説明

ジェットポンプ及び原子炉

【課題】効率を更に増大できるジェットポンプを提供する。
【解決手段】ジェットポンプ20はノズル9、ベルマウス24及び混合器11を有し、ノズル9はノズル部27及びリングヘッダー30を有する。ノズル部27はリングヘッダー30の下端に結合される。例えば8個の邪魔板29が周方向においてノズル部27内に設けられる。各邪魔板29のそれぞれの相互間に噴出口が形成される。駆動水10は、分岐管22を介してリングヘッダー30内の環状空間31に供給される。この駆動水10は、ノズル部27の複数の噴出口から、周方向において分断された複数の噴出流25となって噴出される。周方向にて隣り合う噴出流25の相互間には、ギャップが形成される。ダウンカマ7内の冷却水8の一部は、噴出流25によって、上記ギャップを介して内側領域41に吸引される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジェットポンプ及び原子炉に係り、特に、沸騰水型原子炉に適用するのに好適なジェットポンプ及び原子炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の沸騰水型原子炉(BWR)は、原子炉圧力容器内にジェットポンプを設置している。ジェットポンプは、ノズル、ベルマウス及び混合器を備える。再循環系配管は原子炉圧力容器に接続される。この再循環系配管に設けられた再循環ポンプの駆動によって昇圧された冷却水は、再循環系配管を通り、駆動水としてノズルからジェットポンプ内に噴出される。ノズルは、駆動水の速度を増加させる。噴出された駆動水によって、ノズルの周囲に存在する冷却水が被駆動水として混合器内に流入する。混合器から排出された冷却水は、下部プレナムを経て炉心に供給される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献2は、被搬送物(雨水、沈砂池に流入した下水及び固形物等)を吸引する吸引管及び吸引管を取囲む筒状部材を有するジェットポンプを記載する。更に、このジェットポンプは、吸引管を取囲んで設けられて筒状部材と吸引管の間に高圧水供給室を形成している。高圧水供給室に開口する複数の噴射口が、吸引管を取囲んで配置されている。高圧水供給室内に供給された高圧水がそれらの噴射口から噴出されることによって、吸引管から被搬送物を吸引する。
【0004】
引用文献3の図3に記述されたジェットポンプは、ベンチュリー管を有し、ベンチュリー管の上流に駆動水を噴出させるノズルを備えている。このノズルは、内側円筒及び内側円筒を取囲む外側円筒を有する。内側円筒と外側円筒の間に形成された駆動水用流路は、断面積が駆動水の吐出側に向かって徐々に減少する環状流路になっている。駆動水用流路に供給された駆動水は、その流路の一端(吐出口)からベンチュリー管内に向かって噴出される。ノズルの周囲に存在する洗浄水が、ノズルから噴出される駆動水によってベンチュリー管内に吸引される。具体的には、この洗浄水は、ノズルとベンチュリー管の間に形成される第1冷却水吸引流路、及び内側円筒より内側に形成される第2冷却水吸引流路をそれぞれ通ってベンチュリー管内に流入する。ノズルからは円筒状態になった駆動水が噴出される。円筒状態の駆動水の横断面は連続したリングになっている。
【0005】
【特許文献1】USP3,625,820
【特許文献2】特開2002−89499号公報
【特許文献3】特開2001−90700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ジェットポンプの性能は、以下に示すようなM比、N比、効率によって表される。M比は、駆動水(再循環水)の流量Qaに対する、被駆動水(冷却水)の流量Qbの比であり、(1)式で表される。
【0007】
M比 = Qb/Qa ……(1)
N比は、駆動水に対する被駆動水の全水頭比であり、(2)式で表される。
【0008】
N比 = (Hc−Hb)/(Ha−Hc) ……(2)
ここで、Haはノズルの駆動水入口における全水頭、Hbはジェットポンプの被駆動水入口における全水頭、Hcはジェットポンプ出口における全水頭である。効率は、駆動水に対する被駆動水のエネルギーの比であり、M比とN比の積で表される。
【0009】
効率 = M比 × N比 ……(3)
ジェットポンプとしては、M比、N比及び効率がより高いことが望ましい。小さい容量の再循環ポンプを用いて、ジェットポンプから吐出される冷却水流量を効率良く増加させることができれば、再循環系をコンパクト化することができ、再循環系の設置スペースを低減できる。
【0010】
例えば、既設の原子炉(例えば、BWR)で増出力を行う場合には、炉心流量を増加して炉心の冷却能力を高めることにより、原子炉出力の増大幅を拡大することができる。また、炉心流量の制御幅を拡大することによって、炉心内のボイド率の変化幅が増大し、燃料経済性を高めることができる。このように炉心流量を増加させるためには、再循環ポンプ、給水ポンプ及びジェットポンプを改良するとよい。発明者らは、増出力を目的とした既設の原子炉の改造においては、再循環ポンプ及び給水ポンプなどの大型機器の改造、交換に比べて、ジェットポンプの改良が有効であることを見出した。ジェットポンプの性能は、駆動水と被駆動水の混合部の形状に大きく依存するため、駆動水を噴出するノズルを改良することにより、その性能を向上できる可能性がある。
【0011】
被搬送物を吸引する吸引管、及び吸引管を取囲み内部に駆動水が供給される筒状部材を有する、特許文献2に記載されたジェットポンプは、冷却水を炉心に供給する、原子炉のジェットポンプに用いることはできない。もし、特許文献2に記載されたジェットポンプを原子炉圧力容器内のオープンエリアであるダウンカマ内に設置した場合には、吸引部での圧力損失が大きくなり、M比を大きくすることができない。また、吸引部での圧力損失を小さくし、M比を大きくするために吸引管の口径を大きくすると、環状部である高圧水供給室が大きくなり、現状のBWRで2台1セットのジェットポンプ上部の狭いダウンカマ領域に設置できなくなる。
【0012】
特許文献3に記述されたジェットポンプは、ノズルから噴出される駆動水の噴出流によって、ノズルの周囲に存在する被駆動水を、第1冷却水吸引流路及び第2冷却水吸引流路をそれぞれ通してベンチュリー管内に流入させる。特許文献3に記載されたノズルを特許文献1に記載されたジェットポンプに用いることによって、ジェットポンプの効率を増大させることができる。
【0013】
しかしながら、原子炉の増出力の度合いを大きくするためには、ジェットポンプの更なる効率向上が求められる。
【0014】
本発明の目的は、効率を更に増大できるジェットポンプ及び原子炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、ジェットポンプのノズルが、被駆動流体が流れる被駆動流体通路を有すると共に、被駆動流体通路を取り囲むヘッダー部及び被駆動流体通路を取り囲むノズル部を有し、ヘッダー部内に供給される駆動流体がノズル部に供給されるように構成され、ノズル部が被駆動流体通路を取囲んで周方向に間隔を置いて配置された複数の噴出口を有していることにある。
【0016】
各噴出口から噴出される駆動流体のそれぞれの噴出流の相互間にそれぞれギャップが形成される。このため、駆動流体の噴出によって、ノズルとジェットポンプ本体の間に形成される被駆動流体流路を通って吸引される、ノズルの周囲に存在する被駆動流体の一部が、そのギャップを通って噴出流よりも内側の領域(以下、内側領域という)でジェットポンプ本体内に流入する。このような被駆動流体の一部の内側領域への流入は、内側領域に生じる減圧の効果が有効に活用されることによって生じ、ジェットポンプ本体に流入する被駆動流体の流量を増大させる。この結果、ジェットポンプから排出される流体の流量が著しく増加し、ジェットポンプの効率が著しく向上する。上記の特徴を有するジェットポンプを原子炉に適用することによって、この原子炉は増加幅の大きな増出力にも容易に可能になる。
【0017】
上記した目的は、ジェットポンプのノズルが、被駆動流体が流れる被駆動流体通路を有すると共に、被駆動流体通路を取り囲むヘッダー部及び被駆動流体通路を取り囲むノズル部を有し、ヘッダー部内に駆動流体を供給する管路は、ノズルの第1軸心と直交する方向において管路の第2軸心がその第1軸心から離れた位置を向くようにヘッダー部に接続され、管路からヘッダー部内に供給される駆動流体が前記ノズル部に供給されるように構成され、ノズル部が被駆動流体通路を取囲む噴出口を有していることによっても、達成される。
【0018】
噴出口から噴出する駆動流体の噴出流が旋回しているので、被駆動流体通路及び上記の被駆動流体流路からジェットポンプ本体に流入する被駆動流体の流量が著しく増大する。このため、ジェットポンプの効率が著しく向上する。
【0019】
上記した目的は、ジェットポンプのノズルが、被駆動流体が流れる、ノズルの軸方向に伸びる第1被駆動流体通路を有すると共に、第1被駆動流体通路を取り囲むヘッダー部及び第1被駆動流体通路を取り囲むノズル部を有し、ヘッダー部内に供給される駆動流体がノズル部に供給されるように構成され、ノズル部が第1被駆動流体通路を取囲む噴出口を有しており、被駆動流体を前記第1被駆動流体通路に導く第2被駆動流体通路を、ヘッダー部及びノズル部の少なくとも一つに形成することによっても、達成できる。
【0020】
内側領域の減圧の効果を有効に活用して第2駆動流体通路を通してジェットポンプ本体に、被駆動流体が流入する。これにより、第1被駆動流体通路内における減圧領域の形成が阻害されるため、第1被駆動流体通路内の流路断面積が増大したのと実質的に等価となる。したがって、第1被駆動流体通路を通してジェットポンプ本体内に流入する被駆動媒体の流量が著しく増大し、ジェットポンプの効率が著しく向上する。
【0021】
本発明は、特許文献3の図3に記載されたジェットポンプ(以下、従来ジェットポンプという)を原子炉に適用した場合において、その従来ジェットポンプの特性を詳細に検討し、得られた検討結果に基づいてなされたものである。従来ジェットポンプは、ノズルからの駆動水(駆動流体)の噴出によって、ノズル内に形成された第2冷却水吸引流路(被駆動流体通路)より吸い込んだ冷却水(被駆動流体)をベンチュリー管内に流入させている。このため、従来ジェットポンプは、ノズル周囲の冷却水を第1冷却水吸引流路(被駆動流体流路)のみからベンチュリー管内に導入するジェットポンプと比べてジェットポンプの効率は格段に向上する。しかしながら、発明者らは、この従来ジェットポンプにおいて新たな課題が生じることを発見した。
【0022】
従来ジェットポンプは、ノズルから噴出された駆動流体の噴出流が、連続したリングである横断面形状を有する円筒状態になっている。このため、従来ジェットポンプでは、被駆動流体通路から流入した被駆動流体は、噴出された円筒状体の駆動流体の噴出流によって遮られてしまう。これでは、内側領域で生じる減圧の効果を十分に活用することができない。発明者らは、内側領域での減圧効果をもっと活用できれば、従来ジェットポンプの効率を更に向上させることがでることを新たに見出したのである。
【0023】
発明者らは、内側領域での減圧効果を更に活用できる実現策を種々検討した。その結果、以下に示す(a)〜(c)のいずれかの対策が、上記した減圧効果を更に活用でき、ジェットポンプから排出される流体の流量を増大させることが分かった。排出される流体の流量の増大は、ジェットポンプの効率の更なる向上をもたらす。本発明は、このような発明者らの発見に基づいて成されたものである。
(a)周方向で相互間にギャップを形成する、駆動流体の複数の噴出流を噴出する。
(b)駆動流体の噴出流を、旋回するように、被駆動流体通路の周囲に形成された噴出口から噴出する。
(c)上記被駆動流体通路に被駆動流体を導く別の被駆動流体通路を、ノズルに形成する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ジェットポンプの効率を更に向上させることができる。また、このジェットポンプを原子炉に適用した場合には、増出力への対応が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施例を、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0026】
本発明の好適な一実施例である実施例1のジェットポンプを、以下に説明する。本実施例のジェットポンプの構造を説明する前に、沸騰水型原子炉の概略の構造を、図6及び図7を用いて以下に説明する。
【0027】
沸騰水型原子炉(BWR)は、原子炉圧力容器(原子炉容器)1を有し、原子炉圧力容器1内に炉心シュラウド6を設置している。複数の燃料集合体(図示せず)が装荷された炉心2が、炉心シュラウド6内に配置される。気水分離器13及び蒸気乾燥器14が原子炉圧力容器1内で炉心2の上方に配置される。ジェットポンプ20が、原子炉圧力容器1と炉心シュラウド6の間に形成される環状のダウンカマ7内に配置される。原子炉圧力容器1には再循環系が設けられる。この再循環系は、吸込み配管17、吐出配管19及び再循環ポンプ18を有する。吸込み配管17及び吐出配管19は、再循環系配管を構成し、再循環ポンプ18に接続される。吸込み配管17は、原子炉圧力容器1に接続されてダウンカマ7に連絡されている。吐出配管19は、ダウンカマ7内に配置されたライザ管21及び分岐管22を介してジェットポンプ20のノズル9に接続される。給水配管3及び主蒸気配管15が原子炉圧力容器1に接続される。
【0028】
原子炉圧力容器1内の上部に存在する冷却水(被駆動流体、冷却材)5は、給水配管3から原子炉圧力容器1に供給された給水4と混合されてダウンカマ7内を下降する。冷却水8は、再循環ポンプ18の駆動によって吸込み配管17内に流入し、再循環ポンプ18によって昇圧される。この昇圧された冷却水8を、便宜的に、駆動水(駆動流体)という。この駆動水10は、吐出配管19、ライザ管21及び分岐管22を介してジェットポンプ20のノズル9から噴出される。ノズル9の周囲に存在する冷却水8は、駆動水10の噴出によって、ベルマウス24から混合器11内に吸い込まれる。この冷却水8は、駆動水10と共に混合器11内を下降し、混合器11から吐出される。混合器11から吐出される冷却水(冷却水8及び駆動水10を含む)を、冷却水12と称する。冷却水12は、下部プレナム5を経て炉心2に供給される。冷却水12は、炉心2を通過する際に加熱されて水及び蒸気を含む二相流となる。気水分離器13は蒸気と水を分離する。分離された蒸気は、更に蒸気乾燥器14で湿分を除去されて主蒸気配管15に排出される。この蒸気は、蒸気タービン(図示せず)に導かれ、蒸気タービンを回転させる。蒸気タービンから排出された蒸気は、復水器(図示せず)で凝縮されて水となる。この水は、給水4として給水配管3より原子炉圧力容器1内に供給される。気水分離器13及び蒸気乾燥器14で分離された水は、落下して冷却水8となる。
【0029】
ノズル9及び混合器11を主要な構成要素とするジェットポンプ20は、再循環ポンプ18の動力を駆動水10から冷却水8に効果的に伝え、ジェットポンプ20から吐出される冷却水12の流量を駆動水10の流量よりも増大させる。具体的には、駆動水10は、炉心2に供給する冷却水12の流量を増加するために用いられる。再循環ポンプ18によって与えられた駆動水10の運動エネルギーが冷却水8に有効に作用すると、冷却水8が駆動されて冷却水12の流量が更に増加する。そのため、駆動水10の運動エネルギーが増加するようにノズル9の出口における駆動水10の流速を増加させると共に、混合器11の入口部(スロート部)で流路面積をベルマウス24のそれよりも小さくすることにより冷却水8の速度を増加して静圧を減圧させる。これにより、冷却水8を混合器11に吸い込むことができ、少ない動力で必要な炉心流量を確保することができる。
【0030】
このようなジェットポンプ20において、M比及びN比を上げ、効率を更に上昇させるためには、流力損失を極力小さくすること、及び駆動水で誘発される吸引力を最大限利用することが重要となる。そこで、本実施例のジェットポンプ20は、駆動水10の噴出流の上部を開放して、ダウンカマ7内を下降する冷却水8の流力を損失無く吸込み力として利用し、冷却水8の吸込み量を増加させている。また、ノズル9から噴出する駆動水10の上部を開放にすること、及び駆動水10を複数の噴出流に分けることによって、駆動水10の噴出流よりも内側の領域に発生する減圧の効果を有効に利用し、冷却水8の吸込み量を更に増加させている。
【0031】
本実施例のジェットポンプ20を、図1〜図4及び図7を用いて詳細に説明する。ジェットポンプ20は、図7に示すように、ノズル9、ベルマウス24及び混合器11を有する。ベルマウス24及び混合器11をジェットポンプ本体と称する。混合器11は、上部のスロート部で流路断面積が狭く、スロート部よりも下方に向かうにしたがってその流路断面積が徐々に増大している。ベルマウス24は、上方に向かって末広がりになっており、混合器11の上端に取り付けられている。ノズル9は、ベルマウス24の上部開口に対向して配置される。ノズル9とベルマウス24との間には、ノズル9の周囲に存在する冷却水8をベルマウス24内に導く冷却水吸引流路(被駆動流体流路)36(図1参照)が形成される。
【0032】
水平方向に伸びる2本の分岐管22が、1本のライザ管21の上端部に接続される。ライザ管21は吐出配管19に接続されている。ライザ管21は2つのジェットポンプ20の間に配置される。2本の分岐管22はそれらのジェットポンプ20の各ノズル9に別々に接続される。なお、図7には、ジェットポンプ20の性能を評価する上で必要となる前述の(1)式及び(2)式に用いられる変数を該当する部位に併せて記した。
【0033】
ノズル9は、図1に示すように、ノズル部27及びリングヘッダー30を有する。リングヘッダー30は、外部円筒部材23及び内部円筒部材26を有する。外部円筒部材23は円筒部及び円筒部の下端につながる漏斗状の筒部(以下、漏斗状筒部という)を有する。内部円筒部材26も、漏斗状筒部を有し、内面が傾斜面となっている。外部円筒部材23と内部円筒部材26は上端部で互いに結合される。環状空間31が外部円筒部材23と内部円筒部材26の間に形成される。複数の補強板28が、ノズル9の周方向に間隔を置いて配置され、外部円筒部材23と内部円筒部材26を連結する。これらの補強板28は、ノズル9の半径方向を向いて環状空間31内に配置されている。ノズル部27は、円筒部材32,33、及びノズル9の周方向に配置された複数の邪魔板(例えば、8個の邪魔板)29を有する。円筒部材32は外部円筒部材23の下端に設けられ、円筒部材33は内部円筒部材26の下端に設けられている。円筒部材32,33は同心円状に配置され、円筒部材33は円筒部材32の内側に位置している。それらの邪魔板29は、円筒部材32と円筒部材33の間に配置され、円筒部材32,33に取り付けられている。ノズル部27は、隣り合う邪魔板29のそれぞれの間に、噴出口34を形成している(図3参照)。邪魔板29は、噴出口形成部材である。邪魔板29は、上端から下端に向かって流線型をしており、周方向における横断面積が下方に向かうに伴って増大する。ノズル9内には、冷却水吸引通路(被駆動流体通路)16が形成される。冷却水吸引通路16は、ノズル9の軸方向においてノズル9を貫通するように設けられ、内部円筒部材26及び円筒部材33の内側に位置する。ノズル9は、冷却水吸引通路16が原子炉圧力容器1の軸方向を向くようにダウンカマ7内に配置される。この配置は実施例2〜5においても適用されている。
【0034】
再循環ポンプ18で昇圧された駆動水10は、分岐管22を介して環状空間31内に供給される。環状空間31内を下降した駆動水10は、複数の邪魔板29によって形成された複数の噴出口(例えば、8個の噴出口)34から、周方向において分断された複数の噴出流25となってベルマウス24に向かって噴出される(図4参照)。周方向において隣り合う噴出流25の相互間には、ギャップ35が形成される。補強板28の周方向における厚みは、環状空間31内を下降する駆動水10の抵抗にならないように必要な強度を確保できる範囲で最小限の厚みとする。
【0035】
複数の噴出流25によって、ダウンカマ7内でノズル9の周囲に存在する冷却水8がベルマウス24内に吸い込まれ、混合器11内に達する。詳細には、それらの噴出流25の発生によって、被駆動水である冷却水8がベルマウス24内に吸い込まれる形態が3つ存在する。第1の形態では、冷却水8が冷却水吸引通路16を通ってベルマウス24内に達する。この形態では、吸引された冷却水8は、それらの噴出流25によって取囲まれる内側領域41に流入する。第2及び第3の形態では、冷却水8は冷却水吸引流路36を通ってベルマウス24内に達する。第2の形態では、冷却水吸引流路36を通った冷却水8が噴出流25の相互間に形成されるギャップ35を通ってベルマウス24内で内側領域41に達する。第3の形態においては、冷却水吸引流路36を通った冷却水8がベルマウス24と噴出流25の間でベルマウス24内に流入する。冷却水吸引通路16を通ってベルマウス24内に流入する冷却水8の流量は、ベルマウス24内に吸引される冷却水8の全流量に対して60%を占めている。冷却水吸引流路36を通ってベルマウス24内に流入する冷却水8の流量は、その全流量のうち残りの40%を占める。この40%の冷却水流量の一部が、ギャップ35を通ってベルマウス24内に達するのである。
【0036】
本実施例は、複数の噴出流25よりも内側の領域に生じる減圧の効果を有効に活用できる。これによって、前述した第1及び第2の形態による冷却水8のベルマウス24への流入が行われ、ベルマウス24に流入する冷却水8の流量が増加する。
【0037】
ノズル部27から噴出される噴出流25は、その表面での摩擦力、及び急激な圧力回復で発生する減圧の効果により、冷却水8をベルマウス24内に吸込む。更に、冷却水吸引通路16が原子炉圧力容器1の軸方向を向いて配置されているため、ダウンカマ7内を下降して冷却水吸引通路16に供給される冷却水8の流力をジェットポンプ20の吸込み力の増大に有効に活用できる。このため、混合器11内に吸引される冷却水8の量を増やすことができる。また、リングヘッダー30の底部(外部円筒部材23の漏斗状筒部)の外面が傾斜しているので、ノズル9は、リングヘッダー30外側でダウンカマ24内を下降する冷却水8を、冷却水吸引流路36からベルマウス24内に吸込み易い構造となっている。これによっても、ベルマウス24内に流入する冷却水8の流量が増加する。以上に述べたジェットポンプ20への冷却水8の吸い込み量の増大は、後述するジェットポンプ20の効率向上に貢献する。
【0038】
本実施例は、ノズル部27に周方向において複数の邪魔板29を配置することによって冷却水吸引通路16の周囲において複数の噴出口34を形成している。これらの噴出口34から噴出される複数の噴出流25は、ノズル9の周方向において、環状に配置され、相互間にそれぞれギャップ35を形成する。冷却水吸引流路36を通った冷却水8は、内側領域41に生じる減圧の効果によって、これらのギャップ35を通って内側領域41に流入してベルマウス24内に導入される。冷却水8はギャップ35を通る際に噴出流25と混合され、また、ギャップ35を通過した冷却水8は冷却水吸引通路16から吸引される冷却水8と混合される。冷却水吸引流路36を通った冷却水8の内側領域41への流入、その冷却水8と噴出流25及び冷却水吸引通路16から吸引された冷却水8との混合促進によって、冷却水吸引流路36を通ってベルマウス24内に流入する冷却水8の流量が、従来ジェットポンプにおけるその流量よりも増大する。本実施例も冷却水吸引通路16から冷却水8が吸引されており、この冷却水8がジェットポンプ20においても混合器11内に流入する。したがって、混合器11内に流入する冷却水8の流量は、従来ジェットポンプにおけるその流量よりも著しく増大する。ジェットポンプ20から吐出される冷却水流量が従来ジェットポンプのその流量よりも著しく増大するので、ジェットポンプ20の効率は従来ジェットポンプのそれよりも高くなる。本実施例のジェットポンプ20の効率は、図5に示すように、M比の著しい増大によって、従来ジェットポンプのそれよりも著しく向上する。図5において、特性Aがジェットポンプ20の効率であり、特性Bが従来ポンプの効率である。
【0039】
補強板28は、環状空間31に供給された高圧の駆動水10によって、外部円筒部材23及び内部円筒部材26が外側に向かって膨らむことを防止している。したがって、冷却水吸引通路16の断面積が減少して、冷却吸引流路16から吸引される冷却水8の流量が減少することを抑制することができる。邪魔板29も、外部円筒部材23及び内部円筒部材26が外側に向かって膨らむことを防止している。邪魔板29の設置により、補強板28を取り除くことも可能である。
【0040】
複数の邪魔板29は、ノズル部27の下端部で周方向に配置され、複数の噴出口34をそれぞれ相互間に形成している。このような邪魔板29は、噴出流25に乱れを生じさせ、スロート部内での冷却水8と噴出流25との混合を促進させる。
【0041】
既設のBWRにおいてジェットポンプのノズルを図1に示すノズル9に交換するだけで、既設のBWRの原子炉圧力容器1内に設置されているジェットポンプをジェットポンプ20に改造することができる。この改造により、既設のBWRのジェットポンプの効率を著しく増大させることができ、既設のBWRにおいて炉心2に供給する冷却水12の流量を著しく増加できる。改造されたジェットポンプ20を有する既設のBWRは、増加幅の大きな増出力にも容易に対応することができる。
【実施例2】
【0042】
本発明の他の実施例である実施例2のジェットポンプを、図8〜図10を用いて以下に説明する。本実施例のジェットポンプ20Aは、ノズル9A、ベルマウス24及び混合器11を有し、実施例1と同様に、原子炉圧力容器1のダウンカマ7内に複数基設置される。ジェットポンプ20Aは、実施例1のジェットポンプ20のノズル9をノズル9Aに替えた構成を有する。分岐管22は、この分岐管22の軸心が、例えば水平方向において、リングヘッダー30の軸心(ノズル9Aの軸心)から離れた位置を向くように、外部円筒部材23に接続されている。例えば、分岐管22の軸心が、外部円筒部材23の接線と実質的に平行になっている。ノズル9Aが邪魔板29を備えていないので、ノズル部27で円筒部材32と円筒部材32の間に形成される噴出口34Aは、連続した一つの環になっている。軸心がノズル9Aの軸心から離れた位置を向いてノズル9Aに接続された分岐管22は、旋回流発生装置である。ノズル9Aの上記した以外の構成はノズル9と同じである。
【0043】
再循環ポンプ18で昇圧された駆動水10は、分岐管22から環状空間31内に流入する。分岐管22の軸心がリングヘッダー30の軸心から離れた位置を向いているため、駆動水10は、環状空間31内で旋回流となり、噴出口34Aからベルマウス24内に向かって旋回しながら噴出される。この駆動水10の噴出流25Aは、図10に示すように、横断面の形状が連続した一つの環になっている。
【0044】
本実施例は、噴出流25Aが旋回しているため、噴出流25Aの表面における摩擦力及び噴出流25Aの旋回に起因する遠心力に基づいて発生する内側領域41におけるより大きな減圧の効果によって、冷却水8を、前述した第1及び第3の形態により混合器11内に効率良く吸込むことができる。噴出流25Aの旋回に起因するそのようなより大きな減圧の効果は、第1及び第3の形態において吸い込まれる冷却水8の流量を、実施例1における第1及び第3の形態でのそれらの各流量よりも増大させることができる。
【0045】
本実施例では、噴出流25Aが環になっているため、冷却水吸引流路36から吸い込まれる冷却水8は、噴出流25Aよりも内側に到達しない。しかしながら、この冷却水8と旋回している噴出流25Aとの混合度合いが、従来ジェットポンプにおける、冷却水吸引流路36から吸い込まれる冷却水とノズルから噴出される噴出流(旋回していない)との混合度合いよりも大きくなる。更に、本実施例における、冷却水吸引通路16から吸い込まれる冷却水8と旋回している噴出流25Aとの混合度合いも、従来ジェットポンプにおける、第2冷却水吸引流路から吸引される冷却水と上記噴出流との混合度合いよりも大きくなる。これらの混合度合いの増大は、ジェットポンプに吸い込まれる冷却水8の流量の増大をもたらす。
【0046】
本実施例におけるジェットポンプ20Aの効率は、以上述べた効果に基づいて従来ジェットポンプのそれよりも著しく増大する。このため、従来ジェットポンプのノズルをノズル9Aと交換する改造により、実施例1と同余殃に、既設のBWRの増出力に容易に達成することができる。ジェットポンプ20Aの効率向上には、実施例1で述べた、ダウンカマ7内を下降して冷却水吸引通路16に供給される冷却水8の流力の有効活用、及びリングヘッダー30の底部の外面の傾斜も貢献している。
【実施例3】
【0047】
本発明の他の実施例である実施例3のジェットポンプを、図11を用いて以下に説明する。本実施例のジェットポンプ20Bは、ノズル9B、ベルマウス24及び混合器11を有し、実施例1と同様に、原子炉圧力容器1のダウンカマ7内に複数基設置される。ジェットポンプ20Bは、実施例2のジェットポンプ20Aのノズル9Aをノズル9Bに替えた構成を有する。分岐管22は、実施例2と同様に、分岐管22の軸心が、例えば水平方向において、ノズル9Bの軸心から離れた位置を向くように、外部円筒部材23に接続されている。ノズル9Bは、ノズル9Aに複数の邪魔板(例えば8個の邪魔板)29を設置した構成を有する。これらの邪魔板29は、実施例1と同様に、円筒部材32と円筒部材33の間に配置される。これらの邪魔板29は、環状空間31内で発生する駆動水10の旋回流の旋回を妨げないように、ノズル9Bの下端に対して同じ方向に傾斜している。隣り合う邪魔板29のそれぞれの相互間に噴射口34がそれぞれ形成される。本実施例は、各噴射口34からそれぞれ噴出流25Bを噴出する。周方向において各噴出流25Bのそれぞれの相互間にはギャップ35が形成される。
【0048】
本実施例は、軸心をノズル9Bの軸心から離れた位置を向くように分岐管22をリングヘッダー30に接続しているので、実施例2で生じる効果を得ることができる。更に、本実施例は、ノズル部27に傾斜した複数の邪魔板29を設けているため、実施例1と同様に第2の形態で吸い込まれる冷却水8の流れが生じる。この冷却水8の流れは、冷却水吸引通路16及びギャップ35を経て内側領域41に達するものである。本実施例は、第2の形態で吸い込まれる冷却水8の流れが生じることによって、実施例1においてその流れによって生じる効果を得ることができる。したがって、本実施例は、第2の形態で吸い込まれる冷却水8の流れが生じることによって得られる効果が実施例2で生じる効果に加味されるため、ジェットポンプの効率を実施例2におけるその効率よりも向上させることができる。本実施例のジェットポンプ20Bを適用した既設のBWRにおける増出力の増大幅を、ジェットポンプ20Aを適用した既設のBWRにおけるその増大幅よりも大きくすることができる。
【実施例4】
【0049】
本発明の他の実施例である実施例4のジェットポンプは、実施例3のジェットポンプにおいて分岐管22の軸心をノズルの軸心と一致するように分岐管22をリングヘッダー30に接続した構成を有する。すなわち、本実施例のジェットポンプは、実施例1のジェットポンプ20において、各邪魔板29を実施例3のように傾斜させた構成を有する。本実施例のジェットポンプは、分岐管22から流入する駆動水10によって環状空間31内に旋回流を発生させることはできない。しかしながら、本実施例のジェットポンプでは、傾斜した複数の邪魔板29によって各噴出口34から噴射されたそれぞれの噴出流25Bは旋回流となり、更に、実施例3と同様に第1、第2及び第3の形態で吸い込まれる冷却水8の流れを生成することができる。このような本実施例のジェットポンプは、従来ジェットポンプよりも効率を向上させることができる。
【実施例5】
【0050】
本発明の他の実施例である実施例5のジェットポンプを、図12〜図14を用いて以下に説明する。本実施例のジェットポンプ20Cは、ノズル9C、ベルマウス24及び混合器11を有し、実施例1と同様に、原子炉圧力容器1のダウンカマ7内に複数基設置される。ジェットポンプ20Cは、実施例1のジェットポンプ20のノズル9をノズル9Cに替えた構成を有する。
【0051】
ノズル9Cは、ノズル9において、邪魔板29が除去され、外部領域と冷却水吸引通路(第1被駆動流体通路)16を連絡する冷却水通路(第2被駆動流体通路)37を形成した構成を有する。ノズル9Cは、外部円筒状部材23A、内部円筒状部材26A及び円筒状部材32A,33Aを含むリング状ヘッダー30Aを有する。外部円筒状部材23Aは、周方向の一部に、幅の狭いスリット(図示せず)を形成している。このスリットは、リング状ヘッダー30(ノズル9C)の半径方向及び軸方向に伸びている。内部円筒状部材26Aは、周方向の一部に、半径方向に伸びる幅の狭いスリット38を形成している。円筒状部材32Aは軸方向に伸びる幅の狭いスリット(図示せず)を形成している。円筒状部材33Aは軸方向に伸びる幅の狭いスリット39を形成している。外部円筒状部材23A及び内部円筒状部材26Aは、それぞれに形成されたスリットを向かい合わせた状態でそれぞれの上端部を結合している。円筒状部材33Aは、スリット39がスリット38と同じ方向を向くようにして内部円筒状部材26Aの下端に結合されている。円筒状部材32Aは、円筒状部材33Aを取囲んで配置され、外部円筒状部材23Aの下端に結合されている。円筒状部材32Aに形成されたスリットは外部円筒状部材23Aに形成されたスリットと同じ方向を向いている。円筒状部材32A,33Aは、ノズル部27Aを構成する。
【0052】
外部円筒状部材23A及び円筒状部材32Aに形成された各スリットは、冷却水通路37における冷却水8の流入口となる。スリット8,39は冷却水通路37における冷却水8の流出口となる。冷却水通路37の両側の側面は、対向する一対の側面板材(図示せず)によって画定される。これらの側面板材は、相互間に間隔を置いて配置され、外部円筒状部材23A、内部円筒状部材26A及び円筒状部材32A,33Aにそれぞれ取り付けられる。内部空間40が、これらの側面板材、外部円筒状部材23A、内部円筒状部材26A及び円筒状部材32A,33Aに取囲まれて形成される。内部空間40は、外部円筒状部材23Aに接続される分岐管22に連絡される。冷却水通路37と内部空間40は、上記した一対の側面板材によって互いに隔離されている。冷却水通路37は、半径方向においてノズル9Cを貫通する冷却水通路である。
【0053】
再循環ポンプ18で昇圧された駆動水10が分岐管22を経て内部空間40に供給される。この駆動水10は、ノズル部27Aに形成された噴出口34Bからベルマウス24内に向かって噴出され、噴出流25Cになる。この噴出流25Cは、図14に示すように、冷却水通路37の部分が欠落した横断面形状を有する。本実施例では、この噴出流25Cによって、ベルマウス24内に流入する冷却水8の流れとして第1及び第3形態のそれぞれの流れが生じる。更に、本実施例では、噴出流25Cによって、ノズル9Cの外側に存在する被駆動水である冷却水8が冷却水通路37及び冷却水吸引通路16を経て内側領域41でベルマウス24内に到達する流れが生じる。
【0054】
まず、冷却水通路37が形成されていないノズル(例えば、邪魔板29が設けられていないノズル9)において、噴出流が噴出している場合で、冷却水吸引通路16内での冷却水8の流動状態について考察する。冷却水通路37が形成されていない場合には、冷却水吸引通路16の流路断面積が狭くなる部分、すなわち、内部円筒部材26と円筒部材33の結合部付近で円筒部材33の内面付近に減圧領域が形成される。この減圧領域が形成されることによって、円筒部材33内での冷却水8の流路断面積が実質的に狭くなる。このため、冷却水吸引通路16を通しての冷却水8の吸引流量が減少する。
【0055】
上記の減圧領域の形成は、内側領域41で発生する減圧の効果を十分に活用していないからである。換言すれば、その内側領域41に流入する冷却水流量が不足しているために、その減圧領域が形成される。円筒部材33の内径を大きくして円筒部材33の内側の流路断面積を大きくし、その部分を流れる冷却水8の流量を増大させることによって減圧領域が消滅する。減圧領域の消滅によって、その冷却水流量は更に増大する。しかしながら、円筒部材33の内径の増大は、ベルマウス24の直径の増大をもたらし、ダウンカマ7の圧力損失が増大するという問題が生じる。この圧力損失の増大は、再循環ポンプ18の容量の増大をもたらす。
【0056】
ダウンカマ7の圧力損失の増大を避けて上記した減圧領域の発生を防ぐために、本実施例は、冷却水通路37を形成しているのである。噴出流25Cが発生すると、ダウンカマ7内の冷却水8の一部は、冷却水通路37を通って冷却水吸引通路16内に到達し、更に減圧効果が大きい内側領域41に達する。このため、内側領域41に到達する冷却水8の流量が増加する。これにより、減圧領域がなくなり、円筒状部材33Aの内側における流路断面積が実質的に増大する。円筒部材33Aの内側を通ってベルマウス24に吸引される冷却水8の流量が更に増大する。
【0057】
本実施例は、圧力損失を増大させることなく、ベルマウス24内に吸引される冷却水8の流量を増加できる。したがって、ジェットポンプ20Cから吐出される冷却水12の流量を、従来ジェットポンプよりも著しく同大できる。ジェットポンプ20Cを設置した既設のBWRは、実施例1と同様に、増出力に容易に対応することができる。
【0058】
なお、複数の邪魔板29を設けて複数の噴出流25のそれぞれの間にギャップ35を形成する実施例1のジェットポンプ20も、ギャップ35を通して噴出流25よりも内側に冷却水8を供給できるため、冷却水吸引通路16内に減圧領域が発生することを防止できる。
【0059】
実施例5において、実施例1と同様に、円筒状部材32Aと円筒状部材33Aの間に複数の邪魔板29を配置してもよい。また、これらの邪魔板29を実施例3のように傾斜させることも可能である。更には、実施例2及び3に冷却水通路37を適用してもよい。実施例5では冷却水通路37をリング状ヘッダー30A及びノズル部27Aの両方にも形成しているが、冷却水通路37はリング状ヘッダー30A及びノズル部27Aのいずれかに形成してもよい。これによって、冷却水8が導かれる内側領域41での減圧効果が大きく、過大な減圧域が発生し、冷却水8が導かれる内側領域41を狭めるものに対して、冷却水通路37は、その減圧域の回復に有効に作用する。この減圧域は、リング状ヘッダー30Aとノズル部27Aの内側の変局下流部で発生する。したがって、冷却水通路37を、リング状ヘッダー30A及びノズル部27Aの両方、または、ノズル部27Aに設けることで有効に作用する。特に過大な減圧域が発生する構造、実施例4などに対しては、減圧効果が大きく、補給水量が多くなることから、リング状ヘッダー30A及びノズル部27Aの両方に冷却水通路37を設けるのが良い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図7に示す実施例1のジェットポンプにおけるノズルの局部の縦断面を含む拡大図である。
【図2】図1に示すノズルの平面図である。
【図3】図1に示すノズルのノズル部を下方から見た構造図である。
【図4】ノズルから噴出された噴出流の、図1のIV−IV断面での形状を示す説明図である。
【図5】実施例1のジェットポンプにおけるM比とこうりるとの関係を示す特性図である。
【図6】図7に示すジェットポンプが適用されるBWRの概略縦断面図である。
【図7】本発明の好適な一実施例である実施例1のジェットポンプの構造図である。
【図8】本発明の他の実施例である実施例2のジェットポンプにおける上部付近の構造図である。
【図9】図8に示すノズルの平面図である。
【図10】ノズルから噴出された噴出流の、図8のX−X断面での形状を示す説明図である。
【図11】本発明の他の実施例である実施例3のジェットポンプにおける上部付近の構造図である。
【図12】本発明の他の実施例である実施例4のジェットポンプにおける上部付近の構造図である。
【図13】図12に示すノズルの平面図である。
【図14】ノズルから噴出された噴出流の、図12のXIV−XIV断面での形状を示す説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1…原子炉圧力容器、2…炉心、6…炉心シュラウド、7…ダウンカマ、8…冷却水、9,9A,9B,9C…ノズル、10…駆動水、11…混合器、16…冷却水吸引通路、18…再循環ポンプ、20,20A,20B,20C…ジェットポンプ、22…分岐管、25,25A,25B,25C…噴出流、27,27A…ノズル部、28…補強板、29…邪魔板、30…リングヘッダー、30A…リング状ヘッダー、31…環状空間、34,34A,34B…噴出口、35…ギャップ、36…冷却水吸引流路、37…冷却水流路、41…内側領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動流体を噴出するノズルと、前記駆動流体の噴出によって吸い込まれる前記ノズルの周囲に存在する被駆動流体及び前記駆動流体を混合し、混合した流体を排出する排出口を有するジェットポンプ本体とを備え、
前記ノズルは、前記被駆動流体が流れる被駆動流体通路を有すると共に、前記被駆動流体通路を取り囲むヘッダー部、及び前記被駆動流体通路を取り囲むノズル部を有し、
前記ヘッダー部内に供給される前記駆動流体が前記ノズル部に供給されるように構成され、
前記ノズル部は、前記被駆動流体通路を取囲んで周方向に間隔を置いて配置された複数の噴出口を有していることを特徴とするジェットポンプ。
【請求項2】
複数の噴出口形成部材を周方向において前記ノズル部内に設け、前記複数の噴出口は各噴出口形成部材の相互間にそれぞれ形成されている請求項1に記載のジェットポンプ。
【請求項3】
前記噴出口形成部材は、前記ノズル部の下端に対して傾斜している請求項2に記載のジェットポンプ。
【請求項4】
駆動流体を噴出するノズルと、前記駆動流体の噴出によって吸い込まれる前記ノズルの周囲に存在する被駆動流体及び前記駆動流体を混合し、混合した流体を排出する排出口を有するジェットポンプ本体とを備え、
前記ノズルは、前記被駆動流体が流れる被駆動流体通路を有すると共に、前記被駆動流体通路を取り囲むヘッダー部、及び前記被駆動流体通路を取り囲むノズル部を有し、
前記ヘッダー部内に前記駆動流体を供給する管路は、前記ノズルの第1軸心と直交する方向において前記管路の第2軸心が前記第1軸心から離れた位置を向くように前記ヘッダー部に接続され、
前記管路から前記ヘッダー部内に供給される前記駆動流体が前記ノズル部に供給されるように構成され、
前記ノズル部は、前記被駆動流体通路を取囲む噴出口を有していることを特徴とするジェットポンプ。
【請求項5】
複数の噴出口形成部材を、周方向において、前記ノズル部の下端に対してそれぞれ傾斜させて前記ノズル部内に設け、複数の前記噴出口が各噴出口形成部材の相互間にそれぞれ形成されている請求項4に記載のジェットポンプ。
【請求項6】
前記被駆動流体通路は前記ノズルの軸方向に伸びている請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のジェットポンプ。
【請求項7】
駆動流体を噴出するノズルと、前記駆動流体の噴出によって吸い込まれる前記ノズルの周囲に存在する被駆動流体及び前記駆動流体を混合し、混合した流体を排出する排出口を有するジェットポンプ本体とを備え、
前記ノズルは、前記被駆動流体が流れる前記ノズルの軸方向に伸びる第1被駆動流体通路を有すると共に、前記第1被駆動流体通路を取り囲むヘッダー部、及び前記第1被駆動流体通路を取り囲むノズル部を有し、
前記ヘッダー部内に供給される前記駆動流体が前記ノズル部に供給されるように構成され、
前記ノズル部は、前記第1被駆動流体通路を取囲む噴出口を有しており、
前記被駆動流体を前記第1被駆動流体通路に導く第2被駆動流体通路を、前記ヘッダー部及び前記ノズル部の少なくとも一つに形成することを特徴とするジェットポンプ。
【請求項8】
複数の噴出口形成部材を周方向において前記ノズル部内に設け、複数の前記噴出口が各噴出口形成部材の相互間にそれぞれ形成されている請求項7に記載のジェットポンプ。
【請求項9】
前記噴出口形成部材は、前記ノズル部の下端に対して傾斜している請求項8に記載のジェットポンプ。
【請求項10】
原子炉容器と、前記原子炉容器内に設置され、前記原子炉容器内に形成される炉心に冷却材を供給する複数のジェットポンプとを備え、
前記ジェットポンプが、請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載されたジェットポンプであることを特徴とする原子炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−82752(P2008−82752A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260687(P2006−260687)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)