説明

ジェノタイピング方法

本発明は、ジェノタイピング方法に関し、より一層詳しくは遺伝子型毎に付されるIDシーケンス及び前記IDシーケンスを利用した多重ジェノタイピング方法に関する。本発明のIDシーケンスを利用して、パイロシーケンスを行う場合、遺伝型毎に独特かつ簡潔なパイログラムを取得できて、ウイルス遺伝子、疾病遺伝子、細菌遺伝子及び個人識別用遺伝子を簡単かつ効率的にジェノタイピングすることができ、本発明のジェノタイピング用プライマーは、分配形式を使う全てのシーケンスを利用したジェノタイピング方法に多様に応用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジェノタイピング方法に関し、より一層詳しくは遺伝子型毎に付されるIDシーケンス及び前記IDシーケンスを利用した多重ジェノタイピング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
感染性生物体を検出するための方法は、伝統的な培養方法による物理的・化学的特徴を確認する方法から始まり、病原体の特異的な遺伝的特性を検出する方法に発展して来ており、遺伝的特性を検出する方法には、制限酵素断片長多型(RFLP)分析、増幅断片長多型(AFLP)分析、パルスフィールド電気泳動、任意プライム重合酵素連鎖反応(arbitrarily-primed polymerase chain reaction:AP−PCR)、反復配列基礎PCR(repetitive sequence-based PCR)、リボタイピング(ribotyping)及び比較核酸配列決定法(comparative nucleic acid sequencing)等がある。このような方法は概して時間がかかり、高価であり、再現不可能であり、熟練した技術を要するため、殆どの診断環境には使用不可能である。前述した方法は、すべて通常煩雑な電気泳動段階が必要であり、病原体を培養してゲノムDNAを精製すべきで、一種類以上の検出対象を含有する場合、検出結果がまともに出てこない場合が多い。このような制約は最近開発された高密度マイクロアレイ法による検出方法にいおいても同様である(Salazar et al., Nucleic Acids Res. 24:5056-5057, 1996; Troesch et al., J. Clin. Microbiol. 37:49-55, 1999; Lashkari et al., Proc. Natil. Acad. Sci. U.S.A. 94: 13057-13062, 1997)。一方、パイロシーケンスは、伝統的なサンガー(Sanger)法によったシーケンスとは異なり、DNA合成によってシーケンスする方法で、ヌクレオチドが重合されながら放出されるピロリン酸塩(pyrophosphate)を検出する方法で、ポリメリゼーション(Polymerization)時に4個のデオキシヌクレオチド三リン酸塩(deoxynucleotide triphosphates:dNTPs)を一度に一つずつ順次入れて反応させる。重合されるdNTPに付いているPPiは、酵素反応で光を発生し、発生した光は順次入った各々のdNTPの反応順にシグナルピークを現し、そのピークは各々のdNTPが反応した数に比例して高くなったり低くなったりするパターンを示して、塩基配列を決めることができる技術であり、最近では臨床試料で病原体に特異的な配列を、PCR産物をパイロシーケンスを利用して形成されるパイログラム(pyrogram)で確認して、病原性菌または、ウイルスを検出する方法が使われている(Travasso, CM et al, J. Biosci., 33:73-80, 2008; Gharizadeh, B et al., Molecular and Cellular Probes, 20, 230-238, 2006; Hoffmann, C et al., Nucleic Acid Research, 1-8, 2007)。
【0003】
しかし、パイロシーケンス手法では、dNTPsをいれる順序である分配順序(dispensation order)に従ってシーケンスが進められ、鋳型に分配順序にない配列は、反応が起きなくなってピークが形成されないが、同じ配列が連続的に出てくると、放出される光の量に応じてピーク高さが形成される特性を持っている。従って多種類の病原体が同一試料内に存在する場合、塩基配列の構成により、多数の病原体の塩基配列のピークが重なるように現れることになって、パイログラム判読を介した遺伝型確認が困難であり、特に反復される配列の個数が増加すると、前に位置する配列のピークが相対的に低くなる特徴があって、多重の病原体が感染している場合、各病原体の感染程度により、分別しようとするピークを確認することが難しいという欠点がある。
【0004】
そこで、本発明者等は、パイロシーケンスを利用してジェノタイピングを実施するに当たり、タイピングしようとする遺伝型が独特かつ簡潔なパイログラムを持つようにしようと鋭意努力した結果、タイピング対象の特異配列とは独立的に存在すると共に、IDマーク、サインポスト及びエンドマークを持つIDシーケンスをタイピング対象の特異配列と繋げてパイロシーケンスすると、遺伝型毎に独特かつ簡潔なパイログラムが得られることを確認して本発明を完成した。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、タイピングしようとする遺伝型が独特かつ簡潔なパイログラムを持つようにパイロシーケンスするのに有用なIDシーケンスを提供するところにある。
本発明の他の目的は、前記IDシーケンスを利用したジェノタイピング方法を提供するところにある。
本発明のさらに他の目的は、前記IDシーケンスを利用したHPVのジェノタイピング方法を提供するところにある。
本発明のさらに他の目的は、前記IDシーケンスを利用したKRAS遺伝子変異の検出方法を提供するところにある。
本発明のさらに他の目的は、前記IDシーケンスを利用した呼吸器ウイルスの検出方法を提供するところにある。
【0006】
前記目的を達成するために、本発明はA(ID−S)n−Eで構成されるジェノタイピング用IDシーケンスを提供する:
ここで、IDはA、T、C及びGから選択される一つの単一塩基配列であるIDマークで;Sは隣接したIDマークと連結され、前記隣接したIDマークの塩基配列と一致しない単一塩基配列のサインポストで;Eは前記サインポスト(signpost)の単一塩基と一致しない単一塩基配列であるエンドマークで;及びnは1〜32の自然数である。
【0007】
本発明はまた、ID−Sで構成されるジェノタイピング用IDシーケンスを提供する:
ここで、IDはA、T、C及びGから選択される一つの単一塩基配列であるIDマークで;及びSは隣接したIDマークと連結され、前記隣接したIDマークの塩基配列と一致しない単一塩基配列のサインポストである。
【0008】
本発明はまた、前記IDシーケンスにジェノタイピング用遺伝子特異配列が連結されているジェノタイピング用プライマーを提供する。
【0009】
本発明はまた、前記ジェノタイピング用プライマーを利用するジェノタイピング方法を提供する。
【0010】
本発明はまた、(a)各々のHPVウイルスの遺伝子型に応じて、(ID−S)n−Eで構成されるジェノタイピング用IDシーケンスをデザインする段階(ここで、IDはA、T、C及びGから選択される一つの単一塩基配列であるIDマークで、Sは隣接したIDマークと連結され、前記隣接したIDマークの塩基配列と一致しない単一塩基配列であるサインポストで、Eは前記サインポストの単一塩基と一致しない単一塩基配列であるエンドマークで、及びnは1〜32の自然数);(b)パイロシーケンス用プライマー配列、IDシーケンス及び前記IDシーケンスが付されたウイルス遺伝子型の特異配列で構成されるジェノタイピング用プライマーを作製する段階;(c)HPVウイルスを含有するサンプルを前記ジェノタイピング用プライマーを利用して増幅させる段階;及び(d)前記増幅されたPCR産物でパイロシーケンスを行ってIDシーケンスをシーケンスし、IDシーケンスにより、HPVの遺伝子型を区別する段階を含むHPVのジェノタイピング方法を提供する。
【0011】
本発明はまた、(a)各々のKRASの遺伝子変異の種類に応じて、(ID−S)n−Eで構成されるジェノタイピング用IDシーケンスをデザインする段階(ここで、IDはA、T、C及びGから選択される一つの単一塩基配列であるIDマークで、Sは隣接したIDマークと連結され、前記隣接したIDマークの塩基配列と一致しない単一塩基配列であるサインポストで、Eは前記サインポストの単一塩基と一致しない単一塩基配列であるエンドマークで、及びnは1〜32の自然数);(b)パイロシーケンス用プライマー配列、IDシーケンス及び前記IDシーケンスが付された遺伝子変異に特異的な配列で構成される検出用プライマーを作製する段階;(c)KRAS遺伝子を含有するサンプルを、前記検出用プライマーを利用して増幅させる段階;及び(d)前記増幅されたPCR産物でパイロシーケンスを行ってIDシーケンスをシーケンスし、IDシーケンスにより、KRAS遺伝子変異を検出する段階を含むKRAS遺伝子変異の検出方法を提供する。
【0012】
本発明はまた、(a)インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、RSVB、リノウイルス及びコロナウイルスOC43の遺伝子型に応じて、(ID−S)n−Eで構成されるジェノタイピング用IDシーケンスをデザインする段階(ここで、IDはA、T、C及びGから選択される一つの単一塩基配列であるIDマークで、Sは隣接したIDマークと連結され、前記隣接したIDマークの塩基配列と一致しない単一塩基配列であるサインポストで、Eは前記サインポストの単一塩基と一致しない単一塩基配列であるエンドマークで、及びnは1〜32の自然数);(b)パイロシーケンス用プライマー配列、IDシーケンス及び前記IDシーケンスが付された各呼吸器ウイルス遺伝子の特異配列で構成される検出用プライマーを作製する段階:(c)インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、RSV B、リノウイルス及びコロナウイルスOC43からなる群から選択される呼吸器ウイルスを含有するサンプルを、前記検出用プライマーを利用して増幅させる段階;及び(d)前記増幅されたPCR産物でパイロシーケンスを行ってIDシーケンスをシーケンスし、IDシーケンスにより、呼吸器ウイルスを検出する段階を含む呼吸器ウイルスの検出方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】分配順序に従ってパイロシーケンスが行われる過程及びパイログラムを示す。
【図2】分析配列に応じたパイログラムのピーク変化を示す。
【図3】分析配列に応じたパイログラムのピーク変化を示す。
【図4】サインポストの挿入によるパイログラムのピーク変化を示す。
【図5】2種類分析配列が混ざり合っている時のパイログラムを示す。
【図6】分配順序でサインポストの有無によるパイログラムを示す。
【図7】サインポスト後方の配列変化によるパイログラムを示す。
【図8】エンドマークがない場合のパイログラムを示す。
【図9】エンドマークがある場合のパイログラムを示す。
【図10】サインポスト順序の変化による分配順の変化を示す。
【図11】分配順序に従ってIDシーケンスをデザインする方法を示す。
【図12】分配順序のデザイン方法を示す。
【図13】分配順序に従ってIDシーケンスが現れるパイログラムを示す。
【図14】分配順序を決めた後、IDシーケンスをデザインする方法を示す。
【図15】分配順序に従って現れるIDシーケンスのパイログラムを示す。
【図16】本発明のIDシーケンスを利用してHPVをジェノタイピングする方法を示す。
【図17】一般的なKRAS変異検出システムを示す。
【図18】本発明のIDシーケンスを利用してKRAS変異を検出する方法を示す。
【図19】本発明のIDシーケンスを利用して15種のHPVをジェノタイピングした結果を示す。
【図20】本発明のIDシーケンスを利用して2種以上の多重HPVをジェノタイピングした結果を示す。
【図21】本発明のIDシーケンスを利用してKRAS変異を検出した結果を示す。
【図22】本発明のIDシーケンスを利用して多重KRAS変異を検出した結果を示す。
【図23】本発明のIDシーケンスを利用して大腸癌組織でKRAS変異を検出した結果を示す。
【図24】本発明のIDシーケンスを利用した呼吸器ウイルス感染検出方法を示す。
【図25】本発明のIDシーケンスを利用して5種の呼吸器ウイルスの単一感染検出結果を示す。
【図26】本発明のIDシーケンスを利用して5種の呼吸器ウイルスの多重感染検出結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の他の特徴及び実施態様は、以下の詳細な説明及び添付された特許請求範囲からより一層明白になる。
【0015】
一観点において、本発明は、A(ID−S)n−Eで構成されるジェノタイピング用IDシーケンスに関する:
ここで、IDはA、T、C及びGから選択される一つの単一塩基配列であるIDマークで;Sは隣接したIDマークと連結され、前記隣接したIDマークの塩基配列と一致しない単一塩基配列のサインポストで;Eは前記サインポストの単一塩基と一致しない単一塩基配列であるエンドマークで;及びnは1〜32の自然数である。
【0016】
他の観点において、本発明は、ID−Sで構成されるジェノタイピング用IDシーケンスに関する:
ここで、IDはA、T、C及びGから選択される一つの単一塩基配列であるIDマークで;及びSは隣接したIDマークと連結され、前記隣接したIDマークの塩基配列と一致しない単一塩基配列のサインポストである。
【0017】
本発明の「IDシーケンス」は、各遺伝子が固有に保存している特異的配列でなく、本発明に係るジェノタイピング方法において、各遺伝子型毎に独特に付することができる人為的に作製された塩基配列をいう。
本発明において前記「隣接したIDマーク」は、サインポストの前方または後方に位置したIDマークを意味する。
【0018】
本発明のIDシーケンスは、パイロシーケンスを行う際に、パイログラムが次に出てくる配列によって影響されず独特の位置にピークが形成されるようにするサインポストとエンドマーク(endmark)を利用して、決まった分配順序(dispensation order)に従って、単一塩基配列(one nucleotide)に区別されるようにするために使われる。
【0019】
この過程において、分配順序に従って個々の独特のピークを形成する単一塩基配列をIDマークといい、IDマークが単一ピークを形成するために必要な配列のサインポストとエンドマークを含む配列をIDシーケンスという。1個のサインポストと1個のエンドマークを利用して、IDマークの次に出てくる遺伝子の配列に影響を受けなくなるIDマークは3種類になり、従って、ジェノタイピングできる個数は3種類である。3種類以上の多重遺伝型検査(multiple genotyping)を行うためには、サインポストとIDマークを追加すれば良い。
【0020】
一般的なパイロシーケンスでは、分配配列によりシーケンスが進められ、鋳型に分配配列(dispensation order:DNA合成時ヌクレオシドが入る順序)にない配列があれば、反応が起きないためピークが形成されないが、同じ配列が連続的に存在すれば、放出される光量に応じてピークの高さが形成される特性を持っている(図1)。
【0021】
1個の塩基を分析配列で利用すると、パイログラム上で4種類の相違するピークで区別できると考えられるが、実際には分析配列の次にくる配列はA、T、G、Cの中の一つであるため、少なくとも一つの場合は多重ピーク(同じ配列が繰り返してくる場合、一つの大きい多重ピークを形成する)を形成するしかないため、結果的に、単一塩基で単一ピークを区別できる方法は最大三つしか存在しない(図2)。
【0022】
また、分析配列以後に出てくる配列によって望まないピークが形成されることになり、分析配列以後に反復された塩基が連続的にある場合、重合反応が一度に起きるため、単一ピークが形成されるか、この反応で発生する発光量が増加するため、ピークの高さが比例的に増加する特性を持って、このような反復配列がある場合、相対的に単一塩基で存在すピークの高さは減少する現象が現れる(図3)。このような問題があるため、単一塩基を利用した多重ジェノタイピングに限界があり、これを解決するために、本発明のIDシーケンスでは次に位置する配列によって分析される配列のピークが影響を受けないよう、「分析配列」を分離させて、次の追加的な分析が可能にする分離配列を「サインポスト」と命名した(図4)。
【0023】
また、前記サインポスト配列によりパイロシーケンスの分配順序(dispensation order)の設定が変わることになる。
2塩基で構成された一つの分析配列で1個の塩基配列をサインポストに設定すれば、残りの1個の塩基配列位に3個の塩基が各々位置することができ(同じ配列がくる場合は、ピークが重なるため、サインポストで配分された1個の塩基を除いた3個の塩基が残り一つの塩基位に位置することができる)、サインポストの前に位置した塩基は、図4のように分析配列以後に出てくる配列に影響を受けずにピークを独立的に、分離が可能に設定することができる。
【0024】
前記分析配列でサインポストによって分離した単一塩基を「IDマーク(ID mark)」と命名し、図4に示したように1個のIDマークと1個のサインポストを利用して三つのタイプに対する多重ジェノタイピングが可能になる。この時、分配順序(dispensation order)でサインポストの位置は、IDマークの後に位置するようにする(サインポストの前に位置したIDマークだけが分析配列以後に出てくる後方配列に影響を受けないため)。
【0025】
本発明の一様態で、単一塩基のIDマークと1個のサインポストからなる2塩基の分析配列をジェノタイピングするために、図5に示したように、タイプ1(分析配列:AC)、タイプ2(分析配列:TC)及びタイプ3(分析配列:GC)の分析配列を合成して、パイロシーケンスして、タイプ1では分配配列により分配配列1番にAのピークが現れ、分配配列4にCのピークが現れることになり、タイプ2では分配配列2にTのピークが現れ、分配配列4にCのピークが現れることになる。タイプ3では分配配列3にGのピークが現れ、分配配列4にCのピークが現れることになる。ここで、分析配列中最初の塩基の配列であるA、T、Gは、各々IDマークで、分析配列中二番目の塩基配列である共通したCはサインポストである。
【0026】
前記3つのタイプの分析配列を多重ジェノタイピングするために、図5の(a)に示したように、タイプ1(分析配列:AC)とタイプ2(分析配列:TC)を混ざり合ったサンプルを、A→T→G→Cの分配配列(dispensation order)でパイロシーケンスした結果、分配配列1でAのピークが現れ、分配配列2でTのピークが現れ、分配配列3ではピークが現れず、分配配列4ではサインポストであるCのピークが現れることになり、この時、サインポストであるCのタイプ1とタイプ2の二タイプで全部反応して現れるため、AとTのピークより2倍の大きさで現れることになる。
【0027】
同様に、図5の(b)で、タイプ1(分析配列:AC)とタイプ3(分析配列:GC)が混ざり合ったサンプルでは、分配配列1でAのピークが現れ、分配配列3でGのピークが現れ、分配配列2ではピークが現れず、分配配列4ではサインポストであるCのピークが現れることになり、この時、サインポストであるCのピークは2倍で二タイプで全部存在するため、反応が2倍で現れてピークの大きさも2倍になる。
【0028】
さらに、図5の(c)で、タイプ2(分析配列:TC)とタイプ3(分析配列:GC)が混ざり合ったサンプルでは、分配配列2でTピークが現れ、分配配列3でGのピークが現れ、分配配列1ではピークが現れず、分配配列4ではサインポストであるCのピークが現れることになり、この時、サインポストであるCのピークは2倍で二タイプで全部存在するため、反応が2倍で現れてピークの大きさも2倍になることになる。
【0029】
従って、サインポストによってIDマークは以後の配列と分離して独立的に存在できるため、多重ジェノタイピング時に有用である。
「IDマーク」と「サインポスト」で構成された分析配列を利用したパイロシーケンスで分配配列にサインポストの配列を挿入してもしなくてもジェノタイピングの結果には差がないが、サインポストの配列を分配配列に挿入しなかった場合、機械的な誤りを判断できない短所がある(図6)。従って、分配配列にはサインポストの配列を挿入してパイロシーケンスが正常に進行されたかを判断できるようにすることが好ましい。また、パイロシーケンス時に多重ジェノタイピング時にIDマークのピークは、サインポストのピークより大きくはならないため、これもパイロシーケンスの誤りを判断する基準になることができる(図6)。
【0030】
エンドマーク
サインポストは、単一塩基IDマークと後方の配列を分離させて、IDマークピークが後方配列の影響を受けないようにする役割を果たす。しかし、サインポストも、後方に来る配列がサインポストと同じ場合に検出される発光量の増加によるピークの高さが比例的に増加するため、これによって、前方のIDマークのピークの高さが変わる現象が生じる(図7)。このような現象を解決するために、IDマークとサインポストが次に連結される配列に影響を受けないようにするために、サインポストとは異なった塩基配列をサインポストの後方に挿入することができ、この時挿入される配列を「エンドマーク」と命名し、前記エンドマークは分配配列(dispensation order)に挿入されない。前記「エンドマーク」はIDマークとサインポストが後方に連結される配列によって影響を受けなくして、一定の高さのピークを作る役割を果たす。
【0031】
即ち、エンドマークがない場合は、図8に示したように、タイプ1(分析配列:AC)の次にCAが来る場合、A→T→G→Cの分配配列(dispensation order)でパイロシーケンスすると、サインポストであるCの次に重なるCのために、分配配列1位のAピークより分配配列3位のCピークが大きくなる。同様に、タイプ3(分析配列:GC)の次にCCが来る場合には、サインポストであるCの次にCが3度重なって、分配配列3のGのピークが大きくなりすぎた分配配列4のCのピークによってずっと小さくなる。
【0032】
エンドマークがある場合には、図9に示したように、タイプ1(分析配列:AC)の次にCAが来る場合、その間にエンドマークでTが挿入され、A→T→G→Cの分配配列(dispensation order)でパイロシーケンスすると、サインポストであるCの次にTが割り込んでCが重ならず、分配配列1位のAピークと分配配列3位のCピークの高さが一定になる。同様に、タイプ3(分析配列:GC)の次にCCが来る場合にも、サインポストであるCの次にエンドマークであるTが挿入されて、サインポストの後にCが重ならないため、分配配列3のGのピークと分配配列4のCのピークの高さが同一になる。本発明において、追加できるサインポストの個数Nは、2〜32であることが好ましく、Nが32の場合、65種類の多重ジェノタイピングが可能である。
【0033】
複数のIDマークと複数のサインポストを利用すると、3タイプ以上のジェノタイピングが可能である。

【0034】
この場合にも、単一ピークのパイログラムを得るために、隣接した塩基配列間には、互いに異なる塩基で構成されなければならない。IDマークは、サインポストの前方や2個のサインポストの間に置かれ、サインポストの間に置かれたIDマークは、両側のサインポストと異なった塩基配列を持たなければならないため、2種の異なる塩基であって、サインポストの前方に位置したIDマークの場合は後方に位置したサインポストと異なる塩基配列を持つだけでよく、3種の異なる塩基である。
【0035】
この時、サインポスト1の塩基配列とサインポスト2の塩基配列は一致してはいけなく、最後方のサインポストの塩基配列とエンドマークの塩基配列も一致してはいけない。

【0036】
IDマーク、サインポスト及びエンドマークで構成される配列を「IDシーケンス」と命名し、本発明でIDシーケンスは、IDマーク及びサインポストで構成され、好ましくはIDマーク、サインポスト及びエンドマークで構成される。
本発明のIDシーケンスは、サインポストが1個追加される度に2個のタイプを追加的に区別できることになる。従って、2N+1個(N=サインポストの個数)のIDマークの位置によりジェノタイピングで区別することができる。
【0037】
1個のIDマークとエンドマークを除いた残りの塩基配列は、サインポストで使われる塩基配列で、IDシーケンス内のIDマークを同じ分配順序で区別しようとするなら、IDシーケンス内でサインポストの塩基配列は同じ順序に置かれなければならない。即ち、IDマークの位置だけサインポストの前や間に置かれることになり、サインポストの配列順序は同じでなければならない。それは、パイロシーケンスの特性上、サインポスト配列が異なると分配順も変わるためである(図10)。
【0038】
IDシーケンスデザイン
サインポストを定めた後、IDシーケンスを作る場合
2個のサインポストで構成する場合、まず、TとGを各々サインポスト1及びサインポスト2で使用するなら、サインポスト1(T)の前面に置かれるIDマーカーは、A、G及びC中いずれか一つであり、サインポスト1とサインポスト2の中間に位置するIDマーカーは、AまたはCであり、エンドマーカーは、A、T及びC中いずれか一つである。

【0039】
従って、図11に示したように、前記の通りに構成されるIDマーカーとサインポスト、エンドマーカーで構成されるIDシーケンスでIDマークを1個として生成できる場合は、五つで、サインポスト1の前に位置するIDマーカーを作る三つの場合(A、G及びC)と、サインポスト1とサインポスト2との間に位置するIDマーカーを作る二つの場合(A及びC)がある。
この時、エンドマークは分配順序に入らないため、IDシーケンスでエンドマークが同じか互いに異なってもよい。
【0040】
分配順序(dispensation order)のデザイン
IDシーケンスを利用したジェノタイピングでは、分配順序に従って、IDシーケンスに位置するIDマークが順次に独立的なピークを形成することになり、分配順序はサインポストを境界に形成できる種々の順列によりデザインできる。
前記IDシーケンスにより形成できる分配順序中の一つは、次にと図面のようになり、エンドマークは分配順序に入らない。

【0041】
図12には、前記IDシーケンスにより可能な12個の分配順序を示し、前記12個の可能な分配順序症中一つを選択して使うことができる。
分配順序の個数は、4x6(N=サインポスト個数)通り形成される。従って、サインポストが2個の場合、144通りの分配順序を作ることができる。

従って、図13に示したように、IDシーケンスは分配順序に従って、固有のピークを持つことになる。
【0042】
分配順序を決定後、IDシーケンをスデザインする方法
IDシーケンスは、1個のIDマークと1個以上のサインポスト中少なくとも1個のエンドマークで構成され、隣接した塩基配列は互いに異なるべきで、分配順序も、同じ条件を持つべきであり、分配順序を先に決めた後、IDシーケンスをデザインしてもよい。
【0043】
分配順序でサインポスト1の前には3個のIDマーカーが置かれ、2個のサインポストの間には2個のIDマークが置かれることになるため、この規則を利用すれば分配順序を持って次のようなIDシーケンスを作ることができる。
例えば、9通りの遺伝子型を分離しようとすると、(2N+1)の公式に従って4個のサインポストが必要で、図14に示したように、分配順序をA、T、G、Cをn回繰り返すように決めた場合、サインポストは、C、G、T、Aになり、エンドマークはTになり、サインポストの間に位置した配列が、IDマークになって、IDシーケンスを作製することができ、分配順序のとおりパイロシーケンスを行うと、図15に示されたような結果が得られる。
【0044】
また他の観点において、本発明は、前記IDシーケンスにジェノタイピング用遺伝子特異配列が連結されているジェノタイピング用プライマーに関する。
【0045】
本発明において、前記ジェノタイピング用遺伝子特異配列は、ウイルス遺伝子、疾病遺伝子、細菌遺伝子及び個人識別用遺伝子からなる群から選択される遺伝子に特異的な配列であることを特徴とし、前記プライマーはパイロシーケンスを容易にするため、5’末端側にシーケンス用プライマー配列を追加で含有することを特徴とする。
【0046】
また他の観点において、本発明は、前記ジェノタイピング用プライマーを利用するのを特徴とするジェノタイピング方法に関する。
【0047】
本発明のIDシーケンスを使ったジェノタイピング用プライマーは、分配形式を使う全シーケンスを利用したジェノタイピング方法に多様に応用可能で、好ましくはパイロシーケンス方法または半導体シーケンス方法が使えるが、これに限定されない。
【0048】
本発明において、前記パイロシーケンス方法は、シーケンス過程で発生するppi(pyrophosphate)の分解反応から生じる光を検出する方法で、半導体シーケンス(smiconductor sequencing)は、シーケンス過程で発生するプロトン(proton:H+ion)による電流変化をチップ(chip)で分析する方法である(Andersona, Erik P. et al., Sens Actuators B Chem.; 129(1): 79, 2008)。
【0049】
本発明において、(a)ジェノタイピング対象遺伝子により、(ID−S)n−Eで構成されるジェノタイピング用IDシーケンスをデザインする段階(ここで、IDはA、T、C及びGから選択される一つの単一塩基配列であるIDマークで、Sは隣接したIDマークと連結され、前記隣接したIDマークの塩基配列と一致しない単一塩基配列であるサインポストで、Eは前記サインポストの単一塩基と一致しない単一塩基配列であるエンドマークで、及びnは1〜32の自然数);(b)前記デザインされたIDシーケンスにジェノタイピング用遺伝子特異配列が連結されているジェノタイピング用プライマーを利用してジェノタイピング対象遺伝子鋳型を増幅させて、PCR産物を取得する段階;及び(c)前記PCR産物をパイロシーケンスしてIDシーケンスをシーケンスする段階を含むことを特徴とする。
【0050】
また他の観点において、本発明は、(a)各々のHPVウイルスの遺伝子型に応じて、(ID−S)n−Eで構成されるジェノタイピング用IDシーケンスをデザインする段階(ここで、IDはA、T、C及びGから選択される一つの単一塩基配列であるIDマークで、Sは隣接したIDマークと連結され、前記隣接したIDマークの塩基配列と一致しない単一塩基配列であるサインポストで、Eは前記サインポストの単一塩基と一致しない単一塩基配列であるエンドマークで、及びnは1〜32の自然数);(b)パイロシーケンス用プライマー配列、IDシーケンス及び前記IDシーケンスが付されたウイルス遺伝子型の特異配列で構成されるジェノタイピング用プライマーを作製する段階;(c)HPVウイルスを含有するサンプルを前記ジェノタイピング用プライマーを利用して増幅させる段階;及び(d)前記増幅されたPCR産物でパイロシーケンスを行ってIDシーケンスをシーケンスし、IDシーケンスにより、HPVの遺伝子型を区別する段階を含むHPVのジェノタイピング方法に関する。
【0051】
本発明において、前記ウイルス遺伝子型の特異配列は、配列番号1〜15で表される塩基配列中から選択されることを特徴とする。
HPV(human papilloma virus)は、ヒトの皮膚や粘膜に感染する最も一般的なウイルスの一つであり、現在まで約150以上のタイプが知られており、これらの中30種余りが性器接触を介して感染し、HPVウイルスによる癌発病率の85%程度が子宮頸癌と関連がある。性器に感染する30種余りのウイルス中15タイプが子宮頸癌を引き起こす高危険群と知られている。子宮頸癌は、韓国の場合、女性癌発病率6位に該当して、パパコロニー塗抹(Pap smears)は感度と再現性が悪く、癌の状態を把握するのに問題点があり、頻繁に起きる試験のための費用負担も大きく作用する。現在までFDAの許可を受けたHPV検査方法としては、HYBRIDCAPTUREIIがあるが、この方法はHPV感染有無だけ診断し、どのタイプのHPVが感染したかについては分からない。
【0052】
HPVは、遺伝型毎に癌誘発率、癌タイプ、癌転移過程が異なるため、ジェノタイピングによって患者が感染したHPVの遺伝型を分かることは重要である。例えば、CIN III+の場合、HPVタイプ16が55%を占め、HPVタイプ18が15%を占めると報告され、その他30%の場合も残りの高危険群13タイプHPVと関連があると報告された。
【0053】
HPVをジェノタイピングする最も重要な理由は、遺伝型特異的HPV感染をモニタリングできることであり、高齢女性の場合、感染の持続期間が若い女性より普通長いが、これは過去に長期間の感染の可能性が大きいためである。どの位の持続期間が重要であるかは臨床的に定められていないが、普通1年以上持続する場合、危険性が増加すると知られている。勿論HPVタイプ16、HPVタイプ18を検査することが重要であるが、発癌性HPVタイプの持続的な感染を検査することが最も重要である。
【0054】
本発明の実施例では、IDシーケンスを利用して15種のHPVウイルスをジェノタイピングした。HPVウイルスで15種のウイルスで特異配列を持つHPV L1部位と9種のIDシーケンス及びシーケンス用プライマー部位を含有するプライマー(GT−HPV15タイププライマー)と5’ビオチン化GP6プラスプライマー(5’biotinylated GP6 plus primer)を利用して、各々15種のHPVウイルスゲノムを増幅させたPCR産物をパイロシーケンスした結果、15種のウイルスに対する15種のIDシーケンスのパイログラムが得られた(図16)。
【0055】
本発明のさらに他の実施例では、HPVタイプ16に感染したCaSki細胞株のゲノムDNA(genomic DNA)とHPVタイプ18に感染したHeLa細胞株のゲノムDNAを同量混合したサンプルをGT−HPV15タイププライマーと5’ビオチン化GP6プラスプライマーで増幅させたPCR産物をパイロシーケンスした結果、重複ピークの干渉がなくきれいなHPVタイプ16及びHPVタイプ18に該当するIDシーケンスのパイログラムを確認することができた。
【0056】
また他の観点において、本発明は、(a)各々のKRASの遺伝子変異の種類に応じて、(ID−S)n−Eで構成されるジェノタイピング用IDシーケンスをデザインする段階(ここで、IDはA、T、C及びGから選択される一つの単一塩基配列であるIDマークで、Sは隣接したIDマークと連結され、前記隣接したIDマークの塩基配列と一致しない単一塩基配列であるサインポストで、Eは前記サインポストの単一塩基と一致しない単一塩基配列であるエンドマークで、及びnは1〜32の自然数);(b)パイロシーケンス用プライマー配列、IDシーケンス及び前記IDシーケンスが付された遺伝子変異に特異的な配列で構成される検出用プライマーを作製する段階;(c)KRAS遺伝子を含有するサンプルを前記検出用プライマーを利用して増幅させる段階;及び(d)前記増幅されたPCR産物でパイロシーケンスを行ってIDシーケンスをシーケンスし、IDシーケンスにより、KRAS遺伝子変異を検出する段階を含むKRAS遺伝子変異の検出方法に関する。
【0057】
Ras遺伝子はラットで肉腫を引き起こすレトロウイルスの癌誘発遺伝子(oncogene)として初めて発見されたが、1985年にすい臓癌患者のリンパ節でKRASの存在が知らされて以来、多様な研究が行われている。この癌遺伝子(oncogene)の突然変異は、人体の悪性突然変異中に頻繁に発見される遺伝子の一つである。この遺伝子と構造と機能が類似する遺伝子は、H−ras、N−rasまた癌遺伝子として知られている。KRASのコドン12、13、61の突然変異は、蛋白質活性に影響を与えて過度の活性を誘発することになる。
【0058】
KRAS遺伝子の突然変異は、消化器系の腺癌(adenocarcinoma)で発見され、すい臓の腺癌の場合、膵液と膵臓組織等で90%の突然変異を発見することができ、これらの多くはコドン12の変異と知られており、大腸癌では40〜45%で発見されるが、化学治療に反応がない、進行された結腸癌に使われるセツキシマブ(cetuximab)またはペニツムマブ(panitumumab)のような薬物に対する反応性の減少とも関連があると知られている。また、5〜30%の非小細胞肺癌で観察され、喫煙歴がある患者で主に観察され、EGFR突然変異とは相互排他的に発見される。
【0059】
野生型KRAS存在下、コドン12(GGT>GTT)、コドン13(GGC>TGC及びGGC>GCC)の三種類の突然変異は、一般的なパイロシークエンス方法では検出に限界がある。特に、コドン12(GGT>GTT)突然変異は、発生頻度が高いため、検出限界のために排除が難しい(図17)。
【0060】
本発明の一実施例では、KRAS遺伝子のコドン12及びコドン13番の突然変異を検出する方法を開示した。本発明では、コドン12(GGT>GTT)、コドン13(GGC>TGC及びGGC>GCC)の三種類の突然変異に対して特異的に結合するプライマーを考案して、この3種類のプライマー特異的な塩基配列の前に固有IDシーケンスを利用して検出できるように考案し、本発明の方法によると、4種類のフォワードプライマー(forward primer)と一種類のビオチン化リバースプライマー(biotinylated reverse primer)を利用して1回のPCR過程で12種類のKRAS突然変異を検出することができる(図18)。
【0061】
本発明において、前記KRAS遺伝子変異の特異配列は、配列番号34〜35で表される塩基配列中から選択されることを特徴とする。
【0062】
また他の観点において、本発明は、(a)インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、RSVB、リノウイルス及びコロナウイルスOC43の遺伝子型に応じて、(ID−S)n−Eで構成されるジェノタイピング用IDシーケンスをデザインする段階(ここで、IDはA、T、C及びGから選択される一つの単一塩基配列であるIDマークで、Sは隣接したIDマークと連結され、前記隣接したIDマークの塩基配列と一致しない単一塩基配列であるサインポストで、Eは前記サインポストの単一塩基と一致しない単一塩基配列であるエンドマークで、及びnは1〜32の自然数);(b)パイロシーケンス用プライマー配列、IDシーケンス及び前記IDシーケンスが付された各呼吸器ウイルス遺伝子の特異配列で構成される検出用プライマーを作製する段階:(c)インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、RSVB、リノウイルス及びコロナウイルスOC43からなる群から選択される呼吸器ウイルスを含有するサンプルを前記検出用プライマーを利用して増幅させる段階;及び(d)前記増幅されたPCR産物でパイロシーケンスを行ってIDシーケンスをシーケンスし、IDシーケンスにより、呼吸器ウイルスを検出する段階を含む呼吸器ウイルスの検出方法に関する。
【0063】
本発明の一実施例で、呼吸器ウイルス検出方法は、前記5種の呼吸器ウイルスに対して特異的に結合するプライマーを考案して、この3種類のプライマー特異的な塩基配列の前に固有IDシーケンスを利用して検出できるように考案し、前記5種のGT−呼吸器ウイルス5タイプフォワードプライマーと5’ビオチン化リバースプライマーを利用して、cDNAを合成した後、GT−RespiVirusIDプライマーと5’ビオチン化M13リバースプライマーを利用して特異的にウイルスを増幅してパイロシーケンスで検出する方法である
【0064】
本発明において、各呼吸器ウイルス遺伝子型の特異配列は、インフルエンザAウイルスの場合は、配列番号41、インフルエンザBウイルスの場合は、配列番号42、RSV Bの場合は、配列番号43、リノウイルスの場合は、配列番号44、及びコロナウイルスOC43の場合は、配列番号45で表される塩基配列であることを特徴とする。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例を挙げて詳述する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に制限されないことは当業者において通常の知識を有する者にとって自明である。
【0066】
実施例1:IDシーケンスを利用したHPVジェノタイピング
本発明のIDシーケンスを利用して子宮頸癌原因ウイルスである高危険群のHPVの遺伝子をタイピングした。
15通りの高危険群HPVに対するIDシーケンスを表1のようにデザインした。
【0067】
【表1】

【0068】
前記15種のIDシーケンスの3’末端には対応する各々対応するHPVタイプに特異的な塩基配列を連結し、5’末端には共通したシーケンス用配列を連結して、単一シーケンスプライマーを利用して15個の互いに異なるIDシーケンスをパイロシーケンスできるようにして、IDシーケンスを含むPCRプライマーを作製した(表2)。
【0069】
【表2】

【0070】
前記15種のHPVウイルスらは韓国人女性の子宮頸部細胞診検体(忠南(チュンナン)大学病院産婦人科)からゲノムDNAを抽出した後、HPV DNAチップを利用して感染した遺伝型を確認し、HPVウイルスのL1遺伝子をPCR増幅して得られる。
臨床試料からHPVの感染の有無を判断するためのPCRプライマーとして、GP5プラスプライマーとGP6プラスプライマーを利用した。
【0071】
【表3】

【0072】
前記15種のHPVウイルスを各々鋳型として、表2に示した15種のPCRプライマーを同じ割合で混ぜてフォワードプライマー(GT−HPV15タイププライマー)として使い、5’ビオチン化GP6プラスプライマー(パイオニア、韓国)をリバースプライマーとして使って次の条件でPCRを行った:
95℃15分−[95℃(0.5分)、45℃(0.5分)、72℃(0.5分)]×45サイクル−72℃(10分)−4℃維持。
【0073】
前記PCR産物には共通のシーケンスプライマー結合部位を含んでいる。本実施例では、一般的に多く使用するT7プライマー(5’−TAATAC GAC TCA CTA TAG GG −3’)を利用しており、このT7プライマーを利用してIDシーケンスのパイロシーケンスを行って、パイログラムを分析してHPVをタイピングした(図19及び図20)。
【0074】
分配順序でHPVのタイプにより形成されるIDマークの位置を図17の上方に示し、赤色で示したピークは、IDマークで、青色で示したピークはサインポストである。
その結果、15種のウイルスに該当する特異IDマーカーの部分にだけパイログラムのピークが現れることを確認することができた。
【0075】
実施例2:多重HPVジェノタイピング
実施例1で作製したHPV IDシーケンスを利用して、多重HPV感染に係るジェノタイピングを確認した。
(1)HPVの4つタイプ多重タイピング
4通りのHPVタイプ(HPV16、33、31、66)に対するゲノムDNAを鋳型として、各々をGP5プラスプライマーとGP6プラスプライマーを利用してPCRで増幅した後、各タイプに対するPCR産物を1:1の割合で混合した混合物を鋳型として、GT−HPV15タイププライマーと5’ビオチン化GP6プラスプライマーを利用してPCRを行った。このPCR産物をT7プライマーを利用してパイロシーケンスを行った。
その結果、図20のa)に示したように、理論的に予測した結果と同じパイログラムを確認することができた。
【0076】
(2)CaSki細胞株とHeLa細胞株を利用したHPV多重ジェノタイピング
HPVタイプ16に感染したCaSki細胞株(ATCC CRL−1550(商標))のゲノムDNAとHPVタイプ18に感染したHeLa細胞株(ATCC CCL−2(商標))のゲノムDNAを同量混合(10ng:10ng)して鋳型とし、GT−HPV15タイプと5’ビオチン化GP6プラスプライマー使って、PCRを行った後、前記PCR産物をT7シーケンスプライマーを利用してIDシーケンスのパイロシーケンスを行った。
その結果、図20のb)に示したように、CaSki細胞1個当たり含まれた、HPVタイプ16のコピー数は約600コピーと知られており、HeLa細胞1個当たり含まれたHPVタイプ18のコピー数は、約50コピーと知られており、理論的に予測した結果と同じパイログラムを確認することができた。
【0077】
(3)子宮頸部臨床試料(cervical scraps samples)対象HPV多重ジェノタイピング
子宮頸部細胞検査試料でgDNAを抽出して、IDシーケンスを利用したHPV多重ジェノタイピングと一般シーケンス結果を比較した場合、多重感染時シーケンス結果がない試料を排除して比較して、二つの結果が100%一致するということが分かった(表4、表5)。
【0078】
【表4】

【0079】
【表5】

【0080】
実施例3:IDシーケンスを利用したKRAS突然変異検出法
本発明のIDシーケンスを利用して、KRAS遺伝子の突然変異を確認するために、KRASの3通りの突然変異である、コドン12(GGT>GTT)、コドン13(GGC>TGC及びGGC>GCC)に対するIDシーケンスをデザインした(表6)。
【0081】
【表6】

【0082】
また、前記3種のIDシーケンスのシーケンス末端には、各々対応するKRAS変異に特異的な塩基配列を連結して、5’末端には共通したシーケンス用配列を連結して、単一シーケンスプライマーを利用して、3個の互いに異なるIDシーケンスをパイロシーケンスできるようにして、IDシーケンスを含むPCRプライマーを作製した(表7)。
【0083】
【表7】

【0084】
試料として使われたIDシーケンスに該当する突然変異に対する鋳型は、遺伝子合成を介して(bioneer、韓国)作製し、細胞株はKRAS正常細胞株Caco2と突然変異細胞株A549、HCT116を使った。
【0085】
【表8】

【0086】
前記4種のKRASフォワードプライマーと5’ビオチン化リバースプライマーを利用して次の通りPCRを行った後、パイロシーケンスを行った。
95℃5分−[95℃(0.5分)、60℃(0.5分)、72℃(0.5分)]×40サイクル−72℃(10分)−4℃維持。
【0087】
KRAS正常細胞株と突然変異(mutant)細胞株、IDシーケンスで検出できるKRAS mutant plasmIDを鋳型と利用して、IDシーケンスを利用してKRAS突然変異を検出した(図21)。
その結果、各突然変異株に該当する特異IDマーカーの部分にだけパイログラムのピークが現れることを確認することができた。
【0088】
IDシーケンス基盤KRAS変異検出法で多重突然変異検出が可能であるかを、前記3通りのKRAS突然変異DNAを利用して同じ割合で混合した後、パイロシーケンスで検出した。
その結果、図22に示したように、理論的に予測可能な結果と同じパイログラムを確認することができた。
【0089】
また、実際IDシーケンス基盤KRAS多重突然変異検出法が実際臨床試料に適用されるかを大腸癌組織試料gDNAを利用してテストして、12人の試料に対してテストした結果、3人の患者で突然変異を検出でき、これに対する代表的なパイログラムを図23に示した。
【0090】
実施例4:IDシーケンスを利用した呼吸器ウイルス感染検出
新種インフルエンザA(H1N1)、季節インフルエンザA(H1型、H3型)、Bウイルスは、流行る時期が重なって感染症状が似ているが、治療剤の抗ウイルス剤に対して、ウイルスタイプ毎の治療効果が異なるため、ウイルスタイプを正確に区分検査して治療することが好ましい。そこで、IDシーケンスを利用した呼吸器ウイルスジェノタイピング方法を開発した。
本実施例では代表的な呼吸器ウイルスであるインフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、RSV B、リノウイルス及びコロナウイルスOC43の感染を検出した。前記5種の呼吸器ウイルスに対するIDシーケンスを表9のようにデザインした。
【0091】
【表9】

【0092】
前記5種のIDシーケンスの3’末端には対応する呼吸器ウイルスに特異的な塩基配列を連結して、5’末端には共通したシーケンス用配列を連結して、単一シーケンスプライマーを利用して、5種のIDシーケンスをパイロシーケンスできるようにして、IDシーケンスを含むPCRプライマーを作製した(表10)。
【0093】
【表10】

【0094】
本実施例の呼吸器ウイルス検出方法は、ウイルス感染細胞で、前記5種のGT−呼吸器ウイルス5タイプフォワードプライマーと5’ビオチン化リバースプライマー(表11)を利用して、cDNAを合成した後、表10に示したGT−RespiVirus IDプライマーと5’ビオチン化M13リバースプライマーを利用して特異的にウイルスを増幅して、パイロシーケンスで検出する方法である(図24)。
【0095】
【表11】

【0096】
本実施例では、前記ウイルス遺伝子に対して必要部分を遺伝子合成(gene synthesis)し、前記合成されたウイルス遺伝子を鋳型として、多重PCR(multiplex PCR)を行った後、パイロシーケンスで検出した。
その結果、図25に示したように、理論的に予測可能な結果と同じパイログラムを確認することができた。
【0097】
多重感染に対するテストも、ウイルス遺伝子鋳型を同じ割合で混合した後、多重PCRを行った後、パイロシーケンスで検出時に正常に作動することを確認した(図26)。
【0098】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳述したが、当業界における通常の知識を持った者にとって、このような具体的な記述は単なる好適な実施態様に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されることはないという点は明らかである。よって、本発明の実質的な範囲は特許請求の範囲とこれらの等価物により定義されると言える。
【産業上の利用可能性】
【0099】
以上述べたように、本発明のIDシーケンスを利用すると、遺伝型毎に独特かつ簡潔なパイログラムを取得でき、ウイルス遺伝子、疾病遺伝子、細菌遺伝子及び個人識別用遺伝子を簡単かつ効率的にジェノタイピングすることができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(ID−S)n−Eで構成されるジェノタイピング用IDシーケンス:
ここで、IDはA、T、C及びGから選択される一つの単一塩基配列であるIDマークであり;Sは隣接したIDマークと連結され、前記隣接したIDマークの塩基配列と一致しない単一塩基配列のサインポストであり;Eは前記サインポストの単一塩基と一致しない単一塩基配列であるエンドマークであり;及びnは1〜32の自然数である。
【請求項2】
ID−Sで構成されるジェノタイピング用IDシーケンス:
ここで、IDはA、T、C及びGから選択される一つの単一塩基配列であるIDマークであり;及びSは隣接したIDマークと連結され、前記隣接したIDマークの塩基配列と一致しない単一塩基配列のサインポストである。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のIDシーケンスにジェノタイピング用遺伝子特異配列が連結されているジェノタイピング用プライマー。
【請求項4】
ジェノタイピング用遺伝子特異配列は、ウイルス遺伝子、疾病遺伝子、細菌遺伝子及び個人識別用遺伝子からなる群から選択される遺伝子に特異的な配列である請求項3に記載のプライマー。
【請求項5】
請求項3に記載のジェノタイピング用プライマーを利用することを含むジェノタイピング方法。
【請求項6】
前記ジェノタイピングはパイロシーケンス方法または半導体シーケンス方法を利用する請求項5に記載のジェノタイピング方法。
【請求項7】
次の段階を含むジェノタイピング方法:
(a)ジェノタイピング対象遺伝子により、(ID−S)n−Eで構成されるジェノタイピング用IDシーケンスをデザインする段階(ここで、IDはA、T、C及びGから選択される一つの単一塩基配列であるIDマークで、Sは隣接したIDマークと連結され、前記隣接したIDマークの塩基配列と一致しない単一塩基配列であるサインポストで、Eは前記サインポストの単一塩基と一致しない単一塩基配列であるエンドマークで、及びnは1〜32の自然数);
(b)前記デザインされたIDシーケンスにジェノタイピング用遺伝子特異配列が連結されているジェノタイピング用プライマーを利用してジェノタイピング対象遺伝子鋳型を増幅させて、PCR産物を取得する段階;及び
(c)前記PCR産物をパイロシーケンスしてIDシーケンスをシーケンスする段階。
【請求項8】
次の段階を含むHPVのジェノタイピング方法:
(a)各々のHPVウイルスの遺伝子型に応じて、(ID−S)n−Eで構成されるジェノタイピング用IDシーケンスをデザインする段階(ここで、IDはA、T、C及びGから選択される一つの単一塩基配列であるIDマークで、Sは隣接したIDマークと連結され、前記隣接したIDマークの塩基配列と一致しない単一塩基配列であるサインポストで、Eは前記サインポストの単一塩基と一致しない単一塩基配列であるエンドマークで、及びnは1〜32の自然数);
(b)パイロシーケンス用プライマー配列、IDシーケンス及び前記IDシーケンスが付されたウイルス遺伝子型の特異配列で構成されるジェノタイピング用プライマーを作製する段階;
(c)HPVウイルスを含有するサンプルを前記ジェノタイピング用プライマーを利用して増幅させる段階;及び
(d)前記増幅されたPCR産物でパイロシーケンスを行ってIDシーケンスをシーケンスし、IDシーケンスにより、HPVの遺伝子型を区別する段階。
【請求項9】
前記ウイルス遺伝子型の特異配列は、配列番号1〜15で表される塩基配列中から選択される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
次の段階を含むKRAS遺伝子変異の検出方法:
(a)各々のKRASの遺伝子変異の種類に応じて、(ID−S)n−Eで構成されるジェノタイピング用IDシーケンスをデザインする段階(ここで、IDはA、T、C及びGから選択される一つの単一塩基配列であるIDマークで、Sは隣接したIDマークと連結され、前記隣接したIDマークの塩基配列と一致しない単一塩基配列であるサインポストで、Eは前記サインポストの単一塩基と一致しない単一塩基配列であるエンドマークで、及びnは1〜32の自然数);
(b)パイロシーケンス用プライマー配列、IDシーケンス及び前記IDシーケンスが付された遺伝子変異に特異的な配列で構成される検出用プライマーを作製する段階;
(c)KRAS遺伝子を含有するサンプルを、前記検出用プライマーを利用して増幅させる段階;及び
(d)前記増幅されたPCR産物でパイロシーケンスを行ってIDシーケンスをシーケンスし、IDシーケンスにより、KRAS遺伝子変異を検出する段階。
【請求項11】
前記KRAS遺伝子変異の特異配列は、配列番号34〜35で表される塩基配列中から選択される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
次の段階を含む呼吸器ウイルスを検出する段階を含む呼吸器ウイルスの検出方法:
a)インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、RSVB、リノウイルス及びコロナウイルスOC43の遺伝子型に応じて、(ID−S)n−Eで構成されるジェノタイピング用IDシーケンスをデザインする段階(ここで、IDはA、T、C及びGから選択される一つの単一塩基配列であるIDマークで、Sは隣接したIDマークと連結され、前記隣接したIDマークの塩基配列と一致しない単一塩基配列であるサインポストで、Eは前記サインポストの単一塩基と一致しない単一塩基配列であるエンドマークで、及びnは1〜32の自然数);
(b)パイロシーケンス用プライマー配列、IDシーケンス及び前記IDシーケンスが付された各呼吸器ウイルス遺伝子の特異配列で構成される検出用プライマーを作製する段階:
(c)インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、RSV B、リノウイルス及びコロナウイルスOC43からなる群から選択される呼吸器ウイルスを含有するサンプルを、前記検出用プライマーを利用して増幅させる段階;及び
(d)前記増幅されたPCR産物でパイロシーケンスを行ってIDシーケンスをシーケンスし、IDシーケンスにより、呼吸器ウイルスを検出する段階。
【請求項13】
前記各呼吸器ウイルス遺伝子型の特異配列は、インフルエンザAウイルスの場合は、配列番号41、インフルエンザBウイルスの場合は、配列番号42、RSV Bの場合は、配列番号43、リノウイルスの場合は、配列番号44、及びコロナウイルスOC43の場合は、配列番号45で表される塩基配列である請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2013−510589(P2013−510589A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539806(P2012−539806)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【国際出願番号】PCT/KR2010/008055
【国際公開番号】WO2011/059285
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(510149367)ゲノミクトリー インコーポレーテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】GENOMICTREE,INC.
【Fターム(参考)】