説明

ジシアノメチレン誘導体の製造方法

【課題】安価な酸化剤を用い有用なジシアノメチレン誘導体の製造方法の提供。
【解決手段】式(1):


で表される芳香族化合物と、マロノニトリルとを塩基性条件下で反応させる工程、酸化剤を前記芳香族化合物とマロノニトリルとを反応させた液に加えて式(2)で表されるジシアノメチレン誘導体を生成する工程を含むジシアノメチレン誘導体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジシアノメチレン誘導体の製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は安価な酸化剤を用いるジシアノメチレン誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ジシアノメチレン誘導体の酸化剤を用いる製造方法には、臭素水溶液(非特許文献2、4〜8)を用いる方法と反応の後処理を空気中で行う、自然酸化(非特許文献1,3)による方法が知られていた。
しかしながら、臭素水溶液を用いる方法では、臭素の水への溶解度(3.58/100g水(20℃)が低いこと、また反応活性なチオフェン誘導体への臭素化が起こり副生成物が生成することなどから、工業的な生産には向かない等の欠点を有している。
【0003】
【表1】

【0004】
また、反応を空気中で後処理することによる酸化(自然酸化)は非常に安価でマイルドな酸化条件ではあるものの工業的な生産規模では、酸化力が低下する等の欠点も有している。
【0005】
最近、請求項1記載の式(2)で表されるジシアノメチレン誘導体などは、有機半導体の材料として注目されて盛んに開発がなされている。そこで、公知の酸化剤よりもより安価で安全性の高い、工業的に利用可能な製造方法の確立が必要とされている(非特許文献1、特許文献2)。
【0006】
【非特許文献1】Journal of the American Chemical Society (2007), 129(38), 11684-11685.
【非特許文献2】Journal of Physical Chemistry B (2005), 109(47), 22308-22318.
【非特許文献3】Journal of the American Chemical Society (2005), 127(25), 8928-8929.
【非特許文献4】Journal of the American Chemical Society (2004), 126(46), 15295-15308.
【非特許文献5】Journal of Organic Chemistry (2002), 67(17), 6015-6024.
【非特許文献6】Journal of the American Chemical Society (2002), 124(16), 4184-4185.
【非特許文献7】Bulletin of the Chemical Society of Japan (1989), 62(5), 1539-46.
【非特許文献8】Chemistry Letters (1988), (7), 1179-82.
【特許文献1】特開平01−301675
【特許文献2】特願2006−247383
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ジシアノメチレン誘導体の製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は安価な酸化剤を用いるジシアノメチレン誘導体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討の結果、下記の式(1)で表される芳香族化合物と、マロノニトリルを塩基性条件下反応(触媒を使用しても使用しなくてもよい)させたのち、安価な酸化剤を用いて下記の式(2)で表されるジシアノメチレン誘導体を製造する方法を見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明は以下の構成を有する。
(1)式(1):
【化1】

(式中、Xはそれぞれ独立に、硫黄原子、セレン原子、スルホキシ基、スルホン基を表す。Yは、ハロゲン原子を表す。R、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜18のアルキル基、置換基を有してもよいカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数1〜18のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数1〜18のアルキルチオ基、アミノ基、ニトロ基、エステル基、置換基を有してもよい炭素数1〜18のアルキル基を有するシリル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表す。a、b、cはそれぞれ、置換基R、R、Rの置換基の数を表し、0〜2の整数を表す。aが2の場合、2個の置換基Rは同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成してもよい。bが2の場合、2個の置換基Rは同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成してもよい。cが2の場合、2個の置換基Rは同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成してもよい。nは、0以上の整数を表す。)
で表される芳香族化合物と、マロノニトリルとを塩基性条件下で反応させる工程;及び、
硝酸、硝酸銀、ハロゲン化銀、過酸化水素、過酸化t−ブチル、過硫酸アンモニウム、過塩素酸、過ヨウ素酸、過マンガン酸カリウム、クロム酸及びビスマス酸アルカリ、酸素、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸リチウム、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸マグネシウム、次亜臭素酸ナトリウム、次亜臭素酸カリウム、次亜臭素酸リチウム、次亜臭素酸カルシウム、次亜臭素酸マグネシウム、次亜ヨウ素酸ナトリウム、次亜ヨウ素酸カリウム、次亜ヨウ素酸リチウム、次亜ヨウ素酸カルシウム及び次亜ヨウ素酸マグネシウムからなる群から少なくとも1つ選択される酸化剤を前記芳香族化合物とマロノニトリルとを反応させた液に加えて、下記の式(2):
【化2】

(式中、Xはそれぞれ独立に、硫黄原子、セレン原子、スルホキシ基、スルホン基を表す。R、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜18のアルキル基、置換基を有してもよいカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数1〜18のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数1〜18のアルキルチオ基、アミノ基、ニトロ基、エステル基、置換基を有してもよい炭素数1〜18のアルキル基を有するシリル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表す。a、b、cはそれぞれ、置換基R、R、Rの置換基の数を表し、0〜2の整数を表す。aが2の場合、2個の置換基Rは同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成してもよい。bが2の場合、2個の置換基Rは同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成してもよい。cが2の場合、2個の置換基Rは同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成してもよい。nは、0以上の整数を表す。)
で表されるジシアノメチレン誘導体を生成する工程;
を含むジシアノメチレン誘導体の製造方法。
(2)前記nが1であることを特徴とする、(1)に記載の製造方法。
(3)前記芳香族化合物とマロノニトリルとの反応を触媒の存在下で行う、(1)又は(2)に記載の製造方法。
(4)前記触媒のうち一つがFe、Ru、Os、Hs、Co、Ph、Ir、Mt、Ni、Pd、Pt、Uun、Cu、Ag、Au、Uuu、Zn、Cd、Hg及びUbからなる群から選択される少なくとも一つの金属を含有する、(1)から(3)のいずれか一つに記載の製造方法。
(5)前記触媒の一つがPdを含む化合物である、(1)から(4)のいずれか一つに記載の製造方法。
(6)前記触媒の一つがPdCl、Pd(PPhCl、Pd(PPh)からなる群から選択される、(1)から(5)のいずれか一つに記載の製造方法。
(7)前記酸化剤が次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸リチウム、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸マグネシウム、次亜臭素酸ナトリウム、次亜臭素酸カリウム、次亜臭素酸リチウム、次亜臭素酸カルシウム、次亜臭素酸マグネシウム、次亜ヨウ素酸ナトリウム、次亜ヨウ素酸カリウム、次亜ヨウ素酸リチウム、次亜ヨウ素酸カルシウム又は次亜ヨウ素酸マグネシウムであることを特徴とする、(1)から(6)のいずれか一つに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、安価な酸化剤を用いるジシアノメチレン誘導体の工業的製造を可能とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の製造法について詳細に述べる。本発明に関する反応式は次の通りである。
【0012】
【化3】

【0013】
本発明において、ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、臭素原子又はヨウ素原子が好ましい。
【0014】
本発明における炭素数1〜18のアルキル基とは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、プロポキシプロピル基、メチルチオメチル基、エチルチオメチル基、プロピルチオメチル基、メチルチオエチル基、エチルチオエチル基、プロピルチオエチル基、メチルチオプロピル基、エチルチオプロピル基、プロピルチオプロピル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−シアノフェニル基、3−シアノフェニル基、4−シアノフェニル基、2−ニトロフェニル基、3−ニトロフェニル基、4−ニトロフェニル基などが挙げられる。
【0015】
好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基などのアルキル基であるが、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基がより好ましい。
【0016】
本発明におけるアリール基とは、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、ベンゾピレニル基などの芳香族炭化水素基やピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピロリル基、インドレニル基、イミダゾリル基、カルバゾリル基、チエニル基、フリル基、ピラニル基、ピリドニル基などの複素環基、ベンゾキノリル基、アントラキノリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフリル基のような縮合系複素環基が挙げられる。またこれらの置換基は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスレン環、ピレン環、フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環などで縮環していてもよい。なかでも、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基及びチエニル基が好ましい。
【0017】
本発明におけるアルコキシ基とは、上記炭素数1〜18のアルキル基を有するアルコキシ基、アリールオキシ基などであり、好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、フェニル基などを有するアルコキシ基であるが、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、フェニル基を有するアルコキシ基がより好ましい。
【0018】
本発明のアルキルチオ基とは、上記炭素数1〜18のアルキル基を有するアルキルチオ基、アリールチオ基などであり、好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、フェニル基などを有するアルキルチオ基であるが、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、フェニル基を有するアルキルチオ基がより好ましい。
【0019】
上記式(1)又は(2)中のR〜Rが、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルキルチオ基又は置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルキル基を有するシリル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す場合、導入される置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ホルミル基、及びアシルアミノ基からからなる群から選ばれる。
【0020】
本発明におけるアミノ基とは、無置換又は、アミノ基の1つ又は2つの水素が上記炭素数1〜18のアルキル基又は上記アリール基のいずれかに置換したアミノ基である。
【0021】
本発明におけるエステル基とは、水素原子(この場合カルボン酸基となる)、上記炭素数1〜18のアルキル基(CO2−アルキル基)又はアリール基(CO2−アリール基)を有するエステル基である。
【0022】
本発明におけるカルボニル基とは、水素原子(この場合アルデヒド基となる)、上記炭素数1〜18のアルキル基(CO−アルキル基)又はアリール基(CO−アリール基)を有するケトン基である。
【0023】
本発明における炭素数1〜18のアルキル基を有するシリル基とは、上記炭素数1〜18のアルキル基を有するシリル基である。
【0024】
上記式(1)又は(2)中のa、b、cはそれぞれ、置換基R、R、Rの置換基の数を表し、0〜2の整数を表す。aとcは好ましくは、0〜1、より好ましくは、0である。bは、好ましくは1〜2、より好ましくは2である。aが2の場合、2個の置換基Rは同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成してもよい。bが2の場合、2個の置換基Rは同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成してもよい。cが2の場合、2個の置換基Rは同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成してもよい。
【0025】
互いに連結して環を形成してもよい場合の環としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロノナン環など(この場合、環を形成する炭素の1つまたは複数が窒素原子、酸素原子、硫黄原子など任意に置き換わってもよいし、一部または全部が不飽和でもよい)の3員〜9員までの脂肪族環、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスレン環、ピレン環、フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環などの芳香族環であり、またこれらの環もベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスレン環、ピレン環、フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環などで、縮環していてもよい。これらのうち好ましいのは、脂肪族環では、5員又は6員の脂肪族環(この場合、環を形成する炭素の1つまたは複数が窒素原子、酸素原子、硫黄原子など任意に置き換わってもよい)、芳香族環であるベンゼン環、チオフェン環であり、より好ましくは5員脂肪族環(この場合、環を形成する炭素の1つまたは複数が窒素原子、酸素原子、硫黄原子など任意に置き換わってもよい)であるシクロペンタン環、芳香環であるベンゼン環である。
【0026】
上記式(1)又は(2)中のnは0以上の整数を表す。好ましくは0〜8、より好ましくは1〜4である。
【0027】
上記式(1)で表される化合物(n=1である場合を例にすると)は非特許文献(1〜8)、特許文献(1〜2)などに記載のように容易に合成可能である。
【0028】
上記式(1)で表される化合物、下記化合物(101)で表される具体例(X=S,Y=Br,n=1)を表2に例示するが、上記式(1)で表わされる化合物はこれらに限定されるものではない。なお、表2に記載しない限り、空欄は水素原子を表す。なお、メチル基をMe、エチル基をEt、プロピル基をPr、ブチル基をBu、フェニル基をPh、ヘキシル基をHexyl、オクチル基をOctyl、デシル基をDecyl、ドデシル基をDodecylと表す。
【0029】
【化4】

【0030】
【表2】

【0031】
さらに、上記式(1)で表される化合物の具体例(X=硫黄原子、スルホキシ基、スルホン基、セレン原子、Y=Cl、Br、I)をX=S,Y=Br,n=1として化合物(16)〜(30)として示すが、これらに限定されるものではない。
【0032】
【化5】

【0033】
さらに、上記式(1)で表される化合物の具体例(X=硫黄原子、スルホキシ基、スルホン基、セレン原子、Y=Cl、Br、I)をX=S,Y=Br,n=1として化合物(31)〜(45)として示すが、これらに限定されるものではない。
【0034】
【化6】

【0035】
次に反応について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
反応に使用するマロノニトリルは、市販品をそのまま用いてもよいし、適当な溶媒、例えばエタノールで再結晶したものを用いてもよい。
【0037】
反応に使用する塩基としてはマロノニトリルを積極的に分解するようなものでない限り、いかなるものでも使用することができるが、容易に入手可能なナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド、60%NaH、金属ナトリウムなどを用いることができる。好ましくは、ナトリウムエトキシド、60%NaHを用いることができ、より好ましくは、60%NaHが挙げられる。
【0038】
反応に使用する塩基は、出発物質(上記式(1))に対して、通常1〜16倍のモル量を使用する。好ましくは、2〜8倍、より好ましくは2〜5倍のモル量である。
【0039】
反応を行うときに溶媒を使用しても使用しなくてもよい。通常の有機合成に用いられる溶媒であれば、いかなるものでも使用可能である。
【0040】
しかしながら、容易に入手可能な溶媒である、ジエチルエーテル、THF等のエーテル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール等のアルコール、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物、アミド類(N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド)、グリコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド)が好ましく、THF、エタノールがより好ましい。
【0041】
溶媒を使用するときの、使用量は重量換算で出発物質(上記式(1))に対して、0.01〜500倍、好ましくは0.1〜200倍、より好ましくは2〜100倍である。
【0042】
この反応は、特に禁水条件、例えば窒素気流下やアルゴンガス気流下などで行うことは必須ではないが、水分が多い環境で反応を行うよりも、禁水条件で行うほうが、反応が円滑に進行する場合がある。
【0043】
反応を行うとき、触媒は必須ではないが、触媒を利用すると反応が円滑に進行する場合がある。
【0044】
使用する金属触媒としてはハロゲンと化合物を作ることが可能であればいかなるものでもよいが、VIII族(Fe、Ru、Os、Hs、Co、Rh、Ir、Mt、Ni、Pd、Pt、Uun)、IB族(Cu、Ag、Au、Uuu)、IIB族(Zn、Cd、Hg、Ub)からなる群から選択される少なくとも一種の金属を含有する化合物が挙げられる。この化合物としては、ハロゲン化物か、トリフェニルホスフィン錯体(PPh)又はシクロペンタジエン錯体(Cp)が入手が容易である。好ましくは、塩化鉄(III)、ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(以下、dppf)、水酸化鉄(III)等のFe系化合物、塩化ニッケル(II)、Nikelocene等のNi系化合物、PdCl、Pd(PPhCl、Pd(PPh)等のパラジウム系化合物が挙げられ、より好ましくは、dppf、Pd(PPh)が挙げられる。
【0045】
触媒を使用するときは、上記触媒を1種又は複数組み合わせてもよい。また、複数組み合わせる場合の混合比は、それぞれの混合比を0.01〜99.99%の範囲で任意に定めることが可能である。
【0046】
触媒を使用するときの、使用量はモル換算で出発物質(上記式(1))に対して0.00001〜1倍、好ましくは0.0001〜0.5倍、より好ましくは0.0001〜0.2倍である。
【0047】
この反応は、酸化剤の選択が重要である。使用できる酸化剤としては、硝酸、硝酸銀、ハロゲン化銀、過酸化水素、過酸化t−ブチル、過硫酸アンモニウム、過塩素酸、過ヨウ素酸、過マンガン酸カリウム、クロム酸及びビスマス酸アルカリ、酸素(この場合、酸素を反応系中に吹き込む)、次亜ハロゲン酸塩(次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸リチウム、次亜塩素酸カルシウム若しくは次亜塩素酸マグネシウム、次亜臭素酸ナトリウム、次亜臭素酸カリウム、次亜臭素酸リチウム、次亜臭素酸カルシウム若しくは次亜臭素酸マグネシウム又は次亜ヨウ素酸ナトリウム、次亜ヨウ素酸カリウム、次亜ヨウ素酸リチウム、次亜ヨウ素酸カルシウム若しくは次亜ヨウ素酸マグネシウム)が挙げられ、好ましくは容易に入手可能な、ハロゲン化銀、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、次亜ハロゲン酸塩(次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸リチウム、次亜塩素酸カルシウム若しくは次亜塩素酸マグネシウム)が挙げられ、より好ましくは、過硫酸アンモニウム、次亜塩素酸ナトリウムが挙げられる。
【0048】
酸化剤は、上記酸化剤を1種又は複数組み合わせてもよい。また、複数組み合わせる場合の混合比は、それぞれを0.01〜99.99%の範囲で任意に定めることができる。
【0049】
反応に使用する、酸化剤の使用量は、モル換算で出発物質(上記式(1))に対して、0.1〜200倍、好ましくは0.5〜100倍、より好ましくは3〜50倍である。
【0050】
酸化剤は出発物質(上記式(1))とマロノニトリルとを塩基性条件下で反応させた後に加えることができる。
【0051】
酸化剤を加えるのは、マロノニトリルを加えた後であればいつでもよいが、たとえば、薄層クロマトグラフィー(以下、TLC)、高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLC)等で式(1)で示される出発物質が消失しているかまたは、残存しても反応の進行がこれ以上期待できない場合などに加えるのが、より好ましい。
【0052】
酸化剤を使用する際、反応系のpHは特に調整する必要はなく、pHを1〜14迄のどの範囲で使用してもよいし、必要により適切な範囲に調整の上で使用してもよい。
【0053】
酸化剤を使用する際のpHを調整することで、副反応が抑えられる場合がある。酸化剤を使用する際の反応系のpHはpH1−3、pH3−5、pH5−8、pH7−9、pH7−10、pH8−10、pH10−12、pH12−14の範囲に調整してもよい。好ましくは、pH5−8、pH7−9、pH7−10、pH8−10、pH10−12、pH12−14であり、より好ましくは、pH7−9、pH7−10、pH8−10、pH10−12、pH12−14である。
【0054】
酸化剤を作用させる際のpHの調整は、無機酸又は有機酸、アルカリ溶液等を用いて行う。無機酸とは、硝酸、硫酸、塩酸、臭化水素酸などで、好ましくは、硫酸、塩酸、より好ましくは、塩酸である。有機酸とはギ酸、酢酸、プロピオン酸などであり、好ましくは酢酸である。アルカリ溶液は、アンモニア水、NaOH水溶液、KOH水溶液などであり、好ましくは、NaOH水溶液である。
【0055】
本発明で用いられる酸化剤で酸化することにより、反応後の処理が飛躍的に容易になった。従来法、例えば反応系に塩酸を加えて空気酸化する方法(非特許文献1)では、カラムクロマトグラフィー精製前に晶析をかけることが出来ない為、クロロホルム等の有機溶媒を用いて抽出操作を行う必要があった。
【0056】
ところが、本発明の処法では、殆どの場合、酸化が円滑に進行し、晶析を行うことで高純度の目的物を容易に得ることが可能となった。但し、晶析により不純物を大幅に減らした結晶を得ることは出来るが、従来法に比べて収率が若干低下する場合がある(本発明実施例2記載の化合物77の合成収率は57%であるが、同化合物の非特許文献1での合成収率は63%である)。
【0057】
しかしながら、晶析を行う事で不純物を大幅に減らした結晶が得られる為、カラムクロマトグラフィーによる精製がかなり容易となり、高純度の目的物を得ることが可能であるなど工業生産の観点から大いにメリットがある。
【0058】
反応温度は−50℃〜300℃で行い、反応温度は可変又は一定にして行う。好ましくは−10℃〜250℃、より好ましくは0℃〜100℃である。
【0059】
反応時間は、1時間〜50時間であるが、おおむね24時間以内に反応は終了する。
【0060】
必要に応じて通常の有機合成反応に用いられる単離・精製法により反応物から目的化合
物を得ることができる。より純度を上げるためには、真空昇華精製を行うことも可能である。
【0061】
次に、上記式(2)(X=硫黄原子、スルホキシ基、スルホン基、セレン原子)で表される下記化合物(102)の具体例(X=S、n=1)として、化合物(46)〜(90)を下記表3に例示するが、これらに限定されるものではない。なお、幾何異性体が考えられる化合物の場合でも、ひとつの異性体のみ例示する。
【0062】
【化7】

【0063】
【表3】

【0064】
【化8】

【0065】
【化9】

【実施例】
【0066】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0067】
実施例1 5,5''-Bis(dicyanomethylene)-5,5''-dihydro-Δ2,1';3',2''-dithienyl-5',5'-bis(butoxymethyl)cyclopenta[c]thiophene(化合物76)の合成
窒素雰囲気下、水素化ナトリウム(60% in oil, 2.16g,150mmol)とマロノニトリル(2.97g,)(45mmol)とのTHF(170ml)溶液を室温で30分間攪拌した後、反応容器を遮光し、Pd(PPh(0.52g, 0.5mmol)とdppf(0.49g,0.90mmol)を加え、化合物31(2.78g,4.5mmol,合成は特許文献2を参考に実施)のTHF(85ml)溶液を滴下した。5時間攪拌しながら、還流させたのち、室温まで冷却した。反応液に水300mlと8%次亜塩素酸水溶液50mlの混合液を25℃以下で滴下したのち、晶析させた。反応液をろ別し、カラムクロマトグラフィー(15%低活性シリカゲル、トルエン)で精製し、濃縮してアセトン−アセトニトリルで再結晶して化合物76(1.80g,収率68%)を緑色固体として得た。
m.p.300℃で分解。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ0.91(t,J=7.56Hz,6H),1.36(sext,J=7.56Hz,4H),1.53 (quint,J=5.20Hz,4H),2.83-2.92(m,4H),3.42-3.48(m,4H),7.22-7.24(dd,J=2.96Hz,5.64Hz,1H),7.32-7.36(dd,J=4.64,5.88Hz,1H),7.40-7.42(dd,J=2.68,5.64Hz,1H),7.52-7.55(dd,J=4.64, J=5.60Hz, 1H
MS (DI) m/z=586(M+)。
【0068】
実施例2 5,5''-Bis(dicyanomethylene)-5,5''-dihydro-Δ2,1';3',2''-dithienyl-5',5'-bis(hexyloxymethyl)cyclopenta[c]thiophene(化合物77)の合成
窒素雰囲気下、水素化ナトリウム(60% in oil, 2.16g,150mmol)とマロノニトリル(2.97g,)(45mmol)とのTHF(85ml)溶液を室温で30分間攪拌した後、反応容器を遮光し、Pd(PPh(0.52g,0.5mmol)とdppf(0.50g,0.9mmol)を加え、化合物32(3.04g,4.5mmol,合成は特許文献2を参考に実施)のTHF(170ml)溶液を滴下した。5時間攪拌しながら、還流させたのち、室温まで冷却した。反応液を水600mlと8%次亜塩素酸水溶液100mlの混合液に25℃以下で滴下したのち、晶析させた。反応液をろ別し、カラムクロマトグラフィー(15%低活性シリカゲル、トルエン)で精製し、濃縮してメタノールで晶析して化合物77(1.65g,収率57%)を緑色固体として得た。
m.p.300℃で分解。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ 0.87 (t, J=6.84 Hz, 6H), 1.25-1.30 (m,12H), 1.53-1.56 (m, 4H), 2.83-2.92 (m,4H), 3.42-3.46 (m,8H), 7.21-7.26(m,2H), 7.33-7.36(dd,J=5.60,8.28 Hz,2H), 7.41-7.43(dd,J=2.92, 5.60Hz,2H),7.52-7.56(dd, J=5.60, J=8.28Hz, 2H
MS (DI) m/z=642(M+)。
【0069】
実施例3 3,3''-dimethyl-5,5''-Bis(dicyanomethylene)-5,5''-dihydro-Δ2,1';3',2''-dithienyl-5',5'-bis(butoxymethyl)cyclopenta[c]thiophene(化合物79)の合成
窒素雰囲気下、水素化ナトリウム(60% in oil, 2.16g,150mmol)とマロノニトリル(2.97g,45mmol)とのTHF(85ml)溶液を室温で30分間攪拌した後、反応容器を遮光し、Pd(PPh(0.52g,0.5mmol)とdppf(0.50g,0.90mmol)を加え、化合物34(2.91g,4.5mmol,合成は特許文献2を参考に実施)のTHF(170ml)溶液を滴下した。5時間攪拌しながら、還流させたのち、室温まで冷却した。反応液に水300mlと8%次亜塩素酸水溶液100mlの混合液を25℃以下で滴下したのち、晶析させた。反応液をろ別し、カラムクロマトグラフィー(10%低活性シリカゲル、クロロホルム)で精製し、濃縮してメタノールで晶析して化合物79(1.72g,収率62%)を緑色固体として得た。
m.p.300℃で分解。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ0.91(t,J=7.32Hz,6H),1.35(sext,J=7.56Hz,4H),1.53 (quint,J=6.60Hz,4H),2.56(d,J=0.72Hz,6H),2.96(s,4H),3.43-3.48(m,8H),7.15(d,J=0.96Hz,2H)
MS (DI) m/z=614(M+)。
【0070】
【化10】

【0071】
実施例4 5,5''-Bis(dicyanomethylene)-5,5''-dihydro-Δ2,1';3',2''-dithienyl-5',5'-bis(butoxymethyl)cyclopenta[c]thiophene(化合物76)の合成
実施例1に記載の原料である化合物31の代わりに、化合物91(3.20g,4.5mmol,特許文献2に記載の方法で合成)を用い、実施例1と同様の操作で化合物76(0.8g,収率30%)を緑色固体として得た。分析値などは、実施例1と同じである。
【0072】
実施例5 5,5''-Bis(dicyanomethylene)-5,5''-dihydro-Δ2,1';3',2''-diselenophenyl-5',5'-bis(octyloxymethyl)cyclopenta[c]thiophene(化合物93)の合成
実施例1に記載の原料である化合物31の代わりに、化合物92(3.71g,4.5mmol,特許文献2に記載の方法で合成)を用い、実施例1と同様の操作で化合物93(2.31g、収率65%)を緑色固体として得た。
m.p.300℃で分解;1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ 0.87 (t, J=5.40 Hz, 6H), 1.25-1.30 (m,20H), 1.53-1.57 (m, 4H), 2.74-2.92 (m,4H), 3.43-3.46 (m,8H), 7.22-7.26(m,2H), 7.36-7.39 (m,2H), 7.46-7.50 (m,2H), 7.60-7.63 (m, 2H); MS (DI) m/z=794(M+)。
【0073】
次に比較実験を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0074】
先にも述べたが、ジシアノメチレン誘導体の酸化剤を用いる製造方法には、臭素水溶液(非特許文献2、4〜8)を用いる方法と反応の後処理を空気中で行う、自然酸化(非特許文献1、3)による方法が知られていた。
特に、自然酸化の方法は、酸化剤としては、非常にマイルドかつ安価であるなど魅力的な方法ではあった(比較実験1)。ところが、この反応のスケールをたった15倍程度上げることで、収率が低下し(比較実験2)、さらにスケールを30倍程度まであげると収率が急速に低下し、もはや自然酸化では対応できないことがわかった(比較実験3)。これらのことから、自然酸化を利用した製造法は、工業的な製造に適していないことが明らかになった(比較実験2,3)。
【0075】
また、空気を積極的に反応系に吹き込む操作を行い収率の向上を目指したが、それほど収率が向上しなかった(比較実験4)。
【0076】
そこで、本発明の一例である、酸化剤として市販の8%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いたところ、比較実験1に対し反応のスケールを30倍以上にしても収率よく目的物を得ることに成功した(実施例2)。
【0077】
【表4】

【0078】
以下、比較実験について詳細に説明する。
【0079】
比較実験1は、非特許文献1に記載のスケールと収率、および収量を記載した。
【0080】
比較実験2 5,5''-Bis(dicyanomethylene)-5,5''-dihydro-Δ2,1';3',2''-dithienyl-5',5'-bis(hexyloxymethyl)cyclopenta[c]thiophene(化合物77)の合成
窒素雰囲気下、水素化ナトリウム(60% in oil, 1.10g,76.7mmol)とマロノニトリル(1.52g,23.0mmol)のTHF(300ml)溶液を室温で30分間攪拌したのち、反応容器を遮光し、Pd(PPh3)4(0.266g,0.2mmol)とdppf(0.26g,0.46mmol)を加え、化合物32(1.55g,2.3mmol,合成は、特許文献2を参考にして実施)のTHF(200ml)溶液を滴下した。5時間攪拌しながら、還流させたのち、室温まで冷却した。5N塩酸(100m)を加え、空気中で30分間攪拌した。クロロホルムを加えて抽出し、濃縮してカラムクロマトグラフィー(10%低活性シリカゲル、クロロホルム)で精製し、濃縮してろ別して化合物77(608mg,収率41%)を緑色固体として得た。
分析値などは、実施例2と同じである。
【0081】
比較実験3は、化合物32の使用量を3.04gとして比較実験2と同様の操作で化合物77(720mg,収率25%)を緑色固体として得た。分析値などは、実施例2と同じである。
【0082】
比較実験4は、化合物32の使用量を3.04gとして比較実験2と同様の操作で反応させ、5N塩酸を加えたのち、空気中で30分間攪拌しながら、さらに反応液中に空気を勢いよく吹き込んだ工程を加えたものである。後処理等は、引き続き比較実験2と同様に行い、化合物77(860mg,収率30%)を緑色固体として得た。分析値などは、実施例2と同じである。
【0083】
以上のことから、本発明によれば、反応のスケールをあげていっても、スムーズに目的物を得ることが出来など、従来法より汎用性が高く優れた製造法であることがわかった。
【0084】
以上のように、本発明により、ジシアノメチレン誘導体を簡便かつ効率的に製造することが可能となったことから、本発明のジシアノメチレン誘導体の製造方法は極めて有用なものであると言える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

(式中、Xはそれぞれ独立に、硫黄原子、セレン原子、スルホキシ基、スルホン基を表す。Yは、ハロゲン原子を表す。R、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜18のアルキル基、置換基を有してもよいカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数1〜18のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数1〜18のアルキルチオ基、アミノ基、ニトロ基、エステル基、置換基を有してもよい炭素数1〜18のアルキル基を有するシリル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表す。a、b、cはそれぞれ、置換基R、R、Rの置換基の数を表し、0〜2の整数を表す。aが2の場合、2個の置換基Rは同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成してもよい。bが2の場合、2個の置換基Rは同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成してもよい。cが2の場合、2個の置換基Rは同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成してもよい。nは、0以上の整数を表す。)
で表される芳香族化合物と、マロノニトリルとを塩基性条件下で反応させる工程;及び、
硝酸、硝酸銀、ハロゲン化銀、過酸化水素、過酸化t−ブチル、過硫酸アンモニウム、過塩素酸、過ヨウ素酸、過マンガン酸カリウム、クロム酸及びビスマス酸アルカリ、酸素、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸リチウム、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸マグネシウム、次亜臭素酸ナトリウム、次亜臭素酸カリウム、次亜臭素酸リチウム、次亜臭素酸カルシウム、次亜臭素酸マグネシウム、次亜ヨウ素酸ナトリウム、次亜ヨウ素酸カリウム、次亜ヨウ素酸リチウム、次亜ヨウ素酸カルシウム及び次亜ヨウ素酸マグネシウムからなる群から少なくとも1つ選択される酸化剤を前記芳香族化合物とマロノニトリルとを反応させた液に加えて、下記の式(2):
【化2】

(式中、Xはそれぞれ独立に、硫黄原子、セレン原子、スルホキシ基、スルホン基を表す。R、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜18のアルキル基、置換基を有してもよいカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数1〜18のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数1〜18のアルキルチオ基、アミノ基、ニトロ基、エステル基、置換基を有してもよい炭素数1〜18のアルキル基を有するシリル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表す。a、b、cはそれぞれ、置換基R、R、Rの置換基の数を表し、0〜2の整数を表す。aが2の場合、2個の置換基Rは同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成してもよい。bが2の場合、2個の置換基Rは同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成してもよい。cが2の場合、2個の置換基Rは同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成してもよい。nは、0以上の整数を表す。)
で表されるジシアノメチレン誘導体を生成する工程;
を含むジシアノメチレン誘導体の製造方法。
【請求項2】
前記nが1であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記芳香族化合物とマロノニトリルとの反応を触媒の存在下で行う、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記触媒のうち一つがFe、Ru、Os、Hs、Co、Ph、Ir、Mt、Ni、Pd、Pt、Uun、Cu、Ag、Au、Uuu、Zn、Cd、Hg及びUbからなる群から選択される少なくとも一つの金属を含有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記触媒の一つがPdを含む化合物である、請求項1から4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記触媒の一つがPdCl、Pd(PPhCl、Pd(PPh)からなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記酸化剤が次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸リチウム、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸マグネシウム、次亜臭素酸ナトリウム、次亜臭素酸カリウム、次亜臭素酸リチウム、次亜臭素酸カルシウム、次亜臭素酸マグネシウム、次亜ヨウ素酸ナトリウム、次亜ヨウ素酸カリウム、次亜ヨウ素酸リチウム、次亜ヨウ素酸カルシウム又は次亜ヨウ素酸マグネシウムであることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の製造方法。