説明

ジェットポンプ

【課題】インレットミキサとディフューザとの接続部における摩耗の発生を防止することができるジェットポンプを提供する。
【解決手段】再循環ポンプからの冷却水を導くライザ管11と、このライザ管11から分岐接続した一対のインレットミキサ13と、これら一対のインレットミキサ13にそれぞれ接続したディフューザ15とを備えたジェットポンプ10において、インレットミキサ13とディフューザ15との接続部に弾性体(例えば複数の板ばね27)を設ける。これにより、冷却水の流れの影響によるインレットミキサ13の振動を吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉圧力容器とシュラウドとの間に設置される冷却水循環用のジェットポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉は、一般に、原子炉圧力容器内に設置されたシュラウドと、このシュラウドの内部に格納された炉心と、シュラウドの上部に配設された気水分離器と、この気水分離器のさらに上部に配設された蒸気乾燥器とを備えている。また、原子炉圧力容器とシュラウドとの間(いわゆるダウンカマ部)には、例えば複数のジェットポンプが配設されており、これらジェットポンプは、再循環ポンプから供給された冷却水を周囲の冷却水と混合して噴出し、炉心に供給するようになっている。
【0003】
ジェットポンプは、一般に、再循環ポンプからの冷却水を上方に導くライザ管と、このライザ管の上端のトランジションピースから分岐接続され、冷却水を下方に導く一対のインレットミキサと、これら一対のインレットミキサにそれぞれ設けられ、ライザ管から導入した冷却水の流れによって周囲の冷却水を吸引し混合する駆動ノズルと、インレットミキサにそれぞれ接続され、冷却水を噴出するディフューザとを備えている。インレットミキサは、ライザ管及びディフューザに対し着脱可能な構造となっており、冷却水の流れの影響による振動を受けやすくなっている。
【0004】
そこで、インレットミキサの振動防止を目的として、例えば、インレットミキサにおける上部ブラケットと下部ブラケットとの間に取り付けられたスタッドボルトと、このスタッドボルトに係留され、上方向に向かって厚みが増すテーパ形状のウェッジ(くさび)とを有するくさび機構が提唱されている(例えば、特許文献1参照)。この従来技術では、インレットミキサは、ライザ管のライザブラケットに挿通されるとともに、ウェッジのテーパ部がライザブラケットに接触して支持され、またライザブラケットに設けられインレットミキサの径方向に可動する2つの位置決めボルトで支持されるようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−347437号公報(第4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術には以下のような改善の余地があった。
上記くさび機構のウェッジは経年とともに摩耗するので、ウェッジを交換する必要が生じる。ところが、ウェッジを交換するまでは、インレットミキサの振動防止能力が若干ながらも低下するので、インレットミキサとディフューザとの接続部に摩耗が生じる可能性があった。
【0007】
本発明の目的は、インレットミキサとディフューザとの接続部における摩耗の発生を防止することができるジェットポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、再循環ポンプからの冷却水を導くライザ管と、前記ライザ管から分岐接続した一対のインレットミキサと、前記一対のインレットミキサにそれぞれ接続したディフューザとを備えたジェットポンプにおいて、前記インレットミキサと前記ディフューザとの接続部に弾性体を設ける。これにより、冷却水の流れの影響によるインレットミキサの振動を吸収することができ、インレットミキサとディフューザとの接続部における摩耗の発生を防止することができる。
【0009】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記弾性体は、前記インレットミキサのアダプタの外周側に設けた板ばねである。
【0010】
(3)上記(2)において、好ましくは、前記ディフューザのカラーの内周側に前記板ばねが挿嵌する溝を形成する。
【0011】
(4)上記(1)において、好ましくは、前記弾性体は、前記ディフューザのカラーの内周側に設けた板ばねであり、前記インレットミキサのアダプタの外周側に前記板ばねが挿嵌する溝を形成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、インレットミキサとディフューザとの接続部における摩耗の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の適用対象である沸騰水型原子炉の全体構造を表す断面図である。
【0014】
この図1において、沸騰水型原子炉は、原子炉圧力容器1内に設置されたシュラウド2と、このシュラウド2の内部に格納された炉心3と、シュラウド2の上部に配設された気水分離器4と、この気水分離器4のさらに上部に配設された蒸気乾燥器5とを備えている。炉心3には、上部格子板6と炉心支持板7とで支持された複数の燃料集合体(図示せず)が格子状に配置され、これら燃料集合体の間には複数の十字型制御棒8が挿抜可能に配置されている。
【0015】
原子炉圧力容器1とシュラウド2との間(いわゆるダウンカマ部)9には複数のジェットポンプ10が配設されており、これらジェットポンプ10は、再循環ポンプ(図示せず)から供給された冷却水と周囲から吸引した冷却水とを混合して炉心3の下部に噴出させ、炉心3に供給するようになっている。そして、炉心3内に流入した冷却水は、炉心3内の燃料集合体に備えられた燃料棒の核分裂性物質の核分裂反応により加熱されて沸騰し、水と蒸気の二相混合流となる。その後、気水分離器4によって水と分離された蒸気は、蒸気乾燥器5で乾燥され、圧力容器1の主蒸気ノズル(図示せず)から流出してタービン(図示せず)に供給されるようになっている。
【0016】
図2は、上記ジェットポンプ10の全体構造を表す正面図であり、図3は、本実施形態におけるインレットミキサとディフューザとの接続部の詳細構造を表す分解図である。
【0017】
これら図2及び図3、前述の図1において、ジェットポンプ10は、再循環ポンプからの冷却水を上方に導くライザ管11と、このライザ管11の上端のトランジションピース12から分岐接続され、冷却水を下方に導く一対のインレットミキサ13と、これら一対のインレットミキサ13にそれぞれ設けられ、ライザ管11から導入した冷却水の流れによって周囲の冷却水を吸引し混合する駆動ノズル14と、一対のインレットミキサ13にそれぞれ接続され、炉心3の下部に冷却水を噴出するディフューザ15とを備えている。
【0018】
ライザ管11は、原子炉圧力容器1の再循環水入口ノズル16に溶接されて接続され、原子炉圧力容器1の内壁に設けられたライザブレース17に支持されている。ディフューザ15は、シュラウドサポートプレート18に溶接され支持されている。
【0019】
インレットミキサ13における上部ブラケット19と下部ブラケット20との間にはスタッドボルト21が取り付けられ、このスタッドボルト21には、上方向に向かって厚みが増すテーパ状のウェッジ(くさび)22が係留されている。そして、インレットミキサ13は、ライザ管11のライザブラケット23に挿通されるとともに、ウェッジ22のテーパ部がライザブラケット23に支持され、またライザブラケット23に設けられインレットミキサ13の径方向に可動する2つの位置決めボルト(図示せず)で支持されている。また、インレットミキサ13は、ライザ管11及びディフューザ15に着脱可能な構造となっており、下端部(アダプタ24)はディフューザ15のカラー25に差し込み接続され、上端部はクランプ構造のビーム(図示せず)によりトランジションピース12に押さえ付けられ接続されている。
【0020】
そして、本実施形態の大きな特徴として、インレットミキサ13のアダプタ24の外周側には、シール効果を高めるための複数の周方向の溝を有するシール部26が設けられており、このシール部26の上方には、径方向外側に向けられた板ばね27が周方向に複数配設されている。なお、板ばね27は、溶接又は機械締結により固定されている。
【0021】
以上のように構成された本実施形態においては、インレットミキサ13をディフューザ15に差し込み接続したときに変形した板ばね27の径方向弾性力により、冷却水の流れの影響によるインレットミキサ13の振動を吸収することができ、インレットミキサ13とディフューザ15との接続部における摩耗の発生を防止することができる。また、例えば既設のジェットポンプに本実施形態を適用する場合は、インレットミキサのみを交換すればよく、ディフューザを交換する必要をなくすことができる。また、インレットミキサ13は機械締結方式で固定するので、その交換作業も従来通りに行うことができる。
【0022】
本発明の他の実施形態を図4により説明する。本実施形態は、インレットミキサのアダプタの外周側に板ばねを設け、ディフューザのカラーの内周側に板ばねが挿嵌する溝を形成した実施形態である。
【0023】
図4は、本実施形態におけるインレットミキサとディフューザとの接続部の詳細構造を表す分解図である。この図4において、上記一実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0024】
本実施形態では、インレットミキサ13のアダプタ24の外周側には、シール部28の上方に、径方向外側に弾性力を付与する板ばね29が周方向に複数配設されている。なお、板ばね29は、溶接又は機械締結により固定されている。ディフューザ15のカラー25の内周側には、複数の板ばね29がそれぞれ挿嵌する複数のガイド溝30が形成されている。
【0025】
以上のように構成された本実施形態においては、インレットミキサ13をディフューザ15に差し込み接続したときにガイド溝30に挿嵌されて変形した板ばね29の径方向弾性力により、冷却水の流れの影響等によるインレットミキサ13の振動を吸収することができ、インレットミキサ13とディフューザ15との接続部における摩耗の発生を防止することができる。また、本実施形態においては、インレットミキサ13の板ばね29がディフューザ15のガイド溝30に挿嵌するので、インレットミキサ13の回転振動に対する抑制効果をいっそう得ることができる。
【0026】
本発明のさらに他の実施形態を図5により説明する。本実施形態は、ディフューザのカラーの内周側に板ばねを設け、インレットミキサのアダプタの外周側に板ばねが挿嵌する溝を形成した実施形態である。
【0027】
図5は、本実施形態におけるインレットミキサとディフューザとの接続部の詳細構造を表す分解図である。なお、この図5において、上記実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0028】
本実施形態では、ディフューザ15のカラー25の内周側には、径方向内側に向けられた板ばね31が周方向に複数設けられている。なお、板ばね31は溶接又は機械締結により固定されている。インレットミキサ13のアダプタ24の外周側には、シール部28の上方に、板ばね31が挿嵌するガイド溝32が形成されている。
【0029】
以上のように構成された本実施形態においては、インレットミキサ13をディフューザ15に差し込み接続したときにガイド溝32に挿嵌されて変形した板ばね31の径方向弾性力により、冷却水の流れの影響によるインレットミキサ13の振動を吸収することができ、インレットミキサ13とディフューザ15との接続部における摩耗の発生を防止することができる。また、本実施形態においては、ディフューザ15の板ばね31がインレットミキサ13のガイド溝32に挿嵌するので、インレットミキサ13の回転振動に対する抑制効果をいっそう得ることができる。
【0030】
なお、上記実施形態においては、インレットミキサ13のアダプタ24の外周側又はディフューザ15のカラー25の内周側のいずれか一方に板ばねを設けた場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えばインレットミキサのアダプタの外周側及びディフューザのカラーの内周側の両方に板ばねを設けてもよく、この場合、例えばインレットミキサのアダプタの外周側及びディフューザのカラーの内周側の両方に板ばねが挿嵌するガイド溝を設けてもよい。また、板ばねに代えて、例えば金属製の中空のOリング等の弾性体を設けてもよい。これらの変形例においても、上記実施形態同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の適用対象である沸騰水型原子炉の全体構造を表す断面図である。
【図2】本発明のジェットポンプの一実施形態の全体構造を表す図である。
【図3】本発明のジェットポンプの一実施形態におけるインレットミキサとディフューザとの接続部の詳細構造を表す分解図である。
【図4】本発明のジェットポンプの他の実施形態におけるインレットミキサとディフューザとの接続部の詳細構造を表す分解図である。
【図5】本発明のジェットポンプのさらに他の実施形態におけるインレットミキサとディフューザとの接続部の詳細構造を表す分解図である。
【符号の説明】
【0032】
10 ジェットポンプ
11 ライザ管
13 インレットミキサ
15 ディフューザ
24 アダプタ
25 カラー
27 板ばね
29 板ばね
30 ガイド溝
31 板ばね
32 ガイド溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再循環ポンプからの冷却水を導くライザ管と、前記ライザ管から分岐接続した一対のインレットミキサと、前記一対のインレットミキサにそれぞれ接続したディフューザとを備えたジェットポンプにおいて、
前記インレットミキサと前記ディフューザとの接続部に弾性体を設けたことを特徴とするジェットポンプ。
【請求項2】
請求項1記載のジェットポンプにおいて、前記弾性体は、前記インレットミキサのアダプタの外周側に設けた板ばねであることを特徴とするジェットポンプ。
【請求項3】
請求項2記載のジェットポンプにおいて、前記ディフューザのカラーの内周側に前記板ばねが挿嵌する溝を形成したことを特徴とするジェットポンプ。
【請求項4】
請求項1記載のジェットポンプにおいて、前記弾性体は、前記ディフューザのカラーの内周側に設けた板ばねであり、前記インレットミキサのアダプタの外周側に前記板ばねが挿嵌する溝を形成したことを特徴とするジェットポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−170272(P2008−170272A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−3614(P2007−3614)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)