説明

ジエチレントリアミンを使用したベータゼオライトの合成方法

使用されるテンプレートがジエチレントリアミンを含んでいる、ベータゼオライトの製造方法が記述されている。さらに、得られたベータゼオライトとその使用方法が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
この発明は、構造を誘導する作用物質(テンプレート)がジエチレントリアミンを含んでいるゼオライトの製造方法に関する。得られたベータゼオライトは、炭化水素転化用の触媒の製造ならびに吸収剤として特に適している。
【0002】
テトラエチルアンモニウム陽イオンを構造誘導する作用物質として使用するベータゼオライトの合成は久しい以前から知られている。例えば米国特許第3308069号明細書にはテトラエチルアンモニウム水酸化物を使用したベータゼオライトの合成が記載されている。ゼオライトは75℃ないし200℃の温度で水酸化テトラエチルアンモニウムならびにNaO,AlおよびSiOの源を含んだ混合物からゼオライトが結晶化する。
【0003】
テトラエチルアンモニウム陽イオンと並んで例えば1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)等の二環式化合物も、ベータゼオライトの合成のための構造誘導する作用物質として記載されている。米国特許第4554145号明細書には、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン塩化物あるいは水酸化物(ジベンジル−DABCO)を使用したゼオライトの合成が開示されている。
【0004】
欧州特許出願公開第0419334号A1明細書には、DABCOとメチルアミンからなる混合物を構造誘導する作用物質として使用するベータゼオライトの合成が記載されている。
【0005】
米国特許第5139759号明細書には、ジエタノールアミンおよび特にテトラエチルアンモニウム臭化物等のテトラエチルアンモニウムハロゲン化物を使用するベータゼオライトの合成が開示されている。
【0006】
米国特許第5232579号明細書には、窒素含有キレートとしての第三アルカノールアミンと水酸化物あるいはハロゲン化物等のテトラエチルアンモニウム陽イオンを使用した大結晶ベータゼオライトの合成が開示されている。第三アルカノールアミンとしては、トリエタノールアミン、トリイソプロピルアミン、および2,2−Bis(ヒドロキシメチル)−2,2′,2″−ニトリロトリエタノールが挙げられる。
【0007】
高品質のベータゼオライトを簡便かつ低コストに製造する方法がさらに求められている。従って本発明の目的は、従来の技術の問題点を克服することができる方法を提供することである。
【0008】
前記の課題は請求項1の方法によって解決される。本発明に係る方法の好適な追加構成が従属請求項に記載されている。
【0009】
ここで、当業者においてベータゼオライトの意味は周知である。従ってより詳細な説明は不要である。例えば、米国特許第3308069号明細書のベータゼオライトに関する記述と米国特許第5139759号明細書の第1段第18ないし56行の記載を参考にすることができる。簡単に述べるとベータゼオライトは互いに結合した12環の管を有する三次元の細孔システムからなる。ここで、直線的な管が二次元に延在し、その共通の交差点を介してネジ状に結合された12環の管が第3の空間方向に延在する。ベータゼオライトの構造は画一的なものではなく、いわゆる同質異像AおよびBの2つの末端部分の間で変動する。ベータゼオライトの実験式は例えば、yNa[AlSi64−y128]*nHOであり、ここでyは7より小さくなる(J.B.ヒギンス等のゼオライト8(1988)第446ないし452頁参照)。
【0010】
本発明の枠内において、構造誘導する作用物質(テンプレート)がジエチレントリアミン(1,4,7−トリアザヘプタン、ジエン)を含むことによってベータゼオライトを極めて効果的に製造し得ることが判明した。このジエチレントリアミンをベータゼオライトの合成に有効に使用できるという発明者の見識は、参考文献に記載されていた合成方法によればジエチレントリアミンを構造誘導する作用物質として使用することによってまずベータゼオライトとの構造類似性を備えていないゼオライト構造しか得られずまたそれが異物相としてベータゼオライトの合成中に存在することが極めて不適正であるとされていたため、極めて意外なことであった。それらのものは特にZSM−5(MFI)、ZSM−11(MEL)およびZSM−48である。
【0011】
そこでP.ベーレンス等は多孔質の合成に対するジエチレントリアミンの構造誘導効果について記述している(表面科学および触媒の研究、第135版(2001)第447ないし455頁)。x(HNCNH:0.8HF:SiO:(10−x)HOのシステム内において、ジエチレントリアミンの成分比xは0.1ないし10の間で変化させた。x=10に関して120後にクラスラシル・ノンアシル(Nonasil)が得られた。x=7.5ないしx=9の間においては13日以内にノンアシルとシリカライト−1(MFI)の混合物が生成される。x=7ないしx=5の間においてはMFIのみが形成され、xをさらに下げるとまず異物相としてMFIを有するZSM−48が形成され、x=2において純粋な相が形成される。x<1の値においては全く結晶相が生成されない。ジエチレントリアミンがその他の窒素化合物と並んでZSM−48の合成のための構造誘導作用物質として使用可能であることは、1992年ニューヨーク市ファン・ノーストランド・ラインホールド社発行のR.ゾスタック氏による“分子篩ハンドブック”によって既に開示されている。脂肪族アミンをテンプレートとして使用したZSM−5およびZSM−11の合成は、国際公開第2001/004051号パンフレットに記載されている。考えられるテンプレートとしては、ジエチレントリアミンの他に、エチルアミン、エチレンジアミン、トリエチレンテトラアミン、ならびにトリス−(2−アミノエチル)−アミンが挙げられる。
【0012】
ベータゼオライトの製造方法自体は当業者において周知である。一般的に少なくとも1つの構造誘導作用物質(テンプレート)と、少なくとも1つの珪素あるいは珪酸源、ならびに少なくとも1つのアルミニウムあるいはアルミナ源からなる反応混合物が使用される。本発明の枠内においては一般的に当業者において周知の珪素あるいは珪酸源、およびアルミニウムあるいはアルミナ源を使用することができる。通常ゼオライトを製造するためにジエチレントリアミンまたは場合によってテトラエチルアンモニウム陽イオン等のその他のテンプレート、珪酸源、およびアルミン酸塩源を含んだ反応混合物を形成し、結晶化されたベータゼオライトが形成されるまでその混合物を高温に保持する。
【0013】
前記の珪素あるいは珪酸源の例は、それに限定されるものではないが、珪酸塩、珪酸ゾル、珪酸エステル、沈澱珪酸、あるいは発熱性珪酸である。本発明においては沈澱珪酸が好適である。
【0014】
アルミニウムあるいはアルミナ源の例は、それらに限定することはないが、アルミン酸塩、酸化アルミニウムあるいは水酸化アルミニウム、または三水素酸化アルミニウムである。本発明においてはアルミン酸ナトリウム等のアルミン酸塩が好適である。
【0015】
本発明によれば、ベータゼオライトの合成に使用される構造誘導作用物質(テンプレート)が少なくともジエチレントリアミンを含むことが重要である。ジエチレントリアミンの他に従来の技術において既知であって当業者において周知のテンプレートを使用することができる。
【0016】
本発明の極めて好適な実施形態によれば、ジエチレントリアミン(R′)が一般的な実験式R′X、R′Xおよび/またはR′Xの塩として使用され、ここでXは特に臭化物等のハロゲン化物あるいは水酸化物を示している。
【0017】
極めて好適な実施形態によれば、本発明に係る方法において、ジエチレントリアミンの他にテトラエチルアンモニウム陽イオンあるいはそれを含んだ化合物を含有するか、あるいは実質的にそれら2つの成分からなるテンプレート混合物が使用される。極めて好適なテトラエチルアンモニウム塩(R)とジエチレントリアミン(R′)の分子比は、R/(R+R′)=0.2ないし0.85である。好適には使用されるテンプレート混合物が90重量%超、より好適には95重量%超、さらに好適には少なくとも99重量%テトラエチルアンモニウム陽イオンを含んだ化合物ならびにジエチレントリアミンからなる。それによって極めて好適な合成が可能になる。
【0018】
限定的なものではないが、好適なテトラエチルアンモニウム陽イオンを含んだ化合物の例は、水酸化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、フッ化テトラエチルアンモニウム、およびそれらの混合物である。通常テトラエチルアンモニウム陽イオンは水酸化物あるいは臭化物として使用されるが、ここで水酸化テトラエチルアンモニウムの価格は臭化テトラエチルアンモニウムの価格の数倍となる。従って、臭化テトラエチルアンモニウムに基づいたベータゼオライトの合成が商業的に好適なものとなる。臭化物に基づいた合成方法の問題点は、酸性反応を起こす臭化テトラエチルアンモニウム塩の使用による反応混合物の低いアルカリ度である。塩基を添加しない限り生成されるベータゼオライトは必要な10超のpH値を達成しない。例えば水酸化ナトリウムを増量して添加することによるアルカリ度の上昇によって、同時にNa濃度が増加し、それによって例えばモルデン沸石(MOR)および/またはZSM−5(MFI)等の不要な異物相の形成がもたらされる。
【0019】
本発明の枠内において、さらにジエチレントリアミンが反応混合物中において必要なアルカリ度をもたらすかそれを促進し、すなわちより少量あるいはアルカリ液(アルカリ)を全く添加する必要がなくなる。さらに本発明においては従来の方法に比べてより少ない(高価な)テトラエチルアンモニウム陽イオンで充分であることが極めて好適であり、それによって大幅にコストを削減することができる。前述したように、このことは、従来の技術によればジエチレントリアミンがベータゼオライト以外のゼオライト構造を形成するように作用しZSM−5、ZSM−11、およびZSM−48ゼオライト、ならびにノンアシルの合成のための構造誘導作用物質として使用されるとされていたため、意外なことである。それらは全てベータゼオライトとは構造的に類似していないゼオライトである。
【0020】
前述したように、本発明に係る方法の枠内において、当業者において周知の任意の珪素あるいはアルミニウム源を使用することができる。SiO/Alで計算される反応混合物内における珪素とアルミニウムの比は、一般的に約10ないし400、特に20ないし50となる。しかしながら個別のケースにおいてはより低いあるいはより高いSiO/Al比が好適であることもある。
【0021】
本発明の好適な実施形態によれば、反応混合物内にさらに少なくとも1つのアルカリ金属イオンが存在する。しかしながら、個別のケースにおいてはアルカリ金属イオンの存在を全く省略することもできる。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、MO/SiO比は約0.001ないし0.1、特に0.01ないし0.08となり、ここでMはアルカリ金属である。さらに本発明においてはMがナトリウムであることが好適である。
【0023】
本発明の好適な実施形態によれば、RO/SiO比が約0.04ないし0.5、特に0.06ないし0.4となり、ここでRはテトラエチルアンモニウム塩である。
【0024】
さらに、R′/SiO比が約0.05ないし1、特に0.1ないし0.5となり、ここでR′はジエチレントリアミンである。さらに本発明に係る方法において使用される反応混合物内において、HO/SiO比が約6ないし300、特に10ないし50となることが好適である。
【0025】
好適な実施形態によれば、モル比で示して:
SiO/Al 10ないし400
O/SiO 0.001ないし0.1
O/SiO 0.04ないし0.5
R′/SiO 0.05ないし1
O/SiO 8ないし300
の組成を有する反応混合物が使用され、ここでR,R′およびMは前述と同様の定義を示す。特に好適には反応混合物がモル比で示して以下のような組成を有する:
SiO/Al 20ないし50
O/SiO 0.01ないし0.08
O/SiO 0.06ないし0.4
R′/SiO 0.1ないし0.5
O/SiO 10ないし50
ここで、R,R′およびMは前述と同様の定義を示す。
【0026】
本発明の別の好適な実施形態によれば、使用されるテンプレート混合物は少なくともジエチレントリアミンとテトラエチルアンモニウム陽イオンを含んでいる他にさらにジエチレングリコール(R″)を別のCoテンプレートとして含んでいるか、あるいは実質的もしくは完全にそれら3つの成分からなる。ここでR″/SiO比が約0.05ないし1、特に約0.1ないし0.5となることが好適である。さらに、R/(R+R′+R″)のモル比が0.2ないし0.8、またR′/R″が0.1ないし2、特に0.1ないし1となることが好適である。原則的にジエチレントリアミンに加えてあるいはそれに代えて、ジエチレントリアミン同族体、特に一般式HN−(CH−CH−NH)−CH−CH−NHの化合物(ここでxは1より大きい)を(Co)−テンプレートとして使用することができるが、最も良好な結果はジエチレントリアミンによって得られる。
【0027】
本発明に係る反応混合物は少なくとも1つの前述の成分を含んでおり、当業者において周知の方法によってベータゼオライト結晶を形成するために転化される。
【0028】
ここで反応混合物の転化は攪拌を伴ってあるいは攪拌無しで実施することができるが、好適には継続的な攪拌を伴って実施される。多くの場合、転化はポリプロピレン、テフロン(登録商標)被覆された、あるいはステンレス鋼製の圧力釜内で実施することが好適である。ベータゼオライトの結晶化を促進するために、高められた温度、すなわち室温よりも高い温度で転化を実施することが好適である。好適な温度は約70℃ないし200℃、特に約100℃ないし180℃である。
【0029】
ゼオライト結晶の合成のために必要な時間は広範囲の限度内で変動することができ、また当然その他の選択された反応条件、特に反応温度および反応混合物の組成に依存する。多くの場合、反応時間は複数時間ないし複数日となり、例えば16時間ないし90時間となる。
【0030】
転化は通常気圧下で行うか、より好適には高められた気圧下、例えば前述した圧力釜内で実施する。
【0031】
本発明の好適な実施形態によれば、反応混合物にベータゼオライトの結晶を添加することができ、それによって前述したようにベータゼオライトのさらなる結晶の形成を反応混合物の転化によって促進あるいは高速化する。(例えば先に実施された合成からの)シード結晶の使用が当業者において周知である。
【0032】
ベータゼオライト結晶の形成後にこれを当業者において周知の方法、例えば濾過あるいは遠心分離によって分離することができる。
【0033】
そのようにして得られたゼオライト結晶は所要の形態および用途に応じて既知の方法で乾燥かつ焼成することができる。焼成によってゼオライトを水素形式に変換し、テンプレート(混合物)を除去する。焼成は例えば空気中あるいは不活性ガス中で約200℃ないし900℃あるいはそれ以上の温度範囲で実施することができる。
【0034】
本発明の好適な実施形態によれば、Mおよび/またはRおよび/またはR′は部分的あるいは完全に水素および/または周期表においてIIA、IIIA、IVA、IB、IIB、IIIB、IVB、VIB、および/またはVIII族の金属、特にCu、Ag、Co、Fe、Niあるいはプラチナ金属、特に好適にはPt、Pd、RhあるいはRuによって交換される。元の陽イオンもアンモニウムイオンと交換することができる。ベータゼオライトの触媒活性形態は、例えば水素、周期表のIIおよびVII族の希少金属、アルミニウム金属、および/またはマグネシウムを含むことができる。元の陽イオンを交換する方法は当業者において周知であり、従って詳細な説明は省略する。交換は、例えばイオン交換法、含浸、あるいは物理的な混合法によって実施することができる。
【0035】
別の観点において、本発明はベータゼオライトの合成方法におけるテンプレートあるいは補助テンプレート(すなわち別のテンプレートとの組み合わせ)としてのジエチレントリアミンの使用に関する。前述したように、ジエチレントリアミンとテトラエチルアンモニウム陽イオン、および必要に応じてジエチレングリコールの組み合わせがテンプレートとして好適である。
【0036】
別の観点において本発明は、前述した方法によって生成されるベータゼオライトに関する。これは驚くほど良好な特性を有していることが判明した。
【0037】
従って本発明に係るベータゼオライトは特殊な形態を有し、それにおいて小さな一次結晶が大部分より大きな凝集体に合成される。本発明に係るベータゼオライトの特徴的な組成によって、まず従来の方法によって製造されたベータゼオライトに比べて改善された濾過特性が達成される。この改善された濾過特性はこのゼオライトの合成の重要な特性であり、それによってまず高い生産効率および母液からの容易な分離(濾過による)による迅速かつ低コストな合成が可能になる。この利点は、例えば水性のイオン交換あるいは希薄鉱酸もしくは希薄有機酸を使用した非アルミニウム化等の個体・液体分離を必要とする、後の加工ステップにおいても保持される。本発明の好適な実施形態によれば、一次結晶は0.5μm未満、好適には0.1μm未満、特に好適には0.05μm未満の直径を有する。一次結晶は50%超、好適には75%超、特に好適には90%超、0.5μm超、好適には1μm超、特に好適には3μm超の直径からなる凝集体に合着する。一次結晶の大きさは約22.4°の2θにおける反射の線幅に従って測定され、その際新しく合成され、焼成あるいはイオン交換はされていないゼオライト試料を母液から濾過、濾液内の導電性が100μS/cm未満になるまで完全な無塩水中により洗浄、および空気中において120℃で乾燥した後、X線粉末回折法に使用することができる。X線粉末回折法は、例えば米国特許第4554145号明細書の例1に示されているような標準的な方法によって実施される。前述した凝集体に関する数値は平均寸法である(多数の凝集体に関して測定した最大および最少寸法からの相加平均)。その値は、LEO電界放射走査電子顕微鏡(米国LEO電子顕微鏡社製)を使用して、予めアセトン内で再分散させ、30秒間超音波処理し、続いて支持体上に塗布されていた(試験電流範囲は4pAないし10nA)、新しく合成され焼成あるいはイオン交換はされていないベータゼオライトの粉末試料を母液から濾過、濾液内の導電性が100μS/cm未満になるまで完全な無塩水中により洗浄、および空気中において120℃で乾燥した後測定する。測定は80000倍の拡大で実施する。その値は253000倍の拡大で確認することができた。
【0038】
本発明によって生成されたベータゼオライトは一般的に、従来の技術においてベータゼオライトが使用されている全ての分野において使用することができる。ここで特に重要なものは、触媒あるいは触媒担体、ならびに吸着剤としての使用であり、そこで本発明に従って生成されたベータゼオライトが極めて好適な活性度を示すことが判明した。ここで、本発明がその仮説の真偽に依存するものではないが、従来の技術による材料に比べた際の本発明に従って生成されたベータゼオライトの良好な特性が本発明に係る方法によって可能になる結晶および開孔性凝集体の形態によるものであると推定される。
【0039】
触媒中におけるベータゼオライトの適用法の重要な例は、特に香料のアルキル化等の炭化水素の変換、有機性転位反応、フリーデル・クラフツ反応、アルキル化およびアセチル化、特にパラフィンの異性化およびヒドロ異性化、一般的な炭化水素の水素添加および脱水素反応、オレフィン重合およびオリゴマー化、オレフィン−オレフィン変換、ならびにメタノール−プロピレン変換である。
【0040】
吸着剤としての本発明の適用分野においては、限定的なものではない例として、排気ガスからの炭化水素吸収またはNO還元が挙げられる。
【0041】
所要の適用法に従って、本発明に従って製造されたベータゼオライトは別の成分と混合するか、あるいはそれによって後処理することができる。例えばこれは米国特許第4554145号明細書、第4段第60ないし第6段第28行の記載を参照することができ、それが参照に組み入れられている。ゼオライトの好適な後処理としては、水性のイオン交換、個体イオン交換(例えば欧州特許出願公開第0955080号A明細書に記載されている)、希薄鉱酸あるいは希薄有機酸を使用した処理ならびに熱水処理による非アルミニウム化(ゾスタック氏による表面科学触媒の研究第137版(2001年)第261ないし297頁参照)、必要に応じて結合剤を添加した押出成形、ペレット成形あるいは噴霧乾燥による所要の大きさおよび形状の成形体の形成、あるいはいわゆるワックス被覆としてのゼオライトと結合剤の懸濁液による成形体、特にハニカム構造体の被覆が挙げられる。
【0042】
次に本発明について以下に記述する非限定の実施例を参照して詳細に説明する。
【0043】
例1:
ベータゼオライトをモル比で示して:
0.068NaO:0.09TEAO:0.24(HNCNH:0.04Al:SiO:0.18HBr:12H
の組成の反応混合物内で結晶化した(TEA=テトラエチルアンモニウム)。
【0044】
反応混合物は、908.7gの臭化テトラエチルアンモニウムと、641.9gのジエチレントリアミンと、1754.2gの沈澱珪酸塩(ドイツ国デグッサ社製のSipernat(登録商標)320)を4576.2gの水中に溶解して生成する。この混合物に対して、807.6gの水中に199.5gのアルミン酸ナトリウムと39.8gの水酸化ナトリウムを溶解した第2の溶液を撹拌しながら付加した。反応混合物にベータゼオライトシード結晶を付加した。シード結晶の分量は使用されるSiO量に対して10重量%とした。反応混合物を10分間の集中的な攪拌によって均質化し、合成圧力釜(10lの容量)内に移送した。その中で混合物を12時間以内に150℃まで加熱しその後129時間その温度に保持した。冷却後生成物を濾過し、蒸留水で洗浄して120℃で乾燥させた。生成物をX線粉末回折法によって検査し、それが単一相のベータゼオライトとして確認された。湿式化学分析によって0.35重量%のNaと、3.1重量%のAlと、35.5重量%のSiと、13.5重量%のCが確認された。
【0045】
合成されたベータゼオライトの母液からの濾過は、ブフナー漏斗を使用して3時間で完全に実施することができた。
【0046】
得られた一次結晶は17nm未満の直径を有し、90%超が凝集体に合着した。凝集体の平均サイズ、すなわち粒子数に従ったD50値は、2.4μmとなった。凝集体のD10値、すなわち10%の凝集体がそれより小さくなる値は、1.4μmとなった。
【0047】
それに対して、臭化テトラエチルアンモニウムのみをテンプレート(反応混合物中におけるテンプレートモル濃度は同じ)として使用して製造したベータゼオライト(比較)は、母液から濾過するために48時間を必要とした。ゼオライト懸濁物(比較)は微細粒子状で、一次結晶は0.5μmよりも大きくなりまた10%未満が凝集体に合着した。
【0048】
例2:
ベータゼオライトをモル比で示して:
0.04NaO:0.05TEAO:0.12(HNCNH:0.022Al:SiO:12H
の組成の反応混合物内で結晶化した。
【0049】
反応混合物は、1229.0gの水酸化テトラエチルアンモニウム溶液(35重量%の水性溶液)と、361.6gのジエチレントリアミンと、1976.4gの沈澱珪酸塩(ドイツ国デグッサ社製のSipernat(登録商標)320)を4486.3gの水中に溶解して生成する。この反応混合物に対してベータゼオライト型のテンプレート含有結晶シードを175.5g付加した。シード結晶の分量は使用されるSiO量に対して10重量%とした。この混合物に対して、791.7gの水中に124.9gのアルミン酸ナトリウムと30.1gの水酸化ナトリウムを溶解した第2の溶液を撹拌しながら付加した。反応混合物を10分間の集中的な攪拌によって均質化し、合成圧力釜(10lの容量)内に移送した。その中で混合物を12時間以内に150℃まで加熱しその後95時間その温度に保持した。冷却後生成物を濾過し、蒸留水で洗浄して120℃で乾燥させた。生成物をX線粉末回折法によって検査し、それが単一相のベータゼオライトとして確認された。湿式化学分析によって0.9重量%のNaと、2.0重量%のAlと、41.3重量%のSiと、14.7重量%のCが確認された。
【0050】
得られた一次結晶は29nm未満の直径を有し、90%超が凝集体に合着した。凝集体の平均サイズ、すなわち粒子数に従ったD50値は、4.3μmとなった。凝集体のD10値、すなわち10%の凝集体がそれより小さくなる値は、1.5μmとなった。
【0051】
例3(焼成):
例1において得られたベータゼオライトを窒素流内で1K/分の上昇率で380℃まで加熱しその温度に8時間保持し、その後温度を1K/分の速度で480℃まで高めた。その温度に到達した後窒素流に酸素流を追加混合し、その温度をさらに16時間保持した。
【0052】
例4:
ベータゼオライトをモル比で示して:
0.068NaO:0.08TEAO:0.12(HNCNH:0.04Al:SiO:0.16HBr:12H
の組成の反応混合物内で結晶化した。
【0053】
反応混合物は、3662.0gの臭化テトラエチルアンモニウムと、1348.3gのジエチレントリアミンと、7319.4gの沈澱珪酸塩(ドイツ国デグッサ社製のSipernat(登録商標)320)を18132.0gの水中に溶解して生成する。この反応混合物に対してベータゼオライト型のテンプレート含有結晶シードを付加した。シード結晶の分量は使用されるSiO量に対して10重量%とした。続いてこの混合物に対して、2266.5gの水中に838.0gのアルミン酸ナトリウムと167.3gの水酸化ナトリウムを溶解した第2の溶液を撹拌しながら付加した。反応混合物を10分間の集中的な攪拌によって均質化し、合成圧力釜(40lの容量)内に移送した。その中で混合物を12時間以内に150℃まで加熱しその後125時間その温度に保持した。冷却後生成物を薄膜濾過プレスによって濾過し、蒸留水で洗浄して120℃で乾燥させた。生成物をX線粉末回折法によって検査し、それが純粋相のベータゼオライトとして確認された。
【0054】
得られた一次結晶は19nm未満の直径を有し、90%超が凝集体に合着した。凝集体の平均サイズ、すなわち粒子数に従ったD50値は、7.0μmとなった。凝集体のD10値、すなわち10%の凝集体がそれより小さくなる値は、2.0μmとなった。
【0055】
例5:
ベータゼオライトをモル比で示して:
0.08NaO:0.20TEAO:0.107(HNCNH:0.022Al:SiO:0.40HBr:12H
の組成の反応混合物内で結晶化した。
【0056】
反応混合物は、1998.6gの臭化テトラエチルアンモニウムと、261.6gのジエチレントリアミンと、1608.6gの沈澱珪酸塩(ドイツ国デグッサ社製のSipernat(登録商標)320)を3189.6gの水中に溶解して生成する。この混合物に対して、739.3gの水中に101.6gのアルミン酸ナトリウムと100.6gの水酸化ナトリウムを溶解した第2の溶液を撹拌しながら付加した。反応混合物にベータゼオライトシード結晶を付加した。シード結晶の分量は使用されるSiO量に対して10重量%とした。反応混合物を10分間の集中的な攪拌によって均質化し、合成圧力釜(10lの容量)内に移送した。その中で混合物を1.5時間室温で攪拌し、その後12時間以内に150℃まで加熱し、さらに38.5時間その温度に保持した。冷却後生成物を濾過し、蒸留水で洗浄して120℃で乾燥させた。生成物をX線粉末回折法によって検査し、それが単一相のベータゼオライトとして確認された。湿式化学分析によって0.33重量%のNaと、1.7重量%のAlと、36.4重量%のSiと、10.7重量%のCが確認された。
【0057】
得られた一次結晶は33nm未満の直径を有し、90%超が凝集体に合着した。凝集体の平均サイズ、すなわち粒子数に従ったD50値は、3.3μmとなった。凝集体のD10値、すなわち10%の凝集体がそれより小さくなる値は、1.6μmとなった。
【0058】
例6:
ベータゼオライトをモル比で示して:
0.068NaO:0.09TEAO:0.08(HNCNH:0.04Al:SiO:0.16HBr:0.16(HOCO:12H
の組成の反応混合物内で結晶化した。
【0059】
反応混合物は、961.2gの臭化テトラエチルアンモニウムと、209.7gのジエチレントリアミンと、598.7gのジエチレングリコールと、1719.3gの沈澱珪酸塩(ドイツ国デグッサ社製のSipernat(登録商標)320)を4485.0gの水中に溶解して生成する。この反応混合物に対してベータゼオライト型のテンプレート含有結晶シードを付加した。シード結晶の分量は使用されるSiO量に対して10重量%とした。続いてこの混合物に対して、791.5gの水中に195.5gのアルミン酸ナトリウムと39.0gの水酸化ナトリウムを溶解した第2の溶液を撹拌しながら付加した。反応混合物を10分間の集中的な攪拌によって均質化し、合成圧力釜(10lの容量)内に移送した。その中で混合物を12時間以内に150℃まで加熱しその後110時間その温度に保持した。冷却後生成物を薄膜濾過プレスによって濾過し、蒸留水で洗浄して120℃で乾燥させた。生成物をX線粉末回折法によって検査し、それが純粋相のベータゼオライトとして確認された。湿式化学分析によって0.50重量%のNaと、3.2重量%のAlと、41.2重量%のSiと、14.4重量%のCが確認された。
【0060】
得られた一次結晶は22nm未満の直径を有し、90%超が凝集体に合着した。凝集体の平均サイズ、すなわち粒子数に従ったD50値は、4.3μmとなった。凝集体のD10値、すなわち10%の凝集体がそれより小さくなる値は、1.5μmとなった。
【0061】
例7(H型の形成)
5l容量のビーカ内に2310gの完全無塩水を用意し、その中に190.0gの硝酸アンモニウムを溶解し、500gの例3の焼成されたゼオライトを懸濁した。懸濁液を2時間室温で攪拌した。その後ゼオライトをブフナー漏斗によって濾過し蒸留水で洗浄した。得られたフィルタケークを第2のサイクルにおいて2310gの完全無塩水中に190.0gの硝酸アンモニウムを溶解した溶液内に懸濁し、再び2時間室温で攪拌した。
【0062】
その後ゼオライトをブフナー漏斗によって濾過し蒸留水で洗浄した。良好な洗浄効果を達成するため、得られたフィルタケークを4lの完全無塩化した水中で再び浸漬させ、再度ブフナー漏斗によって濾過した。その後フィルタケークを120℃で16時間乾燥させ、450℃で8時間焼成した。得られたH型ベータゼオライトの湿式化学分析によって0.01重量%のNaと、3.4重量%のAlと、42.9重量%のSiと、0.01重量%のCが確認された。
【0063】
例8(Fe型の形成)
5l容量のビーカ内に2400gの完全無塩水を用意し、その中に31.6gの硫酸鉄(II)を溶解し、500gの例3の焼成されたゼオライトを懸濁した。懸濁液のpH値は3.14であった。懸濁液を2時間室温で攪拌した。その後ゼオライトをブフナー漏斗によって濾過し蒸留水で洗浄した。良好な洗浄効果を達成するため、得られたフィルタケークを4lの完全無塩化した水中で再び浸漬させ、再度ブフナー漏斗によって濾過した。その後フィルタケークを120℃で16時間乾燥させ、350℃で8時間焼成した。
【0064】
湿式化学分析によって0.08重量%のNaと、3.4重量%のAlと、43.1重量%のSiと、1.1重量%の鉄が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用されるテンプレートがジエチレントリアミンを含むことからなる、ベータゼオライトの製造方法。
【請求項2】
使用されるテンプレートがジエチレントリアミンとテトラエチルアンモニウム陽イオンを含むことを特徴とする請求項1記載のベータゼオライトの製造方法。
【請求項3】
使用されるテンプレート混合物が実質的あるいは完全にジエチレントリアミンと少なくとも1つのテトラエチルアンモニウム陽イオンを含有する化合物とからなることを特徴とする請求項1または2記載のベータゼオライトの製造方法。
【請求項4】
モル比で示して:
SiO/Al 10ないし400
O/SiO 0.001ないし0.1
O/SiO 0.04ないし0.5
R′/SiO 0.05ないし1
O/SiO 8ないし300
の範囲の組成を有する反応混合物が使用され、ここでRはテトラエチルアンモニウム塩、特にハロゲン化物および/または水酸化物を示し、R′はジエチレントリアミンを示し、Mはアルカリ金属イオンを示すものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ベータゼオライトの結晶が形成されるまで反応混合物を100ないし180℃の温度に保持し、得られたゼオライト結晶を分離することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
モル比で示して:
SiO/Al 20ないし50
O/SiO 0.01ないし0.08
O/SiO 0.06ないし0.4
R′/SiO 0.1ないし0.5
O/SiO 10ないし50
の組成を反応混合物が有し、ここで、R,R′およびMが請求項4と同じ定義を示すことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
R′が一般的な実験式R′X、R′Xおよび/またはR′Xの塩、好適にはハロゲン化物、特に好適には臭化物として使用されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
Rが臭化テトラエチルアンモニウムでMがナトリウムであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
使用されるテンプレートがジエチレントリアミンとてテトラエチルアンモニウム陽イオンの他にジエチレングリコールを含むか、実質的あるいは完全にそれらの化合物からなることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ベータゼオライトのさらなる結晶形成を促進するために反応混合物に対してベータゼオライトのシード結晶を付加することを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
Mおよび/またはRおよび/またはR′は部分的あるいは完全に水素および/または周期表においてIIA、IIIA、IVA、IB、IIB、IIIB、IVB、VIB、および/またはVIII族の金属、特にCu、Ag、Co、Fe、Niあるいはプラチナ金属、特に好適にはPt、Pd、RhあるいはRuによって交換されることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
ベータゼオライトの製造方法におけるテンプレートあるいは補完テンプレートとしてのジエチレントリアミンならびに場合によってジエチレングリコールの適用方法。
【請求項13】
テトラエチルアンモニウム陽イオンを伴った請求項12の適用方法。
【請求項14】
請求項1ないし11のいずれかに記載の方法によって得られたベータゼオライト。
【請求項15】
一次結晶が0.5μm未満、好適には0.1μm未満、特に好適には0.05μm未満の直径を有するとともに、その50%超、好適には75%超、特に好適には90%超が、0.5μm超、好適には1μm超、特に好適には3μm超の直径からなる凝集体に合着することを特徴とする請求項14記載のベータゼオライト。
【請求項16】
特に炭化水素の変換に際しての触媒、または吸着剤としての、請求項14または15記載のベータゼオライト、あるいは請求項1ないし11のいずれかに記載の方法によって得られるベータゼオライトの適用方法。

【公表番号】特表2008−519748(P2008−519748A)
【公表日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540531(P2007−540531)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【国際出願番号】PCT/EP2005/011517
【国際公開番号】WO2006/050820
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(591056237)ジュート−ヒェミー アクチェンゲゼルシャフト (33)
【氏名又は名称原語表記】Sued−Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Lenbachplatz 6, D−80333 Muenchen,Germany
【Fターム(参考)】