説明

ジエンエラストマーと補強炭化ケイ素をベースとしたゴム組成物

【課題】補強機能にすぐれたタイヤ製造用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】ジエンエラストマー、以下の特徴を有する炭化ケイ素フィラー、及び該フィラーと該エラストマーの間に結合を与えるカップリング剤を含む。
(a)20〜200m/gのBET比表面積。
(b)10〜350nmの平均粒径(質量で)d

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ又はタイヤ用半製品、特にタイヤ用トレッドの製造に使用可能なジエンゴム組成物、及び該ゴム組成物を補強可能な補強フィラーに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料経済及び自動車によって排出される汚染を低減するため、タイヤ設計者によって、非常に低い転がり抵抗、乾燥地面及び湿った又は雪で覆われた地面上の両方で改良された接着力、非常に良い耐摩耗性のすべてを有するタイヤを得るための主要な試みが為されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、転がり抵抗を下げ、かつタイヤの接着力を高めるための多くの解決法が提案されているが、これらは、通常、非常に大きく耐摩耗性を低下させてしまう。特に、例えば、従来のシリカ若しくはアルミナ、チョーク、タルク、ベントナイト若しくはカオリンのような粘土のような従来の白色フィラーを、タイヤ、特にトレッドの製造に用いるゴム組成物に取り込むことは、転がり抵抗を下げ、かつ湿った、雪若しくは氷で覆われた地面への接着力を向上させることになるが、許容できない耐摩耗性の低減という結果になり、これら従来の白色フィラーはこのようなゴム組成物について十分な補強能力がないという事実につながることは周知である。この理由のため、これら白色フィラーは、一般に非補強フィラーと呼ばれ、不活性フィラーとも呼ばれる。
【0004】
この問題に対する1つの有効な解決法は、特に特許出願EP-A-0501227、EP-A-0735088又はWO99/02602号明細書に記載されており、これら出願は、その他の特性、特にグリップの特性、耐久性、特に耐摩耗性に逆効果を及ぼすことなく、有意に改良された転がり抵抗を有するトレッドの製造を可能にする高分散性の沈降シリカ(“高い分散性のシリカ”に代えていわゆる“HD”シリカ)で補強されたジエンゴム組成物を開示している。このような矛盾する特性の妥協を有する他の組成物は、特許出願EP-A-0810258及びWO99/02602号明細書にも、補強白色フィラーとして高分散性の特有のアルミナ系フィラーについて記述されている。
【0005】
しかし、これら特有の白色フィラーを含有するゴム組成物は、それらが高分散性タイプの場合でさえ、相互の引力という理由のため、これら白色フィラー粒子はエラストマーマトリックス内で一緒に集塊する刺激性傾向を有するので、従来通りカーボンブラックで充填されているゴム組成物よりも作業しにくい状態である(“加工性”)。これら相互作用は、未硬化状態の組成物のコンシステンシーを高め、ひいてはカーボンブラックが存在する場合よりも作業をしにくくする傾向にあり;その結果、フィラーの分散性を制限し、それゆえ熱機械的混練操作時に生じるであろうすべての(白色フィラー/エラストマー)結合が実際に得られたならば理論的に達成可能なレベルより実質的に低いレベルに補強特性を制限することにもなる。
【0006】
さらに、これらシリカ又はアルミナタイプの無機フィラーは、カーボンブラックで充填されている従来の組成物に比し、エラストマー組成物の加硫キネティクスを有意に破壊するという公知の欠点をも有する。特に、シリカの場合、その結果の長い硬化時間が、該エラストマー組成物の工業的処理、それらを含有するゴム製品の工業的処理にも逆効果を及ぼしうることが分かっている。
【0007】
今や、出願人らは、研究中に、上述したフィラー以外にも真の補強フィラーとしてゴム組成物に使用できる、すなわち、従来のカーボンブラックに代えてタイヤに使用可能な特有の無機フィラーがあることを発見した。予想外にも、これら特有の無機フィラーは、それを含有するゴム組成物に優れた加工性能のみならず、非常に高い分散性を与え、共にカーボンブラックで得られるのと同様である。
さらに、それらはシリカ又はアルミナタイプの補強白色フィラーに特有の硬化キネティクスに関する上記欠点を克服することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
結果として、本発明の第1主題は、少なくとも(i)ジエンエラストマー、(ii)補強無機フィラー、(iii)補強フィラーとエラストマーの間に結合を与えるカップリング剤をベースとしたゴム組成物であって、前記無機フィラーが、以下の特徴:
− (a)20〜200m2/gのBET比表面積;
− (b)10〜350nmの平均粒径(質量で)(dW);
を有する炭化ケイ素(以後“補強炭化ケイ素”と呼ぶ)を含むことを特徴とするゴム組成物に関する。
【0009】
従来、雪又は氷に覆われた地面でのグリップを改良するために、炭化ケイ素がタイヤのトレッドに必須に使用されていることは公知である(例えば、FR-A-655 105、FR-A-2 218 209、FR-A-2 293 325又はDE-A-2 457 446、DE-A-2 355 466、DE-A-2 457 446、DE-A-3 218 124、EP-A-0 442 155、EP-A-0 885 925、JP-A-1985/258235、JP-A-1987/091304、JP-A-1988/151506、JP-A-1990/091137、JP-A-1990/135241、JP-A-1990/266704、JP-A-1991/252432又はUS-A-5,162,395、US-A-3,878,147、US-A-5,223,333、US-A-5,733,650参照)。これらすべての文書では、その粗大サイズとその非常に高い硬度のために選択された炭化ケイ素の粒子は、補強機能ではなく、雪又は氷上での周知の“爪”効果によるグリップを改良するという機能を有する。さらに、通常非常に小割合で存在するこれら従来の炭化ケイ素は、常に、さらにカーボンブラック及び/又はシリカのような真の補強フィラーを含有するゴム組成物に加えられることに留意する必要がある。
【0010】
本発明の主題は、少なくとも1種のジエンエラストマー、少なくとも1種の補強無機フィラー、及び該補強無機フィラーと該エラストマーの間に結合を与えるカップリング剤が取り込まれている、タイヤの製造に使用可能なゴム組成物を得る方法であって、前記無機フィラーが、以下の特徴:
− (a)20〜200m2/gのBET比表面積;
− (b)10〜350nmの平均粒径(質量で)dW
を有する炭化ケイ素を含み、かつ110℃〜190℃の最大温度に達するまで、1段階又は複数段階で、全混合物を熱機械的に混練することを特徴とする方法にも関する。
【0011】
本発明の別の主題は、本発明のゴム組成物の、ゴム製品、特にタイヤ又は該タイヤを意図したゴム半製品製造のための使用でり、これら半製品は、特にトレッド、例えばこのトレッドの下に配置することを意図したアンダーレイヤー、クラウンプライ、サイドウォール、カーカスプライ、ビーズ、プロテクター、インナーチューブ及びチューブレスタイヤ用の気密内部ゴムを含む群から選択される。
【0012】
本発明の組成物は、特に乗用車、バン、4x4車(4本の駆動輪を有する)、二輪車、“重車”(すなわち地下鉄、バス、道路輸送機械類(トラック、トラクター、トレーラー)、路上外走行車)、航空機、建築、農業又は処理機械類に取り付けることを意図しているタイヤ用トレッドの製造に適し、これらトレッドは、新タイヤの製造に使用でき、又は破損タイヤの再生にも使用できる。
【0013】
本発明の主題は、これらタイヤ及びこれらゴム半製品自体でもあり、特にそれが本発明のゴム組成物を含む場合のトレッドである。
本発明の別の主題は、上で定義したような補強炭化ケイ素の、ジエンゴム組成物中での補強フィラーとしての使用である。
最後に、本発明の別の主題は、ジエンゴム組成物を補強する方法であって、上で定義したような補強炭化ケイ素を、未効果状態のジエンゴム組成物に熱機械的混練によって取り込むことを特徴とする方法である。
【0014】
本発明及びその利点は、以下の説明及び実施形態の例、並びにこれら実施例に関する図1〜9を参照して容易に理解されるだろう。図面は、以下を示す。
− 本発明に従う場合と従わない場合のフィラーについて、図9の装置を用いた超音波発生時の集塊サイズの進化曲線であり、この曲線から脱集塊率αを決定する(図1〜図4);
− 本発明に従う場合と従わない場合の種々のジエンゴム組成物に対する伸びの関数としてのモジュラスの変化曲線(図5〜図8);
− 粒子の集塊形態のフィラーの超音波脱集塊率(α)の測定に好適な装置の図(図9)。
【0015】
I.使用する測定及び試験
I−1.補強フィラーの特徴づけ
後述するフィラーは、周知のように粒子の集塊から成り、外力の影響下、例えば機械仕事又は超音波の作用下で脱集塊してこれらの粒子になりやすい。本明細書で使用する場合、用語“粒子”は、その“凝集体”の普通の一般的な意味で理解しなければならず(“二次粒子”とも呼ばれる)、当てはまる場合、この凝集体の一部を形成しうる可能な基本粒子(“一次粒子”とも呼ばれる)の意味ではなく;“凝集体”は、周知のように、通常、フィラーの合成時に一緒に凝集して生じる基本(一次)粒子で形成された非分裂単位(すなわち、切断又は分割できない)を意味するものと理解される。
これらフィラーは、後述するように特徴づけられる。
【0016】
a)BET比表面積:
BET比表面積は、“The Journal of the American Chemical Society”第60巻,309ページ,1938年2月に記載され、さらに正確には1996年12月の仏国規格NF ISO 9277に準拠したブルナウアー-エメット-テラーの方法を用いる気体の吸着によって決定する[多点容積法(5点)−気体:窒素−脱気:160℃で1時間−相対圧力p/poの範囲:0.05〜0.17]。
【0017】
b)平均粒径dW
粒子の平均径(質量で)dWは、従来通り0.01mol/lの水酸化ナトリウム水溶液中分析すべきフィラーの超音波分散後に測定する(約0.4質量%)。
測定は、特にカーボンブラックの粒の特徴づけに使用される公知の装置、Brookhaven Instruemnts販売の光学検出遠心分離沈降速度計タイプ“DCP”(“ディスク遠心分離光沈降速度計”)を用いて行う。この装置は、600〜700nmのスペクトルバンドで放射するLED源を備えている。
【0018】
操作方法は以下の通りである。8分にわたる1500W超音波プローブ(照会番号M7545でBioblockによって販売されているVibracell 3/4-インチ超音波発生装置)の60%パワーの(“出力制御”の最大位置の60%)作用によって、懸濁安定剤として0.01mol/lのNaOHを含有する40mlの水溶液中3〜6mg(例えば、多くの場合5mgが適切である)のフィラー試料の懸濁液を製造する。超音波発生時の加熱を制限するため、懸濁液は、好ましくは冷水(例えば5〜10℃の温度)の浴内に置く。超音波発生後、15mlの懸濁液を回転ディスク内に導入し;120分間の沈降後、“DCP”沈降速度計のソフトウェアにより、分析されるフィラーの複合屈折率(例えば、炭化ケイ素ではn*=2.61+1.00.i)、懸濁媒体の屈折率及びBrookhaven Instrumentsによって提供されるソース/検出器ペアのスペクトル特徴を考慮した特有の光学補正を施すことによって、粒径の質量分布及び粒子の平均質量径dWを周知のやり方で計算する(dW=Σ(nii5)/Σ(nii4)、式中ni=サイズクラス又は直径diの対象数)。20℃における水の屈折率の値:620nmに対する1.3322と690nmでの1.3305の間の直線補間により、周知のやり方でLED源の波長の関数として懸濁媒体の屈折率を得る。この光学補正値は、Brookhaven InstrumentsからのプログラムDCP_SCAT.exeによって生成される。
【0019】
c)脱集塊率:α
脱集塊率(α)は、600W(ワット)プローブの20%パワーでのいわゆる“超音波脱集塊試験”で測定する。周知原理のこの試験は、超音波発生時の粒子の集塊の平均径(容量で)の進化の連続的な測定を可能にする(WO99/28376、WO99/28380、WO99/28391号明細書参照)。観察する対象が非常に小さいサイズであることを考慮して、フラウンホーファーの方法ではなく、この場合にはMieの方法を用いて操作方法を適合させた。
【0020】
使用装置は、レーザー粒度分析計(Malvern Instruments販売の“Mastersizer S”型−He-Ne赤色レーザー源、波長632.8nm)及びそのプレパラー(preparer)(“Malvern Small Sample Unit MSX1”)で形成され、その間に超音波プローブ(照会番号M72412でBioblockによって販売されている600W 1/2インチ超音波発生装置Vibracell型)を備えた連続流処理セル(Bioblock M72410)が挿入されている。
【0021】
分析すべき小量(20mg)のフィラーを160mlのNH4OH水溶液と共にプレパラー内に導入し、循環速度はその最大に設定する(1分毎に約3リットル)。NH4OH溶液は、フィラーのBET比表面積に応じて、1000mlの水に希釈した25質量%のNH3を有する5又は10mlのNH4OH(例えば照会番号09860のFlukからの製品)で調製する(最高100m2/gに等しいBET値では5ml、どのBET比表面積でも10mlで十分である)。
【0022】
少なくとも3回の連続測定を行い、公知のMie計算法[複合屈折率(例えば炭化ケイ素ではn*=2.61+1.00i.)によって確立されたMalvern 3TJD計算マトリックス]に従ってdV[0]と呼ばれる、集塊の初期平均直径(容量で)を決定する。
そして、超音波発生を20%のパワー(又は“先端振幅”の最大位置の20%)に設定し、時間“t”の関数として容量平均直径の進化dV[t]を約10秒毎に1回の測定で約9分間監視する。誘導時間(約3分)後、容量平均直径の逆数1/dV[t]は、直線的又は実質的に直線的に時間“t”に伴って変化することが分かった(安定な脱集塊条件)。脱集塊率αは、安定な脱集塊条件のゾーン内の(通常、約3〜9分)、時間“t”の関数として1/dV[t]の進化曲線の線形回帰によって計算する。それはμm-1/秒で表される。
【0023】
図9は、この超音波脱集塊試験を行うために使用できる測定装置を示す。この装置は、閉回路1から成り、その中で液体3に懸濁している粒子の集塊の流れ3が循環できる。この装置は、基本的に試料プレパラー10、レーザー粒度分析計20及び処理セル30を含む。試料プレパラー10及び処理セル30自体の高さにある大気圧への通気口(13、33)は、超音波発生(すなわち、超音波プローブの作用)時に生成する気泡の連続的な除去を可能にする。
【0024】
試料プレパラー10(“Malvern Small Sample Unit MSX1”)は、(液体3に懸濁している)試験すべきフィラーの試料を受け、それを、懸濁液の流れ2の形態で回路1を通して予め制御した速度(電位差計17)で送ることを意図している。このプレパラー10は、単純に、分析すべき懸濁液を含有する受けタンクから成り、それを通じて懸濁液を循環させる。それは、懸濁液の粒子の集塊の沈降を防止するための可変速度の撹拌モーター15を備え;遠心分離ミニポンプ16は、回路1内で懸濁液2を循環させることを意図しており;プレパラー10への入口11は、試験すべきフィラーの試料及び/又は懸濁液のために使用される液体3を受けることを意図した開口13を経て大気に通じている。
【0025】
プレパラー10には、レーザー粒度分析計20(“Mastersizer S”)が接続されており、この役目は、粒度分析計20の自動記録及び計算手段に連結された測定セル23によって、流れ2が通過する時の集塊の容量平均径“dV”を規則的な間隔で、連続的に測定することである。ここで、手短に言えば、レーザー粒度分析計は、周知のように、媒体中に懸濁している固体対象による光の回折の原理を利用しており、媒体の屈折率は該固体の屈折率とは異なることを想起すべきである。実際には、それは、観察する対象のサイズ、試料の粒度分布(容量で)、この分布の容量平均径に相当するdVに応じて、フラウンホーファー理論、又はMie理論のどちらかによって、周知のやり方で決定できるように異なる角度の回折について回折される光の量を測定するために十分である(dV=Σ(nii4)/Σ(nii3)、式中niはサイズクラス又は直径diの対象数である)。
【0026】
最後に、プレパラー10とレーザー粒度分析計20の間には、流れ2が通過する時に粒子の集塊を連続的に分解することを意図した超音波プローブ35(コンバーター34とプローブヘッド36)を備えた処理セル30が挿入されている。
この処理セル30は、操作時、処理セル30に入る前に、プレパラー10から現れる粒子の流れ2が、まずレーザー粒度分析計20を通過するように、粒度分析計20の出口22とプレパラー10への入口11との間に配置される。この配置は、測定のために2つの主要な利点を有し:第1に、超音波プローブの作用による気泡がプレパラー10(大気中にある)を通過するとすぐ、すなわち、粒度分析計20に入る前に除去されるので、レーザー回折測定を混乱させず;第2に、まずプレパラー10を通過することで懸濁液の均質性が高められる。
【0027】
処理セル30は、さらにその中を貫通する粒子の流れ2が、入口31を経て、まず超音波プローブ35のヘッド36の前を通過するように配置されており;この慣例に従わない配置(流れ2が、セルの上部32ではなく底部31から入る)は、以下の利点を有する:まず第1に、すべての循環懸濁液2が超音波プローブ35の末端36の前を通過させられ、このゾーンが脱集塊という点から最も活性であり;第2に、この配置は超音波発生後に処理セル30本体自体の最初の脱気を可能にし、懸濁液2の表面は小径のチューブ33によって大気と接している。
【0028】
流れ2は、好ましくは、プローブ35を取り囲む二重ケーシング内のセル30の高さに配置された冷却回路40によってサーモスタット制御され、その温度は、例えば、プレパラー10の高さの液体3に浸漬された熱センサー14によって制御される。測定装置の各種要素の配置を最適化して、循環容量、すなわち、接続チューブ(例えば、フレキシブルチューブ)の長さをできる限り限定する。
【0029】
I−2.ゴム組成物の特徴づけ
ゴム組成物は、後述するように、硬化前後で特徴づけする。
a)ムーニー塑性:
仏国規格NF T 43-005(1991)に記載されているような振動粘稠度計を使用する。ムーニー塑性は、以下の理論に従って測定する:生の組成物(すなわち硬化前)を100℃に加熱した円筒容器内で成型する。1分の予備加熱後、2rpmで試験片内でローターを回転させ、4分の回転後、この運動を維持すために使われるトルクを測定する。ムーニー塑性(ML 1+4)は、“ムーニー単位”(MU、1MU=0.83ニュートン.メートル)で表される。
【0030】
b)引張り試験:
この試験によって弾性応力及び破断点特性を決定することができる。特に言及しない限り、試験は1988年9月の仏国規格NF T 46-002に準拠して行う。MPaで表される真のセカントモジュラス(すなわち試験片の実断面積に換算して計算される)は、第1伸び(すなわち順応サイクルなし−モジュラスは“M”と示される)又は第3伸び(すなわち2順応サイクル後−モジュラスは“E”と示される)のどちらかで、10%伸び(それゆえ、それぞれM10及びE10と示されるモジュラス)、100%伸び(それぞれ、M100及びE100と示されるモジュラス)、及び300%伸び(それぞれ、M300及びE300と示されるモジュラス)で測定する。
【0031】
破壊応力(MPa)及び破断点伸び(%)も測定する。すべてこれら引張り測定は、仏国規格NF T 40-101(1979年12月)に準拠した標準条件の温度(23±2℃)及び湿度(50±5%相対湿度)下で行う。
記録した引張りデータを処理すると、伸びの関数としてモジュラスの曲線をプロットでき(添付図面5〜8参照)、ここで使用するモジュラスは、第1伸びで測定した真のセカントモジュラスである(モジュラス“M”)。
【0032】
c)動的特性:
動的特性ΔG*及びtan(δ)maxは、粘土分析計(Metravib VA4000)で、ASTM規格D 5992-96に準拠して測定する。規格ASTM D 1349-99に準拠した10Hzの周波数で標準条件温度下(23℃)交互の単一正弦剪断応力を受けた加硫組成物の試料(厚さ4mm、断面積400mm2の円筒状試験片)の応答を記録する。0.1から50%(外向きサイクル)、次いで50%から1%(戻りサイクル)の振幅の変形で走査を行う。使用する結果は、複合動的剪断モジュラス(G*)及び損失因子(tanδ)である。戻りサイクルでは、観察されるtanδの最大値は、0.15及び50%変形での値間の複合モジュラスの偏差(ΔG*)として示される(tan(δ)max)(Payne効果)。
【0033】
d)“結合ゴム”試験:
いわゆる“結合ゴム”試験は、未加硫組成物中のエラストマーの比率を決定することができ、未加硫組成物が非常に親密に補強フィラーと結合しているので、この比率のエラストマーは、通常の有機溶媒に不溶である。混練時に補強フィラーと結合されているこの不溶ゴムの比率の知識が、該ゴム組成物中のフィラーの補強活性の定量的な指標を与える。このような方法は、例えば、カーボンブラックに結合されているエラストマーの量の決定に適用される仏国規格NF T 45-114(1989年6月)に記述されている。
補強フィラーによって与えられる補強の質を特徴づけるために当業者に周知のこの試験は、例えば、以下の文書:Plastics,Rubber and Composites Processing and Aplications,25巻,7号,p.327(1996);Rubber Chemistry and Technology,69巻,p.325(1996)に記述されている。
【0034】
本発明の場合、トルエンで抽出できないエラストマーの量は、この溶媒中(例えば80〜100cm3のトルエン中)ゴム組成物試料の15日間の膨潤、次いで100℃で真空中24時間の乾燥工程後、このように処理したゴム組成物の試料を秤量して測定する。好ましくは、上記膨潤段階は、周囲温度(約20℃)かつ光から保護して行い、例えば、最初の5日間の膨潤後に、溶媒(トルエン)を一度変える。“結合ゴム”の量(質量%)は、計算中、最初にゴム組成物中に存在しているエラストマー以外の本来不溶性の成分フラクションを斟酌かつ除去後、ゴム組成物の試料の初期質量と最終質量との差によって公知のやり方で計算する。
【0035】
e)レオメトリー:
測定は、DIN規格53529-パート3(1983年6月)に準拠し、振動チャンバーレオメーターにより150℃で行う。時間の関数としての流動トルクの進化は、加硫反応後の該組成物の硬化の進化を描く。測定は、DIN規格53529-パート2(1983年3月)に準拠して行い:デシニュートン.メートル(dN.m)で測定された最小及び最大トルクは、それぞれCmin及びCmaxと表し;tiは誘導期間、すなわち、加硫反応の開始に必要な時間であり;tα(例えばt99)は、α%、すなわち最小及び最大トルク間の偏差のα%(例えば99%)の転換を達成するのに必要な時間、最小及び最大トルク間の偏差、Δトルク(dN.m)及び30%〜80%転換で計算される1桁の転換速度定数K(分-1)も測定し、加硫キネティクスを評価することができる。
【0036】
II.本発明を実施する条件
本発明のゴム組成物は、以下の成分:(i)(少なくとも)ジエンエラストマー、(ii)(少なくとも)補強無機フィラー及び(iii)(少なくとも)このフィラーとこのジエンエラストマーの間に結合を与えるカップリング剤をベースとし、前記無機フィラーは、詳細に後述するような補強炭化ケイ素を含む。
当然、表現“〜をベースとした”組成物は、使用する種々のベース成分の混合物及び/又はインサイツ反応の生成物を含む組成物を意味し、これらベース成分のいくつかは、少なくとも部分的に、該組成物の製造の異なる段階中、又は該組成物の後硬化時に、一緒に反応でき、及び/又は反応することを意図している。
【0037】
II-1.ジエンエラストマー
“ジエン”エラストマー又はゴムは、周知のように、少なくとも部分的に(すなわち、ホモポリマー又はコポリマー)、ジエンモノマー(2個の共役又は非共役炭素−炭素二重結合を持っている)から生じるエラストマーを意味するものと理解される。
一般に、“本質的に不飽和の”ジエンエラストマーは、ここでは、少なくとも部分的に、15%(モル%)より多いジエン起源(共役ジエン)のメンバー又は単位を含有する共役ジエンモノマーから生じるジエンエラストマーを意味するものと理解される。
従って、例えば、ブチルゴムのようなジエンエラストマー又はジエンとEPDMタイプのα−オレフィンとのコポリマーは、前記定義には包含されず、特に“本質的に飽和の”ジエンエラストマー(常に15%未満である低い又は非常に低い含量のジエン起源の単位)として記述することができる。
“本質的に不飽和の”ジエンエラストマーの分類内では、“高度に不飽和の”ジエンエラストマーは、特に50%より多いジエン起源(共役ジエン)の単位を含有するジエンエラストマーを意味するものと理解される。
【0038】
この定義を与えることにより、特に本発明の組成物に使用可能なジエンエラストマーは、以下を意味することが分かる。
(a)4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの重合によって得られるホモポリマー;
(b)1種以上の一緒に共役しているジエン、又は8〜20個の炭素原子を有する1種以上のビニル芳香族化合物と共役しているジエンの共重合によって得られるコポリマー;
(c)エチレンと、3〜6個の炭素原子を有するα−オレフィンと、例えば、上記タイプの非共役ジエンモノマーとエチレン、プロピレンから得られるエラストマー、特に1,4-ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン又はジクロロペンタジエンのような6〜12個の炭素原子を有する非共役ジエンモノマーとの共重合によって得られる三元コポリマー;
(d)イソブテンとイソプレンとのコポリマー(ブチルゴム)、及びハロゲン化、特に塩素化又は臭素化されたこのタイプのコポリマーの変形。
【0039】
本発明はどのタイプのジエンエラストマーにも適用するが、タイヤ技術の当業者は、該ゴム組成物が特にタイヤトレッド用を意図している場合、本発明は、真っ先に本質的に不飽和のジエンエラストマー、特に上記(a)又は(b)タイプのジエンエラストマーと共に使用されることが分かるだろう。
好適な共役ジエンは、特に1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、例えば、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-イソプロピル-1,3-ブタジエンのような2,3-ジ(C1-C5アルキル)-1,3-ブタジエン、アリール-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン及び2,4-ヘキサジエンである。
好適なビニル芳香族化合物は、例えば、スチレン、オルト-、メタ-及びパラ-メチルスチレン、市販化合物“ビニルトルエン”、パラ-tert.ブチルスチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン及びビニルナフタレンである。
【0040】
コポリマーは、99質量%〜20質量%のジエン単位と、1質量%〜80質量%のビニル芳香族単位を含有することができる。エラストマーは、いずれのミクロ構造をも持つことができ、使用する重合条件、特に変性剤及び/又はランダム化剤の存否と、使用する変性剤及び/又はランダム化剤の量の相関である。エラストマーは、例えばブロック、統計的、配列的又はミクロ配列的エラストマーでよく、分散系又は溶液中で調製することができ;エラストマーは、カップリング及び/又は星状化又は官能化剤でカップリング及び/又は星状化又は代わりに官能化されうる。
【0041】
ポリブタジエン、特に4%〜80%の1,2-単位含量を有するもの、又は80%より多いシス-1,4含量を有するもの、ポリイソプレン、ブタジエン−スチレンコポリマー、特にスチレン含量が5質量%〜50質量%、さらに詳しくは20%〜40%、該ブタジエン部分の1,2-結合の含量が4%〜65%、かつトランス-1,4結合の含量が20%〜80%のもの、ブタジエン−イソプレンコポリマー、特に5質量%〜90質量%のイソプレン含量と、-40℃〜-80℃のガラス転移温度(Tg)(“Tg”−ASTM規格D3418-82に準拠して測定)を有するもの、イソプレン−スチレンコポリマー、特に5質量%〜50質量%のスチレン含量と、-25℃〜-50℃のTgを有するものが好ましい。
【0042】
ブタジエン−スチレン−イソプレンコポリマーの場合、好適なものは、特に5質量%〜50質量%、さらに詳しくは10質量%〜40質量%のスチレン含量と、15質量%〜60質量%、さらに詳しくは20質量%〜50質量%のイソプレン含量と、5質量%〜50質量%、さらに詳しくは20質量%〜40質量%のブタジエン含量と、該ブタジエン部分の4%〜85%の1,2-単位含量と、該ブタジエン部分の6%〜80%のトランス1,4-単位含量と、該イソプレン部分の5%〜70%の1,2-プラス3,4-単位含量と、該イソプレン部分の10%〜50%のトランス1,4-単位含量とを有するものであり、かつさらに一般的にはいずれのブタジエン−スチレン−イソプレンコポリマーも、-20℃〜-70℃のTgを有する。
【0043】
本発明の好ましい実施形態により、本発明の組成物のジエンエラストマーは、ポリブタジエン(BR)、合成ポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエン−スチレンコポリマー(SBR)、ブタジエン−イソプレンコポリマー(BIR)、ブタジエン−アクリロニトリルコポリマー(NBR)、イソプレン−スチレンコポリマー(SIR)、ブタジエン−スチレン−イソプレンコポリマー(SBIR)、及びこれらエラストマーの混合物から成る、高度に不飽和のジエンエラストマーの群から選択される。
本発明の組成物は、特にタイヤ用トレッドを意図しており、タイヤは新タイヤ又は中古タイヤ(再生の場合)である。
【0044】
このようなトレッドが、例えば乗用車タイヤ用を意図している場合、ジエンエラストマーは、好ましくはSBR又はSBR/BR、SBR/NR(又はSBR/IR)、又は代わりにBR/NR(又はBR/IR)ブレンド(混合物)である。SBRエラストマーの場合、特に20質量%〜30質量%のスチレン含量と、該ブタジエン部分の15%〜65%のビニル結合含量と、15%〜75%のトランス-1,4結合含量と、-20℃〜-55℃のTgを有するSBRが使用され、このSBRコポリマーは、好ましくは溶液中で調製され、おそらく好ましくは90%より多いシス-1,4結合を有するポリブタジエン(BR)との混合物で使用される。
【0045】
トレッドが重車用タイヤのような実用タイヤを意図している場合、ジエンエラストマーは、好ましくはイソプレンエラストマーである。“イソプレンエラストマー”は、周知のように、イソプレンホモポリマー又はコポリマー、他言すれば、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、種々のイソプレンコポリマー及びこれらエラストマーの混合物から成る群より選択されるジエンエラストマーを意味するものと理解される。イソプレンコポリマーのうち、特にイソブテン−イソプレンコポリマー(ブチルゴム−IIR)、イソプレン−スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン−ブタジエンコポリマー(BIR)又はイソプレン−ブタジエン−スチレンコポリマー(SBIR)が挙げられる。イソプレンエラストマーは、好ましくは天然ゴム又はシス-1,4タイプの合成ポリイソプレンである。この合成ポリイソプレンのうち、好ましくはシス-1,4結合の含量(モル%)が90%より多い、さらになお好ましくは98%より多いポリイソプレンが用いられる。当然、ジエンエラストマーは、部分的に、例えば、SBRエラストマーのような別の高度に不飽和のエラストマーで形成されていてもよい。
【0046】
本発明の別の有利な実施形態により、特にタイヤサイドウォールを意図している場合、本発明の組成物は、少なくとも1種の本質的に飽和のジエンエラストマー、特に少なくとも1種のEPDMコポリマーを含有することができ、このコポリマーを使用するかしないかいずれにしても、例えば、上述した高度に不飽和の1種以上のジエンエラストマーとの混合物で使用する。
本発明の組成物は、単一のジエンエラストマー又は数種のジエンエラストマーの混合物を含んでよく、このジエンエラストマーは、おそらくジエンエラストマー以外のいずれのタイプの合成エラストマーとも併用され、或いはエラストマー以外のポリマー、例えば熱可塑性ポリマーとさえ併用される。
【0047】
II−2.補強フィラー
補強無機フィラーとして用いられる炭化ケイ素は、全補強フィラーのすべて又は一部のみを構成することができ、後者の場合、例えば、シリカのような別の補強無機フィラーと、又は従来のカーボンブラックと併用される。
好ましくは、炭化ケイ素が大部分、すなわち、全補強フィラーの50%より多くを構成し(すなわち、カーボンブラックの無い全補強無機フィラーの)、このパーセンテージは、ここでは、炭化ケイ素と、カーボンブラック又はシリカタイプの従来のフィラーとの間の密度の大きな差を斟酌するため、質量ではなく容量で表される。
【0048】
本出願では、“補強”フィラーは、一般的に、それ自体で、中間カップリング剤以外のいずれの他の手段なしで、タイヤの製造を意図しているゴム組成物を補強できるフィラーを意味するものと理解され;他言すれば、“補強”フィラーと呼ばれる無機フィラーは、その補強機能で従来のタイヤグレードカーボンブラックフィラーと交換することができる。
従って、本発明の組成物は、補強フィラーとして、以下の特徴:(a)20〜200m2/gのBET比表面積;(b)10〜350nmの平均粒径(質量で)dWを有する炭化ケイ素を使用する。
“炭化ケイ素”は、何らかの不純物とは別に、その形態が結晶であれ、又は不定形であれ、公知の式SiCに相当するいずれの化合物をも意味するものと理解される。
【0049】
20m2/g未満のBET比表面積では、本組成物は容易な作業性と低減されたヒステリシスを有するが、破断特性の低下及びタイヤの耐摩耗性の減少が観察され;200m2/gを超えるBET比表面積では、未硬化状態の作業がより難しくなり(より高いムーニー塑性)、かつ結果としてフィラーの分散に逆効果を及ぼす。350nmを超える過剰に大きい径dWでは、粒子は、応力を局在化し、かつ摩耗の点で有害な欠点のように働き;他方、10nm未満の小さすぎる径dWは、未硬化状態の作業性及びこの作業時のフィラーの分散を損なわせる。
上述したすべての理由のため、BET比表面積は、好ましくは20〜150m2/gにあり、かつ粒径dWは、好ましくは20〜300nmの範囲内にある。
【0050】
フィラーの固有の分散性は、セクションIで上述した公知の超音波脱集塊試験を用い、このフィラーの脱集塊率αを測定することによって評価することができる。好ましくは、前述した補強炭化ケイ素は、600W超音波プローブの20%のパワーでの脱集塊試験で測定した率αが1×10-4μm-1/秒より大きい。このような好ましい特徴は、このタイプの製品について、第1にエラストマーとの混合時にマトリックス中に取り込み、第2に脱集塊して、ゴムマトリックス中に均一に、微細形態で分散させるための非常に良い能力を保証する。1×10-4μm-1/秒より大きい率αでは、本技術の規則に従って調製したゴム組成物の断面上に光学顕微鏡の反射光によってほとんど微細な集塊が観察されないことが分かった。
【0051】
さらに好ましくは、特に本発明の組成物が低い転がり抵抗及び高い耐摩耗性を有する、タイヤ用トレッドを意図している場合、使用する補強炭化ケイ素は、以下の特徴:
− 25〜140m2/gの範囲内のBET比表面積;
− 20〜250nmの範囲内の粒径dW
を少なくとも1つ、好ましくは両方満たす。
さらに、ジエンゴムマトリックス中の補強炭化ケイ素のさらに良い分散性のため、ひいては最適補強のため、その脱集塊率αは5×10-4μm-1/秒より大きく、さらに好ましくは1×10-3μm-1/秒より大きいことが好ましい。
【0052】
さらに、補強炭化ケイ素の粒子は、良い表面反応性を有しており、すなわちカップリング剤について反応性である表面ヒドロキシル官能(-OH)の数が多く、該フィラーによって達成される補強機能に特に好ましく、それゆえ本発明のゴム組成物の機械的性質に好ましい。
補強炭化ケイ素が存在しうる物理的状態は重要でなく、粉末、ミクロビーズ、顆粒、ボール形状、又は当然に高密度化態様がこのフィラーついて提唱されている本質的又は好ましい特徴に逆効果を及ぼさないことを条件として、他のいずれの高密度形態でもよい。
上記補強炭化ケイ素は、独立して使用でき、又は別の補強無機フィラーと、数種でさえ、例えばシリカ又はアルミナと併用してよい。ここで、従来のカーボンブラックと対比して、“白色”フィラー(“透明”フィラーと呼ばれることもある)は、その色及びその起源(天然又は合成)にかかわらず、いずれの無機又は鉱物フィラーをも意味するものであることが想起されるだろう。
【0053】
シリカの場合、特に本発明が低い転がり抵抗を有するタイヤ用トレッドの製造に使用される場合、好ましくは高分散性沈降シリカが使用され;このような好ましい高分散性シリカの非限定的例として、DegussaからのシリカUltrasil 7000及びUltrasil 7005、RhodiaからのシリカZeosil 1165MP、1135MP及び1115MP、PPGからのシリカHi-Sil EZ150G 、HuberからのシリカZeopol 8715、8745及び8775、及び例えば、上記特許出願EP-A-0735088号明細書に記述されているアルミニウム-“ドープド”シリカのような加工沈降シリカが挙げられる。補強アルミナを使用する場合、これは、好ましくは前出EP-A-0810258号明細書に記述されているような高分散性アルミナ、例えばアルミナ“Baikalox”“A125”又は“CR125”(Baikowskiから)、“APA-100RDX”(Condeaから)、“Aluminoxid C”(Degussaから)又は“AKP-G015”(住友化学)である。
【0054】
単独又はおそらく別の補強無機フィラーと併用される補強炭化ケイ素は、1種以上の従来のタイヤグレードカーボンブラックとのブレンド、すなわち混合物で使用することもできる。いずれのカーボンブラックも適し、特にタイヤ、特にタイヤトレッドで従来使用されているHAF、ISAF及びSAFタイプのカーボンブラックである。このようなカーボンブラックの非限定的例として、ブラックN115、N134、N234、N330、N339、N347、N375が挙げられる。
全補強フィラー中に存在するカーボンブラックの量は広い限度内で変えることができるが、この量は、好ましくはゴム組成物中に存在する炭化ケイ素の量より少ない。
本発明の組成物では、カーボンブラックは、補強炭化ケイ素と組合せて、小割合、好ましくは2〜20phr、さらに好ましくは5〜15phrの範囲内で(エラストマー100部当たりの質量部)有利に使用される。提示した範囲内では、補強炭化ケイ素によって与えられる典型的な性能にさらに逆効果を及ぼすことなく、着色特性(黒着色剤)及びカーボンブラックの抗紫外線特性由来の利点がある。
【0055】
好ましくは、本発明の組成物中の全補強フィラーの量は、無機フィラーの量に関する限り、20〜400phr、さらに好ましくは30〜200phrの範囲内にある。実際には、最適量は意図する用途によって異なり:周知なように、自転車用タイヤで期待される補強のレベルは、例えば、乗用車又は重車のような実用車のタイヤで必要とされるよりも明らかに低い。本発明の組成物がタイヤ用トレッドを意図している場合、補強無機フィラーの量、ひいては補強炭化ケイ素の量は、後者が全補強無機フィラーを構成する場合、好ましくは50phrより多い、例えば50〜150phr、さらに好ましくは60phrより多い量が選択される。
【0056】
本発明のゴム組成物に適合しやすい補強炭化ケイ素の例としては、特にレーザー熱分解技術(例えばFR-A-2677558号明細書参照)によって公知の方法で得られる炭化ケイ素が挙げられ;その合成は、特に以下の出版物で詳述されている:“シラン及び炭化水素混合物からの炭化ケイ素粉末のレーザー合成”,M.Cauchetier,O.Croix及びM.Luce,Adv.Ceram.Mater.,3(6),548-552(1988);又は“合成条件による超微細炭化ケイ素のレーザー形成粉末構造の進化”,P.Tougne,H.Hommel,A.Legrand,N.Herlin,M.Luce及び M.Cauchetier,Diam.Relat.Mater.,2(2-4),486-490(1993)。
本発明の組成物で使用可能な補強炭化ケイ素の別の例は、MarkeTech International Inc.(USA,Port Townsen WA)によって照会番号“NP-S0140”で販売されている炭化ケイ素である。
【0057】
II−3.カップリング剤
本技術の当業者には、例えば、シリカ又は補強アルミナのような補強無機フィラーには、結合剤とも呼ばれる、(白色フィラー/エラストマー)カップリング剤の使用が必要なことは周知であり、その役割は、この無機フィラーのエラストマーマトリックス内での分散を促しながら、白色フィラーとエラストマーとの間に結合又は“カップリング”を生成することである。
前述した補強炭化ケイ素も、本発明のゴム組成物中で補強フィラーのその機能を果たすためにこのようなカップリング剤の使用を必要とする。
【0058】
“カップリング剤”は、さらに正確には、問題のフィラーとエラストマーとの間に十分な化学的及び/又は物理的結合を確立できる薬剤を意味するものと理解され;少なくとも二官能性であるこのようなカップリング剤は、例えば、簡略一般式“Y-T-X”を有し、式中:
−Yは、物理的及び/又は化学的に無機フィラーと結合できる官能基(“Y”官能)を表し、このような結合は、例えば、カップリング剤のケイ素原子と無機フィラーの表面ヒドロキシル(OH)基(例えば、シリカの場合の表面シラノール)との間で確立され;
−Xは、例えばイオウ原子によって、物理的及び/又は化学的にエラストマーと結合できる官能基(“X”官能)を表し;
−Tは、YとXの連結を可能にする基を表す。
【0059】
カップリング剤は、周知のように、該フィラーについて活性であるY官能を含むが、該エラストマーについて活性であるX官能を欠いている、問題のフィラーを覆うための単なる薬剤と混同してはならない。
可変な有効性のこのようなカップリング剤は、非常に多くの文書で記述されており、かつ当業者には周知である。実際には、タイヤの製造に使用可能なジエンゴム組成物中で、シリカのような補強白色フィラーと例えばオルガノシランのようなジエンエラストマーとの間の有効な結合又はカップリングを確実にすることが分かっているか、又はそう思われる公知のいずれのカップリング剤も使用でき、特に多硫化アルコキシシラン若しくはメルカプトシラン、又は代わりに上述したX及びY官能を持っているポリオルガノシロキサンが使用される。
【0060】
シリカ/エラストマーカップリング剤は、特に多くの文書に記述されており、多硫化アルコキシシランのような二官能性アルコキシシランが最もよく知られている。
特に、このような公知の化合物について詳述している、例えば特許US-A-3 842 111、US-A-3 873 489、US-A-3 978 103、US-A-3 997 581、US-A-4 002 594、US-A-4 072 701、US-A-4 129 585、又はさらに最近の特許US-A-5 580 919、US-A-5 583 245、US-A-5 650 457、US-A-5 663 358、US-A-5 663 395、US-A-5 663 396、US-A-5 674 932、US-A-5 675 014、US-A-5 684 171、US-A-5 684 172、US-A-5 696 197、US-A-5 708 053、US-A-5 892 085、EP-A-1 043 357号明細書に記載されているような、その特異的構造によって“対称”又は“非対称”と呼ばれる多硫化アルコキシシランが使用される。
【0061】
本発明の実施に特に好適には、下記定義に限定するものではないが、下記一般式(I)を充足する対称多硫化アルコキシシランであり:
(I) Z-A-Sn-A-Z、式中:
- nは、2〜8(好ましくは2〜5)の整数であり;
- Aは、二価の炭化水素基であり(好ましくはC1-C18アルキレン基又はC6-C12アリーレン基、さらに詳しくはC1-C10アルキレン、特にC1-C4アルキレン、特にプロピレン);
- Zは、下記式の1つに相当し:
【化1】

式中:
- 基R1は、置換され又は置換されておらず、かつ同一又は異なってよく、C1-C18 アルキル基、C5-C18シクロアルキル基又はC6-C18アリール基を表す(好ましくはC1-C6アルキル基、シクロヘキシル又はフェニル、特にC1-C4アルキル基、さらに具体的にはメチル及び/又はエチル)。
- 基R2は、置換され又は置換されておらず、かつ同一又は異なってよく、C1-C18アルコキシル基又はC5-C18シクロアルコキシル基を表す(好ましくはC1-C8アルコキシル基又はC5-C8シクロアルコキシル基、さらに好ましくはC1-C4アルコキシル、特にメトキシル及び/又はエトキシル)。
【0062】
上式(I)に従う多硫化アルコキシシランの混合物、特に従来、商業的に入手可能な混合物の場合、“n”の平均値は、好ましくは2〜5、さらに好ましくは4に近い分数である。しかし、本発明は、例えば二硫化アルコキシシラン(n=2)でも有利に実施できる。
多硫化アルコキシシランとして、さらに具体的には、例えばビス(3-トリメトキシシリルプロピル)又はビス(3-トリエトキシシリルプロピル)のポリスルフィドのようなビス-((C1-C4)アルコキシル-(C1-C4)アルキルシリル(C1-C4)アルキル)のポリスルフィド(特にジスルフィド、トリスルフィド又はテトラスルフィド)が挙げられる。これら化合物の中で、好ましくは、式[(C2H5O)3Si(CH2)3S2]2のビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、略してTESPT、式[(C2H5O)3Si(CH2)3S]2のビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、略してTESPDが使用される。TESPDは、例えばDegussaにより、商品名Si266又はSi75(後者の場合、ジスルフィド(75質量%)とポリスルフィドとの混合物の形態)で、又は代わりにWitcoにより、商品名Silquest A1589で販売されている。TESPTは、例えばDegussaにより、商品名Si69(又は、それがカーボンブラック上に50質量%担持されている場合はX50S)で、又は代わりにOsi Specialtiesにより、商品名Silquest A1289(両者の場合、nの平均値が4に近いポリスルフィドの市販混合物)で販売されている。
【0063】
上記多硫化アルコキシシラン以外のカップリング剤の例としては、特に例えば上記出願WO99/02602号明細書に実施例として記載されているような二官能性ポリオルガノシロキサンが挙げられる。
本技術の当業者は、意図する用途、使用するエラストマーの性質、及び適用可能な場合は補完的な補強フィラーとして用いられるいずれかの他の無機フィラーで補完された、補強炭化ケイ素の量によって、本発明の組成物中のカップリング剤の含量を調整できるだろう。
【0064】
使用可能な炭化ケイ素(かつ、当てはまる場合、他のいずれの併用補強無機フィラーも)の比表面積と密度の差、及びカップリング剤のモル量を斟酌するように、使用する各補強無機フィラー(当てはまる場合、炭化ケイ素プラス併用の追加無機フィラー)について、補強無機フィラーの平方メートル当たりのモルで、カップリング剤の最適量を決定することが好ましく;この最適量は、質量比[カップリング剤/補強無機フィラー]、フィラーのBET比表面積及びカップリング剤のモル量(以後Mと称する)から、下記式によって計算される。
(モル/m2無機フィラー)=[カップリング剤/無機フィラー](1/BET)(1/M)
【0065】
好ましくは、本発明の組成物で使用するカップリング剤の量は、補強無機フィラー1m2当たり、すなわち補強炭化ケイ素を併用補強無機フィラーなしで使用する場合は補強炭化ケイ素1m2当たり10-7〜10-5モルの範囲にある。さらになお好ましくは、カップリング剤の量は、全無機フィラー(当てはまる場合、炭化ケイ素プラス併用の追加無機フィラー)の平方メートル当たり5×10-7〜5×10-6モルの範囲にある。
上で表した量を考慮すると、一般に、ジエンエラストマーの質量に換算したカップリング剤の量は、好ましくは0.1〜25phr、さらに好ましくは0.5〜20phrである。
【0066】
使用するカップリング剤は、あらかじめ(“X”官能によって)本発明の組成物のジエンエラストマー上にグラフトすることができ、このように官能化又は“プレカップリング”されたエラストマーは、補強炭化ケイ素のための自由な “Y”官能を含む。このカップリング剤は、あらかじめ(官能“Y”によって)補強無機フィラー上にグラフトすることができ、このように“プレカップリング”されたフィラーは、自由な“X”官能によってジエンエラストマーに結合することができる。しかし、特に未硬化状態の組成物の良い加工性という理由のため、自由な状態(すなわち非グラフト)又は補強炭化ケイ素上にグラフトされたカップリング剤を使用することが好ましい。
【0067】
最後に、カップリング剤は、できる限り“カップリング活性化剤”、すなわち、このカップリング剤と混合するとカップリング剤の効力を高める物体(単一化合物又は化合物の連合)と併用する。多硫化アルコキシシラン用のカップリング活性化剤は、例えば出願WO00/05300及びWO00/05301号明細書に記載されており、置換グアニジン、特にN,N'-ジフェニルグアニジン(“DPG”と略記)とエナミン又はジチオリン酸亜鉛との連合から成る。これらカップリング活性化剤が存在すると、例えば、エラストマーとのカップリングが改良されるので補強無機フィラーの量を減らすことができる。
【0068】
II−4.種々の添加剤
当然、本発明の組成物は、既述した化合物に加え、タイヤの製造を意図したジエンゴム組成物で通常用いられる成分、例えば、可塑剤、顔料、抗酸化型、抗オゾン化型の保護剤、イオウ若しくはイオウ及び/又はペルオキシド及び/又はビスマレイミド供与体のどれかをベースとした架橋系、加硫促進剤、加硫活性化剤、エクステンダー油等のすべて又は一部を含む。必要ならば、クレー、ベントナイト、タルク、チョーク又はカオリンのような従来の非補強白色フィラーを補強白色フィラーと併用してもよい。
【0069】
本発明のゴム組成物は、上記カップリング剤に加え、補強無機フィラーを覆うための物質(例えば単一の官能Yを含む)、さらに一般的には、周知のように、ゴムマトリックス中の補強無機フィラーの分散の向上及び該組成物の粘度の低減によって未硬化状態での作業性を改良する傾向にある加工助剤を含むことができ、これら物質は、例えば、0.5〜3phrの好ましい量で使用され、例えば、アルキルアルコキシシラン、(特に、例えばDegussa-Hulsによって商品名Dynasylan Octeoで販売されている1-オクチル-トリエトキシシラン、又はDegussa-Hulsによって商品名Si216で販売されている1-ヘキサ-デシル-トリエトキシシランのようなアルキルトリエトキシシラン)、ポリオール、ポリエーテル(例えばポリエチレングリコール)、一級、二級若しくは三級アミン(例えばトリアルカノールアミン)、ヒドロキシル化若しくは加水分解性ポリオルガノシロキサン、例えばα,ω-ジヒドロキシポリオルガノシロキサン(特にα,ω-ジヒドロキシ-ポリジメチルシロキサン)である。
【0070】
II−5.ゴム組成物の調製
本組成物は、適切なミキサー内で、本技術の当業者に周知な連続的な2製造段階:110℃〜190℃、好ましくは130℃〜180℃の最大温度(Tmax)までの、高温での熱機械的作業又は混練(時には“非生産”段階と言われる)という第1段階、次いで低温、典型的には110℃未満、例えば60℃〜100℃の温度での機械的作業という(時には“生産”段階と言われる)、仕上段階時に架橋又は加硫系が取り込まれる第2段階によって製造され;このような段階は、例えば、上記出願EP-A-0 501 227、EP-A-0 735 088、EP-A-0 810 258、WO00/05300又はWO00/05301号明細書に記載されている。
【0071】
本発明の製造方法は、少なくとも補強フィラーとカップリング剤を、第1段階、いわゆる非生産段階時にジエンエラストマー中で混練することによって取り込むこと、すなわち、少なくともこれら各種ベース成分をミキサー内に導入し、1段階又は複数段階で、110℃〜190℃、好ましくは130℃〜180℃の最大温度に達するまで、熱機械的に混練することを特徴とする。
例として、第1(非生産)段階は、単一の熱機械的工程で行い、その間に、加硫系を除くすべての必要なベース成分、追加の被覆剤又は加工剤及び種々の他の添加剤を、通常の内部ミキサーのような適切なミキサー内に導入する。この内部ミキサー内で、該組成物に補完的熱処理を受けさせる目的で、特に補強フィラーとそのカップリング剤のエラストマー混合物内での分散をさらに高めるため、混合物が滴下した後、かつ中間冷却後(好ましくは100℃未満の温度に冷却)、第2段階の熱機械的作業を加えることができる。この非生産段階における混練の全持続時間は、好ましくは2〜10分である。
【0072】
このようにして得られた混合物を冷却後、一般的にはオープンミルのような外部ミキサー内低温で加硫系を取り込み;全組成物を数分間、例えば5〜15分間混合する(生産段階)。
このようにして得られた最終組成物は、特に実験室での特徴づけのため、例えばフィルム若しくはシート形態にカレンダー加工し、又はこれとは別に、例えばトレッド、クラウンパイル、サイドウォール、カーカスプライ、ビーズ、プロテクター、インナーチューブ又はチューブレスタイヤ用の気密内部ゴムのような半製品を製造するために使用されるゴムプロファイルド要素を形成するために押出し成形する。
加硫(又は硬化)は、周知のように、通常130℃〜200℃の温度で、加圧下、特に硬化温度、採用する加硫系、問題の組成物の加硫キネティクス又は代わりにタイヤのサイズによって決まる、例えば、5〜90分で変えられる十分な時間行う。
【0073】
適切な加硫系は、好ましくはイオウ及び一次加硫活性化剤、特にスルフェンアミドタイプの活性化剤をベースとする。このベース加硫系に、第1非生産段階時及び/又は生産段階時に取り込まれる、種々の公知の二次活性化剤又は加硫活性化剤、例えば酸化亜鉛、ステアリン酸、グアニジン誘導体(特にジフェニルグアニジン)等を加える。イオウは、0.5〜10phr、さらに好ましくは0.5〜5.0phrの好ましい量、例えば、本発明をタイヤトレッドに適用する場合は、0.5〜3.0phrの量で使用する。一次加硫活性化剤は、特に本発明をタイヤトレッドに適用する場合、0.5〜10phr、さらに好ましくは0.5〜5.0phrの好ましい量で使用する。
本発明が“未硬化”状態(すなわち硬化前)と“硬化”又は加硫状態(すなわち架橋又は加硫後)の両方の前記ゴム組成物に関することは言うまでもない。
当然、本発明の組成物は、単独で又はタイヤ製造に使用可能ないずれの他のゴム組成物とのブレンド(すなわち混合物)で使用することができる。
【0074】
III.本発明の実施形態の例
III−1.使用フィラー
以下の実施例で使用したフィラーの特徴を表1に示す。
フィラーAは、従来タイヤ用トレッドに用いられているタイヤグレードのカーボンブラック(N234)である。フィラーBは、従来研摩剤として使用されている(すなわち非補強)従来型炭化ケイ素である(Sika Norton ASからのSiC20000)。フィラーDは、GoodFellowによって照会番号SI 51 6010(粒径:カタログデータより75μm)で販売されている粗炭化ケイ素である。最後に、フィラーC、E及びFは、補強炭化ケイ素、すなわち、本発明の組成物で使用可能なものである(特徴a及びbが兼ね備わっている)。
フィラーFは、商業的に入手可能である(MarkeTech International Inc.−照会番号“NP-S0140”)。
【0075】
フィラーCとEについて言えば、周知のように、ガス状前駆物質のレーザー熱分解により、上述した出版物Adv.Ceram.Mater.,3(6),548-552(1988)に従い、以下の段階によって調製した。
− 内径2mmのキャピラリーを用いてガス状混合物(シランとアセチレン)を垂直方向に、レーザービームに対して透明なKCl窓を備えたレーザー照射封入体中に導入し;
− この封入体内で、12mmの直径と700W/cm2の最大パワー密度を有する、ガウス分布のレーザービーム(1kWのパワーを達成できる連続的なCO2レーザー)がガス流を水平方向に遮断し、レーザー放射と、該レーザー放射の波長と等しい波長の試薬(シラン)の赤外吸収バンドの1つとの間の共鳴によって、ガス状混合物から炭化ケイ素の合成反応が起こり;
− アルゴン流(約2L/分)がKCl窓上の炭化ケイ素粉末の沈着を妨げ、かつ生じた生成物を粉末コレクターに集めて除く。
【0076】
使用するシランは、350cm3/分のオーダーの流速を有するSiH4である。アセチレンは、約190cm3/分の流速で用いる。この条件では、反応ゾーン内(すなわち、レーザービーム内)のドウェル時間は、2.9m/秒の進行速度で約4msである。
フィラーC、E及びFは、30〜100nmの粒径dWを有し、フィラーB又はDよりずっと小さく、フィラーAと同オーダーの大きさであることが分かる。そのBET比表面積は、60〜120m2/gの範囲である。その脱集塊率αは、有利に非常に大きく(すべて5×10-4μm-1/秒より高く、フィラーC及びEでは1×10-3μm-1/秒より大きい)、フィラーDの100倍を超えている。脱集塊に対するカーボンブラックの能力は、他のフィラーより非常に明らかに高く、優れていることは分かっているので、フィラーAの脱集塊率αを測定する必要はない。
【0077】
これら補強炭化ケイ素、特にフィラーC及びEについて測定されたように高い脱集塊率αは、無機フィラーでは予想外であり;公知のシリカ(“Zeosil 1165 MP”)に対する同一条件下で適用した超音波脱集塊試験では、脱集塊率αは約100倍低かった。
図1、2、3及び4は、それぞれフィラーB、C、E及びFについて超音波脱集塊試験で記録された集塊サイズの進化の曲線[1/dV(t)=f(t)]を再現する。これら図面から、記録された最初の点(“t”は0〜約30秒に変化する)は、初期平均径dV[0]、その後(超音波プローブの作動後)、安定な脱集塊条件への漸進経過(ここでは、30秒〜約3分の“t”)の測定に相当し、この間“dV”の逆数が時間“t”によって実質的に直線的に変化することが分かり;ここでは、約8〜9分後にデータの記録を停止する。これから、安定な脱集塊条件(約3〜4分と8〜9分の間)のゾーン内で粒度分析計の計算機によって行われる直線回帰の初等計算により脱集塊率αを換算する。
【0078】
III−2.組成物の調製
以後試験する組成物は、公知の方法で、以下のように調製する:ジエンエラストマー(又は当てはまる場合、ジエンエラストマーの混合物)を75%充填、初期タンク温度約90℃の内部ミキサー内に導入し;次いで、適宜の混練時間、例えば1分のオーダーの時間後、加硫系を除き、フィラー及び併用カップリング剤を含むすべての他の成分を導入する。そして、70rpmの平均ブレード速度で、約160℃の滴下温度が得られるまで、約10分の持続時間の熱機械的作業を行う。
このようにして得られた混合物を回収し、冷却してから、場合によって5〜12分の適宜の時間、すべてのものをミキシングすることで(生産段階)加硫系(イオウ及びスルフェンアミドタイプの一次活性化剤)を30℃で外部ミキサー(均質仕上げ機)上に添加する。
このようにして得られた組成物は、その機械的性質を測定するためゴム板(厚さ2〜3mm)の形態でカレンダー加工するか、又は乗用車タイヤ用トレッドの形態で押出し成形する。加硫(硬化)は、150℃で40分間、加圧下行う。
以下のすべての試験では、本発明の組成物中に、補強炭化ケイ素が、70phrより多い好ましい量で存在し;さらに、補強炭化ケイ素が全補強フィラーのすべて又は90質量%より多くを構成し、後者の少部分(10%未満)は、おそらくカーボンブラックで形成される。
【0079】
III−3.試験
A)試験1
この試験の目的は、従来の炭化ケイ素が、高性能カップリング剤の存在下でさえ、補強無機フィラーであると主張できないことを示すことである。
このため、通常タイヤ用トレッドの製造に使用されている3種のジエンゴム組成物を比較するが、これら組成物はすべて本発明に従っていない。ジエンエラストマーは、溶液中で調製されたSBR(SSBR)であり、25質量%のスチレンを含み、存在するポリブタジエン単位は、58%の1,2-ポリブタジエン単位と23%のトランス-1,4ポリブタジエン単位である。
これら3種の組成物は、以下の相違以外は同一である。
− 組成物C-1:フィラーA(カーボンブラック);
− 組成物C-2:フィラーB(SiC)、カップリング剤なし;
− 組成物C-3:フィラーB(SiC)、カップリング剤あり。
対照組成物C-1用に選択したカーボンブラックは、非常に高い補強能力のタイヤグレードブラックであり、従来、乗用車タイヤ用トレッドを補強するために使用されている。
【0080】
組成物C-2及びC-3では、カーボンブラック(組成物C-1)に対して同量の炭化ケイ素を使用している。TESPTカップリング剤(Si69)について言えば、78phrの炭化ケイ素の全表面適用範囲に対応する量、つまり約9.3×10-7モル/炭化ケイ素m2を導入した。ここでは、参照として働く組成物C-1は、周知のように、カーボンブラックで補強されているのでカップリング剤を必要としない。
表2及び3は、順次種々の組成物の配合(表2−phrで表される種々製品の量)、及びその150℃で40分間の硬化前後の特性を示す(表3)。図5は、伸び(%)の関数としての真の断面モジュラス“M”(MPa)の曲線を示し;これら曲線は、C1〜C3と表し、それぞれゴム組成物C-1〜C-3に対応する。
【0081】
異なる結果の研究から、炭化ケイ素をベースとした組成物C-2及びC-3が、硬化後、カーボンブラックをベースとした対照組成物C-1よりも明らかに低い補強レベルを有することが分かり:破壊応力は約2〜3倍低く、高変形時モジュラス(M100及びM300)は明らかに低く、組成物が砕けてしまったため“結合ゴム”の測定はできず、すべて当業者にとってこの従来のケイ素(フィラーB)をベースとした2組成物の補強レベルが不十分であることを明白に示している。
添付図面5は、上記結果を確証しており:曲線C2及びC3は、対照曲線C1のずっとこちら側に位置していることが分かり、伸びが増すにつれて、ますます距離が目立っており;これは、(非補強)炭化ケイ素とエラストマーの間の補強の非常に不十分な質をはっきりと示している。明らかに、TESPTのようなカップリング剤の存在下では、より高レベルの補強を達成しているが(曲線C2と比較した曲線C3)、カーボンブラック(曲線C1)のような真の補強フィラーで期待されるより非常に明瞭に低いままである。
【0082】
B)試験2
この第2試験の目的は、対照的に、上述したような補強炭化ケイ素が補強無機フィラーであると主張できることを示すことである。
このため、タイヤ、特に乗用車タイヤ用トレッドの製造に使用可能な2種のジエンゴム組成物を比較する。ジエンエラストマーは、27質量%のスチレンを含み、ポリブタジエン単位は25%の1,2-ポリブタジエン単位と48%のトランス-1,4ポリブタジエン単位である、SSBRである。
これら2組成物は、以下の相違を除き同一である。
− 組成物C-4(対照):フィラーA(カーボンブラック);
− 組成物C-5(本発明に従う):フィラーC、カップリング剤(TESPT)あり。
【0083】
組成物C-5では、前述の組成物C-3で選択したのと実質的に同等の表面適用範囲の率(すなわち、約9.3×10-7モル/炭化ケイ素m2)でカップリング剤を導入し;当然、ここで試験する補強炭化ケイ素のより大きいBET比表面積を考慮して、使用するカップリング剤の量はより多い。対照組成物C-4について言えば、従来通りにカーボンブラックで充填する。
異なる結果の研究から、本発明の組成物が、硬化後に対照組成物と同等の補強レベルを有することが分かり、同等のモジュラス、特に高変形時(M100及びM300)、同様の比M300/M100、“結合ゴム”試験に対する同一の測定値、当業者に周知の補強についての全指標は、カップリング剤の存在下におけるフィラーCの市場性のある補強活性を実証している。添付図面6は、事実上一致していると思われる曲線C4とC5によって、前述の観察を確証している。
【0084】
C)試験3
この第3試験では、別の補強炭化ケイ素(フィラーE)を一方で従来のカーボンブラック(フィラーA)と比較し、他方で、従来、上述した先行技術(特に上記文書JP-A-1990/091137、US-A-3 878 147号明細書参照)のいくつかのトレッドで使用されているような“粗い”タイプの非補強炭化ケイ素(フィラーD)と比較する。
このため、上記試験2と同様に乗用車タイヤ用トレッドの製造を意図した3種のゴム組成物を比較し;これら3組成物は、以下の相違を除き同一である。
− 組成物C-6(対照):フィラーA(カーボンブラック)
− 組成物C-7(本発明に従わない):フィラーD、カップリング剤あり;
− 組成物C-8(本発明に従う):フィラーE、カップリング剤あり。
【0085】
組成物C-7及びC-8では、前記組成物C-5で選択したのと実質的に同等の表面適用範囲の率(すなわち、約9.3×10-7モル/炭化ケイ素のm2)でカップリング剤を導入した。カーボンブラックで充填される対照組成物C-6は、前記試験で使用したのと同等である(組成物C-4)。
表6及び7は、順次種々の組成物の配合(表6−phrで表される種々製品の量)、及びその150℃で40分間の硬化前後の特性(表7)を示す。図7は、伸び(%)の関数としてのモジュラス(MPa)の曲線を示し;これら曲線は、C6〜C8と表し、それぞれ組成物C-6〜C-8に対応する。
【0086】
まず第1に、補強炭化ケイ素で補強されている本発明の組成物C-8の未硬化状態における弾性が(92MU)、カーボンブラックで補強されている対照組成物(91MU)のように低いことが分かるだろう。この結果は、ただちに当業者に、本発明の組成物の、今まで公知の補強無機フィラーで得られるより大きい予想外の加工性能を指摘する。例として、同等の配合の(すなわち同量のフィラー及びカップリング剤による同率の表面適用範囲)高性能のHDシリカは(“Zeosil 1165 MP”)、カーボンブラックをベースとした対照溶液と比較して約15%可塑性が増すことになる。
粗炭化ケイ素をベースとした組成物C-7について観察された非常に低い塑性値について言えば、それは、図7(曲線C7)及び硬化後の特性で示されるように、明らかに事実上存在しない補強レベル:非常に低い破断点機械特性、E10と同等のモジュラスE100、組成物が砕けてしまったため“結合ゴム”の測定は不可能などのためである。
【0087】
他方、補強炭化ケイ素をベースとした組成物C-8は、硬化後に少なくとも対照組成物C-6と同等の補強レベルを有し:破断点機械特性、高変形時モジュラス(E100及びE300)及び“結合ゴム”の測定値はわずかに大きく、比E300/E100及び動的特性(ΔG*及びtan(δ)max)は非常に似ている。添付図面7は、上記観察を確証しており、曲線C8は、対照曲線C6をわずかに超えている。
最後に、等しく予想外なことに、転換速度定数Kで示される加硫キネティクスは、まさにカーボンブラックをベースとした組成物のように良い。補強炭化ケイ素によって与えられるこの結果は、同等の配合で、カーボンブラックで充填された従来の組成物と比較して周知のように定数Kの非常に有意な減少を受ける(通常2〜3の係数で割られる)HDシリカのような補強白色フィラーをベースとした公知組成物に比し、有意な改良点を構成する。
【0088】
D)試験4
この試験は、今度は市販の炭化ケイ素(フィラーF)を用いて示される、参考のカーボンブラックと比較した補強炭化ケイ素の優れた補強性能を確証する。
ここでは、カーボンブラック(フィラーA−対照組成物C-9)を市販のフィラーFと比較し、かつさらに本発明の組成物(組成物C-10)に加工剤としてグアニジン誘導体(DPG)を用いることを除き、上記試験2の組成物と同様の2種の組成物を比較する。
表8及び9は、2種の組成物の配合、及びその150℃で40分間の硬化前後の特性を示す。組成物C-10では、用いるカップリング剤の量は、ここで試験する炭化ケイ素のより大きいBET比表面積を考慮するため、前記試験の量より多い。図8は、伸び(%)の関数としてモジュラス(MPa)の曲線を示し;これら曲線はC9及びC10と示され、それぞれ組成物C-9及びC-10に対応する。
【0089】
フィラーFの性能は、前に試験したフィラーEの性能よりわずかに劣っているようであるが、おそらく前者の脱集塊する能力が不十分な(率αがあまり高くない)ためであり、補強炭化ケイ素の性能は、全体的に驚くべき状態のである。本発明の組成物C-10は、硬化後に、対照組成物C-9と同等の補強を有することが分かり、高変形時モジュラス(M100及びM300)、比M300/M100及び“結合ゴム”の測定は同様であり、破断点機械特性はわずかに大きい。添付図面8は、事実上一致しており、さらに最大伸びに向かって本発明の組成物(曲線C10)の優位に交差している曲線C-9とC-10で上記観察を確証している。
【0090】
結論として、本発明の組成物の特有の炭化ケイ素は、該組成物に、少なくともカーボンブラックによって得られるのと同等の極めて有利な特性、特に補強性能、ひいては耐摩耗能力を与え、このことは、先行技術のタイヤ用ゴム組成物で従来使用されていた炭化ケイ素では今まで知られていなかった。
本発明の組成物の工業処理過程及び硬化キネティクスは、予想外にもカーボンブラックで充填された従来のゴム組成物に匹敵し、前述した補強炭化ケイ素をHDシリカのような補強無機フィラーを用いることに代わるべき非常に有利な手段にする。
従って、本発明は、低い転がり抵抗と高い耐摩耗性の両方を有するタイヤ用トレッドの製造に使用可能なゴム組成物で、特にこれらトレッドが乗用車又は重車タイプの工業用車両用のタイヤを意図している場合に、好ましく適用することができる。
【0091】
【表1】

(*) 供給業者のカタログデータ
















【0092】
【表2】

(1)58%の1,2-ポリブタジエン単位を有する溶液SBR;25%のスチレン;37.5質量%の芳香油(又は100phrの乾燥SBR当たり37.5phrの油)で増量;Tg=-25℃;乾燥SBRで表す;
(2)TESPT(Degussa-Hulsからの“Si69”);
(3)N-1,3-ジメチルブチル-N-フェニルパラフェニレンジアミン
(Flexsysからの“Santoflex 6-PPD”);
(4)N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド
(Flexsysからの“Santocure CBS”)。
【0093】
【表3】

(*)測定不能(組成物崩壊)


【0094】
【表4】

(1)25%の1,2-ポリブタジエン単位を有する溶液SBR;27%のスチレン;37.5%の芳香油(又は100phrの乾燥SBR当たり37.5phrの油)で増量;Tg=-48℃;乾燥SBRで表す;
(2)〜(4)表2に同じ。
【0095】
【表5】








【0096】
【表6】

(1)〜(4):表4に同じ。
【0097】
【表7】

(*)測定不能(組成物崩壊)

【0098】
【表8】

(1)〜(4):表4に同じ;
(5)ジフェニルグアニジン(Bayerからの“Vulcacit D”)。
【0099】
【表9】

【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】フィラーBについて超音波脱集塊試験で記録された集塊サイズの進化の曲線を示す。
【図2】フィラーCについて超音波脱集塊試験で記録された集塊サイズの進化の曲線を示す。
【図3】フィラーEについて超音波脱集塊試験で記録された集塊サイズの進化の曲線を示す。
【図4】フィラーFについて超音波脱集塊試験で記録された集塊サイズの進化の曲線を示す。
【図5】試験1の種々のジエンゴム組成物に対する伸びの関数としてのモジュラスの変化曲線を示す。
【図6】試験2の種々のジエンゴム組成物に対する伸びの関数としてのモジュラスの変化曲線を示す。
【図7】試験3の種々のジエンゴム組成物に対する伸びの関数としてのモジュラスの変化曲線を示す。
【図8】試験4の種々のジエンゴム組成物に対する伸びの関数としてのモジュラスの変化曲線を示す。
【図9】粒子の集塊形態のフィラーの超音波脱集塊率(α)の測定に好適な装置の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともジエンエラストマー、補強無機フィラー、該無機フィラーと該エラストマーの間に結合を与えるカップリング剤をベースとしたゴム組成物であって、前記無機フィラーが、以下の特徴:
− (a)20〜200m2/gのBET比表面積;
− (b)10〜350nmの平均粒径(質量で)dW
を有する炭化ケイ素を含み、
該炭化ケイ素が、全補強フィラーの容積の50%より多くを構成することを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記炭化ケイ素の量が、50phrより多い、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記炭化ケイ素が、1×10-4μm-1/秒より大きい、600Wプローブの20%パワーでの超音波脱集塊試験で測定される脱集塊率αを有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム組成物を含んでなるタイヤ。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム組成物をベースとしたタイヤトレッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−50619(P2008−50619A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277786(P2007−277786)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【分割の表示】特願2002−555152(P2002−555152)の分割
【原出願日】平成13年12月20日(2001.12.20)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(599105403)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (228)
【Fターム(参考)】