答を開始させるべく一定の与えられた分析物標的及びポリジアセチレンリポソームの両方と特異的に相互作用するその能力に基づいて、プローブを選択することができる。ポリジアセチレン含有リポソームの比色応答は、これらの直接分析のケースにおいてプローブ又はプローブ−分析物錯体の濃度に正比例する。
【0065】
特定の応用のためのプローブの選択は、一部にはプローブのサイズ、形状、電荷、疎水性及び分子に対する親和性によって左右されることになる。プローブは、環境のpHに応じて正に荷電、負に荷電されていても、又両性イオンであってもよい。プローブの等電点よりも低いpHでは、プローブは正に荷電されており、この点より上では、それは負に荷電されている。本書で使用されているように、「等電点」という用語は、プローブがゼロという正味電荷をもつpHを意味する。
【0066】
ポリジアセチレン/リン脂質系を用いた生化学検定を設計するためには、レセプタ(又はプローブ)の等電点を知っていることが緩衝液組合せの選択に影響を及ぼすことになる。比較的等電点が低いプローブは、リポソームの形態変化を得るのにより高いイオン強度を必要とする可能性がある。色変化を生み出すため、HEPES緩衝液といったような低イオン強度緩衝液内ではより高い等電点のタンパク質を使用することができる。
【0067】
この一般的機序を考えると、ポリジアセチレンリポソーム組成(例えば、使用されているリン脂質の選択及びリン脂質対ジアセチレンの比)、及び使用されているプローブ(例えばポリミキシン、フィブリノーゲン、抗体)のみならず、緩衝液系の選択により立証される水環境をも考慮に入れて、検出検定を定義づけすることが重要である。
【0068】
本発明の緩衝液組成物は、プロトン受容体対プロトン供与体の比がほぼ1である接合体酸−塩基対から成る、その他の構成要素の存在下でpHの変化に耐えることのできる系を提供する。さらに、本発明の緩衝液組成物は、比色センサーの構成要素と分析物の間の物理的又は化学的相互作用を媒介する。例えば、1つの実施形態においては、緩衝液組成物組成物は、レセプタと分析物の相互作用を阻害する。もう1つの実施形態においては、緩衝液組成物はレセプタと分析物の相互作用を容易にする。特に有用であり得る緩衝液組成物としては、HEPES緩衝液、イミダゾール緩衝液及びPBS緩衝液が含まれる。
【0069】
好ましい実施形態においては、検出すべき標的分析物及び/又はプローブの選択に基づいて一定の与えられた応用のために該当するイオン強度を調整するために、緩衝液(すなわち異なる緩衝液)の組合せが用いられる。
【0070】
2つ以上の異なる緩衝液を組合わせることは、リポソーム−タンパク質プローブの相互作用において静電構成要素と疎水性構成要素の適切な平衡を達成するように緩衝液系の物理的特性を調整する便利な手段である。
【0071】
例えば、pHが7.2であるHEPES緩衝液のみを含有する系においては、ポリミキシン(等電点7.7)が正の電荷を有し、リン脂質の負に荷電されたリン脂質極性頭部基に容易に接着し、比色センサー内で青色から赤色への色変化を誘発し得る。5.3という等電点をもつフィブリノーゲンは、同じHEPES緩衝液組成物内で負の電荷を有し、これが、リン脂質の極性頭部基とのあらゆる静電相互作用又は吸着を防ぐ。
【0072】
代替的には、イミダゾール又はPBSといったようなより高いイオン強度をもつ緩衝液の存在下で、イオン強度はリポソーム(又はその他のトランスデューサ構造)の形態を改変させて、疎水性部分を露呈させる。比較的高いイオン強度の緩衝液組成物を含有する比色系においては、フィブリノーゲンは、色変化をひき起こすようにリン脂質と相互作用する構造の中に疎水性部分を含有する。
【0073】
リポソーム−タンパク質相互作用において静電構成要素と疎水性構成要素の最適な平衡を達成するための1つの便利な方法は、2つ以上の異なる緩衝液の混合物を使用することにある。例えば、異なるイオン強度で無機緩衝液(PBS)と低イオン強度の有機緩衝液(HEPES、Tris)を混合することにより、単一緩衝液のケース毎にひとくくりにされていた緩衝液特性の範囲を補うことが可能となる。従って、混合型緩衝液系は、最適化されたリポソーム−タンパク質相互反応を提供するように設計可能である。
【0074】
混合緩衝液系は、同様に、どこまでその緩衝液系が相互作用している緩衝液であるか又は相互作用しない緩衝液であるかを調整する方法を提供する。例えば、リポソーム形態に対するその効果を調整するために、相互作用する緩衝液(PBS、イミダゾール)を相互作用しない緩衝液(HEPES)で「希釈する」ことができる。当然のことながら、混合型緩衝液系を使用することによって反対の効果(相互作用しない緩衝液がより相互作用するものとなる)も達成可能である。
【0075】
最終的に、類似の要領で、比色センサーとプローブの疎水性相互作用を補助できる界面活性剤構成要素を緩衝液組成物内に導入することができると思われる。本発明において特に有用でありうる界面活性剤には、非イオン界面活性剤が含まれる。ポリアルコキシ化特にポリエトキシル化された非イオン界面活性剤が、溶液中で本発明の構成要素を特に良く安定化させることができる。
【0076】
有用であり得る非イオンタイプの界面活性剤には、以下のものが含まれる。
【0077】
1.酸化ポリエチレンで増量されたソルビタンモノアルキラート(すなわちポリソルバート)。特に、NIKKOL TL−10(バレットプロダクツ(Barret Products)製)として市販されているポリソルバート20がきわめて有効である。
【0078】
2.ポリアルコキシ化アルカノール。少なくとも約14というHLBを有するICI スペシャリティー・ケミカルズ(Specialty Chemicals)、ウィルミントン、デラウエア州(Wilmington,DE)から商品名称BRIJとして市販されているものといったような界面活性剤が有用であることが証明されている。特に、それぞれ20及び100モルの酸化ポリエチレンを有するステアリルアルコールエトキシレートであるBRIJ78及びBRIJ700がきわめて有用であることが証明されてきた。同様に有用であるのは、BASFコーポレーション、パフォーマンス・ケミカルズ・ディビジョン(BASF Corp.,Performance Chemicals Div.)、マウントオリーブ、ニュージャージ州(Mt.Olive,NJ)から商品名称PLURAFACA−39として市販されているセテアレス55である。
【0079】
3.ポリアルコキシル化アルキルフェノール。このタイプの有用な界面活性剤としては、それぞれBASF コーポレーション、パフォーマンス・ケミカルズ・ディビジョン、マウントオリーブ、ニュージャージ州及びユニオン・カーバイド・コーポレーション(Union Carbide Corp.)、ダンベリー、コネチカット州(Danbury,CT)から商品名称ICONOL及びTRITONとして市販されている少なくとも約14のHLB値を有するポリエトキシル化オクチル又はノニルフェノールが含まれる。例としては、TRITON×100(ユニオン・カーバイド・コーポレーション、ダンベリー、コネチカット州)から入手可能である15モルの酸化エチレンを有するオクチルフェノール)及びICONOL NP70及びNP40(BASFコーポレーション、パフォーマンス・ケミカルズ・ディビジョン、マウントオリーブ、ニュージャージ州)から入手可能なそれぞれ40及び70モルの酸化エチレン単位を有するノニルフェノール)が含まれる。これらの界面活性剤の硫酸及びリン酸誘導体も同じく有用である。かかる誘導体の例としては、ロジア(Rhodia)、Dayton、ニュージャージ州から商品名称RHODAPEX CO−436として市販されているアンモニウムノノキシノール−4−スルファートが含まれる。
【0080】
4.ポラクサマ。酸化エチレン(EO)及び酸化プロピレン(PO)のブロック共重合体に基づく界面活性剤は、本発明のフィルム形成重合体を安定化する上で有効であり優れた湿潤化を提供することが示されてきた。HLBが少なくとも約14、好ましくは少なくとも約16であるかぎり、EO−PO−EOブロック及びPO−EO−POブロックの両方共が充分に働くものと予想されている。かかる界面活性剤はBASFコーポレーション、パフォーマンス・ケミカルズ・ディビジョン、マウントオリーブ、ニュージャージ州から商品名称PLURONIC及びTETRONICとして市販されている。BASFからのPLURONIC界面活性剤は、上述のものとは異なる形で計算されるHLB値を報告している、ということが指摘される。このような状況では、BASFにより報告されているHLB値を使用すべきである。例えば、好ましいPLURONIC界面活性剤は、それぞれ15及び22というHLBを有するL−64及びF−127である。PLURONIC界面活性剤は本発明の組成物を安定化する上でかなり有効であり、活性剤としてヨードを用いてきわめて有効であるものの、活性剤としてポビドン−ヨードを用いる組成物の抗菌活性を低減させる可能性がある。
【0081】
5.ポリアルコキシル化エステル。エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロールなどといったようなポリアルコキシル化グリコールは、(C8−C22)アルキルカルボン酸で部分的又は完全にエステル化され得る、すなわち、1つ以上のアルコールがエステル化され得る。少なくとも約14及び好ましくは少なくとも約16のHLBを有するこのようなポリエトキシル化エステルが、本発明の組成物において使用するのに適している。
【0082】
アルキルポリグリコシド。米国特許第5,951,993号明細書、(ショルツ(Scholz)ら)の第9欄44行目から始まって記述されているもののようなアルキルポリグルコシドは、本発明のフィルム形成重合体と相容性があり、重合体の安定性に寄与し得る。例としては、10.3炭素及び1〜4グルコース単位の平均鎖長を伴う(C8−C16)アルキル鎖長を有するグルコポン425が含まれる。
【0083】
究極的には、本発明の比色材料に基づく検出系は、以下の要因のうちの1つ以上のものにより左右される:ジアセチレン化合物の分子アーキテクチャ、利用されるレセプタ部分のタイプ、ジアセチレン及びレセプタ分子のリポソーム又はその他の潜在的凝集体構造の形態(サイズ及び構造)、利用されるタンパク質プローブ、及び検定を実施するために使用される緩衝液系。
【0084】
検出方法
本発明は、上述の比色センサーと分析物を含有する表面又は溶液試料とを接触させるステップ及び吸収測定又は裸眼での目視観察を用いて比色センサー内の色変化を検出するステップを含む、分析物の分析方法を提供する。
【0085】
1つの変形実施形態においては、本発明はポリジアセチレン集合の中に取込まれたレセプタ及び分析物の両方と結合するための親和性をもつプローブを選択することによる、分析物の間接的検出方法を提供する。選択されたプローブは、分析物との競合的親和性を実証することになる。問題の分析物が存在する場合、該プローブはポリジアセチレン主鎖上のレセプタではなく分析物に結合し、その結果分析物の濃度と反比例した色変化をもたらすことになる。分析物が存在しない場合、プローブはポリジアセチレン主鎖上に取込まれたレセプタに結合し、その結果として青色から赤色への色変化がもたらされることになる。プローブは、分析物がセンサーに接触した後センサーと接触でき、そうでなければ混合物かセンサーに接触する前に分析物を混合し得る。
【0086】
逆検出検定においては、プローブ及び標的分析物は、緩衝溶液中で相互作用でき、これはその後センサーと接触状態に置かれる。緩衝液中に遊離したプローブの濃度は、存在する分析物標的の量により左右される。すなわち、分析物の濃度が高ければ高いほど、残りのプローブ濃度は低くなる。センサーの比色応答は利用可能な遊離プローブの量に正比例していることから、比色応答は分析物濃度に対して反比例する。
【0087】
一部のケースでは、プローブは、センサーと直接相互作用できる錯体を分析物と形成でき、かくして、比色応答が分析物の濃度と正比例する直接的検定を生み出すことになる。
【0088】
1つの実施形態においては、該発明の方法は、緩衝液組成物中に分析物を含むテスト試料を提供するステップ、緩衝液組成物中にプローブを提供するステップ、テスト試料とプローブを組合せるステップ(なお該プローブがレセプタよりも分析物に対しより大きい結合親和性を示す)、及びバイオセンサーで変化を検出するステップを含む。
【0089】
一部の検定においては、以下でさらに詳述するように、分析物標的をフラグメント化するか又はその他の形で溶解させることによりインサイチュでプローブを生成することができるということを認識することも重要である。該プローブは同様に、センサーと直接相互作用するように利用可能である生体の細胞壁上で外部に存在するタンパク質又はタンパク質フラグメントと考えることもできる。プローブと分析物の間の相互作用は、リポソームとの相互作用を除いて機能できる。代替的には、プローブは分析物と相互作用して、リポソームと相互作用する結果として得られた錯体と共に1つの錯体を形成する可能性がある。
【0090】
プローブは、溶解状態の又は基板上にコーティングされたセンサーと接触可能である。プローブは、標的分析物及びレセプタの両方について親和性を有するあらゆる分子ということになる。本発明で使用するための考えられるプローブとしては、アラメチシン、マガイニン、グラミシジン、ポリミクシンB硫酸塩及びメリチン、フィブリノーゲン、ストレプトアビジン、抗体、レクチン、及びそれらの組合わせといったような膜分断ペプチドが含まれる。
【0091】
一部の実施形態においては、抗体がプローブとして利用される。「抗体」というのは、その抗原結合フラグメントを含めた一定の与えられた抗原を特異的に結合させる能力をもつ免疫グロブリンを意味する。「抗体」という用語は、脊椎動物(例えば哺乳動物)タンパク質とも特異的反応性をもつあらゆるイソ型の全抗体(IgG、IgA、IgM、IgEなど)及びそのフラグメントを含むものとして意図されている。抗体は、従来の技術を用いてフラグメント化され得、フラグメントは全抗体と同じ要領で有用性についてスクリーニングされる。かくして、この用語には、或る種のタンパク質と選択的に反応する能力をもつ抗体分子のタンパク質分解により分割された又は組換えにより調製された部分のセグメントが含まれる。かかるタンパク質分解及び/又は組換え型のフラグメントの制限的意味のない例としては、F(ab’)、F(ab)2、Fv及び、ペプチドリンカーにより接合されたVL及び/又はVHドメインを含有する1本鎖抗体(scFv)が含まれる。scFv’sは、共有的又は非共有的に連結されて2つ以上の結合部位をもつ抗体を形成することができる。抗体は、当業者にとって既知であるあらゆる検出可能な部分を用いて標識付け可能である。
【0092】
当該技術分野ではさまざまな抗体が知られている。例えば、黄色ブドウ球菌(S.aureus)抗体がシグマ・アンド・アキュレート・ケミカル(Sigma and Accurate Chemical)から市販されている。好ましくは、利用されている抗体の濃度は、少なくとも1ミリリットルあたり2ナノグラム(ng/ml)である。標準的には、抗体の濃度は、少なくとも100ナノグラム/mlである。例えば、100マイクログラム/mlの濃度を利用することができる。標準的には、約500マイクログラム/ml以下が利用される。
【0093】
その他の実施形態においては、プローブとしてフィブリノーゲンが利用される。理論により束縛される意図はないものの、分析物上/内で発現された又は存在するフィブリノーゲン結合タンパク質がフィブリノーゲンとして反応すると考えられている。例えば、黄色ブドウ球菌(S.aureus)は、接触した場合にフィブリノーゲンと反応するクランピング因子と呼ばれることの多いフィブリノーゲン結合タンパク質を発現する。
【0094】
この反応を生成するためのフィブリノーゲンの濃度は、標準的に少なくとも0.0001wt%そして一般的には5wt%以下である。ヒト血漿及び動物(例えばウサギ)血漿は、適切なフィブリノーゲン含有培地である。市販の血漿生成物は一般にEDTA、クエン酸塩、ヘパリンなどといった抗凝血剤を含む。ヒトに由来するフィブリノーゲンは、シグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich)、セントルイス、ミズーリ州(St.Louis,MO)から市販されている。
【0095】
間接的検出方法を用いて、使用されるプローブの濃度に基づいて、低い検出レベルを提供する高い感度が可能である。検出戦略としては、所望の検出濃度レベルに対応するようにプローブ濃度を選択することが可能である。プローブを用いた間接的検出方法は、一定の与えられた応用における所望の感度のためにプローブのタイプ及び濃度の周囲で系を設計できるようにする。こうしてトランスデューサは、問題となっている多数の分析物にとって汎用性のあるものとなることができる。例えば、トランスデューサと接触するプローブを分析物に対するプローブの親和性に従って変更することにより、単一のトランスデューサ(ポリジアセチレン/レセプタの組合せ)を多数の分析物の検出に役立てることができる。
【0096】
検出すべき特に有利な分析物は、グラム陽性菌、グラム陰性菌、真菌、原生動物、マイコプラズマ、酵母、ウイルスさらには脂質エンベロープウイルスといったような病原菌(すなわち微生物)である。特に関連性ある生体としては、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)族、又はブドウ球菌株(Staphylococcus spp.)、連鎖球菌株(Streptococcus spp.)、シュードモナス菌株(Pseudomonas spp.)、腸球菌株(Enterococcus spp.)、エシェリヒア株(Esherichia spp.)、桿菌株(Bacillus spp.)、リステリア菌株(Listeria spp.)、ビブリオ菌株(Vibrio spp.)、並びにヘルペスウイルス、麹菌株(Aspergillus spp.)、フサリウ菌株(Fusarium spp.)及びカンジダ菌株(Candida spp.)属が含まれる。特に強い病原性を持つ生体としては、ブドウ球菌株(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)といった耐性菌株を含む)、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、無乳性連鎖球菌(S.agalactiae)、化膿連鎖球菌(S.pyogenes)、腸球菌(Enterococcus faecalis)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)、バンコマイシン低感受性黄色ブドウ球菌(VISA)、炭素菌(Bacillus anthracis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、大腸菌(Escherichia coli)、黒麹菌(Aspergillus niger)、アスペルギルス・フミガツス(A.fumigatus)、アスペルギルス・クラバツス(A.clavatus)、フサリウム・ソラニ(Fusarium solani)、フサリウム・オキシスポラム(F.oxysporum)、フサリウム・クラミドスポラム(F.chlamydosporum)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、コレラ菌(Vibrio cholera)、腸炎ビブリオ菌(V.parahemolyticus)、豚コレラ菌(Salmonella cholerasuis)、チフス菌(S.typhi)、ねずみチフス菌(S.typhimurium)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・グラブラータ(C.glabrata)、カンジダ・クルセイ(C.krusei)、及び多剤耐性グラム陰性桿菌(MDR)の成員がある。
【0097】
特に有利なものは、黄色ブドウ球菌といったようなグラム陽性菌である。標準的には、これらは、細胞壁タンパク質といったような細菌に特徴的な細胞壁構成要素の存在を検出することによって検出可能である。同様に、特に有利であるのは、MRSA、VRSA、VISA、VRE及びMDRを含む抗生物質耐性病原菌である。標準的には、これらは、膜タンパク質といったような内部細胞構成要素の存在を付加的に検出することによって検出可能である。
【0098】
有利なこのような病原菌又はその他の種は、生理液例えば血液、唾液、接眼レンズ液、滑液、脳脊髄液、膿汁、汗、浸出液、尿、粘液、泌乳汁などといったあらゆる供給源に由来するものであり得るテスト試料中で分析され得る。さらに、テスト試料は、例えば創傷、皮ふ、鼻孔、頭皮、つめなどの身体部位に由来するものであり得る。本書で使用する「テスト試料」という用語は、標的分析物を含有する試料を意味する。好ましくは、試料は液体又は気体そしてより好ましくは液体である。
【0099】
当該技術分野では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)の検出のためのさまざまな患者の試料採取技術が記述されている。かかる試料採取技術は、本発明の方法にも適している。患者の鼻孔を拭うことで試料を得るのが一般的である。特に好ましい試料採取技術としては、対象の(例えば患者の)前鼻孔を無菌のレーヨン綿棒で拭うことが含まれる。各々の対象の試料採取のために1本の綿棒、すなわち両小鼻について1本の綿棒が用いられる。試料採取は、対象の小鼻の前先端部の中に適切な溶液で予め湿らされているか又は乾燥したレーヨン綿棒(「Pure−Wraps」という商品名称でピューリタン(Puritan)、イーストグリンステッド、英国(East Grinstead,UK)から市販されているもの)を挿入し、鼻孔の粘膜表面に沿って2回全周回転するべく綿棒を回転することによって実施される。その後、綿棒は直接培養されるか、又は任意には少なくとも1つの界面活性剤及び緩衝液と組合わせた形で水を標準的に含んでいる適切な溶液を用いて抽出される。
【0100】
生理液以外に、その他のテスト試料は、その他の液体ならびに、液体培地中に溶解された固体を含み得る。有利な試料としてはプロセス蒸気、水、土、植物又はその他の植物、空気、表面(例えば汚染された表面)などが含まれ得る。
【0101】
テスト試料(例えば液体)は、粘性流体の希釈といったような前処理に付されてよい。テスト試料(例えば液体)は、(ろ過、蒸留、透析などによる)濃縮、希釈、ろ過、天然構成要素の不活性化、試薬の添加、化学的処理などといったような試料ポート内への注入前のその他の処理方法に付されてよい。
【0102】
標的分析物のシグナル検出を増強し得る1つの処理方法には、米国特許出願公開第2005/0153370号明細書の中に記述されているように、細胞を溶解させて細胞壁フラグメントを形成するステップ及び細胞壁フラグメントを分析するステップが関与している。特に、該方法は、病原菌特に黄色ブドウ球菌に特徴的である細胞壁の1つ以上の構成要素を検出するために有用である。該方法は、未培養細胞を含むテスト試料を提供するステップ、未培養細胞を溶解させて細胞壁フラグメントを含む溶解物を形成するステップ、及び分析物に特徴的である細胞壁構成要素について細胞壁フラグメントを分析するステップを含み、ここで分析物に特徴的な細胞壁構成要素は、未溶解細胞内の同じ構成要素に関連する増強されたシグナルを表示する。
【0103】
細胞壁構成要素には、例えば、プロテインAといったような細胞壁タンパク質及び接着性マトリクス分子を認識する病原菌表面構成要素(MSCRAMM)例えばフィブリノーゲン結合タンパク質(例えばクランピング因子)、フィブロネクチン結合タンパク質、コラーゲン結合タンパク質、ヘパリン/ヘパリン関連多糖類結合タンパク質などが含まれる。プロテインA及びクランピング因子例えばフィブリノーゲン結合因子及びクランピング因子A、B及びEfbも同様に、黄色ブドウ球菌の存在を検出する方法において有用である。その他の細胞壁構成要素としては、莢膜多糖類及び細胞壁炭水化物(例えばテイコ酸及びリポテイコ酸)が含まれる。
【0104】
溶解作業には、細胞を溶解剤と接触させるステップ又は細胞を物理的に溶解させるステップが含まれる。溶解作業は、例えば約5℃〜約37℃の温度、好ましくは約15℃〜約25℃の温度で、従来の条件下で実施可能である。有意にも、該溶解作業は、未培養細胞すなわち直接テスト試料を用いて行なわれ得るが、培養細胞も同様に使用可能である。
【0105】
細胞を溶解させて細胞壁フラグメントを形成させるステップ及びその結果として得られる細胞壁構成要素のシグナルの増強の結果として、比較的低い濃度で問題の種を有する試料を評価することができる。例えば或る種の実施形態については、テスト試料は比較的低濃度で病原菌特に黄色ブドウ球菌を含み得る。かかる比較的低い濃度としては、例えば病原菌1ミリリットル(cfu/ml)あたり約5×104個未満のコロニー形成単位(「cfu」)、約5×103cfu/ml未満、約1000cfu/ml未満、さらには約500cfu/mlといった低い濃度さえ含まれる。黄色ブドウ球菌といったような病原菌は、例えば最高5×107cfu/mlといった範囲の高いレベルでも検出され得る。
【0106】
適切な溶解剤としては、例えば、リソスタフィン、リソザイム、エンドペプチダーゼ、N−アセチルムラミル−L−アラニンアミダーゼ、エンド−ベータ−N−アセチルグルコサミニザーゼ及びALE−1といったような酵素が含まれる。望まれる場合、さまざまな酵素組合せを使用することもできる。リソスタフィンが、黄色ブドウ球菌の存在を検出する方法において特に有用である。
【0107】
その他の溶解剤としては、塩(例えばカオトロピック塩)、可溶化剤(例えば洗浄剤)、還元剤(例えばDTT、DTE、システイン、N−アセチルシステイン)、酸(例えばHCl)、塩基(例えばNaOH)が含まれる。望まれる場合には、かかる溶解剤のさまざまな組合せを使用することもできる。
【0108】
一例として、黄色ブドウ球菌(S.aureus)が存在する場合、テスト試料中の溶解された細胞を、黄色ブドウ球菌(S.aureus)に特徴的であるプロテインAについて分析することができ、バイオセンサー表面上に固定化されたプロテインAに特異的な抗体でそれを検出することができる。さらに、黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌といったような溶解された細胞は、(細胞の細胞壁部分の対語としての)細胞の内部部分からタンパク質マーカーを放出する。かかるタンパク質マーカーは、抗体といったようなプローブにより検出され得る。
【0109】
テスト試料とプローブは、さまざまな適当な要領で組合せ可能である。1つの態様では、プローブはセンサーに提供され、テスト試料は、なお任意の順序で、別の部分として比色センサーに提供される。例えば、表面はフィブリノーゲン含有溶液でコーティングされ、任意には乾燥され得る。もう1つの態様においては、テスト試料及びプローブは混合物として組合わせられ、該混合物は比色センサーに提供される。好ましい実施形態においては、プローブは、比色センサーと接触する前に分析物を含有するテスト試料と相互作用する。
【0110】
有利にも、該発明の方法は、改善された感応性を有する。以下の実施例でさらに詳述される通り、黄色ブドウ球菌(S.aureus)は、1ミリメートルあたり5×104コロニー形成単位(「cfu」)、5×103cfu/ml及び5×102cfu/mlの濃度で検出可能である。従って、当業者であれば、本発明の方法を5×102cfu/mlといった低い濃度(例えば10cfu/mlの増分で挙げられた濃度の間の任意の特定の濃度)で標的分析物を検出するために利用できるということを認識する。最高5×107cfu/mlにまで至る高いレベルで標的分析物を検出することも又可能である。
【0111】
代替的に又は付加的に、該発明の方法は有利には検出速度の改善をも結果としてもたらす。本書において利用されるデバイスは、比較的短時間で分析物を検出する能力をもつ。例えば、黄色ブドウ球菌(S.aureus)は、前述の濃度のいずれにおいても、120分未満(例えば90分、60分、30分、10分)で検出可能である。
【0112】
応用
開示されたジアセチレン化合物から形成される本発明の比色センサーは、実験室環境の外でコスト効果性、安定性が高く、精確で一貫性がありかつ迅速な診断を要求するさまざまな応用に適している。応用としては、医療現場での検査、自宅内検査診断、空気又は水伝染性の病原体及びVOCの軍用及び工業用検出、及び食品加工が含まれる。
【0113】
1つの実施形態においては、感染の存在を診断するため生体液中のグラム陰性菌を検出するために、該比色センサーを用いることができる。例えば、尿中のグラム陰性菌の存在は、尿感染を表わすものである。本発明のポリジアセチレン集合を含む比色センサーは、溶液中又は基板上のコーティングとしてのいずれかの形で色変化を通して生体液中の黄色ブドウ球菌(S.aureus)といったグラム陰性菌の存在を示すことができる。
【0114】
一部の実施形態においては、本発明の比色センサーは、細菌又はその他の分析物の存在の多方面判定を提供するべくその他の既知の診断方法と対を成すことができると思われる。
【0115】
1つの実施形態においては、本発明の比色センサーは、感染の存在を検出するべく創傷包帯と併用され得る。センサーは、創傷と直接的又は間接的に接触した状態にある層として包帯の中に組込まれ得る。該センサーは、使用中に包帯中に挿入することもできる。代替的には、米国特許第6,420,622B1号明細書の中で記述されているもののようなマイクロ流体流路を通して、創傷からセンサーが位置設定されている創傷と接触しない包帯の一部分まで創傷滲出液を導くことのできる包帯構造を考案することができると思われる。該センサーは、創傷用綿球から抽出された分析物を分析することにより、創傷感染を査定する上での独立型診断器具として使用することもできる。
【0116】
適切な支持体に移す前に従来のLB(ラングミュアーブロジェット(Langmuir−Blodgett)プロセスによりフィルムを形成させる必要なく、ポリジアセチレン集合を含むセンサーを得ることが可能である。代替的には、ポリジアセチレン集合を、A.ウルマン、「An Introduction to Ultrathin Organic Films」、Academic Press、New York (1991年)、101〜219頁に記述されている通りの既知のLBプロセスを用いて基板上に形成させることができる。
【0117】
本発明は、使い捨て接着剤製品中にバイオセンシング能力を提供することができる。センサーは内蔵式であり、測定可能な結果を搬送するために付加的な計装を必要としない。代替的には、さらに感応性を増強するため、分析物の検出後に現像される螢光「赤色」相を伴う螢光といったようなその他の分析計装と共に使用することも可能である。センサーは、特定の分析物の閾値での存在を検出することが望まれる場合、30分未満、好ましくは15分未満の高速スクリーニングデバイスを提供するように機能する。さらに、本発明のセンサーは使い捨であり、比較的廉価である。
【0118】
該発明の1つの実施形態においては、比色センサーは、溶解状態のポリジアセチレン集合の内部に取込まれたレセプタから形成されたトランスデューサを含む。該溶液は、単純なバイアルシステム中に入って提供され得、分析物は、問題の分析物に特異的なトランスデューサと共に溶液を収納するバイアルに直接添加される。代替的には、比色センサーは、キット内に多数のバイアルを含むことができ、各バイアルは、異なる分析物に特定のものであるレセプタが取込まれた状態でポリジアセチレン集合を含むトランスデューサを収納している。ポリジアセチレントランスデューサに対し直接分析物を添加できない応用のためには、2部分バイアル系を用いることができると思われる。バイアルの1つの区画は、ポリジアセチレン集合から形成されたトランスデューサを収納する第2の区画から物理的に分離されて、分析物の試料調製のための試薬を収納することができると思われる。試料調製がひとたび完了したならば、区画を分離する物理的障壁は取り除かれて、検出のために分析物がトランスデューサと混合できるようにする。
【0119】
調製された状態の比色センサーは、次に、基板に液滴を置いて水が蒸発できるようにすることによってか、又は適当な細孔サイズの膜を通して懸濁液を押出し、ポリジアセチレン集合を取込み、コーティングされた膜を結果として得ることによって、固体基板上にコーティングされ得、これはその後乾燥させられる。適切な膜は、一般的には、ポリカーボナート、ナイロン、PTFE、ポリエチレン(その他も列挙可能)といった材料を含む、200nm以下の細孔サイズをもつものである。これらの基板を、ジアセチレン集合の重合懸濁液でコーティングすることもできるし、そうでなければ未重合形態で懸濁液をコーティングし、その後コーティングされた状態で重合させることもできる。
【0120】
本発明のもう1つの実施形態においては、比色センサーは、図1に描かれているようなテープ又はラベルフォーマットの急速な指示薬である。図1は、基板40上にコーティングされたトランスデューサ30及び粘着剤20がコーティングされたテープ又はラベル10を示す。本発明で使用するのに適した基板は、米国特許出願公開第2004−0132217−A1号明細書の中で記述されている通りのヨウ化メチレン(アルドリッチ(Aldrich))及びミリーQ(ミリポア(Millipore))を用いた接触角測定によって特徴づけされ得る。
【0121】
基板40としては、その表面エネルギーを系統的に改変させるべく裸でかつ自己集合性単層(SAM)で改質された、原子的に平坦なシリコン(111)ウェーハ上の蒸着金、原子的に平坦なシリコン(111)ウェーハ又はフロートガラスといったようなきわめて平坦な基板、又は紙基板、重合体インク受容性コーティング、構造化重合体フィルム、微孔フィルム及び膜材料を含むきわめてきめのあるトポロジーを有する基板が含まれ得る。
【0122】
乾燥時点でポリジアセチレン集合のもとの「青色」相を維持する該発明の1つの実施形態においては、基板40は、50°より小さいヨウ化メチレンとの前進接触角を示す。この条件は表面エネルギーの分散性成分が40dynes/cm超であることを特徴とする基板に対応する。1変形実施形態においては、水との前進接触角が90°未満であるこれらの特性をもつ基板が、青色及び赤色相の混合物を含有する乾燥コーティングを結果としてもたらす。この条件は、分散性表面エネルギー成分が40dynes/cm未満であるものの、少なくとも10dynes/cm超の極性表面エネルギー成分をもつ表面に対応することになる。
【0123】
再び図1を参照すると、粘着剤20はテープ又はラベル10を分析物の直接的検出のための表面に貼り付けることができる。潜在的に不利な効果を最小限におさえるため、ポリジアセチレン集合を含むトランスデューサ30から粘着剤20を隔離する。図1では、粘着剤20は、テープ又はラベル10の中心に位置設定されたトランスデューサ30をとり囲んでいる。代替的実施形態(図示せず)においては、該粘着剤及びトランスデューサは組合わされている。
【0124】
任意には、テープ又はラベル10は、その粘着剤20を含まない面に透明なウインドウを含むことになる。該ウインドウは、分析物を含む表面から該テープ又はラベル10を除去することなくユーザーが色変化を検分することができるようにするため、トランスデューサ30の下側で中心に位置設定されることになる。
【0125】
図2では、テープ又はラベル10は、多数のトランスデューサ112、113、114、115及び116から成るアレイ111として示されている。各々のトランスデューサ112、113、114、115及び116は、各ポリジアセチレン集合が同じ又は異なるレセプタを取込んでいる状態で同じ又は異なるポリジアセチレン集合から形成され得る。トランスデューサ112、113、114、115及び116を変動させることにより、さまざまな濃度レベルで多数の分析物を検出するようにアレイ111を設計することが可能である。代替的には、トランスデューサ112、113、114、115のいずれか1つを、代替的診断試験で置き換えることができる。本発明と共に考慮されるその他の実施形態は、米国特許出願第10/738,573号明細書に提供されている。
【0126】
分析物の試料調製を必要とする応用については、試薬を保管し2次元基板上にコーティングされた比色センサーと接触する前に分析物を混合させるためのバイアルが、キットの中に収納され得る。1つの実施形態では、該キットは、基板上にコーティングされた本発明のトランスデューサを収納するキャップシステムと共に、試薬保管と分析物調製のためのバイアルを含んでいる可能性がある。
【実施例】
【0127】
本発明は、以下で記述されている特定の例に制限されるものとみなされるべきではなく、むしろ、添付のクレーム中で適正に設定されている通り該発明の全ての面を網羅するものとして理解されるべきである。本発明が応用可能であるさまざまな修正、等価のプロセスならびに数多くの構造が、本明細書を再考した時点で本発明が向けられている当業者にとって容易に明らかになるであろう。実施例中の全ての部分、百分率、比率などは、相反する指示のないかぎりモルによるものである。指名供給業者の無い全ての溶媒及び試薬は、アルドリッチ・ケミカル(Aldrich Chemical)、ミルウォーキー、ウィスコンシン州(Milwaukee,WI)から購入されたものである。水は、18.2Mohms/cmの抵抗率でU−V Milli−Q浄水機ミリポア(Millipore)、ベッドフォード、マサチューセッツ州(Bedford,MA)を用いて精製された。
【0128】
デジタルカメラを用いて撮った写真を用いて比色応答(CR)を判定した。各々のポリジアセチレンセンサー試験のためのRGB(赤、緑、青)チャンネル値を得るべくアドビシステムズインコーポレーテッド(Adobe Systems Incorporated)製のソフトウェア(商品名称:アドビ・フォトショップ(ADOBE PHOTOSHOP)バージョン5.0、サンノゼ、カリフォルニア州(San Jose,CA))を用いて写真を走査した。赤及び青色チャンネル値は、等式CR=((PRinitial−PRsample)/PRinitial)により求められ、式中、PRは試料の赤色百分率値であり、PR=Rvalue/(Rvalue+Bvalue)*100により求められ、ここでRvalue及びBvalueはポリジアセチレンセンサーの赤色及び青色チャンネルの値にそれぞれ対応する。
【0129】
【表1】

【0130】
調製実施例1: ジアセチレンリポソーム懸濁液の調製
ジアセチレンHO(O)C(CH22C(O)O(CH24C≡C−C≡C(CH24O(O)C(CH212CH3を米国特許出願第2004/0132217号明細書の実施例6にある通りに調製した。基本的手順には5,7−ドデカジイン−1,12−ジオール(HO(CH24C≡C−C≡C(CH24OH)を塩化ミリストルと反応させるステップ及びその後その生成物を無水コハク酸と反応させて白色固体として、ジアセチレン、HO(O)C(CH22C(O)O(CH24C≡C−C≡C(CH24O(O)C(CH212CH3を生成するステップが関与していた。
【0131】
ジアセチレン化合物の(6:4)の混合物すなわちHO(O)C(CH22C(O)O(CH24C≡C−C≡C(CH24O(O)C(CH212CH3(コハク酸モノ(12−テトラデカノイルオキシ−ドデカ−5,7−ジイニル(diynyl))エステル)及び両性イオンリン脂質1,2−ジメリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DMPC)、式量(F.W.)678(シグマ・アルドリッチ、セントルイス、ミズーリ州より入手可)をガラスバイアル内に秤量し、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)緩衝液(5mM、pH7.2)の中で懸濁させて1mM溶液を生成した。この溶液を次に2分間Misonix XL202プローブ音波処理装置(ミソニックス・インコーポレーテッド(Misonixinc.)ファーミントン、ニューヨーク州(Farmington,NY)から市販されている)を用いてプローブ音波処理し、約20時間4℃の冷蔵庫の中に入れた。このプロセスは、安定したリポソーム懸濁液の形成を結果としてもたらす。
【0132】
調製実施例2: ジアセチレンリポソーム懸濁液の重合
調製実施例1で調製した懸濁液を1.2μm入りシリンジフィルターを通してろ過し、10分間3cmの距離をおいて254nmのUVランプ(VWRサイエンティフィック・プロダクツ(Scientific Products)、ウェストチェスター、ペンシルバニア州(West Chester,PA)より市販)の下で試料を照射することにより重合し、その結果青色が発生するのを観察した。
【0133】
調製実施例3: ジアセチレンリポソーム懸濁液のコーティング済み試料の調製
調製実施例1で調製した懸濁液を直径200(nm)の細孔を伴う直径25(mm)の多孔性ポリカーボナート膜(アヴェスティン、インコーポレーテッド、オタワ、カナダ(Ottawa,Canada))上にコーティングして、比色検出試料を作った。以下の通りの手持ち操作式の押出しプロセスを用いて、膜をコーティングした。コーティングすべきポリカーボナート膜をアヴェスティン、インコーポレーテッド、オタワ、カナダ)から入手可能なLIPOFASTという商品名称の手持ち操作式押出し機システムのステンレス鋼チャンバの中に入れた。膜は、TEFLON(登録商標)ベースの底面Oリングを被覆した。膜の湾曲及び/又はシワを避けるように注意を払った。上面のTEFLON(登録商標)Oリングブロックを、膜の上面のステンレス鋼ハウジング内部に置いた。その後、手でステンレス鋼キャップを締めつけることによりチャンバを密封した。気密性シリンジ(ハミルトン(Hamilton)500マイクロリットル(μl)入り)にジアセチレンリポソームの懸濁液を充填し、ベースに取り付け、第2のシリンジをもう一方のキャップに取りつけた。第1のシリンジのリポソームを、均一な圧力を加えつつチャンバの中にゆっくりと押し込んだ。
【0134】
膜は、表面上のリポソームを捕獲して、第2のシリンジ内にゆっくりと清澄な緩衝液を流入させた。この動作を、1回のコーティングパスとみなした。この例において検出器として使用される膜試料は、2回コーティングパスを用いた。2回目のパスは、第2の0.5ミリリットル(ml)のリポソーム部分をすでにコーティング済みの膜に塗布することによって、第1のパスと同様に塗布された。ろ過済み緩衝液を含有する第2のシリンジを取り出し、中味を廃棄した。ステンレス鋼のエンドキャップをゆるめ、TEFLON(登録商標)Oリングブロックを取り外した。湿った膜を取り出し、ガラススライド上にコーティングされた側を上にして置き、少なくとも3時間、5℃で冷蔵庫の中に入れた。試料を次に30分間CaSO4の入ったデシケータの中で乾燥させ、30〜90秒間254ナノメートル(nm)のUV光に曝露した。
【0135】
PDAをコーティングした基板(25ミリメートル(mm)の円)を4分割した。各々の4分割部分を一回の実験用の試料として使用した。
【0136】
調製実施例4: リン酸緩衝生理食塩水(PBS緩衝溶液)
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液を、10倍PBS液体濃縮物(EMDバイオサイエンシーズ(Biosciences)、サンディエゴ、カリフォルニア州(San Diego,CA)より市販)を10倍希釈することによって調製した。これにより、10mMのリン酸ナトリウム、137mMの塩化ナトリウム、2.7mMの塩化カリウムという塩組成物をもつPBS緩衝溶液が結果として得られる。PBS緩衝溶液は25℃で7.5のpHを有する。
【0137】
調製実施例5: PLURONIC L64を伴うリン酸緩衝生理食塩水(PBSL64緩衝溶液)の調製
調製実施例4で調製した通りのPBS緩衝溶液を取り上げ、PLURONIC L64界面活性剤(BASFコーポレーション、マウントオリーブ、ニュージャージ州から入手可)を0.2%(w/v)添加することにより、PBSL64緩衝溶液を調製した。PBSL64緩衝溶液は25℃で7.5のpHを有している。
【0138】
調製実施例6: 黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌懸濁液の調製
黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌は、「ATCC25923」という商品名称でアメリンカンタイプカルチャーコレクション(ロックビル、メリーランド州(Rockville,MD))から入手した。調製された無菌トリプシン大豆ブロス(ハーディー・ダイアグノステイックス(Hardy Diagnostics)、サンタマリア、カリフォルニア州(Santa Maria,CA))5〜10ミリリットルに細菌を接種することにより調製された一晩(37℃で17〜22時間)のブロス培養の中で、細菌を成長させた。エッペンドルフ型式番号5804Rの遠心分離機(ブリンクマン・インスツルメンツ(Brinkman Instruments)、ウェストベリー、ニューヨーク州(Westbury,NY))内で15分間遠心分離(8,000〜10,000rpm)することにより培養を洗浄し、PBSL64緩衝液中に再懸濁させ、この溶液でさらに3サイクル遠心分離することにより洗浄した。
【0139】
調製実施例7: 表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)の細菌懸濁液の調製
表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)の細菌は、「ATCC12228」という商品名称でアメリンカンタイプカルチャーコレクション(ロックビル、メリーランド州)から入手した。調製された無菌トリプシン大豆ブロス(ハーディー・ダイアグノステイックス、サンタマリア、カリフォルニア州)5〜10ミリリットルに細菌を接種することにより調製された一晩(37℃で17〜22時間)のブロス培養の中で、細菌を成長させた。エッペンドルフ型式番号5804Rの遠心分離機(ブリンクマン・インスツルメンツ、ウェストベリー、ニューヨーク州)内で15分間遠心分離(8,000〜10,000rpm)することにより培養を洗浄し、PBSL緩衝液中に再懸濁させ、この溶液でさらに3サイクル遠心分離することにより洗浄した。
【0140】
調製実施例8: 大腸菌(E.coli)の細菌懸濁液の調製
大腸菌(E.coli)の細菌は、「ATCC25922」という商品名称でアメリンカンタイプカルチャーコレクション(ロックビル、メリーランド州)から入手した。調製された無菌トリプシン大豆ブロス(ハーディー・ダイアグノステイックス、サンタマリア、カリフォルニア州)5〜10ミリリットルに細菌を接種することにより調製された一晩(37℃で17〜22時間)のブロス培養の中で、細菌を成長させた。エッペンドルフ型式番号5804Rの遠心分離機(ブリンクマン・インスツルメンツ、ウェストベリー、ニューヨーク州)内で15分間遠心分離(8,000〜10,000rpm)することにより培養を洗浄し、HEPES緩衝液中に再懸濁させ、この溶液でさらに3サイクル遠心分離することにより洗浄した。
【0141】
実施例1: フィブリノーゲンタンパク質プローブの溶液相検出
0.5%(w/v)の濃度でイミダゾール緩衝液中にヒト血漿由来のフィブリノーゲン(シグマ・アルドリッチ、セントルイス、ミズーリ州、カタログ番号FR4129から入手可能)を溶解させた。イミダゾール緩衝溶液中のフィブリノーゲン(100μl)を調製実施例2で調製した通りの青色ポリジアセチレンリポソーム溶液100μlと混合した。フィブリノーゲンを含まない100μlのイミダゾール緩衝溶液と調製実施例2で調製した通りの青色ポリジアセチレンリポソーム溶液100μlを含有する対照試料も調製した。最初の20分以内で両方の試料共青色から赤色に変化したものの、フィブリノーゲンを含有する懸濁液試料は、凝集し続け、その後合計30分で沈殿した。対照試料の懸濁液は観察時間全体にわたり安定した状態にとどまった。
【0142】
実施例2: ウサギ抗黄色ブドウ球菌IgG抗体タンパク質プローブの溶液相検出
ウサギ抗黄色ブドウ球菌IgG抗体(アキュレート・ケミカル・アンド・サイエンティフィック・コーポレーション(Accurate Chemical and Scientific Corporation)、ウェストベリー、ニューヨーク州から入手、カタログ番号YVS6881)を、100μg/mlの濃度でイミダゾール緩衝溶液中に溶解させた。イミダゾール緩衝溶液中の抗体(100μl)を(調製実施例2で調製した)青色ポリジアセチレンリポソーム溶液100μlと混合した。抗体を含まない100μlのイミダゾール緩衝溶液と(調製実施例2で調製した)青色ポリジアセチレンリポソーム溶液100μlを含有する対照試料も調製した。最初の30分以内で両方の試料共青色から赤色に変化したものの、抗体を含有する懸濁液試料は、凝集し続け、その24時間後に沈殿した。対照試料の懸濁液は観察時間全体にわたり安定した状態にとどまった。
【0143】
調製実施例3: 黄色ブドウ球菌(S.aureus)とPBSL64緩衝溶液の存在下でのフィブリノーゲンタンパク質プローブの溶液相検出
実施例1で調製した通りのイミダゾール緩衝溶液(100μl)中のフィブリノーゲンを(調製実施例2の通りに調製した)青色ポリジアセチレンリポソーム溶液100μl、及び調製実施例6で調製された通りの黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌106cfu/mlを含有する100μlのPBSL64緩衝溶液と混合した。イミダゾール緩衝溶液中のフィブリノーゲン100μl、青色ポリジアセチレンリポソーム溶液100μl、及び黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌無しのPBSL64緩衝液100μlを混合することにより、対照試料も同様に調製した。両方の試料共、30分で青色から赤色まで変化したが、実施例1とは対照的に、懸濁液は24時間の観察期間全体にわたり両方の試料について安定した状態にとどまった。
【0144】
実施例4: 黄色ブドウ球菌(S.aureus)及びPBSL64緩衝溶液の存在下でのウサギ抗黄色ブドウ球菌IgG抗体タンパク質プローブの溶液相検出
調製実施例2で調製した通りの青色ポリジアセチレンリポソーム溶液を、以下の3つの異なる組合せを用いて、実施例2で調製した通りのイミダゾール緩衝溶液及び調製実施例6で調製した通りの黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌を含有するPBS緩衝溶液と混合した。
試料4A: 100μlの青色ポリジアセチレンリポソーム溶液+100μlのイミダゾール緩衝溶液中の抗体+107cfu/mlの黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌を含有する100μlのPBS緩衝溶液。
試料4B: 100μlの青色ポリジアセチレンリポソーム溶液+100μlのイミダゾール緩衝溶液中の抗体+細菌を含まない100μlのPBS緩衝溶液。
試料4C: 100μlの青色ポリジアセチレンリポソーム溶液+抗体を含まない100μlのイミダゾール緩衝溶液+細菌を含まない100μlのPBS緩衝溶液。
【0145】
45分後の試料の色は、下表1に記録されている。
【0146】
【表2】

【0147】
実施例5: ポリジアセチレンのコーティング済み試料を用いたフィブリノーゲンタンパク質プローブの検出
調製実施例3で調製した通りの3つのポリジアセチレンコーティング済み基板を、24ウェルのマイクロタイタープレート(COSTARという商品名称でコーニング・インコーポレーテッド(Corning Incorporated)、コーニング、ニューヨーク州(Corning,NY)から市販されているもの、カタログ番号3524)の中の1つのウェルの底面に置き、以下の溶液を添加した。
試料5A: 実施例1で調製した通りのイミダゾール緩衝溶液中のフィブリノーゲン250μl+PBSL64緩衝溶液250μl
試料5B: イミダゾール緩衝溶液中のフィブリノーゲン250μl+調製実施例6で調製した通りの107cfu/mlの黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌を含有するPBSL64緩衝溶液250μl
試料5C: イミダゾール緩衝溶液中のフィブリノーゲン250μl+調製実施例7で調製した通りの107cfu/mlの表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)を含有するPBSL64緩衝溶液250μl
【0148】
各々の試料が青色から赤色に変化するのに必要とされる時間は下表2に記録されている。
【0149】
【表3】

【0150】
実施例6: イミダゾール緩衝溶液中のフィブリノーゲンタンパク質プローブを用いたさまざまな濃度のPBSL64緩衝溶液中の黄色ブドウ球菌(S.aureus)の検出
調製実施例3で調製した通りの6つのポリジアセチレンコーティングされた基板を、24ウェルのマイクロタイタープレート内の別々のウェルの底面に置いた。実施例1で調製した通りのイミダゾール緩衝溶液中のフィブリノーゲン(250μl)を、調製実施例6で調製した通りの黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌を含有するPBSL64緩衝溶液250μlと混合させて、さまざまな濃度の細菌を含有する一連の試料混合物を生成した。細菌濃度は、下表3に列挙されている。異なる試料混合物をボルテックスし、5分間放置し、次に、ポリジアセチレンでコーティングした基板を収納する別々のウェルに添加した。エバーバック(Eberbach)6000型振とう機(エバーバック・コーポレーション(Eberbach Corp.)、アナーバー、ミシガン州(Ann Arbor,MI))上でマイクロタイタープレートを攪拌させた。デジタルカメラを用いて、6分後に写真を撮影した。この写真を、アドビ・システムズ・インコーポレーテッド製のソフトウェアを用いて走査した。上述の通りに、比色応答(CR)を判定した。下表3中のデータは、細菌濃度の関数としての比色応答を報告している。
【0151】
【表4】

【0152】
実施例7: 抗体−ストレプトアビジン接合タンパク質プローブ及びポリジアセチレンのコーティング済み試料を用いたPBSL64緩衝溶液中の黄色ブドウ球菌(S.aureus)の検出
24ウェルのマイクロタイタープレートの別々のウェルの底面に、調製実施例3中で調製した通りの2つのポリジアセチレンコーティング済み基板を置いた。ストレプトアビジン接合させたウサギ抗黄色ブドウ球菌IgG抗体タンパク質プローブを、以下の要領で調製した。100μg/mlの濃度で、イミダゾール緩衝溶液内に、ストレプトアビジン接合抗体を溶解させた。
【0153】
その後、以下の溶液を調製した。
試料7A: イミダゾール緩衝溶液中のストレプトアビジン接合抗体250μl+調製実施例4で調製した通りのPBS緩衝溶液250μl。
試料7B: イミダゾール緩衝溶液のストレプトアビジン接合抗体250μl+調製実施例6で調製した通りのPBS緩衝溶液の106cfu/mlの黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌を含有するPBS緩衝溶液250μl。
【0154】
溶液をボルテックスし、混合後に5分間放置し、その後、ポリジアセチレンセンサーを収納する別々のウェルに対して添加した。エバーバック6000型振とう機(エバーバック・コーポレーション、アナーバー、ミシガン州)上でマイクロタイタープレートを攪拌した。下表4は、各センサーが青色から赤色に変化するのに必要な時間を記録する。
【0155】
【表5】

【0156】
実施例8: ポリジアセチレンのコーティング済み試料を用いた抗体−ビオチン接合タンパク質プローブを使用するストレプトアビジンの検出
調製実施例3で調製した通りの4つのポリジアセチレンコーティング済み基板を、24ウェルのマイクロタイタープレートの別々のウェルの底面に置いた。(シグマ・アルドリッチ、セントルイス、ミズーリ州から市販されている、カタログ番号13−3150の)ビオチン接合マウス抗プロテインAIgGモノクローナル抗体タンパク質プローブを、100μg/mlの濃度でPBS緩衝溶液中に溶解させた。(ジャクソン・イムノ・リサーチ(Jackson Immuno Research)、ウェストグローブ、ペンシルバニア州(West Grove,PA)から市販されている、カタログ番号016−050−084の)ストレプトアビジンを100μg/mlの濃度でPBS緩衝溶液中に溶解させた。
【0157】
その後、以下の試料溶液を調製した。
試料8A: イミダゾール緩衝溶液300μl。
試料8B: イミダゾール緩衝溶液150μl+PBS緩衝溶液中のストレプトアビジン150μl。
試料8C: イミダゾール緩衝溶液100μl+PBS緩衝溶液中のストレプトアビジン100μl+PBS緩衝溶液中のビオチン接合抗体100μl。
試料8D: イミダゾール緩衝溶液150μl+PBS緩衝溶液中のビオチン接合抗体150μl。
【0158】
溶液をボルテックスし、混合後に5分間放置し、その後、ポリジアセチレンセンサーを収納する別々のウェルに対して添加した。エバーバック6000型振とう機(エバーバック・コーポレーション、アナーバー、ミシガン州)上でマイクロタイタープレートを攪拌した。下表5は、各センサーが青色から赤色に変化するのに必要な時間を記録する。
【0159】
【表6】

【0160】
実施例9: PBSL64緩衝溶液中のフィブリノーゲンタンパク質プローブを用いたさまざまな濃度のPBSL64緩衝溶液中の黄色ブドウ球菌(S.aureus)の検出
調製実施例3で調製した通りの6つのポリジアセチレンコーティング済み基板を24ウェルのマイクロタイタープレート中の別々のウェルの底面に置いた。0.5%(w/v)の濃度でPBSL64緩衝溶液中にフィブリノーゲンを溶解させた。同様にして、0.05%(w/v)の濃度でもPBSL64緩衝溶液中でフィブリノーゲンを溶解させた。
【0161】
以下の試料溶液を調製した。
試料9A: 0.5%の濃度のPBSL64緩衝溶液中のフィブリノーゲン250μl+細菌を含まないPBSL64緩衝溶液250μl。
試料9B: 0.5%の濃度のPBSL64緩衝溶液中のフィブリノーゲン250μl+調製実施例6で調製した通りの103cfu/mlの黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌を含有するPBSL64緩衝溶液250μl。
試料9C: 0.5%の濃度のPBSL64緩衝溶液中のフィブリノーゲン250μl+105cfu/mlの黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌を含有するPBSL64緩衝溶液250μl。
試料9D: 0.05%の濃度のPBSL64緩衝溶液中のフィブリノーゲン250μl+細菌を含まないPBSL64緩衝溶液250μl。
試料9E: 0.05%の濃度のPBSL64緩衝溶液中のフィブリノーゲン250μl+103cfu/mlの黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌を含有するPBSL64緩衝溶液250μl。
試料15F: 0.05%の濃度のPBSL64緩衝溶液中のフィブリノーゲン250μl+105cfu/mlの黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌を含有するPBSL64緩衝溶液250μl。
【0162】
比較を目的として、次のその他の2つの試料も調製した。
試料9G: 0.5%の濃度のPBSL64緩衝溶液中のフィブリノーゲン250μl+調製実施例7で調製した通りの105cfu/mlの表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)の細菌を含有するPBSL64緩衝溶液250μl。
試料9H: 0.05%の濃度のPBSL64緩衝溶液中のフィブリノーゲン250μl+105cfu/mlの表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)の細菌を含有するPBSL64緩衝溶液250μl。
【0163】
異なる試料混合物をボルテックスし、5分間放置し、次に、ポリジアセチレンでコーティングした基板を収納する別々のウェルに添加した。エバーバック6000型振とう機(エバーバック・コーポレーション、アナーバー、ミシガン州)上でマイクロタイタープレートを攪拌させた。デジタルカメラを用いて、30分後に写真を撮影した。この写真を、アドビ・システムズ・インコーポレーテッド製のソフトウェア(商品名称アドビ・フォトショップ、バージョン5.0、サンノゼ、カリフォルニア州)を用いて走査した。下表6中のデータは、これらの試料についての比色応答(CR)を報告している。
【0164】
【表7】

【0165】
実施例10: PBS64緩衝溶液中のフィブリノーゲンタンパク質プローブを用いた臨床試料中の全黄色ブドウ球菌(S.aureus)の検出
6人の患者からの鼻腔用綿棒を収集し、各患者から2本ずつの綿棒、計12の試料を収集した。鼻腔用綿棒の試料は、無菌レーヨン綿棒(「Pure−Wraps」という商品名称でピューリタン、イーストグリンステッド、英国から市販されているもの)を用いて患者の前鼻孔を拭うことによって得た。試料採取は、対象の鼻孔の前先端部の中にレーヨン綿棒を挿入し鼻孔の粘膜面に沿って綿棒を2回全周回転させることで実施した。1mlのPBSL64緩衝溶液を用いて、各綿棒試料を溶出させた。6人の患者各々に由来する1つの試料を、調製実施例3で調製した通りのコーティング済みポリジアセチレンセンサーを用いて分析した。同じ患者からの第2の試料を、1mlのPBSL64緩衝溶液を用いて溶出させ、培養して、下表7に報告されている比較のための細菌計数を得た。「The Staphylococci in Human Disease」、クロスレー(Crossley)、K.B.及びアルチャー(Archer)、G.L.編、Churchill Livingston、ニューヨーク州、1997年、233〜252頁に記述されているこれらの実施例用の培養手順が以下に記されている。ポリジアセチレンセンサーで分析すべき試料を、0.5%(w/v)の濃度のPBSL64緩衝溶液中に溶解したフィブリノーゲン250μlと各々の患者の綿棒から溶出させた溶液250μlを混合することによって調製した。試料溶液をボルテックスし、5分間放置し、その後、24ウェルのマイクロタイタープレート内の別々のウェルの底面にすでに置かれていたポリジアセチレンコーティング済みセンサー全体にわたり置いた。マイクロタイタープレートをエバーバック6000型振とう機(エバーバック・コーポレーション、アナーバー、ミシガン州)上で攪拌した。デジタルカメラを用いて45分後に写真を撮影した。アドビ・システムズ・インコーポレーテッド製のソフトウェア(商品名称アドビ・フォトショップ、バージョン5.0、サンノゼ、カリフォルニア州)を用いて写真を走査した。下表7中のデータは、細菌濃度の関数としての比色応答を報告している。
【0166】
【表8】

【0167】
実施例11: PBS64緩衝溶液中のフィブリノーゲンタンパク質プローブを用いた臨床試料中の溶解した黄色ブドウ球菌(S.aureus)の検出
5人の患者からの鼻腔用綿棒を収集し、各患者から2本ずつの綿棒、計10個の試料を収集した。実施例10の通りに試料を得た。5人の患者各々からの1つの試料を、調製実施例3で調製した通りのコーティング済みポリジアセチレンセンサーを用いて分析した。同じ患者からの第2の試料を、1mlのPBSL64緩衝溶液を用いて溶出させ、培養して、実施例10に記述されている通りに細菌計数を得た。ポリジアセチレンセンサーで分析すべき試料を以下の通りに調製した。まず第1に、1mlの溶出された綿棒試料中に存在する黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌を、3μm/mlの濃度のPBSL64緩衝溶液中のリゾスタフィンから成る同等体積の溶解緩衝溶液(シグマ・アルドリッチ、カタログ番号L−4402)と混合することによって溶解させた。第2に、250μlの溶解済み溶液を、0.5%(w/v)の濃度でPBSL64緩衝溶液中に溶解させたFBG250μlと混合させた。試料溶液をボルテックスし、5分間放置し、その後、24ウェルのマイクロタイタープレート内の別々のウェルの底面にすでに置かれていたポリジアセチレンコーティング済みセンサー全体にわたり置いた。マイクロタイタープレートをエバーバック6000型振とう機(エバーバック・コーポレーション、アナーバー、ミシガン州)上で攪拌した。デジタルカメラを用いて42分後に写真を撮影した。アドビ・システムズ・インコーポレーテッド製のソフトウェア(商品名称アドビ・フォトショップ、バージョン5.0、サンノゼ、カリフォルニア州)を用いて写真を走査した。下表8中のデータは、細菌濃度の関数としての比色応答を報告している。
【0168】
【表9】

【0169】
実施例12: PBS64緩衝溶液中のウサギ抗黄色ブドウ球菌IgG抗体タンパク質プローブを用いた臨床試料中の溶解した黄色ブドウ球菌(S.aureus)の検出
6人の患者からの鼻腔用綿棒を収集し、各患者から2本ずつの綿棒、計12個の試料を収集した。実施例10で記述されている通りに試料採取を行った。6人の患者各々からの1つの試料を、調製実施例3で調製した通りのコーティング済みポリジアセチレンセンサーを用いて分析した。同じ患者からの第2の試料を、1mlのPBSL64緩衝溶液を用いて溶出させ、培養して、下表9に報告されている比較のための細菌計数を得た。培養手順は実施例10で記述されている通りに行われた。ポリジアセチレンセンサーで分析すべき試料を以下の通りに調製した。まず第1に、1mlの溶出された綿棒試料中に存在する黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌を、3μg/mlの濃度のPBSL64緩衝溶液中のリゾスタフィンから成る同等体積の溶解緩衝溶液(シグマ・アルドリッチ、カタログ番号L−4402)と混合することによって溶解させた。第2に、250μlの溶解済み溶液を、100μg/mlの濃度でPBSL64緩衝溶液中に溶解させたウサギ抗黄色ブドウ球菌IgG抗体(アキュレート・ケミカルズ(Accurate Chemicals)から入手)250μlと混合させた。試料溶液をボルテックスし、5分間放置し、その後、24ウェルのマイクロタイタープレート内の別々のウェルの底面にすでに置かれていたポリジアセチレンコーティング済みセンサー全体にわたり置いた。マイクロタイタープレートをエバーバック6000型振とう機(エバーバック・コーポレーション、アナーバー、ミシガン州)上で攪拌した。デジタルカメラを用いて20分後に写真を撮影した。アドビ・システムズ・インコーポレーテッド製のソフトウェア(商品名称アドビ・フォトショップ、バージョン5.0、サンノゼ、カリフォルニア州)を用いて写真を走査した。下表9中のデータは、細菌濃度の関数としての比色応答を報告している。
【0170】
【表10】

【0171】
実施例13: PBSL64緩衝溶液中のウサギ抗黄色ブドウ球菌IgG抗体タンパク質プローブを用いた、溶解済み黄色ブドウ球菌(S.aureus)と全黄色ブドウ球菌(S.aureus)についてのポリジアセチレンコーティング済みセンサーの検出効率の比較
(60/40)のジアセチレンHO(O)C(CH22C(O)O(CH24C≡C−C≡C(CH24O(O)C(CH212CH3と調製実施例1で調製された1,2−ジメリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DMPC)の処方物を、直径200nmの細孔を伴う直径25mmの多孔質ポリカーボナート膜(アヴェスティン、インコーポレーテッド、オタワ、カナダ)上にコーティングして、比色検出器試料を作った。検出器試料は、調製実施例3にある通りに調製した。
【0172】
ポリジアセチレンでコーティングした基板(25ミリメートル(mm)の円)を4分割した。各々の4分割試料を1つの実験用の試料として用いた。基板を、24ウェルのマイクロタイタープレートの別々のウェルの中に置いた。全黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌ATCC25923を含有する250μlのPBSL64緩衝溶液と250μlの抗体溶液を混合することにより、全細菌試料溶液を調製した。抗体溶液は、PBSL64緩衝溶液中100μg/mlの濃度でウサギ抗黄色ブドウ球菌(カタログ番号YVS6881、アキュレート・ケミカル・アンド・サイエンティフィック・コーポレーション)を含有していた。PBSL64緩衝溶液中3マイクログラム/ミリリットルの濃度のリソスタフィン(シグマ・アルドリッチ、カタログ番号L−4402より市販)から成る溶解緩衝液を用いて、PBSL64緩衝溶液中に溶解済み黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌ATCC25923を含有する試料を調製した。溶解済み細菌試料溶液は、上述した通りに調製した250μlの抗体溶液と混合されたPBSL64中の溶解済み黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌(ATCC25923)250μlで構成されていた。テスト試料中で使用された細菌の濃度は、下表10で報告されている通り0〜105cfu/mlの間で変動した。細菌と抗体溶液の混合物を5分間放置し、その後、ポリジアセチレンがコーティングされた基板を収納する24ウェルのプレート上に添加した。対照試料も比較のために調製した。対照試料は、細菌を全く含まず、単に、上述の通りに調製された抗体250μlと混合されたPBS−L64緩衝液250μlで構成されていた。
【0173】
デジタルカメラを用いて5分毎に1枚写真を撮影した。写真はアドビ・システムズ・インコーポレーテッド(サンノゼ、カリフォルニア州)製のソフトウェア、商品名称アドビ・フォトショップ、バージョン5.0を用いて走査した。下表10中のデータは、15分後に測定された、対照試料と試料を含有する細菌(全細菌又は溶解済み細菌のいずれか)の間の化色応答の差を示している。
【0174】
【表11】

【0175】
実施例14: ウサギ抗黄色ブドウ球菌IgG抗体タンパク質プローブ及びコーティング済みポリジアセチレンセンサーを用いた、溶解済み黄色ブドウ球菌(S.aureus)及び全黄色ブドウ球菌(S.aureus)の検出に対する緩衝溶液組成物の効果
調製実施例3にある通りに調製された32のポリジアセチレンでコーティングされた基板を、24ウェルのマイクロタイタープレート内の別々のウェルの底面に置いた。
【0176】
以下の試料溶液を調製した。
試料14A: 実施例11で示された溶解手順によるような、103cfu/mlの全黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌又は103cfu/mlの溶解黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌のいずれかを含有する実施例2で調製した通りのPBSL64緩衝溶液中の抗体500μl。
試料14B: 実施例11で示された溶解手順によるような、103cfu/mlの全黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌又は103cfu/mlの溶解黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌のいずれかを含有する実施例2の中で調製した通りのPBSL64緩衝溶液中の抗体400μl+HEPES緩衝溶液100μl。
試料14C: 実施例11で示された溶解手順によるような、103cfu/mlの全黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌又は103cfu/mlの溶解黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌のいずれかを含有する実施例2の中で調製した通りのPBSL64緩衝溶液中の抗体350μl+HEPES緩衝溶液150μl。
試料14D: 実施例11で示された溶解手順によるような、103cfu/mlの全黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌又は103cfu/mlの溶解黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌のいずれかを含有する実施例2の中で調製した通りのPBSL64緩衝溶液中の抗体300μl+HEPES緩衝溶液200μl。
試料14E: 実施例11で示された溶解手順によるような、103cfu/mlの全黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌又は103cfu/mlの溶解黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌のいずれかを含有する実施例2の中で調製した通りのPBSL64緩衝溶液中の抗体250μl+HEPES緩衝溶液250μl。
試料14F: 実施例11で示された溶解手順によるような、103cfu/mlの全黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌又は103cfu/mlの溶解黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌のいずれかを含有する実施例2の中で調製した通りのPBSL64緩衝溶液中の抗体200μl+HEPES緩衝溶液300μl。
試料14G: 実施例11で示された溶解手順によるような、103cfu/mlの全黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌又は103cfu/mlの溶解黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌のいずれかを含有する実施例2の中で調製した通りのPBSL64緩衝溶液中の抗体150μl+HEPES緩衝溶液350μl。
試料14H: 100μg/mlの濃度のウサギ抗黄色ブドウ球菌(カタログ番号YVS6881、アキュレート・ケミカル・アンド・サイエンティフィック・コーポレーション)を伴い、実施例11で示された溶解手順によるような、103cfu/mlの全黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌又は103cfu/mlの溶解黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌のいずれかを含有する、HEPES溶液500μl。
【0177】
全細菌又は溶解細菌のいずれも全く含有しないという点を除いて試料14A−14Hと組成が同一である一連の対照試料溶液も調製した。
【0178】
異なる試料混合物をボルテックスし、5分間放置し、次に、ポリジアセチレンでコーティングした基板を収納する別々のウェルに添加した。エバーバック6000型振とう機(エバーバック・コーポレーション(Eberbach Corp.)、アナーバー、ミシガン州)上でマイクロタイタープレートを攪拌させた。デジタルカメラを用いて、40分後に写真を撮影した。この写真を、アドビ・システムズ・インコーポレーテッド製のソフトウェア(商品名称アドビ・フォトショップ、バージョン5.0、サンノゼ、カリフォルニア州)を用いて走査した。下表11中のデータは、15分後に測定された、対照試料と試料を含有する細菌(全細菌又は溶解済み細菌のいずれか)の間の化色応答の差を示している。
【0179】
【表12】

【0180】
実施例15: 高濃度のフィブリノーゲンタンパク質プローブ及びコーティング済みポリジアセチレンセンサーを用いた、溶解済み黄色ブドウ球菌(S.aureus)及び全黄色ブドウ球菌(S.aureus)の検出に対する緩衝溶液組成物の効果
調製実施例3で調製した通りの32のポリジアセチレンでコーティングされた基板を、24ウェルのマイクロタイタープレート内の別々のウェルの底面に置いた。
【0181】
以下の試料溶液を調製した。
試料15A: 実施例11で示された溶解手順によるような、103cfu/mlの全黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌又は103cfu/mlの溶解黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌のいずれかを含有するPBSL64緩衝溶液中のフィブリノーゲン500μl。
試料15B: 実施例11で示された溶解手順によるような、103cfu/mlの全黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌又は103cfu/mlの溶解黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌のいずれかを含有するPBSL64緩衝溶液中のフィブリノーゲン400μl+HEPES緩衝溶液100μl。
試料15C: 実施例11で示された溶解手順によるような、103cfu/mlの全黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌又は103cfu/mlの溶解黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌のいずれかを含有するPBSL64緩衝溶液中のフィブリノーゲン350μl+HEPES緩衝溶液150μl。
試料15D: 実施例11で示された溶解手順によるような、103cfu/mlの全黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌又は103cfu/mlの溶解黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌のいずれかを含有するPBSL64緩衝溶液中のフィブリノーゲン300μl+HEPES緩衝溶液200μl。
試料15E: 実施例11で示された溶解手順によるような、103cfu/mlの全黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌又は103cfu/mlの溶解黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌のいずれかを含有するPBSL64緩衝溶液中のフィブリノーゲン250μl+HEPES緩衝溶液250μl。
試料15F: 実施例11で示された溶解手順によるような、103cfu/mlの全黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌又は103cfu/mlの溶解黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌のいずれかを含有するPBSL64緩衝溶液中のフィブリノーゲン200μl+HEPES緩衝溶液300μl。
試料15G: 実施例11で示された溶解手順によるような、103cfu/mlの全黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌又は103cfu/mlの溶解黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌のいずれかを含有するPBSL64緩衝溶液中のフィブリノーゲン150μl+HEPES緩衝溶液350μl。
試料15H: 0.5%(w/v)の濃度のフィブリノーゲン(シグマ社から入手可能、カタログ番号FR4129、ロット番号083K7604)を伴い、実施例11で示された溶解手順によるような、103cfu/mlの全黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌又は103cfu/mlの溶解黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌のいずれかを含有する、HEPES溶液500μl。
【0182】
全ての試料溶液15A−15Hにおいて、フィブリノーゲン0.5%(w/v)の濃度で緩衝溶液中に溶解させた。全細菌又は溶解細菌のいずれも全く含有しないという点を除いて試料15A−15Hと組成が同一である一連の対照試料溶液も調製した。
【0183】
異なる試料混合物をボルテックスし、5分間放置し、次に、ポリジアセチレンでコーティングした基板を収納する別々のウェルに添加した。エバーバック6000型振とう機(エバーバック・コーポレーション、アナーバー、ミシガン州)上でマイクロタイタープレートを攪拌した。デジタルカメラを用いて、40分後に写真を撮影した。この写真を、アドビ・システムズ・インコーポレーテッド製のソフトウェア(商品名称アドビ・フォトショップ、バージョン5.0、サンノゼ、カリフォルニア州)を用いて走査した。比色応答(CR)を判定した。下表12中のデータは、15分後に測定された、対照試料と試料を含有する細菌(全細菌又は溶解済み細菌のいずれか)の間の化色応答の差を示している。
【0184】
【表13】

【0185】
実施例16: 低濃度のフィブリノーゲンタンパク質プローブ及びコーティング済みポリジアセチレンセンサーを用いた、溶解済み黄色ブドウ球菌(S.aureus)及び全黄色ブドウ球菌(S.aureus)の検出に対する緩衝溶液組成物の効果
調製実施例3で調製した通りの32のポリジアセチレンでコーティングされた基板を、24ウェルのマイクロタイタープレート内の別々のウェルの底面に置いた。
【0186】
以下の試料溶液を調製した。
試料16A: 実施例11で示された溶解手順によるような、103cfu/mlの全黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌又は103cfu/mlの溶解黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌のいずれかを含有するPBSL64緩衝溶液中のフィブリノーゲン500μl。
試料16B: 実施例11で示された溶解手順によるような、103cfu/mlの全黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌又は103cfu/mlの溶解黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌のいずれかを含有するPBSL64緩衝溶液中のフィブリノーゲン400μl+HEPES緩衝溶液100μl。
試料16C: 実施例11で示された溶解手順によるような、103cfu/mlの全黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌又は103cfu/mlの溶解黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌のいずれかを含有するPBSL64緩衝溶液中のフィブリノーゲン350μl+HEPES緩衝溶液150μl。
試料16D: 実施例11で示された溶解手順によるような、103cfu/mlの全黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌又は103cfu/mlの溶解黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌のいずれかを含有するPBSL64緩衝溶液中のフィブリノーゲン300μl+HEPES緩衝溶液200μl。
試料16E: 実施例11で示された溶解手順によるような、103cfu/mlの全黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌又は103cfu/mlの溶解黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌のいずれかを含有するPBSL64緩衝溶液中のフィブリノーゲン250μl+HEPES緩衝溶液250μl。
試料16F: 実施例11で示された溶解手順によるような、103cfu/mlの全黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌又は103cfu/mlの溶解黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌のいずれかを含有するPBSL64緩衝溶液中のフィブリノーゲン200μl+HEPES緩衝溶液300μl。
試料16G: 実施例11で示された溶解手順によるような、103cfu/mlの全黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌又は103cfu/mlの溶解黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌のいずれかを含有するPBSL64緩衝溶液中のフィブリノーゲン150μl+HEPES緩衝溶液350μl。
試料16H: 0.05%(W/v)の濃度のフィブリノーゲン(シグマ社から入手可能、カタログ番号FR4129、ロット番号083K7604)を伴い、実施例11で示された溶解手順によるような、103cfu/mlの全黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌又は103cfu/mlの溶解黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌のいずれかを含有する、HEPES溶液500μl。
【0187】
全ての試料溶液16A−16Hにおいて、フィブリノーゲンを0.05%(w/v)の濃度で緩衝溶液中に溶解させた。全細菌又は溶解細菌のいずれも全く含有しないという点を除いて試料16A−16Hと組成が同一である一連の対照試料溶液も調製した。
【0188】
異なる試料混合物をボルテックスし、5分間放置し、次に、ポリジアセチレンでコーティングした基板を収納する別々のウェルに添加した。エバーバック6000型振とう機(エバーバック・コーポレーション、アナーバー、ミシガン州)上でマイクロタイタープレートを攪拌させた。デジタルカメラを用いて、40分後に写真を撮影した。この写真を、アドビ・システムズ・インコーポレーテッド製のソフトウェア(商品名称アドビ・フォトショップ、バージョン5.0、サンノゼ、カリフォルニア州)を用いて走査した。下表13中のデータは、15分後に測定された、対照試料と試料を含有する細菌(全細菌又は溶解済み細菌のいずれか)の間の化色応答の差を示している。
【0189】
【表14】

【0190】
実施例17: プロテインAで予め反応させたモノクローナル抗体及びコーティングされたポリジアセチレンセンサーを用いたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(S.aureus)(MRSA)の検出
MRSA中のPBP2’に対するモノクローナルIgG1κ抗体は、プロテインAと相互作用する。この抗体をプロテインAと予備反応させ、次に溶解されたMRSA(スリーエム・カルチャー・コレクション(3M Culture collection)#360)に曝露した。MRSAの溶解のための手順を、実施例11にある通りに遂行した。溶解されたMRSAを、実施例13の中で記述されている通りにPBSL64中で調製した。溶解されこの実施例中で用いられる細菌の濃度は、105及び103cfu/mlであった。PBSL64中で溶解剤のみを含有し細菌を全く伴わない対照試料を使用した。100μg/mlの濃度でHEPES緩衝液中で、PBP2’に対するモノクローナル抗体を調製した。プロテインA(ザイメッド(Zymed)、サンフランシスコ、カリフォルニア州(SanFransisco,CA)、カタログ番号#10−1006)も、200μg/mlの濃度でHEPES緩衝液中で調製した。以下で記述するように、抗体及びプロテインAを含有するHEPES緩衝液及び細菌溶液の2つの異なる組合せを使用した。
【0191】
試料17A: HEPES緩衝液中のPBP2’に対するモノクローナル抗体の150μl溶液を、HEPES緩衝液中のプロテインA100μlと混合した。バイアルをボルテックスし、5分間放置した。
【0192】
その後、試料17Aを、細菌を全く含まない対照試料又は103又は105cfu/mlのいずれかを含有するPBSL64溶液250μlと混合した。バイアルをボルテックスし、5分間放置した。調製実施例3で記述した通りのポリカーボナート膜上にコーティングされたPDAの3つの試料を、24ウェルのプレートの底面に置いた。変動する細菌レベルを有する溶液を別のウェル内にピペットで取った。青色からの色変化を追跡し、下表14中で報告した。
【0193】
【表15】

【0194】
試料17A: HEPES緩衝液中のPBP2’に対するモノクローナル抗体の150μl溶液を、HEPES緩衝液中のプロテインA50μlと混合した。バイアルをボルテックスし、5分間放置した。
【0195】
その後、試料17Bを、細菌を全く含まない対照試料又は103又は105cfu/mlのいずれかを含有するPBSL64溶液300μlと混合した。バイアルをボルテックスし、5分間放置した。調製実施例3で記述した通りのポリカーボナート膜上にコーティングされたPDAの3つの試料を、24ウェルのプレートの底面に置いた。変動する細菌レベルを有する溶液を別のウェル内にピペットで取った。青色からの色変化を追跡し、下表15中で報告した。
【0196】
【表16】

【0197】
実施例18: タンパク質プローブとしてのモノクローナル抗体及びコーティングされたポリジアセチレンセンサーを用いたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(S.aureus)(MRSA)の検出
MRSAの溶解のための手順を、実施例11にある通りに遂行した。溶解されたMRSAを、実施例13の中で記述されている通りにPBSL64中で調製した。溶解されこの実施例中で用いられる細菌の濃度は、105及び103cfu/mlであった。PBSL64中で溶解剤のみを含有し細菌を全く伴わない対照試料を使用した。100μg/mlの濃度でHEPES緩衝液中で、PBP2’に対するモノクローナルIgG1κ抗体を調製した。
【0198】
その後、以下の試料溶液を調製した。
試料18A: PBSL64緩衝溶液中のPBP2’に対するモノクローナル抗体の250μl溶液を、全く細菌を含有しないPBSL64緩衝溶液250μlと混合した。バイアルをボルテックスし、5分間放置した。
試料18B: PBSL64緩衝溶液中のPBP2’に対するモノクローナル抗体の250μl溶液を、103cfu/mlの溶解したMRSAを含有するPBSL64緩衝溶液250μlと混合した。バイアルをボルテックスし、5分間放置した。
試料18C: PBSL64緩衝溶液中のPBP2’に対するモノクローナル抗体の250μl溶液を、105cfu/mlの溶解したMRSAを含有するPBSL64緩衝溶液250μlと混合した。バイアルをボルテックスし、5分間放置した。
【0199】
調製実施例3中で記述されている通りのポリカーボナート膜上にコーティングされたPDAの3つの試料を24ウェルのプレートの底面に置いた。変動する細菌レベルをもつ溶液を別々のウェル内にピペットで取り、マイクロタイタープレートをエバーバック6000型振とう機(エバーバック・コーポレーション、アナーバー、ミシガン州)上で攪拌した。デジタルカメラを用いて45分後に写真を撮影した。アドビ・システムズ・インコーポレーテッド製のソフトウェア(商品名称アドビ・フォトショップ、バージョン5.0、サンノゼ、カリフォルニア州)を用いて写真を走査した。各試料についての比色応答が下表16で報告されている。
【0200】
【表17】

【0201】
実施例19: HEPES緩衝溶液中のポリミキシンタンパク質プローブを用いたさまざまな濃度のHEPES緩衝溶液中の大腸菌(E.coli)の検出
調製実施例3で調製した通りの5つのポリジアセチレンでコーティングされた基板を24ウェルのマイクロタイタープレート内で別々のウェルの底面に置いた。(アルドリッチから市販されている)硫酸ポリミキシンBを、26ナノモル/mlの濃度でHEPES緩衝溶液中で溶解させた。
【0202】
以下の試料溶液を調製した。
試料19A: 細菌を含まないHEPES緩衝溶液中の硫酸ポリミキシンB500μl。
試料19B: 調製実施例8中で調製した通りの103cfu/mlの大腸菌(E.coli)の細菌を含有するHEPES緩衝溶液中の硫酸ポリミキシンB500μl。
試料19C: 調製実施例8中で調製した通りの105cfu/mlの大腸菌(E.coli)の細菌を含有するHEPES緩衝溶液中の硫酸ポリミキシンB500μl。
試料19D: 調製実施例8中で調製した通りの107cfu/mlの大腸菌(E.coli)の細菌を含有するHEPES緩衝溶液中の硫酸ポリミキシンB500μl。
試料19E: 調製実施例8中で調製した通りの109cfu/mlの大腸菌(E.coli)の細菌を含有するHEPES緩衝溶液中の硫酸ポリミキシンB500μl。
【0203】
異なる試料混合物をボルテックスし、5分間放置し、次に、ポリジアセチレンでコーティングした基板を収納する別々のウェルに添加した。エバーバック6000型振とう機(エバーバック・コーポレーション、アナーバー、ミシガン州)上でマイクロタイタープレートを攪拌した。デジタルカメラを用いて、30分後に写真を撮影した。この写真を、アドビ・システムズ・インコーポレーテッド製のソフトウェア(商品名称アドビ・フォトショップ、バージョン5.0、サンノゼ、カリフォルニア州)を用いて走査した。比色応答(CR)を判定した。下表17中のデータは、細菌濃度の関数としての比色応答を報告している。
【0204】
【表18】

【0205】
実施例20: ジアセチレンとしてのトリコサジイノイン酸を伴うリポソーム
トリコサジイノイン酸を伴うリポソームを、調製実施例1中の手順を用いて作った。音波処理及びリポソーム形成のためジアセチレン中1mMであった10mlの溶液を提供するように、5mmolの7.2pHのHEPES緩衝液中の(60/40)の10、12−トリコサジイノイン酸/1.2−DMPCの試料を調製した。各溶液からの1mlが、乾燥するまで蒸発させられ10ml体積の緩衝液内で再水和された時点で、ジアセチレン中1mMである(60/40)10,12−トリコサジイノイン酸/1,2−DMPC錯体を提供するような形で、ジクロロメタン中で別々に、10,12−トリコサジイノイン酸及び1,2−DMPCの原液を調製した。ジクロロメタン溶液を6ドラム入りバイアルの中に置き、次に有機溶媒を除去するまで25〜30℃の間の温度で減圧下で回転蒸発させた。残渣を、10分間高真空(200mトール)下でさらに乾燥させて、最後の微量の溶媒を除去した。10mlのHEPES緩衝液を用いて試料を再水和した。
【0206】
この溶液を次に、(ミソニックス・インコーポレーテッド,ファーミントン、ニューヨーク州から市販されている)Misonix XL202プローブ超音波処理機を用いてプローブ音波処理した。これら10mlの試料について一連の音波処理パワーレベルを実施した。この範囲にはパワーレベル3、4、5及び6が含まれ、ここでパワーレベル3は10〜20分間実施され、パワーレベル4は2.5〜7.5分間、パワーレベル5は1〜3分間、そしてパワーレベル6は1〜2分間の長さで実施された。溶液を音波処理し、その外観をかすみ度についてマクファーランド濁度基準に比較した。0.5という格付けは、基本的に透き透っており、4.0はかすんでいた。溶液を濁度尺度上で1.0〜2.0の間の格付けまで音波処理した。音波処理の後、全ての試料を室温まで(カバーをかけた状態で)冷却させ、小胞が形成するように、20時間5℃の冷蔵庫中に入れた。
【0207】
20時間後に、一部の試料が、サイズ的に調製実施例1内のリポソームと類似しているように見える受容可能な小胞を形成した。これらの試料を次にさらなる調査のために使用した。
【0208】
灰色のリポソーム相を形成した試料を調製実施例3の場合と同じようにコーティングした。灰色相リポソームを200nmのポリカーボナート膜上にコーティングした。コーティングの厚みは、一回のパスにつき500μlで、膜1枚あたり2回から3及び4回のパスまで変動した。次にこれらを8時間冷蔵庫の中で乾燥させ、その後、一晩デシケータ内に置いた。
【0209】
試料を、目視により調製実施例2で作った試料と類似の青色(約0.630%の青色)に変化するまで254ナノメートル波長のランプの下でUV曝露した。これらのバッチについては、約0.644%という最大の青色%が5〜7秒のUV曝露の後に起こることが発見された。これは、調製実施例2におけるジアセチレン(類似の色には30秒の曝露で到達した)よりもはるかに速いものである。
【0210】
重合した試料を4分割した。試料片を24ウェルのタイタープレート内でウェルの底面に置いた。実施例18中の手順に従って0、1000cfu/ml、100,000cfu/mlの抗体プラス細菌レベルを有する試料溶液20A、20B及び20Cを作り上げた。これらの溶液をデュプリケートで、重合されたPDAコーティング済み試料に曝露した。タイタープレートを振とう機内に置き、振とう速度を60サイクル/分にセットした。
【0211】
試料の色変化を経時的に監視した。いずれの試料も赤色には変化しなかった。それらは全て、一晩の曝露後も青色にとどまった。
【0212】
緩衝液系を調整しリポソーム形成のために2緩衝液系を使用することにより、このPDA系で赤色への色変化を提供するように応答を調整することが可能であると考えられている。現行の系は、調製実施例1のPDAでの検出のために処方されたものである。実施例20のPDAは、小胞の表面特性及びプローブとしてその相互作用に影響を及ぼすのに充分なほど構造が異なっており、比色応答を達成するために異なる緩衝液系を必要とする。
【0213】
本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、本発明に対するさまざまな修正及び改変が、当業者には明白となることだろう。本発明は、本書に記されている例示的実施形態により不当に制限されるように意図されておらず、かかる実施形態は一例として提示されているにすぎず、又、本発明の範囲はクレームによってのみ制限されるように意図されている、ということを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0214】
【図1】本発明の比色センサーの概略図である。
【図2】本発明の比色センサーアレイの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物を検出するための比色系において、
レセプタ、
少なくとも1つのジアセチレン化合物を含む重合組成物、
を含み、前記レセプタが前記重合組成物内に取込まれてトランスデューサを形成している比色センサー、及び
前記分析物と前記トランスデューサの間の相互作用を媒介する緩衝液組成物であって、緩衝液系が2つ以上の異なる緩衝液を含む緩衝液組成物、
を含み、前記トランスデューサが、分析物と接触した時点で色変化を示す比色系。
【請求項2】
前記緩衝液組成物が、HEPES緩衝液、イミダゾール緩衝液、PBS緩衝液及びそれらの組合せから成る群から選択された2つ以上の緩衝液を含む、請求項1に記載の比色系。
【請求項3】
さらにプローブを含む、請求項1に記載の比色系。
【請求項4】
前記プローブが、フィブリノーゲン、ストレプトアビジン、IgG及びそれらの組合せから成る群から選択されている、請求項1に記載の比色系。
【請求項5】
界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の比色系。
【請求項6】
前記トランスデューサがリポソームである、請求項1に記載の比色系。
【請求項7】
前記トランスデューサが、前記緩衝液組成物と接触した時点で色変化を示す、請求項1に記載の比色系。
【請求項8】
前記緩衝液が前記トランスデューサとのイオン相互作用により前記分析物の相互作用を媒介する、請求項1に記載の比色系。
【請求項9】
前記緩衝液組成物が、前記トランスデューサとの疎水性相互作用を増強させることによって前記分析物の前記相互作用を媒介する、請求項1に記載の比色系。
【請求項10】
前記レセプタがリン脂質を含む、請求項1に記載の比色系。
【請求項11】
前記リン脂質が、ホスホコリン、ホスホエタノールアミン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、及びそれらの組合せから成る群から選択されている、請求項10に記載の比色系。
【請求項12】
分析物の検出方法において、
レセプタ、及びジアセチレンを含む重合組成物を含む比色センサーを形成するステップであって、そこでは前記レセプタが前記重合組成物の中に取込まれて、色変化を示す能力をもつトランスデューサを形成する、ステップ、
前記センサーとプローブを接触させるステップ、
2つ以上の異なる緩衝液を含む緩衝液組成物の存在下で標的分析物を含有している疑いのある試料と前記センサーをさらに接触させるステップ、及び
前記分析物が存在する場合に色変化を観察するステップ、
を含む方法。
【請求項13】
分析物の検出方法において、
レセプタ、及びジアセチレンを含む重合組成物を含む比色センサーを形成するステップであって、そこでは前記レセプタが前記重合組成物の中に取込まれて、プローブの存在下で色変化を示す能力をもつトランスデューサを形成する、ステップ、
2つ以上の異なる緩衝液を含有する緩衝液組成物の存在下で、標的分析物を含有する疑いのある試料、及び前記標的分析物と前記レセプタの両方に対する親和性をもつプローブと、前記トランスデューサとを接触させるステップ、及び
前記分析物が存在する場合に基本的にいかなる色変化もないことを観察するステップ、
を含む方法。
【請求項14】
前記分析物が黄色ブドウ球菌(S.aureus)、プロテインA、PBP2’、大腸菌(E.coli)及び緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)から成る群から選択されている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記観察可能な色変化が、分析物を含有している疑いのある試料と前記トランスデューサを接触させた時点から60分以内に発生する、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−524593(P2008−524593A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546936(P2007−546936)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/045607
【国際公開番号】WO2006/073738
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】