説明

ジェットポンプ用簡易ライザブレースクランプ

【課題】原子炉圧力容器(10)内部の入口ライザ(100)又は他の類似の物体が受ける振動のレベルを低減することのできる、装置又はシステムを提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態では、ライザブレース(143)を入口ライザ(100)に溶接する必要性がなくなる。本発明の一実施形態は、ライザブレース(143)を入口ライザ(100)に全体的にクランプする、少なくとも1つのライザブレースクランプ(150)を提供する。装着後は、ライザブレースクランプ(150)は、入口ライザ(100)が受ける振動の振幅を低減、及び/又はその周波数を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的に原子炉圧力容器のいくつかの構成要素を連結する溶接部に関し、より具体的には、それら構成要素間の溶接部を交換するための装置及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉の非限定の例、従来式沸騰水型原子炉(BWR)が、図1〜3に示されている。典型的なBWRは、原子炉圧力容器(RPV)10、RPV10内部に配置された炉心シュラウド30、及び核燃料コア35を含む。炉心シュラウド30は、核燃料コア35を包囲する円筒であり、この核燃料コア35は、炉心シュラウド30内部に配置された複数の燃料棒集合体40を含む。トップガイド45及び炉心板50は、燃料棒集合体40の各々を支持している。
【0003】
炉心シュラウド30とRPV10の間の環状領域は、ダウンカマ環状部25とみなされる。冷却水は、ダウンカマ環状部25を通過して炉心下部プレナム55へと流入する。給水は、給水入口15を介してRPV10に入り、炉心スプレーライン105に隣接する給水スパージャ20によってRPV10内部で円周方向に配水される。次いで、炉心下部プレナム55内の水は、核燃料コア35を通過して上方に流れる。特に、水は燃料棒集合体40に入り、ここで沸騰境界層が生成される。水と蒸気の混合物は、核燃料コア35を出て、シュラウドヘッド65の下の炉心上部プレナム60に入る。次いで、蒸気・水混合物は、シュラウドヘッド65の上のスタンドパイプ70を通過して流れ、水と蒸気を分離する蒸気分離器75に入る。分離された水は、ダウンカマ環状部25へと再循環されて、蒸気流は、発電及び/又は別の工程で使用するために、ノズル110を介してRPV10から出る。
【0004】
図1に示すように、従来型ジェットポンプ組立体85は、一対の入口混合器95を備える。各入口混合器95は、それに溶接されたエルボを有し、このエルボは、入口ライザ100を介して再循環ポンプ(図示せず)からの加圧駆動水を受け入れる。入口混合器95には、入口混合器95の軸の周りに円周上に等角度で分布する5つのノズルの組を備えるものもある。ここで、各ノズルは、ノズル出口において、半径方向及び内側方向にテーパーが付けられている。この先細ノズルは、ジェットポンプ組立体85を付勢する。二次入口開口(図示せず)が、ノズル出口の半径方向外側に位置している。従って、水の噴流がノズルから出るときに、ダウンカマ環状部25からの水は、二次入口開口を介して入口混合器95中に引き込まれ、ここで再循環ポンプからの水との混合が行われる。
【0005】
BWRはまた、冷却剤再循環システムを含み、これは、必要なエネルギー密度を達成するのに必要な、核燃料コア35を通過する強制対流流れをもたらす。この水の一部分は、再循環水出口80を介してダウンカマ環状部25の下端部から引き込まれ、再循環ポンプによって強制されて、再循環水入口90を介して複数のジェットポンプ組立体85中に入る。ジェットポンプ組立体85は、通常、炉心シュラウド30周りに円周方向に分散されており、必要な炉心流れをもたらす。典型的なBWRは、16から24の入口混合器95を有する。
【0006】
通常、各ジェットポンプ組立体85は、少なくとも以下のものを含む。移行ピース120、及びこの移行ピース120から下方にライザエルボ135へと延びる、ライザパイプ130である。ライザエルボ135は、ライザパイプ130を、RPV10の壁に沿った再循環入口90へと連結する。一対の入口混合器95が、移行ピース120から、ポンプデッキ125の穴を覆って装着された一対のディフューザ115へと下方に延びている。ポンプデッキ125は、炉心シュラウド30の底部とRPV10とを連結している。ライザパイプ130は、通常、筒状であり、炉心シュラウド30の壁に平行に、ダウンカマ環状部25内部で垂直に配向されている。ライザエルボ135は、通常、筒状であって、再循環入口90に向って外側に曲がっている。移行ピース120は、ライザパイプ130の頂部において両横方向に延びて、ライザパイプ130の両側の入口混合器95に連結している。入口混合器95は、ライザパイプ130と平行に、ダウンカマ環状部25内で垂直に配向されている。入口混合器95とライザパイプ130との間に位置する拘束ブラケット140は、入口混合器95を横方向に支持する。
【0007】
通常、ライザパイプ130は、ライザパイプ130、及び通常はRPV10の壁である取付け壁149に取り付けられたライザブレース143(例えば、図2に図示されている)によって、RPV10内部で支持、安定化されている。一般的に、ライザブレース143は、ライザパイプ130及び取付け壁149に溶接によって取り付けられる。ライザブレース143は、通常、ヨーク145、及びヨーク145の両端それぞれから、間隔を空けて平行に延びるサイドメンバ147を備える。通常、ヨーク145は、サイドメンバ147間で内向きの曲面を有し、この曲面は、ライザパイプ130の外表面の外部曲率と相補的である。
【0008】
ライザブレース143は、ライザパイプ130がサイドメンバ147間に配置された状態で、ダウンカマ環状部25内に配置されている。ライザブレース143は、通常、内向きの曲面とライザパイプ130の外表面との間の溶接部を介して、ライザパイプ130に取り付けられている。ここで、サイドメンバ147は、ライザパイプ130を概して横切って、ヨーク145から延びており、サイドメンバ147のそれぞれの端部が取付け壁149に取り付けられている。サイドメンバ147の端部は、通常、取付け壁149に溶接されている。代替的に、サイドメンバ147の端部を、限定的ではないが、ブレース、ブロック又はパッドなどの中間構造に溶接して、次いで、この中間構造を取付け壁149に溶接してもよい。通常、各サイドメンバ147は、上脚部と、上脚部の下にそれと間隔を空けて平行に配置された下脚部を備える。ライザブレース143は、一般に、ライザパイプ130を横方向及び半径方向に支持する。さらに、ライザブレース143は、RPV10の作動によって生じる熱膨張差を吸収すると共に、原子炉水循環システムに伴う流体励起振動を吸収するように設計されている。
【0009】
腐食、放射能及び/又は応力に起因する粒界応力腐食割れ(IGSCC)が、RPV10のジェットポンプ組立体85のライザブレース143とライザパイプ130の間の溶接部において発生することがある。ライザブレース143とライザパイプ130の間の溶接部において、IGSCC又はその他の理由で引き起こされた割れは、ライザブレース143の励起周波数を超える再循環ポンプの羽根通過周波数から生ずる機械的疲労に対する限界寸法にまで成長する可能性がある。共振を避けるために、ライザブレース143の固有振動数を、(いかなるポンプ速度においても)再循環ポンプの羽根通過周波数に近付けるべきではない。再循環ポンプの羽根通過周波数がライザブレース143の固有振動数に等しいか、又はそれを超えると、場合によってはライザブレース143が共振状態になり、ジェットポンプ組立体85の損傷につながる可能性がある。
【0010】
ライザパイプとライザブレースの間の溶接部を機械的に強化するためのクランプ装置が、Butlerへの米国特許第7185798B2号に開示されている。この場合には、クランプ装置は、ライザブレースとライザパイプの間の溶接連結を増強する。ジェットポンプ組立体85のライザブレースの剛性を向上させるクランプ装置がJensenへの米国特許第6647083B1号に開示されている。この場合には、クランプ装置はライザブレースのサイドメンバに適用されて、振動に曝されるサイドメンバの部分を短くする。クランプ装置は、ライザパイプには取り付けられず、またライザブレースとライザパイプの間の溶接連結を強化しない。
【0011】
沸騰水型原子炉のジェットポンプ組立体に使用される様々なクランプが、Wivaggへの米国特許第6463114B1号、Erbesへの米国特許第6490331B2号、Erbesらへの米国特許第6450774B1号、Deaverらへの米国特許第6086120号及び第6053652号、ならびにDeaverへの米国特許第6108391号によって提示されている。Wivaggの特許は、ジャッキ装置と合せて使用されて、入口混合器の外周の周りに溶接された既存のジャッキねじを拘束して、拘束ブラケット内部で入口混合器を横方向に拘束するクランプを開示している。Erbesの(’331)特許は、入口混合器95と拘束ブラケットを緊密に嵌め合わせるためのばねクランプに関する。Erbesらの(’774)特許は、入口混合器をディフューザに結合する摺動型継手上に設置されるクランプを開示している。このクランプは、ディフューザを圧搾して、ディフューザに楕円変形を与えるのに使用される。Deaverらの(’120及び’652)特許は、ジェットポンプ組立体のライザの下部を支持するためのクランプ装置を開示している。このクランプ装置は、エルボクランプ、ライザクランプ、及びエルボクランプとライザクランプを結合するブリッジを備える。このライザクランプは、ライザパイプの両側に配置するための一対の脚部と、脚部同士を剛に連結して固定する背面部分とを含む。Deaverの(’391)特許は、上部及び下部のクランプの間にライザエルボの外端を受け止める上部及び下部のクランプ要素を有するクランプに関する。
【0012】
ライザパイプ130が受ける振動を減衰するための、現在知られている装置、方法及びシステムはいくつかの問題を生じる可能性がある。現在知られている解決策は、既存の溶接部との再溶接又は一体化を行うことを伴い、これらは、繰返し破壊につながる可能性がある。また、これらには、一般に、長い装着時間が必要であり、作業者をより長期間、放射能に曝すことになる。
【0013】
上記の考察に基づくと、原子力施設のオペレータは、ジェットポンプ組立体85のライザパイプ130とライザブレース143の間の連結を強化する装置及びシステムを必要とすることがある。このような装置及びシステムは、ライザパイプ130とライザブレース143の間の溶接部が不要でなくてはならない。このような装置及びシステムは、ライザパイプ130が受ける振動のレベルを低減しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第6053652号
【特許文献2】米国特許第6086120号
【特許文献3】米国特許第6108391号
【特許文献4】米国特許第6450774号
【特許文献5】米国特許第6463114号
【特許文献6】米国特許第6490331号
【特許文献7】米国特許第6647083号
【特許文献8】米国特許第7,185,798号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、原子力圧力容器のいくつかの構成要素間の溶接部を交換するための装置及びシステムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一実施形態は、ライザブレースをジェットポンプ組立体の入口ライザと一体化するための装置において、前記入口ライザは中心縦方向軸を含み、前記ライザブレースは、前記入口ライザの一部分と係合するヨークから延びる、第1及び第2のサイドメンバを含み、該第1及び第2のサイドメンバは、前記入口ライザの両側で、前記中心縦方向軸に対して横方向に延びる、装置であって、a)前記ライザブレースの頂面に装着可能な第1及び第2の上部クランプアームであって、該第1の上部クランプアームの側面は該第2の上部クランプアームの側面に向き合って位置し、該第1及び第2の上部クランプアームの側面が前記入口ライザの外表面と係合する、第1及び第2の上部クランプアームと、b)前記ライザブレースの底面に装着可能な第1及び第2の下部クランプアームであって、該第1の下部クランプアームの側面は該第2の下部クランプアームの側面に向き合って位置し、該第1及び第2の下部クランプアームの側面が前記入口ライザの外表面と係合する、第1及び第2の下部クランプアームと、c)前記上部クランプアーム及び前記下部クランプアームを水平に連結する上部ピンチボルト組立体及び下部ピンチボルト組立体であって、該上部ピンチボルト組立体は、前記第1の上部クランプアームを前記第2の上部クランプアームに連結し、該下部ピンチボルト組立体は、前記第1の下部クランプアームを前記第2の下部クランプアームに連結する、上部ピンチボルト組立体及び下部ピンチボルト組立体と、d)前記上部クランプアーム及び前記下部クランプアームを垂直に連結する、第1及び第2のヒンジボルト組立体であって、該第1及び第2のヒンジボルト組立体が前記上部クランプアーム及び前記下部クランプアームを垂直方向に連結した後に、前記ライザブレースが、前記上部及び下部のクランプアームの間に位置する、第1及び第2のヒンジボルト組立体とを備え、前記ピンチボルト組立体及び前記ヒンジボルト組立体の動作によって、前記入口ライザが前記ライザブレースに固定され、前記入口ライザが受ける振動のレベルを低減することが可能になる、装置である。
【0017】
本発明の別の実施形態は、原子力発電所の原子炉圧力容器(RPV)内部の構造に一体化された対象物が受ける振動のレベルを減衰させるシステムにおいて、a)前記RPVのジェットポンプ組立体の入口ライザが受ける振動のレベルを減衰させるライザブレースであって、前記入口ライザが中心縦方向軸を有し、前記ライザブレースがヨークから延びる第1及び第2のサイドメンバを備え、前記ヨークが前記入口ライザの外径と係合し、前記第1及び第2のサイドメンバが前記入口ライザの反対側に横方向に延びる、ライザブレースと、b)前記ライザブレースの上面に装着可能な第1及び第2の上部クランプアームであって、前記第1の上部クランプアームの側面が前記第2の上部クランプアームの側面と対向し、前記第1及び第2の上部クランプアームの各側面が前記入口ライザの外径と係合して、それを部分的に包囲する、第1及び第2の上部クランプアームと、c)前記ライザブレースの下面に装着可能な第1及び第2の下部クランプアームであって、前記第1の下部クランプアームの側面が前記第2の下部クランプアームの側面と対向し、前記第1及び第2の下部クランプアームの側面が前記入口ライザの外径と係合して、それを部分的に包囲する、第1及び第2の下部クランプアームと、d)前記上部クンラプアーム及び前記下部クランプアームを水平に連結する上部ピンチボルト組立体及び下部ピンチボルト組立体であって、前記上部ピンチボルト組立体は、前記第1の上部クンラプアームを前記第2の上部クランプアームと連結し、前記下部ピンチボルト組立体は、前記第1の下部クランクアームと前記第2の下部クランクアームを連結する、上部ピンチボルト組立体及び下部ピンチボルト組立体と、前記上部クンラプアーム及び前記下部クランプアームを垂直に連結する第1及び第2のヒンジボルト組立体であって、前記ライザブレースは、前記上部クランプアーム及び前記下部クランプアームの間の支えであり、前記ピンチボルト組立体及び前記ヒンジボルト組立体の動作によって前記入口ライザが前記ライザブレースに固定される、第1及び第2のヒンジボルト組立体とを備える、システムである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態がその内部で動作する沸騰水型原子炉の概略部分断面図である。
【図2】図1の沸騰水型原子炉のジェットポンプ組立体部分を示す概略図である。
【図3】図2のジェットポンプ組立体の概略側方部分断面図である。
【図4】本発明の一実施形態によるライザブレースクランプの一実施形態の概略部分等角分解組立図である。
【図5A】本発明の一実施形態による、入口ライザ上に装着されたライザブレースクランプの概略斜視図である。
【図5B】本発明の一実施形態による、入口ライザ上に装着されたライザブレースクランプの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書において、ある用語は便宜上でのみ使用することがあり、本発明に対する限定として解釈すべきではない。例えば、「上方」、「下方」、「左」、「前」、「右」、「水平」、「垂直」、「上流」、「下流」、「前方」、「後方」などの単語は、単に、図における構成を説明するものである。実際に、構成要素は任意の方向に配向してもよく、従ってその用語は、別段の指定がない限り、そのような変形形態を包含するものと理解されたい。
【0020】
本明細書において使用する場合には、単数で記載されて、「a」又は「an」が先行する要素又は段階は、複数の要素又は段階を除外することが明白に記載されていない限り、それらを除外するものではないことを理解されたい。さらに、本発明の「一実施形態」への言及は、記載された特徴を実装するその他の実施形態を除外することを意図するものではない。
【0021】
以下の考察は、RPV10のジェットポンプ組立体85が組み込まれた本発明の一実施形態に注目する。本発明のその他の実施形態は、振動の減衰及び/又は周波数変更を必要とするその他のシステムを組み込むこともできる。
【0022】
本発明は、RPV10内部の入口ライザ100又はその他の類似の物体が受ける振動のレベルを低減することのできる装置又はシステムの形態をとる。本発明の一実施形態は、ライザブレース143を入口ライザ100に溶接することを不要にする。本発明の一実施形態は、全体的に、ライザブレース143を入口ライザ100にクランプする少なくとも1つのライザブレースクランプ150を提供する。装着後、ライザブレースクランプ150は、入口ライザ100が受ける振動の振幅を低減し、且つ/又はその周波数を変更することができる。
【0023】
図を再び参照すると、様々な数字は、複数の図を通して同一の部品を表わしている。図2及び3は、RPV10の典型的なジェットポンプ組立体85の概略等角図及び概略側面図である。図2は、図1の沸騰水型原子炉のジェットポンプ組立体85部分を示す、概略図である。図3は、図2のジェットポンプ組立体85の概略側方部分断面図である
以上の考察のように、RPV10のジェットポンプ組立体85は、一般に、RPV10と炉心シュラウド30の間に位置するダウンカマ環状部25内に配置されている。一般に、ジェットポンプ組立体85は、移行ピース120と、移行ピース120から下方にRPV10の壁の外部に沿った再循環入口90へと延びる入口ライザ100と、移行ピース120から下方に、炉心シュラウド30の底部とRPV10を連結するポンプデッキ125の穴を覆って装着された一対のディフューザ115へと延びる一対の入口混合器95とを備える。入口ライザ100は、一般に、炉心シュラウド30の壁と平行に、ダウンカマ環状部25内部で垂直且つ下方に延びる筒状のライザパイプ130と、入口ライザ100の底部から下方に延びて、再循環入口90の方向に外側に曲がる筒状ライザエルボ135とを含む。入口ライザ100は、普通は円筒状且つ筒状であり、移行ピース120とエルボ135の間に縦方向に直線の構造を有する。エルボ135の外端部は、再循環入口90内の熱スリーブと連結することができる。移行ピース120は、入口ライザ100の頂部で横向き両方向に延びて、入口ライザ100の両側の入口混合器95と連結することができる。入口混合器95は、通常、入口ライザ100に平行に、ダウンカマ環状部25内部で垂直方向に配向される。拘束ブラケット140は、入口混合器95と入口ライザ100の間に取り付けられて、入口混合器95を横方向に支持することができる。
【0024】
ライザブレース143は、ダウンカマ環状部25の領域内の入口ライザ100を支持、安定化することができる。ライザブレース143はまた、入口ライザ100をRPV10の取付け壁149と一体化することもできる。ライザブレース143の一実施形態は、全体的に、U形構造を有する。ここで、ライザブレース143は、ヨーク145ならびに第1及び第2のサイドメンバ147を備えてもよく、サイドメンバ147は、ヨーク145の両端部から同一方向に、間隔を空けて平行に延びて、それぞれのサイドメンバ端部147で終端する。ライザブレース143の周囲又は接触面積には、概してU形構造の外周部分、外周部分内の該してU形構造の内周部分、及び外周部分と内周部分とを連結する末端周辺部分を含めてもよい。
【0025】
本発明の一実施形態は、入口ライザ100とライザブレース143を連結する役割をするライザブレースクランプ150を提供する。図示されたように、例えば図5において、一実施形態でのライザブレースクランプ150は、ライザブレース143の周りに嵌まり、それを入口ライザ100にクランプすることができる。
【0026】
図4は、本発明の一実施形態によるライザブレースクランプ150の一実施形態の概略部分等角分解組立図である。本質的に、ライザブレースクランプ150の一実施形態は、複数アームを含む。これらのアームは、垂直ボルト及び水平ボルトによって接合される。この配設によって、ライザブレースクランプ150は、溶接の必要なく、ライザブレース143を入口ライザ100にクランプすることが可能になる。
【0027】
図4に示すように、本発明の一実施形態は、以下の構成要素、すなわち、右上及び右下2つの右クランプアーム(155)と、左上及び左下2つの左クランプアームと、各々がヒンジ締結具170、ヒンジボルト175、シートナット195、ブッシュ200、及びブッシュインサート205を含んでもよい、2つのヒンジボルトアセンブリと、各々がピンチ締結具160、ピンチボルト180、及びワッシャ190を含んでもよい、2つのピンチボルト組立体とを備える。
【0028】
本発明の一実施形態においては、右クランプアーム155は、左クランプアーム185の鏡像であり、またその逆であるとみなしてもよい。アーム155、185は、ライザブレース143上の2つの別個の場所に装着してもよい。上部アーム155、185は、図5に示すように、ライザブレース143の頂面に装着してもよい。下部アーム155、185は、やはり図5に示すように、ライザブレース143の下面に装着してもよい。
【0029】
図5に示すように、装着後、アーム155、185はライザブレース143及び入口ライザ100を包囲する。本発明の一実施形態において、ライザブレースクランプ150は、水平及び垂直の自由度を有してもよい。水平の自由度は、ピンチボルト組立体によって制御することができる。ここで、ピンチボルト180は、それぞれ、左右のクランプアーム155、185を互いに引き寄せるクランプ力を提供することができる。ヒンジボルト組立体は、垂直の自由度を制御することができる。ヒンジボルト組立体175は、それぞれ、上部及び下部クンラプアーム155、185を互いに引き寄せるクランプ力を提供することができる。
【0030】
本発明の一実施形態において、クランプアーム155、185の一端には、ピンチボルト180が貫通して摺動することを可能にする水平穴を含めてもよい。この開口は、穴、スロット、その他の形状をしていてもよい。ピンチボルト180の一実施形態には、回転防止機能として働くキーを含めてもよい。補修ブレースクランプ150を組み立てる際に、このキーによってユーザは、ピンチボルト180を固定位置に保持するためのツールを使用する必要なく、ピンチ締結具160を回転することが可能になる。前記の開口には、クランプアーム155、185のキーと対合するためのスロットを含めてもよい。
【0031】
水平開口の一部分には、クランプアーム155、185の外側表面に位置するボス又は類似の表面を含めてもよい。ボスは、一般に、ピンチボルト組立体のワッシャ190を受ける役割をする。
【0032】
本発明の一実施形態には、入口ライザ100の外表面と係合する接触パッド165を設けてもよい。この接触パッド165は、限定ではないが、例えば図4に示すように、水平開口の後部に隣接して一体化してもよい。
【0033】
本発明の一実施形態においては、クランプアーム155、185の反対端には、ヒンジボルト175が貫通して摺動することを可能にする垂直開口を含めてもよい。この開口は、穴、スロット、その他の形状としてもよい。垂直開口の向きは、図4に示すように、水平開口から約90°にしてもよい。
【0034】
以上の考察のように、ヒンジボルト組立体には、ヒンジ締結具170、シートナット195、ブッシュ200、及びブッシュインサート205を含めてもよい。ヒンジ締結具170は、一般に、ライザブレースクランプ150の垂直自由度を固定する。ヒンジ締結具170の一部分には、RPV10の運転中にヒンジボルト175が緩むのを防止するために使用する、圧着カラー(crimp collar)等を含めてもよい。垂直開口の側部は、ブッシュ200の表面と対合するように成形してもよい。ブッシュインサート205は、ブッシュ200内部でヒンジボルト175を位置決めする役割を果たすことができる。ヒンジボルト175の外部部分には、ブッシュインサート205の内部部分と対合することができる溝又はスロットを含めてもよい。この溝又はスロットによって、ヒンジ組立体の内部、より詳細にはヒンジ締結具の内部で、ヒンジボルト175の向きを決めることが可能になる。
【0035】
図5A及び5B、まとめて図5は、本発明の一実施形態による、ライザブレース143及び入口ライザ100上に装着されたライザブレースクランプの等角図を示す概略図である。具体的には、図5Aは、ライザブレース143の後部等角図を示し、図5Bは、ライザブレース143の前部等角図を示す。
【0036】
図5Aは、ライザブレースクランプ150を装着するためにライザブレース143を修正する方法も示している。本発明の一実施形態においては、ヨーク145に隣接するライザブレース143の後部は、ヒンジボルト175が貫通して摺動することができるように修正してもよい。これによって、ライザブレースクランプ150は、ライザブレース143の外表面に対して垂直自由度を剛直に固定することが可能となる。
【0037】
図5Bは、クランプアーム155、185を、ライザブレースクランプ150が入口ライザ100の部分をほぼ包囲できる形状にする方法を示している。図5Bはまた、ライザベースクランプ150の一実施形態の全体寸法を、小さい設置面積ですむようにする方法を示している。このことは、設置後に追加のスペースを使わないという利点がある。
【0038】
本発明の一実施形態の構成要素は、ライザブレースクランプ150が暴露されることのある動作環境に耐えることのできる任意の材料で形成することができる。
【0039】
使用に際して、ライザブレースクランプ150は、以前の溶接部の場所において、入口ライザ100及びライザブレース143の周りにクランプすることができる。完全に係合すると、ライザブレースクランプ150は、入口ライザ100の周りに十分なクリアランスをもたらすことができる。ライザブレースクランプ150は、入口ライザ100が受ける振動を低減することもできる。
【0040】
本発明を、わずかな数の実施形態について、かなり詳細に示して説明したが、開示した実施形態に対して、特に前述の教示に照らせば、本発明の実質的に新規な教示と利点から逸脱することなく、様々な修正、除外、及び追加を行うことができるため、本発明を前記の実施形態に限定するものではないことを、当業者なら理解されたい。従って、そのようなすべての修正、除外、追加及び均等物を、添付の請求項により定義される本発明の趣旨と範囲内に含めることを意図するものである。例えば、その限定ではないが、本発明の一実施形態は、i)異なる振動モードを導入すること、ii)管、ケーブル、ワイヤ、又はその他の類似の対象物を、別個の構造又はその他の対象物から一定距離だけ離して固定すること、又はiii)圧縮負荷を前記の対象物の少なくとも1つにかけることに用いることができる。
【符号の説明】
【0041】
10 原子炉圧力容器(RPV)
15 給水入口
20 給水スパージャ
25 ダウンカマ環状部
30 炉心シュラウド
35 核燃料コア
40 燃料棒集合体
45 トップガイド
50 炉心板
55 炉心下部プレナム
60 炉心上部プレナム
65 シュラウドヘッド
70 スタンドパイプ
75 蒸気分離器
80 再循環水出口
85 ジェットポンプ組立体
90 再循環水入口
95 入口混合器
100 入口ライザ
105 炉心スプレーライン
110 ノズル
115 ディフューザ
120 移行ピース
125 ポンプデッキ
130 筒状ライザパイプ
135 筒状ライザエルボ
140 拘束ブラケット
143 ライザブレース
145 ヨーク
147 サイドメンバ
149 取付け壁
150 ライザブレースクランプ
155 アーム、上部クランプアーム
165 接触パッド
170 ヒンジ締結具
175 ヒンジボルト組立体
180 ピンチボルト組立体
185 アーム、下部クランプアーム
190 ワッシャ
200 ブッシュ
205 ブッシュインサート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライザブレース(143)をジェットポンプ組立体(85)の入口ライザ(100)と一体化するための装置において、前記入口ライザ(100)は中心縦方向軸を含み、前記ライザブレース(143)は、前記入口ライザ(100)の一部分と係合するヨーク(145)から延びる、第1及び第2のサイドメンバ(147)を含み、該第1及び第2のサイドメンバ(147)は、前記入口ライザ(100)の両側で、前記中心縦方向軸に対して横方向に延びる、装置であって、
a)前記ライザブレース(143)の頂面に装着可能な第1及び第2の上部クランプアーム(155)であって、該第1の上部クランプアーム(155)の側面は該第2の上部クランプアーム(155)の側面に向き合って位置し、該第1及び第2の上部クランプアーム(155)の側面が前記入口ライザ(100)の外表面と係合する、第1及び第2の上部クランプアームと、
b)前記ライザブレース(143)の底面に装着可能な第1及び第2の下部クランプアーム(185)であって、該第1の下部クランプアーム(185)の側面は該第2の下部クランプアーム(185)の側面に向き合って位置し、該第1及び第2の下部クランプアーム(185)の側面が前記入口ライザ(100)の外表面と係合する、第1及び第2の下部クランプアームと、
c)前記上部クランプアーム(155)及び前記下部クランプアーム(185)を水平に連結する上部ピンチボルト組立体(180)及び下部ピンチボルト組立体(180)であって、該上部ピンチボルト組立体(180)は、前記第1の上部クランプアーム(155)を前記第2の上部クランプアーム(155)に連結し、該下部ピンチボルト組立体(180)は、前記第1の下部クランプアーム(185)を前記第2の下部クランプアーム(185)に連結する、上部ピンチボルト組立体(180)及び下部ピンチボルト組立体(180)と、
d)前記上部クランプアーム(155)及び前記下部クランプアーム(185)を垂直に連結する、第1及び第2のヒンジボルト組立体(175)であって、該第1及び第2のヒンジボルト組立体(175)が前記上部クランプアーム(155)及び前記下部クランプアーム(185)を垂直方向に連結した後に、前記ライザブレース(143)が、前記上部クンラプアーム(155)及び前記下部クランプアーム(185)の間に位置する、第1及び第2のヒンジボルト組立体(175)とを備え、
前記ピンチボルト組立体(180)及び前記ヒンジボルト組立体(175)の動作によって、前記入口ライザ(100)が前記ライザブレース(143)に固定され、前記入口ライザ(100)が受ける振動のレベルを低減することが可能になる、装置。
【請求項2】
前記ピンチボルト組立体(180)が、ピンチボルト及びピンチ締結具を備える、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記ピンチボルトの外径がキーを含む、請求項2記載の装置。
【請求項4】
各上部クンラプアーム(155)及び各下部クランプアーム(185)が、前記ピンチボルト(180)が通過することを可能にする、ピンチボルト開口を含む、請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記ピンチボルト(180)開口が、キーと対合するためのスロットを備える、請求項4記載の装置。
【請求項6】
各ヒンジボルト組立体(175)が、ヒンジボルト及びヒンジ締結具を含む、請求項4記載の装置。
【請求項7】
ライザブレース(143)は、各ヒンジボルトが通過することを可能にすると共に、上部クランプアーム(155)及び下部クランプアーム(185)が前記ライザブレース(143)を前記入口ライザ(100)に固定することを可能にする、ヒンジボルト開口を含む、請求項6記載の装置。
【請求項8】
各クランプアーム(155、185)の一部分と前記入口ライザ(100)の間の係合面を提供する接触パッド(165)をさらに備える、請求項1記載の装置。
【請求項9】
前記ピンチボルト開口は、水平に配向されて、各クランプアーム(155、185)の後端に位置する、請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記ヒンジボルト開口は、垂直に配向されて、各クランプアーム(155、185)それぞれの上の前記ピンチボルト開口の反対端に位置する、請求項9記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公開番号】特開2010−286484(P2010−286484A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129512(P2010−129512)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(508177046)ジーイー−ヒタチ・ニュークリア・エナージー・アメリカズ・エルエルシー (101)
【氏名又は名称原語表記】GE−HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC