説明

ジアルキルカーボネートの連続的製法

【課題】既知の方法と比べて、ジアルキルカーボネートのより低い含有量が、精製されたジアルキルカーボネート中で得られる精製法を提供すること。
【解決手段】精製されたジアルキルカーボネート中の副生成物、特にアルコキシアルコールおよび脂肪族カーボネートエーテルの含有量を、ジアルキルカーボネート精製塔において、物質の平均滞留時間の範囲の適当な選択により減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、環式アルキレンカーボネート(例えばエチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネート)のアルキルアルコールを用いた触媒エステル交換によるジアルキルカーボネートの製造における、ジアルキルカーボネート/アルキルアルコール混合物を精製するための連続法に関する。ジアルキルカーボネートの生成物品質における向上について、ジアルキルカーボネート精製塔の操作パラメーターの選択は、アルコキシアルコールおよび脂肪族カーボネートエーテルのような望ましくない副生成物の形成を減少させるために重要である。
【背景技術】
【0002】
アルコキシアルコールは、アルキレンオキシドとアルキルアルコールとの反応から生じる。
【0003】
脂肪族カーボネートエーテルは、アルコキシアルコールとジアルキルカーボネートとの反応から生じる。
【0004】
上記カーボネートエーテルは、通常、アルキルアルコールより高い沸点を有し、ジアルキルカーボネート中に残存する。ジアルキルカーボネートを、更なる工程段階において芳香族モノヒドロキシル化合物と反応させてジアリールカーボネートを生じさせる場合、脂肪族カーボネートエーテルは、更に反応して芳香族カーボネートエーテルを形成する。芳香族ポリカーボネートが生じるジアリールカーボネートと芳香族ジヒドロキシル化合物との引き続きの反応では、芳香族カーボネートエーテルは、ポリカーボネートの生成物特性における低下をもたらし、分子量およびポリマーの色のいずれについても悪影響を及ぼし、分子量は、同じ反応条件であれば、芳香族カーボネートエーテルの存在下では、芳香族カーボネートエーテルの不存在下より低くなる。
【0005】
アルキレングリコールを副生成物として同時に形成する、環式アルキレンカーボネートおよびアルキルアルコールからのジアルキルカーボネートの製造は、既知であり、何度も記載されてきた。US6930195B2では、上記の触媒によるエステル交換反応は、2段階平衡反応として記載されている。第1反応段階では、環式アルキレンカーボネートは、アルコールと反応してヒドロキシアルキルカーボネートを中間体として形成する。次いで、該中間体は、アルコールを用いて第2反応段階において生成物:ジアルキルカーボネートおよびアルキレングリコールへ変換される。
【0006】
ジアルキルカーボネートの製造方法の工業的実施のために、とりわけEP530615A1、EP569812A1およびEP1086940A1に既に記載の反応蒸留塔の使用が特に好ましいことが見出された。EP569812A1では、環式アルキレンカーボネートは、エステル交換塔の上部へ連続的に導入され、ジアルキルカーボネートを含むアルキルアルコールは、エステル交換塔の中間または下部へ連続的に導入される。さらに、実質的に純粋なアルキルアルコールは、ジアルキルカーボネートを含むアルキルアルコールの導入より下へ導入される。本発明では、物質は、2重量%未満、好ましくは1重量%未満の不純物を含む場合に実質的に純粋であると称される。副生成物として製造されるアルキレングリコールを含む高沸物質混合物は、エステル交換塔の底部にて連続的に取り出される。製造されるジアルキルカーボネートを含む低沸物質混合物は、ジアルキルカーボネート−アルキルアルコール混合物としてエステル交換塔の頂上にて取り出され、更なる精製工程に付される。
【0007】
ジアルキルカーボネート−アルキルアルコール混合物の精製のための蒸留塔は、より少ないジアルキルカーボネート含有量を有する更なるジアルキルカーボネート−アルキルアルコール混合物を該塔の頂上にて取り出すことができるように、より高い圧力にて操作される。ジアルキルカーボネートは、主生成物として、該精製塔の底部において得られる。
【0008】
ジアルキルカーボネートのための経済的に魅力のある製造方法の開発について、多くの要素が重要な役割を果たす。参考文献の多くは、反応パラメーター、例えば変換、選択性、生成物純度またはプロセスのエネルギー効率に関連する(例えばEP1760059A1、EP1967242A1およびEP1967508A1)。一般的ではないが、ジアルキルカーボネート精製塔における副生成物の形成についての影響要素は、これらの要素が方法の経済的魅力にかなり寄与する場合でも、検討されていない。従って、本発明では、ジアルキルカーボネート精製塔における副生成物の形成を低下させるために、基準を導入する。
【0009】
EP1760059A1には、均質な触媒を用いる、アルキレンカーボネートおよびアルキルアルコールからジアルキルカーボネートおよびアルキレングリコールを製造するための方法が記載されている。反応は、蒸留塔(エステル交換塔)において行う。塔の頂上において、ジアルキルカーボネートおよびアルキルアルコールからなる混合物は、取り出され、該混合物の分離のための蒸留塔(ジアルキルカーボネート精製塔)へ送られる。該塔の底部では、精製されたジアルキルカーボネートが再び取り出される。このジアルキルカーボネートは、エステル交換塔へ供給されるアルキレンカーボネート中においてアルキレンオキシドの濃度に依存する脂肪族カーボネートエーテルを含む。アルキレンカーボネートは、アルキレンオキシドと二酸化炭素との反応により製造されている。アルキレンカーボネートの製造方法の終了時に、アルキレンカーボネートは、少量のアルキレンオキシドをなお含むことが見出される。ジアルキルカーボネートおよびアルキレングリコールの製造方法では、より多くのアルキレンオキシドが、アルキレンカーボネート中に存在し、より高い濃度の脂肪族カーボネートエーテルが、精製されたジアルキルカーボネート中に存在することが見出される。
【0010】
精製されたジアルキルカーボネート中における脂肪族カーボネートエーテルの濃度は、アルキレンカーボネート中のアルキレンオキシドの濃度の低下によってのみ減少させることができることが見出されるが、これは、アルキレンカーボネートの製造における複雑な装置により、例えば更なる蒸留の後反応器の使用により確保する必要がある。
【0011】
従って、脂肪族カーボネートエーテルの含有量を、更なる装置の複雑さを伴わずに、ジアルキルカーボネートの同じ純度で低下させるのに適したジアルキルカーボネートの精製法が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許6930195号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第530615号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第569812号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1086940号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1760059号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第1967242号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第1967508号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明は、既知の方法と比べて、より低い脂肪族カーボネートエーテルの含有量を精製されたジアルキルカーボネート中にもたらすジアルキルカーボネートの精製法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
意外にも、精製されたジアルキルカーボネート中の副生成物、特にアルコキシアルコールおよび脂肪族カーボネートエーテルの含有量を、ジアルキルカーボネート精製塔において、物質の平均滞留時間の範囲の適当な選択により減少させることができることを見出した。
【0015】
本発明の実施態様は、式(II):
【化1】

〔式中、
およびRは、互いに独立して、直鎖または分枝状の、置換または非置換C〜Cアルキルを表す〕
で示されるジアルキルカーボネートを、1以上の塔において、式(V):
【化2】

〔式中、
およびRは、互いに独立して、水素、置換または非置換C〜Cアルキル、置換または非置換C〜Cアルケニル、または置換または非置換C〜C12−アリールを表す〕
で示されるアルキレンオキシドおよび式(IV):
【化3】

〔式中、
は、直鎖または分枝状のC〜C−アルキルを表す〕
で示されるアルキルアルコールの存在下で精製する工程を含み、塔中でのジアルキルカーボネートの平均滞留時間は0.3時間〜3時間である方法を提供する。
【0016】
上記の概要ならびに以下の本発明の詳細な説明は、添付の図面と併せて読む場合により良好に理解され得る。本発明の説明における補助のために、例示的であると見なされる代表的実施態様を図に示す。しかしながら、本発明は、任意の方法において、示される明確な配置および手段に制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施態様によるジアルキルカーボネートを精製するための方法を例示する。
【図2】図2は、本発明の他の実施態様によるジアルキルカーボネートを精製するための方法を例示する。
【図3】図3は、本発明の他の実施態様によるジアルキルカーボネートを精製するための方法を例示する。
【図4】図4は、本発明の他の実施態様によるジアルキルカーボネートを精製するための方法を例示する。
【図5】図5は、本発明の他の実施態様によるジアルキルカーボネートを精製するための方法を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明では、単数形の用語「1つの(a)」および「その(the)」は、言葉および/または内容が特に示さない限り同義であって、「1以上の(one or more)」および「少なくとも1つの(at least one)」と互換的に使用する。従って、例えば、本明細書または添付の特許請求の範囲において「1つの塔(a column)」と称することは、単一の塔または1より多い塔を指称し得る。さらに、全ての数値は、特記のない限り、語「約」により修飾されると理解される。
【0019】
ジアルキルカーボネート精製塔における液相の平均滞留時間trtは、好ましくは0.3〜3時間、より好ましくは0.5〜2時間である。平均滞留時間trtは、式(I):
rt:= Vρ/(dm/dtDAC) (I)
〔式中:
V:=ジアルキルカーボネート−アルコール混合物の供給点より下の蒸留塔の液体ホールドアップの体積。
ρ:=ジアルキルカーボネート−アルコール混合物の供給点より下の蒸留塔の液体ホールドアップの平均密度。
dm/dtDAC:=精製されたジアルキルカーボネートを含む、蒸留塔の底部から回収された質量流〕
により定義される。
【0020】
本発明により精製されるジアルキルカーボネートは、好ましくは一般式(II):
【化4】

〔式中、RおよびRは、それぞれ互いに独立して、直鎖または分枝状の置換または非置換C〜Cアルキル、好ましくはC〜Cアルキルである。RおよびRは同一または異なってよい。RおよびRは好ましくは同一である〕
で示されるジアルキルカーボネートである。
【0021】
本発明では、C〜Cアルキルは、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルであり、C〜Cアルキルは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルの他に、例えばn−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、シクロヘキシル、シクロペンチル、n−ヘキシル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピルまたは1−エチル−2−メチルプロピルである。
【0022】
上記のリストは、例示であって制限するものではないと理解される。
【0023】
好ましいジアルキルカーボネートは、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ(n−プロピル)カーボネート、ジ(イソプロピル)カーボネート、ジ(n−ブチル)カーボネート、ジ(sec−ブチル)カーボネート、ジ(tert−ブチル)カーボネートまたはジヘキシルカーボネートである。特に好ましいのは、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートである。極めて特に好ましいのは、ジメチルカーボネートである。
【0024】
ジアルキルカーボネートは、好ましくは、式(III):
【化5】

〔式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、置換または非置換C〜Cアルキル、置換または非置換C〜Cアルケニルまたは置換若しくは非置換C〜C12アリールであり、RおよびRは2個の3員環炭素原子と共に5〜8個の環員を有する飽和炭素環式環であり得る〕
で示される環式アルキレンカーボネートから製造される。
【0025】
好ましいアルキレンカーボネートは、エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートである。
【0026】
環式アルキレンカーボネートは、式(IV):
−OH (IV)
〔式中、Rは、直鎖または分枝状C〜Cアルキルである〕
で示されるアルコールと反応させる。
【0027】
好ましいアルコールは、メタノールおよびエタノールである。
【0028】
本発明の方法では、アルキレンオキシドは、式(V):
【化6】

〔式中、RおよびRはそれぞれ、上で定義した通りである〕
で示される化合物である。
【0029】
好ましくは、ジアルキルカーボネートを精製するための蒸留塔は、好ましくは5〜40段の理論段を有するアルキルアルコールの濃縮のための精留区域、および好ましくは5〜40段の理論段を有するジアルキルカーボネートの濃縮のためのストリッピング区域を有する。
【0030】
塔区域では、ジアルキルカーボネート精製塔の全ての部分において、すなわち精留区域および任意のストリッピング区域のいずれにおいても、ランダム充填物または構造化充填物を用いることができる。用いるランダム充填物または構造化充填物は、例えばUllmann’s Encyclopaedie der Technischen Chemie、第4版、第2巻、第528頁以降に記載の蒸留のための従来法による充填物である。ランダム充填物の例としては、ラシヒリング(Raschig ring)、ポールリング(Pall rings)およびナボロックスリング(Navolox rings)、インターパックボディ(Interpack bodys)、バールサドル(Berlsaddles)、インタレックスサドル(Intalex saddles)またはトーラスサドル(Torus saddles)が挙げられる。構造化充填物の例は、板状金属および編織布充填物(例えばBX充填物、Montz Pak、Mellapak、Melladur、KerapakおよびCY充填物)である。用いるランダム充填物および/または構造化充填物は、異なった物質、例えばガラス、せっ器、磁器、ステンレス鋼、プラスチックから製造することができる。
【0031】
また、適当な代替物は、例えばHenry Z.Kister、「Distillation−Design」、第259頁に規定の蒸留のための通常の塔トレイであり、当業者に知られている。塔トレイの例としては、シーブトレイ、バブルキャップトレイ、バルブトレイおよびトンネルキャップトレイが挙げられる。
【0032】
好ましいのは、大きい表面積、良好な湿潤性および液相の十分な滞留時間を有するランダム充填物および構造化充填物である。これらは、例えばポールリング(Pall rings)、ノボラックスリング(Novolax rings)、バールサドル(Berlsaddles)、BX充填物、Montz Pak、Mellapak、Melladur、Rombopak、KerapakおよびCY充填物である。用いるべきストリッピング区域および精留区域の正確な設計は、当業者により行われる。
【0033】
塔底部の寸法は、一般規則に従って当業者に知られている。塔底部の標準的な設計の代替として、配置基準により、液体含有量を減少させることができる。例えば、塔体に対して底部径の狭窄を施すか、または塔体における液体の脱気操作を向上させる適当なバッフル装置を設置することができ、従って、液体のより短い滞留時間を確立することができる。さらに、適当な強制循環蒸発器系の組み込みにより、塔底部における液体の滞留時間を調節することができる。さらに、更なる基準、例えば適当な置換体の導入は、塔底部における液体含有量を減少させるために考慮される。
【0034】
ジアルキルカーボネートおよびアルキルアルコールを、好ましくは蒸留により、1以上の蒸留塔において、または蒸留と膜分離の組み合わせ(以下、混成法と称する)により分離する(例えばUS−4162200A、EP581115B1、EP592883B1およびWO2007/096343A1参照)。
【0035】
アルキルアルコールとジアルキルカーボネートが共沸混合物(例えばメタノールおよびジメチルカーボネート)を形成する場合、2段法、例えば2段圧力法、抽出蒸留、低沸同伴剤を用いるヘテロ共沸蒸留、または混成法を用いることも可能である。特に好ましいのは、2段圧力法または混成法である。
【0036】
特に好ましいのは、ジアルキルカーボネートとアルキルアルコールの分離を、ジアルキルカーボネートとアルキルアルコールが共沸混合物を形成する場合でも単一蒸留塔において行うことである。この蒸留塔は、エステル交換塔の圧力より高い圧力にて操作される。蒸留塔の操作圧は、1〜50バール、好ましくは2〜20バールの範囲である。実質的に純粋なジアルキルカーボネートは、蒸留塔の底部にて取り出され、ジアルキルカーボネートとアルキルアルコールの混合物は頂上にて取り出される。該混合物は、完全にまたは部分的に、エステル交換塔へ供給する。ジアルキルカーボネートの製造方法が、該ジアルキルカーボネートの芳香族ヒドロキシル化合物でのエステル交換により形成されるジアリールカーボネートの製造方法と共役する場合には、蒸留塔の頂上にて取り出されるジアルキルカーボネートおよびアルキルアルコールの混合物の一部を、ジアリールカーボネートを製造するための工程段階において、アルキルアルコールおよびジアルキルカーボネートのための適切な仕上げ工程へ送ることができる。
【0037】
特に好ましいバージョンでは、ジアルキルカーボネートおよびアルキルアルコールが共沸混合物を形成する場合、この仕上げ工程は、2段圧力法である。このような方法は、原理的に当業者に既知である(例えばUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第7巻、2007年、第6.4章および第6.5章;Chemie Ingenieur Technik、第67巻、第11/95号を参照)。
【0038】
アルキルアルコールとジアルキルカーボネートが共沸混合物を形成する場合、ジアルキルカーボネートとアルキルアルコールの分離のためのプロセス工程の第1蒸留塔の蒸留物は、好ましくは実質的に共沸混合物組成を有する。この場合、好ましくは、後者は、2段圧力法において、第1蒸留塔の操作圧力より低い操作圧力にて作動する少なくとも1つの更なる分離蒸留塔に供給する。異なった操作圧力により、共沸混合物のポジションは、アルキルアルコールのより低い割合へシフトする。この第2蒸留塔または更なる蒸留塔において得られる底部生成物は、単離した底部生成物の全重量を基準として90〜100重量%の純度を有するアルキルアルコールであり、得られた蒸留物は、実質的には、共沸性混合物である。より低い操作圧力にて作動する、第2蒸留塔または更なる蒸留塔は、極めて特に好ましい態様では、好ましくは第1蒸留塔の上部凝縮器の凝縮の熱により操作する。
【0039】
2段圧力法は、2つの物質の混合物の共沸性組成の圧力依存性を利用する。アルキルアルコールとジアルキルカーボネート(例えばメタノールとジメチルカーボネート)との混合物の場合には、共沸組成は、圧力の増加によって、より高いアルキルアルコール含有量へシフトする。これら2つの成分の混合物を塔(ジアルキルカーボネート塔)へ供給し、アルキルアルコール含有量が該塔の操作圧力について対応する共沸性組成より低い場合、得られる蒸留物は、実質的には共沸性組成を有する混合物であり、得られる底部生成物は、実質的に純粋なジアルキルカーボネートである。このようにして得られる共沸性混合物は更なる蒸留塔(アルキルアルコール塔)に送る。これは、ジアルキルカーボネート塔に対してより低い操作圧力にて作動する。その結果、共沸混合物のポジションは、より低いアルキルアルコール含有量へシフトする。これにより、ジアルキルカーボネート塔において得られる共沸性混合物を、実質的に共沸性組成を有する蒸留物と実質的に純粋なアルキルアルコールとに分離することが可能となる。アルキルアルコール塔の蒸留物は、ジアルキルカーボネート塔へ適当な場所にフィードバックする。
【0040】
アルキルアルコール塔の操作圧力は、好ましくは、ジアルキルカーボネート塔からの廃熱を用いて操作することができるように選択する。操作圧力は、0.1〜1バール、好ましくは0.3〜1バールである。ジアルキルカーボネート塔の操作圧は、1〜50バール、好ましくは2〜20バールの範囲である。
【0041】
2段圧力法によるジアルキルカーボネートとアルキルアルコールの分離における例示的な反応型を、図1に示す。
【0042】
アルキルアルコールとジアルキルカーボネートの共沸混合物の分離のための更なる好ましい方法は、混成法である。混成法では、2種類の物質の混合物を、蒸留と膜プロセスの組み合わせにより分離する。成分を、その極性特性および異なった分子量により、膜を用いて少なくとも部分的に互いに分離することができることを利用する。アルキルアルコールとジアルキルカーボネートの混合物(例えばメタノールとジメチルカーボネート)の場合では、適当な膜の使用の場合に、パーベーパレーションまたは蒸気透過によって、アルキルアルコールに富む混合物が透過物として得られ、アルキルアルコールが減少した混合物が残留物として得られる。これらの2つの成分の混合物を塔(ジアルキルカーボネート塔)へ供給する場合、アルキルアルコール含有量は、供給より著しく増加したアルキルアルコール含有量を有する混合物であり、得られた底部生成物は、実質的に純粋なジアルキルカーボネートである。
【0043】
蒸留および蒸気透過から構成される混成法の場合には、塔の蒸留物を蒸気形態で取り出す。このようにして得られる蒸気混合物は、適切な場合には過熱後に、蒸気透過へ供給する。蒸気透過は、実質的に塔の操作圧を残留物側で確立し、より低い圧力を透過物側で確立することにより操作する。塔の操作圧力は、1〜50バール、好ましくは1〜20バール、より好ましくは2〜10バールの範囲である。透過物側の圧力は0.05〜2バールである。これにより、透過物側で、画分の全重量を基準として少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも90重量%のアルキルアルコール含有量を有するアルキルアルコールに富む画分が得られる。残留物は、塔の蒸留物と比較して減少したアルコール含有量を有し、必要に応じて凝縮し、蒸留塔にフィードバックする。
【0044】
蒸留およびパーベーパレーションで構成される混成法の場合には、塔の蒸留物は液体形態で取り出す。そのようにして得られた混合物は、適切な場合には過熱後に、パーベーパレーションに供給する。パーベーパレーションは、塔と比べて同一または高い操作圧力を残留物側で確立し、より低い圧力を透過物側で設定することにより操作する。塔の操作圧力は1〜50バール、好ましくは1〜20バール、より好ましくは2〜10バールの範囲である。透過物側における圧力は、0.05〜2バールである。透過物側において、アルキルアルコールに富む蒸気画分は、画分の全重量を基準として少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも90重量%のアルキルアルコール含有量で得られる。液体残留物は、塔の蒸留物と比べて減少したアルキルアルコール含有量を有し、蒸留塔へフィードバックする。透過物の蒸発により、熱が要求され、熱は、パーベーパレーションのための供給流中で十分な程度存在し得ない。従って、パーベーパレーションによる膜分離は、場合により、更なる熱交換器で加熱し、この場合、熱交換器は統合されるか、または必要に応じて、直列に接続する幾つかのパーベーパレーション工程間に設置される。
【0045】
混成法の場合、ジアルキルカーボネートおよびアルキルアルコールの分離は、より好ましくは、蒸留と蒸気透過の組み合わせにより行う。
【0046】
アルキルアルコールとジアルキルカーボネートとの分離に必要な熱は、100℃〜300℃、好ましくは100〜230℃、より好ましくは120〜210℃、特に好ましくは140℃〜190℃の温度で供給する。
【0047】
ジアルキルカーボネートの製造方法は、連続的または回分式に行うことができる。好ましいのは、連続モードである。
【0048】
本発明による方法では、環式アルキレンカーボネート化合物およびアルコールは、好ましくは1:0.1〜1:40、より好ましくは1:1.0〜1:30、特に好ましくは1:2.0〜1:20のモル比で使用する。記載のモル比は、存在し得る1以上の頂上凝縮器((b)下を参照)または1以上の底部凝縮器よりエステル交換塔中への環式アルキレンカーボネート化合物またはアルコールの再生を考慮しない。
【0049】
好ましくは、触媒は、塔中へ、環式アルキレンカーボネートを含む流れと共に溶解形態または懸濁形態で、アルコールについての導入点より上に配置された導入点よりエステル交換塔中へ導入する。あるいは、触媒は、別個に計量投入し、例えばアルコール中、アルキレングリコール中または適当な不活性溶媒中に溶解してもよい。不均一触媒の使用の場合、これらは、記載のランダム充填物での混合物中に用いることができ、ランダム充填物の代わりの適当な形態で、または任意の組み込まれる塔トレイ上で床として使用することができる。
【0050】
ジアルキルカーボネートの製造方法は、エステル交換塔において行う。製造方法の好ましい実施態様では、このエステル交換塔の底部において取り出された液体流を、必要に応じて濃縮後、更なる反応および/または1以上の更なる工程に付すことができる。好ましくは、個々の工程または全ての上記の更なる工程は、1以上の更なる塔において行うことができる。
【0051】
有用なエステル交換塔または任意の第2塔または更なる塔は、当業者に既知の塔であり得る。これらは、例えば蒸留塔または精留塔、好ましくは反応蒸留塔または反応精留塔である。
【0052】
エステル交換は好ましくは少なくとも1つの精留区域を塔の上部に含み、および少なくとも1つの反応帯域を該精留区域より下に含む。精留区域は、0〜30段、好ましくは0.1〜30段の理論段を有する。
【0053】
好ましい実施態様では、エステル交換塔は、反応帯域より下に少なくとも1つのストリッピング区域を有する。
【0054】
さらに、エステル交換塔は、好ましくは1以上の底部蒸発器を備え得る。ストリッピング区域を有するエステル交換塔を実施する場合には、好ましくは、ストリッピング区域から流れる液体を完全または部分的に蒸発させる更なる底部蒸発器を用いることである。これは、完全または部分的に蒸発した液体流を、エステル交換塔へ完全または部分的に戻す。ストリッピング区域を用いない実施態様の場合には、反応帯域から流れ出る液体を、用い得る底部蒸発器において、完全または部分的に蒸発させて、エステル交換塔中へ完全または部分的に再生する。
【0055】
精留区域は、好ましい実施態様では、反応区域および必要に応じて少なくとも1つのストリッピング区域と共に適合させ得る。この場合、反応帯域からの蒸気混合物を、精留区域のより低い区域中へ下から通過させるか、または適切な場合にはより低い精留区域へ通過させ、アルキレンカーボネートまたはアルキレングリコールを減少させる。
【0056】
反応帯域および任意の存在するストリッピング区域より下では、アルキレングリコール、過剰または未変換アルキレンカーボネート、アルコール、ジアルキルカーボネート、エステル交換触媒、および反応により生成するまたは反応物内に既に存在する高沸性化合物を含む混合物が得られる。ストリッピング区域の使用の場合、低沸点化合物、例えばジアルキルカーボネートおよびアルコールの含有量が減少するが、更なるジアルキルカーボネートおよびジアリールカーボネートが、エステル交換触媒の存在下で、いくつかの状況下で形成される。これに必要なエネルギーは、好ましくは、1以上の蒸発器により供給する。
【0057】
エステル交換塔の全ての区域において、即ち、残留区域および任意のストリッピング区域のいずれにおいても、ランダム充填物または構造化充填物を用いることができる。用いるべきランダム充填物または構造化充填物は、例えばUllmann’s Encyclopaedie der Technischen Chemie、第4版、第2巻、第528頁以降に記載の、蒸留のための従来法による充填物である。ランダム充填物の例としては、ラシヒリング(Raschig ring)、ポールリング(Pall rings)およびノバロックスリング(Novalox rings)、バールサドル(Berlsaddles)、インタレックスサドル(Intalex saddles)またはトーラスサドル(Torus saddles)、インターパックボディ(Interpack bodies)が挙げられ、構造化充填物の例としては、種々の物質、例えばガラス、せっ器、磁器、ステンレス鋼、プラスチック等から作られる、板状金属および編織布充填物(例えばBX充填物、Montz Pak、Mellapak、Melladur、KerapakおよびCY充填物)が挙げられる。好ましいのは、大きい表面積を有し、良好な湿潤性および液相の十分な滞留時間を有するランダム充填物および構造化充填物である。これらは、例えばポールリング(Pall rings)、ノバロックスリング(Novalox rings)、バールサドル(Berlsaddles)、BX充填物、Montz Pak、Mellapak、Melladur、KerapakおよびCY充填物である。
【0058】
他の適当な別法は、塔トレイ、例えばシーブトレイ、バブルキャップトレイ、バルブトレイ、トンネルキャップトレイである。エステル交換塔の反応帯域において、特に好ましいのは、長い滞留時間および良好な質量移動を有する塔トレイ、例えば高いオーバーフロー堰を有するバブルキャップトレイ、バルブトレイまたはトンネルキャップトレイである。反応帯域の理論段数は、好ましくは3〜50段、より好ましくは10〜50段、さらに好ましくは10〜40段である。液体ホールドアップは好ましくは、反応帯域の内部塔体積の1〜80%、より好ましくは5〜70%、特に好ましくは7〜60%である。反応帯域、任意の使用すべきストリッピング区域および精留区域の正確な設計は、当業者であれば行なうことができる。
【0059】
反応帯域の温度は、好ましくは20〜200℃、より好ましくは40〜180℃、特に好ましくは40〜160℃の範囲である。標準圧だけでなく高圧または減圧下でエステル交換を行うことは有利である。従って、反応帯域の圧力は好ましくは、0.2〜20バール、より好ましくは0.3〜10バール、特に好ましくは0.4〜5バールの範囲である。上記および下記の圧像は、特記のない限り絶対圧像である。
【0060】
好ましくは、ジアルキルカーボネートの製造方法においてエステル交換塔の頂上にて取り出されるジアルキルカーボネートおよびアルキルアルコールを含む蒸気混合物は、エステル交換塔の頂上における凝縮後、完全にまたは部分的に、ジアルキルカーボネートおよびアルキルアルコールの分離のための少なくとも1つの蒸留塔を含む少なくとも1つの更なる工程へ供給する。
【0061】
図の説明:
K1 エステル交換塔
K2 ジアルキルカーボネートおよびアルキルアルコールを含む混合物の分離のための第1蒸留塔
K3 ジアルキルカーボネートおよびアルキルアルコールを含む混合物の分離のための第2蒸留塔
1 アルキレンカーボネートおよび/または必要に応じて触媒を含む反応物流
2 実質的に純粋なアルキルアルコールを含む反応物流
3 アルキルアルコールおよびジアルキルカーボネートを含む反応物流
4 アルキレングリコールを含む流れ
5 精製されたジアルキルカーボネートを含む流れ
6 ジアルキルカーボネートおよびアルキルアルコールを含む流れ
7 実質的に純粋なアルキルアルコールを含む流れ
8 抽出剤(好ましくはアルキレンカーボネート)を含む流れ
9 抽出剤(好ましくはアルキレンカーボネート)を含む流れ
10 抽出剤(好ましくはアルキレンカーボネート)を含む流れ
【0062】
図1は、アルキレンカーボネートおよびアルキルアルコールの一般的な第1エステル交換塔(K1)における反応精留によるエステル交換工程、およびジアルキルカーボネートおよびエステル交換塔の頂上にて得られたアルキルアルコールを含む混合物の第1蒸留塔(K2)および第2蒸留塔(K3)における2つの圧力蒸留による仕上げを説明する。
【0063】
図2は、一般的な第1エステル交換塔(K1)における反応精留によるアルキレンカーボネートおよびアルキルアルコールのエステル交換工程、およびジアルキルカーボネートおよびエステル交換塔の頂上にて得られたアルキルアルコールを含む混合物の単一蒸留塔(K2)による仕上げを説明する。
【0064】
図3は、アルキレンカーボネートおよびアルキルアルコールの一般的な第1エステル交換塔(K1)における反応精留によるエステル交換工程、およびジアルキルカーボネートおよびエステル交換塔の頂上にて得られたアルキルアルコールを含む混合物の、好ましくは抽出剤としてアルキレンカーボネートを用いる、第1蒸留塔(K2)および第2蒸留塔(K3)における抽出蒸留による仕上げを説明する。
【0065】
図4は、アルキレンカーボネートおよびアルキルアルコールの一般的な第1エステル交換塔(K1)における反応精留によるエステル交換工程、およびジアルキルカーボネートおよびエステル交換塔の頂上にて得られたアルキルアルコールを含む混合物の蒸留塔(K2)における蒸留および蒸気透過による仕上げを説明する。
【0066】
図5は、アルキレンカーボネートおよびアルキルアルコールの一般的な第1エステル交換塔(K1)における反応精留によるエステル交換工程、およびジアルキルカーボネートおよびエステル交換塔の頂上にて得られたアルキルアルコールを含む混合物の蒸留塔(K2)における蒸留およびパーベーパレイションによる仕上げを説明する。
【0067】
以下の実施例は、本発明を例示的に説明するものであり、制限するものと解釈されるべきではない。
【0068】
当業者により、広範な本発明の概念から逸脱することなく上記の実施態様を変更することが好ましい。従って、本発明は、開示の特定の実施態様に制限されないが、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の精神および範囲内での変更を対象とすることが意図される。
【0069】
上記の全ての参照は、全ての有用な目的のためにその全体において参照により組み込まれる。
【実施例】
【0070】
実施例を用いて、本発明による方法のための操作の好ましい態様を詳細に示す。実施例1は、ジアルキルカーボネート精製塔についての操作の好ましい態様を示す。この実施例は、本発明を決して制限するものではないと理解される。
【0071】
本発明による方法の優位性、すなわち、精製塔内での液相中の反応物の滞留時間の適当な確立による、望ましくない副生成物、例えばアルコキシアルコールおよび脂肪族カーボネートエーテル等の形成の低減を、2つの比較例を用いて以下に示す。
【0072】
実施例1および比較例のいずれにおいても、ジアルキルカーボネートとしてのジメチルカーボネートおよびエチレングリコールは、エチレンカーボネートおよびメタノールの間での反応から形成する。この場合、メトキシエタノールは、アルコキシアルコールであり、およびメチルメトキシエチルカーボネート(MMEC)は、脂肪族カーボネートエーテルである。
【0073】
実施例1
反応蒸留塔は、9段の理論段を有する精留区域、25個の反応トレイ(ホールドアップ/トレイ:0.6m)を有する反応帯域および4段の理論段を有するストリッピング区域から構成される。塔は、塔の頂上において400mバール(絶対)の圧力および0.585の質量ベース返還率にて操作する。
【0074】
上部塔領域において、第1反応トレイの真上に、9000kg/時間の100ppmのエチレンオキシド含有量を有するエチレンカーボネート、および174kg/時間の33.3重量%のKOHおよび66.7重量%のエチレングリコールを含有する混合物を、連続的に計量投入する。第8反応トレイおよび第9反応トレイの間で、ジアルキルカーボネート精製塔の返還蒸留物流を、蒸気形態で、21371kg/時間の質量流で計量投入する。加えて、反応帯域の下端にて、7124kg/時間の99.5重量%のメタノール、0.4重量%のエチレングリコールおよび少量のジメチルカーボネートおよび他の物質を含む蒸気混合物を供給する。
【0075】
底部蒸発器を102℃にて操作し、7018kg/時間のエチレングリコールを主に含む液体底部生成物を得る。
【0076】
部分凝縮器は、蒸気流を、塔の頂上において40℃にて凝縮する。この結果、6kg/時間の蒸気蒸留物を取り出す。30645kg/時間の質量流での液体蒸留物を、更なる精製のための更なる蒸留塔へ供給する。
【0077】
28段の理論段を有する精留区域および11段の理論段を有するストリッピング区域からなる、エステル交換により生じるジアルキルカーボネートの精製のための蒸留塔は、塔の頂上において10バール(絶対)の圧力および1.0の質量ベース変換率にて操作する。
【0078】
塔の下部領域では、第27理論段と第28理論段の間で、30645kg/時間の、59重量%のメタノールおよび41重量%のジメチルカーボネートを含むジアルキルカーボネート含有アルコール混合物を連続的に計量投入する。
【0079】
部分凝縮器は、蒸気流を、塔の頂上において137℃で凝縮する。これにより、21kg/時間の、82.9重量%のメタノール、14.4重量%のジメチルカーボネート、0.3重量%のエチレンオキシドおよび2.4重量%のCOを有する蒸気蒸留物および21380kg/時間の84重量%のメタノールおよび16重量%のジメチルカーボネートを有する液体蒸留物がいずれも得られる。低沸点成分の濃縮を防止するために、蒸留物流から、9kg/時間のパージ流を取り出し、21371kg/時間をエステル交換塔へ再生する。
【0080】
第1段〜第39段はそれぞれ、0.06mの液体ホールドアップを有する。塔の底部は、16.5mの液体ホールドアップを有する。塔の底部における液体の温度は、183℃である。液体ホールドアップの平均密度は、860kg/mである。平均滞留時間は、1.6時間である。
【0081】
これにより、9244kg/時間の99.5重量%のジメチルカーボネートを含む液体底部生成物が得られる。メタノールに加えて、11ppmのメトキシエタノールおよび5ppmのMMECが存在する。
【0082】
比較例1
実施例1に記載の塔の同一の構造物を用いる。ジアルキルカーボネートの精製のための塔は、塔の頂上において20バール(絶対)の圧力および1.0の質量ベース返還率にて操作する。
【0083】
ジアルキルカーボネートを精製するための塔の下部領域では、第27理論段と第28理論段の間で、30645kg/時間の、59重量%のMeOHおよび41重量%のジメチルカーボネートを含むジアルキルカーボネート含有アルコール混合物を連続的に計量投入する。
【0084】
部分凝縮器は、蒸気流を、塔の頂上において137℃で凝縮する。これにより、21kg/時間の、83.3重量%のメタノール、14.6重量%のジメチルカーボネート、0.3重量%のエチレンオキシドおよび1.8重量%のCOを有する蒸気蒸留物および21380kg/時間の84重量%のメタノールおよび16重量%のジメチルカーボネートを有する液体蒸留物がいずれも得られる。低沸点成分の濃縮を防止するために、蒸留物流から、9kg/時間のパージ流を取り出し、21371kg/時間をエステル交換塔へ再生する。
【0085】
第1段〜第39段はそれぞれ、0.3mの液体ホールドアップを有する。塔の底部は、25mの液体ホールドアップを有する。塔の底部における液体の温度は、183℃である。液体ホールドアップの平均密度は、860kg/mである。平均滞留時間は、2.6時間である。
【0086】
これにより、9244kg/時間の99.5重量%のジメチルカーボネートを含む液体底部生成物が得られる。メタノールに加えて、38ppmのメトキシエタノールおよび24ppmのMMECが存在する。
【0087】
比較例2
実施例1に記載の塔の同一の構造物を用いる。ジアルキルカーボネートの精製のための塔は、塔の頂上において20バール(絶対)の圧力および1.0の質量ベース返還率にて操作する。
【0088】
ジアルキルカーボネート精製塔の操作圧の上昇およびメタノール/ジメチルカーボネート共沸混合物の組成物の圧力依存は、以下に記載のエステル交換塔における変化した操作条件を生じさせる。
【0089】
エステル交換塔は、塔の頂上において400ミリバール(絶対)の圧力および0.585の質量ベース還流率にて操作する。塔の上部領域において、第1反応トレイの真上に、9000kg/時間の100ppmのエチレンオキシド含有量を有するエチレンカーボネート、および174kg/時間の33.3重量%のKOHおよび66.7重量%のエチレングリコールを含む混合物を、連続的に計量投入する。第8反応トレイおよび第9反応トレイの間で、ジアルキルカーボネート精製塔の再生蒸留物流を、蒸気形態でのみ21371kg/時間の質量流および90.5重量%の組成物および9.5重量%のジメチルカーボネートの組成物で供給する。更に、7124kg/時間の99.5重量%のメタノール、0.4重量%のエチレングリコールおよび少量のジメチルカーボネートおよび他の物質を含む蒸気混合物を、反応帯域の下端にて供給する。底部蒸発器は、102℃にて操作し、7018kg/時間のエチレングリコールを主に含む液体底部生成物が得られる。部分凝縮器は、蒸気流を塔の頂上において40℃にて凝縮する。30645kg/時間の質量流を有する液体蒸留物を、更なる精製のためのジアルキルカーボネート精製塔へ供給する。
【0090】
実施例1および比較例1と同様に、エステル交換において形成されるジアルキルカーボネートを精製するための蒸留塔は、28段の理論段を有する精留区域および11段の理論段を有するストリッピング区域からなる。精製塔は、塔の頂上において20バール(絶対)の圧力および1.0の質量ベース返還率にて操作する。
【0091】
ジアルキルカーボネートを精製するための塔の下部領域では、第27理論段と第28理論段の間で、30645kg/時間の、64.3重量%のMeOHおよび36.6重量%のジメチルカーボネートを含むジアルキルカーボネート含有アルコール混合物を連続的に計量投入する。
【0092】
部分凝縮器は、蒸気流を、塔の頂上にて167℃にて凝縮する。これにより、21kg/時間の、91.4重量%のメタノール、7.7重量%のジメチルカーボネート、0.7重量%のエチレンオキシドおよび0.2重量%のCOを有する蒸気蒸留物および21374kg/時間の90.5重量%のメタノールおよび9.5重量%のジメチルカーボネートを有する液体蒸留物がいずれも得られる。低沸点成分の濃縮を防止するために、蒸留物流から、3kg/時間のパージ流を取り出し、21371kg/時間をエステル交換塔へ再生する。
【0093】
第1段〜第39段はそれぞれ、0.3mの液体ホールドアップを有する。塔の底部は、25mの液体ホールドアップを有する。塔の底部における液体の温度は、224℃である。液体ホールドアップの平均密度は、750kg/mである。平均滞留時間は、2.3時間である。
【0094】
これにより、9250kg/時間の99.5重量%のジメチルカーボネートを含む液体底部生成物が得られる。メタノールに加えて、53ppmのメトキシエタノールおよび111ppmのMMECが存在する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II):
【化1】

〔式中、
およびRは、互いに独立して、直鎖または分枝状の、置換または非置換C〜Cアルキルを表す〕
で示されるジアルキルカーボネートを、1以上の塔において、式(V):
【化2】

〔式中、
およびRは、互いに独立して、水素、置換または非置換C〜Cアルキル、置換または非置換C〜Cアルケニル、または置換または非置換C〜C12アリールを表す〕
で示されるアルキレンオキシドおよび式(IV):
【化3】

〔式中、
は、直鎖または分枝状のC〜Cアルキルを表す〕
で示されるアルキルアルコールの存在下で精製する工程を含む方法であって、塔中でのジアルキルカーボネートの平均滞留時間は、0.3時間〜3時間である、方法。
【請求項2】
塔中でのジアルキルカーボネートの平均滞留時間は、0.5時間〜2時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルコールは、メタノールまたはエタノールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
アルコールは、メタノールまたはエタノールを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
アルキレンは、エチレンまたはプロピレンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
アルキレンは、エチレンまたはプロピレンを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
ジアルキルカーボネートの精製に用いる塔の少なくとも1つにおける圧力は、0.5〜50バール絶対である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ジアルキルカーボネートの精製に用いる塔の少なくとも1つにおける圧力は、0.5〜50バール絶対である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
ジアルキルカーボネートの精製に用いる塔の少なくとも1つにおける圧力は、2〜20バール絶対である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ジアルキルカーボネートの精製に用いる塔の少なくとも1つにおける圧力は、2〜20バール絶対である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ジアルキルカーボネートの精製に用いる塔の少なくとも1つにおける温度は、120℃〜210℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ジアルキルカーボネートの精製に用いる塔の少なくとも1つにおける温度は、120℃〜210℃である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
ジアルキルカーボネートの精製に用いる塔の少なくとも1つは、充填塔である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
ジアルキルカーボネートの精製に用いる塔の少なくとも1つは、充填塔である、請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−92102(P2012−92102A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−234025(P2011−234025)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】