説明

ジアルキルカーボネートの製造方法

【課題】主生成物として低級ジアルキルカーボネートと、副生成物としてアルキレングリコールとを、環式アルキレンカーボネート(例えばエチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネート)と低級アルキルアルコールとの触媒の存在下でのエステル交換により製造するための連続法ならびに引き続きのプロセス工程における該ジアルキルカーボネートの精製。
【解決手段】プロセスの経済およびエネルギー効率を最適化するために、さらなる機器が、装置中において液体流の中間加熱に用いられる。例えば、中間過熱器を含む第1エステル交換塔(K1)における反応性精留によるアルキレンカーボネートおよびアルキルアルコールのエステル交換工程および単一蒸留塔(K2)によりエステル交換塔の頂上で得られるジアルキルカーボネートおよびアルキルアルコールを含有する混合物の仕上げを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主生成物として低級ジアルキルカーボネートと、副生成物としてアルキレングリコールとの、環式アルキレンカーボネートと低級アルキルアルコールとの触媒の存在下でのエステル交換による製造ならびに引き続きのプロセス工程における該ジアルキルカーボネートの要求精製のための連続法に関する。プロセスの経済およびエネルギー効率を最適化するために、さらなる機器を、装置中において液体流の中間加熱に用いる。
【背景技術】
【0002】
アルキレングリコールが副生成物として同時に形成される、環式アルキレンカーボネートおよびアルキルアルコールからのジアルキルカーボネートの製造は、既知であり、広く記載されている。US6930195Bでは、触媒によるエステル交換反応は、2段平衡反応として記載されている。第一反応段階では、環式アルキレンカーボネートをアルキルアルコールと反応させて、中間体としてヒドロキシアルキルカーボネートを形成する。次いで、該中間体を、アルキルアルコールにより第2反応段階において次の生成物へ変換する:ジアルキルカーボネートおよびアルキレングリコール。
【0003】
ジアルキルカーボネート製造法の工業的実施のために、とりわけEP530615A、 EP569812AおよびEP1086940Aに記載の反応蒸留塔の使用が特に有利であることが見出された。EP569812Aでは、環式アルキレンカーボネートは、エステル交換塔の上部へ連続的に供給され、ジアルキルカーボネートを含有するアルキルアルコールは、エステル交換塔の中間または下部へ連続的に供給される。さらに、実質的に純粋なアルキルアルコールは、ジアルキルカーボネートを含有するアルキルアルコールの導入点より下へ導入される。本発明によれば、物質は、不純物の含量が2重量%未満、好ましくは1重量%未満の場合に、実質的に純粋であると称される。副生成物として製造されるアルキレングリコールを含む高沸物質混合物は、エステル交換塔の底部で連続的に取り出される。製造されるジアルキルカーボネートを含む低沸物質混合物は、ジアルキルカーボネート/アルキルアルコール混合物としてエステル交換塔の頂上で取り出され、さらなる精製工程に付される。
【0004】
ジアルキルカーボネート/アルキルアルコール混合物を精製するための蒸留塔は、エステル交換塔における圧力より高い圧力で操作されるため、低級ジアルキルカーボネート含量を有するさらなるジアルキルカーボネート/アルキルアルコール混合物を該蒸留塔の頂上で取り出すことができる。ジアルキルカーボネートは、主生成物として、該精製塔の底部で高純度に得られる。
【0005】
多くの要素が、ジアルキルカーボネートを製造するための経済的に魅力のある方法の開発に重要な役割を果たす。ほとんどの参考文献は、変換、選択性または生成物純度等の反応パラメーターに関連する。プロセスのエネルギー効率については、該要素がプロセスの経済的な魅力へ少なからず貢献する場合であっても、ほとんど取り組まれていない(例えばEP569812A、JP2003−104937、WO2007/096340、 WO2007/096343において)。従って、本発明では、プロセスのエネルギー効率を増加させるための方法が提供される。
【0006】
EP569812Aでは、ジアルキルカーボネートの製造において入力されるエネルギーは、プロセスにおいて凝縮されていないがガス状流として運ばれる多くの流れによって低減される。
【0007】
WO2007/096340は、アルキレンカーボネートをアルキレンオキシドから製造し、次いで、該アルキレンカーボネートをアルキルアルコールと反応させてジアルキルカーボネートおよびアルキレングリコールを形成し、ジアルキルカーボネートおよびアルキレングリコールを含有し第2工程で形成された混合物を精製させる方法を記載する。アルキレンカーボネートを形成する反応は発熱を伴い、対応するアルキレンカーボネート生成物流を用いて、精製においてジアルキルカーボネート/アルキレングリコール生成物流を加熱する。
【0008】
WO2007/096343では、アルキレンカーボネートおよびアルキルアルコールからエステル交換塔において形成されたジアルキルカーボネートおよびアルキルアルコールの混合物を、アルキレンカーボネートを抽出剤として働かせながら抽出蒸留により精製する。ジアルキルカーボネートを、蒸留により抽出剤から分離させた後、抽出剤を含有する上記の塔からの熱い底部を用いて、エステル交換塔に供給されたアルキルアルコールを加熱する。
【0009】
JP2003−104937は、エチレンカーボネート/エチレングリコール混合物を処理し、エネルギー消費の観点からジメチルカーボネートの製造方法のための精製エチレンカーボネートを提供するための種々の変法に注目する。
【0010】
しかしながら、上記の文献のいずれにも、アルキレンカーボネートとアルキルアルコールとのエステル交換塔における反応を、主生成物(ジアルキルカーボネート)および副生成物(アルキレングリコール)の品質を維持しながら特にエネルギー効率良く行うことができる方法または手順は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6930195号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第569812号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1086940号明細書
【特許文献4】特許出願第2003−104937号明細書
【特許文献5】国際公開第2007/096340号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2007/096343号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、ジアルキルカーボネートおよびアルキレングリコールの同じ品質を維持しながらエステル交換塔において高いエネルギー効率を有する方法について必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の実施態様は、少なくとも1つのエステル交換塔、および該エステル交換塔において形成されたジアルキルカーボネートを精製するための少なくとも1つの引き続きの蒸留塔において、環式アルキレンカーボネートおよびアルキルアルコールからジアルキルカーボネートを製造するための方法であり、該エステル交換塔は、少なくとも1つの反応帯域、該反応帯域より上に配置された少なくとも1つの濃縮区域を含み、該塔は、該塔の上部に濃縮区域と、該塔の下部に少なくとも1つのストリッピング区域を有し、該方法は、液体流を少なくとも1つのエステル交換塔において加熱する工程、および/または少なくとも1つのエステル交換塔に供給されたジアルキルカーボネートを含有するアルキルアルコール流の1つを、技術的装置で全体または部分的に気化させる工程をさらに含み、該塔における中間液体流を加熱するためのおよび/または導入ジアルキルカーボネート含有アルキルアルコール流を気化させるための媒体の温度Tが、底部蒸発器に用いる媒体の温度TBV未満であり、内部液体流を該塔において加熱するためのおよび/または導入ジアルキルカーボネート含有アルキルアルコール流を他の化学的製造工程において気化させるための媒体のエネルギーを部分的または全体的に回収し、但し、液体流は、エステル交換塔において加熱し、液体流を加熱するための技術的装置を、少なくとも1つのエステル交換塔の底部蒸発器より上に配置する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施態様によるジアルキルカーボネートの製造方法を表す。
【図2】図2は、本発明の他の実施態様によるジアルキルカーボネートの製造方法を表す。
【図3】図3は、本発明の他の実施態様によるジアルキルカーボネートの製造方法を表す。
【図4】図4は、本発明の他の実施態様によるジアルキルカーボネートの製造方法を表す。
【図5】図5は、本発明の他の実施態様によるジアルキルカーボネートの製造方法を表す。
【図6】図6は、本発明の他の実施態様によるジアルキルカーボネートの製造方法を表す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の他の実施態様は、温度水準Tでのエネルギーを、全体的または部分的に、直接または間接的に、凝縮により凝縮の熱として利用可能とする上記の方法である。
【0016】
本発明の他の方法は、少なくとも1つのエステル交換塔が、反応帯域より下に配置されたストリッピング区域を含む上記の方法である。
【0017】
本発明の他の実施態様は、内部液体流を該塔において加熱するための技術的装置が、ストリッピング区域に位置する上記の方法である。
【0018】
本発明の他の実施態様は、内部液体流を該塔において加熱するための技術的装置を、エステル交換塔内またはエステル交換塔外に有する、上記の方法である。
【0019】
本発明の他の態様は、エステル交換を、逆流において、少なくとも1つのエステル交換塔において触媒の存在下で、アルキレンカーボネートを、該塔の上部に導入し、0.2〜30重量%のジアルキルカーボネート含量を有するジアルキルカーボネート含有アルキルアルコールを、少なくとも1つのエステル交換塔の反応帯域の中間または底部に導入するような方法で行う上記の方法である。
【0020】
本発明の他の実施態様は、実質的に純粋なアルキルアルコールを含むさらなる流れを、ジアルキルカーボネート含有アルキルアルコール流の導入点より下に配置された導入点で少なくとも1つのエステル交換塔に供給する上記の方法である。
【0021】
本発明の他の実施態様は、媒体のエネルギーを、温度水準Tで、混合物の凝縮において、ジアルキルカーボネートを精製するための少なくとも1つの蒸留塔の頂上で回収する上記の方法である。
【0022】
エネルギー効率を増加させるために、エステル交換塔の底部蒸発器を操作するのに必要な温度水準TBVでの熱エネルギーの量を、同じ生成物品質を維持しながら、エステル交換塔において中間加熱するためのさらなる技術的装置を用いることにより、上部凝縮器において放出された凝縮の熱またはジアルキルカーボネート精製塔からの底部からの熱を回収し、直接または間接的に、全体または部分的に中間加熱に用いて、特に簡単におよび有利に低減させることができることを発見した。
【0023】
エステル交換塔の内部流の温度は該塔の底部での温度より低いため、温度水準Tでの熱エネルギーを、T<TBVの場合に、中間加熱に用いることができる。この概念は、TBV未満の温度水準で得られる熱エネルギーを、凝縮にまたは他の化学的製造方法に由来することもできる流れの冷却に有用な方法で用いることができ、通常、より費用のかかるTBV以上の温度水準での熱エネルギーの量を低減することができるので、TBV以上の温度水準での熱エネルギーの消費の減少を全体的にもたらす。
【0024】
低級蒸気は、ジアルキルカーボネート精製塔の上部凝縮器で放出された凝縮の熱から得ることができる。該低級蒸気は、例えばジアルキルカーボネート精製塔への供給を予備加熱するために、エステル交換塔へのジアルキルカーボネート含有アルキルアルコール流を気化させるために、またはエステル交換塔において内部液体流を中間加熱するために、または上記の可能性の組み合わせを実現するために適していることが見出された。
【0025】
上部凝縮器でまたはジアルキルカーボネート精製塔からの底部から得られる熱エネルギーまたは化学的製造法により得られる温度水準Tでの熱エネルギーは、中間加熱器に直接または間接的に供給することができる。直接供給の場合には、凝縮または冷却されるべき流れは、エステル交換塔の内部流を、中間加熱器により加熱する。間接供給の場合には、凝縮または冷却すべき流れは、流れを塔において1以上の熱交換媒体の媒介により加熱する。可能な熱交換媒体は、ガス、蒸気または液体であり、好ましくはガス状または液体工業熱交換媒体、例えば水、鉱油をベースとする熱交換媒体または合成熱交換媒体(例えばDiphyl(商標)、Marlotherm(登録商標))である。特に好ましい熱交換媒体は水および蒸気である。
【0026】
さらに、意外にも、エステル交換塔において中間加熱する場合に、中間加熱器を、塔の底部および反応物のための最下の注入口の間に好ましく配置することができることが見出された。このようにして、エステル交換塔からの底部生成物において未反応アルキレンカーボネートの重量割合は、1000ppm、好ましくは500ppm未満に維持し続けることができる。中間加熱器のための低級蒸気は、上述の通り、ジアルキルカーボネート精製塔の上部凝縮器で生成する。
【0027】
中間加熱器は、エステル交換塔に統合するかまたは塔の外側に別個の中間加熱器として配置することができる。内部または外部中間加熱器は、1以上の段階(すなわち、1以上の熱交換器)を有することができる。さらに、中間加熱器は、本発明によれば、種々の可能性のある構築物、例えば内部実施態様の場合には統合加熱マトリックスまたは加熱コイル、および例えば外部実施態様の場合には平板熱交換器またはシェルアンドチューブ熱交換器を有することができる。このような構築物は、当業者に知られている。
【0028】
好ましい内部実施態様では、ジアルキルカーボネートを精製するための蒸留塔の中間加熱器は、好ましくは100〜10000mmの長さを有し、塔の直径に対する中間加熱器の直径の割合は、好ましくは0.1〜1である。さらに、中間加熱器は、1〜5000mの熱交換面積を好ましく有する。
【0029】
ジアルキルカーボネート含有アルキルアルコール流の気化は、1以上の段階で、熱交換器、例えば平板熱交換器またはシェルアンドチューブ熱交換器等を用いて行うことができる。
【0030】
高い生成物品質を維持するのと同時の高い温度水準TBVでの熱エネルギーの消費の低減に起因して、本発明の方法により、顕著な経済的優位性が得られる。
【0031】
本発明により精製されるジアルキルカーボネートは、好ましくは、一般式(I):
【化1】

〔式中、RおよびRはそれぞれ、互いに独立して、直鎖または分枝の、場合により置換されたC〜C34アルキル、好ましくはC〜Cアルキル、より好ましくはC〜Cアルキルである。RおよびRは同一または異なっていてよい。RおよびRは好ましくは同一である〕
で示されるジアルキルカーボネートである。
【0032】
本発明の目的のために、C〜Cアルキルは、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルであり、C〜Cアルキルはそれに加えて、例えば、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、シクロヘキシル、シクロペンチル、n−ヘキシル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピルまたは1−エチル−2−メチルプロピルであり、C〜C34アルキルはそれに加えて、例えば、n−ヘプチルおよびn−オクチル、ピナシル、アダマンチル、異性体メンチル、n−ノニル、n−デシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシルまたはn−オクタデシルである。同じことが、対応するアルキル基、例えばアラルキルまたはアルキルアリール基にも当てはまる。対応するヒドロキシアルキル基またはアラルキル基若しくはアルキルアリール基におけるアルキレン基は、例えば上述のアルキル基に対応するアルキレン基である。
【0033】
上記のリストは、例示であって制限するものではないと理解される。
【0034】
好ましいジアルキルカーボネートは、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ(n−プロピル)カーボネート、ジ(イソプロピル)カーボネート、ジ(n−ブチル)カーボネート、ジ(sec−ブチル)カーボネート、ジ(tert−ブチル)カーボネートおよびジヘキシルカーボネートである。特に好ましいのは、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートである。極めて特に好ましいのは、ジメチルカーボネートである。
【0035】
ジアルキルカーボネートは、好ましくは、式(II):
【化2】

〔式中、RおよびRはそれぞれ、互いに独立して、水素、置換または非置換のC〜Cアルキル、置換または非置換のC〜Cアルケニルまたは置換若しくは非置換のC〜C12アリールであり、RおよびRは2つの3環炭素原子と一緒に5〜8個の原子を有する飽和炭素環式環を形成することができる〕
で示される環式アルキレンカーボネートから製造される。
【0036】
環式アルキレンカーボネートは、以下の式:
−OH
〔式中、Rは、直鎖または分枝のC〜Cアルキルである〕
で示されるアルコールと反応させる。
【0037】
ジアルキルカーボネートを製造するのに用いるエステル交換触媒は、当業者に既知のエステル交換触媒、例えば水素化物、酸化物、水酸化物、アルコキシド、アミドまたはアルカリ金属、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウム等の塩、好ましくはリチウム、ナトリウムおよびカリウムの塩、特に好ましくはナトリウムおよびカリウムの塩である(US3642858 A、US3803201A、EP1082A)。アルコキシドを用いる場合には、これらは、反応させるべき元素アルカリ金属およびアルコールの使用によりインサイチュで形成することもできる。アルカリ金属の塩は、有機酸または無機酸のアルカリ金属の塩、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸、ステアリン酸、カルボン酸(カーボネートまたは炭酸水素塩)のアルカリ金属の塩、塩化水素酸、臭化水素酸またはヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、フッ化水素酸、リン酸、シアン化水素酸、チオシアン酸、ホウ酸、ケイヒ酸、C〜C−スズ酸(stannonic acid)またはアンチモン酸のアルカリ金属の塩であってよい。アルカリ金属の化合物として、好ましくは、酸化物、水酸化物、アルコキシド、酢酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、炭酸塩および炭酸水素塩であり、水酸化物、アルコキシド、酢酸塩、安息香酸塩またはカーボネートを用いることが特に好ましい。このようなアルカリ金属化合物は、反応させるべき反応混合物を基準として、0.001〜2重量%、好ましくは0.003〜1.0重量%、特に好ましくは0.005〜1.0重量%の量で用いられる。
【0038】
適切な場合には、錯化剤物質を上記のアルカリ金属化合物に添加することができる。その例として、ジベンゾ−18−クラウン−6、ポリエチレングリコールまたは二環式窒素含有クリプタンド等を挙げることができる。
【0039】
このような錯化剤は、アルカリ金属化合物を基準として0.1〜200モル%、好ましくは1〜100モル%の量で用いる。
【0040】
ジアルキルカーボネートの製造のためのさらなる適当な触媒は、タリウム(I)およびタリウム(III)化合物、例えば酸化物、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩、臭化物、塩化物、フッ化物、ギ酸塩、硝酸塩、シアン酸塩、ステアリン酸塩、ナフテン酸塩、安息香酸塩、シクロヘキシルホスホン酸塩、ヘキサヒドロ安息香酸塩、シクロペンタジエニルタリウム、タリウムメトキシド、タリウムエトキシド、好ましくは酸化Tl(I)、水酸化Tl(I)、炭酸Tl(I)、酢酸Tl(I)、酢酸Tl(III)、フッ化Tl(I)、ギ酸Tl(I)、硝酸Tl(I)、ナフテン酸Tl(I)およびTl(I)メトキシドである(EP 1083)。タリウム触媒の量は特に重要ではない。これらは一般に、全反応混合物を基準として0.0001〜10重量%、好ましくは0.001〜1重量%である。また、窒素含有塩基を、本発明の製造方法において触媒として使用することもできる(US4062884)。その例として、第2級または第3級のアミン、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、メチルジベンジルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン等を挙げることができる。
【0041】
窒素含有塩基の用いる量は、全反応混合物を基準として0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、特に好ましくは0.1〜1重量%である。ホスフィン、スチビン、アルシンおよび二価の硫黄およびセレニウム化合物ならびにこれらのオニウム塩からなる群からの化合物を触媒として用いることもできる(EP180387、US4734519)。
【0042】
以下の例を挙げることができる:トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、トリフェニルアルシン、トリメチルアルシン、トリブチルアルシン、1,2−ビス(ジフェニルアルシノ)エタン、トリフェニルアンチモニー、ジフェニルスルフィド、ジフェニルジスルフィド、ジフェニルセレニド、ハロゲン(Cl、Br、I)化テトラフェニルホスホニウム、ハロゲン(Cl、Br、I)化テトラフェニルアルソニウム、ハロゲン(Cl、Br)化トリフェニルスルホニウム等。
【0043】
上記の触媒のグループの場合に用いる好ましい量は、全反応混合物を基準として0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の範囲、特に好ましくは0.1〜2重量%の範囲である。
【0044】
さらに、スズ、チタニウム、またはジルコニウムの化合物を触媒として用いることができる(US4661609)。このような系の例は、ブチルスズ酸、スズメトキシド、ジメチルスズ、酸化ジブチルスズ、二ラウリン酸ジブチルスズ、水素化トリブチルスズ、塩化トリブチルスズ、エチルヘキサン酸スズ(II)、ジルコニウムアルコキシド(メチル、エチル、ブチル)、ハロゲン化(F、Cl、Br、I)化ジルコニウム(IV)、硝酸ジルコニウム、アセチルアセトン酸ジルコニウム、チタニウムアルコキシド(メチル、エチル、イソプロピル)、酢酸チタニウム、アセチルアセトン酸チタニウム等である。
【0045】
好ましく用いることができるこれらの触媒の量は、全混合物を基準として0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。
【0046】
本発明の製造方法では、式(III):
[A・[B (III)
で示される二官能性触媒を用いることもできる。これらの二官能性触媒では、角括弧中の2種の成分のモル比は指数mとnとにより表される。これらの指数は互いに独立に0.001〜1、好ましくは0.01〜1、特に好ましくは0.05〜1の、極めて特に好ましくは0.1〜1の値を有することができる。角括弧の中は、いずれの場合にもカチオンおよびアニオンから構成される非電化塩である。指数aおよびbは、互いに独立して1〜5の整数であり、指数cおよびdは、互いに独立に1〜3の整数であり、上記の非電化塩を形成するためのカチオンとアニオンの価数の要求を満たす。さらに、式(III)では、Aは、短周期形態において元素の周期表の第3周期のIIa族、第4周期のIIa、IVa〜VIIIaまたはIbもしくはIIb族、第 5周期のIIa、IVa〜VIIaもしくはIVb族または第6周期のIIa〜VIa族に属する金属のカチオンである。
【0047】
カチオンAのための可能性のある金属は、当業者により、短周期形態の元素の周期表(メンデレエフ)の通常の代表例から取り上げられる。好ましくは、Aは、金属Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cu、Mn、Co、Ni、Fe、Cr、Mo、W、Ti、Zr、Sn、Hf、VおよびTaの一つのカチオン、好ましくは金属Mg、Ca、Zn、Co、Ni、Mn、CuおよびSnの一つのカチオンである。上記の金属の非錯化カチオン以外にも、上記の金属のカチオン性オキソ錯体、例えばチタニルTiO++およびクロミルイオンCrO++も考慮される。
【0048】
カチオンAに関連するアニオンXは、無機酸または有機酸のアニオンである。この種の無機酸または有機酸は、一塩基酸または二塩基酸または三塩基酸であってよい。この種の酸およびそのアニオンは、当業者には公知である。一塩基性の無機酸または有機酸のアニオンの例は以下である:フッ化物、臭化物、塩化物、ヨウ化物、硝酸、1〜18個の炭素原子を有するアルカンカルボン酸および安息香酸のアニオン;二塩基性の無機酸または有機酸のアニオンの例は以下である:硫酸、シュウ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸等;三塩基性の無機または有機のアニオンの例は以下である:リン酸またはクエン酸。式(III)で示される触媒中の好ましいアニオンXは以下である:フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、酪酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸、フタル酸、デカン酸、ステアリン酸、パルミチン酸およびラウリン酸。特に好ましいアニオンXは以下である:塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、デカン酸、硝酸および硫酸。
【0049】
式(III)で示される触媒中のカチオンBとして、アルカリ金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオン、第4級アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、アルソニウムカチオンまたはスチボニウムカチオン、および第3級スルホニウムカチオンからなる群からのカチオンを用いることが可能である。
【0050】
アルカリまたはアルカリ土類金属カチオンとして、以下を挙げることができる:リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムカチオン、好ましくは上記のアルカリ金属カチオン、特に好ましくはナトリウムカチオンおよびカリウムカチオンである。
【0051】
カチオンBとして、式(IV):
【化3】

〔式中、QはN、P、AsまたはSbであり、およびR、R、RおよびRはそれぞれ、互いに独立に、直鎖のもしくは分枝のC〜C18−アルキルまたはC〜C12−アラルキルであり、基R〜Rの一つは、C〜C12であってもよい〕
で示されるカチオンが好ましい。
【0052】
Bは、特に好ましくは、式(V):
【化4】

〔式中、Qは、NまたはP、好ましくはNである〕
で示されるカチオンである。
【0053】
式(IV)または(V)では、基R、R、RおよびRは、それぞれ互いに独立に、直鎖もしくは分枝のC〜C18−アルキルまたはC〜C−アラルキルである基 R16、R17、R18およびR19により、極めて特に好ましく置き換えられ、基R16〜R19の一つはフェニルであってもよい。基R16、R17、R18およびR19はそれぞれ、互いに独立に、C〜C−アルキルまたはベンジルである基R26、R27、R28およびR29により極めて特に好ましく置き換えられ、基R26〜R29の一つはフェニルであってもよい。
【0054】
直鎖または分枝のC〜C18−アルキルは、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、ヘキサデシルまたはオクタデシルである。好ましいアルキルは1〜12個の炭素原子を有し、特に好ましいアルキルは1〜8個の炭素原子を有する。
【0055】
〜C12−アラルキルは、例えばベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、ナフチルメチルまたはナフチルエチルであり、好ましいアラルキルはベンジルまたはフェニルエチル、極めて特に好ましいアラルキルはベンジルである。
【0056】
〜C12−アリールは、例えばフェニル、ナフチルまたはビフェニリル、好ましくはフェニルである。
【0057】
式(III)で示される触媒中のアニオンYは、ハロゲン化物イオン、例えばフッ化物、塩化物、臭化物またはヨウ化物、好ましくは臭化物またはヨウ化物、特に好ましくはヨウ化物であるが、特定の場合にアニオンXが臭化物またはヨウ化物である場合には、Xとして記載の他のアニオンの意味を有することもできる。
【0058】
式(III)で示される二官能性触媒は、全エステル交換混合物を基準として0.005〜5重量%、好ましくは0.01〜3重量%、特に好ましくは0.01〜1重量%の量で使用する。
【0059】
この種の触媒は、均一に溶解させた形態で塔の頂上で導入することができるが、アルキレンカーボネート、アルキレングリコール、アルコールまたはジアルキルカーボネート、すなわち系に固有の溶媒を溶媒として用いる。もちろん、中間トレイ上に、またはパッキング要素の中間に配置した不溶性のエステル交換触媒を使用することも可能である。この場合、(2)による溶解した触媒の導入は省略することができる。適当な不均一触媒は例えば以下のものである:
第3級アミン、第4級アンモニウム基(対イオンとしての例として、水酸化物イオン、塩化物または硫酸水素イオンを挙げることができる)、スルホン酸基またはカルボキシル基(その双方の対イオンとしての例として、水素、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属を挙げることができる)の中から選択される官能基を有するイオン交換樹脂。これらの官能基は直接にまたは不活性鎖によりポリマーへ結合することができる(US4062884、US4691041、JA63/238043、EP 298167)。二酸化ケイ素担体に含浸させたアルカリ金属ケイ酸塩またはアルカリ土類金属ケイ酸塩、およびアンモニウム交換ゼオライトも挙げることができる。
【0060】
本発明の製造方法は、連続的または回分式に行うことができる。連続法が好ましい。
【0061】
本発明による方法では、環式アルキレンカーボネート化合物およびアルキルアルコールは、好ましくは1:0.1〜1:40、特に好ましくは1:1.0〜1:30、極めて特に好ましくは1:2.0〜1:20のモル比で使用される。示されたモル比は、頂上で1以上の凝縮器または存在し得る1以上の底部蒸発器によるエステル交換塔への環式アルキレンカーボネート化合物またはアルキルアルコールの再循環は考慮に入れない。
【0062】
好ましくは、触媒は、環式アルキレンカーボネートを含有する流れと一緒に溶解または懸濁させた状態で、アルコールの導入点よりも上方に配置された導入点によりエステル交換反応塔に導入する。別の方法として、触媒は、例えばアルキルアルコール、アルキレングリコールまたは適当な不活性溶媒中における溶液として別個に導入してもよい。不均一触媒を使用する場合、これらは、上記パッキング要素との混合物中に、パッキング要素の代わりの適当な形態で、または任意の内蔵される塔のトレイ上に床として使用することができる。
【0063】
アルキレンカーボネートおよびアルキルアルコールからジアルキルカーボネートおよびアルキレングリコールへの変換は、エステル交換塔においてほとんど完全に行う。ジアルキルカーボネートの製造方法の好ましい実施態様では、該エステル交換塔の底部で取り出される液体流は、適切な場合には、凝縮後、さらなる反応および/または1以上のさらなる工程において精製することができる。この種のさらなる工程の中の個々の工程またはこの種の全てのさらなる工程は、1以上のさらなる塔において好ましく行うことができる。
【0064】
可能なエステル交換塔、または適切な場合には、第2またはさらなる塔は、当業者に既知である。これらは、例えば蒸留塔または精留塔、好ましくは反応性蒸留塔または反応性精留塔である。
【0065】
本発明の方法に用いる蒸留塔および/または反応塔の適当な塔設計は、塔高さ、塔直径の決定、塔内構造物の選択ならびに供給および取り出し配管の寸法記入を包含し、当業者に既知であり、関連文献に見出し得る(例えばDistillation Design、Henry Z. Kister、Mc Graw Hill;Distillation Operation、Henry Z. Kister、Mc Graw Hill;Perry’s Chemical Engineering Handbook;Perry&Green)。
【0066】
上部凝縮器における凝縮について、種々の実施態様が考えられる。適当な上部凝縮器は、例えばシェルアンドチューブ熱交換器または平板熱交換器である。蒸留塔の塔直径(D1)に対する塔から凝縮器への蒸気線の直径(d1)の比d1/D1は、好ましくは0.2〜1.0、特に好ましくは0.5〜1の範囲である。特に好ましい実施態様では、上部凝縮器は、蒸留塔と上部凝縮器との間で蒸気線を必要としないように蒸留塔に統合することができる。この場合、比d1/D1は1である。上部凝縮器への入り口後の塔断面は、適切な場合には、凝縮の進み具合に適合させることもできる。
【0067】
凝縮器のいくつかの形態の場合には、塔断面が可変であることが有利である。例えば凝縮させる蒸気が底部から上部へ運ばれる場合、蒸気の量は上流に向かって減少する。塔直径が塔の頂上に向かって減少する場合には、蒸気に利用できる塔断面は、上流に向かって減少する蒸気の量に適合させる。本発明では、非凝縮蒸気は、必ずしも頂上で取り出す必要はない。例えば、平板熱交換器またはシェルアンドチューブ熱交換器を頂上から塔へ挿入した場合、非凝縮蒸気は、側部で取り出すこともできる。
【0068】
エステル交換は好ましくは少なくとも1つの濃縮区域を塔の上部において、および少なくとも1つの反応帯域を濃縮区域よりも下に含む。濃縮区域は、独立して、0〜30、好ましくは0.1〜30の理論段を有する。
【0069】
好ましい実施態様では、エステル交換塔は、>0〜20、好ましくは1〜10の理論段を有するストリッピング区域を反応帯域より下に有する。
【0070】
さらに、エステル交換塔は、好ましくは1以上の底部蒸発器を備えることができる。エステル交換塔がストリッピング区域を有する場合には、好ましいのは、ストリッピング区域から流れる液体を完全または部分的に蒸発させるさらなる底部蒸発器を用いることである。完全または部分的に蒸発した液体流は、エステル交換塔へ全部または一部を再循環させる。ストリッピング区域を用いない実施態様の場合には、反応帯域から流れる液体を、適切な場合には、用い得る底部蒸発器において、完全または部分的に蒸発させて、エステル交換塔へ完全または部分的に再循環させる。
【0071】
濃縮区域は、好ましい実施態様では、反応区域および適切な場合には少なくとも1つのストリッピング区域と一緒に適合させることができる。ここでは、反応帯域から上流へ移動するガス状混合物を、濃縮区域の低部区域、または適切な場合には底部濃縮区域へ、アルキレンカーボネートまたはアルキレングリコールを枯渇させながら導入する。
【0072】
反応帯域および任意の存在するストリッピング区域の下において、アルキレングリコール、過剰のまたは未反応アルキレンカーボネート、アルキルアルコール、ジアルキルカーボネート、エステル交換触媒および反応において生成される、または反応物内に既に存在している高沸点化合物を含む混合物が得られる。ストリッピング区域を用いる場合、低沸点化合物(例えばジアルキルカーボネートおよびアルコール)の含有量が減少し、エステル交換触媒の存在下で、いくつかの状況の下で、さらなるジアルキルカーボネートおよびジアリールカーボネートが生成される。この目的に必要とされるエネルギーは、好ましくは、1以上の蒸発器によって供給する。
【0073】
エステル交換塔の全ての区域において、即ち、濃縮区域および任意のストリッピング区域においてならびに反応帯域において、ランダムパッキング要素または規則パッキングを用いることが可能である。用いるべきランダムパッキング要素または規則パッキングは、例えばUllmann’s Encyclopaedie der Technischen Chemie、第4版、第2巻、第528頁以降に記載されているような、蒸留のための従来法によるものである。ランダムパッキング要素の例としては、RaschigまたはPallおよびNovaloxリング、Berl、IntalexまたはTorusサドル、Interpack体であり、規則充填物の例としては、種々の物質、例えばガラス、せっ器、磁器、ステンレス鋼、プラスチック等から作られる、シートメタルおよびメッシュパッキング(例えばBXパッキング、Montz Pak、Mellapak、Melladur、KerapakおよびCYパッキング)である。好ましいのは、大きい表面積を有し、容易に湿潤することができ、および液相の十分な滞留時間を有するランダムパッキング要素および規則パッキングが好ましい。これらは、例えばPallおよびNovolaxリング, Berlサドル、BXパッキング、Montz Pak、Mellpak、Melladur、KerapakおよびCYパッキングである。
【0074】
別法として、塔トレイ、例えばシーブトレイ、バブルキャップトレイ、バルブトレイ、トンネルトレイ等も適している。エステル交換塔の反応帯域において(1または複数の)反応ゾーンにおいて、良好な物質移動での長い滞留時間を有する塔トレイ、例えば高いオーバーフロー堰を有するバブルキャップトレイ、バルブトレイまたはトンネルトレイが特に好ましい。反応帯域における理論段数の数は、好ましくは3〜50、特に好ましくは10〜50、極めて特に好ましくは10〜40である。液体のホールドアップは好ましくは、反応帯域の塔内部の体積の1〜80%、特に好ましくは5〜70%、極めて好ましくは7〜60%である。反応帯域、任意の使用するストリッピング区域、および濃縮区域のより的確な設計は、当業者が行なうことが可能である。
【0075】
反応帯域の温度は、好ましくは20〜200℃、特に好ましくは40〜180℃、極めて特に好ましくは50〜160℃の範囲である。大気圧においてだけでなく高圧または減圧下でも、エステル交換を行うことは有利である。従って、反応帯域の圧力は好ましくは、0.2〜20bar、特に好ましくは0.3〜10bar、極めて特に好ましくは0.4〜5barの範囲である。上記および下記の圧力は、特記のない限り絶対圧力である。
【0076】
本発明のジアルキルカーボネートの製造方法においてエステル交換塔の頂上で取り出されるジアルキルカーボネートおよびアルキルアルコールを含有する蒸気は全部または一部を、好ましくは、エステル交換塔の頂上で凝縮後、ジアルキルカーボネートおよびアルキルアルコールの分離のための少なくとも1つの蒸留塔を含む少なくとも1つのさらなる工程へ通過させる。
【0077】
ジアルキルカーボネートおよびアルキルアルコールの分離は、好ましくは、1以上の蒸留塔においてまたは蒸留および膜分離の組み合わせ(以後、混成法と呼ぶ)により行われる(例えばUS−4162200A、EP581115B1、EP592883B1およびWO2007/096343A1参照)。
【0078】
アルキルアルコールとジアルキルカーボネートが共沸混合物(例えばメタノールおよびジメチルカーボネート)を形成する場合、2段法、例えば2段階圧力法、抽出蒸留、低沸添加溶剤を用いる不均一共沸蒸留、または混成法等を用いることも可能である。2段階圧力法または混成法を特に好ましく用いる。
【0079】
ジアルキルカーボネートとアルキルアルコールの分離は、ジアルキルカーボネートとアルキルアルコールが共沸混合物を形成する場合でさえ単一蒸留塔において極めて特に好ましい。この蒸留塔は、エステル交換塔の圧力より高い圧力で操作される。蒸留塔の操作圧は、1〜50バール、好ましくは2〜20バールの範囲である。実質的に純粋なジアルキルカーボネートは、蒸留塔の底部で取り出され、ジアルキルカーボネートとアルキルアルコールの混合物は頂上で取り出される。該混合物の全部または一部をエステル交換塔へ供給する。ジアルキルカーボネートの製造方法を、芳香族ヒドロキシル化合物による前記ジアルキルカーボネートのエステル交換により形成されるジアリールカーボネートの製造方法と併用する場合には、蒸留塔の頂上で取り出されるジアルキルカーボネートおよびアルキルアルコールの混合物の一部を、アルキルアルコールおよびジアルキルカーボネートのための適切な仕上げ工程を、ジアリールカーボネートを製造するための工程段階において通過させることができる。
【0080】
ジアルキルカーボネートおよびアルキルアルコールが共沸混合物を形成する場合の特に好ましい実施態様では、この仕上げ工程は、2段階圧力法である。このような方法は、原則として当業者に既知である(例えばUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第7巻、2007年、第6.4章および第6.5章;Chemie Ingenieur Technik、第67巻、第11/95号を参照)。
【0081】
アルキルアルコールとジアルキルカーボネートが共沸混合物を形成する場合、ジアルキルカーボネートとアルキルアルコールの分離のための処理工程における第1蒸留塔からの蒸留物は、好ましくは実質的に共沸混合物組成物を有する。この場合、2段階圧力法において、第1蒸留塔の操作圧力より低い操作圧力で作動する少なくとも1つのさらなる分離蒸留塔に供給することが好ましい。異なった操作圧力により、共沸混合物の位置は、アルキルアルコールのより低い割合にシフトする。この第2蒸留塔またはさらなる蒸留塔から得られる底部生成物は、単離した底部生成物の全重量を基準として90〜100wt%の純度を有するアルキルアルコールであり、得られた蒸留物は、実質的に共沸の混合物である。より低い操作圧力で作動する、第2蒸留塔またはさらなる蒸留塔は、極めて特に好ましい態様において、好ましくは第1蒸留塔の上部凝縮器からの凝縮の熱を用いて操作さえる。
【0082】
2段階圧力法では、2成分混合物の共沸組成物の圧力依存性を利用する。アルキルアルコールとジアルキルカーボネート(例えばメタノールとジメチルカーボネート)との混合物の場合には、共沸組成物は、圧力を増加させながらより高いアルキルアルコール含量にシフトする。これら2つの成分をこの塔(ジアルキルカーボネート塔)に供給する場合、アルキルアルコール含量が、塔の操作圧力に対応する共沸組成物よりも少ないので、実質的に共沸組成物を有する混合物が蒸留物として得られ、実質的に純粋なジアルキルカーボネートが底部生成物として得られる。このようにして得られる共沸混合物は更なる蒸留塔(アルキルアルコール塔)に供給される。これは、ジアルキルカーボネート塔より低い操作圧力として作動する。結果として、共沸混合物の位置は、より低いアルキルアルコール含量にシフトする。このことにより、ジアルキルカーボネート塔において得られる共沸混合物を、実質的に共沸組成物を有する蒸留物と実質的に純粋なアルキルアルコールとに分離することが可能となる。アルキルアルコール塔からの蒸留物を、ジアルキルカーボネート塔に、適切な地点に戻す。
【0083】
アルキルアルコール塔の操作圧力は、好ましくは、ジアルキルカーボネート塔からの廃熱を用いて操作し得るように選択する。操作圧力は、0.1〜1bar、好ましくは0.3〜1barの範囲である。ジアルキルカーボネート塔の操作圧力は1〜50bar、好ましくは2〜20barの範囲である。
【0084】
2段階圧力法によるジアルキルカーボネートとアルキルアルコールのための例示的な反応流れ図を、図1に示す。
【0085】
アルキルアルコールとジアルキルカーボネートの共沸混合物の分離のためのさらなる好ましい方法は、混成法である。混成法では、2成分混合物の分離を、蒸留と膜プロセスを組み合わせることによって行う。成分を、それらの極性特性およびそれらの異なった分子量のため、膜により少なくとも部分的に互いに分離し得るという事実を利用する。アルキルアルコールとジアルキルカーボネートの混合物(例えばメタノールとジメチルカーボネート)の場合において、適当な膜を使用すると、パーベーパレーションまたは蒸気透過によって、アルキルアルコールに富む混合物が透過物として得られ、アルキルアルコールが枯渇した混合物が残余物として得られる。アルキルアルコール含量が塔(ジアルキルカーボネート塔)の操作圧力に対して対応する共沸混合物組成より低いこれら2成分の混合物をこの塔に供給する場合、供給物と比較してアルキルアルコール含有量の著しく増加した混合物が蒸留物として得られ、実質的に純粋なジアルキルカーボネートが底部生成物として得られる。
【0086】
蒸留および蒸気透過から成る混成法の場合において、蒸留物を塔から蒸気の状態で取り出す。このようにして得られるガス状混合物を、適切な場合には過熱後に、蒸気透過に供給する。これは、実質的に塔の操作圧力を残余物側に設定し、低い圧力を透過物側に設定するように操作する。塔の操作圧力は、1〜50bar、好ましくは1〜20、より好ましくは2〜10barの範囲である。透過物側の圧力は0.05〜2barの範囲である。これにより、透過側において、アルキルアルコール含量が、フラクションの総重量を基準として少なくとも70wt%、好ましくは少なくとも90wt%のアルキルアルコール含量を通スルアルキルアルコールに富む画分が得られる。残余物は、塔の留出物と比較して減少したアルキルアルコール含量を有し、適切な場合には凝縮し、蒸留塔に戻して供給する。
【0087】
蒸留およびパーベーパレーションで構成される混成法の場合において、蒸留物は、塔から液体の状態で取り出す。そのようにして得られる混合物は、適切な場合には過熱後に、パーベーパレーションに供給する。これは、塔における操作圧力と等しい操作圧力または高い操作圧力を残余物側に設定し、より低い圧力を透過物側に設定するように操作する。塔の操作圧力は1〜50bar、好ましくは1〜20bar、より好ましくは2〜10barの範囲である。透過物側における圧力は、0.05〜2barである。これにより、透過物側において、画分の全重量を基準として少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも90重量%のアルキルアルコール含量を有するアルキルアルコールに富むガス状フラクションが得られる。液体残余物は、塔からの蒸留物よりも低いアルキルアルコール含量を有し、蒸留塔にフィードバックする。透過物の蒸発は熱を必要とし、熱は、パーベーパレーションへの供給流において十分な程度存在しないことがある。従って、パーベーパレーションにより膜分離は、場合によりさらなる熱交換器で加熱し、前記熱交換器は統合され、または適切な場合には、直列に接続する複数のパーベーパレーション工程の間に設置される。
【0088】
混成法の場合、ジアルキルカーボネートおよびアルキルアルコールの分離は、特に好ましくは、蒸留と蒸気透過の組み合わせにより行う。
【0089】
アルキルアルコールとジアルキルカーボネートとの分離に必要とされる熱は、100℃〜300℃、好ましくは100〜230℃、特に好ましくは120〜200℃の範囲の温度で供給する。
【0090】
ジアルキルカーボネートを精製するための蒸留塔は、好ましくは、アルキルアルコールを濃縮するための5〜40段の理論段数を有する濃縮区域、およびジアルキルカーボネートを濃縮するための5〜40段の理論段数を好ましく有する回収部を有する。
【0091】
ジアルキルカーボネートの製造方法は、好ましくは連続的に行う。
【0092】
上記の全ての参照は、全ての有用な目的のために、その全体における参照により組み込む。
【0093】
本発明を具体化するある特定の構造を示し、記載するが、 根底にある本発明の概念の精神および範囲から逸脱することなく、種々の変形および部分の再配置がなされること、および本発明において示され、記載された特定の形態に限定されないことは当業者に明らかであろう。
【0094】
図において、記号/数字は、以下の意味を有する:
【0095】
K1 エステル交換塔
K2 ジアルキルカーボネートおよびアルキルアルコールを含有する混合物の分離のための第1蒸留塔
K3 ジアルキルカーボネートおよびアルキルアルコールを含む混合物の分離のための第2蒸留塔
1 アルキレンカーボネートおよび/または必要に応じて触媒を含有する供給流
2 実質的に純粋なアルキルアルコールを含有する供給流
3 アルキルアルコールおよびジアルキルカーボネートを含有する供給流
4 アルキレングリコールを含有する流れ
5 精製ジアルキルカーボネートを含有する流れ
6 ジアルキルカーボネートおよびアルキルアルコールを含有する流れ
7 実質的に純粋なアルキルアルコールを含有する流れ
8 抽出剤を含有する流れ(好ましくはアルキレンカーボネート)
9 抽出剤を含有する流れ(好ましくはアルキレンカーボネート)
10 抽出剤を含有する流れ(好ましくはアルキレンカーボネート)
i ジアルキルカーボネートを精製するための蒸留塔への供給物を予備過熱するための、該蒸留塔の頂上で放出される凝縮物の熱を予備過熱に用いる、熱交換器
ii ジアルキルカーボネートを精製するための蒸留塔への供給物を予備過熱するための、熱を実質的に純粋なジアルキルカーボネートを含有する底部から取り出す、熱交換器
a 中間加熱器
【0096】
図1は、概して、第1エステル交換塔(K1)における反応性精留によるアルキレンカーボネートおよびアルキルアルコールのエステル交換工程、およびエステル交換塔における第1蒸留塔(K2)および中間加熱器を有する第2蒸留塔(K3)における2段階圧力蒸留によりエステル交換塔の頂上で得られるジアルキルカーボネートおよびアルキルアルコールを含有する混合物の仕上げを記載する。
【0097】
図2は、概して、中間過熱器を含む第1エステル交換塔(K1)における反応性精留によるアルキレンカーボネートおよびアルキルアルコールのエステル交換工程および単一蒸留塔(K2)によりエステル交換塔の頂上で得られるジアルキルカーボネートおよびアルキルアルコールを含有する混合物の仕上げを記載する。
【0098】
図3は、図2に類似するが、底部による蒸留塔(K2)への供給の予備過熱を行わない。
【0099】
図4は、概して、中間過熱器(a)を含む第1エステル交換塔(K1)における反応性精留によるアルキレンカーボネートおよびアルキルアルコールのエステル交換工程、および単一蒸留塔(K2)および第2蒸留塔(K3)において抽出蒸留によりエステル交換塔の頂上で得られるジアルキルカーボネートおよびアルキルアルコールを含有する混合物の仕上げを記載し、アルキレンカーボネートを抽出剤として好ましく用いる。
【0100】
図5は、通常、中間過熱器(a)を含む第1エステル交換塔(K1)における反応性精留によるアルキレンカーボネートおよびアルキルアルコールのためのエステル交換工程、およびエステル交換塔の頂上で、蒸留塔(K2)における蒸留および蒸気透過により得られるジアルキルカーボネートおよびアルキルアルコールを含有する混合物の仕上げを記載する。
【0101】
図6は、通常、中間過熱器(a)を含む第1エステル交換塔(K1)における反応性精留によるアルキレンカーボネートおよびアルキルアルコールのためのエステル交換工程、およびエステル交換塔の頂上で、蒸留塔(K2)における蒸留およびパーベーパレーションにより得られるジアルキルカーボネートおよびアルキルアルコールを含有する混合物の仕上げを記載する。
【実施例】
【0102】
本発明の方法のための操作の好ましい態様を、実施例を用いて詳細に示す。実施例1は、エステル交換塔のための操作の好ましい態様を示す。この実施例は、本発明を決して制限するものではないと理解される。
【0103】
中間加熱のための技術的装置の設置により、上記の中間加熱器を有さない操作の、または中間加熱器のあまり好ましくない配置の場合の他の方法と比べた本発明の優位性、すなわち、高い生成物品質を維持しながらの新しい加熱蒸気の消費の低減を、比較例に示す。
【0104】
実施例1(本発明による)
この実施例は、図2の参照数値を用いる。9段の理論段を有する濃縮区域、25段の反応トレイ(ホールドアップ/トレイ:0.6m3)および4段の理論段を有するストリッピング区域を有する反応帯域を含む反応性蒸留塔を、400ミリバール(絶対)の塔の頂上での圧力および0.66の還流比で操作する。
【0105】
9000kg/時間のエチレンカーボネート、および175kg/時間の33.3重量%のKOHおよび66.7重量%のエチレングリコールの混合物(流れ1)を、第1反応トレイの直上の上部塔へ連続的に供給する。第8反応トレイおよび第9反応トレイの間で、21371kg/時間の83.7重量%のメタノールおよび16.3重量%のジメチルカーボネートのガス状混合物(流れ3)を供給投入する。さらに7123kg/時間の、99.5重量%のメタノール、0.41重量%のエチレングリコールおよび672ppmのジメチルカーボネートのガス状混合物(流れ2)を、反応帯域の下端で供給投入する。
【0106】
部分凝縮器は、蒸気流を、塔(K1)の頂上において40℃で凝縮する。6kg/時間のガス状蒸留物ならびにジメチルカーボネート精製塔を通過させる30644kg/時間の59重量%のメタノールおよび41重量%のジメチルカーボネートの組成物を有する液体蒸留物を得る。
【0107】
2000kWの加熱力および加熱媒体としての1.5バールの圧力水準での蒸気により操作される中間加熱のための装置(熱交換器)は、エステル交換塔(K1)の底部蒸留器の直上のストリッピング区域に設置する。
【0108】
これにより、エチレングリコール、とりわけ、477ppmのエチレンカーボネートを主に含む7019kg/時間の液体底部生成物(流れ4)が得られる。底部蒸発器は、102℃で3バールの圧力水準での加熱蒸気により操作する。
【0109】
引き続きのジアルキルカーボネート精製塔(K2)は、28段の理論段を有する濃縮区域および11段の理論段を有するストリッピング区域を含み、塔の頂上で10バール(絶対)の圧力および1.0の還流比で操作する。エステル交換塔からの30644kg/時間の蒸留物は、59重量%のメタノールおよび41重量%のジメチルカーボネートを含有し、第27番目と第28段目の理論分離段の間で塔のより低い領域へ連続的に供給する。
【0110】
部分凝縮器は、蒸気流を、塔(K2)の頂上において137℃で凝縮する。これにより、21kg/時間のガス状蒸留物および21378kg/時間の84重量%のメタノールおよび16重量%のジメチルカーボネートの組成物を有する液体蒸留物(流れ3)が得られる。ここで、1.5バールの圧力水準での蒸気の生成に利用することができる10000kWの加熱力を取り出す。
【0111】
これにより、9245kg/時間の99.5重量%のジメチルカーボネートおよび0.5重量%のメタノールを有する液体底部生成物(流れ5)が得られる。底部蒸発器は、183℃で16バールの圧力水準での加熱蒸気を用いて操作し、10396kWの加熱力を有する。ジアルキルカーボネート精製塔の頂上で得られた蒸気の一部は、とりわけ、該塔への供給の予備加熱のためにおよびエステル交換塔(K1)への供給流(3)の蒸発のために用いることができる。2000kWの蒸気エネルギーを、エステル交換塔の中間加熱器に用いる。
【0112】
エステル交換塔の中間加熱器における、ジアルキルカーボネート精製塔の頂上で回収された2000kWの凝縮のエネルギーの使用の結果、3バールの圧力水準での加熱蒸気として供給される939kWの加熱力だけが、エステル交換塔において底部蒸発器を操作するために必要とされる。
【0113】
実施例2(比較)
本発明により実施例1に記載の同一の反応性蒸留塔(K1)および同一のジアルキルカーボネート精製塔(K2)を用いる。該エステル交換塔(K1)を、塔の頂上で400ミリバール(絶対)の圧力および0.66の還流比で操作した。
【0114】
9000kg/時間のエチレンカーボネートおよび175kg/時間の33.3重量%のKOHおよび66.7重量%のエチレングリコールの混合物を、第1反応トレイの直上の上部塔領域へ連続的に供給する。第8反応トレイおよび第9反応トレイの間で、21371kg/時間の83.7重量%のメタノールおよび16.3重量%のジメチルカーボネートのガス状混合物を供給投入する。さらに7123kg/時間の、99.5重量%のメタノール、0.41重量%のエチレングリコールおよび672ppmのジメチルカーボネートのガス状混合物を、反応帯域の下端で供給投入する。供給投入した全メタノールとエチレンカーボネートの割合は、実施例1と同じにする。
【0115】
部分凝縮器は、蒸気流を、塔の頂上において40℃で凝縮する。6kg/時間のガス状蒸留物、ならびにさらなる精製工程を通過させる、59重量%のメタノールおよび41重量%のジメチルカーボネートの組成物を有する30644kg/時間の液体蒸留物を得る。
【0116】
中間加熱器(a)は作動させない。
【0117】
次いで、これにより、エチレングリコール、とりわけ、468ppmのエチレンカーボネートを主に含む、エステル交換塔(K1)からの7019kg/時間の液体底部生成物(流れ4)が得られる。エステル交換塔の底部蒸発器は、102℃で3バールの圧力水準での加熱蒸気により操作され、その場合、2939kWの加熱力、従って本発明による実施例より2000kW高い加熱力を必要とする。
【0118】
実施例3(比較)
本発明により実施例1に記載の同一の反応性蒸留塔(K1)および同一のジアルキルカーボネート精製塔(K2)を用いる。該エステル交換塔(K1)を、塔の頂上で400ミリバール(絶対)の圧力および0.66の還流比で操作した。
【0119】
9000kg/時間のエチレンカーボネートおよび175kg/時間の、33.3重量%のKOHおよび66.7重量%のエチレングリコールの混合物を、第1反応トレイの直上の上部塔領域へ連続的に供給する。第8反応トレイおよび第9反応トレイの間で、21371kg/時間の83.7重量%のメタノールおよび16.3重量%のジメチルカーボネートのガス状混合物を供給投入する。さらに7123kg/時間の、99.5重量%のメタノール、0.41重量%のエチレングリコールおよび672ppmのジメチルカーボネートのガス状混合物を、反応帯域の下端で供給投入する。
【0120】
部分凝縮器は、蒸気流を、塔の頂上において40℃で凝縮する。6kg/時間のガス状蒸留物、ならびにさらなる精製工程を通過させる、59重量%のメタノールおよび41重量%のジメチルカーボネートの30644kg/時間の組成物を有する液体蒸留物を得る。
【0121】
2000kWの加熱力を有し、加熱媒体としての1.5バールの圧力水準での蒸気により操作される中間加熱のための装置を、塔の第20番目の反応トレイに設置する。
【0122】
次いで、これにより、エチレングリコール、とりわけ、1%のエチレンカーボネートを主に含む7019kg/時間の液体底部生成物が得られる。底部蒸発器は、102℃で3バールの圧力水準での加熱蒸気により操作され、939kWの加熱力を必要とする。エステル交換塔における中間加熱の位置におけるシフトは、エステル交換塔(K1)からの液体底部生成物(流れ4)におけるエチレンカーボネートの含量の顕著な増加をもたらす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのエステル交換塔、および該エステル交換塔において形成されたジアルキルカーボネートを精製するための少なくとも1つの引き続きの蒸留塔において、環式アルキレンカーボネートおよびアルキルアルコールからジアルキルカーボネートを製造するための方法であって、該エステル交換塔は、少なくとも1つの反応帯域、および該反応帯域より上に配置された少なくとも1つの濃縮区域を含み、該塔は、該塔の上部に少なくとも1つの濃縮区域と、該塔の下部に少なくとも1つのストリップ区域とを有し、
液体流を前記少なくとも1つのエステル交換塔において加熱し、および/または技術的装置を有する前記少なくとも1つのエステル交換塔へ供給されたジアルキルカーボネート含有アルキルアルコール流を全体または部分的に気化させ、
ここで、内部液体流を該塔において加熱するためのおよび/または導入ジアルキルカーボネート含有アルキルアルコール流を気化させるための媒体の温度Tが、底部蒸発器に用いる媒体の温度TBV未満である工程、
内部液体流を該塔において加熱するためのおよび/または導入ジアルキルカーボネート含有アルキルアルコール流を他の化学的製造工程において気化させるための媒体のエネルギーを、部分的または全体的に回収する工程
を含み、但し、液体流はエステル交換塔において加熱し、液体流を加熱するための前記技術的装置を、少なくとも1つのエステル交換塔の底部蒸発器より上に配置する、前記方法。
【請求項2】
温度水準Tでのエネルギーは、凝縮により凝縮の熱として、全体または部分的に、直接または間接的に利用可能となる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つのエステル交換塔は、反応帯域より下に配置されたストリッピング区域を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つのエステル交換塔は、反応帯域より下に配置されたストリッピング区域を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
内部液体流を塔において加熱するための技術的装置を、ストリッピング区域に配置する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
内部液体流を塔において加熱するための技術的装置は、エステル交換塔内に位置する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
内部液体流を塔において加熱するための技術的装置は、エステル交換塔外に位置する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
エステル交換を、逆流において、少なくとも1つのエステル交換塔において触媒の存在下で、アルキレンカーボネートを該塔の上部に導入し、0.2〜30重量%のジアルキルカーボネート含量を有するジアルキルカーボネート含有アルキルアルコールを、前記少なくとも1つのエステル交換塔の反応帯域の中間または底部へ導入するような方法で行う、請求項1に記載のジアルキルカーボネートの製造方法。
【請求項9】
実質的に純粋なアルキルアルコールを含むさらなる流れを、少なくとも1つのエステル交換塔へ、ジアルキルカーボネート含有アルキルアルコール流の導入点より下に配置された導入点で供給する、請求項8に記載方法。
【請求項10】
媒体のエネルギーを、温度水準Tで、混合物の凝縮においてジアルキルカーボネートを精製するための少なくとも1つの蒸留塔の頂上で回収する、請求項9に記載の方法である。
【請求項11】
エステル交換を、逆流において、少なくとも1つのエステル交換塔において触媒の存在下で、アルキレンカーボネートを該塔の上部に導入し、0.2〜30重量%のジアルキルカーボネート含量を有するジアルキルカーボネート含有アルキルアルコールを、前記少なくとも1つのエステル交換塔の反応帯域の中間または底部へ導入するような方法で行う、請求項5に記載のジアルキルカーボネートの製造方法。
【請求項12】
エステル交換を、逆流において、少なくとも1つのエステル交換塔において触媒の存在下で、アルキレンカーボネートを該塔の上部に導入し、0.2〜30重量%のジアルキルカーボネート含量を有するジアルキルカーボネート含有アルキルアルコールを、前記少なくとも1つのエステル交換塔の反応帯域の中間または底部へ導入するような方法で行う、請求項6に記載のジアルキルカーボネートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−157361(P2011−157361A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−20449(P2011−20449)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】